JP3267378B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

静電荷像現像用トナー

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JP3267378B2
JP3267378B2 JP09852193A JP9852193A JP3267378B2 JP 3267378 B2 JP3267378 B2 JP 3267378B2 JP 09852193 A JP09852193 A JP 09852193A JP 9852193 A JP9852193 A JP 9852193A JP 3267378 B2 JP3267378 B2 JP 3267378B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真、静電記録、
静電印刷等における静電潜像を現像するための正帯電性
の静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真法を利用した複写機等において
は、無機又は有機光導電性物質を含有する感光層を備え
た感光体上に形成された静電潜像を可視化するために、
着色剤及び定着用樹脂等を有する種々の乾式或は湿式ト
ナーが用いられている。
【0003】このようなトナーの帯電性は、静電潜像を
現像するシステムにおいて最も重要な因子である。そこ
でトナーの帯電量を適切に制御し若しくは安定化するた
めに、トナー中に、正電荷又は負電荷付与性の荷電制御
剤が加えられることが多い。
【0004】従来実用化されている荷電制御剤として、
トナーに負電荷を付与するものとしては、帯電付与性が
良好なアゾ染料のクロム錯塩、コバルト錯塩、鉄錯塩な
どがある。またトナーに正電荷を付与ものには、例えば
ニグロシン系染料及びトリアリールメタン系染料のよう
な塩基性染料などがある。しかしながらこれらは比較的
濃く着色したものが多い。
【0005】様々な色彩のカラートナーに汎用し得るた
めには、無色又はそれらのカラートナーの色調に悪影響
を与えない程度に淡色であることを要する。そのような
要求を満たし得る正帯電用の荷電制御剤としては、四級
アンモニウム塩化合物(例えば特公平1−54696
号)、ピリジニウム塩化合物(例えば特公平4−290
62号)、イミダゾール系化合物(例えば特開平1−2
62555号)、トリアジン系化合物(例えば特開昭6
3−141072号)、アミン系化合物(特開昭59−
90864号)及びポリアミン系樹脂(例えば特公昭5
3−13284号)など、多数知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
正帯電用の荷電制御剤が用いられているトナーにおいて
は、トナー用樹脂に対する荷電制御剤の相溶性或は分散
性が悪いためトナーの帯電分布が不均一となったり、環
境に対する安定性が不十分で、生じた帯電が安定に保持
されないなど、トナーを多数回繰り返し使用した際の帯
電安定性が十分でないものが少なくない。そのため、こ
のような性能において更に優れた正帯電用荷電制御剤を
含有する黒色トナーやカラートナーの開発が望まれてい
る。
【0007】近年に至っては、樹脂自体に極性基を導入
するなどして、トナーに正又は負の電荷を持たせたもの
が提案されているが、帯電特性等について解決されるべ
き種々の課題が残っている。
【0008】本発明は、従来技術に存した上記のような
問題点に鑑み行なわれたものであって、その目的とする
ところは三原色トナーを始めとする様々なカラートナー
及び無彩色トナーとして汎用性があり、温度や湿度の変
化に対する帯電の安定性、すなわち耐環境安定性;帯電
特性の経時安定性、すなわち保存安定性;並びにトナー
を多数回繰り返し使用した際の帯電特性の安定性、すな
わち耐久性に優れる正帯電性の静電荷像現像用トナーを
提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アルカリ
金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイ
オン又はピリジニウムイオン、及びそれらの対イオンと
相互作用し得る、複数個のエーテル結合基を含む化合物
の荷電制御性について研究を重ねた結果、分子構造中に
オキシアルキレン基、オキシアリーレン基、或は(チ
オ)エーテル基などを1又は2以上有する特定の(金
属)錯塩化合物を備えたトナーが上記目的を達成し得る
ことを見出して本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明の静電荷像現像用トナー
