JP3267611B2 - リポソーム−ポリエンプレリポソーム粉末とその製造方法 - Google Patents

リポソーム−ポリエンプレリポソーム粉末とその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明はニスタチンのようなポリエンのリポソーム処
方を迅速かつ都合よく作製する上で使用できるフリーズ
ドライ粉末の製造方法に関する。
ニスタチンは様々な真菌感染の治療に用いられる、ス
トレプトミセス・ノアセイ(Streptomyces noursei)か
ら最初に単離されたテトラエン−ジエンポリエン抗生物
質である。残念ながら、ニスタチンと他のポリエン類は
その高毒性及び非水溶性のため非経口投与にとり通常有
用でない。ニスタチンのようなポリエンの処方は、非経
口投与できるのであれば、薬物の治療有用性を実質上高
めるようになる。
この特許の発明者らの一部はこれらの問題がニスタチ
ンをリン脂質小胞、即ちリポソームに処方することで克
服できることを以前に発見した。このようなリポソーム
処方はそれが投与される動物にとりかなり低毒性であ
り、かつ真菌感染に対してなお有効であるので、全身使
用に適する。米国特許第4,812,312号明細書はその発明
について開示し、参考のためここに組み込まれる。
一部のリポソーム薬物処方に関する1つの欠点はそれ
らが望ましい貯蔵寿命よりも短いことである。もう1つ
の欠点はそれらを製造するために必要なプロセスが比較
的複雑なことである。これらの欠点からみて、患者の治
療に必要なときに再水和できる安定な乾燥処方を生産す
ることが高度に望ましい。凍結乾燥、即ちフリーズドラ
イ粉末はこの要求に対して可能な解答である。しかしな
がら、実際的であるためには、凍結乾燥粉末は安定でか
つリポソームとして再調製できねばならず、商業的使用
上実際的でコスト上有効であるように十分に単純でかつ
安価であるプロセスにより製造できねばならない。
本発明は従来技術でみられたこれらの及び他の問題を
解決する。
本発明は水溶液への懸濁によるポリエン含有リポソー
ムの製造に適した粉末の生産方法に通常関する。一面に
おいて、本発明は第一溶液を形成するため少くとも1種
のリン脂質を第一有機溶媒と混合する;第一溶液を透明
化量の水と混合して透明化第一溶液を形成する;第二溶
液を形成するためポリエンを第二有機溶媒と混合する;
実質上透明な混合溶液を得るため透明化第一溶液及び第
二溶液を混合する;実質上すべての溶液を混合溶液から
除去するステップからなる、リポソーム−ポリエンプレ
リポソーム粉末の製造方法に関する。本発明のこの面の
好ましい態様において、リポソーム−ニスタチンプレリ
ポソーム粉末の製造方法は第一溶液を形成するためジミ
リストイルホスファチジルコリン及びジミリストイルホ
スファチジルグリセロールをt−ブチルアルコールと混
合する;第一溶液を透明化量の水と混合して透明化第一
溶液を形成する;第二溶液を形成するためニスタチンを
ジメチルスルホキシドと混合する;実質上透明な混合溶
液を得るため透明化第一溶液及び第二溶液を混合する;
実質上すべてのt−ブチルアルコール及びジメチルスル
ホキシドを混合溶液から除去するステップからなる。
もう1つの面において、本発明は第一溶液を形成する
ため少くとも1種のリン脂質を第一有機溶媒と混合す
る;第一溶液を透明化量の水と混合して透明化第一溶液
を形成する;第二溶液を形成するためポリエンを第二有
機溶媒と混合する;実質上透明な混合溶液を得るため透
明化第一溶液及び第二溶液を混合する;実質上すべての
溶媒を混合溶液から除去し、それによりプレリポソーム
粉末を形成する;薬学上許容される溶媒をプレリポソー
ム粉末に加えるステップからなる、非経口投与ポリエン
製剤の製造方法に関する。
もう1つの面において、本発明は第一溶液を形成する
ため少くとも1種のリン脂質を第一有機溶媒と混合す
る;第一溶液を透明化量の水と混合して透明化第一溶液
を形成する;第二溶液を形成するためポリエンを第二有
機溶媒と混合する;実質上透明な混合溶液を得るため透
明化第一溶液及び第二溶液を混合する;実質上すべての
溶媒を混合溶液から除去してプレリポソーム粉末を得る
ステップからなる方法で製造されたリポソーム−ポリエ
ンプレリポソーム粉末に関する。本発明のこの面の具体
的態様はニスタチン、ジミリストイルホスファチジルコ
リン及びジミリストイルホスファチジルグリセロールか
らなる凍結乾燥ニスタチン粉末であるが、その場合にDM
PC対DMPGの重量比は約7:3であり、その粉末はハロゲン
化溶媒を含有しない。水及び第一有機溶媒の相対的割合
はその粉末が水和された場合に挙動する様式を含めて得
られる粉末の性質及び特徴に影響を与えることが考えら
