JP4837489B2 - 着色麦芽を用いた麦芽使用飲料の製造方法 - Google Patents
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Description
緑麦芽は、そのまま水につけておくと成長し続けるため、第二のステップとして、この緑麦芽を高温で乾燥させて、発芽を停止させる焙燥工程がある。
麦芽とは、焙燥工程により発芽が停止されたものであり、この焙燥工程には腐敗を防止し貯蔵性を高めるといった目的や、色素・香味形成物質を生成させるという目的がある。
また、この焙燥工程における焙燥温度を高くすると、麦芽が焦げて、濃色ビール用の着色麦芽になる。
したがって、しばしば黒ビールなどの着色麦芽使用飲料には、着色麦芽に起因する過剰のエグ味、焦げ味、スス焦げ臭等の香味が強く付与されてしまうという問題があった。
しかしながら、通常の麦芽使用飲料に黒ビールの有するこの芳香を付与する目的で着色麦芽を用いると、飲料の色合いが濃くなってしまうという問題があった。このため、色合いと、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭を、個別に制御する方法の開発が期待されていた。
更には、特許文献3では、カラメル麦芽のカラメル化効率を高めたカラメル麦芽の製造方法が提案されている。
しかしながら、これらの方法で得られたカラメル麦芽或いは特殊麦芽は、その麦芽の全成分(全粒麦芽)が使用されることを意図しており、麦芽を組織別に分画して、分画した組織別画分を単独もしくは複数種組み合わせて配合、使用するものではない。
かかる組織別画分によって麦芽使用飲料に与える色合い、芳醇味、エグ味、焦げ味、更にはスス焦げ臭を調整し得る点は、本発明者等によって初めて見出されたものであって、その点で、本発明は極めて特異的なものである。
(1)着色麦芽を組織ごとに分画し、分画した画分を任意の割合で使用することを特徴とする麦芽使用飲料の製造方法;
(2)着色麦芽の組織ごとの画分が、胚乳画分、内皮層画分、穀皮画分および幼芽画分、またはこれらの未分離の画分であって、分画した組織別の画分を単独または複数種配合し、麦芽使用飲料の原料とすることを特徴とする上記(1)に記載の麦芽使用飲料の製造方法;
(3)麦芽使用飲料の色合いの調整をコントロールする上記(1)または(2)に記載の麦芽使用飲料の製造方法;
(4)麦芽使用飲料の香味をコントロールする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の麦芽使用飲料の製造方法;
(5)麦芽使用飲料の香味が、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭であり、その低減または強化をコントロールするものである上記(4)に記載の麦芽使用飲料の製造方法;
である。
(6)上記(1)ないし(5)に記載のいずれかの方法により製造された麦芽使用飲料;
(7)麦芽使用飲料がビールテイスト様飲料である上記(6)に記載の麦芽使用飲料;
(8)麦芽使用飲料がビール、発泡酒、リキュール、低アルコール飲料またはノンアルコール飲料である上記(6)に記載の麦芽使用飲料;
(9)麦芽使用飲料が黒ビールである上記(6)に記載の麦芽使用飲料;
(10)EBC(European Brewery Convention)に定めるコングレス麦汁色度が10〜2000EBCの範囲になる着色麦芽の組織画分を使用した上記(6)〜(9)に記載の麦芽使用飲料;
(11)着色麦芽が濃色麦芽、黒麦芽、メラノイジン麦芽、カラメル麦芽、ブリュー麦芽、燻製麦芽またはチョコレート麦芽である上記(10)に記載の麦芽使用飲料;
である。
(12)麦芽使用飲料の製造方法において、原料としての着色麦芽を胚乳画分、内皮層画分、穀皮画分および幼芽画分に分画し、麦芽使用飲料の色合い、香味を設計するにあたり、分画した組織別の画分を単独または複数種選定して組み合わせ配合させることを特徴とする麦芽使用飲料の原料の選定方法;
(13)麦芽使用飲料の香味が、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭である上記(12)に記載の選定方法;
である。
この麦芽使用飲料における芳醇味、エグ味、色合いの調整は、消費者の好みに併せた麦芽使用飲料を製造し得るものであって、その点で、本発明は極めて特異的なものである。
本発明でいう着色麦芽とは、緑麦芽を加熱処理(焙燥処理)等を施して得られる、淡色麦芽に比較して着色度が濃いことが特長の麦芽をいう。また、原料の一部として用いて発酵飲料を製造すると、発酵飲料に着色の効果をもたらし得る着色麦芽をいう。
コングレス麦汁色度が10EBC未満の着色麦芽を用いると、本発明の目的とする、麦芽使用飲料の色合い、香味等の調整ができず、また2000EBCを超える場合には、色合い、香味が強すぎて使用することができない。
なお、通常のビールに使用する淡色麦芽のコングレス麦汁色度は、3〜8EBC程度である。
