JPH0754211A - 高強度ポリフッ化ビニリデンモノフィラメントおよびその製造法 - Google Patents

高強度ポリフッ化ビニリデンモノフィラメントおよびその製造法

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JPH0754211A
JPH0754211A JP19980293A JP19980293A JPH0754211A JP H0754211 A JPH0754211 A JP H0754211A JP 19980293 A JP19980293 A JP 19980293A JP 19980293 A JP19980293 A JP 19980293A JP H0754211 A JPH0754211 A JP H0754211A
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JP
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monofilament
strength
polyvinylidene fluoride
birefringence
diameter
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JP19980293A
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Yasuo Umemura
康男 梅村
Hideo Nakada
秀夫 仲田
Takuji Sato
卓治 佐藤
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 直径(D)が0.05mm以上、平均複屈折
(Δn)が25×10-3以上、表層部複屈折(ΔnS )
が27×10-3未満、前記平均複屈折と前記表層部複屈
折との差(Δn−ΔnS )が10×10-3以上、表面最
大最小粗度が400nm以下、表面二乗平均粗度が60
nm以下、かつ引張強度(TT)および結節強度(K
T)が下記式(I)および(II)を満足する特性を有す
ることを特徴とする高強度ポリフッ化ビニリデンモノフ
ィラメント。TT≧−2.0×D+5.7・・・
(I)、KT≧−3.4×D+4.8・・・(II)。こ
のモノフィラメントは、フッ化ビニリデン系重合体を溶
融紡出し、20℃以下の不活性液体中で冷却固化する。 【効果】 引張強度、結節強度、耐摩耗性、衝撃結節強
度などに優れているので、釣糸、漁網用糸、およびのり
網用糸などの水産用資材として好適である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業用の利用分野】本発明は、高引張強度、高結節強
度のポリフッ化ビニリデンモノフィラメントに関するも
のである。詳しくは、主として釣糸に適した高引張強度
および高結節強度を有するとともに、優れた均一性、高
衝撃強力および高耐摩耗性を兼備したポリフッ化ビニリ
デンモノフィラメント、およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】ポリフッ化ビニリデンモノフィラメント
は、強靱性、耐衝撃性、透明性および耐光性などに優
れ、しかも高比重で水中に沈みやすく、屈折率が水に近
く、水中における光の表面反射が極めて少なく見えにく
いという特性を有し手いることから、特に釣糸や漁網用
として優れた性質を有している。
【0003】しかし、これら釣糸や漁網用の用途におい
ては、常に品質斑がなく、より細く、より強いこと、更
には耐摩耗性が良好であり、且つ耐衝撃性も優れるとい
う特性が要求されている。
【0004】従来のポリフッ化ビニリデンモノフィラメ
ントとしては、例えば特公昭58−39922号公報お
よび特公平3−50001号公報に記載されているもの
が代表的である。
【0005】すなわち、特公昭58−39922号公報
に記載されたポリフッ化ビニリデンモノフィラメント
は、固有粘度指数(ηinh)が1.3以上のポリマ
と、1.2以下のポリマとをブレンド紡糸し、2段延伸
する方法により得られたものである。
【0006】また、特公平3−50001号公報に記載
されたポリフッ化ビニリデンモノフィラメントは、フッ
