JPH1015952A - 樹脂加工用部材 - Google Patents

樹脂加工用部材

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JPH1015952A
JPH1015952A JP16953396A JP16953396A JPH1015952A JP H1015952 A JPH1015952 A JP H1015952A JP 16953396 A JP16953396 A JP 16953396A JP 16953396 A JP16953396 A JP 16953396A JP H1015952 A JPH1015952 A JP H1015952A
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JP
Japan
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film
hard carbon
diamond
carbon film
resin
Prior art date
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Application number
JP16953396A
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English (en)
Inventor
Shigeo Atsunushi
成生 厚主
Fumio Fukumaru
文雄 福丸
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Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】成膜後の表面平滑性に優れ、耐摩耗性を損なう
ことなく、樹脂との接触において優れた耐溶着性、離型
性を有する長寿命の加工用部材を提供する。 【解決手段】樹脂と接する表面に硬質炭素膜を被覆して
なる加工用部材であって、前記硬質炭素膜として、ラマ
ン分光スペクトルにおいて1340±40cm-1と11
60±40cm-1にピークが存在し、且つ1160±4
0cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク
強度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークの
うち最も強度の強いピーク強度をH2 とした時、H1
2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2のダイヤ
モンドを主とする硬質炭素膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネイ
ト、ポリブタジエン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、
ABS樹脂、メタクリル樹脂、EVA樹脂、フェノール
樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂、ナイロン、ゴムな
どの樹脂を所定形状に成形するための型材や、切削加工
等の各種加工に使用される部材に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来より、樹脂などの素材を所定の形状に
加工するために用いられる部材、例えば、樹脂を所定形
状の型材に流し加熱下で圧力を印加して成形するのに用
いられる型材や加圧部材、また樹脂を切削加工または切
断加工して所定形状に加工するのに用いられる工具や切
断刃物としては、一般に鋼が用いられており、昨今で
は、アルミニウム合金や超硬合金なども使われるように
なってきた。
【0003】樹脂の加工も、量産化に伴い加工速度が速
くなるにつれ加工用部材にはさらに高い耐久性が要求さ
れる。その場合、加工用部材には、耐摩耗性、樹脂の耐
溶着性、離型性等の特性が要求される。特に、耐摩耗性
の点では、鋼や超硬合金の表面にAl2 3 などのセラ
ミックスからなる硬質な膜を形成することも行われてい
る。
【0004】一方、近年に至り、Al2 3 などのセラ
ミック膜よりもさらに高硬度の膜として、CVD法等に
より形成されるダイヤモンド膜が注目されており、その
優れた耐摩耗性から各種応用が進められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Al2
3 などのセラミックスからなる硬質膜は、CVD法等
により形成されるが、これらのセラミック膜は、結晶粒
子が1μm以上と大きく、その成膜された表面には凹凸
