JP3275476B2 - 磁気ディスク用基板 - Google Patents

磁気ディスク用基板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガラス基板上に金属薄
膜を被覆してなる磁気ディスク用基板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、非導電性素地に各種の無電解
めっきを行なう場合には、無電解めっき反応を進行させ
るための触媒核を非導電性素地表面に吸着させることが
知られている。そして、そのための前処理として、非導
電性素地を脱脂、酸洗、センシタイジング(感受性
化)、次いでアクチベーティング(活性化)する方法が
用いられてきた。
【0003】しかし、このような触媒核を形成する方法
では非導電性素地上に還元析出したパラジウム等の触媒
核が微視的に不均一に存在するため、非導電性素地上に
粗大粒子が生成してしまい、この結果、形成された無電
解めっき被膜に微小突起が生じ、表面粗さも大きくなる
という問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】非導電性素地への無電
解めっき処理は、例えば、磁気ディスクの下地層を形成
する場合にも適用することができる。磁気ディスクは高
密度化の要求に伴い、記録再生時におけるヘッドの磁気
ディスクからの浮上高さを低くすることが要求されてい
る。そのために、磁気ディスク表面にヘッドの浮上高さ
より大きな突起があってはならず、表面粗さは小さいこ
とが求められている。
【0005】しかしながら、上述した触媒核を用いる方
法では無電解めっき被膜に微小突起が形成され、表面粗
さも大きくなるため良好な磁気ディスクを得ることがで
きない。従って、このような微小突起を除去する目的で
表面を研磨処理し、平滑化する方法が採用されている。
しかし、無電解めっき後の研磨処理は多大な労働を要す
るものであり、研磨処理の簡略化が可能な工程、即ち、
非導電性素地上に微小突起のない微視的に均一な表面状
態を有する無電解めっき被膜を形成する方法が望まれて
いた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記要望
に応えるため鋭意検討を行なった結果、非導電性素地上
に無電解めっき被膜を形成するのに際し、アクチベーテ
ィング終了後の洗浄を超音波照射下に行なうことによ
り、得られる無電解めっき被膜の表面外観が著しく改善
され微小突起も著しく少なくなることを知見し、本発明
をなすに至った。
【0007】即ち、本発明の要旨は、ガラス基板上に金
属薄膜を被覆してなる磁気ディスク用基板において、形
成した金属薄膜の表面粗さRaが金属被覆前の基板の表
面粗さRaの1.2倍以内である表面形状を有すること
を特徴とする磁気ディスク用基板に存する。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
非導電性素地上への無電解めっき処理は、センシタイジ
ング処理、アクチベーティング処理、次いで無電解めっ
きの順に行われる。そして通常は、センシタイジング処
理の前に脱脂工程、酸洗工程が設けられる。また、各工
程間には洗浄工程が設けられ、アクチベーティング処理
後の洗浄後には乾燥工程を設けることもできる。
【0009】脱脂、酸洗、センシタイジング処理、アク
チベーティング処理、無電解めっきは通常の方法によっ
て行えば良く、アクチベーティング処理後の洗浄は超音
波を照射する以外は通常の方法で行えば良い。超音波の
照射は、超音波の振動子を槽内のどこに配置して行なっ
ても良い。超音波の波長としては20〜1600KHz
程度が好ましく、高周波になる程小粒子径の凝集粒子の
除去が可能になる。また、出力の大きさは槽の大きさに
対し、0.5〜10W/cm2 程度が望ましい。
【0010】超音波を照射しながらの洗浄は、室温で良
いが、必要に応じて加温することもできる。洗浄時間
は、15秒以上、より好ましくは20秒以上であるが、
洗浄時間を延長しても非導電性素地上の粗大粒子の減少
効果、つまり、無電解めっき被膜の微小突起を減少させ
る効果が飽和するために、洗浄は長くても2分程度で良
い。
【0011】また、本発明における非導電性素地とは、
ガラス、セラミックス、プラスチック等が使用され、磁
気ディスク用途としてはガラスが好適に用いられる。次
に、各工程について説明する。センシタイジング処理、
アクチベーティング処理は非導電性素地上に無電解めっ
きを開始させるために必要な触媒活性を与える工程であ
る。すなわち、非導電性素地の表面は触媒活性がないた
めに、無電解めっきを開始するためには、非導電性素地
の表面にAu、Pt、Pd、Ag等の貴金属の触媒核を
形成することが必要である。
【0012】センシタイジング処理は、非導電性素地を
センシタイザー(感応性賦与剤)溶液に浸漬することに
より、素地表面に金属イオンを吸着させるものである。
センシタイザー溶液としては、従来より知られているS
n、Ti、Pb、Hg等から成る2価の金属イオンを含
む溶液であれば良く、特に限定されるものではないが、
「金属表面技術」(16巻、No.1、1965、p.
