JPH09314405A - 被覆切削工具 - Google Patents

被覆切削工具

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JPH09314405A
JPH09314405A JP8138438A JP13843896A JPH09314405A JP H09314405 A JPH09314405 A JP H09314405A JP 8138438 A JP8138438 A JP 8138438A JP 13843896 A JP13843896 A JP 13843896A JP H09314405 A JPH09314405 A JP H09314405A
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JP
Japan
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cutting tool
hard carbon
film
diamond
carbon film
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JP8138438A
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English (en)
Inventor
Shigeo Atsunushi
成生 厚主
Fumio Fukumaru
文雄 福丸
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Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
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  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】成膜後の表面平滑性に優れるとともに、優れた
耐摩耗性と耐溶着性を有する長寿命の切削工具を提供す
る。 【解決手段】超硬合金、窒化珪素焼結体などの切削工具
母材の表面に、ラマン分光スペクトルにおいて1340
±40cm-1と1160±40cm-1にピークが存在
し、且つ1160±40cm-1に存在するピークのうち
最も強度の強いピーク強度をH1 、1340±40cm
-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度を
2 とした時、H1 /H2 で表されるピーク強度比が
0.05乃至2の硬質炭素膜を形成し、特に、炭素膜の
密着性を高めるために切削工具母材と硬質炭素膜との間
に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物を含有する中
間層を介在させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、旋削加工、フライ
ス切削加工などに用いられる切削工具に関し、特にその
表面に硬質炭素膜を形成した切削工具に関する。
【0002】
【従来技術】近年、超硬合金などを基体とし、その表面
に気相成長法によりダイヤモンド膜を被覆したダイヤモ
ンド被覆切削工具が提案されている。このダイヤモンド
被覆切削工具は、その表面が高硬度である反面、耐衝撃
性が低いために、専ら仕上げ加工用切削工具として用い
られている。
【0003】このような仕上げ加工用の切削工具におい
ては、切れ味がよく、切屑の放出がスムーズであること
が要求され、特に、切削工具の刃先表面が平滑であるこ
とが望まれる。また、切削工具として優れた耐摩耗性を
有することも要求されている。
【0004】一方、ダイヤモンド膜は、通常マイクロ波
CVD法等の気相成長法に基づいて成膜されるものであ
り、膜自体は、ダイヤモンド粒による多結晶体から構成
されるものであり、その膜の表面硬度は10,000以
上の硬度を有するものであり、優れた耐摩耗性を有する
ものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ダイヤモンド膜は、膜表面にダイヤモンド粒による1〜
20μmの凹凸が存在し、これにより被削材と接触する
際に膜に過度の応力が加わり、ダイヤモンド膜が剥離す
る等の問題が生じるために、ダイヤモンド膜面を研磨し
て平滑性を高める必要があった。ところが、ダイヤモン
ド膜面はそもそも高硬度であるために、研磨加工が難し