が存在し、この凹凸によって樹脂が溶着する等の問題が
あった。そのために、成膜された表面を研磨加工して表
面を平滑化する必要があった。
【0006】また、ダイヤモンド膜は、通常マイクロ波
CVD法等の気相成長法により成膜されるものであり、
膜自体はダイヤモンド粒による多結晶体から構成される
ものであり、その膜の表面硬度は10,000以上の硬
度を有するものであり、セラミック膜よりもさらに優れ
た耐摩耗性を有する。
【0007】しかしながら、従来のダイヤモンド膜も、
膜表面にダイヤモンド粒による1〜20μmの凹凸が存
在し、これにより樹脂と接触する際に、樹脂成分が表面
に溶着したり、樹脂との離型性に劣るという問題があ
り、ダイヤモンド膜の優れた耐摩耗性を発揮できないと
いう問題があった。しかもダイヤモンド膜の場合、高硬
度であるために研磨加工が難しく、ダイヤモンド砥石を
用いて研磨しても長時間を要したり、あるいは過度の研
磨を行うとダイヤモンド膜が剥離する等の問題があっ
た。
【0008】また、表面の凹凸に加え従来のダイヤモン
ド膜中には、ダイヤモンド結晶粒間に多数のボイドが存
在し、徐々に摩耗が進むにつれ膜表面にボイドが露出
し、樹脂の溶着や離型不良が発生し、加工品の仕上げ面
不良を生じるという問題があった。
【0009】このような問題に対しては、基体の表面に
ダイヤモンド層を介してダイヤモンド状カーボン膜を形
成して膜表面のボイドを無くしたり(特開平3−283
73号公報)、工具の刃先すくい面をダイヤモンドとグ
ラファイトで構成される硬質炭素膜を形成して表面の平
滑性と摺動性を高める(特開平5ー277807号公
報)などが提案されている。また、ダイヤモンド膜の研
磨方法として、例えば、ダイヤモンド膜と金属体とを接
触させ非酸化性雰囲気中で加熱し、摺動させる方法(特
開昭63ー144940号公報)、ダイヤモンド膜を加
熱下で流動性金属と接触させる方法(特開平2ー160
700号公報)などが提案されている。
【0010】しかしながら、上記の先行技術によれば、
膜質をダイヤモンド中にグラファイトやダイヤモンド状
カーボンなどを混入させる場合、ダイヤモンド膜そのも
のの硬度が低下しダイヤモンドの優れた特性が発揮され
ないという問題があった。また、研磨方法として金属体
と接触させて加熱する方法では、研磨するための装置が
複雑になり、生産性に劣るという問題があった。
【0011】したがって、本発明の目的は、成膜後の表
面平滑性に優れ、耐摩耗性を損なうことなく、樹脂との
接触においても優れた耐溶着性および離型性を有する長
寿命の加工用部材を提供することを目的とするものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するための方法について検討を重ねた結果、樹脂
を加工するための部材であって、該加工部材の前記樹脂
または前記ゴムに接する部材表面に、ラマン分光スペク
トルにおいて1160±40cm-1と1340±40c
-1にピークが存在する硬質炭素膜を形成すると、極め
て優れた耐摩耗性を有し、しかも緻密性と表面平滑性に
優れるために摩擦係数が小さく、樹脂との接触による溶
着や離型不良の発生のない優れた加工用部材が得られる
ことを見出し本発明に至った。
【0013】即ち、本発明の樹脂加工用部材は、樹脂に
接する部材表面に、ラマン分光スペクトルにおいて13
40±40cm-1と1160±40cm-1にピークが存
在し、且つ1160±40cm-1に存在するピークのう
ち最も強度の強いピーク強度をH1 、1340±40c
-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度
をH2 とした時、H1 /H2 で表されるピーク強度比が
0.05乃至2の硬質炭素膜を被覆したことを特徴とす
るものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明における加工用部材は、樹
脂と接する加工用部材表面に、ラマン分光分析のスペク
トルチャートにおいて1160±40cm-1と1340
±40cm-1にピークが存在する硬質炭素膜を形成した
ものである。
【0015】一般に知られるダイヤモンド膜は、炭素原
子間がSP3 混成で結合された構造からなり、ラマン分
光スペクトルにおいて、1340±40cm-1にのみピ
ークを有するものであり、場合によってSP2 混成で結
合されたグラファイト構造の炭素等を含む場合は、15
00〜1600cm-1付近にブロードなピークを有する
ものである。
【0016】これに対して、本発明における硬質炭素膜
は、1340±40cm-1に加え、1160±40cm
