JP3274912B2 - 化粧板用賦形型の製造方法 - Google Patents

化粧板用賦形型の製造方法

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JP3274912B2 JP19946393A JP19946393A JP3274912B2 JP 3274912 B2 JP3274912 B2 JP 3274912B2 JP 19946393 A JP19946393 A JP 19946393A JP 19946393 A JP19946393 A JP 19946393A JP 3274912 B2 JP3274912 B2 JP 3274912B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化粧板用賦形型の製造
方法およびその方法に使用するマスクフィルムに関し、
詳しくは、木材の木目や石材の地紋等の模様が人工的に
賦形され、かつ、紙や合成樹脂等の材料よりなる化粧板
のプレス工程において使用される賦形型の製造方法、お
よびその方法における露光工程で使用されるマスクフィ
ルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、たとえば木目模様を有する化粧板
の場合、木目を形成する導管の模様、すなわち凹状の無
数の線模様が一般に形成される。したがって、このよう
な化粧板を形成するための賦形型には木目(導管)に対応
した無数の凹状線模様が形成されることになる。従来、
このような賦形型を形成する方法として、図1に示した
ような天然の木材の木目(導管1)を写真フィルムに撮影
し、この写真フィルムを原版として、基板上に形成した
感光性樹脂膜に焼き付けを行い、その後ケミカルエッチ
ング手法を用いて導管に対応する部分を凸部として形成
する方法が知られている。
【0003】従来の製造方法は、このように、目的とす
る木目等の模様に対応して凹凸模様を形成するものであ
るが、従来方法によっては、写真階調のごとき階調のあ
る化粧板を作るための賦形型は実現不可能であった。
【0004】このような写真階調のごとき階調のある化
粧板を作るための賦形型は、化粧板に天然の導管とほぼ
同一の凹凸模様を賦形することがもっとも良い解決方法
であることは言うまでもない。すなわち、天然木材の導
管は図2,3に示されるように、浅い部分と深い部分と
を有しており、このような形状に対応した凸型を賦形型
に形成する必要があるのである。
【0005】図2,3について説明すれば、図2は天然
木材を示し、その木材表面に模式的に示した三角状の導
管1が無数に表れている。図においてA−B,C−Dは
各線分を含む平面で切断することを示している。この断
面状態を図3に示している。導管は樹体内の水分の通路
の働きをなすものであり、長いパイプ状のものである。
そして、切断された木材の表面には図2に示したような
導管切断端部が表れるのである。図3(I)では切断線A
−Bにおいては導管1が斜め方向に切断されている状態
が明らかである。また、(II)および(III)に示すよ
うに断面C−Dにおいては、導管1の上部あるいは上半
分程度が切断された状態が示されている。このように、
導管そのものは本来パイプ状のものであるため、木材表
面に表われる導管の切断部は周辺浅部1aとその中心側
の深部1bとで形成されているのである。そしてその深
さ変化は徐々に変化しているのである。
【0006】従来の賦形型製造方法において使用される
原版としての写真フィルムにはこのような導管の深さに
対応した階調は到底得られず、導管部全体がフィルムに
陰影部として撮影されるため(ポジフィルムの場合)、そ
のマスクフィルムを使用して製造した賦形型は必然的に
天然木材の導管の形状に正確には対応していなかったの
である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
解決しようとする技術的課題は、写真階調のごとき階調
のある化粧板を製作できる賦形型の製造方法、すなわ
ち、深い部分と浅い部分とで形成される天然導管にほぼ