26)に記載されているように、塩化第一スズまたは硫
酸第一スズを主体とした液を用いることができる。通
常、塩化第一スズ溶液が好適に使用され、塩化第一スズ
を水に溶解するために塩酸などの無機酸を共存させる方
法も用いられる。
【0013】本発明においては、1g〜100g/lの
塩化第一スズ溶液が好適に用いられる。尚、センシタイ
ザーの種類は、非導電性素地の種類や無電解めっきの種
類によって大きく変わるものではない。そして、非導電
性素地のセンシタイザー溶液の浸漬は、室温〜50℃に
おいて1〜5分間行なわれる。
【0014】アクチベーティング処理とは、センシタイ
ジング処理により素地上に吸着した金属イオンの還元作
用によって、触媒活性の強い金属微粒子を素地表面に一
様に分布形成する工程である。本発明のアクチベーティ
ング処理は、センシタイジング処理が終了した非導電性
素地をアクチベーティング溶液中に浸漬することにより
行なうものである。
【0015】アクチベーティング溶液としては一般に、
Pd、Pt、Au、Agなどの貴金属塩の水溶液が用い
られ、中でもパウジウム塩水溶液が好ましい。本発明に
おいては、0.1g〜1.0g/lの塩化パラジウム水
溶液が好適に使用される。アクチベーティング処理終了
後の洗浄工程は、素地表面に付着したアクチベーティン
グ剤を除去する目的で行なわれるものである。洗浄方法
は流水洗浄、浸漬洗浄等が用いられ、洗浄水としては、
イオン交換水、超純水等が使用される。
【0016】無電解めっきは、一般に非導電性素地上に
各種機能を付与するために広く利用されており、無電解
ニッケルめっきを行なう場合には、通常、めっき液とし
て、水溶性ニッケル塩、有機酸塩(錯化剤)及び次亜リ
ン酸又は次亜リン酸塩(次亜リン酸ナトリウム等)等の
還元剤を含有した公知のめっき浴が使用される。まため
っき浴は、酸性浴でもアルカリ性浴でも良く、例えばp
H4〜10の範囲が採用される。尚、磁気ディスクの下
地層の製造においては、通常、pH4〜6の酸性無電解
ニッケルめっき浴を用い、リン含量11〜12重量%の
Ni−P被膜を膜厚0.1〜15μm程度に形成するこ
とが行なわれている。
【0017】また、非導電性素地の脱脂工程は、素地表
面を洗浄する工程であり、公知の方法において素地の材
質により条件が選択され実施される。例えば、ガラス素
地を用いる場合には、一般にアルカリ性脱脂液が好まし
く、特に1〜30重量%程度の水酸化カリウムあるいは
水酸化ナトリウム水溶液が好適に用いられる。また脱脂
の効果をより高めるため超音波照射下に行なうのが好ま
しい。
【0018】酸洗は、次工程のセンシタイジング処理で
の金属イオンの吸着を良好に進行させるためのものであ
り、前工程のアルカリ脱脂液が残存する場合は中和の役
割を果たす。酸洗液としては硫酸水溶液などが使用さ
れ、pH2〜3程度の硫酸水溶液が好適に用いられる。
無電解めっき前の乾燥工程は、非導電性素地と触媒核で
ある金属微粒子との付着強度を増加させ、素地とめっき
被膜との密着性を向上させる効果があり、その結果、微
小突起のない均一な表面粗さの無電解めっき被膜を形成
することが可能となる。乾燥方法としては基板を水洗
後、純水に浸漬して徐々に引き上げながら乾燥させる方
法が好ましいが、通常の風乾処理、ヒーターによる乾燥
方法等を採用しても良い。
【0019】また、本発明における磁気ディスク用基板
は、非導電性素地、特にガラス基板上に金属を被覆した
ものであり、金属被覆前の基板の表面形状がほとんどそ
のまま保たれた表面状態を有している。金属薄膜の表面
粗さ(平均粗さRa)は、金属被覆前の基板の表面粗さ
(平均粗さRa)の1.2倍以内、好ましくは0.7〜
1.2倍である。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実
施例に限定されるものではない。尚、以下の諸例におい
て各測定は、次の方法によって行った。 (1)Ni−P被膜の外観 オリンパス照明装置Model LSDを用いて、目視
で外観むらの程度を観察した。 (2)中心線平均粗さ(Ra)及び突起高さ(最大突起
高さよりベース高さを差し引いて求めたもの) 先端が0.2μm角の触針を有する表面粗さ計(ランク
テーラーホブソン(株)製「タリステップ」)により、
計測長1mm、計測倍率200,000、計測速度0.