-1にピークを有するものである。この1160±40c
-1のピークは、ダイヤモンド構造からなるものの、微
細な結晶のダイヤモンド粒子からなるためにその結晶の
周期が短いことを意味するものと考えられる。従って、
本発明における硬質炭素膜は、ダイヤモンド結晶が極め
て微細な粒子により構成されるものであり、そのために
従来のようなダイヤモンド結晶自形による凹凸がなく成
膜された表面はボイドもなく非常に平滑性に優れてい
る。なお、この硬質炭素膜中には、本発明の効果に影響
を及ぼさない範囲の微量でグラファイト構造を含んでい
てもよい。
【0017】よって、上記硬質炭素膜を加工用部材表面
に形成する場合において、あらゆる形状の母材の表面に
形成しても、母材表面形状に整合した平滑で緻密な膜面
を形成できるため、母材表面を所望の平滑面に仕上げて
おくことにより、母材表面形状に合致した平滑性に優れ
た硬質炭素膜を形成することができる。仮に、膜表面を
研磨する必要がある時も従来のダイヤモンド膜に比較し
てわずかな研磨で平滑なボイドのない膜面を形成でき
る。
【0018】例えば、表面粗さの小さい平滑な成形面を
有する成形金型の成形面にこの硬質炭素膜を形成する
と、高硬度で表面欠陥のない成形面が得られるため、耐
摩耗性に優れ、摩擦係数が小さく、離型性も優れるた
め、再現よく、所望の樹脂成形品を得ることができる。
また、切削加工等において、工具の一部が樹脂と摺動す
る場合、その摺動部を平滑化して上記硬質炭素膜を形成
すると、高速な摺動においても耐摩耗性に優れ、樹脂の
凝着がない。また、樹脂の切削加工用部材の刃先に該硬
質炭素膜を形成すると、高硬度で表面欠陥のない刃先が
得られるため、切削性能を劣化させることがない。
【0019】本発明における硬質炭素膜のラマン分光ス
ペクトルにおける1160±40cm-1のピーク強度に
ついて具体的に説明する。図1に示すように得られたラ
マンスペクトルの曲線において、1100cm-1と17
00cm-1の位置間で斜線を引き、これをベースライン
として、1160±40cm-1に存在するピークのうち
最も強度の高いピーク強度をH1 、1340±40cm
-1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度を
2 とする。このときH1 /H2 で表されるピーク強度
比が0.05乃至2であることが重要である。
【0020】このピーク強度比が小さすぎると、ダイヤ
モンド結晶粒子が大きく成長し過ぎ、膜中にボイドが発
生したり膜の表面粗さが大きくなり、耐摩耗性が低下し
たり樹脂の溶着や仕上げ面不良が発生しやすくなる。ま
た、ピーク強度比が大きすぎると非晶質ダイヤモンドの
存在が増加し、硬質炭素膜自体の硬度が低下し耐摩耗性
が低下する場合がある。このピーク強度比は0.1乃至
1.0であることが望ましい。
【0021】本発明における加工用部材によれば、上記
硬質炭素膜は、所定の加工用部材母材表面に被覆された
ものであることが望ましい。その場合、硬質炭素膜は、
母材との密着性が高いことが要求される。硬質炭素膜を
形成し得る母材材種としては、例えば、窒化ケイ素、炭
化ケイ素、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス、
チタン合金、超硬合金、サーメット、ステンレス鋼など
の金属が挙げられる。
【0022】これらの中でも加工用部材母材として適当
な強度を必要とするために、WC基超硬合金、サーメッ
トまたは窒化ケイ素を主とする焼結体、チタン合金から
なることが最も望ましい。
【0023】また、本発明によれば、硬質炭素膜の母材
との密着性を高める上で、母材表面と硬質炭素膜との間
に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物との複合体か
らなる中間層を介在させることにより、極めて密着性の
良い硬質炭素膜を形成することができる。
【0024】このような中間層の介在によって硬質炭素
膜と母材との密着強度が向上する理由は次のように考え
られる。原子同士は電子を介在することにより結合され
ているが、一般に、原子間の電子が一方に存在して電気
的な結び付きにより結合しているイオン結合よりも、電
子を双方の原子で共有している共有結合の方が強い結合
力を持つ。ダイヤモンドは炭素の共有結合により構成さ
れているので強い結合力を有している。したがって、ダ
イヤモンドと異種化合物との密着強度を向上させるため
には類似の結合様式である共有結合性の化合物であるこ
とが望ましいと考えられる。またダイヤモンドの成分で
ある炭素を含む化合物の方がより整合性がよいと思われ
る。金属炭化物は数多く存在するがその多くはイオン性
