JP3291105B2 - 硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材 - Google Patents

硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材

Info

Publication number
JP3291105B2
JP3291105B2 JP00934494A JP934494A JP3291105B2 JP 3291105 B2 JP3291105 B2 JP 3291105B2 JP 00934494 A JP00934494 A JP 00934494A JP 934494 A JP934494 A JP 934494A JP 3291105 B2 JP3291105 B2 JP 3291105B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
carbon film
hard carbon
peak intensity
diamond
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP00934494A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07215795A (ja
Inventor
明俊 富山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyocera Corp filed Critical Kyocera Corp
Priority to JP00934494A priority Critical patent/JP3291105B2/ja
Publication of JPH07215795A publication Critical patent/JPH07215795A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3291105B2 publication Critical patent/JP3291105B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、切削工具、耐
摩耗摺動部品、伸線用ダイス、成形用金型、製缶用のパ
ンチ,ダイおよびシーミングロール等に用いられるダイ
ヤモンドを含有する硬質炭素膜に関し、高耐摩耗性、高
摺動特性を有する硬質炭素膜および硬質炭素膜被覆部材
並びに硬質炭素膜生成方法に関する。
【0002】
【従来技術】近年、ダイヤモンドはその高硬度、高熱伝
導性、耐薬品性などの優れた性質を有することから、各
種の分野でその応用が進められている。工業用ダイヤモ
ンドは、従来主に超高圧高温下で合成されていたが、切
削工具や耐摩耗部材への応用などの広範な用途への適用
を考慮し、近年では容易に比較的安価に合成が可能であ
る気相成長法が盛んに研究されている。
【0003】これらの気相法によるダイヤモンドは、一
般には特開昭58−91100号公報や特開昭58−1
10494号公報に示されるように、炭化水素などの炭
素を含む原料ガスを反応室内に導入し、マイクロ波プラ
ズマやフィラメントにより熱分解した後、基体表面に析
出させることにより合成されている。
【0004】このようにして得られるダイヤモンドは、
通常膜中に非晶質カーボンやグラファイト、あるいは水
素、窒素などが不純物として含有されている。この不純
物量を減少させることによって、高い耐摩耗性を有する
高純度なダイヤモンドを生成させることができるため、
各種の高純度化の手法が編み出され、特開平1−313
393号公報や特開平2−232106号公報、特開平
2−248396号公報あるいは特開平4−92894
号公報、特開平4−104992号公報などに示される
ような技術が開示されている。
【0005】このような方法により得られる高純度のダ
イヤモンドからなる硬質炭素膜は、一般にダイヤモンド
の結晶の粒径が大きく、自形面が膜表面に露出しており
凹凸が激しい。従って、実際に利用するに当たっては、
特開昭61−252004号公報や特開昭62−418
00号公報に記載されているように物理的あるいは化学
的な研磨を用いて、膜の表面を平滑化するか、あるい
は、特開昭61−151097号公報や特開平1−15
3228号公報、特開平4−101702号公報などに
開示されているように、平滑な基板上に成長させて、膜
の裏面を利用するといった方法が一般にとられている。
【0006】これに対して、特開昭60−71597号
公報や特開平1−152621号公報、特開平1−20
8309号公報、特開平1−230496号公報などに
開示されているように、ダイヤモンド以外に非晶質カー
ボンやグラファイト、あるいは水素を硬質炭素膜中に存
在させることによって、自形を有しない粒径の小さい平
滑な膜を得ようという試みもある。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、従来
の方法には次に示すような問題点がある。
【0008】まず、高純度のダイヤモンドを含有する硬
質炭素膜は、通常凹凸の大きい粗い面となるため、摺
動、切削などの用途において利用する際には、表面を研
磨して平滑化することが必要であるということは、前項
で述べた通りであるが、ダイヤモンドは非常に耐摩耗性
の高い物質であるため、その研磨は困難であるととも
に、工業的な生産性に欠けるという問題があった。
【0009】また、ダイヤモンドの研磨法としては、高
速で回転する鉄板にダイヤモンドの砥粒を含有する流体
を流しつつ、ワークを押しつけて研磨するスカイフ研磨
などの方法が一般に行われているが、この方法は平面に
対する研磨法であり、気相法で作製した複雑な曲面形状
を有するワークに対しては不向きであるという問題があ
った。
【0010】また、特開昭62−41800号公報に示
されている化学的研磨法も、平面のワークに対する研磨
技術であるため、複雑な曲面形状を有するワークに対し
ては、研磨が難しい。さらに研磨を高温の水素雰囲気中
で行う必要があるため、手間がかかるだけでなく、安全
性にも問題がある。