不溶性の高分子タンパク質・でんぷん・脂質がよく分解した緑麦芽をゆっくりと脱水させる。100〜105℃の焙燥温度で処理し、糖やアミノ酸のような低分子化合物が反応して着色し、香りのあるメラノイジンを生成する。
緑麦芽中に豊富に存在していた酵素の一部は失活して、高分子タンパク質の一部も凝固する。淡色麦芽に比べ焙燥温度が高く時間も長い。
このメラノイジン麦芽のコングレス麦汁色度は、20〜80EBC程度である。
様々なタイプのビールの色調整に用いられる麦芽である。淡色麦芽を湿らせ60〜80℃の温度で加熱させ始め、最終的には180〜220℃まで加熱する。その際、希望する色度を得るために30〜40分間の保持を行う。この時メラノイジンが形成され、各種のヘテロサイクリック化合物(複素環式化合物)、例えばフルフラール、フルフリルメルカプタン、その他、マルトール、イソマルトール、ピラジンが増大するが、それに伴い、焦げ臭い苦み物質も形成される。
この黒色麦芽のコングレス麦汁色度は、1000〜1800EBC程度である。
ブリュー麦芽はアロマが強く、濃醇な濃色ビール製造に用いられる。緑麦芽の麦層を、30〜40時間通気を止め、麦層の温度を40〜50℃まであげる。この温度では幼芽生育が抑制・炭酸ガスが蓄積され、蛋白質と糖は低分子へ分解し、エステルと有機酸を生成する。この時、粒内粉体は粥状又は液状化する。乾燥の後、90〜100℃の焙燥温度を3〜4時間とる。
このブリュー麦芽のコングレス麦汁色度は、10〜50EBC程度である。
麦芽を水に浸漬して水分を含ませた後、60〜75℃で焙焦器の中で穀粒内容物を力強く分解させる。その時澱粉の糊化、液化、糖化が起り、その結果得られる分解生成物が既に生成されているアミノ酸や糖と150〜180℃で反応して、メラノイジンをつくり、次いでカラメル物質を生成する。
このカラメル麦芽のコングレス麦汁色度は、50〜120EBC程度である。
一般に、穀物の表層を研磨して、穀皮などを胚乳から分離することを「搗精」という。着色麦芽を搗精機により搗精することで、核部分にあたる胚乳部分と周囲部分のいわゆる糠とに分離することができる。搗精の不留まりは、胚乳部分と糠との分離が的確に行われるように、供する着色麦芽の品質を考慮して、適宜調整することができる。胚乳画分は麦芽の内側部分であるので、高温で焙燥されてもエグ味、焦げ味、スス焦げ臭は付与されにくい。
本発明でいう内皮層画分とは、上記で得られた糠について、篩にかけることによって分離し、その結果、篩いを通過した画分を言う。篩サイズは、糠の品質等により、分離を適当に行われるものを適宜選択できるが、例えば、目開き600〜850μm、特に710μm程度のものを用いるのが好ましい。
内皮層画分は、高温で焙燥されることによって、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭が付与される。しかしながら穀皮部分及び幼芽画分ほどではない。
上記した糠の篩分けにより、穀皮画分および幼芽画分が得られる。穀皮画分および幼芽画分は麦芽の最外層に位置するため、外環境の影響を最も受ける。高温で焙燥される場合には、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭は付与され易く、特に焦げ臭は穀皮画分に由来するものである。
したがって、本発明はかかる麦芽使用飲料の製造に関し、目的とする麦芽使用飲料の色合い(カラー)、エグ味、焦げ味等の香味、スス焦げ臭を個別に制御するための原料の選定方法でもある。
かかる詳細は、後記する実施例を参照に、行うことができる。
また得られた発酵飲料については、通常の発酵飲料と同様、ビン、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して、容器入り飲料とすることができる。
なお、以下の実施例において、ビールの原麦汁エキス、コングレス麦汁色度、全窒素、アミノ態窒素、全ポリフェノールの測定は、European Brewery Convention(EBC)に定める方法により測定した。
着色麦芽の組織別各画分単独の特徴を確かめるために、以下の検証を行った。
黒麦芽の全粒、組織的画分である胚乳画分、内皮層画分、穀皮画分および幼芽画分に対して、EBCに定めるコングレス麦汁の調製法に準拠し、コングレス麦汁を調製した。
すなわち、それぞれの組織別画分50gを、45℃の温水200gに投入し、45℃にて30分間保持した。その後、1℃/分のスピードで70℃まで昇温させ、70℃にて60分間保持した。その後室温まで冷却し、固形物を取り除き、コングレス麦汁とした。
得られたコングレス麦汁を40倍に希釈し色度を測定し、元のコングレス麦汁色度(EBC)を求めた。
その結果を、下記表1に示す。
官能評価は無臭の官能検査室にて、一定の訓練を受けたビール専門パネラーで行った。各コングレス麦汁をプラスチックカップに一定量注ぎ、各パネラーの前に番号順に並べた。各コングレス麦汁をそれぞれ試飲し「エグ味」、「焦げ味」、「スス焦げ臭」の3項目について点数をつけた。
