JP3273106B2 - 硬質炭素膜被覆部材およびその製造方法 - Google Patents
硬質炭素膜被覆部材およびその製造方法Info
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- JP3273106B2 JP3273106B2 JP23486494A JP23486494A JP3273106B2 JP 3273106 B2 JP3273106 B2 JP 3273106B2 JP 23486494 A JP23486494 A JP 23486494A JP 23486494 A JP23486494 A JP 23486494A JP 3273106 B2 JP3273106 B2 JP 3273106B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は摺動部材、切削工具類、
研磨材、耐摩耗性機械部品、光学部品、装飾品の保護膜
などに適した硬質炭素膜、例えばダイヤモンド膜または
ダイヤモンド状炭素膜などを基体表面に被覆してなる硬
質炭素膜被覆部材およびその製造方法に関するものであ
る。
研磨材、耐摩耗性機械部品、光学部品、装飾品の保護膜
などに適した硬質炭素膜、例えばダイヤモンド膜または
ダイヤモンド状炭素膜などを基体表面に被覆してなる硬
質炭素膜被覆部材およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは、硬度、耐摩耗性、固体
潤滑性、電気絶縁性、熱伝導性等に優れていることか
ら、例えば摺動部材、切削工具類、研磨材、耐摩耗性機
械部品、光学部品等の各種部材の被覆層や電気、電子材
料に利用されつつある。
潤滑性、電気絶縁性、熱伝導性等に優れていることか
ら、例えば摺動部材、切削工具類、研磨材、耐摩耗性機
械部品、光学部品等の各種部材の被覆層や電気、電子材
料に利用されつつある。
【0003】また近年、低圧下での気相成長法によるダ
イヤモンド膜等の硬質炭素膜の合成が可能となったた
め、ダイヤモンド膜は前述したような用途に対して需要
がさらに増加しつつある。また、気相成長法はダイヤモ
ンドを膜状に基体へコーテイングすることができるた
め、ダイヤモンドの硬さや透光性といった性質を利用し
て装飾品の保護膜としても利用されつつある。
イヤモンド膜等の硬質炭素膜の合成が可能となったた
め、ダイヤモンド膜は前述したような用途に対して需要
がさらに増加しつつある。また、気相成長法はダイヤモ
ンドを膜状に基体へコーテイングすることができるた
め、ダイヤモンドの硬さや透光性といった性質を利用し
て装飾品の保護膜としても利用されつつある。
【0004】しかし気相成長法により作製した硬質炭素
膜被覆部材は、膜自体は高硬度、低摩擦係数といった特
性を有するものの、膜の剥離などの理由から硬質炭素膜
の持つ高硬度及び低摩擦係数といった摺動部材や耐摩耗
性部材として優れた特性を発揮するには至っていない。
また、膜と基体との付着力が不充分であるため硬質炭素
膜表面の研磨加工が難しく、装飾品の保護膜として充分
な光沢を呈することができていない。
膜被覆部材は、膜自体は高硬度、低摩擦係数といった特
性を有するものの、膜の剥離などの理由から硬質炭素膜
の持つ高硬度及び低摩擦係数といった摺動部材や耐摩耗
性部材として優れた特性を発揮するには至っていない。
また、膜と基体との付着力が不充分であるため硬質炭素
膜表面の研磨加工が難しく、装飾品の保護膜として充分
な光沢を呈することができていない。
【0005】このような硬質炭素膜の基体からの剥離を
防止するために、様々な方法が提案されている。例え
ば、基体表面に凹凸を形成して密着性を向上させようと
する方法は、特開昭61−121859号公報や特開昭
62−226889号公報等に開示されており、これら
の公報には、基体を研磨剤粒子を分散した液中に浸し、
この分散液中に超音波を作用させて基体表面を研磨する
方法が提案されている。また、特開平2−217398
号公報では電解研磨を用いて基体の表面処理を施して付
着力の向上を図る方法が提案されている。
