JP3259483B2 - 高強度ポリフッ化ビニリデンモノフィラメント及びその製造方法 - Google Patents

高強度ポリフッ化ビニリデンモノフィラメント及びその製造方法

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JP3259483B2 JP28703093A JP28703093A JP3259483B2 JP 3259483 B2 JP3259483 B2 JP 3259483B2 JP 28703093 A JP28703093 A JP 28703093A JP 28703093 A JP28703093 A JP 28703093A JP 3259483 B2 JP3259483 B2 JP 3259483B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業用の利用分野】本発明は、高引張強度、高結節強
度のポリフッ化ビニリデンモノフィラメント及びその製
造方法に関するものである。さらに詳しくは、高引張強
度、高結節強度を有するとともに高衝撃強度、高耐摩耗
性及び優れた均一性を兼備し、特に釣糸や漁網用として
好適なポリフッ化ビニリデンモノフィラメント、及びそ
の好適な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリフッ化ビニリデンモノフィラメント
は、強靱性、耐衝撃性、透明性及び耐光性などに優れ、
しかも高比重で水中に沈み易く、屈折率が水に近く水中
における光の表面反射が極めて少なく見え難いという特
性を有するので、特に釣糸や漁網用の素材として好適で
ある。
【0003】しかし、これらの用途においては、常に品
質斑がなく、より細く、より強いこと、更には、硬い粗
面に対する耐磨耗性が良好で岩ずれ等による糸切れがな
く、且つ耐衝撃性に優れることが要求される。釣糸とし
て用いる場合は、高強度の他に、釣糸として必要な他の
特性、例えば、耐摩耗性、耐衝撃性等にも優れることが
要求される。
【0004】従来のポリフッ化ビニリデンモノフィラメ
ントの製造方法としては、例えば、特公昭58−399
22号公報や特公平3−50001号公報に記載された
方法がある。
【0005】特公昭58−39922号公報には、固有
粘度指数(ηinh)が1.3以上のポリマと1.2以
下のポリマとをブレンド紡糸し2段延伸してポリフッ化
ビニリデンモノフィラメントを得る方法が記載されてい
る。
【0006】また、特公平3−50001号公報には、
フッ化ビニリデン系樹脂からなる熱可塑性樹脂モノフィ
ラメントの延伸糸を、表面構成樹脂の低温側の融点以上
かつ主たる融点より30℃を上回らない温度の高温液体
中、又は200〜500℃程度の不活性気体中で、1.
0〜2.0倍の延伸倍率で0.1〜8秒間の短時間緊張
熱処理して、ポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを
得る方法が記載されている。
【0007】これらの製造方法によるとポリフッ化ビニ
リデンモノフィラメントの強度や耐摩擦性をある程度向
上させることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した従来
法によっても、ポリフッ化ビニリデンモノフィラメント
の結節強度や耐摩耗性等を実用上十分な水準まで向上さ
せることは困難であり、特に硬い粗面での耐摩耗性を向
上させることは難しく、さらに改善向上させることが要
求されていた。
【0009】そこで、本発明は、高引張強度、高結節強
度を有するとともに、硬い粗面での耐摩耗性や耐衝撃性
も十分に優れ、特にテグス用として有用な特性を兼備し
たポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを提供するこ
とを主たる目的とする。
【0010】併せて、そのポリフッ化ビニリデンモノフ
ィラメントの工業的製造に好適な製造方法の提供を目的
とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく種々検討した結果、表面複屈折が27×1
-3〜35×10-3で、かつ、表面に近い部分に表面よ
りも屈折率の低い複屈折極小部が存在する繊維構造とす
ることにより、硬い粗面での耐摩耗性や耐久性を大幅に
向上させることができること、表面複屈折、複屈折極小
値及び中心複屈折の水準及び複屈折極小部の位置を特定