化ビニリデン系樹脂からなる熱可塑性樹脂モノフィラメ
ントの延伸糸を、表面構成樹脂の低温側の融点以上且つ
主たる融点より30℃を上回らない温度の液体中、また
は200〜500℃程度の不活性気体中で、1.0〜
2.0倍の延伸倍率で0.1〜8秒間短時間緊張熱処理
する方法により得られたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
公昭58−39922号公報および特公平3−5000
1号公報に記載の技術は、ポリフッ化ビニリデンモノフ
ィラメント自体の強度を向上させる方法として相当に優
れた技術であるにも係わらず、そこで得られるモノフィ
ラメントの強度は、特に釣糸の分野においては、いまだ
に不十分なものであった。
【0008】つまり、ポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントは、一般のナイロンモノフィラメントに比べて強
度が低いため、更に高強度を有するポリフッ化ビニリデ
ンモノフィラメントの実現が要求されているばかりか、
単に強度のみを向上させるのではなく、釣糸として有用
な他の諸特性をも併せて改善向上する必要性がしきりに
望まれていたのである。
【0009】本発明は、上述した従来のポリフッ化ビニ
リデンモノフィラメントが有する問題点を解決するため
に検討した結果、達成されたものである。
【0010】したがって、本発明の目的は、高引張強
度、高結節強度を有すると共に、衝撃強度を大幅に改良
し、耐久性にも優れたポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントおよびその製造方法を提供することにあり、更に
詳しくは、モノフィラメントの表面に極めて滑らかで、
均一的な形態を有し、釣糸として有用な諸特性を大幅に
改良したポリフッ化ビニリデンモノフィラメントおよび
その製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の高強度ポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントは、フッ化ビニリデン構成単位が80重量%以上
を占め、かつ、固有粘度指数(ηinh)が0.8以上
であるフッ化ビニリデン系重合体からなるポリフッ化ビ
ニリデンモノフィラメントであって、該モノフィラメン
トの直径(D)が0.05mm以上、平均複屈折(Δ
n)が25×10-3以上、表層部複屈折(ΔnS )が2
7×10-3未満、前記平均複屈折と前記表層部複屈折と
の差(Δn−ΔnS )が10×10-3以上、表面最大最
小粗度が400nm以下、表面二乗平均粗度が60nm
以下、かつ、引張強度(TT)および結節強度(KT)
が下記式(I)および(II)を満足する特性を有するこ
とを特徴とする。
【0012】 TT≧−2.0・D+5.7 ・・・ (I) KT≧−3.4・D+4.8 ・・・ (II) (但し、Dは前記した直径である)。
【0013】また、本発明のポリフッ化ビニリデンモノ
フィラメントの製造方法は、フッ化ビニリデン構成単位
が80重量%以上を占め、かつ、固有粘度指数(ηin
h)が0.8以上であるフッ化ビニリデン系重合体を溶
融紡出し、20℃以下の不活性液体中で冷却固化した
後、150℃以上に加熱された水蒸気中で、延伸後の平
均複屈折(Δn)が25×10-3以上となる延伸倍率で
延伸し、次いで500〜1000℃の不活性気体中で、
0.02〜0.2秒の高温短時間熱処理を、1.0〜
1.2倍に延伸しつつ行うことを特徴とする。
【0014】本発明で用いるポリフッ化ビニリデンは、
ポリフッ化ビニリデンホモポリマに限らず、分子鎖の繰
り返し構造単位の80重量%以上がフッ化ビニリデンか
らなり、共重合成分を20重量%以下の範囲で含有する
ものであってもよい。
【0015】上記共重合成分としては、例えばテトラフ
ロロエチレン、トリフロロモノクロロエチレン、および
ヘキサフロロプロピレンなどが挙げられる。ここで、共
重合成分を20重量%より多く含有した場合は、結晶性
が低下しすぎ、高強度モノフィラメントが得られないこ
とがあるため不適当である。
【0016】本発明で用いるポリフッ化ビニリデンは、
ジメチルホルムアミドの0.4g/cc溶液で測定した