【0011】また、特開昭61−151097号公報や
特開平1−153228号公報、特開平4−10170
2号公報などで開示されている、平滑な基板に成長させ
た膜の裏面を利用する方法も、目的とする製品が平面で
ない場合は適用が難しい。例えば、特開平4−2652
98号公報に示されているように、目的物が複雑な形状
を有する場合は、目的物の表面形状と同じ形状を有する
型を作製する必要があるため、非常な手間とコストを必
要とする。さらに、これらの方法では、ろう付けなどで
膜を目的物に貼りつける工程を必要とするため、寸法精
度が厳しい製品の製造には不向きであるという問題があ
った。
【0012】これに対して、特開昭60−71597号
公報や特開平1−152621号公報、特開平1−20
8309号公報、特開平1−230496号公報に開示
されるような、不純物を含有する硬質炭素膜では、自形
を有しない粒径の小さい膜が得られるため、一見、摺
動、切削などの分野に応用するのに好適であるかのよう
に思われる。しかしながら、これらの膜はダイヤモンド
が結晶ではなく、非晶質のような状態で存在していた
り、膜中に多量の不純物を含むため、現実には摺動や切
削の初期には良好な特性を示すものの耐摩耗性が不足
し、膜が早く摩滅してしまうため、ダイヤモンド本来の
特性を充分に発揮できないのが現状である。
【0013】また、特開昭62−107068号公報や
特開昭63−307196号公報などに(110)面を
配向成長させて利用しようという試みが開示されている
が、前者は表面に(100)面と(110)面が混合し
て存在しているため、完全に平滑な面が得られにくく、
さらに(100)面と(110)面のみが同時に析出す
る条件は非常に狭く、汎用性に欠けるという問題があ
る。そして、後者は高濃度で合成した結晶性の悪い微結
晶膜の上に(110)面を成長させているが、ダイヤモ
ンドは下地の影響を非常に受けやすいため、後で成長さ
せた(110)配向膜の結晶性が悪化し、(110)面
の配向成長中に(311)面や(100)面などの面が
二次的に成長し、膜の平滑性を乱す原因となるという問
題があった。
【0014】本発明の目的は、上記の問題を解決し、表
面平滑性に優れるとともに、高耐摩耗性、高摺動性を兼
ね備えた硬質炭素膜および硬質炭素膜被覆部材並びに硬
質炭素膜生成方法を提供することにある。
【0015】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、前記問題
点に対して検討を重ね、硬質炭素膜を形成する場合の各
種の成膜方法、成膜条件、生成される硬質炭素膜の特性
などについて詳細に検討したところ、硬質炭素膜のX線
回折におけるダイヤモンドのピーク間の強度、およびラ
マンスペクトル測定における1333±5cm-1に存在
するダイヤモンドのピークの強度H1と、1500±1
00cm-1に存在する非晶質炭素のピーク強度H2の比
がある一定の関係を満たすときに前記目的を達成した膜
が得られることを見い出し、本発明に至った。
【0016】即ち、本発明の硬質炭素膜は、ダイヤモン
ドを含有する硬質炭素膜において、X線回折におけるダ
イヤモンドの(111)のピーク強度をIa、(22
0)のピーク強度をIb、(311)のピーク強度をI
c、(400)のピーク強度をIdとしたとき、1≦I
b/Ia≦10、2≦Ib/Ic、2≦Ib/Idを満
たすとともに、顕微ラマン分光法により硬質炭素膜の表
面のラマンスペクトル測定を行った際の、1333±5
cm-1に存在するダイヤモンドのピークの強度をH1、
1500±100cm-1に存在する非晶質炭素のピーク
強度をH2としたとき、0.5≦H2/H1≦10を満
たすもので、2≦Ib/Ia≦5、3.3≦Ib/I
c、3.3≦Ib/Idを満たすことが望ましい。
【0017】また、本発明では、膜の熱伝導率が50〜
700W/(m・K)であること、膜の密度が3.20
〜3.45g/cm3であることが望ましい。
【0018】また、本発明の硬質炭素膜被覆部材は、母
材表面にダイヤモンドを含有する硬質炭素膜を形成して
なる硬質炭素膜被覆部材であって、前記硬質炭素膜がX
線回折におけるダイヤモンドの(111)のピーク強度
をIa、(220)のピーク強度をIb、(311)の
ピーク強度をIc、(400)のピーク強度をIdとし
たとき、1≦Ib/Ia≦10、2≦Ib/Ic、2≦
Ib/Idを満たすとともに、顕微ラマン分光法により
硬質炭素膜の表面のラマンスペクトル測定を行った際
の、1333±5cm-1に存在するダイヤモンドのピー
クの強度をH1、1500±100cm-1に存在する非
晶質炭素のピーク強度をH2としたとき、0.5≦H2
/H1≦10を満たすものである。
【0019】以下、本発明を詳述する。
【0020】本発明の硬質炭素膜は、ダイヤモンドを膜
中に含有してなるものであるが、まず、X線回折におけ
るダイヤモンドの(111)のピーク強度をIa、(2
20)のピーク強度をIb、(311)のピーク強度を
Ic、(400)のピーク強度をIdとしたとき、1≦
Ib/Ia≦10、2≦Ib/Ic、2≦Ib/Idを
満たし、望ましくは、2≦Ib/Ia≦5、3.3≦I
b/Ic、3.3≦Ib/Idを満たしていることが必
要である。従来の方法により得られる硬質炭素膜は、ダ
イヤモンドの(111)のピーク強度が最も大きいのが
常であり、このような膜はダイヤモンドの結晶の自形が
表面にはっきりと露出してしまっているものが大多数で
ある。ダイヤモンドの(111)面は他の面に比べて、
原子の存在密度が大きいため、硬く耐摩耗性が優れてい
るはずであるが、他の面に比べて、不純物原子を取り込
みやすいという問題点もある。例えば、カソードルミネ
センスによる評価では、不純物のボロン原子が(11
1)面に取り込まれて、青色発光することが一般に知ら
れている。このような不純物はダイヤモンドの特性に様
々な悪影響を与える恐れがある。
【0021】これに対して、本発明の硬質炭素膜は、
(220)のピークが他のピークに比べて、非常に強い
のが特徴である。これにより、硬質炭素膜の耐摩耗性を
高め、組織が微細に制御された平滑性の高い膜を形成す
ることが可能となっている。(220)のピークは、
(110)面に起因しているが、この面は(111)面
