JP3259666B2 - さび安定化処理方法および鋼材 - Google Patents

さび安定化処理方法および鋼材

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JP3259666B2 JP22451297A JP22451297A JP3259666B2 JP 3259666 B2 JP3259666 B2 JP 3259666B2 JP 22451297 A JP22451297 A JP 22451297A JP 22451297 A JP22451297 A JP 22451297A JP 3259666 B2 JP3259666 B2 JP 3259666B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大気腐食、特に海
岸地帯や、岩塩などの凍結防止剤が散布される地域等、
塩化物が飛来する環境下における大気腐食に対して保護
作用を有する安定さび層を鋼材の表面に早期に形成させ
ることができる鋼材のさび安定化処理方法、およびその
処理を施したさび安定化処理鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、鋼にP、Cu、Cr等の合金元
素を添加することにより大気中での腐食に対する耐食性
(耐候性)を向上させることができ、これらの元素を添
加した鋼は“耐候性鋼”と呼ばれている。
【0003】この耐候性鋼は、腐食の進行に伴ってその
表面に大気腐食に対して保護作用を有するさび層(以
下、「安定さび層」という)が形成され、その後の腐食
が著しく抑制されるので、塗装等の防食処理を施さず
に、メンテナンスフリーで使用することが可能である。
しかし、安定さび層が形成されるまでには数年かかり、
その間、赤さび等が発生するという問題がある。
【0004】このため、従来から、鋼表面に安定さび層
を早期に形成させようとする研究が行われてきた。例え
ば、特公昭56−33991号公報には、Fe34
Fe23 、燐酸、およびPb、Ni、Cu、P、Z
n、Cr等の単体もしくは化合物の1種以上をブチラー
ル樹脂に含有させ、溶剤と混合して耐候性鋼に塗布し、
さらにその上に耐候性皮膜を形成する処理液を塗布する
表面処理方法が開示されている。また、リン酸を補助化
合物(ジンククロメート)とともに加え、これに酸化鉄
とPVB(ポリビニルブチラール樹脂)を混合し、さら
に溶剤を加えた処理液を耐候性鋼に塗布するさび安定化
処理法が報告されている(「表面技術」Vol.47,
No.3,1996,p.273)。
【0005】しかしながら、海岸地帯や、岩塩などの凍
結防止剤が散布される地域等、多量の塩化物粒子が飛来
して鋼表面に付着する環境下においては、上記従来の技
術では、必ずしも安定さび層が形成されず、腐食が進行
し、耐候性鋼を使用したにもかかわらず塗装による防食
を施さざるを得ない場合があった。
【0006】本出願人は、硫酸クロムおよび硫酸銅のう
ちの少なくとも一方を所定量含む有機樹脂塗料を鋼材の
表面に塗布する方法を提案したが(特開平6−2261
98号公報)、この方法もあらゆる海岸地帯で適用でき
るわけではなく、性能の一層の向上が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような状
況に鑑みなされたもので、多量の塩化物が飛来する環境
下において、耐候性鋼等の低合金鋼や、普通鋼等の鋼材
の表面に安定さび層を早期に形成させることができるさ
び安定化処理方法、およびその処理を施したさび安定化
処理鋼材を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、20年以
上の期間にわたり大気中に暴露した鋼の表面に形成され
た安定さび層をX線回折等の手段により解析した結果、
安定さび層がα−(Fe1-x 、Crx )OOH(クロム
置換ゲーサイト)からなる微細結晶の緻密な集合により
構成されていることを見いだし、そのような安定さびを
鋼表面に人工的に形成させる表面処理技術を開発した
