JP6186269B2 - フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、釣糸、及び、それらの製造方法 - Google Patents

フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、釣糸、及び、それらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、及びフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸、並びにフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントまたは釣糸の製造方法に関し、具体的には、耐摩耗性及び引張強伸度に優れるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、及び大型魚類捕獲用の釣糸として使用することが可能な釣糸、並びに、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントまたは釣糸の製造方法に関する。
フッ化ビニリデン系樹脂フィラメントは、機械的特性、耐候性及び耐水性などに優れることから、各種の用途に利用されており、例えば、釣糸や漁網などの水産用資材として使用されている。
水産用資材である釣糸や漁網などに使用されるフィラメント(繊維)としては、従来、その経済性や成形性及び優れた強度や透明性等の観点から、合成樹脂材料が汎用されてきた。例えば、引張強度や結節強度が優れていることから、ポリアミド樹脂(ナイロン)が広く使用されてきた。しかし、ポリアミド樹脂は、水中での上記の強度が低下し、沈水性(水中での沈降性)も低く、経時により黄色化する欠点があるので、ポリアミド樹脂に代わってポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂やフッ化ビニリデン系樹脂が多用されるようになってきた。
特に、フッ化ビニリデン系樹脂フィラメントは、強靭性や耐衝撃性及び耐候性や耐水性などに優れ、高比重であることから沈水性が良好であり、その屈折率が水に近くて水中で見えにくく透明性も高いので、釣糸等の水産用資材として重用されている。フッ化ビニリデン系樹脂フィラメントは、更なる性能の改良や物性の向上が要望され、引張強度や伸度、柔軟性、結節強度、いわゆる糸よれ(糸癖)等の多様な特性を改良する研究が以前から続けられてきた結果、フッ化ビニリデン系樹脂を他の樹脂との組成物としたり、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体としたり、また、フィラメントに特定の熱処理や延伸処理を施すなどの改良が多々開示されている(特許文献1〜3)。
釣糸等の水産用資材については、専ら磯釣りや小型魚類等の捕獲に使用されるもののほかに、マグロやカジキ等の大型魚類の捕獲に使用されるものがある。このような大型魚類は、重量100kgを超えるものが珍しくなく、餌に食い付いた後の衝撃も急激で極めて大きい。例えばマグロの場合、餌に食いつくと60km/hの速度で潜るといわれ、釣糸には急激な衝撃力がかかる。したがって、重量級の魚用の釣糸としては、上記のような衝撃力に抗し、糸切れを起こすことなく魚を釣り上げることができ、しかも、作業性が良好であること等のために種々の特性が要求される。
大型魚類は通常、フィラメントからなる釣糸である幹縄と餌を付けた枝縄とを使用する延縄漁法により捕獲される。幹縄の長さは数十mから数千mであり、マグロ延縄などでは長さ数十kmから100kmを超えるものもある。枝縄の長さも数十mに及ぶ。延縄漁法においては、延縄を設置する投縄、回収する揚縄、鉢への巻取りが、毎秒100回転を超える速度で行われることから、大型魚類捕獲用の釣糸を形成するフィラメントとしては、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性が求められる。また、特に幹縄としては、撚り糸から形成すると、保水率が高く重くなり、また撚り糸特有の糸癖がある結果、作業性が悪い場合があるので、モノフィラメント糸を使用することが通常である。
特許文献4には、重量級の魚類を釣り上げる際の急激な衝撃力に抗して糸切れを起こさないために、糸径が0.5mm以上の大径で、繊維断面のα型結晶とβ型結晶との比率の分布を調整したフッ化ビニリデン系樹脂フィラメントが開示され、具体的には、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンとの共重合体である水産資材用繊維が記載されている。特許文献5には、フッ化ビニリデンホモポリマー、及び、フッ化ビニリデンと含有量1質量%以上6質量%未満のフッ化オレフィンとの共重合体を組成成分とする樹脂組成物により形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントが開示されている。
しかしながら、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有するフィラメントとしてはまだ十分ではなく、さらに、フィラメントの引張強度(引張破断強度)を高めるためにフィラメント径を大きくしても、耐衝撃性を緩和する伸度(引張破断伸度)が適度なものとならないことがあったり、耐摩耗性が改善されないことがあった。また、径の大きなフィラメントを製造するときにフィラメント内部に空洞(「す」と称されることもある。)が生じやすいという問題点も指摘されていた。すなわち、フッ化ビニリデンホモポリマーは、押出機から糸を溶融紡糸して冷却固化する際、結晶化速度が速く、しかも結晶化度が高く成形収縮率が大きいので、成形収縮に起因する空洞部が糸の中心部に発生しやすい。空洞の発生が多くなると、得られるモノフィラメントの機械的な性質が低下するとともに、特に、糸に略直径0.5mm以上の空洞が発生すると、延伸操作により破断が生じて延伸糸を得ることができなくなるなどの問題があることが分かった。
空洞の発生を抑えるために溶融紡糸時に徐冷を行うと、結晶化が進み過ぎて引張強度や伸度が高くならない。また、フッ化ビニリデンを共重合体とすることにより、フィラメントを柔軟なものとし、空洞の発生を抑制できることもあるが、フィラメントの表面が柔軟となる結果、耐摩耗性が著しく低下してしまう場合があることが分かった。
したがって、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用することができるフッ化ビニリデン系樹脂フィラメントの提供が強く望まれていた。
特公平4−61087号号公報 国際公開第2002/64867号 特開平5−148707号公報 特開平7−216635号公報 特開2006−322128号公報
本発明の課題は、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用することができるフッ化ビニリデン系樹脂フィラメントを提供することにある。また、本発明の課題は、上記のフィラメントからなる釣糸を提供することにあり、さらに、上記のフィラメント及び釣糸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体において、フッ化オレフィンの含有量を特定範囲内に調整することによって、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、
フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%である
ことを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントが提供される。
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(5)のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントが提供される。
(1)フッ化オレフィンがヘキサフルオロプロピレンである前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
(2)フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度が1.3dl/g未満である前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
(3)フッ化ビニリデン系樹脂及びメタクリレート系樹脂の合計を100質量%とするときに、メタクリレート系樹脂0.3〜20質量%を含有する前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
(4)全延伸倍率が5.1倍以下である前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