防止するために、様々な方法が提案されている。例え
ば、基体表面に凹凸を形成して密着性を向上させようと
する方法は、特開昭61−121859号公報や特開昭
62−226889号公報等に開示されており、これら
の公報には、基体を研磨剤粒子を分散した液中に浸し、
この分散液中に超音波を作用させて基体表面を研磨する
方法が提案されている。また、特開平2−217398
号公報では電解研磨を用いて基体の表面処理を施して付
着力の向上を図る方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記
のように基体表面の傷つけ処理を行って硬質炭素膜の密
着性を向上させようとする技術では、基体表面の傷が膜
成長に合致しないため、充分な密着性を得られていな
い。
のように基体表面の傷つけ処理を行って硬質炭素膜の密
着性を向上させようとする技術では、基体表面の傷が膜
成長に合致しないため、充分な密着性を得られていな
い。
【0007】また、基体にSiCの中間膜を形成し、次
いでダイヤモンド膜を形成する方法が、例えば、特開昭
63−286576号公報にて開示されている。ダイヤ
モンドの成長基体をSiCに置き換えることにより、基
体と硬質炭素膜との密着性はある程度向上するものの、
中間膜とダイヤモンド膜との密着性が未だ低いため、摺
動部材、耐摩耗性部材などに利用するには至っていな
い。
いでダイヤモンド膜を形成する方法が、例えば、特開昭
63−286576号公報にて開示されている。ダイヤ
モンドの成長基体をSiCに置き換えることにより、基
体と硬質炭素膜との密着性はある程度向上するものの、
中間膜とダイヤモンド膜との密着性が未だ低いため、摺
動部材、耐摩耗性部材などに利用するには至っていな
い。
【0008】即ち、このようなダイヤモンド以外の物質
を膜と基体との中間層として形成することにより基体と
ダイヤモンド膜との密着性を向上させようとする方法で
は、中間層と基体および中間層とダイヤモンド膜との密
着性の強さが、摺動部材、耐摩耗性部材等として充分に
利用できるほど強くなければ意味がないからである。
を膜と基体との中間層として形成することにより基体と
ダイヤモンド膜との密着性を向上させようとする方法で
は、中間層と基体および中間層とダイヤモンド膜との密
着性の強さが、摺動部材、耐摩耗性部材等として充分に
利用できるほど強くなければ意味がないからである。
【0009】
【問題点を解決するための手段】本発明者は上記問題点
に対して検討を重ねた結果、硬質炭素膜と基体との間
に、少なくともダイヤモンドと共有結合性の炭化物が混
在した中間層を形成するとともに、この中間層のダイヤ
モンドを島状に分布させ、中間層のダイヤモンドと硬質
炭素膜を連続せしめることにより、硬質炭素膜と基体と
の密着性を向上することができることを見い出し、本発
明に至った。
に対して検討を重ねた結果、硬質炭素膜と基体との間
に、少なくともダイヤモンドと共有結合性の炭化物が混
在した中間層を形成するとともに、この中間層のダイヤ
モンドを島状に分布させ、中間層のダイヤモンドと硬質
炭素膜を連続せしめることにより、硬質炭素膜と基体と
の密着性を向上することができることを見い出し、本発
明に至った。
【0010】本発明の硬質炭素膜被覆部材は、基体表面
に硬質炭素膜を被覆してなる硬質炭素膜被覆部材におい
て、前記硬質炭素膜と前記基体との間に、少なくとも島
状に分布するダイヤモンドと、炭化珪素または炭化ホウ
素を含有する中間層を配するともに、該中間層のダイヤ
モンドと、前記硬質炭素膜とが連続しているものであ
る。
に硬質炭素膜を被覆してなる硬質炭素膜被覆部材におい
て、前記硬質炭素膜と前記基体との間に、少なくとも島
状に分布するダイヤモンドと、炭化珪素または炭化ホウ
素を含有する中間層を配するともに、該中間層のダイヤ
モンドと、前記硬質炭素膜とが連続しているものであ
る。
【0011】このような硬質炭素膜被覆部材は、例え
ば、原料ガスとして、少なくとも水素と炭素含有ガスを
反応室内に導入し、気相成長法により、基板表面にダイ
ヤモンドを島状に析出させた後、さらに珪素含有ガスま