は、下記一般式[I]で表わされるエーテル結合基を有
する化合物が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の
塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、ア
ンモニウム塩、或はピリジニウム塩で処理されることに
より得られる錯塩化合物の少なくとも1種を含有するこ
とを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0011】 A1 −X−{(−L−X−)m −(−Ar−X−)n }−A2 ・・・・[I]
【0012】〔式[I]中、(−L−X−)は、構成要
素オキシアルキレン基又はチオアルキレン基を意味し、
(−Ar−X−)は、構成要素オキシアリーレン基又は
チオアリーレン基を意味し、{(−L−X−)m −(−
Ar−X−)n }は、m個の構成要素(−L−X−)と
n個の構成要素(−Ar−X−)が任意の順序で結合し
たものを意味する。m及びnはそれぞれ0または1以上
の整数であって、nが0のときmは3以上、mが0のと
きnは1以上である。
【0013】Xは、−O−または−S−であり、Lは、
分岐していてもよい炭素数1乃至4のアルキレン基また
は環状アルキレン基を示し、Arは、置換基を有してい
てもよい単環又は多環アリーレン基或は-(CH2)a-Ar-
(CH2)a-基(aは1乃至4の整数)を示す。
【0014】A1 及びA2 は、互いに独立して、水素、
アルキル基、環状アルキル基、置換基を有していてもよ
い単環又は多環アリール基、アラルキル基、或は、−O
H基又は−SH基を有する含窒素複素環化合物の残基を
示す。〕
【0015】一般式[I]におけるL及びArの具体例
としては、1,2−エチレン基、1,2−又は1,3−
プロピレン基(トリメチレン基)、1,2−、1,3−
又は1,4−ブチレン基等の、(ポリ)アルキレングリ
コ−ルからのアルキレン基;1,2−又は1,4−シク
ロヘキシレン基等の環状アルキレン基;1,2−、1,
3−又は1,4−フェニレン基、4−tert−ブチル−
1,2−フェニレン基、4−クロロ−1,2−フェニレ
ン基、4−ニトロ−1,2−フェニレン基、2,3−ナ
フチレン基、7−ニトロ−2,3−ナフチレン基等の、
ポリエーテルや(芳香族)ジオール化合物からの置換又
は無置換アリーレン基が挙げられる。
【0016】一般式[I]におけるA1 及びA2 の具体
例としては、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル
のような低級アルキル基、シクロヘキシルのような環状
アルキル基、ベンジル、フェネチルのようなアラルキル
基、フェノール、o−ニトロフェニール、p−クロロフ
ェノール、o−クレゾール、tert−ブチルフェノール、
p−オクチルフェノール、(チオ)カテコールのよう
な、フェノールもしくはカテコール類からの置換又は無
置換フェニル基、ニトロ基、アルキル基又はハロゲン基
で置換されていてもよい、2−ナフトールや2,3−ジ
ヒドロキシナフタリンからの置換又は無置換ナフチル
基、2−ヒドロオキシピリジン、8−ヒドロオキシキノ
リン、2−ヒドロオキシカルバゾールのような含窒素複
素環化合物からの基などが挙げられ、これらのうち8−
ヒドロオキシキノリンからの8−キノリル基が好まし
い。
【0017】なお、本発明で、Xが硫黄である場合に
は、(ポリ)チオエーテルやチオフェノール等に置換可
能であり、これらも本発明の技術的範囲に包含される。
【0018】上記一般式[I]で表わされる化合物は、 Shozo Yanagida et al, Bulletin of the chemical
society of Japan, Vol.51(11), 3111,1978 Burkhard Tummler et al, J. Am. Chem. Soc., 101:
10, May 9, 1979 Kazuo Yamaguchi, Bull. Chem. Soc. Jpn. 62, 1097
(1989) Kazuo Yamaguchi, Bull. Chem. Soc. Jpn. 61, 2024
(1988) Noriko Kasuga, Bull. Chem. Soc. Jpn. 64, 3548
(1991) 等の文献により既知であり、これらの文献に記載された
方法に従って合成することができる。
【0019】一般式[I]で表わされる化合物は、凡そ
次の3グループに類別される。説明の都合上、式[I]