よりも不純物原子の混入が少ないため、かえって高い耐
摩耗性を示すものと思われる。また、結晶の成長方向を
考えると(111)面の場合、一つの結晶粒子が周囲に
大きく広がって成長するため、結果として成長後の膜の
表面は大きな結晶粒子から構成された凹凸の激しい粗い
面となりやすい。それに比べて本発明においては(11
0)面の成長が主体となるが、この成長は(111)面
と比べて広がりかたが少なく、このため結晶粒子が微細
に成長し、平滑な膜が得られやすいものと思われる。
【0022】また、(111)のピーク強度Iaに対す
る(220)のピーク強度Ibの比を1≦Ib/Ia≦
10としたのは、Ib/Iaが1より小さいと耐摩耗性
及び平滑性の効果が現れにくく、また10より大きいと
DLC膜(非晶質炭素膜)の特性に近づいて耐摩耗性が
悪化するため、この範囲内にあるのがよい。Ib/Ia
は、望ましくは2から5の範囲内にあるときに、その優
れた特性が最も良く発揮される。Ib/Iaは2〜3が
特に望ましい。
【0023】そして、(311)や(400)のピーク
強度Ic、Idに対する(220)のピーク強度Ibを
2≦Ib/Ic、2≦Ib/Idとしたのは、これらの
比が2より小さいときは、(311)や(400)のピ
ークの原因となる面が膜表面に出現し、それぞれ別々の
方向に成長を始めるため、面の平滑性が保たれなくな
る。また、これらの面は原子の密度が異なっているた
め、研磨の際にもムラが生じやすくなるという問題があ
る。したがって、これらのピーク比Ib/Ic、Ib/
Idは2以上であることが必要であり、3.3以上ある
ことが望ましい。特にIb/Ic、Ib/Idは5以上
であることが望ましい。
【0024】次に、本発明における硬質炭素膜の表面を
顕微ラマン分光法により、ラマンスペクトル測定を行っ
たとき、1333±5cm-1に存在するダイヤモンドの
ピークの強度をH1、1500±100cm-1に存在す
る非晶質炭素のピーク強度をH2としたとき、0.5≦
H2/H1≦10を満たしていることが重要である。こ
のピーク強度比H2/H1は、その値が大きくなるに従
い、結晶性が低下し膜中のダイヤモンドの含有量が減少
することを意味し、逆にその値が小さくなるに従い、結
晶性が向上しダイヤモンド以外の相の含有量が減少する
ことを意味するものである。従来の硬質炭素膜は、例え
ば特開平2−232106号公報に記載されているよう
に、なるべくこのピーク強度比を小さくし、膜の純度を
高めることによって、耐摩耗性を向上させようとするも
のが多かったが、本発明の硬質炭素膜の場合は、このピ
ーク強度比は0.5乃至10というところに最適なポイ
ントを置いた。その理由としては、通常ダイヤモンド以
外の相は結晶粒界に存在していることが多く、本発明に
よる硬質炭素膜は、結晶粒子が微細に成長しているた
め、全体に対する結晶粒界の占める割合が大きくなる。
また、ラマン分光法における結晶のサイズ効果という現
象があるが、これは測定する結晶のサイズが小さくなる
につれて、測定結果としてピーク強度が弱くなってしま
うというものである。本発明において形成されるダイヤ
モンドの結晶粒子は微細であるため、このラマン分光法
のサイズ効果の影響を受ける可能性が強い。したがっ
て、本発明において顕微ラマン分光法により評価される
上記ピーク強度比は、従来の硬質炭素膜では結晶性が悪
いと評価されてしまう領域に、最適な値が存在する。
【0025】本発明による硬質炭素膜において、上記ピ
ーク強度比H2/H1が0.5よりも小さくなるような
場合は、硬質炭素膜を構成するダイヤモンドの結晶性が
良くなったためというよりは、個々の結晶粒子が独立で
存在してしまい、粒子間の結合が弱くなるため、強度が
低くなったと考えられ、応用に適さない。逆に上記ピー
ク強度比H2/H1が10を越えるような場合は、硬質
炭素膜中のダイヤモンド以外の相の占める割合が高くな
りすぎて、膜の耐摩耗性が劣化する。H2/H1は特に
2〜8であることが望ましい。
【0026】さらに、本発明における硬質炭素膜の熱伝
導率は、50W/(m・K)以上700W/(m・K)
以下であることが重要である。通常、単結晶ダイヤモン
ドの熱伝導率は2000W/(m・K)程度と非常に高
いことが知られているが、気相合成法によるダイヤモン
ド膜は多結晶であるため、結晶粒界で熱の伝導に寄与す
るフォノンが散乱されやすく、単結晶ほどの高熱伝導特
性を示さない。報告されている値もせいぜい、1200
〜1500W/(m・K)である。本発明における硬質
炭素膜は、上記したように、全体に対する結晶粒界の占
める割合が大きいため、熱伝導率の値もそれほど大きな
値を示さない。しかしながら、最低でも50W/(m・
K)は必要であり、これ以下であると、硬質炭素膜を摺
動もしくは切削などの用途で使用する際に、膜から熱が
放散されないため、部分的に過熱され膜が破損したりす
る原因となる。また、熱伝導率が700W/(m・K)
を越える硬質炭素膜は、個々の結晶粒子のサイズが大き
く表面の凹凸が激しい粗い膜となるため、本発明が目的
とするところから外れてしまう。熱伝導率は、特に10
0〜400W/(m・K)であることが望ましい。
【0027】そして、本発明における硬質炭素膜の密度
は、3.20〜3.45g/cm3であることが重要で
ある。この値は純粋なダイヤモンドの密度3.51g/
cm3 よりも少し小さめであるが、これは上記したよう
に、本発明における硬質炭素膜においては、全体に対し
て結晶粒界の占める割合が大きいため、結晶粒界部に含
まれる低密度なダイヤモンド以外の相のために若干低め
の密度となるのである。本発明によれば、硬質炭素膜の
密度が3.20g/cm3 よりも小さいときは、ダイヤ
モンド以外の相が膜中に多くなりすぎ、耐摩耗性が劣化
するため好ましくない。また、密度が3.45g/cm
3 を越える場合は、本発明の目的から外れた個々の結晶
粒子のサイズが大きい表面の凹凸が激しい膜となるた
め、これもまた好ましくない。
【0028】本発明における硬質炭素膜を形成するため
には、炭素を含有する原料ガスを分解、プラズマ化して
基体上に成膜する方法が用いられるが、その際に基体表
面におけるプラズマの電子温度が8eV以下で、かつ、
