JP4318010B2 - ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメント及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、引張強度、結節強度を満足するとともに、極めて優れた耐擦過性を有するポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントおよびその効率的な製造方法並びにそれを用いた耐根ずれ性の優れた釣糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、強靭であること、比重が大きいこと、屈折率が水に近いこと、および吸水率が低いことなどの有用な特性を備えているため、釣糸や漁網などの水産資材用途や種々の産業資材用途などに従来から広く使用されている。
【0003】
かかるポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、それ自体が比較的剛直な繊維構造を有しているため、他の合成繊維であるポリアミド系樹脂モノフィラメントなどに比べれば表面にキズが付きにくく、またキズが付いても切れにくいという利点があるものの、釣糸として使用する場合には、海中の岩や鋭利な貝殻などに擦過した場合の、いわゆる耐根ずれ性の面では必ずしも満足すべきものではなかった。
【0004】
なお、ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの各種特性の改善技術に関しては、(A)2段延伸法における1段目延伸倍率を特定の範囲内に規定したポリ弗化ビニリデン繊維の製造方法(特公昭53−22574号公報)、(B)2段延伸の中間で弛緩熱処理を施すポリ弗化ビニリデンモノフィラメントの製造方法(特公平3−57965号公報)、(C)190オングストローム以下の長周期を有するポリ弗化ビニリデン系モノフィラメント(特開昭60−215810号公報)、および(D)2段延伸後融点を越える温度で緊張熱処理することにより表層のみを低配向化させた弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(特公平3−50001)などがすでに提案されている。
【0005】
すなわち、上記(A)および(B)の製造方法で得られたポリ弗化ビニリデン系モノフィラメントおよび(C)のポリ弗化ビニリデン系モノフィラメントは、いずれも高結節強度化を図ったものであり、また上記(D)のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、耐摩耗性の向上を図ったものであるが、いずれも耐擦過性および釣糸として使用した場合の耐根ずれ性という面では、必ずしも満足すべきであるとはいい難いものであった。
【0006】
したがって、従来のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、いずれも耐擦過性および釣糸として使用した場合の耐根ずれ性の面では不十分であり、その改良がしきりに望まれているのが実状であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、引張強度、結節強度を満足するとともに、極めて優れた耐擦過性を有するポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントおよびその効率的な製造方法並びにそれを用いた耐根ずれ性の優れた釣糸を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを特定の圧縮試験に供した場合の圧縮変位で表される微少表面圧縮硬さを特定の範囲に規定することによって、その耐擦過性が著しく向上することを見出だし、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、ポリ弗化ビニリデン系樹脂からなるモノフィラメントであつて、前記モノフィラメントは、溶融紡糸、冷却した後、まず120℃〜175℃の範囲の温度で4倍未満の1次延伸(E1)され、次いで140℃〜175℃の範囲の温度で0.85〜1.0倍の範囲での中間弛緩熱処理(E2)を行った後、更に130℃〜175℃の範囲の温度で2次延伸(E3)を行うことによって、全延伸倍率(E1×E2×E3)が5.5倍以上となるように延伸および弛緩熱処理され、且つ島津製作所社製粉体圧縮試験機PCT−200により、平面圧子の直径:500μm、試験荷重:200g、負荷速度:1.44g/secの条件で測定した荷重50g時から200g時までの圧縮変位の実測値R(μm)と、このモノフィラメントの直径D(mm)との関係が、式R≦6.5e−0.77D(ただし、式中のeは自然対数の底[2.71828・・・]を示す)を満たすことを特徴とする。
【0011】
なお、本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、その直径が0.10〜0.65mmの範囲にあることが好ましい。
【0013】