れる。溶液の極性は、水の割合が第一有機溶媒の割合以
下であることが好ましいが、溶液中における物質の組織
化とひいては最終的に形成される粉末の性質に影響を与
えると考えられる。
もう1つの面において、本発明は少なくとも1種のポ
リエン、少くとも1種のリン脂質、少くとも1種の有機
溶媒及び透明化量の水からなる実質上透明な濾過しうる
ポリエン溶液に関する。
本発明はその様々な面において従来技術にはない意外
な利点を示す。例えば、リン脂質をt−ブチルアルコー
ルのような有機溶媒と単に混合すれば透明でない溶液を
生じ、したがってプレリポソーム粉末を生産する上で使
用上望ましくないことがわかった。本発明は透明化量の
水がポリエン及び有機溶媒の溶液に添加できて、その方
法の後のステップで使用に適した透明溶液を生じるとい
う意外な発見を利用している。溶液の透明性のおかげで
後の段階でポリエンとリン脂質を実質上均一に接触させ
ることができる。更に、この溶液の濾過性のおかげで凍
結乾燥前に汚染微生物を容易に除去できる。この後者の
点は代わりの微生物除去手段としてオートクレーブ処理
に耐えられないニスタチンのようなポリエン類にとり特
に重要である。
本発明の方法で使用上必要な透明化量の水は第一有機
溶媒(例えば、t−ブチルアルコール)の量の約10%以
上の範囲であることも意外である。他のアルコール−脂
質溶液においてこのような多量の水は使用すると必ず沈
澱を起こすことが知られている。例えば、沈澱は添加さ
れる水の量がアルコールの容量の30%を超えたときにエ
タノール中で卵ホスファチジルコリンの溶液を生じる。
ジメチルスルホキシドのような第二有機溶媒がポリエ
ンの添加と共に透明化量の水を含有した透明溶液に、脂
質又はポリエンをいずれも沈澱させることなく添加でき
ることも意外である。更に、最終溶液の意外な透明性は
溶液をより容易に濾過しうるようにし、こうして全体プ
ロセスをより有利かつ経済的にする。これらの意外な結
果を説明するいかなる特定の理論にも拘束されたくない
が、t−ブチルアルコールのような第一有機溶媒は、リ
ン脂質との溶媒和物複合体、即ちかなり過剰の水又は溶
媒中であっても透明のままであるようにミセル配置で自
ら整列した複合体を形成する、と考えられる。ポリエン
もリン脂質の存在下で性質上ミセルである複合体として
自ら整列すると考えられる。
本発明は耐分解性プレリポソーム粉末からのリポソー
ム−ポリエンの処方及び再調製を容易化する。本発明の
簡易性はそれを大規模製造に適合させる。更に、それは
少くとも1年間容易に貯蔵できる安定な粉末を生産す
る。加えて、再調製された場合、本方法の製品は、ヒト
への投与、例えば真菌又はウイルス感染を治療するため
リポソームニスタチンの全身投与に適した平均サイズを
有する多層状リポソームを形成する。
本発明による方法は下記ステップを含むことができ
る。最初に、1種以上のリン脂質が第一有機溶媒と混合
される。使用できるリン脂質はリポソームの製造に適し
た当業者に周知のものである。本発明で特に好ましい2
つの具体例はジミリストイルホスファチジルコリン及び
ジミリストイルホスファチジルグリセロールである。DM
PC対DMPGの好ましい重量比は約7:3である。第一有機溶
媒として使用上適切な有機溶媒にはt−ブチルアルコー
ルがある。リン脂質対第一有機溶媒の比率は好ましくは
約10g:160cc〜約10g:640cc、最も好ましくは約10g:320c
cである。リン脂質及び第一有機溶媒の混合で第一溶液
を得る。
次いで透明化量の水が第一溶液に加えられ、その溶液
を透明化する。“透明化量の水”とは既に存在するリン
脂質及び第一有機溶媒の溶液を透明化させる上で有効な
量の水を意味するために本特許で用いられる。この量の
水は第一溶液中における第一有機溶媒の量の少くとも10
重量%に相当することが好ましい。透明化量の水は第一
有機溶媒の量の100重量%以内であるが、それより多く
てもよい。好ましい態様において、水対t−ブチルアル
コールの容量比は約1:4である。換言すれば、好ましい
態様において、リン脂質対t−ブチルアルコール対水の
比率は10g:320cc:80ccである。
次のステップは第二溶液を形成するため少くとも1種
のポリエンを第二有機溶媒と混合することである。ポリ
エン対第二有機溶媒の比率は約1g:5cc〜約1g:25ccの範
囲であることが好ましい。適切なポリエン類としてはニ
スタチン、アンホテリシンB、フィリピン、ハミシン及
びメパルトリシンがある。ニスタチンが特に好ましい。
適切な第二有機溶媒としてはジメチルスルホキシド(DM
SO)及びジメチルホルムアミドがある。本発明の1つの
好ましい態様において、ニスタチン対DMSOの比率は約1
g:7ccである。
第一及び第二溶液はそれらが混合される前に例えば0.