固有粘度指数(ηinh)が、0.8以上、特に1.0
以上のものが好ましい。
【0017】ポリフッ化ビニリデンの固有粘度指数(η
inh)が、0.8未満の場合には、高倍率延伸したと
しても高強度のモノフィラメントをなすことが困難であ
り、また高倍率延伸時に糸切れが生じやすく、品質面に
おいても問題が生じやすく、釣糸に適する高強度のモノ
フィラメントが得られないため好ましくない。
【0018】一方、前記固有粘度指数(ηinh)が
2.0を越える高粘度の場合は、紡糸時における吐出斑
が生じやすいばかりか、モノフィラメントの長さ方向の
品質斑が生じやすくなるため好ましくない。
【0019】したがって、前記ポリフッ化ビニリデン
は、ジメチルホルムアミドの0.4g/cc溶液で測定
した固有粘度指数(ηinh)が、1.0〜2.0の範
囲、とくに1.1〜1.6の範囲であることが好まし
い。
【0020】本発明で用いるポリフッ化ビニリデンに
は、例えば顔料、染料、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防
止剤、結晶化抑制剤および可塑剤などの添加剤を、本発
明の効果を阻害しない範囲で含有することができる。
【0021】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントとは、直径(D)が0.05mm以上のモノフィ
ラメントである。モノフィラメントの直径が0.05m
m以下と細い場合は、剛性が不足するため、通常はその
まま単独で釣糸や漁網糸として用いることができない。
【0022】次に、本発明のポリフッ化ビニリデンモノ
フィラメントの繊維構造的特徴は、平均複屈折(Δn)
が25×10-3以上、(好ましくは30×10-3以上)
と高いこと、表層部複屈折(ΔnS )が、27×10-3
未満(好ましくは25×10-3未満)と低いこと、平均
複屈折(Δn)が表層部の複屈折(ΔnS )よりも10
×10-3以上(好ましくは13×10-3以上)高いこ
と、表面粗度が最大最小粗度400nm以下(好ましく
は300nm以下)であること、さらに二乗平均粗度が
60nm以下(好ましくは50nm以下)である表面を
形成し、非常に滑らかであることである。とくに、平均
複屈折(Δn)が25×10-3未満では、本発明の目的
とする高強度のモノフィラメントを得ることができな
い。
【0023】本発明でいうモノフィラメントの表層部と
は、表面から直径の1/10以下の厚さ部分を言う。
【0024】複屈折の低い、言い換えれば低配向度の表
層部分が、表面から直径の1/10以上に厚いと、例え
ば直径が0.21mm(1.5号)の場合で引張強度
5.5g/d以上のような高強度を達成することは難し
く好ましくない。
【0025】また、本発明のポリフッ化ビニリデンモノ
フィラメントにおいて、内層部の複屈折が高いことは、
分子鎖が繊維軸方向によく配向していることを示し、高
い引張強度の発現に寄与している。
【0026】一方、低い複屈折の表層部は、柔軟な層が
形成されていることを意味し、内層部の高い引張強度を
発現する構造を保護している。
【0027】さらに、本発明のポリフッ化ビニリデンモ
ノフィラメントは、表面形態が滑らかで、繊維軸方向の
凸凹溝がなく、均一表面になっているため、クラックを
生じることがなく、その結果高い結節強度の発現に寄与
している。
【0028】上記ポリマ特性および繊維構造的特徴を同
時に有する本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラメ
ントは、高い引張強度と結節強度、および優れた耐衝撃
性および耐摩耗性を有している。そして引張強度、結節
強度、および耐衝撃性は、いずれもモノフィラメントの
直径によって変化し、直径が大きいほど低下するが、本
発明ポリフッ化ビニリデンモノフィラメントにおいて
は、直径の増大に伴う強度低下および耐衝撃性の割合が
低いことも特徴の一つである。
【0029】すなわち、モノフィラメントの直径(D)
と引張強度(TT)および結節強度(KT)の関係は下
記(I)および(II)の通りである。
【0030】TT≧−2.0D+5.7・・・ (I) KT≧−3.4D+4.8・・・ (II)
【0031】例えば、モノフィラメントの直径が、0.