なお、本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法においては、1次延伸時における延伸張力を0.2g/d以下とすることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の釣糸は、上記のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳述する。
【0016】
本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、少なくとも表面層がポリ弗化ビニリデン系樹脂からなる。したがって、モノフィラメントが、全体としてポリ弗化ビニリデン系樹脂であってもよいし、内層がポリアミド、ポリオレフィン等のポリ弗化ビニリデン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の単一層又は複層であってもよい。しかし、好適にはモノフィラメントが全体としてポリ弗化ビニリデン系樹脂からなるものが用いられる。
【0017】
また、モノフィラメント全体がポリ弗化ビニリデン系樹脂からなる場合であっても、表面層と内層におけるポリ弗化ビニリデン系樹脂の重合度が同一の場合と、異なる場合のいずれをも包含するものである。
【0018】
本発明でいうポリ弗化ビニリデン系樹脂とは、弗化ビニリデン成分を80重量%以上含有するポリ弗化ビニリデン単独重合体または共重合体である。ここで20重量%未満を占める場合の共重合成分としては、テトラフロロエチレン、トリフロロモノクロロエチレン、トリフロロエチレン、モノフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレンおよびこれらの混合物などが挙げられるが、なかでもヘキサフロロプロピレンが好ましい。
【0019】
また、弗化ビニリデン成分が80重量%以上であるポリ弗化ビニリデンに、他の弗化ビニリデンホモポリマおよび/またはコポリマをブレンドして用いることもできる。
【0020】
ただし、共重合体または重合体混合物において、弗化ビニリデン成分の含有量が80重量%未満になると、結晶性が低下し、本発明の目的とする特性の達成が困難になるため好ましくない。
【0021】
なお、本発明で用いるポリ弗化ビニリデン系樹脂は、ジメチルホルムアミドの0.4g/cc溶液で測定した固有粘度指数(ηinh)が0.8以上、特に1.0以上のものが好ましく、0.8未満の場合には、十分な物性が得られないことがある。
【0022】
さらに、本発明で用いるポリ弗化ビニリデン系樹脂には、例えば顔料、染料、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、結晶化抑制剤および可塑剤などの各種添加剤を、目的とする性能を疎外しない範囲で、その重合工程、重合後あるいは紡糸直前に添加することができる。
【0023】
本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、φ500μmの平面圧子、試験荷重200g、負荷速度1.44g/secの条件の圧縮試験(試験機:島津製作所製粉体圧縮試験機PCT−200)において測定した荷重50g時から200g時までの圧縮変位の実測値R(μm)と、このモノフィラメントの直径D(mm)との関係が、式R≦6.5e-0.77D(ただし、式中のeは自然対数の底[2.71828・・・]を示す)を満たすことが重要である。
【0024】
すなわち、本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを釣糸として使用する場合は、その太さが直径0.10〜0.65mmが中心であり、上記圧縮試験の圧子としてはφ500μmの平面圧子の使用が適切である。また、試験荷重を200gに設定した理由は、ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの場合は、荷重200g時の圧縮変位が高々15μm以下であり、微少な表面圧縮硬度を評価するのに適切であるからである。さらに、荷重50g時から200g時までの圧縮変位をパラメータとして採用した理由は、上記圧縮試験における無負荷から荷重50g時までの圧縮変位は、測定機の機構上その測定値に変動が生じるためであり、これに対し荷重50g時から200g時までの圧縮変位は、再現性のある測定が可能となるからである。
【0025】
上記荷重50g時から200時までの圧縮変位の実測値R(μm)が小さいことは、ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの微少な表面圧縮硬度が高いことを意味するものであり、本発明は、この微少な表面圧縮硬度がモノフィラメントの耐擦過性を高め、さらに釣糸としては耐根ずれ性を高めることに関する知見を発明の根拠とするものである。
【0026】
ここで、上記の式は、ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの圧縮変位の実測値R(μm)と直径D(mm)との関係式であり、実験データにより経験的に導いたものである。
【0027】
そして、圧縮変位の実測値R(μm)が上記式の範囲を満たすポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、十分な微少表面圧縮硬度を満足し、優れた耐擦過性を有するものとなる。