(5)糸径が0.5〜3mmであり、引張強度が340MPa以上、伸度が20〜50%である前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
さらに、本発明によれば、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸、及び、大型魚類捕獲用である前記の釣糸が提供される。
さらにまた、本発明によれば、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する押出工程;温度70〜160℃の溶媒中で急冷する急冷工程;次いで、温度70℃以上で予熱する予熱工程;及び、延伸し緩和する延伸緩和工程を備える、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法、並びに、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸の製造方法が提供される。
本発明によれば、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であることを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであることによって、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用することができるフッ化ビニリデン系樹脂フィラメントが提供されるという効果が奏される。すなわち、フッ化ビニリデンの共重合体から、糸径が0.5mm以上のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを形成するに際して、コモノマーであるフッ化オレフィンの含有量を厳密に制御することにより、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの特長である高い結晶性に由来する優れた引張強度、伸度を保持しつつ、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント表面の硬さを保つことによって、高い摩耗性を発現することができるという効果が奏されるものと考えられる。
また、本発明によれば、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸であることによって、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸が提供されるという効果が奏される。
さらに、本発明によれば、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する押出工程;温度70〜160℃の溶媒中で急冷する急冷工程;次いで、温度70℃以上で予熱する予熱工程;及び、延伸し緩和する延伸緩和工程を備える、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法、並びに、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸の製造方法であることによって、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント及びフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸を効率的かつ安定的に製造することができる方法が提供されるという効果が奏される。
I.フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であることを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントである。
1.フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを形成するフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体(以下、「フッ化ビニリデン共重合体」ということがある。)を含有するフッ化ビニリデン系樹脂である。すなわち、本発明におけるフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデン共重合体のみを含有するものでもよいが、フッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーとを含有するものでもよい。フッ化ビニリデン共重合体及びフッ化ビニリデンホモポリマーはそれぞれ、それ自体周知の重合方法である懸濁重合法または乳化重合法によって、製造することができる。
2.フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体
フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体(フッ化ビニリデン共重合体)は、コモノマーとしてフッ化オレフィンを共重合して形成されるフッ化ビニリデンの共重合体である。
〔フッ化オレフィン〕
本発明におけるフッ化ビニリデン共重合体を形成するコモノマーであるフッ化オレフィンとしては、通常炭素数が2〜10のアルケン(オレフィン)において1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたフルオロアルケン(フッ化オレフィン)が挙げられ、具体的には、テトラフルオロエチレン、フッ化エチレン、三フッ化エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、三フッ化塩化エチレンなどが挙げられる。フッ化オレフィンとして、特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。炭素数が10を超えるフッ化オレフィンを共重合して形成されるフッ化ビニリデンの共重合体から形成されるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントにおいては、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有するフッ化ビニリデン系樹脂フィラメントを提供することができない場合がある。
3.フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを形成するフッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂は、該フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%である。すなわち、フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂(以下、単に「フッ化ビニリデン系樹脂」ということがある。)の質量を100質量%とするとき、フッ化ビニリデン共重合体を形成するコモノマーであるフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%である。フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量は、好ましくは0.35〜0.93質量%、より好ましくは0.4〜0.91質量%である。フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.95質量%を超えると、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの引張強度及び/または耐摩耗性が不足することがある。フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3質量%未満であると、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造時に、モノフィラメントの内部に空洞が生じることがあり、特に大径のモノフィラメントでは、空洞の発生頻度が増加して均質なモノフィラメントを得られないことがある。フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量は、NMR装置を使用して、周波数500MHzにて19F−NMR法により、例えば、69〜75ppm付近のCFに由来するシグナルと91〜119ppm付近のCFに由来するシグナルの検出結果に基づいて求めることができる。なお、フッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデン共重合体及びフッ化ビニリデンホモポリマーに加えて、他のいわゆるフッ素系樹脂やその他の樹脂を含有する場合は、フッ化ビニリデン共重合体及びフッ化ビニリデンホモポリマーの合計を100質量%として、フッ化オレフィンの含有量を算出する。
4.フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデン系樹脂の調製
フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量(以下、単に「フッ化オレフィンの含有量」ということがある。)が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを形成するフッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂の質量を100質量%とするときに、該フッ化ビニリデン共重合体を形成するコモノマーであるフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%の範囲である限り、その調製方法は特に限定されない。すなわち、1)コモノマーであるフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデン共重合体のみから、フッ化ビニリデン系樹脂を調製してもよいし、2)コモノマーであるフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%より大きいフッ化ビニリデン共重合体と、フッ化ビニリデンホモポリマー(いうまでもなく、フッ化オレフィンの含有量は0質量%である。)とをブレンドして、フッ化ビニリデン系樹脂の質量を100質量%とするときに、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%の範囲となるように調製してもよいし、また、3)コモノマーであるフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%より大きいフッ化ビニリデン共重合体と、コモノマーであるフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%より小さいフッ化ビニリデン共重合体とをブレンドして、フッ化ビニリデン系樹脂の質量を100質量%とするときに、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%の範囲となるように調製してもよい。
フッ化オレフィンの含有量の調整が容易である観点から、2)として述べた調製方法、すなわち、コモノマーであるフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%より大きいフッ化ビニリデン共重合体、例えばフッ化オレフィンの含有量が1〜5質量%、好ましくは1.5〜3質量%であるフッ化ビニリデン共重合体と、フッ化ビニリデンホモポリマーとをブレンドして、フッ化ビニリデン系樹脂の質量を100質量%とするときに、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%の範囲となるように調製する方法が好ましい。フッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーとをブレンドする方法は、特に限定されず、フッ化ビニリデン共重合体の粉体とフッ化ビニリデンホモポリマーの粉体とを、所望により後に述べる添加剤等とともに混合した混合物を成形機に供給するようにしてもよいし、該混合物を一旦ペレット化したコンパウンドとして、所望のときに成形機にコンパウンドを供給するようにしてもよい。
5.フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを形成するフッ化ビニリデン系樹脂の分子量の指標である固有粘度は、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用することができるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを提供することができる限り、特に限定されないが、前記した諸特性のバランスを改善する観点から、固有粘度が1.3dl/g未満であることが好ましく、1.28dl/g未満であることがより好ましく、1.26dl/g未満であることが更に好ましい。フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度が大きすぎると、引張強度は大きいものの耐摩耗性が不足する場合がある。フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度の下限値は、所期のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得ることができる限り、特にないが、通常1.1dl/g、多くの場合1.15dl/gである。フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度は、フッ化ビニリデン系樹脂の試料、例えば、フッ化ビニリデン共重合体及び/またはフッ化ビニリデンホモポリマーの粉末やペレット等から調製した試料を、N,N−ジメチルホルムアミドに0.4g/dlの濃度で溶解させ、得られる溶液の温度30℃における固有粘度をウベローデ型粘度計により測定する。
6.その他の樹脂
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを形成するためには、フッ化ビニリデン系樹脂、具体的には、フッ化ビニリデン共重合体のみを含有するもの、または、フッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーとを含有するものに加えて、本発明の目的を阻害しない限り、モノフィラメントの諸特性の改善を目的として、その他の樹脂を含有させることができる。その他の樹脂としては、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂等の他のフッ素系樹脂;メタクリレート系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の他の熱可塑性樹脂;天然ゴムまたは合成ゴム;熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらの1種または複数種を含有させることができる。その他の樹脂の含有割合は、フッ化ビニリデン系樹脂及びその他の樹脂の合計を100質量%とするときに、通常0.2〜25質量%であり、多くの場合0.3〜20質量%の範囲である。
〔メタクリレート系樹脂〕
その他の樹脂のうち、モノフィラメント製造時、具体的には押出成形時の空洞の発生を防止する観点から、メタクリレート系樹脂が好ましい。メタクリレート系樹脂としては、メタクリル酸メチルのホモポリマーのほか、メタクリル酸メチルモノマー70質量%以上とアクリル酸エステルモノマーまたはメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルモノマー30質量%以下とから形成されるメタクリル酸メチル共重合体、少量の他の第三成分のモノマーを更に共重合成分として形成されるメタクリル酸メチル共重合体、これらのポリマーブレンド、耐衝撃性等の物性改善のために種々の添加剤を含有させた改質メタクリル酸メチル重合体などを使用することができ、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペット(登録商標)等の市販品を使用することができる。メタクリレート系樹脂は、硬い非晶性の樹脂であるために、フッ化ビニリデン系樹脂に更に含有させてモノフィラメントを形成するときに、糸の表面の硬度を低下させることがなく、また、フッ化ビニリデン系樹脂の結晶化を遅らせる結果、押出成形時の空洞の発生が抑制されるものと推察される。メタクリレート系樹脂の含有割合は、フッ化ビニリデン系樹脂及びメタクリレート系樹脂の合計を100質量%とするときに、0.3〜20質量%が好ましく、0.4〜16質量%がより好ましく、0.5〜12質量%が更に好ましい。メタクリレート系樹脂の含有割合が20質量%を超えると、メタクリレート系樹脂が硬い非晶性の樹脂であるために、糸全体が過度に硬くなり柔軟性が失われてしまう、引張強度が低下してしまう、更には、比重が1.1〜1.2と軽いため、糸全体が軽くなり、沈水性(水中での沈降性)が低下してしまうなど、フッ化ビニリデン系樹脂の持つ優れた特性が失われてしまうこととなる場合があるため好ましくない。
7.添加剤
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、諸物性をより高め、特に物性のバランスを改善し、更に所望の各種物性を付加するなどのために、フッ化ビニリデン系樹脂の応用分野において通常使用される、可塑剤、核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、熱安定剤、光安定剤、充填剤、内部離型剤、艶消し剤、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、滑剤その他の加工助剤など各種の添加剤を含有させることができる。これら添加剤の含有量は、添加剤の種類及びフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの使用環境や使用条件によって異なるが、フッ化ビニリデン系樹脂100質量部に対して、通常0.001〜20質量部、多くの場合0.01〜10質量部、更に0.05〜5質量部でもよい。