正確に対応する凸版部を有する賦形型を製造する方法を
提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段・作用・効果】以下に、図
4〜16に従って、上記技術的課題を解決するための本
発明にかかる製造方法について詳細に説明する。
【0009】図4〜12は本発明にかかる化粧板用賦形
型の製造方法の基本を図解している。この製造方法にお
いては基本マスクフィルムとしてマスクフィルム(第1
マスクフィルム)2が使用される(本製造方法において
は第2マスクフィルム6も使用されるがこれについては
後述する)。図4に従ってこのマスクフィルム2につい
てまず説明する。
【0010】このマスクフィルム2は、天然導管1の深
度の浅い部分から深い部分に対応して濃度が濃から淡に
変化する導管陰影部2aを有し、かつ導管陰影部2a以外
の地部2cがほぼ透明に形成されている。図4におい
て、符号2bの部分は導管陰影部2aの濃淡分布を示して
いる。すなわち、天然導管1の周辺浅部1aに対応する
部分(1a)の濃度は濃く、一方天然導管1の深部1bに対
応する中央部分(1b)は薄くなっている。
【0011】図5に上記第1マスクフィルムの製造方法
の一例を示している。この例においては、第1フィルム
10と、第2フィルム11と第3フィルム14とが使用
される。ここで製版写真用フィルムとは、リスフィル
ム、色分解用フィルム、プロセス用フィルム等のことを
いう。第1フィルム10は、天然導管1に対応する導管
陰影部10aを上面に有しかつ導管陰影部10a以外の地
部10cがほぼ透明に形成されている。また、第2フィ
ルム11は天然導管1に対応する導管透明部11aを有
しかつ導管透明部11a以外の地部11c下面が陰影部と
して形成されている。また、第3フィルム14は未使用
のものであって、この第3フィルム14が露光・現像後
にマスクフィルム2になる。図5(I)においては、各フ
ィルム10,11の導管陰影部10a及び陰影部としての
地部11cが、フィルムの上面または下面に形成される
感光層により形成されている状態を示している。
【0012】上記3枚のフィルム10,11,14は、図
に示すように、フィルム10−11間は感光層が背中合
わせとなるようにし、フィルム11−14間は感光層同
士が向かい合うように、順次上から下に、フィルム10
とフィルム11をベースフィルムを背中合わせにして互
いに密着した状態で光Lにより露光される。このとき、
各導管陰影部10aと導管透明部11aは互いに対応する
位置に配置される。この配置の仕方は、図5の実施例に
おいては、導管陰影部10aの形状及び寸法を導管透明
部11aの形状及び寸法と実質的に同一とすると共に、
これらの各導管陰影部10aと各導管透明部11aとが上
下方向に実質的に一致せしめられている。
【0013】図5に示すように、光Lにより密着フィル
ム10,11,14を露光すると光の回折現象により、
(II)に示すように、第3フィルム14(マスクフィル
ム2)には周辺部分濃度が濃く中心部分の濃度が低い濃
度分布を有する導管陰影部2aが形成される。すなわ
ち、フィルム10,11はそれぞれ一定の厚み寸法、た
とえば100μ〜175μの厚み寸法、を有しているの
でフィルム10、11の陰影部間には200μないし3
50μの間隔が形成されている。この故に、第1フィル
ム10の導管陰影部10aの周辺から各フィルム10,1
1に入射する光は回折現象を生じて、導管陰影部10a
の下方中心方向に光が回り込むことになる。すなわち、
この光の回折現象がなければ、つまり上方より入射する
光Lが下方に直進するとすれば、導管陰影部10aの巾
寸法と導管透明部11aの巾寸法は一致しているため、
導管透明部11aを光通過窓として第3フィルム14に
入射する光は理論上零であって第3フィルム14は露光
されないことになる。しかし、本発明においては、この
光の回折現象を利用して、一定の光が導管透明部11a
を光通過窓として第3フィルム14に入射することがで
きるのである。そして、この入射光は第3フィルム14
に対して一様ではなく、その露光量は周辺部において多