(前記特開平6−226198号公報)。しかし、飛来
塩分量の多い環境下では、安定さび層が形成されるもの
の塩素イオン(Cl- )のさび層内への浸透を完全に抑
制することは困難で、さび層の緻密化等の点で必ずしも
満足できるものではなかった。
【0009】そこで、さび層内へのCl- の浸透を抑制
し、さび層のより一層の緻密化を図るべく検討を重ねた
結果、鋼表面に塗布する樹脂塗料中に、SO4 2- および
Cr3+に加え、PO4 3- 、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO
3 -等の酸素酸(オキソ酸)イオンを含有させることによ
り所望の性能の安定さび層が得られることを見いだし
た。
【0010】本発明は、この知見に基づいてなされたも
ので、その要旨は、下記(1)のさび安定化処理方法、
および(2)のその処理を施したさび安定化処理鋼材に
ある。
【0011】(1)鋼材の表面に、塗料の固形分に対し
て、SO4 2- を0.4〜24質量%、Cr3+を0.2〜
12質量%、ならびにPO4 3- 、MoO4 2- 、WO
4 2- 、VO3 -およびNO3 -の酸素酸イオンのうちのいず
れか1種以上を合計で0.01〜10質量%含む樹脂塗
料を塗布することを特徴とする鋼材のさび安定化処理方
法。
【0012】(2)鋼材の表面が、SO4 2- を0.4〜
24質量%、Cr3+を0.2〜12質量%、ならびにP
4 3- 、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO3 -およびNO3 -
酸素酸イオンのうちのいずれか1種以上を合計で0.0
1〜10質量%含む樹脂被膜で被覆されていることを特
徴とする表面処理鋼材。
【0013】上記(1)の「塗料の固形分」とは、バイ
ンダーとしての樹脂と、SO4 2- 、Cr3+、PO4 3-
の各イオン(ここでは、これらを総称して「薬剤」とも
いう)、および樹脂塗料に添加する顔料等の塗料添加剤
をいい、塗料の調製時に加える溶剤など、塗装後の自然
乾燥により蒸散して、鋼材表面に形成される樹脂被膜
(以下、単に「被膜」ともいう)中に残存しないものは
含まない。つまり、「樹脂被膜」をいう。ただし、上記
の薬剤を、例えばNa塩やK塩として添加した場合、N
+ やK+ は被膜中に残存することとなるが、ここで
は、これら薬剤以外のイオンは含めない。
【0014】また、上記(2)の樹脂被膜に含まれる薬
剤の含有量はそれぞれ表示したイオンに換算して表した
量を示す。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明(上記(1)およ
び(2)の発明)を詳細に説明する。なお、樹脂に添加
する薬剤、塗料を構成する樹脂や塗料添加物の「%」は
「質量%」を意味する。
【0016】上記(1)のさび安定化処理方法(以下、
「本発明方法」ともいう)は、鋼材の表面に、SO
4 2- 、Cr3+、ならびに酸素酸イオン(PO4 3- 、Mo
4 2- 、WO4 2- 、VO3 -およびNO3 -のうちのいずれ
か1種以上)を所定量含む樹脂塗料を塗布する方法であ
る。この処理を施すことによって、鋼材を使用する過程
で、その表面に生成するさびを安定化すること、換言す
れば、安定さび層を形成させることができる。
【0017】(i) 硫酸イオン(SO4 2- ) Feの一部がCrで置換されることにより安定さび層と
なり得るα−FeOOH(ゲーサイト)を鋼表面に早期
に生成させるためには、SO4 2- の存在が必須である。
実際に、硫酸根を含有する化合物の水溶液が存在する条
件下で鋼材の表面に生成するさびはその大半がα−Fe
OOHとなることを、本発明者らは確認した。Cl-
含むNaClやKCl等の水溶液を鋼材の表面に塗布し
た場合は、γ−FeOOH、β−FeOOH、Fe3
4 等からなるさびが主で、安定さび層を構成し得るα−
FeOOHの生成は極めて少ない。
【0018】鋼材の表面に形成させた樹脂被膜は、Cl
- の鋼表面への浸透をある程度防ぐことができる。この
被膜は時間の経過とともに酸化等により劣化するので、