【0028】
なお、通常モノフィラメントの直径が大きくなると、曲率の関係から一定荷重下の圧縮変位が小さくなる傾向があることから、圧縮変位の範囲は直径に関する補正を必要とすることになる。つまり、圧縮変位の許容上限値は、モノフィラメントの直径が太くなるにともなって小さくなり、また、直径が細くなるにともなって大きくなる。そして、この関係は、図1に示したように、モノフィラメントの直径Dに対応する圧縮変位の許容上限値は、直線的ではなく、やや緩やかな曲線を描くことから、経験的に指数函数で表されることになる。したがって、上記式における定数6.5は、直径Dが限りなく細い場合の圧縮変位の許容上限値が6.5μであることから導かれた数値であり、またもう一方の定数−0.77は、モノフィラメントの直径Dの増大にともなう圧縮変位の許容上限値の減少の仕方から実験的に導かれた数値である。すなわち、圧縮変位の実測値R(μm)が図1の斜線部の領域にあるポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、優れた耐擦過性を有することを表している。
【0029】
また、本発明でいう釣糸の耐根ずれ性とは、例えば海釣りの釣糸として実用した場合に海中の岩や鋭利な貝殻などに接触した際や、あるいは湖でのルアーフィッシング用釣糸として使用した場合にコンクリートや朽ち木などのヘビーカバーと呼ばれる障害物に接触した際の耐久性を意味するものである。
【0030】
さらに、本発明でいうポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの耐擦過性とは、モノフィラメントを10mm角のステンレス棒の角に一定張力下に高速度で擦過させる試験法により測定されたものである。ここで、一定張力とはモノフィラメントの断面積(mm2 )当り3Kg、例えば直径が0.20mmのモノフィラメントであれは100g程度の張力が適切である。そして、本発明者らは、広範な実釣試験の結果から、この耐擦過性が実用上の耐根ずれ性のモデル評価法としてきわめて優れることを確認した。
【0031】
次に、本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法について説明する。
【0032】
本発明においては、エクストルーダー型押出紡糸機を用いる通常の条件を採用することができ、ポリ弗化ビニリデン系樹脂の紡糸条件としては、例えばポリマ温度230〜320℃、押出圧力10〜500Kg/cm2 、口金孔径0.1〜5mm、紡糸速度0.3〜100m/分などの範囲を適宜選択することができる。
【0033】
紡出されたモノフィラメントは、短い気体ゾーンを通過した後、通常温度20℃前後の冷却浴中で冷却されるが、ここで用いる冷却媒体としては水、グリセリンおよびポリエチレングリコールなどのポリ弗化ビニリデン系樹脂に不活性な液体化合物が挙げられる。
【0034】
冷却された繊維は、通常の方法で冷却媒体を除去された後、1段目の延伸ゾーンに送られるが、本発明の延伸および熱固定時の雰囲気(浴)としては、例えばポリエチレングリコール、グリセリンおよびシリコーン・オイルなどの液体を加熱した熱媒浴、乾熱気体浴および加熱あるいは加圧水蒸気浴などが用いられる。
【0035】
延伸は、先ず120℃〜175℃の範囲の温度で4倍未満、好ましくは3.5倍未満の1次延伸(E1)を行い、更に140℃〜175℃の温度で0.85〜1.0倍、好ましくは0.9〜0.98倍の範囲での中間弛緩熱処理(E2)を行い、さらに130℃〜175℃の範囲の温度で2次延伸(E3)を行うことによって、全延伸倍率(E1×E2×E3)を5.5倍以上、好ましくは6.0倍以上とすることが重要である。
【0036】
ここで、1次延伸が4倍以上の高倍率になると、圧縮変位が大きくなり、微少表面圧縮硬度を満足できなくなる。また、別の観点からは、1次延伸時における延伸張力が0.2g/d以下であることがより好ましい。
【0037】
さらに、引き続いて2次延伸に移るが、その2次延伸前に中間弛緩熱処理を施すことが重要である。この中間弛緩熱処理を経ない場合には、圧縮変位が大きくなり、微少表面圧縮硬度を満足できなくなる。
【0038】
次に、2次延伸は、全延伸倍率が5.5倍以上が必要であり、それを下回ると、得られるモノフィラメントの引張強度、結節強度がいずれも不十分な値となる。
【0039】
このようにして延伸した後には、必要に応じて延伸歪みを除去することなどを目的として、適度な定長、弛緩熱処理を行うこともできる。
【0040】
本発明の製造方法において、ポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの微少表面圧縮硬度が向上する理由は必ずしも定かではないが、モノフィラメントの表面の結晶化度が上がることによるものと推定される。ここで、上述した耐摩耗性向上を図った従来技術(特開昭63−112717号公報)について付言すると、当該技術は表層の低配向化(柔軟化)を図ったものであり、本発明の技術思想とは全く異なるものであるといえる。因みに、当該技術で得られたポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの圧縮変位は極めて大きく、この結果微少表面圧縮硬度は低いものであった。