電子密度を1×1011cm-3以上とすることが重要であ
る。電子温度は、プラズマ中に存在する電子の温度であ
り、低圧力の非平衡プラズマにおけるシース電位を決定
するパラメータであるが、この電子温度が8eVよりも
大きいとイオン衝撃エネルギーが大きくなり、硬質炭素
膜に与えるダメージが大きくなるため、膜中のダイヤモ
ンドが非晶質化したり格子欠陥を生じたりするので、膜
が劣化し耐摩耗性を失ってしまう。また、電子密度は、
成膜に寄与する活性種の密度を決定する大きな要素であ
り、本発明においては、この電子密度を1×1011cm
-3以上とすることによって、活性種を高密度化し、核の
発生密度を飛躍的に高めて、微細な結晶からなる平滑な
膜を得ている。即ち、電子密度が1×1011cm-3より
も小さいと平滑な膜が得られなくなるからである。電子
温度は5eV以下、電子密度は3×1011cm-3以上で
あることが望ましい。
【0029】硬質炭素膜を形成するためのプラズマを用
いた成膜方法としては、一般的なマイクロ波プラズマC
VD法、高周波プラズマCVD法、熱プラズマCVD法
などが知られているが、本発明の硬質炭素膜を形成させ
るのは難しい。その理由は、これらの方法は数torr
〜大気圧と高い圧力領域でプラズマを生成しているた
め、プラズマが小さい領域に凝集してしまい、成膜条件
を変化させてもプラズマそのものに変化が起こりにく
く、上記のプラズマの電子温度や電子密度を変化させる
のが困難なためである。さらに、プラズマの生成空間が
狭く、探針をプラズマに挿入して電子温度や密度を測定
しようとすると、それによってプラズマが影響を受けて
状態が変化してしまうため、プラズマの測定そのものが
難しいといった問題もある。
【0030】そこで、本発明における硬質炭素膜を合成
するためには、成膜方法として、電子サイクロトロンプ
ラズマCVD法(以下、ECRプラズマ法という)を採
用することが望ましい。この方法によれば、低圧力で広
い空間中に均一、かつ高密度なプラズマを発生させるこ
とができるため、通常のマイクロ波プラズマCVD法並
の成長速度を保ったまま、多くの部材に対して均一な膜
厚で硬質炭素膜を成長させることができる。さらに、プ
ラズマの領域が広く、プラズマの測定による影響を受け
にくく、電子温度・電子密度といったパラメータの制御
も比較的容易であるといった利点がある。このECRプ
ラズマ法による製造方法について、図1をもとに説明す
る。反応炉1内には炭素膜が形成される母材2が設置さ
れている。また、反応炉の周囲には反応炉内にプラズマ
を発生させるためのマイクロ波発生装置3および磁界を
発生させるための電磁コイル4が配置されている。
【0031】かかる装置を用いて成膜する場合には、反
応炉内に炭素膜生成用ガスとして少なくともメタンなど
の炭素を含有する原料ガスを、場合により水素などのキ
ャリアガスと共にガス導入炉5を経由して炉内に導入す
る。そして、反応炉内を圧力1torr以下の低圧力に
維持すると同時に、導波管6により2.45GHzのマ
イクロ波を炉内に導入する。それと同時に電磁コイル4
により約875ガウス以上のレベルの磁界を印加する。
これにより、電子はサイクロトロン周波数f=eB/2
πm(e:電子の電荷、B:磁束密度、m:電子の質
量)に基づき、サイクロトロン運動を起こす。この周波
数がマイクロ波の周波数(2.45GHz)と一致する
とき、即ち、磁束密度Bが875ガウスとなる時に、電
子サイクロトロン共鳴が生じる。これにより電子はマイ
クロ波のエネルギーを著しく吸収して加速され、中性分
子に衝突し電離を起こさせ、低圧力でも高密度のプラズ
マを生成するようになる。なお、このときの基体の温度
を100〜1200℃に保持することにより、基体表面
に硬質炭素膜を形成することができる。
【0032】本発明において、前述した所定の特性を有
する硬質炭素膜を生成させる場合には、およそ基体温度
を150〜800℃、原料ガス濃度を1%〜30%、炉
内圧力を1×10-3〜1torrの範囲に設定すればよ
い。また、基体表面におけるプラズマの電子温度が8e
V以下で、かつ、電子密度が1×1011cm-3以上とな
るような位置に基体を設置することが重要であるが、こ
れを達成するためには、あらかじめ成膜に用いる条件と
同じ条件で、プラズマの電子温度、電子密度の測定を行
い、上記の条件を満たす領域を調査しておく必要があ
る。この測定は既知のプラズマ診断法、例えばラングミ
ュア探針法を用いて行うのがよい。これらの電子温度や
電子密度は投入するマイクロ波のパワー、圧力、磁場配
位により制御することができる。例えば、マイクロ波の
パワーを上げるか、圧力を下げるかすると電子温度は上
昇し、電子密度は減少する傾向にある。これらのバラン
スをうまく取って、成膜条件を決定することが必要であ
る。
【0033】これらのガスの配合比率や種類は、特開昭
60−19197号や特開昭61−183198号など
に開示される公知の方法のいずれを用いても本発明の効
果に何ら影響を及ぼさない。
【0034】上記製造方法において用いられる炭素含有
原料ガスとしては、メタン、エタン、プロパンなどの炭
化水素ガスの他にCxHyOz(x、y、zはいずれも
1以上)で示されるような有機化合物やCO、CO2
どのガスを用いることもできる。
【0035】また、本発明における硬質炭素膜を被覆す
る基体材料としては、特に限定されるものではないが、
例えば窒化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミックス材料
の他にWC−Co系超硬合金やTiC、TiCNを主成
分とするサーメットや、金属、プラスチックなどの材料
を用いることができる。これらの中でも特に窒化ケイ
素、炭化ケイ素が硬質炭素膜の主成分たるダイヤモンド
と線熱膨張係数が近く、膜との付着力が高いことから望
ましい。
【0036】基体表面におけるダイヤモンドの核発生を
促進させるため、基体は成膜前にあらかじめその表面を
ダイヤモンド砥粒などにより傷つけ処理をしておいても
よい。
【0037】上述した方法によって得られる硬質炭素膜
は、主としてダイヤモンドからなっており、ほぼダイヤ
モンドに近い特性を示すが、若干の非晶質炭素成分、お
よびガス、成膜装置、基体材料などから混入した不可避
