JP3260678B2 - 黒ビール様の発泡酒及びその製造方法 - Google Patents

黒ビール様の発泡酒及びその製造方法

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雅毅 中島
正宗 森山
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薩摩酒造株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、焦がしたさつまいもを
原料の全部あるいは一部に使用し、独特の香味と黒褐色
の色調を有するさつまいも使用の黒色発泡酒及びその製
造方法に係わる。本発明でいう発泡酒にはアルコール分
1%未満のいわゆるノンアルコール飲料をも含む。
【0002】
【従来の技術】従来よりビールは、酒税法により麦芽、
ホップ及び水を原料として発酵させたものの他、麦芽、
ホップ、水及び米その他政令で定める物品を原料として
発酵させたものであって、その原料中当該政令で定める
物品の重量の合計が麦芽の10分の5を超えないものと
され、当該政令で定める物品とは、米、とうもろこし、
こうりゃん、ばれいしょ、でんぷん、糖類又は大蔵省令
で定める苦味料若しくは着色料であり、着色料として認
められているのはカラメルのみである。この為、ビール
の製造において、さつまいもを原料の一部に使用して得
られるビール様の飲料は、酒税法によって発泡酒に分類
される。
【0003】近年、発泡酒を含むビール市場では、次々
と新商品が発売され、また地ビールブーム等によって、
夫々個性のある製品が提供され、従来のビールや発泡酒
と色調の異なる黒ビールが注目されるようになってき
た。また、健康志向を背景に、ヘルシーな感覚を有する
さつまいもを使用したビール様の発泡酒の開発も試みら
れ、これにより、既存のビールにない色彩や香味豊かな
製品とすることも研究されている。
【0004】然しながら、これまでのところ、さつまい
もを主な原料にしたビール等において、調理したさつま
いものもつ独特の香味、例えば焼き芋の香り等を活かし
た製品は存在しなかった。また、黒色麦芽を麦芽原料の
一部に使用して造る黒ビールは存在するが、さつまいも
を主な原料とした発泡酒において、さつまいも由来の黒
褐色を呈した黒ビール様の発泡酒は存在しなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】主な原料にさつまいも
を使用する発泡酒において、さつまいも由来の色調と香
味を合わせもつビール様の発泡酒、例えば焼き芋様の香
味と黒褐色の色調を合わせもった黒ビール様の発泡酒の
開発ができれば、黒ビールに、さつまいも特有の香味と
ヘルシー感を合わせもった、従来の黒ビールとは異なる
個性的な新しい発泡酒を得ることが見込まれる。
【0006】そこで、さつまいもを主な原料とする黒ビ
ール風の発泡酒を造るに当たり、製造に先立って、原料
となるさつまいもそのものを焦がす事により、従来の黒
ビール以上に甘く香ばしい香りを付与すると共に、香り
と味とが一体となったソフトな「のど越し」を実現さ
せ、これにより、焼き芋様の香味と黒褐色の色調を合わ
せもった黒ビール様の発泡酒を得ようとするものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明では、焦がしたさつまいもをビール様発泡
酒あるいは発酵飲料の原料の一部または全部として、仕
込工程で使用することにより、黒ビールの風味と、焦が
したさつまいもに由来する甘く香ばしい香りや焼き芋様
の香りをもち、澄んだ黒褐色の色調の、これまでにない
魅力的な、ビール様の発泡酒或いは発酵飲料を得ること
ができた。また、本発明では、さつまいもを焦がす程度
と焦がしたさつまいもの使用割合によって、香味の質や
強度、色調と濃淡を適宜調整する事が可能である。
【0008】本発明で用いる焦がしたさつまいもは、従
来の黒色麦芽と同様に扱える。また、本発明で用いる焦
がしたさつまいもは、予め加熱処理したさつまいもを焦
がすことが望ましく、さらに好ましくは予め加熱処理し
たさつまいもを適当な大きさに粉砕、乾燥させてから焦
がすことである。これは、予め加熱処理する事によっ
て、さつまいも中の澱粉が、さつまいも自身に存在する
β−アミラーゼ等により糖化され、これを焦がす工程
で、さつまいも内の窒素源等の関与もあって容易にカラ
メル化することによる。
【0009】
【発明実施の形態】さつまいもの一品種である「黄金千
貫」を蒸した後、放冷、粉砕、乾燥して得た粉砕乾燥芋
(A)と、これを黒褐色を呈するまで焦がして得たさつ
まいも(B)と、更に対照として黒ビール製造に使用さ
れるチョコレートモルト(C)の、水分と澱粉価の各測
定結果の例を表1.に示す。
【0010】
【表1】
【0011】粉砕乾燥芋(A)を焦がす工程では、加熱
の進行に伴なって褐色から暗褐色、更に黒褐色、黒色へ
と原料の色調が変化する。この時の香りは、加熱直後に
さつまいも由来の不快臭が放散し、加熱途中の暗褐色か
ら黒褐色に変化する時期に「焼き芋」の好ましい香りが
強く形成される(以下、この程度にまで焦がして得たさ
つまいもを軽ローストのさつまいもという)。更に、黒
褐色から黒色に変化すると、「コーヒー」様の香気が形
成される(以下、この程度にまで焦がして得たさつまい
もを重ローストのさつまいもという)。このように、焦
がしたさつまいもを使用すれば、その焦がす程度や使用
割合によって、香味の質や強さ、色調と濃淡を調整する
事が可能である。