く、中心部において少なくなり、濃度分布曲線2bに示
すように、導管陰影部2aの周辺から中心に向かって二
次曲線的に漸減する。したがって、このように露光され
た第3フィルム14を現像すれば、露光量の多い部分の
濃度が高くなり、露光量の少ない部分の濃度が低くなる
のである。すなわち導管陰影部2aの濃度は天然導管1
の深度の浅い部分から深い部分に対応して濃から淡に変
化するのである。このようにして、図4に示した目的と
するところのマスクフィルム2を得ることができるので
ある。
【0014】図5においては、導管陰影部10a及び導
管透明部11aの断面方向は特に限定されていない。す
なわち天然導管1の横断方向及び長手方向のいずれの場
合にも適用されるものである。つまり、図5に示した一
実施例によれば、天然導管1の横断方向及び長手方向の
いずれにおいても導管陰影部2aの濃度分布は図5(I
I)に示すようになるのである。したがって、この濃度
分布は、図3(II,III)に示される天然導管1の横
断方向の形状にはよく対応しているが図3(I)に示され
る天然導管1の長手方向の断面形状には正確には対応し
ていないきらいはある。
【0015】上記した第1及び第2フィルム10,11
自体は、一例として図6に示した写真技術により製造す
ることができる。図6は多数の導管1の木目模様を有す
る天然木材の表面をカメラ12により撮影している状態
を示している。この撮影方式自体公知のものであって、
被写体であるところの木目模様の黒い部分すなわち導管
と他の相対的に明るい背景部分とのコントラストを強調
するための撮影方式である。したがって、このカメラ1
2に使用されるフィルム、はその目的に合致するリスフ
ィルムが使用される。そしてまた、撮影時においては、
光Lを天然木材の表面に対して斜め方向から投光して、
天然木材の表面に対して窪んでいるところの各導管1の
部分を暗くする一方背景部を明るくして、つまり明暗を
強調して撮影する。これにより、全面が一様または均一
な濃度を有する地部11cを有するところの第2フィル
ム11を得ることができる。この場合、第1フィルム1
0は第2フィルム11に対するネガフィルムである。す
なわち、図には示していないが、地部11cを有する第
2フィルム11の下に未使用の第1ネガフィルム(1
0)を感光層が密着するようにして露光することによ
り、第2フィルム11と陰影部が逆転した第1フィルム
10を得ることができるのである。
【0016】また、コントラストをより強調する方法と
して、天然木材の表面における導管部以外を白色塗装し
て撮影する方法や、逆に(天然木材が濃い色の場合)、
導管部のみを白チョーク等で埋めて白色としてから撮影
する方法等がある。
【0017】本発明方法においては、上に詳述した第1
マスクフィルム2に加えて第2マスクフィルム6が併用
されるが、説明の便宜上、先ず最初に第1マスクフィル
ム2のみを使用する場合について原理的説明を行うとと
もにその問題点についての説明を行う。まず始めに、上
記マスクフィルム2を用いた露光工程が行なわれる。こ
の露光工程を図7に示している。図7に示されるよう
に、マスクフィルム2を通して光硬化層3aに光Lを露
光して、地部2cに対応する部分を十分光硬化させて周
囲硬化部3eを形成すると共に、導管陰影部2aに対応す
る部分をその濃度に対応したプロフィールの深さで光硬
化させて周囲硬化部3eに囲まれた凸状硬化部3cを形成
する。光硬化した部分を斜線で示している。図示の実施
例においては、カーボンティッシュ3が使用されてい
る。このカーボンティッシュ3自体は公知のものであっ
て、光硬化層3aとベース紙3bより形成されている。図
7に光Lの光線を矢印で示している。これより明らかな
ように、マスクフィルム2の地部2cはほぼ透明である
から光Lは光硬化層3aに対して十分深く浸透する一
方、マスクフィルム2の導管陰影部2aの部分について
は、その濃淡に応じた量だけ光Lが達する。すなわち導
管陰影部2aの周囲部分は濃い陰影となっているため光
Lの透過深さが小さく、一方導管陰影部2aの中心部分
は濃度が薄くなっているので周辺部分より深く光が達し