被膜により鋼とCl- との接触が妨げられている間に、
鋼と被膜内を浸透してくる酸素(O2 )および水(H2
O)との反応による鋼表面でのα−FeOOHの生成を
促進させる必要がある。そのためには、樹脂塗料に添加
するSO4 2- の量が、塗料の固形分に対して0.4%以
上であることが必要である。一方、24%を超えて含有
させると、被膜が水分を吸収しやすくなり、ポーラスに
なって欠陥部が多くなり、生成したさびの一部がその欠
陥部を通って被膜の外面に滲み出て赤さびとなり、外観
の美麗さが損なわれる。したがって、SO4 2- の含有量
は、0.4〜24%とした。
【0019】樹脂塗料中にSO4 2- を含有させるには、
Na2 SO4 、Cr2 (SO43、K2 SO4 等の塩
を用いればよい。
【0020】(ii)クロムイオン(Cr3+) さび層の構造が緻密であると、鋼の表面がO2 、H2
等の腐食性化学種から物理的に遮断されやすく、腐食は
軽減する。しかし、さび層に割れや細孔等の欠陥部があ
ると、その部分が鋼表面への腐食性化学種の供給経路と
なるので、さび層の防食性能は低下する。したがって、
鋼の耐候性を高めるためには、その表面にクロム置換ゲ
ーサイトからなる緻密で欠陥のない連続した安定さび層
を形成させる必要がある。
【0021】SO4 2- を添加した樹脂塗料を鋼材の表面
に塗布しておくことによって、それを屋外で使用してい
る間に、鋼表面にゲーサイトを生成させることができる
が、このゲーサイトは結晶粒が微細ではないためさび層
は緻密さに欠け、保護性に劣る。被膜中に存在するCr
3+は生成するゲーサイトを微細化する作用を有してお
り、樹脂塗料中にCr3+を含む化合物を含有させること
によってゲーサイトを微細化し、さび層の緻密化を達成
することができる。
【0022】クロム置換ゲーサイト〔α−(Fe1-x
Crx )OOH〕は、Crによる置換の比率が高いほど
さび層に対するCl- の浸透性が低下し、さび層の防食
機能が向上する。通常のゲーサイト〔α−FeOOH〕
からなるさび層はアニオン交換膜的性質を有しており、
アニオン(Cl- 等)の方がカチオン(Na+ 等)より
もこの層を通りやすいが、クロム置換ゲーサイト〔α−
(Fe1-x 、Crx )OOH〕からなるさび層において
は、構造式中のxがx≧0.05、すなわちCr置換率
が5%以上になると逆転してCl- の通過(浸透)が抑
制され、その抑制の度合いはCr置換率の増大とともに
大きくなる。
【0023】このような、xが0.05以上のα−(F
1-x 、Crx )OOHからなるさび層を鋼表面に形成
させるためには、Cr3+の含有量が、塗料の固形分に対
して0.2%以上となるように樹脂塗料中にCr3+を添
加することが必要である。一方、12%を超えて含有さ
せると、鋼材表面に形成される被膜自体の保護性が低下
して、被膜の外面に赤さびが生じ、外観の美麗さが損な
われる。したがって、Cr3+の含有量は、0.2〜12
%とした。
【0024】樹脂塗料中にCr3+を含有させるには、C
2 (SO43 、Cr(NO33 等、塩化物以外の
塩を用いればよい。特に、Cr2 (SO43 を用いれ
ば、SO4 2- の存在によりゲーサイトが生成されやす
く、かつ、Cr3+によりゲーサイトを構成するFeの一
部が置換されるとともに、結晶粒が微細化され、クロム
置換ゲーサイト〔α−(Fe1-x 、Crx )OOH〕の
生成が容易となる。なお、CrCl3 を単独で用いるの
は安定さび層が生成しないので避けなければならない
が、硫酸塩とともに少量(硫酸塩に対して5%以下)用
いるのであれば問題はない。
【0025】(iii) 酸素酸イオン 生成した安定さび層中に、PO4 3- 、MoO4 2- 、WO
4 2- 、VO3 -またはNO3 -の酸素酸イオンが含まれてい
ると、安定さび層へのアニオン(Cl- )の浸透に対す
る抑制作用がより一層顕著になる。なお、さび層中に含
まれる上記の酸素酸イオンは1種でもよいし、いずれか
2種以上であってもよい。
【0026】この効果を得るためには、酸素酸イオンの
含有量が、塗料の固形分に対して合計で0.01%以上