結合を主体としたものである。共有結合性炭化物として
は炭化ケイ素や炭化ホウ素があるが、本発明の加工用部
材においては炭化ケイ素が最も望ましい。
【0025】このような金属炭化物とダイヤモンドが混
在する中間層を硬質炭素膜と母材との間に形成すること
により、硬質炭素膜と母材との密着強度が向上する。ま
たこのダイヤモンドと、金属炭化物は層分離して存在し
ているのではなく、ダイヤモンドの周りを金属炭化物が
取り囲むような構造を呈し、ダイヤモンドが島状に分布
した構造となるためにいわゆるアンカー効果によっても
密着性が向上する。
【0026】従来より炭素膜を生成する手段としては、
マイクロ波や高周波によりプラズマを発生させて所定の
基体表面に炭素膜を形成する、いわゆるプラズマCVD
法あるいは熱フィラメント法が主流である。しかしなが
ら、プラズマCVD法では、プラズマ発生領域が小さい
ために、成膜できる面積が小さく、成膜できる面積が一
般に直径20mm程度であり、加工用部材としての応用
が限られる。また圧力が高すぎるか、もしくはプラズマ
密度が低すぎるために基体が複雑な構造を有する場合や
曲面構造を有する場合、その構造に沿った均一なプラズ
マが得られず、膜厚分布が不均一になりやすい。一方、
熱フィラメントCVD法では、フィラメントが切れやす
く、また膜厚のバラツキを抑制するために母材の形状に
合わせてフィラメントを設置する必要があり、装置が汎
用性に欠けるなどの欠点を有している。
【0027】これに対して、プラズマCVD法における
プラズマ発生領域に磁界をかけた、いわゆる電子サイク
ロトロン共鳴プラズマCVD法によれば、低圧下(1t
orr以下)で高密度のプラズマを得ることができるた
めに、プラズマを広い領域に均一に発生させることがで
き、通常のプラズマCVD法に比較して約10倍程度の
面積に均一に膜の形成を行うことができる。
【0028】よって、ここでは、電子サイクロトロン共
鳴プラズマCVD法(ECRプラズマCVD法)を例に
とって説明する。この方法では、内部に所定の母材が設
置された反応炉内に反応ガスを導入すると同時に2.4
5GHzのマイクロ波を導入する。それと同時にこの領
域に対して875ガウス以上のレベルの磁界を印加す
る。これにより電子はサイクロトロン周波数f=eB/
2πm(但し,m:電子の質量、e:電子の電荷,B:
磁束密度)にもとづきサイクロトロン運動を起こす。こ
の周波数がマイクロ波の周波数(2.45GHz)と一
致すると共鳴し、電子はマイクロ波のエネルギーを著し
く吸収して加速され、中性分子に衝突、電離を生じせし
めて高密度のプラズマを生成するようになる。この時の
母材の温度は150〜1000℃、炉内圧力1×10-2
〜1torrに設定される。
【0029】かかる方法によれば、成膜時の母材温度、
炉内圧力および反応ガス濃度を変化させることにより成
膜される硬質炭素膜の成分等が変化する。具体的には、
炉内圧力が高くなるとプラズマの領域が小さくなり、膜
の成長速度が下がるが結晶性は向上する傾向にある。ま
た、反応ガス濃度が高くなると、膜を構成する粒子の大
きさが小さくなり、結晶性が悪くなる傾向にある。これ
らの条件を具体的には後述する実施例に記載されるよう
に適宜制御することにより、前述したH1 /H2 比を制
御することができる。
【0030】上記の成膜方法において、本発明の加工用
部材を作製する場合、硬質炭素膜は、原料ガスとして水
素と、炭素含有ガスを用いる。用いる炭素含有ガスとし
ては、例えば、メタン、エタン、プロパンなどのアルカ
ン類、エチレン、プロピレンなどのアルケン類、アセチ
レンなどのアルキン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素
類、シクロプロパンなどのシクロパラフィン類、シクロ
ペンテンなどのシクロオレフィン類などが挙げられる。
また一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、エチ
ルアルコール、アセトンなどの含酸素炭素化合物、モノ
(ジ、トリ)メチルアミン、モノ(ジ、トリ)エチルア
ミンなどの含窒素炭素化合物なども炭素源ガスとして使
用することができる。これらは一種単独で用いることも
できるし、二種以上で併用することもできる。
【0031】また、前述したようなダイヤモンドと炭化
ケイ素の混合物からなる中間層を形成するには、所望に
より加工用部材母材表面にダイヤモンド生成条件で1〜
5時間程度保持してダイヤモンド核発生処理を行った
後、反応ガスとして、水素と、炭素含有ガスおよびケイ
素含有ガスを導入する。前記ケイ素含有ガスとしては、