不純物をも含有している。
【0038】なお、上記の条件を満たすように成膜を行
えば非常に平滑な膜が得られるため、硬質炭素膜の表面
粗さは、ほとんど成膜した基体の表面粗さと同じか、わ
ずかにそれを上回る程度となる。したがって、実際に用
いる用途に応じて、適宜基体の表面粗さを事前に必要な
面粗さに仕上げておくのが好ましい。また、成膜後必要
な面粗さを上回っていた場合には、ダイヤモンドの微細
な砥粒を用いて、膜の仕上げ研磨を行えば良い。膜自
体、最初から非常に平滑であるため、この研磨もほんの
少しで充分な場合が多い。
【0039】
【作用】本発明による硬質炭素膜は、高い結晶性を有す
るダイヤモンドの結晶粒子を高い核生成密度で(11
0)面を配向させつつ、(311)、(400)のピー
クの原因となる結晶面の成長を抑制しながら、成長させ
ているため、膜の表面が非常に平滑で、高耐摩耗性、高
摺動性を具備している。ダイヤモンドの結晶の成長は、
(111)面でなく(110)面の成長が主体となって
いるため、結晶の成長が一定方向に抑制され、微細な結
晶成長が可能となるものと思われる。このような微細な
結晶からなるために、ダイヤモンド以外の相を含有する
結晶粒界が膜中で大きな割合を占め、ラマン分光スペク
トル、熱伝導率、密度などの値は純粋なダイヤモンド結
晶よりも若干悪い値を示すが、個々の結晶が高い結晶性
を有したダイヤモンドであるため、耐摩耗、摺動の用途
として用いる場合には良好な特性を有する。
【0040】また、本発明における硬質炭素膜の合成に
当たっては、膜が形成される基体表面におけるプラズマ
の電子温度を8eV以下とすることにより、膜へのイオ
ン衝撃を抑え、高耐摩耗性を有する高品質の膜の合成が
可能となる。また、基体表面におけるプラズマの電子密
度を1×1011cm-3以上とすることによって、活性種
を高密度化し、基体表面における過飽和度が高くなるた
め、核発生密度が飛躍的に高まり、微細な結晶からなる
平滑な膜を得ることが可能となる。これに対して、一般
的なマイクロ波プラズマCVD法により生成されるプラ
ズマの電子密度は、せいぜい1010cm-3台であるた
め、活性種密度が低く、核発生密度も低く抑えられるた
め、膜は個々の結晶が大きく発達した凹凸の激しい粗い
ものとなりやすい。
【0041】また、この条件下において、硬質炭素膜中
のダイヤモンドの結晶の(110)面が(111)面に
比べて、優先的に成長する理由としては、現在まだ推測
の域を出ないが、ダイヤモンドの結晶成長において、結
晶面の成長様式から考えて、活性種の過飽和度が低いと
きは、(111)面の成長が支配的になり、その反対の
ときは(110)面の成長が支配的になると考えられ
る。そして、本発明では、1×1011cm-3以上の高い
プラズマ密度により高い活性種が得られているため、
(110)面が成長するものと思われる。また、電子温
度を8eV以下に抑えているため、(110)面の成長
中に高結晶性が保たれ、(311)、(400)のピー
クの原因となる二次的な核の成長が抑制され、純粋な
(110)面の成長が行われるものと思われる。
【0042】
【実施例】
実施例1 図1に示したようなECRプラズマ装置中の反応炉内に
シリコンウェハを基体として設置し、最大2kGの強度
の磁場を印加するとともにマイクロ波パワー4kWの条
件で基体温度700℃、炉内圧力0.3torrの条件
で基体表面に成膜を行った。なお、反応ガスとしてはメ
タンガス、二酸化炭素、および水素ガスをそれぞれ、1
5sccm、30sccm、255sccmの流量比で
混合したものを用いた。この条件で硬質炭素膜が約20
μmの膜厚となるように作製した。
【0043】なお、基体の設置位置については、成膜前
に静電プローブにより、基体のない状態で、上記の硬質
炭素膜を合成する条件でのプラズマ測定を行い、電子温
度6.3eV、電子密度2.8×1011cm-3であるこ
とを確認した。
【0044】得られた炭素膜に対して、膜のX線回折を
行ったところ、ダイヤモンドのピークが検出され、(1
11)のピーク強度をIa、(220)のピーク強度を
Ib、(311)のピーク強度をIc、(400)のピ
ーク強度をIdとしたとき、Ib/Ia=3.1、Ib
/Ic=5.9、Ib/Id=4.2となっていた。な
お、X線回折については通常行われるバルクの測定法な
らびに薄膜用の測定法の双方で行ったが、ピーク強度比
に変化はみられなかった。
【0045】この炭素膜の表面を顕微ラマン分光法によ
り、スペクトル測定を行ったところ、ダイヤモンドのピ
ークと非晶質炭素のピークが観察され、ダイヤモンドと
非晶質炭素の2相が膜中に存在していることがわかっ
た。なお、ラマン分光は488nmのArレーザービー
ムを約10μm径に絞って行った。ピーク強度比は、1
100cm-3と1700cm-3の位置間で斜線を引き、
これをベースラインとしてそれぞれのピークをローレン
ツタイプとしてピーク分離を行い、各ピークの高さH
1、H2を求めた。なお、H1は1333±5cm-1
存在するダイヤモンドのピークの強度、H2は1500
±100cm-1に存在する非晶質炭素のピーク強度であ
る。そして、それぞれのピーク強度比を求めたところ、
H2/H1=7.2であった。
【0046】この炭素膜の熱伝導率をACカロリメトリ
法により測定したところ、約370W/(m・K)であ
ることがわかった。なお、この方法で求められる値は、
熱伝導率そのものではなく熱拡散率である。熱伝導率
は、熱伝導率=単位体積当たりの熱容量×熱拡散率 の
式で与えられるが、ここでは単位体積当たりの熱容量
(=比熱×密度)は、ダイヤモンドの文献値を用いて、
1.80J/(K・cm3)を用いて計算を行った。ま
た、測定は膜をシリコンウェハの基体から剥離させて測
定する方法と、剥離させずにシリコンと炭素膜の二層材
のまま測定した後に、シリコンウェハ単独の測定値を求
めて、その影響を差し引いて、炭素膜単独の値を算出し
てやる方法の二種類で行ったが、どちらも同じ値となっ
た。
【0047】また、炭素膜の密度をクレリシ重液法によ
り測定を行った。測定に先立って、シリコンウェハをふ
っ硝酸により溶解除去し、膜単独の密度を測定した。こ
の方法は、一定密度を有する重液に沈むかどうかで判定