であることが必要である。一方、10%を超えて含有さ
せても、上記の作用は飽和し、被膜自体の保護性が損な
われる一因となる。したがって、酸素酸イオンの含有量
は、合計で0.01〜10%とした。
【0027】樹脂中に酸素酸イオンを含有させるには、
Na塩、K塩等として添加すればよい。PO4 3- を添加
する場合は、1%以下の少量であれば、H3 PO4 で添
加してもよい。なお、PO4 3- の存在形態はpHの低下
とともにHPO4 2- 、H2 PO4 -と変化するが、ここで
は、これらすべてのリン酸根を含めてPO4 3- と記載す
る。
【0028】また、SO4 2- も酸素酸イオンであり、上
記の酸素酸イオンと同様に安定さび層へのCl- の浸透
抑制作用を有することはいうまでもない。
【0029】(iv)樹脂 本発明方法で用いるバインダーとしての樹脂は特に制限
されない。エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、
ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキル樹脂、フタ
ル酸樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、フェノール
樹脂等が使用できる。
【0030】バインダーとしての樹脂の量が、塗料の固
形分に対して10%未満では、塗料として鋼材表面に塗
布したときに均一な被膜が得られず、強度および付着力
が小さい。一方、50%を超えると、被膜を通して浸透
する水分量が少なくなり、安定さび層の生成が遅延す
る。したがって、樹脂量は、10〜50%とするのが好
ましい。
【0031】樹脂はSO4 2- 、Cr3+等を被膜中に保持
するバインダーとしての役割をはたすとともに、鋼材表
面と樹脂被膜の界面における安定さび層の早期生成に寄
与する。すなわち、樹脂被膜は元来カチオン選択性(カ
チオンを選択的に透過させる性質)があるので、前記の
ように、被膜が劣化するまでの間、特に、鋼材が腐食環
境に曝された初期においてCl- の被膜を通しての浸透
を抑制する作用を有しているからである。
【0032】(v) 被膜の形成 上記の樹脂に、前述したCr3+、SO4 2- および酸素酸
イオン(PO4 3- 、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO3 -およ
びNO3 -の1種以上)を所定量添加し、適当量の溶剤ま
たは水を加えて塗装作業に適した粘度の塗料とするので
あるが、このとき、ベンガラ、二酸化チタン、カーボン
ブラック、フタロシアニンブルー等の着色顔料、タル
ク、シリカ、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等
の体質顔料、酸化クロム、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、
塩基性硫酸鉛等の防錆顔料、その他チキソ剤、分散剤、
酸化防止剤等、慣用されている添加剤を加えてもよい。
【0033】さらに、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ニッケル、
燐酸等、またはそれらの水溶液を添加してもよく、むし
ろその方が好適である。鉄イオン、銅イオン、ニッケル
イオン、あるいは燐酸は、クロムイオンと共存すること
によりクロム置換ゲーサイトの生成を促進する作用効果
を有する。
【0034】上記のようにして得られた塗料(樹脂塗
料)を、通常の塗装と同様にエアスプレー、エアレスス
プレーあるいは刷毛塗り等、慣用の方法で鋼材表面に塗
布する。溶剤または水分は、塗装後、自然乾燥により蒸
散するが、水分の一部は安定さびの生成反応に寄与する
と考えられる。
【0035】鋼材としては、耐候性鋼に限定されず、そ
の他の低合金鋼や普通鋼など、いわゆるさびを生成する
鋼であれば鋼種を問わない。
【0036】塗装時の膜厚は、塗料が乾燥固化した後に
5〜150μmとなるようにするのが望ましい。この膜