8.フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントである。
〔モノフィラメント〕
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂(メタクリレート系樹脂など、その他の樹脂を含有するものでもよい。)を、通常、溶融状態で押出機などから押し出し、所望により延伸と緩和処理することにより形成されるモノフィラメントである。すなわち、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、押出された後に延伸された延伸糸でもよいし、押出された後に延伸と緩和の処理を受けた延伸糸でもよいが、押出された後に延伸と緩和の処理を受けた延伸糸であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントが好ましい。また、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、全延伸倍率が5.1倍以下であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントが好ましく、全延伸倍率が5倍以下であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントがより好ましい。フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率は、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性のバランス等を参酌して定めればよい。全延伸倍率の下限値は特にないが、全延伸倍率は、通常4倍以上、多くの場合4.1倍以上である。なお、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントが押出された後に延伸と緩和の処理を受けた延伸糸である場合、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率とは、延伸と緩和の処理を受けた延伸糸の延伸倍率をいう。
〔糸径〕
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、糸径が0.5mm以上である。糸径が0.5mm以上であることにより、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸に求められる引張強度等の機械的特性を有するものとすることができる。糸径が大きすぎると、釣糸の重量や体積が過大となって作業性が低下したり、柔軟性が損なわれたりすることから、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、糸径が、上限10mm以下、通常5mm以下であり、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.6〜2.7mm、更に好ましくは0.7〜2.5mmの範囲である。
〔耐摩耗性〕
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、耐摩耗性に優れているので、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用するのに適するモノフィラメントである。具体的には、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、以下の方法により測定する耐摩耗性試験において、破断までの破断回数が75回以上である優れた耐摩耗性を有する。耐摩耗性試験は、モノフィラメントの一端に20kgの重りを接続し、表面を細目の金ヤスリで軽くヤスリ掛けした径25mmのSUS製シャフトに直角に接触するようにして、モノフィラメントの他端を把持用の取っ手に接続し、把持用の取っ手を、約30回/分の速度及び30cmのストロークで人力で往復動させ、モノフィラメントが破断するまでの回数をカウントして、該モノフィラメントの破断回数として測定するものである。モノフィラメントの耐摩耗性試験における破断回数が、75回以上であれば、優れた耐摩耗性を有するということができ、90回以上であれば、特に優れた耐摩耗性を有するということができ、100回以上であれば極めて優れた耐摩耗性を有するということができる。フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの耐摩耗性は、特に上限がないが、破断回数として、最大でも2000回以下であり、多くの場合1000回以下である。
〔引張強度及び伸度〕
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸に求められる引張強度等の機械的特性を有することが好ましく、具体的には、糸径が0.5〜3mmであり、引張強度が340MPa以上、伸度が20〜50%であるものとすることができる。この引張強度と伸度との組み合わせによれば、大型魚類の餌食いによる大きな衝撃に耐えて糸切れを阻止することができ、また、モノフィラメントの柔軟性が高く釣糸の取扱い性も良好となる。引張強度は、345MPa以上がより好ましく、350MPa以上が更に好ましい。引張強度の上限値が特にないが、通常800MPa以下、多くの場合750MPa以下の引張強度である。伸度は、24〜46%がより好ましく、28〜42%が更に好ましい。
(引張強度及び伸度の測定方法)
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの引張強度及び伸度(以下、「引張強伸度」ということがある。)は、以下の方法により測定する。すなわち、引張試験機を使用して、温度23℃、65%RHの室内で、試長200mm、引張速度300mm/分にて、試料が破断するときの応力と伸びを測定することにより、破断時の引張強度と伸度を算出する(測定数5)。このとき、試料は、チャックでの破断を防止するために、上下の各チャックの手前に取り付けられた直径13mmのシリンダーに3周巻きつけてから、チャックで固定されている。なお、試長とは、上部のチャックに取り付けられたシリンダーの中心から、下部のチャックに取り付けられたシリンダーの中心までの長さをいう。また、引張試験機で記録される伸度は、シリンダー部での糸による伸びによる滑りを含んでいるので、実際の伸度の値を得るため、上部のシリンダーの巻付け部と測定部の境目に印を付け、その滑りの値を読み取って、該滑りの値を2倍にした値を上下の巻付け部の滑りの大きさとし、測定された伸びから差し引いた値を実際の伸びの大きさとして、伸度を算出する。
〔内部の空洞の有無〕
また、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、製造時にフィラメント内の空洞の発生がみられないので、延伸操作に支障が生じることがない。また、モノフィラメントの内部に空洞がないので、機械的な性質が低下することがない。モノフィラメントの内部の空洞の有無は、目視による観察で確認することができる。すなわち、製造中の未延伸糸を、目視により10分間観察して空洞の数をカウントし、未延伸糸の長さ当たりの個数を求めることにより評価する。本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、糸径が0.5mm以上であるので、略直径0.5mm以上の空洞の発生が未延伸糸10m当たり1個以下であるものとすることが好ましく、未延伸糸15m当たり1個以下がより好ましく、未延伸糸20m当たり1個以下が更に好ましい。なお、空洞は、必ずしも球形ではないので、大きさの目安として最大径(長径)を「略直径」として評価する。
II.フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの用途
1.フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸
本発明によれば、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であることを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸が提供され、この釣糸は、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、モノフィラメントからなる釣糸であることにより、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸に適合するものである。