21mm(1.5号)のとき、引張強度:5.8g/
d、結節強度:4.6g/d、衝撃強度:5.5g/
d、衝撃結節:3.7g/dであり、モノフィラメント
の直径が、0.37mm(5号)のとき、引張強度:
5.2g/d、結節強度:3.8g/d、衝撃強度:
4.9g/d、衝撃結節:3.2g/dの優れた諸特性
が得られる。
【0032】このように、引張強度と結節強度が同時に
高いことは、例えば釣糸として用いた場合に、どのよう
な結び方をしても高強度であるという特性を保持するた
めに重要である。すなわち、比較的小さい曲げ歪を受け
る場合は引張強度に近く、大きな曲げ歪を受ける場合は
結節強度でほぼ代表されるからである。
【0033】また、本発明のポリフッ化ビニリデンモノ
フィラメントは、耐摩耗性も優れており、例えばサンド
ペーパー法によって評価すると、本発明のモノフィラメ
ントは、従来のものに比べ2.5倍以上の耐切断摩耗回
数を示す。このように耐摩耗性などに優れた耐久性は、
本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラメントが特異
な繊維構造を有することによるものである。
【0034】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントの他の特徴は、引張剛性が高い一方、曲げに対し
て柔軟なことである。このことは例えば釣糸として用い
た時、「アタリ」を感知し易い特徴を有すると同時に、
リールなどに巻ぐせがつきにくいという相反する特性を
も同時に満足する点できわめて有利である。
【0035】また、本発明のポリフッ化ビニリデンモノ
フィラメントは、断面が2層構造を形成しているにもか
かわらず、透明性に優れていることもさらに一つの特徴
である。
【0036】上記したように、釣糸や漁網用糸として有
用な特徴を有する本発明のポリフッ化ビニリデンモノフ
ィラメントは、以下の方法によって製造すればよい。以
下にその製造法を具体的条件も混じえて説明する。
【0037】まず、フッ化ビニリデン構成単位が80重
量%以上で、固有粘度指数(ηinh)が0.8以上の
ポリフッ化ビニリデン重合体チップを、溶融紡糸機に供
給し、250〜280℃のような高温で溶解して紡糸口
金から紡出し、紡出モノフィラメントを得る。
【0038】前記紡糸口金から紡出された紡出モノフィ
ラメントは、紡糸口金の直下に設けられた加熱雰囲気
(例えば、温度150〜300℃に加熱された窒素ガス
または過熱水蒸気などの不活性ガスで充満された雰囲気
長20〜300mm)中を通過した後、直ちに温度20
℃以下の低温不活性液体中、すなわち冷却液の中を通し
て急冷固化されて未延伸モノフィラメントとなす。
【0039】前記冷却液としては、水、グリセリンおよ
びポリエチレングリコールなどのポリフッ化ビニリデン
に不活性な液体が用いられる。冷却されたモノフィラメ
ントは、温水または水洗浴を通過させるなどの通常の方
法によって、モノフィラメントの表面に付着した冷却媒
体を除去した後、延伸ゾーンに送られる。
【0040】延伸ゾーンとしては、1Kg/cm2 G以
上、150℃以上のような条件に加熱された過加熱水蒸
気が供給されている圧力室を用いればよく、この圧力室
内にモノフィラメントを走行させ、得られるポリフッ化
ビニリデンモノフィラメントの平均複屈折(Δn)が2
5×10-3以上、好ましくは30×10-3以上になるよ
うな倍率で延伸が行なわれる。
【0041】圧力室は、モノフィラメントが入る入口
と、出る出口をスリット部で構成されたシール機構でシ
ールし、蒸気の漏洩を極力防ぎ、蒸気圧が保持されるよ
うになっている。
【0042】延伸方法は、1段延伸法でも2段延伸法で
もよいが、前記した平均複屈折(Δn)が25×10-3
以上となる延伸条件を採用しなければならない。
【0043】2段延伸法の場合には、1段目の蒸気延伸
を全延伸倍率の50%以上で行ない、非接触ヒーターを
設けて2段目の延伸を行ない、平均複屈折(Δn)が2
5×10-3以上のモノフィラメントとすればよい。
【0044】次いで、得られた平均複屈折(Δn)が2
5×10-3以上のモノフィラメントを、連続的に高温の
不活性気体中を通過させ、高温短時間熱処理を行なう。
【0045】高温短時間熱処理をする前に、50℃以上
ポリマの融点以下の液体または不活性気体を用いて、1