45μM孔サイズフィルターカートリッジで別々に濾過で
きる。しかしながら、微生物のような存在するいかなる
汚染物質も有機溶媒が混合溶液から除去される直前に単
一濾過ステップで通常除去できる。混合溶液中に存在す
る汚染物質の量が濾過で問題を起こすならば、追加濾過
ステップも適切に加えてよい。
次いで透明化された第一溶液は実質上透明な混合溶液
を得るため第二溶液と混合される。好ましくは、混合溶
液中におけるニスタチンの濃度は約2.5〜2.75mg/ml、リ
ン脂質の濃度は約25〜27.5mg/mlである。この溶液中に
おける固体対液体の比率は、水が加えられるときプレリ
ポソーム粉末からリポソームへの速やかな再調製にとり
重要であると考えられる。固体濃度が高すぎると、得ら
れる乾燥製品は最適より濃く、再調製に際して望ましく
は使えない。
次いで実質上すべての有機溶媒が例えば凍結乾燥によ
り混合溶液から除去され、プレリポソーム粉末を生じ
る。その粉末は水又は塩水溶液のような薬学上許容され
る溶媒を加えることでリポソームポリエンの水性処方に
再調製できる。
以下は本発明のプロセスがどのように実施できるかの
具体例である。下記量は例示であり、比例的にスケール
アップさせてよい。
ジミリストイルホスファチジルコリン7g及びジミリス
トイルホスファチジルグリセロール3g〔リポイド社(Li
poid KG),ルートヴィヒスハーフェン,ドイツ〕を第
一ミキシング容器にいれる。この容器にt−ブチルアル
コール250ccを加え、溶液をミックスする。この第一溶
液はこの時点で濁っている。次いで水250ccを加え、溶
解するまでミックスし、透明化溶液を得る。ニスタチン
〔1.1g,アメリカン・シアナミド(American Cyanami
d),パールリバー,N.Y.〕を第二ミキシング容器に別に
いれ、ジメチルスルホキシド7ccを加える。この具体的
な製造に必要なニスタチンの理論量は1g(ニスタチン:
リン脂質の重量比1:10)であるが、理論必要量の110%
を加えることが好ましい。この第二溶液を溶解するまで
ミックスし、第一溶液とミックスして、黄色透明である
混合溶液を得る。
その混合溶液を分光光度分析でニスタチン濃度に関し
て分析する。濃度を補正することが必要ならば、適切な
容量の水のような希釈剤を加える。
次いで、混合溶液を無菌0.22μM孔サイズ膜に通し、
濾液20ccを100ccバイアルに移す。次いで凍結乾燥スト
ッパーを充填バイアル上にゆるくおき、バイアルを無菌
凍結乾燥室内におき、そこで溶媒を除去する。バイアル
を室内におきながら、フリーズドライプロセス中にその
温度をモニターできるように熱電対プローブをバイアル
に挿入する。多数のバイアルを室内におくとき、熱電対
は室の妥当な横断面(例えば、室の頂部、中間及び底
部)がモニターされるようにおく。
フリーズドライ室内の循環液を−45℃に調整する。次
いで室を200ミクロン以下の真空度まで排気する。次い
で循環液温度を約2.3℃/hrの速度で最低約24時間かけて
10℃まで高める。室内真空度は、スイープ速度をコント
ロールするためにNを用いて60〜100ミクロンにゆっく
りとスイープ(掃引)するように調節する。最冷熱電対
が−5℃に達したとき、循環液を約5.5℃/hrの速度で最
低4時間かけて28℃まで高める。最冷熱電対が28℃に達
したとき、生成物は最終乾燥温度であり、約12〜30時間
それで保つ。しかる後、室内はNを用いて大気圧に調節
し、NFを微生物保持フィルターに通す。フリーズドライ
室から取出す前に、循環液の温度を25℃に調節する。凍
結乾燥サイクルの最後に、バイアルを窒素ガスで充填
し、ストッパーを完全に閉じる。凍結乾燥粉末は淡黄色
にみえ、2%以下の残留t−ブチルアルコールと1%以
下の残留ジメチルスルホキシドを含有する。
処方剤はポリエン1g毎に水約50ccを粉末に加えること
で再調製する。水和プロセスを助けるため約15〜60分間
かけて溶液を27℃以上、最も好ましくは約30〜45℃に加
熱することが好ましい。粉末は最初径が数十μの塊に分
散する。溶液を加温したとき、塊は水和し、自然にリポ
ソームを形成する。この転移が起きる温度は脂質の相転
移温度に依存し、上記物質の場合は23℃付近である。
再調製後、平均粒度は約2〜3μMであり、1%以下