く、ダイヤモンド砥石を用いて研磨しても長時間を要し
たり、あるいは過度の研磨を行うとダイヤモンド膜が剥
離する等の問題があった。また、表面の凹凸に加え,従
来のダイヤモンド膜中には、ダイヤモンド結晶粒間に多
数のボイドが存在し、切削中に膜表面に露出したボイド
に被削材が溶着し仕上げ面不良を生じるという問題があ
った。
【0006】このような問題に対しては、例えば、析出
基板に特定の傷つけ処理を行いダイヤモンド膜の密着性
を高めたり(特開昭61−201698号公報)、基体
の表面にダイヤモンド層を介してダイヤモンド状カーボ
ン膜を形成して膜表面のボイドを無くしたり(特開平3
−28373号公報)、切削工具の刃先すくい面をダイ
ヤモンドとグラファイトで構成される硬質炭素膜を形成
して表面の平滑性と摺動性を高める(特開平5ー277
807号公報)などが提案されている。また、ダイヤモ
ンド膜の研磨方法として、例えば、ダイヤモンド膜と金
属体とを接触させ非酸化性雰囲気中で加熱し、摺動させ
る方法(特開昭63ー144940号公報)、ダイヤモ
ンド膜を加熱下で流動性金属と接触させる方法(特開平
2ー160700号公報)などの提案されている。
【0007】しかしながら、上記の先行技術によれば、
密着性を高めるために成膜前に別途処理が必要でありな
がら、充分な密着性が得られておらず,また,膜質をダ
イヤモンド中にグラファイトやダイヤモンド状カーボン
などを混入させる場合,ダイヤモンド膜そのものの硬度
が低下しダイヤモンドの優れた特性が発揮されないとい
う問題があった。
【0008】また、研磨方法として金属体と接触させて
加熱する方法では、研磨するための装置が複雑になり、
生産性に劣るという問題があった。
【0009】したがって、本発明の目的は、成膜後の表
面平滑性に優れるとともに、切削工具として優れた耐摩
耗性と耐溶着性を有する長寿命の切削工具を提供するこ
とを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するための方法について検討を重ねた結果、切削
工具母材表面の少なくとも被削材と接触する表面に,硬
質炭素膜を形成したものであって、その硬質炭素膜とし
て、ラマン分光スペクトルにおいて1160±40cm
-1と1340±40cm-1にピークが存在する硬質炭素
膜を形成すると、極めて優れた耐摩耗性を有し、しかも
緻密性と表面平滑性に優れるために、被削材による溶着
の発生のない優れた切削性能を有する切削工具が得られ
ることを見出し本発明に至った。
【0011】即ち, 本発明の被覆切削工具は、切削工具
母材の表面に硬質炭素膜を形成してなる切削工具であっ
て, 前記硬質炭素膜のラマン分光スペクトルにおいて1
340±40cm-1と1160±40cm-1にピークが
存在し、且つ1160±40cm-1に存在するピークの
うち最も強度の強いピーク強度をH1 、1340±40
cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強
度をH2 とした時、H1 /H2 で表されるピーク強度比
が0.05乃至2であることを特徴とするものである。
また、切削工具母材として、超硬合金、サーメットある
いは窒化珪素を主体とする焼結体を選択すること、さら
には、前記切削工具母材と前記硬質炭素膜との間に、少
なくともダイヤモンドと金属炭化物を含有する中間層を
形成することにより、硬質炭素膜の母材への密着性を高
めることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明における切削工具は、旋削
加工、フライス切削加工などに用いられるスローアウエ
イチップなどの切削チップやドリルなどのように、被削
材から切削によって加工するのに用いられる切削工具に
係わるものである。
【0013】本発明における切削工具は、被削材と接す
る工具表面に、ラマン分光分析のスペクトルチャートに
おいて1160±40cm-1と1340±40cm-1
ピークが存在する硬質炭素膜を形成したものである。こ
の硬質炭素膜は、ダイヤモンドを主とするものである
が、一般に知られる高純度ダイヤモンド膜は、炭素原子
間がSP3 混成で結合された構造からなり、ラマン分光
スペクトルにおいて、1340±40cm-1にのみピー
クを有するものであり、場合によってSP2 混成で結合
されたグラファイト構造の炭素等を含む場合は、150
0〜1600cm-1付近にブロードなピークを有するも
のである。
【0014】これに対して、本発明における硬質炭素膜