【0012】次に、さつまいもの一品種である「黄金千
貫」を用い、蒸したさつまいもと、焦がしたさつまいも
と、麦芽を使用してスリーステップインフュージョン法
で糖化した時の原料の配合と、得た糖化液(500m
l)の色度とをEBC単位で測定した値を表2.に示
す。
【0013】
【表2】
【0014】軽ローストのさつまいもを用いた場合は、
色度に及ぼす影響は小さいが香味に仄かな焼き芋様の特
徴ある香りが付与された。一方、重ローストのさつまい
もを使用した場合は、色度に大きく関与し、チョコレー
トモルトとほぼ同等の着色効果があった。また、重ロー
ストのさつまいもの使用で糖化液に香ばしい香気と、ホ
ロ苦味が付与された。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明する
が、本発明は、これらの実施例に限られるものではな
い。
【0016】図1は、本発明による製造工程のフローチ
ャートを示すもので、実施例では、さつまいもの一品種
である「黄金千貫」15.5kgを蒸煮し、粉砕して得
た加熱処理済みさつまいもと、麦芽27.5kgと、
「黄金千貫」から得た軽ローストのさつまいも3.75
kgと、重ローストのさつまいも4.75kgとを温水
150リットルに加え、スリーステップインフュージョ
ン法により糖化後、ロイタリングによって糖化液を得
る。ロイタリングでは、温水でスパージングを行ない全
糖化液を210リットルとする。
【0017】その後、従来のビール製法と同じ方法、即
ち、ホップを加え、煮沸、冷却、発酵、更に酵母を除去
後、後発酵工程を経て、アルコール分4.5%、色度1
34EBC単位の発泡酒を得た。
【0018】本実施例で得た「さつまいも使用の黒色発
酵酒」の官能評価を表3.に示す。
【0019】
【表3】
【0020】外観は黒ビール様であり、泡がきめ細かく
クリーミーである事に加え、官能的には、「英国産:
C」と同等の苦味を有する個性的な発泡酒であり、特に
芳醇な香ばしさとキレの良さが特徴で、口当たりが柔ら
かい事が評価された。
【0021】
【発明の効果】(1)黒ビールの風味と、焦がしたさつ
まいもに由来する甘く香ばしい香りや焼き芋様の香りを
もち、澄んだ黒褐色の色調の、これまでにない魅力的な
ビール様の発泡酒あるいは発酵飲料を提供できる。
【0022】(2)さつまいもを焦がす程度と、焦がし
たさつまいもの使用割合によって、香味の質や強度、色
調と濃淡を調整する事で、更に独自の個性あるビール様
の発泡酒或いは発酵飲料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わる発酵飲料の製造工程を
示すフローチャート。
【符号の説明】 1 原料処理工程 2 糖化工程 3 濾過工程(濾過して糖化液を得る工程) 4 煮沸工程 5 トルーブ沈降工程(煮沸工程で加えたホップの残
渣等を除去する) 6 麦汁の冷却、移送工程 7 発酵工程 8 濾過工程(熟成した発酵液を清澄に濾過し原酒に
する) 2a 軽ローストの状態に焦がしたさつまいも 2b 重ローストの状態に焦がしたさつまいも
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−298978(JP,A) 特開 平9−98766(JP,A) 鹿児島新報,1996年4月19日 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12C 1/00 - 13/00 C12G 3/02 JICST(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱処理した後に粉砕さつまいもを褐色
    から黒色までのいずれかとなるように焦がしたさつまい
    もと、麦芽やホップ等のビール製造に使用される原料と
    を温水に加えて糖化し、得られた糖化液にホップを加
    え、次いで煮沸、冷却、発酵、酵母の除去、及び後発酵
    を経て造った黒ビール様の発泡酒。
  2. 【請求項2】 加熱処理した後に粉砕さつまいもを褐色
    から黒色までのいずれかとなるように焦がしたさつまい
    もと、麦芽やホップ等のビール製造に使用される原料と
    を温水に加えて糖化し、得られた糖化液にホップを加
    え、次いで煮沸、冷却、発酵、酵母の除去、及び後発酵
    を経ることを特徴とする黒ビール様の発泡酒の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 さつまいもを加熱処理して糖化し、得ら
    れた粉砕さつまいもを褐色から黒色までのいずれかとな
    るように焦がした後、麦芽やホップ等のビール製造に使
    用される原料とともに温水中に加え、濾別して固形分を
    除去した後発酵させることを特徴とする黒ビール様の発
    泡酒の製造方法。
  4. 【請求項4】 さつまいもを加熱処理して糖化し、得ら
    れた粉砕さつまいもを褐色から黒色までのいずれかとな
    るように焦がした後、麦芽とともに温水中に加え、充分
    な糖化処理を行なった後濾別して固形分を除き、濾液に
    ホップを加えて煮沸し、冷却後酵母を加えて発酵させる
    ことを特徴とする黒ビール様の発泡酒の製造方法。
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鹿児島新報,1996年4月19日

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