【0041】
このようにして得られた本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、4.0g/d以上の引張強度、3.0g/d以上の結節強度を満足するとともに、極めて優れた耐擦過性を有することから、各種水産資材用途や産業資材用途に極めて有用であり、またこのモノフィラメントからなる釣糸は、極めて優れた耐根ずれ性を発揮する。
【0042】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例において得られたモノフィラメントの評価は以下の方法に準じて行った。
(1)圧縮変位
試験機:島津製作所製粉体圧縮試験機PCT−200
測定方法:φ500μmの平面圧子、試験荷重200g、負荷速度1.44g/sec、変位スケール15μmの条件で圧縮試験を行い、荷重50g時から200g時までの圧縮変位(μm)を測定した。圧縮変位の実測値R(μm)が小さいほど微少表面圧縮硬度が高いことを意味する。
(2)耐擦過性
一辺が10mm角の四角断面ステンレス棒からなる擦過棒8本を、直径130mm、長さ240mmの回転枠の外周に、平行かつ等間隔で取付けた装置を用いた。一方、長さ400mmのモノフィラメントの一端に、モノフィラメントの単位断面積(mm2 )当り3Kgの重りを取付け、その他端をスライドシャフトに接続し、これを上記6本の擦過棒の角部に接触するようにして、上記回転枠に懸架する。
【0043】
次に、モノフィラメントに水をシャワリングしながら、上記スライドシャフトをトラバースすることにより、モノフィラメントに対し幅20mm、片道60秒の速度の往復移動を与えながら、上記回転枠を250rpmの回転速度で時計方向に回転させる。
【0044】
上記回転枠を60秒間回転させた後のモノフィラメントを採取し、その引張強力を引張試験機により測定して、初期の引張強力に対する強力保持率(%)を算出し、これを耐擦過性の判断基準とした。強力保持率の数値が大きいほど、耐擦過性が良好であることを意味する。
(3)引張試験
JIS L1013の規定に準じて測定した。
[実施例1]
ジメチルホルムアミドの0.4g/cc溶液の30℃における固有粘度指数(ηinh)が1.2のポリ弗化ビニリデン重合体チップ(融点176℃)を、エクストルーダー型紡糸機で260℃で溶融し、孔径1.5mmの口金を通して紡糸し、さらに20℃のポリエチレングリコール浴中で冷却した。
【0045】
次に、この未延伸糸を164℃のポリエチレングリコール1段目延伸浴中で3.5倍に1次延伸(E1)し、続いて155℃のポリエチレングリコール2段目熱処理浴中で0.98倍に中間弛緩熱処理(E2)し、更に140℃の乾熱浴中で2次延伸(E3)を行い、全延伸倍率(E1×E2×E3)が6.40倍となるようにして、延伸しモノフィラメントを得た。
【0046】
引き続いて、155℃の乾熱浴中に処理倍率0.90倍で通過させ熱処理を施すことにより、直径0.200mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
[実施例2]
1次延伸倍率を3.7倍とした以外は実施例1と同一の製造方法により、直径0.200mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
[実施例3]
実施例1と同じポリ弗化ビニリデン重合体チップを、エクストルーダー型紡糸機で260℃で溶融し、孔径0.13mmの口金を通して紡糸し、さらに20℃のポリエチレングリコール浴中で冷却した。
【0047】
次に、この未延伸糸を164℃のポリエチレングリコール1段目延伸浴中で3.5倍に1次延伸(E1)し、続いて155℃のポリエチレングリコール2段目熱処理浴中で0.98倍に中間弛緩熱処理(E2)し、更に140℃の乾熱浴中で2次延伸(E3)を行い、全延伸倍率(E1×E2×E3)が6.4倍となるようにして延伸しモノフィラメントを得た。
【0048】
引き続いて、155℃の乾熱浴中に処理倍率0.90倍で通過させ熱処理を施すことにより、直径0.150mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
[実施例4]
実施例1と同じポリ弗化ビニリデン重合体チップを、エクストルーダー型紡糸機で260℃で溶融し、孔径3.0mmの口金を通して紡糸し、さらに20℃のポリエチレングリコール浴中で冷却した。
【0049】
次に、この未延伸糸を164℃のポリエチレングリコール1段目延伸浴中で3.5倍に1次延伸(E1)し、続いて155℃のポリエチレングリコール2段目熱処理浴中で0.98倍に中間弛緩熱処理(E2)し、更に140℃の乾熱浴中で2次延伸(E3)を行い、全延伸倍率(E1×E2×E3)が6.4倍となるようにして延伸しモノフィラメントを得た。
【0050】
引き続いて、155℃の乾熱浴中に処理倍率0.90倍で通過させ熱処理を施すことにより、直径0.500mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
[比較例1]
1次延伸倍率を4.5倍とした以外は、実施例1と同一の製造方法により、直径0.200mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