特に、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸は、マグロ延縄漁法に適する釣糸である。すなわち、マグロ延縄漁法においては、釣糸の耐摩耗性が低いと、投縄や揚縄を行うときに、マグロの歯やエラ、船べり、または、巻揚げ機等の漁具などに釣糸が接触することによって釣糸の表面に傷が付き、この傷が釣糸の表面を荒らし、釣糸の透明性が低下することがある。釣糸の透明性が低下し、糸が白色を呈すると、マグロ等の魚の喰いが悪くなるので、釣糸の表面に傷が付きにくい耐摩耗性は、釣糸の強伸度等の耐久性と並んで、大型魚類捕獲用の釣糸にとって極めて重要な特性である。
さらに、本発明によれば、i)フッ化オレフィンがヘキサフルオロプロピレンである前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、ii)フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度が1.3dl/g未満である前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、iii)全延伸倍率が5.1倍以下である前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、または、iv)糸径が0.5〜3mmであり、引張強度が340MPa以上、伸度が20〜50%である前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸が提供され、この釣糸は、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性を更にバランスよく備え、内部に空洞のない、モノフィラメントからなる釣糸であることにより、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸により適合するものである。
2.その他の用途
本発明によるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のないモノフィラメントであることにより、大型魚類捕獲用の釣糸の他に各種の用途に好適に利用できる。磯釣りや小型魚類等の捕獲用に使用する釣糸の用途に好適に利用できることはいうまでもない。また、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、紫外線で劣化しにくい性質を有することから、耐候性を必要とされる屋外用のワイヤやロープに利用することができる。また、モノフィラメント、または該モノフィラメントから編成したネットとして、ビルや住宅のベランダ等に張り巡らすことにより、透明なモノフィラメントによる飛行阻害の恐怖感とモノフィラメントの光輝性による警戒感を与えることで、鳥害を防ぐことに利用することもできる。
III.フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント及び釣糸の製造方法
1.フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であることを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得ることができる限り、その製造方法は限定されない。例えば、フッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出し、必要に応じて延伸するモノフィラメントの製造方法によって製造することができる。
特に、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する押出工程;温度70〜160℃の溶媒中で急冷する急冷工程;次いで、温度70℃以上で予熱する予熱工程;及び、延伸し緩和する延伸緩和工程を備える、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法によれば、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを効率よく安定的に得ることができる。
〔押出工程〕
まず、押出工程において、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体(フッ化ビニリデン共重合体)を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を、押出機に供給し、押出機のシリンダー内で溶融し、押出機先端に取り付けたノズルから棒状に溶融押出する。フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂は、先に説明したように、フッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーとのブレンドや、フッ化オレフィンの含有量が異なるフッ化ビニリデン共重合体のブレンドとして調製してもよく、また、所望により添加剤を含有させてもよい。
フッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する温度(シリンダー温度及びノズル温度)は、フッ化ビニリデン系樹脂の溶融温度以上であり、フッ化ビニリデン系樹脂の組成により異なるが、通常170℃以上、多くの場合180〜250℃、ほとんどの場合190〜240℃の範囲である。押出機のノズルの径は、後に実施する延伸緩和工程における延伸及び緩和の倍率や、最終的に得られる延伸糸(フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント)の糸径とを勘案して定められるが、通常1mm以上、多くの場合3mm以上、ほとんどの場合4mm以上である。ノズルの径の上限は、特にないが、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸としての取扱い性等の観点から、通常12mm、多くの場合10mmである。また、押出速度は、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率や糸径を参酌して定められる。
〔急冷工程〕
押出工程でノズルから押し出されたフッ化ビニリデン系樹脂の溶融物は、急冷工程において、温度70〜160℃の溶媒中で急冷される。すなわち、フッ化ビニリデン系樹脂の溶融物を、溶媒中に浸漬して走行させ、フッ化ビニリデン系樹脂の融点以下の温度に急冷することにより、フッ化ビニリデン系樹脂の未延伸糸を得る。急冷工程における急冷温度は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜145℃の範囲である。急冷を行う溶媒としては、急冷を行う温度において液状であり、フッ化ビニリデン系樹脂の溶融物を、融点以下の温度に冷却して、フッ化ビニリデン系樹脂の未延伸糸を得ることができる限り、特に限定されず、例えば、グリセリンを使用することができる。急冷工程を行う時間は、フッ化ビニリデン系樹脂の溶融物を、融点以下の温度に冷却して、フッ化ビニリデン系樹脂の未延伸糸を得ることができる範囲で、適宜選定することができる。得られたフッ化ビニリデン系樹脂の未延伸糸は、続けて予熱工程及び延伸緩和工程を行ってもよいが、未延伸糸のまま巻き取って、所望の期間常温または適宜の温度環境下で保存してもよい。
〔予熱工程〕
次いで、融点以下の温度に急冷され、所望によっては常温または適宜の温度環境にあるフッ化ビニリデン系樹脂の未延伸糸を、予熱工程において、温度70℃以上で予熱する。予熱温度は、フッ化ビニリデン系樹脂の融点未満であり、通常170℃未満、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜140℃の範囲である。予熱は、オーブンまたは加熱炉中で行ってもよいし、加熱した溶媒中、例えば加熱したグリセリンに浸漬することにより行ってもよい。本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法は、予熱工程を備えることにより、延伸に供するフッ化ビニリデン系樹脂の未延伸糸の糸表面部と内部の温度差が均一なものとなり、均質な延伸を行うことができる。
〔延伸緩和工程〕
続いて、予熱されたフッ化ビニリデン系樹脂の未延伸糸を、延伸し、次いで緩和することにより、糸径が0.5mm以上の延伸糸である本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得る。本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法は、延伸緩和工程を含むことにより、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞が存在しない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用することができるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを効率よく安定的に得ることができる。