たはホウ素含有ガスを前記反応室内に導入することによ
りダイヤモンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を同時に
析出させて、前記基板表面に少なくともダイヤモンド
と、炭化珪素または炭化ホウ素を含有する中間層を形成
し、さらに前記珪素含有ガスまたはホウ素含有ガスの供
給を停止することにより、前記中間層表面に、該中間層
のダイヤモンドと連続する硬質炭素膜を形成することに
より製造される。
ば、原料ガスとして、少なくとも水素と炭素含有ガスを
反応室内に導入し、気相成長法により、基板表面にダイ
ヤモンドを島状に析出させた後、さらに珪素含有ガスま
たはホウ素含有ガスを前記反応室内に導入することによ
りダイヤモンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を同時に
析出させて、前記基板表面に少なくともダイヤモンド
と、炭化珪素または炭化ホウ素を含有する中間層を形成
し、さらに前記珪素含有ガスまたはホウ素含有ガスの供
給を停止することにより、前記中間層表面に、該中間層
のダイヤモンドと連続する硬質炭素膜を形成することに
より製造される。
【0012】本発明に用いられる基体としては、Si
C,Si3 N4 ,AlN,Al2 O3,ZrO2 等のセ
ラミックス,超硬合金,Mo,W,Tiなどの金属類か
らなるものが用いられるが、特に熱膨張率の点からSi
C,Si3 N4 ,超硬合金,AlN,Mo,Wが望まし
い。
C,Si3 N4 ,AlN,Al2 O3,ZrO2 等のセ
ラミックス,超硬合金,Mo,W,Tiなどの金属類か
らなるものが用いられるが、特に熱膨張率の点からSi
C,Si3 N4 ,超硬合金,AlN,Mo,Wが望まし
い。
【0013】硬質炭素膜としては、ダイヤモンド,アモ
ルファスカーボン等がある。
ルファスカーボン等がある。
【0014】本発明における中間層としては、ダイヤモ
ンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を含有するものであ
る。この中間層の厚みとしては、0.1〜2.0μm、
特に、0.2〜1.0μmが望ましい。本発明の硬質炭
素膜被覆部材における中間層は、図1に示すように、ダ
イヤモンド1が基体2表面に島状に分布しており、この
状態でダイヤモンドが成長し、その回りが炭化珪素また
は炭化ホウ素となっている。ダイヤモンド1は硬質炭素
膜3と連続している。尚、符号4は炭化珪素または炭化
ホウ素を示す。
ンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を含有するものであ
る。この中間層の厚みとしては、0.1〜2.0μm、
特に、0.2〜1.0μmが望ましい。本発明の硬質炭
素膜被覆部材における中間層は、図1に示すように、ダ
イヤモンド1が基体2表面に島状に分布しており、この
状態でダイヤモンドが成長し、その回りが炭化珪素また
は炭化ホウ素となっている。ダイヤモンド1は硬質炭素
膜3と連続している。尚、符号4は炭化珪素または炭化
ホウ素を示す。
【0015】前記炭素含有ガスとしては、例えば、メタ
ン,エタン,プロパンなどのアルカン類、エチレン,プ
ロピレンなどのアルケン類、アセチレンなどのアルキン
類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類、シクロプロパン
などのシクロパラフィン類、シクロペンテンなどのシク
ロオレフィン類などが挙げられる。また一酸化炭素、二
酸化炭素,メチルアルコール,エチルアルコール,アセ
トンなどの含酸素炭素化合物、モノ(ジ、トリ)メチル
アミン、モノ(ジ、トリ)エチルアミンなどの含窒素炭
素化合物なども炭素源ガスとして使用することができ
る。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以
上で併用することもできる。
ン,エタン,プロパンなどのアルカン類、エチレン,プ
ロピレンなどのアルケン類、アセチレンなどのアルキン