中のXが−O−、Lがエチレン基、Arがフェニレン基
または
【0020】
【化1】
【0021】である場合のものを採りあげて、各グルー
プを具体的に説明する。
【0022】グループ 構成要素として(−L−X−)及び(−Ar−X−)を
分子構造中に含む直鎖ポリエーテル及びその誘導体:
【0023】
【化2】
【0024】 [I−1]:A1 及びA2 がフェニル、m=4、n=1
【化3】
【0025】 [I−2]:A1 及びA2 が−CH3 、m=3、n=2
【化4】
【0026】 [I−3]:A1 及びA2 がH、m=4、n=2
【化5】
【0027】[I−4]:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=4、n=1
【化6】
【0028】[I−5]:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=2、n=1
【化7】
【0029】グループ 構成要素として(−L−X−)を分子構造中に3以上含
む直鎖ポリエチレングリコール及びその誘導体: A1 −O−(−CH2CH2−O−)m −A2
【0030】 [I−6]:A1 及びA2 がH、m=20、n=0 HO-(CH2CH2O)20−H [I−7]:A1 及びA2 が−CH3 、m=6、n=0 CH3O−(CH2CH2O)6−CH3 [I−8]:A1 がH、A2 が-C2H5 、m=6、n=0 HO-(CH2CH2O)6-C2H5
【0031】 [I−9]:A1 及びA2 がフェニル、m=4、n=0
【化8】
【0032】[I−10]:A1 がフェニル、A2 が8
−キノリン、m=4、n=0
【化9】
【0033】[I−11]:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=4、n=0
【化10】
【0034】[I−12]:A1 及びA2 がベンジル、
m=6、n=0
【化11】
【0035】グループ 構成要素として
【0036】
【化12】
【0037】を分子構造中に1個含み、A1 および/ま
たはA2 が−OH基を有する含窒素複素環化合物の残基
(例えば、8−ヒドロキシキノリンの残基)である化合
物及びその誘導体:
【0038】
【化13】
【0039】[I−13]:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=0、n=1
【化14】
【0040】[I−14]:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=2、n=1
【化15】
【0041】[I−15]:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=0、n=1
【化16】
【0042】[I−16]:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=2、n=1
【化17】
【0043】本明細書では、一般式[I]で表されると
ころの、(−O−)基または(−S−)基を有する化合
物を、以下、それぞれ「ポリ(−O−)化合物」、「ポ
リ(−S−)化合物」という。
【0044】本発明の静電荷像現像用トナーに用いる
(金属)錯塩化合物は、前記例示のような「ポリ(−O
−)化合物」または「ポリ(−S−)化合物」を、アル
カリ金属塩(例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、
塩化カリウム、塩化セシウム、ヨウ化カリウム、臭化ル
ビジウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、チオシ
アン酸カリウム、硫酸カリウム、メチル硫酸カリウム、
ステアリン酸ナトリウム、サリチル酸カリウム);アル
カリ土類金属塩(例えば、塩化マグネシウム、塩化バリ
ウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸バリウ
ム、硫酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸
マグネシウム);アルカリ(土類)金属の水酸化物(例
えば、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネ
シウム);或いは、
【0045】アンモニウム塩やピリジニウム塩(例え
ば、チオシアン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニ
ウム、ヨウ化アンモニウム、臭化メチルアンモニウム、
テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルメチル
−ヘキサデシルアンモニウムクロライド、ヨウ化ピリジ
ニウム)等で錯塩化することにより得られる。本発明に
は、これらのうちチオシアン酸の、アルカリ金属塩、ア
ルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩が好ましい。
【0046】本発明のトナーに用いる錯塩化合物(錯
体)における錯結合は、従来の錯体といわれる化合物に
おける錯結合より非常に弱い相互作用をも包含する。ま
た、本発明のトナーに用いる錯塩化合物は、別の観点か
らみると、例えばホスト(成分)が「ポリ(−O−)エ
ーテル」であり、ゲスト(成分)が金属塩であるような
ゲスト−ホスト化合物であり、また一方、分子量が20
00乃至5000程度までの高分子化合物であり得る。
【0047】本発明のトナーに用いる錯塩化合物の構造
は、例えば、「ポリ(−O−)化合物」と金属塩(例え
ば、KSCN)との弱い結合からなる次のようなもので
あると推定される。
【0048】
【化18】
【0049】以下、本明細書では、本発明のトナーにお
ける錯塩化合物を次のように表示する。 A1 −X−{(−L−X−)m −(−Ar−X−)n }−A2 ・ KSCN
【0050】上記錯塩化合物は、一般式[I]中の構成
要素である(−L−X−)または(−Ar−X−)の数
1乃至10個当たり、好ましくは1乃至5個当たり、塩
又は水酸化物(例えば、KSCN)1当量を用いて加熱
処理して得られる白色(無色性)の固体であり、正帯電
付与性を示す。帯電付与性の度合いは、「ポリ(−O
−)化合物」の構造や(−O−)結合の数や処理に用い
る塩等の種類により異なる。本発明に好適に用いること
ができる錯塩化合物の例は、次のとおりである。 グループ
【0051】 化合物例1:A1 及びA2 がフェニル、m=4、n=1
【化19】
【0052】化合物例2:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=2、n=1
【化20】 グループ 化合物例3:A1 及びA2 が−CH3 、m=6、n=0 CH3O−(CH2CH2O)6−CH3 ・ Ba(SCN)2[又はNaF]
【0053】化合物例4:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=4、n=0
【化21】 グループ
【0054】化合物例5:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=0、n=1
【化22】
【0055】化合物例6:A1 及びA2 が8−キノリ
ン、m=2、n=1
【化23】
【0056】本発明に用いる錯塩化合物は、例えば、市
販のポリエーテル化合物(例えばポリエチレングリコー
ル誘導体)、或は前記文献等に記載の方法に準じ合成し
たポリ(−O−)エーテル化合物を、前記アルカリ金属
やアルカリ土類金属の無機もしくは有機塩または水酸化
物、或はチオシアン酸アンモニウム塩等を用いて処理す
ることにより合成することができた。以下、その具体例
を示す。
【0057】合成例1(化合物例4[Ba(SCN)2錯塩]) 8−ヒドロキシキノリン290g(2.0 モル)、ジエチ
レングリコール−ジ−(2−クロロエチル)エーテル2
80g(1.2mol)、水酸化カリウム120g(2mol)及
びn−ブタノール100gを6時間還流させた。溶媒を
留去してクロロホルムにて抽出し、水洗してクロマトグ
ラム(シリカ、クロロホルム−メタノール)にて分離す
ることにより、淡黄色シロップ16.6g(下記構造の
化合物[a]、収率27%)を得た。
【0058】
【化24】
【0059】上記化合物[a]1.6g(3.6 mmol)に
チオシアン酸バリウム1.0g(3.6 mmol) を加えるこ
とにより固化物を得た。これをアセトンにて洗浄し、ア
セトンを用いて再結晶させることにより、 化合物[a]・Ba(SCN)2 で表わされる融点250乃至252℃の白色粉末1.2
g(収率45%)を得た。
【0060】合成例2(化合物例1[Ba(SCN)2錯塩]) カテコール11.0g(0.1mol)、2−(2−クロロエ
トキシ)エタノール26g(0.2 mol)、 水酸化カリウム
14.0g(0.25mol)及びn−ブタノール60gを4時
間還流させた。溶媒を留去してクロロホルムにて抽出
し、水洗してクロマトグラム(シリカ、クロロホルム−
メタノール)にて分離することにより、淡黄色液体4.