(延伸)
延伸緩和工程における延伸の延伸温度は、フッ化ビニリデン系樹脂の融点未満であり、通常170℃未満、多くの場合155℃以上170℃未満、好ましくは160〜169℃、より好ましくは162〜168℃の範囲である。延伸緩和工程における延伸の延伸倍率は、続いて行う緩和の緩和率、及び、最終的に得られる延伸糸であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率(延伸緩和工程後の延伸倍率を意味する。)にもよるが、通常3〜7倍、多くの場合3.5〜6.5倍、ほとんどの場合4〜6倍の範囲とする。延伸は、1段延伸でもよいし、2段延伸でもよい。2段延伸を行う場合は、それぞれの延伸温度及び延伸倍率を異なるものとしてもよく、また前記の延伸倍率は2段の累積の倍率を意味する。延伸は、オーブンまたは加熱炉中で行ってもよいし、加熱した溶媒中、例えば加熱したグリセリンに浸漬することにより行ってもよい。
(緩和)
延伸を行ったフッ化ビニリデン系樹脂に対し、続いて緩和を行う。緩和を行う緩和温度は、通常70〜170℃、多くの場合90〜169℃、ほとんどの場合100〜168℃の範囲であり、延伸温度と同程度の温度において実施してもよい。緩和の緩和率は、通常2〜15%、好ましくは3〜14%、より好ましくは4〜13%の範囲である。緩和は、オーブンまたは加熱炉中で行ってもよいし、加熱した溶媒中、例えば加熱したグリセリンに浸漬することにより行ってもよい。
(延伸緩和工程後のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率)
延伸緩和工程を行うことにより、全延伸倍率が5.1倍以下であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを容易に得ることができる。延伸緩和工程後のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率は、先に説明したように、5倍以下であることがより好ましい。また、延伸緩和工程後のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率の下限値は特にないが、全延伸倍率は、通常4倍以上、多くの場合4.1倍以上である。なお、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの全延伸倍率は、延伸緩和工程における延伸倍率×(100−緩和率)/100として算出される。
2.フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸の製造方法
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸は、先に説明した本発明のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法によって製造されたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントに対して、定法の処理操作を行うことにより、釣糸、好ましくは延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸を製造することができる。すなわち、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する押出工程;温度70〜160℃の溶媒中で急冷する急冷工程;次いで、温度70℃以上で予熱する予熱工程;及び、延伸し緩和する延伸緩和工程を備える、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸の製造方法によって、効率的かつ安定的に製造することができる。押出工程、急冷工程、予熱工程及び延伸緩和工程の具体的条件等は、先に説明したとおりである。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例におけるフッ化ビニリデン系樹脂及びフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの特性または物性の測定方法は、以下のとおりである。
〔フッ化オレフィンの含有量〕
フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量は、NMR装置(Varian Inc.製、UNITY INOVATION 500NMR)を使用して、周波数500MHzにて19F−NMR法により、69〜75ppm付近のCFに由来するシグナルと91〜119ppm付近のCFに由来するシグナルの検出結果に基づいて求めた。フッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーのブレンドのフッ化オレフィンの含有量は、それぞれのフッ化オレフィンの含有量に基づいて算出した。
〔固有粘度〕
フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度は、フッ化ビニリデン共重合体またはフッ化ビニリデンホモポリマーの粉末またはペレットから調製した試料を、N,N−ジメチルホルムアミドに0.4g/dlの濃度で溶解させ、得られた溶液の温度30℃における固有粘度をウベローデ型粘度計により測定し、フッ化ビニリデン共重合体またはフッ化ビニリデンホモポリマーの固有粘度とした。フッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーのブレンドの固有粘度は、それぞれの固有粘度に基づいて算出した。
〔内部の空洞の有無〕
モノフィラメント内部の空洞の有無は、製造中の未延伸糸を、目視により10分間観察して空洞の数をカウントし、未延伸糸の長さ当たりの個数を求めることにより評価した。
〔耐摩耗性〕
フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの耐摩耗性は、以下の方法により測定する耐摩耗性試験において、破断までの破断回数として測定した。すなわち、耐摩耗性試験は、モノフィラメントの一端に20kgの重りを接続し、表面を細目の金ヤスリで軽くヤスリ掛けした径25mmのSUS製シャフトに直角に接触するようにして、モノフィラメントの他端を把持用の取っ手に接続し、把持用の取っ手を、約30回/分の速度及び30cmのストロークで人力で往復動させ、モノフィラメントが破断するまでの回数をカウントして、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの破断回数を測定した。
〔引張強度及び伸度〕
フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの引張強度及び伸度(引張強伸度)は、以下の方法により測定した。すなわち、株式会社東洋精機製作所製のストログラフRII型引張試験機を使用して、温度23℃、65%RHの室内で、試長200mm、引張速度300mm/分にて、試料が破断するときの応力と伸びを測定することにより、破断時の引張強度と伸度を算出した(測定数5)。このとき、試料は、チャックでの破断を防止するために、上下の各チャックの手前に取り付けられた直径13mmのシリンダーに3周巻きつけてから、チャックで固定されるようにした。なお、引張試験機で記録される伸度は、シリンダー部での糸による伸びによる滑りを含んでいるので、実際の伸度の値を得るため、上部のシリンダーの巻付け部と測定部の境目に印を付け、その滑りの値を読み取って、該滑りの値を2倍にした値を上下の巻付け部の滑りの大きさとし、測定された伸びから差し引いた値を実際の伸びの大きさとして、伸度を算出した。
[実施例1]
〔フッ化ビニリデン系樹脂の調製〕
フッ化ビニリデンホモポリマー(株式会社クレハ製、固有粘度1.3dl/g。以下、「ホモポリマーa」ということがある。)80質量部(80質量%に相当)、及び、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(株式会社クレハ製、固有粘度1.05dl/g、ヘキサフルオロプロピレン含有量1.8質量%。以下、「共重合体a」ということがある。)20質量部(20質量%に相当)をブレンドして、フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製した。調製されたフッ化ビニリデン系樹脂は、固有粘度1.25dl/g、ヘキサフルオロプロピレン含有量(以下、「フッ化オレフィン含有量」ということがある。)0.4質量%であった。
〔フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造〕