類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類、シクロプロパン
などのシクロパラフィン類、シクロペンテンなどのシク
ロオレフィン類などが挙げられる。また一酸化炭素、二
酸化炭素,メチルアルコール,エチルアルコール,アセ
トンなどの含酸素炭素化合物、モノ(ジ、トリ)メチル
アミン、モノ(ジ、トリ)エチルアミンなどの含窒素炭
素化合物なども炭素源ガスとして使用することができ
る。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以
上で併用することもできる。
【0016】前記珪素含有ガスとしては、四フッ化ケイ
素,四塩化ケイ素,四臭化ケイ素などのハロゲン化物、
二酸化ケイ素などの酸化物の他に、モノ(ジ,トリ,テ
トラ,ペンタ)シラン,モノ(ジ,トリ,テトラ)メチ
ルシランなどのシラン化合物、トリメチルシラノールな
どのシラノール化合物などが挙げられる。
素,四塩化ケイ素,四臭化ケイ素などのハロゲン化物、
二酸化ケイ素などの酸化物の他に、モノ(ジ,トリ,テ
トラ,ペンタ)シラン,モノ(ジ,トリ,テトラ)メチ
ルシランなどのシラン化合物、トリメチルシラノールな
どのシラノール化合物などが挙げられる。
【0017】前記ホウ素含有ガスとしては、ジボラン,
テトラボランなどのボラン、メチルジボラン,ジメチル
ジボランなどのボラン誘導体、三フッ化ホウ素,三塩化
ホウ素などのハロゲン化ホウ素、ホウ酸などの酸素含有
ホウ素などが挙げられる。これらは一種単独で用いるこ
ともできるし、二種以上で併用することもできる。
テトラボランなどのボラン、メチルジボラン,ジメチル
ジボランなどのボラン誘導体、三フッ化ホウ素,三塩化
ホウ素などのハロゲン化ホウ素、ホウ酸などの酸素含有
ホウ素などが挙げられる。これらは一種単独で用いるこ
ともできるし、二種以上で併用することもできる。
【0018】
【作用】本発明の硬質炭素膜被覆部材では、少なくとも
ダイヤモンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を含有する
中間層を形成したが、このような膜構成により硬質炭素
膜と基体との密着性が向上する理由は次のように考えら
れる。
ダイヤモンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を含有する
中間層を形成したが、このような膜構成により硬質炭素
膜と基体との密着性が向上する理由は次のように考えら
れる。
【0019】即ち、原子同士は電子を介在することによ
り結合されているが、一般に、原子間の電子が一方に存
在して電気的な結び付きにより結合しているイオン結合
よりも、電子を双方の原子で共有している共有結合の方
が強い結合力を持つ。ダイヤモンドは炭素の共有結合に
より構成されているので強い結合力を有している。従っ
て、ダイヤモンドと異種化合物との密着性を向上させる
ためには、類似の結合様式である共有結合性の化合物で
あることが望ましいと考えられる。またダイヤモンドの
成分である炭素を含む化合物の方がより整合性がよいと
思われる。炭素化合物は数多く存在するが、その多くは
イオン性結合を主体としたものである。共有結合性炭化
物としては炭化珪素と炭化ホウ素が挙げられる。これら
の化合物とダイヤモンドが混在する層を硬質炭素膜と基
体との間に形成することにより、硬質炭素膜と基体との
密着性が向上する。
り結合されているが、一般に、原子間の電子が一方に存
在して電気的な結び付きにより結合しているイオン結合
よりも、電子を双方の原子で共有している共有結合の方
が強い結合力を持つ。ダイヤモンドは炭素の共有結合に
より構成されているので強い結合力を有している。従っ
て、ダイヤモンドと異種化合物との密着性を向上させる
ためには、類似の結合様式である共有結合性の化合物で
あることが望ましいと考えられる。またダイヤモンドの
成分である炭素を含む化合物の方がより整合性がよいと
思われる。炭素化合物は数多く存在するが、その多くは
イオン性結合を主体としたものである。共有結合性炭化
物としては炭化珪素と炭化ホウ素が挙げられる。これら