7g(下記構造の化合物[b]、収率16.3%)を得
た。
【0061】
【化25】
【0062】上記化合物[b]2.9g(0.01 mol)、
塩化トシル(TsCl)4.2g(0.022mol)及び
乾燥ピリジン50gを、氷浴で10時間撹拌し、この反
応液を水1リットルに分散させて白沈を得、これを濾
過、乾燥することにより、下記構造の化合物[c]5.
4g(収率90%)を得た。
【0063】
【化26】
【0064】上記化合物[c]5.4g(9mmo
l)、フェノール4.2g(20mmol)及び乾燥DMF2
0gを室温で10時間撹拌し、この反応液を水1リット
ルに分散させて白沈を得、これを濾過、乾燥することに
より、下記構造の化合物[d]3.2g(収率75%)
を得た。
【0065】
【化27】
【0066】上記化合物[d]1.2g(2.5mmol)
とチオシアン酸バリウム0.6g(2.5mmol)を混
ぜ、100℃に加熱すると、一旦溶融した後固化した。
これをアセトン−ベンゼンを用いて再結晶させたとこ
ろ、 化合物[d]・Ba(SCN)2 で表わされる融点160乃至180℃の白色粉末1.0
g(収率55%)を得た。
【0067】合成例3(化合物例3[Ba(SCN)2錯塩]) ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル1.6g
(5mmol) とチオシアン酸バリウム1.5g(5mmol)
とを混合して約100℃に加熱すると白く固まった。こ
の固形物をアセトンにて洗浄し、アセトンを用いて再結
晶させることにより、融点160乃至162℃の下記構
造の無色針状晶0.59g(収率21%)を得た。
【0068】
【化28】
【0069】合成例4(化合物例5[KSCN錯塩]) 8−ヒドロキシキノリン29.0g(0.2mol)、α,α’
−ジ−クロロ−m−キシレン17.5g(0.1mol) 、水
酸化カリウム12.0g(0.2mol) 及びn−ブタノール
100gを、10時間還流させた。溶媒を留去してクロ
ロホルムにて抽出し、水洗いしてクロマトグラム(シリ
カ、クロロホルム−メタノール)にて分離することによ
り、淡黄色粉末9.2g(下記構造の化合物[e]、収
率24%) を得た。
【0070】
【化29】
【0071】上記化合物[e]2.0g(5mmol) にチ
オシアン酸カリウム0.5g(5mmol) を加え、一旦加
熱して溶融させた後、冷却して固化物を得た。これをア
セトン−クロロホルムにて再結晶させることにより、 化合物[e]・KSCN で表わされる融点178乃至180℃の白色粉末1.0
g(収率40%)を得た。
【0072】合成例5(化合物例6[NH4SCN錯塩]) 2−クロロエタノールと8−ヒドロオキシキノリンとを
反応させて得られた8−(2−ヒドロキシエチルオキ
シ)キノリンを、乾燥ピリジン中で、塩化トシルと反応
させ、下記化合物[f]を得た。
【0073】
【化30】
【0074】上記化合物[f]34.3g(0.1 mmo
l)、1,4−ベンゼンジメタノール6.9g(0.05 mm
ol)、 及び乾燥DMF30gを室温で24時間撹拌し
た。溶媒を留去してクロロホルムにて抽出し、水洗して
クロマトグラム(シリカ、クロロホルム−メタノール)
にて分離することにより、淡黄色粉末16.0g(下記
構造の化合物[g]、収率62%)を得た。
【0075】
【化31】
【0076】上記化合物[g]1.0g(2mmol) にチ
オシアン酸アンモニウム0.15g(0.2mmol)を加え、
一旦加熱して溶融した後、冷却して固化物を得た。これ
をアセトン−クロロホルムを用いて再結晶させることに
より、 化合物[g]・NH4SCN で表わされる白色粉末1.1g(収率96%)を得た。
【0077】本発明の正帯電性の静電荷像現像用トナー
は、荷電制御剤として上述の(金属)錯塩化合物を、樹
脂100重量部に対して0.5乃至10重量部配合され
たものとすることが好ましい。より好ましくは、樹脂1
00重量部に対して1乃至5重量部である。
【0078】また、トナーの品質を向上させる上で、例
えば導電性粒子、流動性改良剤、画像剥離防止剤等の添
加剤を内添又は外添させることもできる。更に、本発明
では、荷電制御剤として用いる(金属)錯塩化合物と、
正帯電付与性の荷電制御剤として知られている、例え
ば、有色のニグロシン系、トリフェニルメタン系等の塩