前記のように調製されたフッ化ビニリデン系樹脂を、50mmφの押出機のホッパーに投入し、押出機内で温度190〜240℃で溶融混合し、押出機先端に取り付けた4mmφのノズルから溶融押出し、温度140℃の加熱グリセリン中で急冷却して、フッ化ビニリデン系樹脂の未延伸モノフィラメントを空気中で引き取った。その際、製造中に未延伸糸を目視により観察したところ、僅かに空洞の発生が認められたものの、延伸性が阻害されることはなかった。次いで、加熱グリセリン中で予熱を行った後に、温度165℃の加熱グリセリン中で延伸倍率4.9倍の延伸を行い、温度165℃の加熱グリセリン中にて緩和率10%の緩和を行うことにより、直径1.82mmのフッ化ビニリデン系樹脂の延伸糸(フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント、全延伸倍率4.4倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に僅かに空洞が認められることはあったが、モノフィラメントの特性を低下させるほどのものではなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
[実施例2]
フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製するために、ホモポリマーa 70質量%、及び、共重合体a 30質量%をブレンドしたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成の変更、並びに、延伸倍率を5.1倍とした製造条件の変更を除いて、実施例1と同様にして、直径1.82mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(全延伸倍率4.6倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に空洞がみられなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
[実施例3]
フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製するために、ホモポリマーa 60質量%、及び、共重合体a 40質量%をブレンドしたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成の変更、並びに、延伸倍率を5.3倍とした製造条件の変更を除いて、実施例1と同様にして、直径1.82mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(全延伸倍率4.7倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に空洞がみられなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
[実施例4]
フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製するために、ホモポリマーa 50質量%、及び、共重合体a 50質量%をブレンドしたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成の変更、並びに、延伸倍率を5.5倍とした製造条件の変更を除いて、実施例1と同様にして、直径1.82mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(全延伸倍率4.9倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に空洞がみられなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
[実施例5]
フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製するために、ホモポリマーa 66.5質量%、共重合体a 28.5質量%、及び、メタクリレート系樹脂〔三菱レイヨン株式会社製のアクリペット(登録商標)VH001。以下、「PMMA」と表記することがある。) 5質量%をブレンドしたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント組成の変更〔ホモポリマーaと共重合体aとの含有割合(質量比)は、70:30である。〕、並びに、延伸緩和工程において、延伸温度を167℃、延伸倍率を5.0倍とした製造条件の変更を除いて、実施例1と同様にして、直径1.80mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(全延伸倍率4.5倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に空洞がみられなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
[実施例6]
フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製するために、ホモポリマーa 63質量%、及び共重合体a 27質量%、及び、PMMA 10質量%をブレンドしたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成の変更〔ホモポリマーaと共重合体aとの含有割合(質量比)は、70:30である。〕、並びに、延伸倍率を5.3倍、緩和率を5%とした製造条件の変更を除いて、実施例5と同様にして、直径1.76mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(全延伸倍率5.0倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に空洞がみられなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
[比較例1]
フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製するために、ホモポリマーa 90質量%、及び、共重合体a 10質量%をブレンドしたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成の変更、並びに、延伸倍率を4.7倍とした製造条件の変更を除いて、実施例1と同様にして、直径1.82mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得ようとしたところ、急冷工程において、フィラメントの軸方向(押出方向)に連続した空洞が発生していることが目視で確認された。また、未延伸フィラメントを延伸しようとしたところ亀裂が発生し、延伸したモノフィラメントを安定的に得ることができなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成と製造条件を、表1に示す。
[比較例2]
フッ化ビニリデン共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を調製するために、ホモポリマーa 40質量%、及び、共重合体a 60質量%をブレンドしたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成の変更、並びに、延伸倍率を5.7倍とした製造条件の変更を除いて、実施例1と同様にして、直径1.82mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(全延伸倍率5.1倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に空洞がみられなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
[比較例3]
フッ化ビニリデン系樹脂として、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(株式会社クレハ製、固有粘度1.45dl/g、ヘキサフルオロプロピレン含有量6.1質量%。以下、「共重合体b」ということがある。)を使用したフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成の変更、並びに、急冷工程の温度を115℃とし、延伸緩和工程において、延伸温度を160℃、延伸倍率を5.9倍とし、緩和を温度130℃で緩和率5%とした製造条件の変更を除いて、実施例1と同様にして、直径1.82mmのフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント(全延伸倍率5.6倍)を得た。得られたフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントには、内部に空洞がみられなかった。このフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントについて、耐摩耗性及び引張強伸度を測定した結果を、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの組成とともに、表1に示す。