ている。したがって、凸状硬化部3cは天然導管1に対
応する断面形状を呈している。なお、図において3dは
光Lが達していない部分すなわち未硬化部を示してい
る。
【0018】次いで、露光済のカーボンティッシュの光
硬化層3aを基板4、例えば銅板に貼りつけ、温湯にて
現像することにより未硬化部3dを除去しベース紙3b
を剥すことにより、基板4の表面にエッチング用の光硬
化膜を形成する。この状態を図8に示している。
【0019】図9は上記した第1エッチング工程を示し
ている。この工程では光硬化層3aの上から腐食液Qを
浸透させる。腐食液の浸透部分を点模様で示している。
そしてこれにより、基板4に、光硬化層3aの厚み形状
に対応したプロフィールの深さに、腐食液Qを浸透させ
て、金属基板4の上層を腐食すると共にその腐食部分を
除去する。すなわち、腐食液Qは光硬化層3aの中を上
から下に浸透していくわけであるが、その厚みの厚い部
分は浸透に時間がかかる一方その厚みが薄い部分はその
浸透時間が速いことになる。したがって、予め定められ
た時間が経過したとき、例えば図示のように腐食液Qが
周囲硬化部3eの底部付近に達したとき、このエッチン
グ工程を停止して腐食部分を洗浄すると、光硬化層3a
の形状とほぼ同一の形状が金属基板4に転写されること
になる。すなわち光硬化層3aの周囲硬化部3eに対応し
て金属基板4には周囲凸部4dが形成される。一方、光
硬化層3aの凸状硬化部3cと同形状の凸版部4cが形成
されることになる。このように形成された基板を図10
に示している。
【0020】上記第1エッチング工程において形成され
た金属基板4は、次いで第2エッチング工程が行なわれ
る。この第2エッチング工程を図11に示している。こ
の工程においては、第2エッチングを開始する前に、周
囲凸部4dに囲まれかつ、凸版部4cの上部に位置する空
間4g内に、腐食液Qが浸透しない非浸透性詰物5、例
えばオフセットインキ、が充填される。このように詰物
5を充填した後に第2エッチングが開始される。そし
て、この工程においては、金属基板4にその上方より腐
食液Qを浸透させて周囲凸部4dを腐食・除去して凸版
部4cより十分低い平坦部4hを形成する。このようにし
て形成された化粧板用賦形型を図12に示している。上
記した凸版部4cがいわゆる導管対応凸状部4eとして形
成されている。
【0021】このようにして形成された導管対応凸状部
4eは図3に図解した天然の導管の凹形状にきわめて近
似しており、従ってこの賦形型によりプレス工程で化粧
板にエンボス加工すれば天然導管に酷似した導管を形成
することが出来るのである。
【0022】ところで、図7〜12の原理的製造方法で
は実際には都合の悪いことがある。すなわち、第1マス
クフィルム2を図4,5の方法で製作すれば、第1マス
クフィルムの基となる第1フィルム10の撮影被写体が
天然木材であり、この天然木材の無数の導管の大きさは
実際には不均一であるため、実質的に全ての導管につき
所望の濃淡分布を得ることが困難である。その理由を以
下に説明する。
【0023】図13は、上記図5の写真撮影の露光方法
において、大きい導管1'と小さい導管1"に対応する濃
淡分布の表れ方の違いを示している。図13は小さい導
管1"に露光量を合わせた場合の例を示す。すなわち、
図13に示されるように、小さい導管1"の濃淡分布曲
線が所望の形状になり、かつ、中心部の濃度も十分保証
されている場合には、大きい導管1'の濃淡分布曲線は
その中心部の濃度が十分保証されないのみならず、その
形状も所望のものにならない場合が生ずる。これは、露
光量を小さい導管1"に合わせているため、その露光量
は大きい導管1'を露光するに十分ではなく、そのた
め、濃淡分布曲線の中心部がほとんど露光されないため
である。上とは逆に、もし、露光量を大きい導管1'に
合わせれば、小さい導管1"が犠牲となり、つまり、露
光量が多すぎるため、その濃淡分布曲線は所望の谷形形
状を画かず平滑化するという不具合がある。
【0024】マスクフィルム2が図13の濃淡分布曲線
を持つ場合には、このマスクフィルムを使用して賦形型
を製造するときに以下のような不具合が生じる。