025mm/sec、フィルタ0.33Hzの条件で測
定を行なった。
【0021】実施例1〜6 直径2.5インチ、厚さ0.889mmの2種類のガラ
ス基板(カリウム強化ソーダライムガラス)A(中心線
平均粗さの平均Ra8Å)及びB(同Ra9Å)に対
し、以下の無電解めっき処理を施し、ガラス基板の表面
にニッケル−リンの成膜を行なった。尚、各工程は回転
治具を用いて基板を回転させながら実施し、また、各洗
浄工程における洗浄水は超純水を用いた。まず、上記ガ
ラス基板を5%水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬し、
脱脂処理を行なった後、2分間流水洗浄し、次いでpH
2〜3の硫酸水溶液で1分間酸洗後、2分間の流水洗浄
を行なった。
【0022】その後、ガラス基板を1g/lの塩化第1
スズ水溶液(塩酸によりpH3に調整)に1分間浸漬し
てセンシタイジング処理し、1分間流水洗浄した。次い
で、0.2g/lの塩化パラジウム水溶液(塩酸により
pH3に調整)に1分間浸漬し、アクチベーティング処
理を行なった。次に、ガラス基板を室温にて1分間流水
洗浄後、室温の超純水槽中に浸漬し、超音波発生装置
(電子技術工業(株)製ULTRASONIC CLE
ANERUS−600CRS)により28KHz,60
0W(1.6W/cm2 )の超音波を表1に示す時間内
(15〜60秒間)照射を行なった。そして、スピード
ファムクリーンシステム(株)製の自動2槽式温純水乾
燥装置を用いて40℃の純水槽に一旦浸漬し、80mm
/分の引き上げ速度で洗浄槽から引き上げ、乾燥を行な
った。
【0023】次いで、磁気ディスク用ニッケルめっき液
(奥野製薬工業(株)製「ナイクラッド719」)を用
いて、pH4.5、浴温81℃の条件で120秒間めっ
きを行ない、ガラス基板上に1500ÅのNi−P被膜
を形成した。得られたNi−Pめっき基板表面の外観は
いずれも良好であった。また、中心線平均粗さ及び突起
高さを測定し、結果を表1に示す。この結果よりNi−
Pめっき基板の表面粗さRaは、ガラス基板の表面粗さ
Raに比較して、ガラス基板Aについては平均値で約
1.1倍、基板Bについては約1.0倍であった。
【0024】実施例7,8 実施例3,6において、アクチベーティング処理後の水
洗を超音波発生装置として、(株)プレテック製FIN
E−SONIC PT−08M(周波数800KHz、
650W)を使用した以外は実施例1〜6と同様にガラ
ス基板にNi−P皮膜を形成した。得られたNi−Pめ
っき基板表面の外観はいずれも良好であった。また、中
心線平均粗さ及び突起高さを測定し、結果を表1に示
す。この結果よりNi−Pめっき基板の表面粗さRa
は、ガラス基板の表面粗さRaに比較して、ガラス基板
Aについては平均値で約0.8倍、基板Bについては約
0.9倍であった。
【0025】比較例1〜2 実施例1〜6において、アクチベーティング処理後の水
洗を超音波を照射せずに、流水洗浄のみで行なった以外
は、実施例1〜6と同様に、ガラス基板にNi−P被膜
を形成した。得られた基板表面の外観はいずれも不良で
あった。中心線平均粗さ及び突起高さの測定結果を表1
に示す。この結果、Ni−Pめっき基板の表面粗さRa
は、ガラス基板の表面粗さRaに対し、ガラス基板Aに
ついては約1.9倍、基板Bについては約1.3倍であ
った。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、超音波洗
浄を行なうことにより、無電解めっき被膜の微小突起を
減少させることができ、表面粗さの小さい平滑表面を得
ることができる。このため、磁気ディスク用下地膜を製
造する場合において、Ni−P被膜の研磨工程を簡略化
することが可能となり、しかも、高密度化に適した低浮
上基板を得ることができる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/82 G11B 5/84

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス基板上に金属薄膜を被覆してなる
    磁気ディスク用基板において、形成した金属薄膜の表面
    粗さRaが金属被覆前のガラス基板の表面粗さRaの
    1.2倍以内である表面形状を有することを特徴とする
    磁気ディスク用基板。
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