する方法である。これにより測定したところ、炭素膜の
密度は、3.38g/cm3 であった。
【0048】SEMによりこの炭素膜の表面を観測した
ところ、微細な結晶から構成されており、ボイドなども
観察されず、非常に平滑であった。触針式表面粗さ計に
より表面粗さを測定したところ、Rmax(以下表面粗
さはRmax表示とする)で0.15μmであることが
わかった。
【0049】次に、直径が40mmの高密度窒化ケイ素
セラミックス製のディスク形状品を表面粗さが0.30
μmとなるように仕上げた後、これを基体として、上に
示した条件と全く同条件で硬質炭素膜を形成した。成膜
後のディスクの表面粗さは0.15μmであり、ダイヤ
モンド砥粒によりラップ研磨することによって、容易に
平滑化が可能であった。その後、これと先端のRの半径
が3/16インチのピンを用いて、ピン−オン−ディス
ク法により摺動試験を行った。ピンの材質はアルミニウ
ム−18%シリコンの合金を用い、荷重は19.6N、
摺動速度は1m/s、摺動距離を100kmとして測定
を行った。試験中、摩擦係数は0.09程度であり、非
常に低い値を示した。さらに試験後の膜の表面には全く
金属の溶着が認められなかった。また、膜に若干摺動痕
が認められたため、表面形状の変化を調べたが、比摩耗
量は3×10-19 3 /(N・m)と非常に低く、ほと
んど摩耗しておらず、摺動によって膜の表面粗さがさら
に小さくなっただけであると判明した。合金のピンの摩
耗も非常に少なかった。
【0050】また、比較のため、従来のマイクロ波プラ
ズマCVD法でも、上記同様にしてシリコンウェハ上に
硬質炭素膜を形成した。この場合プラズマ温度は6e
V、プラズマ密度は3×1010cm-3とした。磁場を印
加せず、圧力を35torrとしたことを除いて、その
他の条件は同じにした。
【0051】得られた炭素膜に対して、上記実施例にお
けるのと同様の方法で、膜の評価を行ったところ、X線
回折のピーク強度比は、Ib/Ia=0.4、Ib/I
c=2.1、Ib/Id=2.2となり、ラマン分光の
ピーク強度比は、H2/H1=0.3となった。さら
に、膜の熱伝導率は、約660W/(m・K)であり、
密度は3.47g/cm3 であった。
【0052】SEMによりこの炭素膜の表面を観測した
ところ、結晶が大きく成長して凹凸の激しい自形面から
構成されていた。表面粗さは、2.8μmと非常に大き
かった。
【0053】また、上記と同様の直径が40mmの高密
度窒化ケイ素セラミックス製のディスク形状品(表面粗
さ0.3μm)に、上記比較例の条件で硬質炭素膜を形
成した。成膜後のディスクの表面粗さは2.8μmであ
り、これを平滑化するのは困難であった。これを上記と
同条件でピン−オン−ディスク試験を行ったが、摩擦係
数は0.35であり、上記実施例に比べて明らかに高か
った。そして、摺動距離が50km程度の地点で合金の
ピンが膜表面の凹凸によって先端が削り取られて摩滅
し、試験続行不可能となったので中断し、ディスク表面
を観察したところ、合金が部分的に付着しているのが観
察された。
【0054】さらに、SGN422の形状を有する窒化
ケイ素製の切削チップを基体として、上記実施例および
比較例と同様にして硬質炭素膜を形成し、アルミニウム
−12%シリコン合金を被削材として、切削速度800
m/min、送り0.1mm/rev、切込み0.2m
mの条件により乾式で30分間の切削加工試験評価を行
った。上記実施例の条件で作製したチップは、フランク
摩耗が0.06mmに過ぎず、被削材の加工面も光沢を
帯びて美しく、きれいに仕上がっていた。これに対し
て、比較例の条件で作製したものは、30分の切削でフ
ランク摩耗は0.08mmであったが、上記実施例のチ
ップで加工したものに比べて、被削材の加工面が荒れて
光沢が少なかった。
【0055】実施例2 実施例1において炭素膜の生成条件を表1に示す以外は
全く同様にして、前記シリコンウェハの表面に炭素膜を
形成し、得られた膜のX線回折、顕微ラマン分光、熱伝
導率、密度の評価を行った。結果を表1,表2に併せて
記載した。尚、表2の試料No.22〜24は参考試料
である。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】さらに、窒化ケイ素製のディスクおよび切
削チップに炭素膜を形成し、ピン−オン−ディスク法に
よる摺動試験および切削評価を行った。ピン−オン−デ
ィスク法による試験に先立って、研磨を行っているがそ
の際のas−depo状態での面粗さ、および研磨によ
る平滑化の容易性についても併せて記し、すべての結果
を表3,表4に記載した。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】これらの評価は、実施例1で示したものと
全く同様の条件により行った。上記実施例1で示した実
施例および比較例は、それぞれ表1中のNo.1とN
o.2に示してある。なお、NO.2以外の試料は全て
ECRプラズマCVD法により作製したものである。
【0062】表1、表2から明らかなように、本発明の
試料No.1およびNo.3〜No.28においては、
as−depoの面粗さが小さく、良好な平滑性を有し
ているため、実際の摺動や切削の用途に適用する際にも
容易に必要な面粗さまで仕上げることが可能である。ま
た、ピン−オン−ディスク摺動試験の結果から、低い摩
擦係数と高い耐摩耗性を有していることがわかり、切削
試験においてもフランク摩耗が0.15mm以下でかつ
被削材の加工面は美しく、良好な切削特性を有してい
る。それに対して、本発明の範囲外の試料No.2およ
びNo.29〜36については、as−depoの面粗
さが大きく平滑性に欠ける膜になるか、平滑であっても
耐摩耗性に欠ける膜になるかのいずれかであった。平滑
性に欠ける膜の場合、摺動試験中に相手材のピンを削っ
てしまうという問題が発生し、平滑であっても膜が耐摩
耗性に欠ける膜の場合は、摺動中に膜が摩滅したりとい
う問題が発生した。さらに、切削試験においても、平滑
性に欠ける膜の場合は、切削中に膜の表面の凹凸のため
部分的に応力がかかって膜が破損するか、破損しなかっ
たとしても、表面の凹凸のため加工面の仕上がり状態が