〜30秒間、3〜15%の弛緩熱処理を行なってもよ
い。この弛緩熱処理のために用いられる液体としては、
グリセリン、シリコンオイル、ポリエチレングリコー
ル、水などの不活性液体、および蒸気、加熱空気などの
不活性気体が用いられるが、これら例示されたものに限
るものではない。
【0046】また、高温短時間熱処理をする前に、モノ
フィラメントに対し、膨潤剤を付着させてもよい。この
場合に使用する膨潤剤としては、ジメチルスルフォキシ
ド、アセトン、シクロヘキサノン、ジメチルフォルムア
ミド、ジメチルアセトアミド、n−メチル−2ピロリド
ン、およびヘキサメチルフォスフォルアミドなどが挙げ
られる。膨潤剤を付着する方法としては、モノフィラメ
ントを膨潤剤に一定時間浸漬する方法、オイリングロー
ラーで付着する方法、およびモノフィラメントに膨潤剤
を一定量供給するガイドを通過させる方法などが挙げら
れるが、本発明の方法はこれらに限定されるものではな
い。
【0047】本発明の特徴とする高温短時間熱処理は、
平均複屈折(Δn)が25×10-3以上のモノフィラメ
ントを、高温の不活性気体中に通過させることにより行
なわれる。ここで用いる不活性気体の温度は、モノフィ
ラメントの融点より遥かに高く、500〜1000℃、
好ましくは600〜800℃の範囲とする必要がある。
そして、高温短時間熱処理は、上記の温度範囲のもと、
1.0〜1.2倍の延伸倍率で、0.02〜0.2秒間
の時間からなる条件で行なわれる。
【0048】上記の高温短時間熱処理条件を満足するこ
とによって、モノフィラメント表層部分のみを一旦溶融
し、モノフィラメントの表層部の配向を十分に緩和する
ことができる。このようにモノフィラメントの表層部の
配向を緩和することによって、モノフィラメント自体が
柔軟になり、結節強度が向上するのである。
【0049】上記の高温短時間熱処理は、モノフィラメ
ントの直径が大きいほど、配向緩和層を厚くする必要が
あり、処理時間を長くするか、処理温度を高くする必要
がある。また、処理時間が長すぎたり、処理温度を高く
しすぎると、配向緩和層が厚くなりすぎ、引張強度およ
び結節強度が著しく低下する傾向となるため好ましくな
い。
【0050】上記高温短時間熱処理条件を十分満足して
いる場合は、得られるモノフィラメントの表層に適当な
厚みの配向緩和層が形成され、引張強度を高い値に維持
したまま、結節強度を著しく向上することができる。
【0051】次に、本発明に係わるポリフッ化ビニリデ
ンモノフィラメントおよびその製造方法について、実施
例に基づいて説明するが、実施例で得られたポリフッ化
ビニリデンモノフィラメントの物性は、以下の測定法に
よって測定した値である。
【0052】(A)固有粘度指数ηinh:試料をジメ
チルホルムアミドに0.4g/ccの濃度で溶解し、オ
ストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0053】(B)平均複屈折(=n):日本光学工業
(株)製POH型偏光顕微鏡を用い、白色光を光源とし
て通常のベレックコンペンセータ法により求めた。
【0054】(C)表層部の複屈折(ΔnS ):ベッケ
法により、測定温度20℃〜21℃で、繊維表面におい
て、繊維軸に垂直な方向の屈折率n1 と、繊維に平行な
方向の屈折率n2 を測定し、それらの差ΔnS =n2 −
n1 をもって定義される。
【0055】(D)引張強度、結節強度:JIS−L1
017の定義によった。試料をかせ状にとり、20℃、
65%RHの温湿度調節室で24時間放置後、(株)オ
リエンテック社製“テンシロン”UTM−4−100型
引張試験機を用い、試長:250mm、引張速度:30
0mm/分の条件で測定した。
【0056】(E)耐摩耗性:1/20×D(繊度)の
荷重をかけたモノフィラメントを、サンドペーパー#3
20で被覆した外径50mmφのステンレス棒が、18
0回/分で回転している上に置き、更にトラバース速度
70mm/分(トラバース幅35mm)の条件で、モノ
フィラメントを移動させて切断に至るまでの回転数とし
た。
【0057】(F)衝撃結節強度:島津製振子型衝撃試
験機により、試料長:250mmにひとえ結びをしてセ
ットし、振子アーム長:281.7mm、振子荷重:
3.729Kg、持上げ角度:90度、引張速度:1.