の化合物とダイヤモンドが混在する層を硬質炭素膜と基
体との間に形成することにより、硬質炭素膜と基体との
密着性が向上する。
【0020】また、ダイヤモンドと、炭化珪素または炭
化ホウ素は分離して存在しているのではなく、ダイヤモ
ンドの周りを炭化珪素,炭化ホウ素が取り囲むような構
造、即ち、図1に示すように、ダイヤモンドが基体表面
に島状に分布することにより、いわゆるアンカー効果が
期待でき、硬質炭素膜と基体との密着性が向上する。
化ホウ素は分離して存在しているのではなく、ダイヤモ
ンドの周りを炭化珪素,炭化ホウ素が取り囲むような構
造、即ち、図1に示すように、ダイヤモンドが基体表面
に島状に分布することにより、いわゆるアンカー効果が
期待でき、硬質炭素膜と基体との密着性が向上する。
【0021】また、本発明の硬質炭素膜被覆部材は、気
相成長法において、基体の設置された反応室内に、原料
ガスとして水素と炭素含有ガスを導入してダイヤモンド
を基体表面に生成させた後、さらに反応室内に珪素含有
ガスまたはホウ素含有ガスを導入してダイヤモンドを成
長させるとともに、このダイヤモンドの回りに炭化珪素
または炭化ホウ素を析出させて中間層を形成し、さら
に、珪素含有ガスまたはホウ素含有ガスの供給を停止す
ることにより中間層の表面に硬質炭素膜を形成すること
ができる。このようにガスの供給量をコントロールする
だけで本発明の硬質炭素膜被覆部材を合成することがで
きるので、生産性も従来と変わらずに密着性のよい部材
を提供することができる。本発明では、特に、中間層を
形成する際に、先ず島状のダイヤモンドを生成させるこ
とに特徴がある。
相成長法において、基体の設置された反応室内に、原料
ガスとして水素と炭素含有ガスを導入してダイヤモンド
を基体表面に生成させた後、さらに反応室内に珪素含有
ガスまたはホウ素含有ガスを導入してダイヤモンドを成
長させるとともに、このダイヤモンドの回りに炭化珪素
または炭化ホウ素を析出させて中間層を形成し、さら
に、珪素含有ガスまたはホウ素含有ガスの供給を停止す
ることにより中間層の表面に硬質炭素膜を形成すること
ができる。このようにガスの供給量をコントロールする
だけで本発明の硬質炭素膜被覆部材を合成することがで
きるので、生産性も従来と変わらずに密着性のよい部材
を提供することができる。本発明では、特に、中間層を
形成する際に、先ず島状のダイヤモンドを生成させるこ
とに特徴がある。
【0022】さらに、中間層を形成する際に、水素と炭
素含有ガス並びに珪素含有ガスまたはホウ素含有ガスを
反応炉内に導入するが、珪素含有ガスまたはホウ素含有
ガスの量を、時間の経過とともに減少させることによ
り、ダイヤモンド相の占める割合が次第に多くし、表面
の硬質炭素膜との付着を向上することができる。
素含有ガス並びに珪素含有ガスまたはホウ素含有ガスを
反応炉内に導入するが、珪素含有ガスまたはホウ素含有
ガスの量を、時間の経過とともに減少させることによ
り、ダイヤモンド相の占める割合が次第に多くし、表面
の硬質炭素膜との付着を向上することができる。
【0023】
【実施例】反応炉内にSi3 N4 を主成分とし、Y2 O
3 を2重量%,Al2 O3 を5重量%含有する焼結体か
らなる基板を収容するとともに、表1に示すような種
類,流量の原料ガスを反応炉内に導入して、反応室内圧
力を0.3Torrに設定した。ECRプラズマCVD
法により最大2Kガウスの強度の磁場を印加させ、マイ
クロ波出力3.5kWの条件で成膜を行った。成膜時の
原料ガス流量及び圧力を表1に示したように成膜時間の
経過とともに変化させた。このようにして作製した試料
を本発明試料1Aとする。
3 を2重量%,Al2 O3 を5重量%含有する焼結体か
らなる基板を収容するとともに、表1に示すような種
類,流量の原料ガスを反応炉内に導入して、反応室内圧
力を0.3Torrに設定した。ECRプラズマCVD
法により最大2Kガウスの強度の磁場を印加させ、マイ
クロ波出力3.5kWの条件で成膜を行った。成膜時の
原料ガス流量及び圧力を表1に示したように成膜時間の