は、1340±40cm-1に加え、1160±40cm
-1にピークを有するものである。この1160±40c
-1のピークは、ダイヤモンド構造からなるものの、微
細な結晶のダイヤモンド粒子からなるためにその結晶の
周期が短いことを意味するものと考えられる。従って、
本発明における硬質炭素膜は、ダイヤモンド結晶が極め
て微細な粒子により構成されるものであり、そのために
従来のようなダイヤモンド結晶自形による凹凸がなく成
膜された表面はボイドもなく非常に平滑性に優れてい
る。なお、この硬質炭素膜中には、本発明の効果に影響
を及ぼさない範囲の微量でグラファイト構造を含んでい
てもよい。
【0015】よって、上記硬質炭素膜を所定の母材表面
に形成する場合において、あらゆる形状の母材の表面に
形成しても、母材表面形状に整合した平滑で緻密な膜面
を形成できるため、母材表面を所望の平滑面に仕上げて
おくことにより、母材表面形状に合致した平滑性に優れ
た硬質炭素膜を形成することができる。仮に、膜表面を
研磨する必要がある時も従来のダイヤモンド膜に比較し
てわずかな研磨で平滑なボイドのない膜面を形成でき
る。
【0016】そのために、本発明の切削工具は、ダイヤ
モンド膜の優れた硬度を損なうことなく、切削時におい
て優れた耐摩耗性を発揮するとともに、被削材が切削工
具表面に溶着することがなく、また被削材の仕上げ面の
良好な切削加工を実現することができる。
【0017】本発明における硬質炭素膜のラマン分光ス
ペクトルにおける1160±40cm-1のピーク強度に
ついて具体的に説明する。図1に示すように得られたラ
マンスペクトルの曲線において、1100cm-1と17
00cm-1の位置間で斜線を引き、これをベースライン
として、1160±40cm-1に存在するピークのうち
最も強度の高いピーク強度をH1 、1340±40cm
-1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度を
2 とする。このときH1 /H2 で表されるピーク強度
比が0.05乃至2であることが重要である。
【0018】このピーク強度比が小さすぎると、ダイヤ
モンド結晶粒子が大きく成長し過ぎ、膜中にボイドが発
生したり膜の表面粗さが大きくなり、耐摩耗性が低下し
たり被削材の溶着や仕上げ面不良が発生しやすくなる。
また、ピーク強度比が大きすぎると非晶質ダイヤモンド
の存在が増加し、硬質炭素膜自体の硬度が低下し耐摩耗
性が低下する場合がある。このピーク強度比は0.1乃
至1.0であることが望ましい。
【0019】本発明における切削工具によれば、上記硬
質炭素膜は、所定の切削工具母材表面に被覆されたもの
であることが望ましい。その場合、硬質炭素膜は、母材
との密着性が高いことが要求される。硬質炭素膜を形成
し得る母材材種としては、例えば、窒化ケイ素、炭化ケ
イ素、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス、チタ
ン合金、超硬合金、サーメット、ステンレス鋼などの金
属が挙げられる。これらの中でも切削工具母材として適
当な強度を必要とするために、WC基超硬合金、サーメ
ットまたは窒化ケイ素を主とする焼結体からなることが
最も望ましい。
【0020】また、本発明によれば、硬質炭素膜の母材
との密着性を高める上で、母材表面と硬質炭素膜との間
に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物との複合体か
らなる中間層を介在させることにより、極めて密着性の
良い硬質炭素膜を形成することができる。
【0021】このような中間層の介在によって硬質炭素
膜と母材との密着強度が向上する理由は次のように考え
られる。原子同士は電子を介在することにより結合され
ているが、一般に、原子間の電子が一方に存在して電気
的な結び付きにより結合しているイオン結合よりも、電
子を双方の原子で共有している共有結合の方が強い結合
力を持つ。ダイヤモンドは炭素の共有結合により構成さ
れているので強い結合力を有している。したがって、ダ
イヤモンドと異種化合物との密着強度を向上させるため
には類似の結合様式である共有結合性の化合物であるこ
とが望ましいと考えられる。またダイヤモンドの成分で
ある炭素を含む化合物の方がより整合性がよいと思われ
る。金属炭化物は数多く存在するがその多くはイオン性
結合を主体としたものである。共有結合性炭化物として
は炭化ケイ素や炭化ホウ素があるが、本発明の加工用部
材においては炭化ケイ素が最も望ましい。