5m/secの条件でモノフィラメントに衝撃を与え、
切断時の強力を繊度で除した値を衝撃結節強度とした。
なおモノフィラメント切断強力は、ミネベア製DSA6
−11型自動平衡式動歪測定器と、横河北辰電気製フォ
トコーダー(2932型)から切断した瞬時の強力を記
録させて読取った。 (G)繊維表面粗度:Digit
alInstrments社のNanoScope原子
間力顕微鏡を使用し、走査範囲:40μm、走査速度:
0.35HZ、室温大気中の条件で測定した。
【0058】
【実施例】
[実施例1]固有粘度指数が1.2のポリフッ化ビニリ
デンホモポリマチップを、紡糸機に供給して、260℃
で溶融し、孔径1.5mmφの口金を使用し、口金直下
に温度:200℃、長さ:150mmの加熱筒を通して
紡糸し、さらに20℃のポリエチレングリコール浴中で
冷却して未延伸モノフィラメントを得た。
【0059】ここで得られた未延伸モノフィラメントの
平均複屈折(Δn)は、1.5×10-3であった。
【0060】次に、この未延伸モノフィラメントを、圧
力:2Kg/cm2 G、温度:170℃に加熱した過加
熱水蒸気中で5.8倍に延伸し、1段延伸糸を得た。
【0061】引続き、1段延伸糸を、690℃の不活性
気体中で、1.02倍に延伸しながら0.05秒の高温
短時間熱処理を行ない、直径0.24mmのポリフッ化
ビニリデンモノフィラメントを得た。
【0062】得られたポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントの平均複屈折(Δn)は37.2×10-3であ
り、表層部の複屈折(ΔnS )は15.8×10-3であ
った。また引張強度は5.9g/d、結節強度は4.7
g/dであった。
【0063】さらに、耐摩耗性は179回、衝撃結節強
度は3.9g/d、表面粗さは最大最小粗度250nm
であり、また二乗平均粗度は45nmであった。
【0064】[実施例2]実施例1と同様にして得られ
た未延伸モノフィラメントを、圧力:2Kg/cm
2 G、温度170℃に加熱した過加熱水蒸気中で、4.
5倍に延伸し、引続いて温度170℃の非接触ヒーター
で1.28倍に延伸することにより、2段延伸糸を得
た。
【0065】引続き、上記の2段延伸糸を、690℃の
不活性気体中で、1.02倍に延伸しながら、0.05
秒の高温短時間熱処理を行ない、直径0.23mmのポ
リフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
【0066】得られたポリフッ化ビニリデンモノフィラ
メントの平均複屈折(Δn)は37.0×10-3、表層
部の複屈折(ΔnS )は16.0×10-3であった。ま
た、引張強度は5.7g/d、結節強度は4.7g/d
であった。
【0067】さらに、耐摩耗性は180回、衝撃結節強
度は3.8g/d、表面粗さは最大最小粗度245nm
であり、また二乗平均粗度42nmであった。
【0068】[実施例3〜5および比較例1〜11]実
施例1および実施例2と同様のプロセスで製糸し、ポリ
マ特性、製糸条件などを、表1および表2の通り変化さ
せて製糸することにより得られたモノフィラメントの物
性を、表3および表4に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】なお、図1は、本発明に係るモノフィラメ
ントと、比較のモノフィラメントについて、直径と引張
強度の関係を示したものである。
【0074】図2は、本発明に係るモノフィラメント
と、比較のモノフィラメントについて、直径と結節強度
の関係を示したものである。
【0075】図1および図2において、本発明のモノフ
ィラメントを○、比較のモノフィラメントを●で示し
た。なお、図1内の線Tは本発明に係る式TT≧−2.