経過とともに変化させた。このようにして作製した試料
を本発明試料1Aとする。
【0024】
【表1】
【0025】また、基体を超硬合金,モリブデン,チタ
ンに代えて、同様の手法でコーテイングを行った。得ら
れた硬質炭素膜被覆部材をそれぞれ、本発明試料2A,
3A,4Aとする。また成膜時の原料ガスの種類、流量
及び圧力を成膜時間経過とともに表2のようにして、試
料2A,3A,4Aと同様の手法で作製した試料を、本
発明試料1B,2B,3B,4Bとする。
ンに代えて、同様の手法でコーテイングを行った。得ら
れた硬質炭素膜被覆部材をそれぞれ、本発明試料2A,
3A,4Aとする。また成膜時の原料ガスの種類、流量
及び圧力を成膜時間経過とともに表2のようにして、試
料2A,3A,4Aと同様の手法で作製した試料を、本
発明試料1B,2B,3B,4Bとする。
【0026】
【表2】
【0027】得られた膜をX線回折により分析した結
果、本発明試料Aグループではいずれの膜もダイヤモン
ドと炭化珪素の存在が、本発明試料Bグループではいず
れの膜もダイヤモンドと炭化ホウ素の存在が確認され
た。膜厚はいずれのサンプルも 6μmであった。
果、本発明試料Aグループではいずれの膜もダイヤモン
ドと炭化珪素の存在が、本発明試料Bグループではいず
れの膜もダイヤモンドと炭化ホウ素の存在が確認され
た。膜厚はいずれのサンプルも 6μmであった。
【0028】また珪素源またはホウ素源となるガスを導
入せずに、表1に記載するような原料ガスで作製した試
料をそれぞれ比較試料1C,2C,3C,4Cとする。
入せずに、表1に記載するような原料ガスで作製した試
料をそれぞれ比較試料1C,2C,3C,4Cとする。
【0029】本発明の硬質炭素膜被覆部材である試料A
グループおよび試料Bグループでは、図1に示したよう
に、タイヤモンドが基体に島状に析出していることをT
EM(透過電子顕微鏡)により確認した。
グループおよび試料Bグループでは、図1に示したよう
に、タイヤモンドが基体に島状に析出していることをT
EM(透過電子顕微鏡)により確認した。
【0030】得られた硬質炭素膜被覆部材に対して、被
覆部材の摺動特性(ディスクの比摩耗量、摩擦係数)を
ピンオンディスク法により評価した。摺動試験の条件
は、室温、大気中、無潤滑において、荷重39.2N、
摺動速度2m/sec、24時間で行った。ピンはアル
ミニウム製のものを用いた。ビッカース硬度計を用い
て、膜に荷重をかけて基体表面から膜を浮かせ、膜に剥
離が生じはじめた荷重(臨界荷重)を測定し、膜と基体
との付着力を評価した。結果を表3に示す。
覆部材の摺動特性(ディスクの比摩耗量、摩擦係数)を
ピンオンディスク法により評価した。摺動試験の条件
は、室温、大気中、無潤滑において、荷重39.2N、
摺動速度2m/sec、24時間で行った。ピンはアル
ミニウム製のものを用いた。ビッカース硬度計を用い
て、膜に荷重をかけて基体表面から膜を浮かせ、膜に剥
離が生じはじめた荷重(臨界荷重)を測定し、膜と基体
との付着力を評価した。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】表3において比較試料Cグループはいずれ
も摺動試験開始後一時間以内で膜の剥離が生じたので、
途中で試験を中止した。膜の剥離が生じたことから摺動
部材としては膜と基板との密着性が充分でないことが判
る。また臨界荷重も本発明試料に比べてきわめて低い値
である。本発明試料A,Bグループはいずれも摺動試験
において剥離は起こらず、ディスクの比摩耗量もきわめ
て低い。以上の結果から本発明試料が耐摩耗性及び摺動
特性に優れ、さらに、基体と硬質炭素膜との付着性が優
れていることがわかる。尚、Dグループでは、表1およ
び表2において0〜1時間のダイヤモンドの析出工程を
除いた場合であり、Dグループでは、中間層としてダイ
ヤモンドと炭化珪素または炭化ホウ素とを含有するが、
ダイヤモンドが島状に分布しておらず、この場合には基
板の密着性が充分ではなく、また比摩耗量もきわめて多
いことが判る。
も摺動試験開始後一時間以内で膜の剥離が生じたので、