が8μM以上の径を有する。リポソーム中薬物の取込み
効率は90%以上であり、100%に近づく。
前記は本発明を説明するためである。それは本発明の
すべての可能な態様の網羅的なリストではない。当業者
であれば本発明の範囲内に属する修正が前記載に加えう
ることを認識するであろう。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 レンク,ロバート ピー. アメリカ合衆国テキサス州、ニュー、ウ ェーバリー、バックナー、ロード、ピ ー、オー、ボックス、937 (72)発明者 メータ,リータ アメリカ合衆国テキサス州、ヒュースト ン、ブレイスヒーサー、5863 (72)発明者 ロペツ−バレスタイン,ガブリエル アメリカ合衆国テキサス州、ヒュースト ン、ラザーグレン、5630 (56)参考文献 国際公開89/3208(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 9/127 A61K 31/7048 A61K 47/24

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】a.第一溶液を形成するため少くとも1種の
    リン脂質をt−ブチルアルコールと混合する; b.透明化第一溶液を得るため第一溶液を水と混合する; c.第二溶液を形成するためのポリエンをジメチルスルホ
    キシド及びジメチルホルムアミドから選択される有機溶
    媒と混合する; d.透明な混合溶液を得るため透明化第一溶液及び第二溶
    液を混合する;及び e.溶媒を凍結乾燥により混合溶液から除去する; ステップからなるリポソーム−ポリエンプレリポソーム
    粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】ポリエンがニスタチンである、請求項1に
    記載の方法。
  3. 【請求項3】水がt−ブチルアルコールの量の少くとも
    10容量%の量で用いられる、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】リン脂質がジミリストイルホスファチジル
    コリン(DMPC)及びジミリストイルホスファチジルグリ
    セロール(DMPG)である、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】DMPC対DMPGの比率が重量で7:3である、請
    求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】ステップ(a)におけるリン脂質対t−ブ
    チルアルコールの比率が10g:160ml〜10g:640mlである、
    請求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】ステップ(c)におけるポリエン対有機溶
    媒の比率が1g:5ml〜1g:25mlである、請求項1に記載の
    方法。
  8. 【請求項8】更に薬学上許容される溶媒をプレリポソー
    ム粉末に加え、それにより非経口投与ポリエン製剤を生
    産する、請求項1に記載の方法。
  9. 【請求項9】少くとも1種のポリエン;少くとも1種の
    リン脂質;t−ブチルアルコール;水;及びジメチルスル
    ホキシド又はジメチルホルムアミドから選択される有機
    溶媒からなる透明な濾過しうるポリエン溶液。
  10. 【請求項10】ポリエン及び/又はリン脂質及び/又は
    水が請求項2、4〜7及び3のいずれか一項で記載され
    たとおりである、請求項9に記載のポリエン溶液。
  11. 【請求項11】ジメチルスルホキシドを含む、請求項9
    に記載のポリエン溶液。
  12. 【請求項12】ハロゲン化溶媒を含まない、請求項9に
    記載のポリエン溶液。
JP50531092A 1991-01-14 1992-01-10 リポソーム−ポリエンプレリポソーム粉末とその製造方法 Expired - Fee Related JP3267611B2 (ja)

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