その際、全粒のコングレス麦汁に対する点数を「1」とし、各画分のコングレス麦汁の相対評価を行った。
その結果を、下記表2に示した。
具体的には、表1に示した結果から明らかなように、胚乳画分、内皮層画分、穀皮画分の組織別画分の順に、黒ビールの色に寄与している。なお、この点は、コングレス麦汁の実際の外観の色度(視覚観察)からも、明らかであった。
それに対して、穀皮画分のコングレス麦汁に関しては、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭の全てが、全粒コングレス麦汁よりも高くなっていた。
以上の結果から、着色麦芽である黒麦芽の穀皮画分は、他画分に比べ麦芽使用飲料に対する色合いへの寄与度が低いばかりでなく、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭といった香味を増強することが確認された。
着色麦芽使用製品への品質への効果を、より確実に確かめるために、着色麦芽の組織画分の分画物からビールを試作して、成分と香味を評価した。
基本的なビールの試作は、以下の方法にしたがって行った。
その後、65℃で20分間保持した後、1℃/分の速度で昇温させ78℃とした。その後、さらに78℃にて5分間保持した後、糖化を終了した。
官能評価は無臭の官能検査室にて一定の訓練を受けたビール専門パネラーで行った。各試作品をプラスチックカップに一定量注ぎ、各パネラーの前に試作品を番号順に並べた。試作品をそれぞれ試飲し「エグ味」、「焦げ味」、「スス焦げ臭」の3項目について点数をつけた。
その際、試作品1の点数を「1」とし、試作品1に対する相対評価を行った。
すなわち、試作品1、2、3及び4は淡色麦芽を90%使用した麦芽比率100%の黒ビールである。
試作品2は、淡色麦芽(全粒)90%に加え、黒麦芽から穀皮画分と内皮層画分を取り除いた胚乳画分を10%使用した黒ビールである。
試作品3は、淡色麦芽(全粒)90%に加え、黒麦芽の胚乳画分と内皮層画分をそれぞれ5%用いた黒ビールである。
試作品4は、淡色麦芽(全粒)90%に加え、黒麦芽の胚乳画分と殻皮層画分をそれぞれ5%用いた黒ビールである。
まず、全窒素、アミノ態窒素、全ポリフェノールの分析値から、本実施例で試作したビール(試作品1〜4)は、通常の淡色麦芽使用比率100%のビールと同等の全窒素、アミノ態窒素、全ポリフェノール含有のビールであることが確認できた。
試作品1(全粒麦芽)と試作品2を比較すると、色度に関しては、全粒黒麦芽から穀皮画分及び内皮層画分を取り除いた胚乳画分を用いることによって、黒ビールの色度は若干上昇した。
製品の官能結果からみれば、全粒黒麦芽から穀皮画分および内皮層画分を取り除いた胚乳画分を用いることによって、明らかにエグ味、スス焦げ臭、焦げ味などの香味が減少していた。
製品の官能結果から、試作品3は試作品1に比べるとエグ味・焦げ味・スス焦げ臭などの香味が減少していた。
製品の官能結果から、試作品4は試作品1に比べるとエグ味・焦げ味・スス焦げ臭などの香味が増加していた。
内皮層画分に関しては、胚乳画分と同様な傾向が見られたが、色度への寄与度は胚乳画分に比べ低く、またエグ味、焦げ味、スス焦げ臭などの香味の下げ幅も胚乳画分ほどではない。
穀皮画分は、全粒麦芽に比べると黒ビールの色度への寄与は少ない。黒ビールの香味に与える影響に関しては、エグ味・焦げ味・スス焦げ臭を強化する傾向にあった。
他の着色麦芽に関しても同様の検討を行った。
表6に示した麦芽原料比率で、ビールを試作した。すなわち、試作品5、6、7及び8は淡色麦芽を70%使用した麦芽比率100%のビールである。
試作品5は、淡色麦芽(全粒)70%に加え、メラノイジン麦芽全粒を30%使用した通常のビールである。
試作品2は、淡色麦芽(全粒)70%に加え、メラノイジン麦芽から穀皮画分と内皮層画分を取り除いた胚乳画分を30%使用した通常のビールである。
試作品3は、淡色麦芽(全粒)70%に加え、メラノイジン麦芽の胚乳画分と内皮層画分をそれぞれ15%用いた通常のビールである。
試作品4は、淡色麦芽(全粒)70%に加え、メラノイジン麦芽の胚乳画分と殻皮層画分をそれぞれ15%用いた通常のビールである。
したがって、より魅力的な麦芽使用飲料を製造することが可能となる。
したがって、消費者の要求に応じた各種麦芽使用飲料を提供することができる点で、産業上の利用可能性は多大なものである。
Claims (1)
- 麦芽使用飲料の製造に際して、麦芽使用飲料の色合い、エグ味、焦げ味、スス焦げ臭である香味を設計するにあたり、原料としての着色麦芽を胚乳画分、内皮層画分、穀皮画分および幼芽画分に分画し、分画した組織別の画分を単独または複数種選定して組み合わせ配合させることを特徴とする麦芽使用飲料の原料の選定方法。
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