【0022】このような金属炭化物とダイヤモンドが混
在する中間層を硬質炭素膜と母材との間に形成すること
により、硬質炭素膜と母材との密着強度が向上する。ま
たこのダイヤモンドと、金属炭化物は層分離して存在し
ているのではなく、ダイヤモンドの周りを金属炭化物が
取り囲むような構造を呈し、ダイヤモンドが島状に分布
した構造となるためにいわゆるアンカー効果によっても
密着性が向上する。
【0023】本発明における硬質炭素膜を作製する方法
としては、従来より炭素膜を生成手段として、マイクロ
波や高周波によりプラズマを発生させて所定の基体表面
に炭素膜を形成する、いわゆるプラズマCVD法あるい
は熱フィラメント法が主流である。しかしながら、プラ
ズマCVD法では、プラズマ発生領域が小さいために、
成膜できる面積が小さく、成膜できる面積が一般に直径
20mm程度であり、加工用部材としての応用が限られ
る。また圧力が高すぎるか、もしくはプラズマ密度が低
すぎるために基体が複雑な構造を有する場合や曲面構造
を有する場合、その構造に沿った均一なプラズマが得ら
れず、膜厚分布が不均一になりやすい。
【0024】一方、熱フィラメントCVD法では、フィ
ラメントが切れやすく、また膜厚のバラツキを抑制する
ために母材の形状に合わせてフィラメントを設置する必
要があり、装置が汎用性に欠けるなどの欠点を有してい
る。
【0025】これに対して、プラズマCVD法における
プラズマ発生領域に磁界をかけた、いわゆる電子サイク
ロトロン共鳴プラズマCVD法によれば、低圧下(1t
orr以下)で高密度のプラズマを得ることができるた
めに、プラズマを広い領域に均一に発生させることがで
き、通常のプラズマCVD法に比較して約10倍程度の
面積に均一に膜の形成を行うことができる。
【0026】よって、ここでは、電子サイクロトロン共
鳴プラズマCVD法(ECRプラズマCVD法)を例に
とって説明する。この方法では、内部に所定の母材が設
置された反応炉内に反応ガスを導入すると同時に2.4
5GHzのマイクロ波を導入する。それと同時にこの領
域に対して875ガウス以上のレベルの磁界を印加す
る。これにより電子はサイクロトロン周波数f=eB/
2πm(但し,m:電子の質量、e:電子の電荷,B:
磁束密度)にもとづきサイクロトロン運動を起こす。こ
の周波数がマイクロ波の周波数(2.45GHz)と一
致すると共鳴し、電子はマイクロ波のエネルギーを著し
く吸収して加速され、中性分子に衝突、電離を生じせし
めて高密度のプラズマを生成するようになる。この時の
母材の温度は150〜1000℃、炉内圧力1×10-2
〜1torrに設定される。
【0027】かかる方法によれば、成膜時の母材温度、
炉内圧力および反応ガス濃度を変化させることにより成
膜される硬質炭素膜の成分等が変化する。具体的には、
炉内圧力が高くなるとプラズマの領域が小さくなり、膜
の成長速度が下がるが結晶性は向上する傾向にある。ま
た、反応ガス濃度が高くなると、膜を構成する粒子の大
きさが小さくなり、結晶性が悪くなる傾向にある。これ
らの条件を具体的には後述する実施例に記載されるよう
に適宜制御することにより、前述したH1 /H2 比を制
御することができる。
【0028】上記の成膜方法において、本発明の被覆切
削工具を作製する場合、硬質炭素膜は、原料ガスとして
水素と、炭素含有ガスを用いる。用いる炭素含有ガスと
しては、例えば、メタン、エタン、プロパンなどのアル
カン類、エチレン、プロピレンなどのアルケン類、アセ
チレンなどのアルキン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水
素類、シクロプロパンなどのシクロパラフィン類、シク
ロペンテンなどのシクロオレフィン類などが挙げられ
る。また一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、
エチルアルコール、アセトンなどの含酸素炭素化合物、
モノ(ジ、トリ)メチルアミン、モノ(ジ、トリ)エチ
ルアミンなどの含窒素炭素化合物なども炭素源ガスとし
て使用することができる。これらは一種単独で用いるこ
ともできるし、二種以上で併用することもできる。
【0029】また、前述したようなダイヤモンドと炭化
ケイ素の混合物からなる中間層を形成するには、所望に
より工具母材表面にダイヤモンド生成条件で1〜5時間
程度保持してダイヤモンド核発生処理を行った後、反応
ガスとして、水素と、炭素含有ガスおよびケイ素含有ガ
スを導入する。前記ケイ素含有ガスとしては、四フッ化
ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素などのハロゲン化
物、二酸化ケイ素などの酸化物の他に、モノ(ジ、ト
リ、テトラ、ペンタ)シラン、モノ(ジ、トリ、テト
ラ)メチルシランなどのシラン化合物、トリメチルシラ
ノールなどのシラノール化合物などが挙げられる。これ
らは一種単独で用いることもできるし、二種以上で併用
することもできる。
【0030】このように、本発明の切削工具における硬
質炭素膜は、微粒組織のダイヤモンドを主体とするもの
であるために、緻密質でかつ膜表面にボイド等の欠陥が
なく平滑性に優れたものである。したがって切削加工時
の刃先にこの硬質炭素膜を形成すると、仕上げ加工用の
切削工具として使用する場合に、硬質炭素膜の表面の平
滑性を高めるための研磨工程を必要とせず、あるいは研
磨してもわずかな加工で平滑な膜面を形成することがで
きる。しかも、被削材の溶着等がなく、良好な仕上げ面
と切削工具の長寿命化を図ることができる。
【0031】また、部材表面と硬質炭素膜との間に、少
なくともダイヤモンドと金属炭化物とを含む中間層を介
在させることにより、硬質炭素膜の母材への密着性を高
め、さらに長寿命化を図ることができる。
【0032】
【実施例】
(実施例1)電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD装
置の炉内に、切削工具母材として、窒化ケイ素質焼結体
(Y2O33重量%、Al2O3 4重量%含有)、超硬合金(W
C90重量%−TiC4重量%−Co6重量%)、Ti
CN基サーメット(TiCN60重量%、WC10重量
%−Mo2 C10重量%−Ni10重量%−Co10重
量%)のいずれかを設置した。なお、母材形状はISO
規格DCGT11T304とした。
【0033】そこに、H2 297sccm、CH4 3s
ccmのガスを用いて、ガス濃度1%、母材温度650
℃、炉内圧力0.1torrで3時間処理して、ダイヤ
モンド核を発生させた後、原料ガスとしてH2 ガス、C
4 ガスおよびSi(CH34 ガスを用いて、 H2 297sccm CH4 3sccm Si(CH3)4 0.3sccm の割合でガス濃度1%、母材温度650℃、炉内圧力
0.05torrの条件で電子サイクロトロン共鳴(E
CR)プラズマCVD法により最大2kガウスの強度の
磁場を印加させ、マイクロ波出力3.0kWの条件で1
0時間成膜して、ダイヤモンドと炭化ケイ素が混在した
厚さ1.0μmの中間層を形成した。
【0034】また、表1中、試料No.4,10について
は、中間層形成を H2 ガス 300sccm Si(CH3)4ガス 0.3sccm のガス比とする以外は前記と全く同様にして、炭化ケイ
素からなる中間層を1μmの厚みで形成し、同様に評価
を行った。
【0035】次に、中間層の上に、純度99.9%以上
のH2 ガス、CH4 ガス、CO2 ガスを用いて、表1に
示すガス比、ガス濃度、母材温度、炉内圧力で成膜を行
い、50μmの硬質炭素膜を形成した。
【0036】成膜した硬質炭素膜に対して、膜表面のラ
マン分光スペクトル分析を行い、ラマン分光スペクトル
チャートから1100cm-1と1700cm-1の位置間
で線を引き、これをベースラインとし、1160±40
cm-1に存在する最大ピークのピーク強度をH1 、13
40±40cm-1に存在する最大ピークのピーク強度を
2 として、H1 /H2 で表される強度比を算出した。
尚、表1中、試料No.3と試料No.8についてチャート
を図1、図2に示した。なお、ラマン分光分析における
発振源として、レーザーはArレーザー(発振線48
8.0nm)を用いた。
【0037】得られた切削工具について、成膜後の硬質
炭素膜の表面粗さを測定し最大表面粗さRmaxを測定
した。そして、この切削工具をもちいて以下の条件でフ
ライス切削試験を行った。
【0038】 被削材 Al−12%Si 切削速度 1000m/min. 切り込み 3mm 送り 0.2mm/rev 切削時間 10分 そして、上記の切削試験を最高50回繰り返し行い、硬
質炭素膜の剥離、チップのチッピング、被削材の仕上げ
不良(寸法、外観など)など、良好な切削ができなくな
ったときの切削回数とその理由を表1に記載した。ま
た、切削時間30分後のフランク摩耗量を測定し表1に
示した。
【0039】(比較例1)硬質炭素膜を被覆しない超硬
合金を用いて、実施例1と同様のフライス切削試験を行
い、その結果を表1試料No.18に示した。
【0040】(比較例2)工具母材として実施例におい