四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素などのハ
ロゲン化物、二酸化ケイ素などの酸化物の他に、モノ
(ジ、トリ、テトラ、ペンタ)シラン、モノ(ジ、ト
リ、テトラ)メチルシランなどのシラン化合物、トリメ
チルシラノールなどのシラノール化合物などが挙げられ
る。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以
上で併用することもできる。
【0032】このように、本発明の加工用部材における
硬質炭素膜は、微粒組織のダイヤモンドを主体とするも
のであるために、緻密質でかつ膜表面にボイド等の欠陥
がなく平滑性に優れたものである。したがって樹脂を加
工する部材表面にこの硬質炭素膜を形成すると、硬質炭
素膜の表面の平滑性を高めるための研磨工程を必要とせ
ず、あるいは研磨してもわずかな加工で平滑な膜面を形
成することができる。
【0033】しかも、耐摩耗性、摺動性、離型性、およ
び樹脂の耐溶着性に優れ、加工品の良好な仕上げ面と加
工用部材の長寿命化を図ることができる。
【0034】また、部材表面と硬質炭素膜との間に、少
なくともダイヤモンドと金属炭化物とを含む中間層を介
在させることにより、硬質炭素膜の母材への密着性を高
め、さらに加工用部材の長寿命化を図ることができる。
【0035】
【実施例】
(実施例1)電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD装
置の炉内に、成形型として、窒化ケイ素質焼結体(Y2O3
3重量%、Al2O3 4重量%含有)、超硬合金(WC90
重量%−TiC4重量%−Co6重量%)、チタン合金
(Ti−6Al−4V)を母材材種とした成形金型を設
置して硬質炭素膜の成膜を行った。
【0036】そこに、H2 297sccm、CH4 3s
ccmのガスを用いて、ガス濃度1%、母材温度650
℃、炉内圧力0.1torrで3時間処理して、ダイヤ
モンド核を発生させた後、原料ガスとしてH2 ガス、C
4 ガスおよびSi(CH34 ガスを用いて、 H2 297sccm CH4 3sccm Si(CH3)4 0.3sccm の割合でガス濃度1%、母材温度650℃、炉内圧力
0.05torrの条件で電子サイクロトロン共鳴(E
CR)プラズマCVD法により最大2kガウスの強度の
磁場を印加させ、マイクロ波出力3.0kWの条件で1
0時間成膜して、ダイヤモンドと炭化ケイ素が混在した
厚さ1.0μmの中間層を形成した。
【0037】また、表1中、試料No.4,10について
は、中間層形成を H2 ガス 300sccm Si(CH3)4ガス 0.3sccm のガス比とする以外は前記と全く同様にして、炭化ケイ
素からなる中間層を1μmの厚みで形成し、同様に評価
を行った。
【0038】次に、中間層の上に、純度99.9%以上
のH2 ガス、CH4 ガス、CO2 ガスを用いて、表1に
示すガス比、ガス濃度、母材温度、炉内圧力で成膜を行
い、4μmの硬質炭素膜を形成した。
【0039】成膜した硬質炭素膜に対して、膜表面のラ
マン分光スペクトル分析を行い、ラマン分光スペクトル
チャートから1100cm-1と1700cm-1の位置間
で線を引き、これをベースラインとし、1160±40
cm-1に存在する最大ピークのピーク強度をH1 、13
40±40cm-1に存在する最大ピークのピーク強度を
2 として、H1 /H2 で表される強度比を算出した。
尚、表1中、試料No.3と試料No.8についてチャート
を図1、図2に示した。なお、ラマン分光分析における
発振源として、レーザーはArレーザー(発振線48
8.0nm)を用いた。また、表面粗さ(Rmax)を
測定し表1に示した。
【0040】得られた成形型を用いて、ポリプロピレン
の成形を最高100万回繰り返し行った。成形回数と凝
着に関する結果を表1に示す。
【0041】(比較例1)硬質炭素膜を被覆しない超硬
合金を用いて、実施例1と同様の成形試験を行い、その
結果を表1試料No.17に示した。
【0042】(比較例2)型母材として実施例において
用いた窒化ケイ素質焼結体および超硬合金を用いて、マ
イクロ波CVD法によって、中間層形成を実施例と同じ
ガス比で、ガス濃度1%、母材温度950℃、炉内圧力
30torrの条件で10時間成膜した後、さらに表1
の試料No.8、13に示す条件で成膜し4μmの硬質炭
素膜を形成した。これについて、実施例1と同様の樹脂
成形試験を行い、その結果を表1試料No.8、13に示
した。
【0043】
【表1】
【0044】表1の結果によれば、H1 /H2 が0.0
5〜2の硬質炭素膜を形成した本発明の加工用部材(試
料No.2〜6、9〜11、14〜15)は、表面粗さが