範囲内とすることにより、高引張強度、高結節強度を有
するとともに、耐摩耗性、耐久性が十分に優れたポリフ
ッ化ビニリデンモノフィラメントとすることができるこ
と、さらに、そのポリフッ化ビニリデンモノフィラメン
トは、特定条件下で、延伸、高温短時間熱処理の後に、
再延伸しリラックス熱処理することにより、工業的に容
易に得られることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0012】即ち、本発明の高強度ポリフッ化ビニリデ
ンモノフィラメントは、繊維表面から繊維中心方向に繊
維直径の1/20以内の位置に、表面複屈折よりも低い
複屈折極小部が存在するポリフッ化ビニリデンモノフィ
ラメントであって、27×10-3≦表面複屈折≦35×
10-3、表面複屈折−複屈折極小部の複屈折≧2×10
-3、及び、中心複屈折−表面複屈折≧3×10-3を満足
する複屈折分布を有することを特徴とする。
【0013】また、本発明の高強度ポリフッ化ビニリデ
ンモノフィラメントの製造方法は、ポリフッ化ビニリデ
ン系重合体を溶融紡出し、冷却固化し、延伸倍率4.5
〜6.2で延伸を行なった後、550℃〜1000℃の
不活性な高温流体中で2秒間以下の高温短時間熱処理を
行ない、引続き再延伸し、リラックス熱処理することを
特徴とする。
【0014】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントの繊維構造は、繊維表面から繊維中心方向に繊維
直径の1/20以内の位置に表面複屈折よりも低い複屈
折極小部が存在し、表面複屈折が27×10-3以上かつ
35×10-3以下であり、複屈折極小部の複屈折は表面
複屈折よりも2×10-3以上低く、また、中心複屈折は
表面複屈折よりも3×10-3以上高いという複屈折分布
を有することによって特徴づけられる。さらに、平均複
屈折が30×10-3以上かつ45×10-3以下であるこ
とが好ましい。
【0015】モノフィラメントの耐摩耗性は摩擦試験面
の性状によっても異なり、例えば、木綿布地のように比
較的柔らかな面と摩擦させる場合には、表面が低配向で
柔らかな方が一般に耐摩耗性は向上する。
【0016】しかし、岩ずれを想定して硬い粗面に摩擦
させる場合には、表面が低配向で柔らかなことは耐摩耗
性、耐久性向上に不利であって、ある程度の配向及び硬
さが必要である。即ち、硬い粗面での耐摩耗性、耐久性
を向上させるためには、表面複屈折が27×10-3以上
かつ35×10-3以下であることが必要である。
【0017】これに対し、表面複屈折が27×10-3
満のように低過ぎる場合は、表面及びその近傍部分が柔
らか過ぎて岩ずれ等による表面破壊が生じ易く、耐磨耗
性、耐久性を十分な水準まで向上させることができな
い。逆に、表面複屈折が35×10-3を越えるほどに大
きい場合は、表面の柔軟性がなくなり亀裂が入り易く十
分な結節強度が得られず、耐摩耗性も悪い。この表面複
屈折は、好ましくは30×10-3を越えかつ34×10
-3以下が良い。
【0018】表面複屈折が27×10-3〜35×10-3
であっても、モノフィラメント表面より繊維中心方向に
繊維直径の1/20以内に表面複屈折よりも低い複屈折
極小部が存在しない場合、あるいは、表面複屈折と複屈
折極小部複屈折との差が2×10-3未満と小さ過ぎる場
合は、外からの衝撃に対して緩衝材的役割を受け持つ複
屈折極小部が実質的に存在しないので、高い衝撃強度が
得られず、また、高い結節強度を得ることが困難であ
る。
【0019】その複屈折極小部が、表面より繊維中心方
向に繊維直径の1/20の位置よりも繊維中心に近い位
置に存在すると、柔軟構造を示す部分の厚みが大きくな
り過ぎて、引張強度に寄与する中心の高配向部分が少な
くなり過ぎ、高強度が得られない。逆に、複屈折極小部
が表面に極めて近いとその複屈折極小値を表面複屈折よ
りも所定値以上低くすることが困難となり、その複屈折
極小部による効果が小さくなるので、表面に近くとも繊
維直径の1/100程度は離れていることが好ましい。
【0020】表面複屈折が27×10-3〜35×10-3
であっても、中心複屈折が表面複屈折よりも低い場合、
あるいは、その差が3×10-3未満の場合は、中心部分
の配向が不十分で高強度が得られない。
【0021】さらに、モノフィメント全体の配向は、平
均複屈折30×10-3〜45×10-3の高配向水準とす