て用いた窒化ケイ素質焼結体および超硬合金を用いて、
マイクロ波CVD法によって、中間層形成を実施例と同
じガス比で、ガス濃度1%、母材温度950℃、炉内圧
力30torrの条件で10時間成膜した後、さらに表
1の試料No.8,13に示す条件で成膜し50μmの硬
質炭素膜を形成した。これについて、実施例1と同様の
切削試験を行い、その結果を表1試料No.8、13に示
した。
【0041】
【表1】
【0042】表1の結果によれば、H1 /H2 が0.0
5〜2の硬質炭素膜を形成した本発明の切削工具(試料
No.2〜6、9〜11、14〜16)は、表面粗さがR
max0.2μm以下の平滑性に優れるもので膜中には
ボイドなどの発生も全くないものであった。そして、切
削試験においても耐摩耗性に優れるとともに被削材の溶
着等もなく良好な仕上げ面を形成することができた。ま
た硬質炭素膜の密着性の点では、ダイヤモンドと炭化ケ
イ素からなる中間層を形成した工具では切削試験50回
後も全く剥離は認められなかったが、中間層が炭化ケイ
素のみからなる試料No.4、10では切削試験40回程
度で膜の一部に剥離箇所があった。
【0043】また、比較例として従来の超硬合金では、
耐摩耗性が不十分であり、しかも切削試験8回で被削材
の溶着が観察された。また、マイクロ波CVD法等で作
製された硬質炭素膜や、成膜条件によってH1 /H2
比率が0.05よりも小さい試料No.1、8、13で
は、いずれも表面粗さがRmax1μmを越えるもので
あり、切削試験において被削材の溶着が発生した。また
1 /H2 の比率が2よりも大きい試料No.7、12、
17では、硬質炭素膜の硬度が低下し耐摩耗性が低いも
のであった。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の切削工具
は、硬質炭素膜がボイドがなく、平滑性に優れるため
に、耐摩耗性、耐溶着性に優れるので、切削工具、特に
仕上げ加工用の切削工具としての長寿命化を図ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における硬質炭素膜(表1中、試料No.
3)のラマン分光スペクトル図である。
【図2】従来の硬質炭素膜(表1中、試料No.8)のラ
マン分光スペクトル図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】切削工具母材の表面に硬質炭素膜を形成し
    てなる被覆切削工具において、前記硬質炭素膜のラマン
    分光スペクトルにおいて1340±40cm-1と116
    0±40cm-1にピークが存在し、且つ1160±40
    cm-1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強
    度をH1 、1340±40cm-1に存在するピークのう
    ち最も強度の強いピーク強度をH2 とした時、H1 /H
    2 で表されるピーク強度比が0.05乃至2であること
    を特徴とする被覆切削工具。
  2. 【請求項2】前記切削工具母材と前記硬質炭素膜との間
    に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物を含有する中
    間層が存在することを特徴とする請求項1記載の被覆切
    削工具。
JP8138438A 1996-05-31 1996-05-31 被覆切削工具 Pending JPH09314405A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6881475B2 (en) 2001-06-13 2005-04-19 Sumitomo Electric Industries, Ltd Amorphous carbon coated tool and fabrication method thereof
US6962751B2 (en) * 2001-06-13 2005-11-08 Sumitomo Electric Industries, Ltd. Amorphous carbon coated tools and method of producing the same
WO2009116552A1 (ja) * 2008-03-18 2009-09-24 株式会社タンガロイ 非晶質炭素被覆工具

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