途中で試験を中止した。膜の剥離が生じたことから摺動
部材としては膜と基板との密着性が充分でないことが判
る。また臨界荷重も本発明試料に比べてきわめて低い値
である。本発明試料A,Bグループはいずれも摺動試験
において剥離は起こらず、ディスクの比摩耗量もきわめ
て低い。以上の結果から本発明試料が耐摩耗性及び摺動
特性に優れ、さらに、基体と硬質炭素膜との付着性が優
れていることがわかる。尚、Dグループでは、表1およ
び表2において0〜1時間のダイヤモンドの析出工程を
除いた場合であり、Dグループでは、中間層としてダイ
ヤモンドと炭化珪素または炭化ホウ素とを含有するが、
ダイヤモンドが島状に分布しておらず、この場合には基
板の密着性が充分ではなく、また比摩耗量もきわめて多
いことが判る。
【0033】
【発明の効果】以上、詳述したように本発明の硬質炭素
膜被覆部材は硬質炭素膜と基体との付着力に優れ、また
膜自体が耐摩耗性に優れていることから、摺動部材、耐
摩耗性部材等に適していることが判る。また本発明は付
着力に優れていることから硬質炭素膜の表面の研磨を容
易に行うことができ、表面研磨により得られる硬質炭素
膜表面は、硬度と光沢の良さから装飾品の保護膜として
利用できる。製法上においても硬質炭素膜形成工程以外
に格別な工程を必要としないために生産性も優れる。
膜被覆部材は硬質炭素膜と基体との付着力に優れ、また
膜自体が耐摩耗性に優れていることから、摺動部材、耐
摩耗性部材等に適していることが判る。また本発明は付
着力に優れていることから硬質炭素膜の表面の研磨を容
易に行うことができ、表面研磨により得られる硬質炭素
膜表面は、硬度と光沢の良さから装飾品の保護膜として
利用できる。製法上においても硬質炭素膜形成工程以外
に格別な工程を必要としないために生産性も優れる。
【図1】本発明の硬質炭素膜被覆部材の縦断面図を示
す。
す。
1・・・ダイヤモンド 2・・・基体 3・・・硬質炭素膜 4・・・炭化珪素,炭化ホウ素
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F16C 33/24 F16C 33/24 A
Claims (2)
- 【請求項1】基体表面に硬質炭素膜を被覆してなる硬質
炭素膜被覆部材において、前記硬質炭素膜と前記基体と
の間に、少なくとも島状に分布するダイヤモンドと、炭
化珪素または炭化ホウ素を含有する中間層を配するとも
に、該中間層のダイヤモンドと、前記硬質炭素膜とが連
続していることを特徴とする硬質炭素膜被覆部材。 - 【請求項2】原料ガスとして、少なくとも水素と炭素含
有ガスを反応室内に導入し、気相成長法により基板表面
にダイヤモンドを島状に析出させた後、さらに珪素含有
ガスまたはホウ素含有ガスを前記反応室内に導入するこ
とによりダイヤモンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を
同時に析出させて、前記基板表面に少なくともダイヤモ
ンドと、炭化珪素または炭化ホウ素を含有する中間層を
形成し、さらに前記珪素含有ガスまたはホウ素含有ガス
の供給を停止することにより、前記中間層表面に、該中
間層のダイヤモンドと連続する硬質炭素膜を形成するこ
とを特徴とする硬質炭素膜被覆部材の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP23486494A JP3273106B2 (ja) | 1994-09-29 | 1994-09-29 | 硬質炭素膜被覆部材およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP23486494A JP3273106B2 (ja) | 1994-09-29 | 1994-09-29 | 硬質炭素膜被覆部材およびその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0892744A JPH0892744A (ja) | 1996-04-09 |
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