Figure 0006186269
表1から、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%である実施例1〜6のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、耐摩耗性試験における破断回数が75回以上であり、優れた耐摩耗性を有するとともに、モノフィラメントの内部にその特性を低下させるような空洞がなく、また、糸径が0.5〜3mmであり、引張強度が340MPa以上、伸度が20〜50%であることから、大型魚類の餌食いによる大きな衝撃に耐えて糸切れを阻止することができ、また、モノフィラメントの柔軟性が高く釣糸の取扱い性も良好なものであることが分かった。
特に、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.4質量%または0.5質量%である実施例1及び2のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、耐摩耗性試験における破断回数が100回以上で極めて優れた耐摩耗性を有することに加えて、引張強度が410または440MPaで、伸度が30または35%であることから、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性を高水準でバランスよく有するので、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として極めて優れていることが分かった。
さらに、フッ化ビニリデン系樹脂及びメタクリレート系樹脂の合計を100質量%とするときに、メタクリレート系樹脂0.3〜20質量%を含有する実施例5及び6のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、メタクリレート系樹脂を含有することによって、押出成形時の空洞の発生が抑制されるとともに、耐摩耗性試験における破断回数が100回以上であって、極めて優れた耐摩耗性を有することに加えて、引張強度が434または440MPaで、伸度が32または41%であることから、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性を更に高水準でバランスよく有することが確認され、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として極めて優れていることが分かった。
これに対して、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.2質量%である比較例1のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、モノフィラメントの内部に空洞が多数あり、釣糸に適するような延伸したモノフィラメントを安定的に得られないことが分かった。
また、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が1.1質量%である比較例2のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、耐摩耗性試験における破断回数が65回であって耐摩耗性が不足し、引張強度も320MPaと低いものであり、また、フッ化オレフィンの含有量が6.1質量%であるとともに固有粘度が1.45dl/gである比較例3のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、耐摩耗性試験における破断回数が60回であることから、耐摩耗性が不足するものであり、いずれも、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用するには不十分であることが分かった。
本発明は、フッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、フッ化ビニリデン系樹脂中のフッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であることを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであることによって、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸として使用することができるフッ化ビニリデン系樹脂フィラメントが提供されるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明は、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸であることによって、耐摩耗性、引張強度、伸度、柔軟性などの諸特性をバランスよく有し、内部に空洞のない、延縄漁法等による大型魚類捕獲用の釣糸が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。
さらに、本発明は、フッ化オレフィンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する押出工程;温度70〜160℃の溶媒中で急冷する急冷工程;次いで、温度70℃以上で予熱する予熱工程;及び、延伸し緩和する延伸緩和工程を備える、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法、並びに、フッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸の製造方法であることによって、前記のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント及びフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸を効率的かつ安定的に製造することができる方法が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (9)

  1. フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂から形成され、糸径が0.5mm以上であるフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントであって、
    フッ化ビニリデン系樹脂中のヘキサフルオロプロピレンの含有量が0.3〜0.95質量%であることを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
  2. フッ化ビニリデン系樹脂の固有粘度が1.3dl/g未満である請求項1記載のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
  3. フッ化ビニリデン系樹脂及びメタクリレート系樹脂の合計を100質量%とするときに、メタクリレート系樹脂0.3〜20質量%を含有する請求項1または2記載のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
  4. 全延伸倍率が5.1倍以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
  5. 糸径が0.5〜3mmであり、引張強度が340MPa以上、伸度が20〜50%である請求項1乃至のいずれか1項に記載のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸。
  7. 大型魚類捕獲用である請求項記載の釣糸。
  8. ヘキサフルオロプロピレンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する押出工程;温度70〜160℃の溶媒中で急冷する急冷工程;次いで、温度70℃以上で予熱する予熱工程;及び、延伸し緩和する延伸緩和工程を備える、請求項1乃至のいずれか1項に記載のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法。
  9. ヘキサフルオロプロピレンの含有量が0.3〜0.95質量%であるフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体を含有するフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押出する押出工程;温度70〜160℃の溶媒中で急冷する急冷工程;次いで、温度70℃以上で予熱する予熱工程;及び、延伸し緩和する延伸緩和工程を備える、請求項または記載のフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸の製造方法。
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