ることが、引張強度、耐摩耗性、耐久性等を一層向上さ
せるために好ましい。なお、平均複屈折が45×10-3
を越えるほどに高いモノフィラメントは、それを得るた
めに延伸工程での延伸倍率を極端に高くしなくてはなら
ず、延伸時の糸切れ発生が多くなって安定した延伸が難
しい。
【0022】この平均複屈折は好ましくは35×10-3
以上41×10-3以下であり、35×10-3以上となす
ことによって引張強度、衝撃強度をさらに一層向上でき
る。
【0023】このように本発明で特定した複屈折分布を
有するモノフィラメントでは、中心複屈折>表面複屈折
>複屈折極小部複屈折の関係が成り立つ。その具体的な
一例の複屈折分布を図1に示す。図1は、直径0.24
mmの本発明のモノフィラメントの一例について繊維直
径方向の複屈折(示差的複屈折)を測定した結果を示す
ものであり、表面複屈折が31.4×10-3、複屈折極
小部の値が25.0×10-3、中心部複屈折が38.4
×10-3であり、複屈折極小部の値が表面から8μの位
置に存在する。
【0024】この繊維構造を有する本発明のモノフィラ
メントは、請求項3の方法で製造することができるが、
更に具体的に詳述する。
【0025】ポリフッ化ビニリデン系重合体は、ポリフ
ッ化ビニリデン構成単位が80重量%以上で、固有粘度
指数(ηinh)が0.8以上の重合体であればよい。
この重合体のチップを溶融紡糸機に供給し、220℃〜
300℃の温度、好ましくは240℃〜290℃で溶融
紡出しモノフィラメントとする。220℃未満の温度で
はポリマのスムーズな紡出が困難で線径斑となり易く、
300℃を越える温度は紡出時にポリマの分解が起こり
易く、実用上好ましくない。
【0026】この紡出モノフィラメントは、紡糸口金の
直下に設けられた温度300℃のような高温に加熱され
た窒素ガス、または、加熱水蒸気等の不活性ガスで充満
された雰囲気長150mm程度の高温気体中を通過さ
せ、その後直ちに温度20℃以下のような低温の液体中
を通過させて急冷固化させ、未延伸モノフィラメントと
する。その低温液体としては、水、グリセリンおよびポ
リエチレングリコールなどのポリフッ化ビニリデンと不
活性な液体を用いればよい。
【0027】冷却された未延伸モノフィラメントは、温
水または水からなる洗浄浴を通過させてモノフィラメン
トの表面に付着した冷却媒体を除去させた後、20℃以
下のような低温の窒素または空気等の不活性気体でモノ
フィラメントの表面の水滴を除去させ、連続的に1段目
の延伸ゾーンに送られる。
【0028】延伸時の雰囲気(浴)としては、例えば、
ポリエチレングリコール、グリセリン、シリコーンオイ
ル等の熱媒浴、乾熱気体浴、および過熱あるいは加圧水
蒸気浴等が用いられる。
【0029】1段目の延伸は延伸倍率4.5から6.2
の範囲で行う。好ましくは4.5から6.0倍がよい。
その延伸温度は(Tm−60℃)以上の温度であればよ
い。
【0030】ここで、Tmは、ポリフッ化ビニリデンの
融点(℃)であり、チップないしはバルク状のポリマを
セイコー電子工業(株)製SSC5200型示差走査熱
量計を用い、昇温速度10℃/分で測定した際の結晶融
解ピーク温度(ただし、融解ピークがいくつも重なって
出現する場合は、最も発熱量の多いピーク温度)(℃)
を意味する。
【0031】1段目の延伸温度が(Tm−60℃)より
も低いと延伸時のネックポイントを浴中に固定すること
が難しく延伸斑が発生し易く好ましくない。また、1段
目の延伸温度の上限に関しては、熱効率の高い熱媒(例
えば液体熱媒)を使用する場合には、ポリフッ化ビニリ
デンモノフィラメントの融点以下が好ましく、熱効率の
低い熱媒(例えば乾熱気体)を使用する場合は、ポリフ
ッ化ビニリデンモノフィラメントの融点を大巾に越える
温度も許容される。これらの温度条件は、以後の延伸に
おける上限温度でも同様である。
【0032】1段目の延伸の後、延伸浴温度より60℃
以上低い温水または不活性気体で冷却と同時に付着した
熱媒を除去し、表面に付着した水滴等は布またはエアー
で完全に除去し、その後引続き不活性な高温流体中で短
時間熱処理を行なう。
【0033】その高温流体が気体である場合は、加熱空
気、加熱窒素等の不活性気体が用いられるが、熱伝導率
が小さいので550℃〜1000℃と高い温度が必要で
ある。好ましくは600℃〜900℃が安定した熱処理
のために好ましい。また、その高温流体が液体である場
合は、ポリエチレングリコール、グリセリン、およびシ