基性染料、無色の第四級アンモニウム塩系、或はポリア
ミン樹脂系の荷電制御剤とを、本発明の目的を損なわな
い範囲で併用することができる。
【0079】本発明のトナーに用いられる樹脂として
は、次のような公知のトナー用の樹脂或は結着樹脂を例
示することができる。すなわち、スチレン樹脂、スチレ
ン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレ
ン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル
樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、フ
ェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ
プロピレン樹脂、パラフィンワックス等である。これら
の樹脂は、単独で或は数種をブレンドして用いることも
できる。
【0080】トナー用の樹脂或は結着樹脂が、減法混色
によるフルカラー用として、或はOHP(オーバーヘッ
ドプロジェクタ)等に用いられるトナーに好適に使用さ
れるためには、透明性を有すること、実質的に無色であ
ること(トナー画像に色調障害を生じない程度の色であ
ること)、本発明のトナーにおける荷電制御剤との相溶
性があること、適当な熱又は圧力下で流動性を有するこ
と、微粒化が可能であること、などの特性が要求され
る。このような樹脂としては、スチレン樹脂、アクリル
樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−メタアクリ
ル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂等を好適に
使用することができる。
【0081】本発明のトナーにおいては、着色剤とし
て、公知の多数の染料、顔料を用いることができる。カ
ラートナー用として用い得るものの具体例は次のとおり
である。すなわち、カーボンブラック、キノフタロン、
ハンザイエロー、ローダミン6Gレーキ、キナクリド
ン、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタ
ロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系等の有機
顔料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノ
ン系染料、フタロシアニン系染料などの各種の油溶性染
料や分散染料のほか、ロジン、(ロジン変性)フェノー
ル、ロジン変性マレイン酸等の樹脂により変性されたト
リアリールメタン系染料、キサンテン系染料などが挙げ
られる。
【0082】本発明の静電荷像現像用トナーには、上記
のような着色剤を、単独で又は2種以上配合して使用す
ることができる。フルカラー用の三原色トナーの調製に
好適に使用得るものは、分光特性が良好な染料・顔料で
ある。また、有彩色のモノカラートナーには、着色剤と
して、同色系の染料と顔料、例えばキノフタロン系の顔
料と染料、ローダミン系の顔料と染料、フタロシアニン
系の染料と顔料などを、適宜配合して用いることができ
る。
【0083】本発明の静電荷像現像用トナーは、例えば
次のように製造される。上記のような樹脂、着色剤及び
荷電制御剤としての(金属)錯塩化合物、並びに、必要
に応じて磁性材料、流動化剤などを、ボールミルその他
の混合機により十分混合した後、加熱ロール、ニーダ
ー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融混練
し、冷却固化後、粉砕及び分級することにより、平均粒
径5乃至20μmのトナーを得ることができる。
【0084】また、結着樹脂溶液中に材料を分散した
後、噴霧乾燥することによりトナーを得る方法、結着樹
脂を構成すべき単量体に所定材料を混合して乳化懸濁液
とした後に重合させてトナーを得る重合法トナー製造法
等を応用することができる。本発明のトナーを2成分現
像剤として用いる場合には、本発明のトナーをキャリヤ
粉と混合して用い、2成分磁気ブラシ現像法等により現
像することができる。
【0085】キャリヤーとしては、公知のものが全て使
用可能である。例示するならば、粒径50乃至200μ
m程度の鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビー
ズ等及びこれらの表面をアクリル酸エステル共重合体、
スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メ
タクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、ポリア
ミド樹脂、フッ化エチレン系樹脂等でコーテイングした
ものなどが挙げられる。
【0086】本発明のトナーを1成分現像剤として用い
る場合には、トナーを製造する際に、例えば鉄粉、ニッ
ケル粉、フェライト粉等の強磁性材料製の微粉体を適量
添加分散させて用いることができる。この場合の現像法
としては、例えば接触現像法、ジャンピング現像法等を
挙げることができる。
【0087】
【発明の効果】本発明の正帯電性の静電荷像現像用トナ
ーは、三原色トナーを始めとする様々なカラートナー及
び無彩色トナーとして汎用性があり、温度や湿度の変化
に対する帯電の安定性、すなわち耐環境安定性;帯電特
性の経時安定性、すなわち保存安定性;並びにトナーを
多数回繰り返し使用した際の帯電特性の安定性、すなわ
ち耐久性に優れる。而も、重金属を含まないため安全性
に優れる。
【0088】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明す
るが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではな
い。なお、以下の記述においては、「重量部」を「部」
と略す。
【0089】実施例1 スチレン−アクリル共重合樹脂 [商品名:ハイマーSMB600、三洋化成社製] ・・・100部 キサンテン系染料 [商品名:オイル ピンク#312、オリヱント化学工業社製]・・・ 6部 化合物例4[Ba(SCN)2錯塩] ・・・ 3部
【0090】上記配合物を高速ミキサーで均一にプレミ
キシングした。次いで、そのプレミックスをエクストル
ーダーを用いて溶解、混練し、冷却後振動ミルで粗粉砕
した。得られた粗砕物を分級機付のエアージェットミル
を用いて微粉砕することにより、粒径10乃至20μm
の透明性マゼンタトナーを得た。
【0091】得られたトナー5部に対して鉄粉キャリヤ
ー(日本鉄粉社製 TEFV 200/300)95部
を混合して現像剤を調製した。本現像剤の初期ブローオ
フ荷電量は+15.0μC/gであった。また、繰り返
し実写したところ、帯電安定性及び持続性が良好で、画
像の濃度低下やカブリ等のない良質な画像が得られた。
【0092】実施例2 スチレン−アクリル共重合樹脂 [商品名:ハイマーSMB600、三洋化成社製] ・・・100部 キノリン系染料 (C.I. Disperse Yellow 54) ・・・ 3部 化合物例6[NH4SCN錯塩] ・・・ 2部 4級アンモニウム塩 [商品名:BONTRON P-51、オリヱント化学工業社製] ・・・ 0.5部
【0093】上記配合物を実施例1と同様に処理して透
明性黄色トナーを調製し、現像剤を得た。この現像剤の
初期ブローオフ荷電量は+16.5μC/gであった。
また、繰返し実写したところ実施例1と同様な良質な画
像が得られた。
【0094】実施例3 スチレン−アクリル共重合樹脂 [商品名:ハイマーSMB600、三洋化成社製] ・・・100部 トリアリールメタン系青色染料 [商品名:オイル ブルー#613、オリヱント化学工業社製] ・・・ 5部 化合物例5[KSCN錯塩] ・・・ 3部
【0095】上記配合物を実施例1と同様に処理して透
明性青色トナーを調製し、現像剤を得た。本現像剤の初
期ブローオフ荷電量は+14.0μC/gであった。ま
た、繰返し実写したところ実施例1と同様な良質な画像
が得られた。
【0096】実施例4 スチレン−アクリル共重合樹脂 [商品名:ハイマーSMB600、三洋化成社製] ・・・100部 カーボンブラック [商品名:MA−100、三菱化成社製] ・・・ 5部 化合物例4[KF錯塩] ・・・ 3部
【0097】上記配合物を実施例1と同様に処理して黒
色トナーを調製し、現像剤を得た。本現像剤の初期ブロ
ーオフ荷電量は+15.4μC/gであった。また、繰
返し実写したところ実施例1と同様な良質な画像が得ら
れた。