悪くなるといった問題を有していた。また、平滑なもの
であっても耐摩耗性に欠けるため、切削後のフランク摩
耗は0.20mm以上となり、加工面の仕上がり状態が
悪くなるという問題がある。
【0063】尚、表3,4中における仕上がり状態は、
○印が光沢が良く、面粗さが小さい、△印が面粗さは小
さいが光沢に欠ける、×印は表面の凹凸が大きいもので
ある。
【0064】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明による硬質
炭素膜は、電子温度、電子密度を制御したプラズマ中で
合成することにより、高い結晶性を有するダイヤモンド
の結晶粒子を高い核生成密度で一定方向に配向させなが
ら成長させているため、膜の表面が非常に平滑で、高耐
摩耗性、高摺動性を具備している。したがって、この硬
質炭素膜を被覆材として用いた場合、機械的に表面が摺
動されるような耐磨摺動部品や切削工具として使用すれ
ば、その寿命を飛躍的に伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子サイクロトンプラズマCVD法を説明する
ための図である。
【符号の説明】
1・・・反応炉 2・・・母材 3・・・マイクロ波発生装置 4・・・電磁コイル 5・・・ガス導入路 6・・・導波管

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ダイヤモンドを含有する硬質炭素膜におい
    て、X線回折におけるダイヤモンドの(111)のピー
    ク強度をIa、(220)のピーク強度をIb、(31
    1)のピーク強度をIc、(400)のピーク強度をI
    dとしたとき、1≦Ib/Ia≦10、2≦Ib/I
    c、2≦Ib/Idを満たすとともに、顕微ラマン分光
    法により硬質炭素膜の表面のラマンスペクトル測定を行
    った際の、1333±5cm-1に存在するダイヤモンド
    のピークの強度をH1、1500±100cm-1に存在
    する非晶質炭素のピーク強度をH2としたとき、0.5
    ≦H2/H1≦10を満たすことを特徴とする硬質炭素
    膜。
  2. 【請求項2】X線回折におけるダイヤモンドの(11
    1)のピーク強度をIa、(220)のピーク強度をI
    b、(311)のピーク強度をIc、(400)のピー
    ク強度をIdとしたとき、2≦Ib/Ia≦5、3.3
    ≦Ib/Ic、3.3≦Ib/Idを満たすことを特徴
    とする請求項1記載の硬質炭素膜。
  3. 【請求項3】膜の熱伝導率が50〜700W/(m・
    K)であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載
    の硬質炭素膜。
  4. 【請求項4】膜の密度が3.20〜3.45g/cm3
    であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の硬
    質炭素膜。
  5. 【請求項5】母材表面にダイヤモンドを含有する硬質炭
    素膜を形成してなる硬質炭素膜被覆部材であって、前記
    硬質炭素膜がX線回折におけるダイヤモンドの(11
    1)のピーク強度をIa、(220)のピーク強度をI
    b、(311)のピーク強度をIc、(400)のピー
    ク強度をIdとしたとき、1≦Ib/Ia≦10、2≦
    Ib/Ic、2≦Ib/Idを満たすとともに、顕微ラ
    マン分光法により硬質炭素膜の表面のラマンスペクトル
    測定を行った際の、1333±5cm-1に存在するダイ
    ヤモンドのピークの強度をH1、1500±100cm
    -1に存在する非晶質炭素のピーク強度をH2としたと
    き、0.5≦H2/H1≦10を満たすことを特徴とす
    る硬質炭素膜被覆部材。
JP00934494A 1994-01-31 1994-01-31 硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材 Expired - Fee Related JP3291105B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP00934494A JP3291105B2 (ja) 1994-01-31 1994-01-31 硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP00934494A JP3291105B2 (ja) 1994-01-31 1994-01-31 硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07215795A JPH07215795A (ja) 1995-08-15
JP3291105B2 true JP3291105B2 (ja) 2002-06-10

Family

ID=11717862

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP00934494A Expired - Fee Related JP3291105B2 (ja) 1994-01-31 1994-01-31 硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3291105B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6416865B1 (en) 1998-10-30 2002-07-09 Sumitomo Electric Industries, Ltd. Hard carbon film and surface acoustic-wave substrate
JP4617625B2 (ja) * 2001-08-31 2011-01-26 宇部興産株式会社 巻芯
EP1598441B1 (en) 2003-02-26 2018-09-26 Sumitomo Electric Industries, Ltd. Amorphous carbon film and process for producing the same