[比較例2]
1次延伸倍率を5.9倍とした以外は、実施例1と同一の製造方法により、直径0.200mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
[比較例3]
実施例1と同じポリ弗化ビニリデン重合体チップを、エクストルーダー型紡糸機で280℃で溶融し、孔径1.5mmの口金を通して紡糸し、さらに30℃の水浴中で冷却した。
【0051】
次に、この未延伸糸を、150℃のポリエチレングリコール1段目延伸浴中で3.5倍に1次延伸(E1)し、続いて160℃の乾熱浴中で2次延伸(E3)を行い、全延伸倍率(E1×E3)が6.4倍となるようにして延伸しモノフィラメントを得た。
【0052】
引き続いて、155℃の乾熱浴中に処理倍率0.90倍で通過させ熱処理を施すことにより、直径0.200mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
[比較例4]
ジメチルホルムアミドの0.4g/cc溶液の30℃における固有年度指数(ηinh)が1.32dl/gのポリ弗化ビニリデン重合体チップ(融点177℃)を、エクストルーダー型紡糸機で285℃で溶融し、孔径1.5mmの口金を通して紡糸し、さらに20℃の水浴中で冷却した。
【0053】
次に、この未延伸糸を165℃のポリエチレングリコール1段目延伸浴中で5.4倍に1次延伸(E1)し、続いて165℃のポリエチレングリコール2段目延伸浴中で1.18倍に2次延伸(E2)し、更に180℃のポリエチレングリコール3段目延伸浴中で1.10に3次延伸(E3)を行い、全延伸倍率(E1×E2×E3)が7.00倍となるように延伸することにより、直径0.200mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得た。
【0054】
上記実施例1〜4および比較例1〜4で得られた各モノフィラメントについて、モノフィラメントとしての特性を評価した結果を表1に併せて示す。
【0055】
【表1】
表1の結果から明らかなように、本発明の圧縮変位の実測値Rの小さいモノフィラメント(実施例1〜4)は、いずれも耐擦過性が極めて優れた性能を有する。
【0056】
一方、一次延伸倍率が4.0倍を越える条件で延伸したモノフィラメント(比較例1、2)および中間弛緩熱処理のない条件で延伸したモノフィラメント(比較例3)は、いずれも圧縮変位の実測値Rが大きく耐擦過性が劣るものであった。そして、耐摩耗性の向上を図った従来技術(特開昭63−112717)に基づいた製法を採用したモノフィラメント(比較例4)は、返って圧縮変位の実測値Rが大きく、やはり耐擦過性に劣るものであった。
【0057】
また、本発明の直径0.200mmのポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを、実際に釣糸として磯釣で使用したところ、海中の岩や鋭利な貝殻などに対するいわゆる耐根ずれ性が、従来の釣糸に比べ飛躍的に向上することが確認できた。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、引張強度、結節強度を満足するとともに、極めて優れた耐擦過性を有するものであり、これを釣糸として用いる場合には、耐根ずれ性の改善効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はモノフィラメントの直径Dに対応する圧縮変位Rの許容上限値の関係を示すグラフである。
Claims (4)
- ポリ弗化ビニリデン系樹脂からなるモノフィラメントであつて、前記モノフィラメントは、溶融紡糸、冷却した後、まず120℃〜175℃の範囲の温度で4倍未満の1次延伸(E1)され、次いで140℃〜175℃の範囲の温度で0.85〜1.0倍の範囲での中間弛緩熱処理(E2)を行った後、更に130℃〜175℃の範囲の温度で2次延伸(E3)を行うことによって、全延伸倍率(E1×E2×E3)が5.5倍以上となるように延伸および弛緩熱処理され、且つ島津製作所社製粉体圧縮試験機PCT−200により、平面圧子の直径:500μm、試験荷重:200g、負荷速度:1.44g/secの条件で測定した荷重50g時から200g時までの圧縮変位の実測値R(μm)と、このモノフィラメントの直径D(mm)との関係が、式R≦6.5e−0.77D(ただし、式中のeは自然対数の底[2.71828・・・]を示す)を満たすことを特徴とするポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
- 前記1次延伸時における延伸張力が0.2g/d以下であることを特徴する請求項1に記載のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
- 前記モノフィラメントの直径が0.10〜0.65mmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリ弗化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなることを特徴とする釣糸。
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