【0025】図14は図11に対応する図であるが、大
きい導管1'に対応する金属基板4の空間4gの深さt、
すなわち凸版部4'cの中心部の上方部分、が非常に浅く
なり、その結果、詰物5の中心部の厚みが極めて薄くな
る。そうすれば、図11に示した第2エッチング工程が
実施されれば、詰物5の中心部からの腐食液の浸透が多
くなり、その結果、図15に示したような導管対応凸状
部4'e,4"eが形成されることになる。すなわち、小さ
い導管1"に対応する凸状部4"eは問題ないが、大きい
導管1'に対応する凸状部4'eの頂部に窪み4iが表れる
のである。この窪み4iは詰物5の中心部を浸透した腐
食液の腐食によるものである。もちろん、この形状は好
ましくない。
【0026】従って、本発明では、図7〜12に示した
基本的方法に、図16〜18で説明する改良を加えるこ
とにより、上記問題を解決している。上記問題は、露光
量を小さい導管1"に合わせたとき、大きい導管1'に対
応する濃淡分布曲線の中心部が極端に淡になることに起
因する。したがって、この事態を回避すればよい。そこ
でこの改良では、第1のマスクフィルム2に加えて、第
2のマスクフィルム6を併用するようにしている。この
第2マスクフィルム6では、その導管陰影部6aが一定
の小量光を均一に透過する濃度に調整されている。
【0027】ところで、マスクフィルムの導管陰影部の
濃度(写真濃度としての透過濃度)は、その周囲部が1.
8〜2.0、その中心部が0.6〜0.7程度になることが
好ましい。導管の幅寸法は、実際的には、大きいもので
0.8〜1.0mm、小さいもので0.3〜0.5mm程度
である。したがって、この導管寸法を考慮し、かつ、小
さい導管を基準とし、かつ、図16に示す露光工程にお
いてフィルム2と6とを併用することを考慮したとき、
第1マスクフィルム2の導管陰影部の中心部の濃度が
0.3〜0.4程度とすれば、第2マスクフィルム6の導
管陰影部の中心部の濃度を0.3程度に調整することが
好ましい。
【0028】さて、この改良方法においては、図16に
示すように、第1フィルム2と第2フィルム6をカーボ
ンティシュ3の光硬化層3a上に重ね合わせて光Lを露
光する。この場合、各導管陰影部2a,6a同志及び地部
2c,6c同志はそれぞれ一致している。そうすれば、こ
の場合には、第1および第2のマスクフィルム2,6を
全体として見れば、導管陰影部全体としては、第1フィ
ルム2の濃度分布2bが第2フィルム6の濃度分布6bに
より嵩上げされた状態となる。その嵩上げ状態の、大き
い導管陰影部(2b+6b)と小さい導管陰影部(2'b+
6'b)は図17に示すとおりである。図に明らかなよう
に、大きい導管1'に対応する導管陰影部(2b+6b)
の中心部も十分な濃度を有している。したがって、改良
方法で露出を行った場合は、凸状硬化部3cは図7で形
成されたもの(図16中一点鎖線で示す)よりも浅く形
成されることになる。このようにして、以下、図8〜1
2の処理を行えば、凸版部4'c,4"cを有する金属基板
4'を得ることができる(図18)。すなわち、大きい
導管1'に対応する凸版部4'cの上方の空間4gの深さt
も十分確保されているのである。したがって、この空間
4gに詰めた詰物5の中心部の厚みも十分保証されるこ
とになり、第2エッチング工程を実施したとしても、図
15に示したような不具合は生じない。
【0029】
【実施例】以下に、本発明の好ましい実施例を示す。
【0030】(1)第1マスクフィルム2 第1マスクフィルム2の導管陰影部2aの濃度は、小さ
い導管陰影部1"の濃度(写真濃度の透過濃度)が0.3
〜0.4程度になるように設定する。
【0031】(2)第2マスクフィルム6 第2マスクフィルム6の導管陰影部6aの濃度は、0.3
程度に設定する。
【0032】(3)露光工程 光源:水銀灯(4KW) 光源とカーボンティッシュとの間の距離:3〜4m 露光時間:4〜5分 ※一般のグラビア印刷版と異なり網目スクリーンは使用
しない。
【0033】(4)第1エッチング工程 腐食液は、一般のグラビア印刷版のエッチングに使用す
るものよりも濃度の高い39ボーメの塩化第2鉄溶液を