0D+5.7におけるTT=−2.0D+5.7を示
し、図2内の線Kは本発明に係る式KT≧−3.4D+
4.8におけるKT=−3.4D+4.8を示したもの
である。
【0076】上記の結果から明らかなように、本発明で
特定したポリマ特性および製糸条件を満足している実施
例1〜5は、何れも本発明の構造パラメーターを満足
し、その結果モノフィラメントは、優れた引張強度、結
節強度、摩耗性、および衝撃結節強度を有し、繊維表面
が非常に滑らかであることから水切り性も良く、釣糸と
しての優れた操作性を有している。
【0077】一方、表2の結果からは、比較例1〜11
は、本発明のモノフィラメント物性の一部または全部を
満足していないことがわかる。
【0078】例えば、構造物性値の点から見ると、比較
例1と2は、高温短時間熱処理がされていなく、結節強
度が低い。
【0079】比較例3は、固有粘度指数が低く、引張強
度および結節強度が低い。
【0080】比較例4は、ポリマ共重合比率が大きすぎ
て引張強度および結節強度が低い。比較例5は、高温短
時間熱処理条件の温度が低く、本発明モノフィラメント
が得られず結節強度が低い。
【0081】比較例6、8および9は、それぞれ高温短
時間熱処理工程の温度が高すぎるため、また処理時間が
長すぎるため、また倍率が低すぎるため、溶断してサン
プリングできない。
【0082】比較例7は、高温短時間熱処理工程の処理
時間が短かすぎて、処理が不十分であることから結節強
度が低い。
【0083】比較例10は、高温短時間熱処理工程の倍
率が高く、処理が不十分であることから、結節強度が低
い。
【0084】比較例11は、高温短時間熱処理する前の
モノフィラメントの物性が低いため、高温短時間熱処理
を行なっても、本発明の特性を有するモノフィラメント
が得られず、特に引張強度および結節強度が低い。
【0085】
【発明の効果】本発明のポリフッ化ビニリデンモノフィ
ラメントは、引張強度、結節強度、耐摩耗性、衝撃結節
強度などに優れているので、釣糸、漁網用糸、およびの
り網用糸などの水産用資材として好適である。特に上記
優れた機械的特性および透明性、柔軟性、繊維表面の平
滑性などの特性によって、水切れ性が向上し、漁獲性、
操作性、および耐久性などの優れた製品を提供すること
ができる。
【0086】また、本発明の高温短時間熱処理を特徴と
するポリフッ化ビニリデンモノフィラメントの製造方法
によれば、上記すぐれた諸特性を有するポリフッ化ビニ
リデンモノフィラメントを効率的に製造することができ
る。
【0087】なお、本発明のポリフッ化ビニリデンモノ
フィラメントは、その優れた特徴を生かして、水産用資
材以外の用途、例えばゴムベルトの補強・スリング、ロ
ープなどの運搬用資材、フェンス・落石防止などの土木
資材などの用途に有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例(比較も含む)で得られたポリフッ化ビ
ニリデンモノフィラメントの直径(mm)と引張強度
(g/d)との関係を示したグラフである。
【図2】実施例(比較も含む)で得られたポリフッ化ビ
ニリデンモノフィラメントの直径(mm)と結節強度
(g/d)との関係を示したグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フッ化ビニリデン構成単位が80重量
    %以上を占め、かつ、固有粘度指数(ηinh)が0.
    8以上であるフッ化ビニリデン系重合体からなるポリフ
    ッ化ビニリデンモノフィラメントであって、該モノフィ
    ラメントは、直径(D)が0.05mm以上、平均複屈
    折(Δn)が25×10-3以上、表層部複屈折(ΔnS
    )が27×10-3未満、前記平均複屈折と前記表層部
    複屈折との差(Δn−ΔnS )が10×10-3以上、表
    面最大最小粗度が400nm以下、表面二乗平均粗度が
    60nm以下、かつ、引張強度(TT)および結節強度
    (KT)が下記式(I)および(II)を満足する特性を
    有することを特徴とする高強度ポリフッ化ビニリデンモ
    ノフィラメント。 TT≧−2.0×D+5.7 ・・・ (I) KT≧−3.4×D+4.8 ・・・ (II) (但し、Dは前記した直径である)
  2. 【請求項2】 フッ化ビニリデン構成単位が80重量
    %以上を占め、かつ、固有粘度指数(ηinh)が0.
    8以上であるフッ化ビニリデン系重合体を溶融紡出し、
    20℃以下の不活性液体中で冷却固化した後、150℃
    以上に加熱された水蒸気中で、延伸後の平均複屈折(Δ
    n)が25×10-3以上となる延伸倍率で延伸し、次い
    で500〜1000℃の不活性気体中で、0.02〜
    0.2秒の高温短時間熱処理を、1.0〜1.2倍に延
    伸しつつ行うことを特徴とする高強度ポリフッ化ビニリ
    デンモノフィラメントの製造法。
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