リコーンオイル等の不活性液体が用いられるが、その温
度が高過ぎると極く短時間でもモノフィラメントは極め
て溶断し易いので、その温度は、ポリフッ化ビニリデン
モノフィラメントの融点より50℃を上回らない程度の
温度に抑えることが好ましい。
【0034】モノフィラメントを高温流体に接触させる
時間は、高温流体の種類により最適時間は異なるが、2
秒以下と短時間であることが必要である。接触させる時
間がそれより長いと溶断もしくは配向緩和が進み過ぎて
強度低下を誘発する。好ましくは1秒以下である。その
高温短時間熱処理処理を行う際の倍率は0.80から
1.2倍が好ましい。処理倍率が0.80未満では、糸
溶断が生じ易く糸物性の急激な悪化を生じ易いから好ま
しくない。
【0035】その後引続いて再延伸されるが、その延伸
温度、延伸倍率は、表面複屈折が所望の水準となるよう
な条件とすればよく、一般的には、(Tm−60℃)以
上が好ましく、総合延伸倍率5.5倍以上となるような
倍率が好ましい。
【0036】なお、ここでいう総合延伸倍率は、1段目
の延伸倍率と再延伸時の延伸倍率との積である。
【0037】再延伸が終了後、その延伸浴温度より60
℃以上低い温水または不活性気体で冷却と同時に付着し
た熱媒を除去し、表面に付着した水滴等は布またはエア
ーで完全に除去する。
【0038】続いてリラックス熱処理されるが、その温
度は(Tm−70℃)以上が好ましく、そのリラックス
の倍率は0.85から0.98が、特に、0.90から
0.98が好ましい。このリラックス熱処理により、延
伸工程で生じた繊維内部の不安定構造(横方向の歪、伸
びの低下、クラック)が是正される。この弛緩熱処理終
了後、仕上油剤を付着して巻き取る。
【0039】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントには、例えば顔料、染料、耐光剤、紫外線吸収
剤、酸化防止剤、結晶化抑制剤及び可塑剤などの添加剤
を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有することがで
きる。
【0040】
【作用】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラメン
トにおける中心部の高い複屈折は、分子鎖が繊維軸方向
に高度に配向していることを示し、高い引張強度の発現
に寄与している。一方、極小部を含む低い複屈折の中間
層部分は柔軟構造であり、中心部の高い引張強度を発現
する構造を保護していると同時に結節時の応力集中を緩
和し、亀裂が生じ難いため高い結節強度の発現に寄与し
ている。また、表面の高い複屈折の表面部分は、複屈折
極小部を含む中間の柔軟構造を岩ずれ等による破壊から
保護し、硬い粗面での耐磨耗性、耐久性を向上させるの
に寄与している。
【0041】この結果、高い引張強度、結節強度ととも
に、優れた耐衝撃性、耐摩耗性を有する。そしてこの引
張強度、結節強度、および耐衝撃性はいずれもモノフィ
ラメントの直径によって変化し、直径が大きいほど低下
するが、本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラメン
トは直径の増大に伴う強度低下および耐衝撃性の割合が
低いという利点もある。
【0042】釣糸として用いた場合にどのような結び方
をしても高強度が発揮されるために、引張強度と結節強
度が同時に高いことは重要である。比較的小さい曲げ歪
を受ける場合は引張強度に近く、大きな曲げ歪を受ける
場合は結節強度でほぼ代表される。
【0043】さらに、硬い粗面に対する耐摩耗性にも優
れており、例えばサンドペーパー法によって評価する
と、本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラメントは
従来の物に比べ2.5倍以上の耐切断摩耗回数を示すこ
とができる。このように硬い粗面での耐摩耗性等に優れ
耐久性に優れることは、本発明のポリフッ化ビニリデン
モノフィラメントが特異な繊維構造を有することによ
る。
【0044】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントの他の特徴は引張剛性が高い一方、曲げに対して
柔軟なことである。このことにより、例えば釣糸として
用いた時に「アタリ」を感知し易い特徴を有すると同時
にリール等に巻ぐせがつきにくいという相反する特性を