使用する。腐食液は、濃度が高い方がカーボンティッシ
ュ3への浸透性が弱く、腐食時間が長いという欠点はあ
るにしても、カーボンティッシュ3のプロフィールによ
り正確に対応した浸透深さが得られる。濃度の低い腐食
液を使用した場合には、得られるべき凸版部4cの頂部
が平坦となる欠点がある。
【0034】第1エッチングの終点は、多くの凸状硬化
部3cの中で最も高い部分の下方における金属基板4に
浸透する浸透深さが10〜15ミクロン程度になったと
きとする。この浸透深さは図11における空間4gの最
も浅いところに対応している。浸透深さがこれ以下であ
ると、詰物5を空間4gに安定して保持し難く、つまり
詰物が空間4gを完全に埋めつくせない。一方、浸透深
さがこれ以上であると、エッチング時間が長くなりす
ぎ、その結果凸版部4cの頂部が平坦になる傾向があ
る。
【0035】(5)詰物 オフセットインキ(溶剤で希釈したもの)ないしは常温
硬化性の樹脂を使用する。常温硬化性の樹脂を使用する
のは腐食液の浸透を阻止するレジスト効果を高めるため
である。
【0036】詰物を行う方法は、常温硬化性の樹脂の溶
液を図11の金属基板4の上面全面に塗布し余分の樹脂
をスクイージーでかき取り、空間4gにのみ完全に樹脂
を詰める方法を採用する。その後24時間室温で放置し
て樹脂を硬化させる。樹脂が完全に硬化した後に周囲凸
部4dのフラット面に付着している樹脂を砥石で研磨し
て除去して、空間4g以外の部分に樹脂の付着がないよ
うにする。
【0037】(6)第2エッチング工程 腐食液は第1エッチングと同様に39ボーメの濃い液を
使用してエッチングを行い、第1エッチングでエッチン
グされなかった空間4g以外の部分を除去する。第1エ
ッチングより遥かに広い面積をエッチングする必要があ
るため10分ぐらいの時間が必要である。
【0038】第1エッチングで形成された空間4g以外
の部分を完全に除去した後さらにエッチングを続行し
て、一番高い凸版部4cの頂部の高さが70〜80ミク
ロンになった時点でエッチングを停止する。
【0039】凸版部4cの高さが100ミクロン程度あ
る方がエンボス版としては好ましいのであるが、凸版部
4cの高さを高くするために長時間エッチングすると、
第1エッチングで形成された空間4gの一番浅い部分は
詰物によるレジスト膜の厚さが薄いのでエッチング液が
浸透するという事態が生じるため、山の頂部が平坦にな
り諧調が乏しくなってしまうという問題がある。
【0040】(7)詰物の除去 凸版部4cの頂部に残っている硬化性樹脂からなる詰物
を有機溶剤を使用してブラシにて拭き取り完全に除去す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 導管模様を有する天然木材の表面を示す平面
図である。
【図2】 図1の天然木材の導管を模式的に示す図であ
る。
【図3】 図1,2の天然導管の断面を示す説明図であ
る。
【図4】 本発明にかかる第1マスクフィルムの側面図
である。
【図5】 第1マスクフィルムの製造方法を示す図であ
る。
【図6】 図5における第1フィルム10の製造方法を
示す図である。
【図7】 本発明にかかる露光工程を示す断面図であ
る。
【図8】 本発明の製造方法において光硬化層と金属基
板とを積層した状態を示す断面図である。
【図9】 本発明における第1エッチング工程を示す図
である。
【図10】 上記第1エッチング工程及びその後の洗浄
工程の結果作られた基板を示す断面図である。
【図11】 本発明における第2エッチング工程を示す
図である。
【図12】 本発明の製造方法において形成された賦形
型を示す断面図である。
【図13】 図7〜12の原理的方法において使用する
第1マスクフィルムに生ずる大きい導管陰影部と小さい
導管陰影部の各濃淡分布曲線を示す図である。
【図14】 図13のマスクフィルムを使用して製作し
た金属基板を示す図である。
【図15】 図14の金属基板から製作される賦形型を
示す図である。
【図16】 本発明の改良製造方法における露光工程を
示す断面図である。
【図17】 図16の方法で露光する場合のマスクフィ