厚であれば、安定さび層の生成段階における鋼表面への
クロムイオンと鉄イオンの供給バランスが最適となる。
【0037】鋼材表面に安定さび層が生成した後には鋼
材の腐食速度が極めて小さくなるので、上記の樹脂塗料
による塗装の上層に着色塗膜を被覆することも可能であ
る。ショットブラスト等による処理を施した裸仕様鋼材
に着色塗膜を被覆する場合に比べて、着色塗膜の寿命延
長効果が期待できる。
【0038】塗装は、場所を選ばずどこででも施工可能
なので、製造元で出荷前に行う場合はもちろん、例え
ば、施工現場で鋼材を切断し、溶接等の加工を行った後
の鋼材にも適用することができる。また、1回の塗装で
効果が得られるので、経済性にも優れている。表面に赤
さびが発生している鋼材に対しても適用可能である。
【0039】次に、上記(2)のさび安定化処理鋼材
は、上述した(1)のさび安定化処理を施した鋼材、す
なわち、表面が、所定量のSO4 2- 、Cr3+、ならびに
酸素酸イオン(PO4 3- 、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO
3 -およびNO3 -のうちのいずれか1種以上)を含む樹脂
被膜で被覆された鋼材である。
【0040】素材鋼としては、前記のように、耐候性鋼
に限定されず、その他の低合金鋼や普通鋼など、いわゆ
るさびを生成する鋼であれば鋼種を問わず使用できる。
また、形状についても何ら限定はない。前記のように、
切断し、溶接等の加工を行った後の鋼材であってもよい
し、表面に赤さびが発生している鋼材であってもよい。
【0041】樹脂、および樹脂に添加するSO4 2- 、C
3+、酸素酸イオン(つまり、薬剤)の作用効果、なら
びにそれらの含有量の限定理由は、上述したとおりであ
る。
【0042】樹脂被膜の膜厚は、前記のように、5〜1
50μmであるのが望ましい。
【0043】このさび安定化処理鋼材は、(1)のさび
安定化処理が施された直後は鋼表面に安定さび層は形成
されていないが、多量の塩化物が飛来する環境下におい
ても、前記のように、鋼材を使用している間に、鋼材と
樹脂被膜の界面に安定さび層(α−(Fe1-x 、Cr
x )OOH)が早期に形成される。この安定さび層はC
- の浸透を妨げる作用を有しているので、その後の腐
食が抑制される。また、初期の流れさびや浮きさび等の
生成もなくなるので、安定さび層形成の過程で美観が損
なわれることもない。
【0044】
【実施例】表1に示す鋼を供試材とし、これに表2に示
す前処理を施した後、後述する表4に示す条件で塗装を
施した試験片について、海岸地帯(海岸から100m離
れた場所(新潟県直江津市内))で大気暴露試験を行っ
た。なお、表3にバインダーとして用いた樹脂を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】試験片の寸法は、100×60×3.0m
m(厚み)とした。
【0049】樹脂塗料は、表3に示したバインダー樹脂
にCr2 (SO43 を添加し、あるいは、さらに、N
2 SO4 、H3 PO4 、Na2 MoO4 、NaNO
3 、NaVO3 およびNa2 WO4 のうちのいずれか1
種以上を添加して、Cr3+、SO4 2- および酸素酸イオ
ンが表4に示す含有量になるようにし、また、顔料とし
てベンガラ、シリカ、硫酸バリウム等を適宜添加し、溶
剤(シンナー)を加えて粘度(B型粘度計測定)が20
0〜1000センチポアズ(cps)となるように調製
した。
【0050】この樹脂塗料をエアースプレーにより表4
に示した所定の膜厚になるように上記寸法の供試材の表
面(表裏両面)に塗布して試験片とし、この試験片を地
面に対して30度傾斜させ、上記の海岸地帯で4年間大
気暴露した。
【0051】試験結果を表4に併せて示す。
【0052】この表において、「平均腐食量」は、試験
片表面のさびを除去した後の試験片の重量測定を行い、
試験前後の重量差から1年当たりの腐食深さとして求め
たものである。なお、表示した値は表裏両面における腐
食深さの平均値である。また、記号Yで示した前処理
(表2参照…初期暴露により試験片の表面にさび層を形