満足させることができる。
【0045】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて説明する。
得られたポリフッ化ビニリデンモノフィラメントの物性
等は以下の方法によって測定した。
【0046】(A)固有粘度指数(ηinh):試料ポ
リマをジメチルホルムアミドに0.4g/ccの濃度で
溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定し
た。
【0047】(B)平均複屈折:日本光学工業(株)製
のPOH型偏光顕微鏡を用い、D線(単色光Naラン
プ)を光源として通常のベレックコンペンセータ法によ
り求めた。
【0048】(C)表面複屈折:ベッケ法により、測定
温度20℃〜21℃下で、繊維表面において、繊維軸に
垂直な方向の屈折率(n〓)と、繊維に平行な方向の屈
折率(n‖)を測定し、その差ΔnS=(n‖)−(n
〓)をもって定義される。
【0049】(D)繊維直径方向の複屈折(示差的複屈
折):Carl Zaise Jena社製の透過干渉
顕微鏡を使用して干渉縞法で測定した。測定部位は表面
より直径の1/15までは2μ間隔で測定し、その後5
0μ間隔で中心部まで測定し、示差的複屈折の曲線を得
た。そして、この示差的複屈折の曲線から、複屈折極小
部の値、中心複屈折を求めた。
【0050】(E)引張強度、結節強度:JIS−L1
017の定義によった。試料をかせ状にとり、20℃、
65%RHの温湿度調節室で24時間放置後、(株)オ
リエンテック社製の“テンシロン”UTM−4−100
型引張試験機を用い、試長250mm、引張速度300
mm/分で測定した。
【0051】(F)耐摩耗性:(D×1/20)g(D
=モノフィラメントのデニール)の荷重をかけたモノフ
ィラメントを、サンドペーパー#320で被覆した外径
50mmφのステンレス棒が180回/分で回転してい
る上に置き、更にトラバース速度70mm/分(トラバ
ース幅35mm)でモノフィラメントを移動させて切断
に至るまでの回転数とした。
【0052】(G)衝撃結節強度: 島津製振子型衝撃試験機により、試料長250mmにひ
とえ結びをしてセットし、振子アーム長281.7m
m、振子荷重3.729Kg、持上げ角度90度、引張
速度1.5m/secの条件でモノフィラメントに衝撃
を与え、切断時の強力を繊度で除した値を衝撃結節強度
とした。なお、その切断時の強力は、ミネベア製のDS
A6−11型自動平衡式動歪測定器と横河北辰電気製の
フォトコーダー(2932型)から切断した瞬時の強力
を記録させて読取った。
【0053】
【0054】[実施例1]固有粘度指数が1.2のポリ
フッ化ビニリデン単独重合体チップ(融点Tm=177
℃)を溶融紡糸機に供給し、260℃の温度で溶融紡出
し、口金の直下に設けられた温度300℃に加熱された
雰囲気長150mmの空間内を通過させた後、直ちに温
度20℃のポリエチレングリコール液中で急冷固化させ
て未延伸モノフィラメントを得た。
【0055】冷却した未延伸モノフィラメントは、水か
らなる洗浄浴を通過させ、モノフィラメントの表面に付
着した冷却媒体を除去した後、圧空でモノフィラメント
の表面の水滴を除去し、連続的に160℃のポリエチレ
ングリコール1段目延伸浴中で5.4倍に延伸し、60
℃の温水で冷却し熱媒を洗浄後、圧空でモノフィラメン
トの表面の水滴を除去し700℃に加熱した空気中で
1.0倍で0.15秒間熱処理を行なった。引続き14
0℃のポリエチレングリコール浴中で総合倍率6.4倍
になるように再延伸し、60℃の温水で冷却洗浄後、圧
空でモノフィラメントの表面の水滴を除去し150℃で
0.95の倍率で乾熱弛緩熱処理を行ない仕上油剤を付
着して巻き取った。
【0056】紡糸に供したポリマの特性および製糸条件
を表1に示し、得られたポリフッ化ビニリデンモノフィ
ラメントの特性を表2に示した。
【0057】本発明で特定した製糸条件を満足する方法
により、本発明の構造物性を満足するモノフィラメント
が得られ、引張強度、結節強度、耐摩耗性、及び衝撃結
節強度のいずれにも優れ、繊維表面が非常に滑らかでそ
の結果水切り性も良く優れた操作性を有し、釣糸用とし
て好適な物性を具備していた。
【0058】[実施例2〜3]1段目延伸、高温短時間
熱処理、及び再延伸の際の条件を表1のように変更した
以外は、実施例1と同様のプロセスで製糸し、表2に示