【0098】実施例5 ポリエステル樹脂 [商品名:HP−301、日本合成化学社製] ・・・100部 四三酸化鉄 [商品名:EPT−500、戸田工業社製] ・・・ 40部 低重合ポリプロピレン [商品名:ビスコール500P、三洋化成社製] ・・・ 10部 カーボンブラック [商品名:MA−100、三菱化成社製] ・・・ 6部 化合物例1[Ba(SCN)2錯塩] ・・・ 3部
【0099】上記配合物をボールミルで均一に予備混合
し、プレミックスを調製した。次いで、2軸押し出し機
(商品名:PCM−30、池貝製作社製)を用いて18
0℃で溶融混練し、冷却後、粗粉砕、微粉砕及び分級を
行なうことにより、5乃至15μmの粒径の1成分トナ
ーを得た。
【0100】このトナーを用いて市販の複写機にてトナ
ー画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性が
良好で、その上、ベタ部反射濃度が1.3という良好な
画像が得られた。
【0101】比較例1 帯電特性を比較するために、実施例1で用いた化合物例
4[Ba(SCN)2錯塩]を、テトラメチルアンモニウムクロ
ライドに代えて、実施例1と同様な方法でマゼンタトナ
ーを作成した。初期ブローオフ荷電量は+5.2μC/
gであった。またこの現像剤の帯電特性は、安定性及び
持続性に欠けるものであった。
【0102】比較例2 化合物例4[KF錯塩]を用いない以外は実施例4と同様
な方法で、黒色トナーを作成した。実施例4と同様に実
写により評価したところ、画像の飛び散り、乱れ、カブ
リなどが見られ、トナーとしては不適格なものであっ
た。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−126546(JP,A) 特開 昭61−143772(JP,A) 特開 平5−61268(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G03G 9/08 CA(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式[I]で表わされるエーテル結
    合基を有する化合物が、アルカリ金属又はアルカリ土類
    金属の塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化
    物、アンモニウム塩、或はピリジニウム塩で処理される
    ことにより得られる錯塩化合物の少なくとも1種を含有
    することを特徴とする静電荷像現像用トナー。 A1 −X−{(−L−X−)m −(−Ar−X−)n }−A2 ・・・・[I] 〔式[I]中、(−L−X−)は、構成要素オキシアル
    キレン基又はチオアルキレン基を意味し、(−Ar−X
    −)は、構成要素オキシアリーレン基又はチオアリーレ
    ン基を意味し、{(−L−X−)m −(−Ar−X−)
    n }は、m個の構成要素(−L−X−)とn個の構成要
    素(−Ar−X−)が任意の順序で結合したものを意味
    する。m及びnはそれぞれ0または1以上の整数であっ
    て、nが0のときmは3以上、mが0のときnは1以上
    である。Xは、−O−または−S−であり、Lは、分岐
    していてもよい炭素数1乃至4のアルキレン基または環
    状アルキレン基を示し、Arは、置換基を有していても
    よい単環又は多環アリーレン基或は-(CH2)a-Ar-(CH2)
    a-基(aは1乃至4の整数)を示す。A1 及びA2 は、
    互いに独立して、水素、アルキル基、環状アルキル基、
    置換基を有していてもよい単環又は多環アリール基、ア
    ラルキル基、或は、−OH基又は−SH基を有する含窒
    素複素環化合物の残基を示す。〕
  2. 【請求項2】アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、
    及びアンモニウム塩が、チオシアン酸の塩である請求項
    1記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 【請求項3】A1 及びA2 が、−OH基又は−SH基を
    有する含窒素複素環化合物の残基である請求項1記載の
    静電荷像現像用トナー。
  4. 【請求項4】着色剤及び樹脂を備えてなる請求項1記載
    の静電荷像現像用トナー。
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