成)を行った場合は、あらかじめ初期暴露による腐食量
からその腐食深さを求めておき、これをブランク値とし
て補正した。
【0053】「クロム置換ゲーサイト生成の有無」は、
さびの元素分析を行うとともに、さび層の断面のラマン
分光法による構造解析により確認した。さらに、さび層
の断面の偏光顕微鏡観察により安定さび層の存在をチェ
ックした(安定さび層は消光)。
【0054】また、「供試材」の鋼種の欄の数字は表1
の記号(すなわち、材質)に対応し、「樹脂」の種類の
欄の記号は表3の記号に対応する。
【0055】表4に示した結果から、本発明例では、ク
ロム置換ゲーサイトからなる安定さび層が生成し、腐食
量が比較的小さく、流れさびも認められず、海岸地帯の
厳しい環境下でも使用できることが確認された。また、
供試材の表面にさびが付着していても何ら影響は認めら
れなかった。
【0056】なお、表示していないが、SiO3 2- 、B
3 -、CO3 2- 等の他の酸素酸イオンを添加した樹脂塗
料を供試材表面に塗布した場合についても同様の効果が
認められた。
【0057】これに対して、樹脂塗料による塗装をしな
かった場合(No.31)は、耐候性鋼であっても安定
さび層が生成せず、腐食量が極端に大きく、また、塗装
を行っても、本発明方法で規定する薬剤が樹脂塗料中に
所定量含まれていない場合(No.24〜28)は、安
定さび層が生成せず、腐食抑制効果が十分ではなかっ
た。
【0058】No.29および30は、Cr3+およびS
4 2- は所定量含まれているものの酸素酸イオンが含ま
れていない場合で、部分的には安定さびが生成している
が供試材の全面を覆ってはおらず、部分的に腐食が進ん
でいた。そのため、酸素酸イオンを添加した本発明例に
比べて腐食抑制効果が若干劣る結果となった。
【0059】
【表4】
【0060】
【発明の効果】本発明のさび安定化処理方法によれば、
塩化物が飛来する厳しい環境下において、鋼材の表面に
安定さび層を早期に形成させ、腐食速度を低減させるこ
とができる。比較的安価な方法であり、メンテナンスミ
ニマム化の一つの手段として土木・建築等の分野での広
範囲の使用が可能である。また、この処理を施した本発
明のさび安泰化処理鋼材は、海岸地帯における橋梁その
他の構造物や、凍結防止剤(岩塩)を散布する高速道路
の橋桁等に使用される鋼材としても適用することができ
る。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−87280(JP,A) 特開 昭53−48946(JP,A) 特開 平6−226198(JP,A) 特公 昭58−53069(JP,B2) 特公 昭57−9631(JP,B2) 特公 昭55−30596(JP,B2) 特公 昭53−41622(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08 B05D 7/14 - 7/24

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼材の表面に、塗料の固形分に対して、S
    4 2- を0.4〜24質量%、Cr3+を0.2〜12質
    量%、ならびにPO4 3- 、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO
    3 -およびNO3 -の酸素酸イオンのうちのいずれか1種以
    上を合計で0.01〜10質量%含む樹脂塗料を塗布す
    ることを特徴とする鋼材のさび安定化処理方法。
  2. 【請求項2】鋼材の表面が、SO4 2- を0.4〜24質
    量%、Cr3+を0.2〜12質量%、ならびにPO
    4 3- 、MoO4 2- 、WO4 2- 、VO3 -およびNO3 -の酸
    素酸イオンのうちのいずれか1種以上を合計で0.01
    〜10質量%含む樹脂被膜で被覆されていることを特徴
    とするさび安定化処理鋼材。
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