す物性のポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを製造
した。
【0059】得られたモノフィラメントは、いずれも、
本発明で特定した構造物性を有し、強度、結節強度、衝
撃結節強度、及び耐摩耗性のいずれにも優れていた。
【0060】[比較例1〜6]1段目延伸、高温短時間
熱処理、及び再延伸の際の条件を表1のように変更した
以外は、実施例1と同様のプロセスで製糸し、表2に示
す物性のポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを製造
した。
【0061】いずれの場合も、本発明で特定した製糸条
件の全てを満足しておらず、得られたモノフィラメント
は、表2のとおり本発明の構造物性の一部または全部を
満足しない物であった。
【0062】比較例1の場合は高温短時間熱処理をせず
に製糸したので、表面複屈折が高過ぎ、表面複屈折と複
屈折極小値との差が小さ過ぎ、中心複屈折が表面複屈折
よりも低いモノフィラメントとなり、結節強度、衝撃結
節強度が低く耐摩耗性が悪かった。
【0063】比較例2の場合は、高温短時間熱処理の温
度が低過ぎたので、表面複屈折が高過ぎ、表面複屈折と
複屈折極小値との差が小さ過ぎ、中心複屈折と表面複屈
折との差が小さ過ぎるモノフィラメントとなり、結節強
度、衝撃結節強度が低く耐摩耗性が悪かった。
【0064】比較例3の場合は高温短時間熱処理の温度
が高過ぎたので、また、比較例4の場合は高温短時間熱
処理の時間が長過ぎたので、いずれも、再延伸時に糸が
溶断し、製糸できなかった。
【0065】比較例5の場合は、1段延伸時の倍率が低
過ぎたので、複屈折極小値が存在しないモノフィラメン
トとなり、結節強度、衝撃結節強度が低く耐摩耗性が悪
かった。
【0066】また、比較例6の場合は、再延伸をせずに
製糸したので、表面複屈折が低過ぎ、複屈折極小値が存
在しないモノフィラメントとなり、耐摩耗性が悪かっ
た。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィ
ラメントは、引張強度、結節強度、衝撃結節強度に優
れ、しかも、硬い粗面での耐摩耗性にも優れているの
で、釣糸、漁網用糸、のり網用糸などの水産用資材とし
て好適である。さらに、このように優れた機械的特性の
他に、透明性、柔軟性、繊維表面の平滑性等の特性にも
優れているので、水切れ性が向上し、漁獲性、操作性、
耐久性の優れた水産用繊維製品とすることができる。
【0070】また、本発明のポリフッ化ビニリデンモノ
フィラメントの優れた特徴を生かして水産用資材以外の
用途、例えばゴムベルトの補強・スリング、ロープなど
の運搬用資材、フェンス・落石防止などの土木資材など
の用途に有効にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラメン
トの複屈折分布の一例を示す繊維直径方向複屈折のグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/12 D01F 6/48

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維表面から繊維中心方向に繊維直径
    の1/20以内の位置に、表面複屈折よりも低い複屈折
    極小部が存在するポリフッ化ビニリデンモノフィラメン
    トであって、27×10-3≦表面複屈折≦35×1
    -3、表面複屈折−複屈折極小部の複屈折≧2×1
    -3、及び、中心複屈折−表面複屈折≧3×10-3を満
    足する複屈折分布を有することを特徴とする高強度ポリ
    フッ化ビニリデンモノフィラメント。
  2. 【請求項2】 30×10-3≦平均複屈折≦45×1
    -3を満足することを特徴とする請求項1記載の高強度
    ポリフッ化ビニリデンモノフィラメント。
  3. 【請求項3】 ポリフッ化ビニリデン系重合体を溶融
    紡出し、冷却固化し、延伸倍率4.5〜6.2で延伸を
    行なった後、550℃〜1000℃の不活性な高温流体
    中で2秒間以下の高温短時間熱処理を行ない、引続き再
    延伸し、リラックス熱処理することを特徴とする高強度
    ポリフッ化ビニリデンモノフィラメントの製造方法。
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