ルムの導管陰影部全体(大きい導管および小さい導管に
対応する各導管陰影部)の濃度分布を示す図である。
【図18】 図16の方法で露光工程を実施するととも
にそれ以後の一連の工程を実施した結果得られた金属基
板を示す図である。
【符号の説明】
1 導管 1a 周辺浅部 1b,1',1” 深部 2 マスクフィルム 2a,2'a,2"a 導管陰影部 2b 濃淡分布 2c 地部 3 カーボンティッ
シュ 3a 光硬化層 3b ベース紙 3c 凸状硬化部 3d 未硬化部 3e 周囲硬化部 4,4' 金属基板 4c,4'c,4"c 凸版部 4d 周囲凸部 4e,4'e,4"e 導管対応凸状部 4g 空間 4h 平坦部 4i 頂部 5 詰物 6 第2マスクフィ
ルム 6a 導管陰影部 6b 濃淡分布 6c
地部 10 第1フィルム 10a 導管陰影部 10c 地部 11 第2フィルム 11a 導管対応透明部 11c 地部 12 カメラ L 光 Q 腐食液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小島 広起 東京都新宿区市谷加賀町1丁目1番1号 大日本印刷株式会社内 (72)発明者 朴井 俊治 東京都新宿区市谷加賀町1丁目1番1号 大日本印刷株式会社内 (72)発明者 青田 良明 東京都新宿区市谷加賀町1丁目1番1号 大日本印刷株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−247670(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 1/00 101 B27M 3/00 B29C 59/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然導管(1)の深度の浅い部分から深い
    部分に対応して濃度が濃から淡に変化する導管陰影部
    (2a)を有しかつ導管陰影部(2a)以外の地部(2c)がほ
    ぼ透明である第1マスクフィルム(2)と、天然導管
    (1)に対応して均一な淡濃度の導管陰影部(6a)を
    有し、かつ導管陰影部(6a)以外の地部(6c)がほぼ
    透明である第2マスクフィルム(6)とを、両者の導管
    陰影部(2a,6a)が一致するように、重ね合わせ、こ
    れらのマスクフィルム(2,6)を通してカーボンティ
    ッシュの光硬化層(3a)に露光して、地部(2c,6c)に対
    応する部分を十分光硬化させて周囲硬化部(3e)を形成
    すると共に、導管陰影部(2a,6a)に対応する部分をそ
    の濃度に対応したプロフィールの深さで光硬化させて周
    囲硬化部(3e)に囲まれた凸状硬化部(3c)を形成する露
    光工程と、 露光済の光硬化層(3a)を金属基板(4)に貼合せて
    温湯にて光硬化層(3a)の凸状硬化部(3c)に隣接する未
    硬化部(3d)を除去する現像工程と、 次いで、光硬化層(3a)の上から腐食液(Q)を浸透させ
    るとともに、その下方の金属基板(4)に光硬化層の厚み
    形状に対応したプロフィールの深さに腐食液(Q)を浸透
    させて金属基板(4)の上層を腐食・除去することによ
    り、光硬化層(3a)の凹凸形状に対応する凹凸形状を転
    写して、光硬化層(3a)の周囲硬化部(3e)に対応する
    周囲凸部(4d)と該周囲凸部(4d)に囲まれる凸版部(4
    c)とを形成する第1エッチング工程と、 次いで、第1エッチング工程で作られた金属基板(4)の
    周囲凸部(4d)に囲まれかつ凸版部(4c)上部に位置す
    る空間(4g)に非浸透性詰物(5)を充填した上で、金属
    基板(4)にその上方より腐食液(Q)を浸透させて周囲凸
    部(4d)を腐食・除去して凸版部(4c)より低い平坦部
    (4h)を形成する第2エッチング工程とを含むことを特
    徴とする化粧板用賦形型の製造方法。
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