Rmax0.2μm以下の平滑性に優れるもので膜中に
はボイドなどの発生も全くないものであった。そして、
成形試験においても耐摩耗性に優れるとともに樹脂のの
溶着等もなく成形品も良好な仕上げ面を形成することが
できた。また硬質炭素膜の密着性の点では、ダイヤモン
ドと炭化ケイ素からなる中間層を形成した型材では、成
形試験100万回後も全く剥離は認められなかったが、
中間層が炭化ケイ素のみからなる試料No.4、10で
は、試験後に一部に炭素膜の剥離が観察された。
【0045】また、比較例として従来の超硬合金では5
000回程度で樹脂の溶着がみられ、離型性も劣化し
た。また、マイクロ波CVD法等で作製された硬質炭素
膜や、成膜条件によってH1 /H2 の比率が0.05よ
りも小さい試料No.1、8、13では、いずれも表面粗
さがRmax1μmを越えるものであり、成形試験にお
いて樹脂の溶着および離型性劣化が発生した。またH1
/H2 の比率が2よりも大きい試料No.7、12、16
では、硬質炭素膜の硬度が低下し試験後に1〜2μmの
膜の摩耗が観察された。
【0046】(実施例2)実施例1で用いた窒化ケイ
素、チタン合金および超硬合金からなるピン(ピン先端
の曲率半径R=4.763mm)を母材材種とし実施例
1と同様にして中間層1μmおよび硬質炭素膜5μmを
成膜を行った。なお、X線回折測定により中間層からは
いずれもダイヤモンドと炭化ケイ素の存在が確認され
た。
【0047】得られたピンに対して、摺動特性をピンオ
ンディスク法により評価した。摺動試験の条件は、室
温、大気中、無潤滑において、荷重39.2N、摺動速
度2m/sec、24時間で行った。ディスクにはポリ
エチレンを用いた。摺動試験は、ピン先への樹脂の凝着
や硬質炭素膜の剥離などが発覚した時点で試験を停止
し、耐久摺動回数と停止原因を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】本発明品(試料No.19〜21、24〜2
6)は、24時間の摺動試験を行っても溶着も発生しな
かった。一方、中間層が炭化ケイ素のみからなる(試料
No.25)では、24時間の摺動試験には耐えうるが、
一部に膜剥離が観察された。
【0050】また、超硬合金(試料No.28)は30分
程度で、ラマン分光スペクトルのピーク強度比(H1
2 )が小さい試料No.18、23は15〜18時間で
それぞれ凝着が生じた。一方、ラマン分光スペクトルの
ピーク強度比(H1 /H2 )が大きい試料No.22、2
7は試験後にいずれも3μmの膜が摩滅が生じた。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の加工用部
材は、硬質炭素膜がボイドがなく、平滑性に優れるため
に、耐摩耗性、耐溶着性に優れるので、加工用部材、特
に仕上げ加工用の加工用部材としての長寿命化を図るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における硬質炭素膜(表1中、試料No.
3)のラマン分光スペクトル図である。
【図2】従来の硬質炭素膜(表1中、試料No.8)のラ
マン分光スペクトル図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】樹脂と接する表面に硬質炭素膜を被覆して
    なる加工用部材であって、前記硬質炭素膜が、ラマン分
    光スペクトルにおいて1340±40cm-1と1160
    ±40cm-1にピークが存在し、且つ1160±40c
    -1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度
    をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのうち
    最も強度の強いピーク強度をH2 とした時、H1 /H2
    で表されるピーク強度比が0.05乃至2であることを
    特徴とする樹脂加工用部材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017002948A (ja) * 2015-06-05 2017-01-05 株式会社クボタ 摺動部材およびポンプ
US10068776B1 (en) * 2017-06-29 2018-09-04 Intel Corporation Raster-planarized substrate interlayers and methods of planarizing same

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