JP2009045715A (ja) * 2007-08-22 2009-03-05 Sumitomo Electric Ind Ltd 高圧クーラントを用いた切削加工方法
JP2008106361A (ja) * 2007-10-18 2008-05-08 Sumitomo Electric Ind Ltd 炭素膜
JP5287407B2 (ja) * 2009-03-24 2013-09-11 三菱マテリアル株式会社 重切削加工においてすぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具
JP5287408B2 (ja) * 2009-03-24 2013-09-11 三菱マテリアル株式会社 すぐれた仕上げ面精度を示すダイヤモンド被覆工具
JP2014129218A (ja) * 2012-11-30 2014-07-10 Sumitomo Electric Ind Ltd ダイヤモンド多結晶体およびその製造方法、ならびに工具
JP7180847B2 (ja) * 2018-12-18 2022-11-30 東京エレクトロン株式会社 カーボンハードマスク、成膜装置、および成膜方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07215795A (ja) 1995-08-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7423574B2 (ja) 高双晶化配向多結晶ダイヤモンド膜及びその製造方法
US8007910B2 (en) Ultrahard multilayer coating comprising nanocrystalline diamond and nanocrystalline cubic boron nitride
US5851658A (en) Diamond coated article and process for producing thereof
Ashkihazi et al. Plateholder design for deposition of uniform diamond coatings on WC-Co substrates by microwave plasma CVD for efficient turning application
US7645513B2 (en) Cubic boron nitride/diamond composite layers
JP3291105B2 (ja) 硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材
Gaydaychuk et al. Influence of Al-Si-N interlayer on residual stress of CVD diamond coatings
US20210016364A1 (en) Ultra-fine nanocrystalline diamond precision cutting tool and manufacturing method therefor
JP2842720B2 (ja) 伸線用ダイスおよびその製造方法
US6365230B1 (en) Method of manufacturing a diamond film coated cutting tool
US6500488B1 (en) Method of forming fluorine-bearing diamond layer on substrates, including tool substrates
CN113403602B (zh) 一种表面具有纳米金刚石薄膜涂层的pcbn刀具及其制备方法
JP3245320B2 (ja) 硬質炭素膜及び硬質炭素膜被覆部材
JP2813077B2 (ja) 摺動部材
EP0549801A1 (en) Diamond-covered member and production thereof
JPH05169162A (ja) 金属加工用治具
JP2501589B2 (ja) 気相合成ダイヤモンドおよびその合成方法
Hodroj et al. Nanocrystalline diamond coatings: Effects of time modulation bias enhanced HFCVD parameters.
JPH08158051A (ja) 硬質炭素膜
JPH1015952A (ja) 樹脂加工用部材
JPH0623431B2 (ja) 硬質被膜被覆切削工具部材
JP3548337B2 (ja) 金属塑性加工用部材
JPH09314405A (ja) 被覆切削工具
Ashkihazi et al. Uniform diamond coatings on WC-Co hard alloy cutting inserts deposited by a microwave plasma CVD
Sun et al. Synthesis of nanocrystalline diamond films on smooth WC-Co cemented carbide substrates

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090322

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090322

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100322

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110322

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110322

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120322

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees