JPH08158151A - 高強度ポリアミドモノフィラメント及びその製造方法 - Google Patents

高強度ポリアミドモノフィラメント及びその製造方法

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JPH08158151A
JPH08158151A JP29547894A JP29547894A JPH08158151A JP H08158151 A JPH08158151 A JP H08158151A JP 29547894 A JP29547894 A JP 29547894A JP 29547894 A JP29547894 A JP 29547894A JP H08158151 A JPH08158151 A JP H08158151A
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JP
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birefringence
monofilament
strength
polyamide
fiber
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JP29547894A
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Inventor
Yasuo Umemura
康男 梅村
Hideo Nakada
秀夫 仲田
Hiroshi Takahashi
洋 高橋
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Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 繊維表面から繊維軸の直角方向に直径の1
/20以内の位置に、表面複屈折よりも低い複屈折極小
部が存在し、27×10-3≦表面複屈折≦50×1
-3、(表面複屈折−複屈折極小部複屈折)≧5×10
-3、及び、中心複屈折−表面複屈折≧5×10-3の条件
を満足する高強度ポリアミドモノフィラメントであり、
特定条件で、延伸、高温短時間熱処理、再延伸、リラッ
クス熱処理をする製糸方法により製造される。 【効果】 引張強度、結節強度、衝撃結節強度等の強
度特性に優れるとともに、硬い粗面での耐摩耗性にも優
れるので、釣糸、漁網用糸、のり網用糸などの水産用資
材として好適である。さらに、透明性、柔軟性、繊維表
面の平滑性等の特性にも優れ、水切れ性、漁獲性、操作
性、耐久性の優れた水産用繊維製品とすることができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高引張強度、高結節強
度のポリアミドモノフィラメントの改良に関するもので
ある。さらに詳しくは、高引張強度、高結節強度を有す
るとともに高衝撃強力、高耐摩耗性及び優れた均一性を
兼備し、特に釣糸や漁網用として好適なポリアミドモノ
フィラメント、及びその好適な製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ポリアミドモノフィラメントは、釣糸や
漁網用糸として広く用いられているが、常により一層の
漁獲性、操作性、および耐久性を得るための改良が求め
られている。そこで、ポリアミドモノフィラメントとし
ては、強度、柔軟性、および耐摩耗性や耐屈曲疲労性等
の耐久性の改良研究が進められてきている。
【0003】最近は、より細いモノフィラメントで高い
引張強度と高い結節強度とを有する高強度モノフィラメ
ントが要求されており、そのための製造方法が、例えば
特公昭54−43610号公報、特開昭58−1441
11号公報等で提案されている。
【0004】特公昭54−43610号公報は、4.5
倍以上に延伸されたナイロンモノフィラメントの表層を
膨潤剤を用いて処理する方法、同種又は異種ポリマ溶液
を塗布処理する方法、および部分溶融処理する方法等か
ら選ばれた一種以上の処理法を適用することによって表
層低配向化を図る方法を開示するものであり、その結
果、直径約0.48mm(8号相当)で引張強度7.9
g/d、結節強度5.8g/dが得られた例が示されて
いる。
【0005】また、特開昭58−144111号公報
は、相対粘度(ηr)が3.4でポリカプラミド成分が
85重量%以上からなる共重合ポリマを用いて溶融紡糸
し冷却固化した後、高温のポリエチレングリコール浴
中、特定条件下で多段延伸する方法を開示するものであ
り、その結果、直径0.29mm(3号相当)のモノフ
ィラメントで引張強度10.5g/d、結節強度8.3
g/dが得られたことが示されている。
【0006】さらに、釣糸として使用される時に、モノ
フィラメントは岩ずれ等の擦過を受ける事が多く、この
岩ずれ等で屈曲した部分で摩耗や縮れを生じたり破断し
てしまうというトラブルが生じ易いので、それらトラブ
ル発生を改善したいとの要望も強い。そこで、高強度で
かつ耐摩耗性の高いモノフィラメントが要求され、その
ための改善方法が、例えば特開平3−27116号公報
等で提案されている。
【0007】特開平3−27116号公報は、ポリアミ
ド共重合ポリマを用いて溶融紡出後冷却固化し、未延伸
糸の状態で水蒸気で満たされた加熱処理装置で、特定の
条件下で処理を行ない、その後引続き4.5倍以上に熱
延伸することによって、表層低配向化構造の二層構造糸
を得る方法を開示するものであり、例えば、直径0.2
8mm(3号相当)のモノフィラメントで引張強度1
0.0g/d、結節強度8.6g/d、摩耗疲労切断回
数320回という物性が得られたことが示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平3−2
7116号公報は強度と共に耐摩耗性も向上させるもの
ではあるが、表面が低配向化された柔軟構造であるた
め、硬い粗面で擦過した場合には依然として縮れ等の問
題が起こり易く未だ十分な改善技術とは言い難かった。
【0009】最近は、耐摩耗性の向上をも含めた高強度
化の要求は益々高くなってきており、前記した従来の技
術ではその要求に十分に応えることが困難となってい
た。
【0010】そこで、本発明は、高引張強度、高結節強
度を有するとともに、硬い粗面での耐摩耗性や耐衝撃性
にも十分に憂れ、特にテグス用として好適な特性を兼備
したポリアミドモノフィラメントを提供することを主た
る目的とする。
【0011】併せて、そのポリアミドモノフィラメント
を工業的に製造するための好適な製造方法の提供を目的
とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく種々検討した結果、表面複屈折が27×1
-3〜50×10-3で、表面に近い部分に表面よりも低
い複屈折極小部が存在する繊維構造とすることにより、
硬い粗面での耐摩耗性を大幅に向上させることができる
こと、表面複屈折、複屈折極小値及び中心複屈折の水準
及び複屈折極小部の位置を特定範囲内とすることによ
り、高引張強度、高結節強度を有するとともに、耐摩耗
性が十分に優れたポリアミドモノフィラメントとするこ
とができること、さらに、そのポリアミドモノフィラメ
ントは、特定条件下で、延伸、高温短時間熱処理の後
に、再延伸し、リラックス熱処理することにより、工業
的に容易に得られることを見出し、本発明をなすに至っ
た。
【0013】即ち、本発明の高強度ポリアミドモノフィ
ラメントは、繊維表面から繊維中心方向に繊維直径の1
/20以内の位置に、表面複屈折よりも低い複屈折極小
部が存在するポリアミドモノフィラメントであって、2
7×10-3≦表面複屈折≦50×10-3、(表面複屈折
−複屈折極小部の複屈折)≧5×10-3、及び、(中心
複屈折−表面複屈折)≧5×10-3を満足する複屈折分
布を有することを特徴とする。
【0014】また、本発明の高強度ポリアミドモノフィ
ラメントの製造に使用するポリアミドは、ポリカプラミ
ド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナ
イロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロ
ン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6
10)、ポリドデカミド(ナイロン12)、又はポリヘ
キサメチレンイソフタルアミド等の単一重合体でもよい
し、また、前記ポリアミド単位を少なくとも一成分と
し、主たるポリアミド単位の割合が80重量%以上の共
重合ポリアミドや混合ポリアミドでもよい。
【0015】中でも本発明の方法によって得られたモノ
フィラメントを釣糸や漁網用として使用する場合には、
ナイロン6単一重合体やナイロン6単位を80重量%以
上含む共重合ポリアミドが好ましい。
【0016】本発明の高強度ポリアミドモノフィラメン
トの製造方法は、前記したポリアミド系重合体を溶融紡
出し、冷却固化し、延伸倍率3.5〜7.0で延伸を行
なった後、450℃以上の不活性な高温気体中、又はポ
リアミドの融点以上の不活性な高温液体中で2秒以下の
高温短時間熱処理を行ない、引続き再延伸し、リラック
ス熱処理することを特徴とする。
【0017】本発明のポリアミドモノフィラメントの繊
維構造は、繊維表面から繊維中心方向に繊維直径の1/
20以内の位置に、表面複屈折よりも低い複屈折極小部
が存在し、表面複屈折が27×10-3以上かつ50×1
-3以下であり、複屈折極小部の複屈折は表面複屈折よ
りも5×10-3以上低く、また、中心複屈折は表面複屈
折よりも5×10-3以上高いという複屈折分布を有する
ことによって特徴づけられる。さらに、平均複屈折が3
0×10-3以上かつ65×10-3以下であることが好ま
しい。
【0018】モノフィラメントの耐摩耗性は種々の物質
(摩擦試験面)と強制的に擦過させることにより測定さ
れるので、その摩擦試験面の性状によって耐磨耗性の水
準が異なってくる。例えば、木綿布地のように比較的柔
らかな面と擦過させる場合には、表面が低配向で柔らか
な方が一般に耐摩耗性が優れている。
【0019】しかし、岩ずれを想定した硬い粗面で擦過
させた場合には、表面が低配向で柔らかなことは耐摩耗
性向上に不利であって、ある程度の配向及び硬さが必要
である。従って、硬い粗面での耐摩耗性を向上させるた
めには、表面複屈折が27×10-3以上かつ50×10
-3以下であることが必要である。
【0020】これに対し、表面複屈折が27×10-3
満のように低過ぎる場合は、表面及びその近傍部分が柔
らか過ぎて岩ずれ等による表面破壊が生じ易く、耐摩耗
性を十分な水準まで向上させることができない。逆に、
表面複屈折が50×10-3を越えるほどに大きい場合
は、表面の柔軟性がなくなり亀裂が入り易く十分な結節
強度が得られず、耐摩耗性も悪い。この表面複屈折は、
好ましくは35×10-3以上かつ45×10-3以下が良
い。
【0021】表面複屈折が27×10-3〜50×10-3
であっても、モノフィラメント表面より繊維中心方向に
繊維直径の1/20以内に表面複屈折よりも低い複屈折
極小部が存在しない場合、あるいは、表面複屈折と複屈
折極小部複屈折との差が5×10-3未満と小さ過ぎる場
合は、外からの衝撃に対して緩衝材的役割を受け持つ複
屈折極小部が実質的に存在しないので、高い衝撃強度が
得られず、また、高い結節強度を得ることが困難であ
る。
【0022】その複屈折極小部が表面より繊維中心方向
に繊維直径の1/20の位置よりも繊維中心に近い位置
に存在すると、柔軟構造を示す部分の厚みが大きくなり
過ぎて、引張強度に寄与する中心の高配向部分が少なく
なり過ぎ、高強度が得られない。逆に、複屈折極小部が
表面に極めて近いとその複屈折極小部による効果が小さ
くなるので、表面に近くとも繊維直径の1/100程度
は離れていることが好ましい。
【0023】表面複屈折が27×10-3〜50×10-3
であっても、中心複屈折が表面複屈折よりも低い場合、
あるいは、その差が5×10-3未満の場合は、中心部分
の配向が不十分で高強度が得られない。
【0024】さらに、モノフィラメント全体の配向は、
平均複屈折30×10-3〜65×10-3の高配向水準と
することが、引張強度、耐摩耗性等を一層向上させるた
めに好ましい。
【0025】なお、平均複屈折が65×10-3を越える
ほどに高いモノフィラメントは、それを得るために延伸
工程での延伸倍率を極端に高くしなくてはならず、延伸
時の糸切れ発生が多くなって安定した延伸が難しい。
【0026】この平均複屈折は好ましくは38×10-3
以上60×10-3以下であり、38×10-3以上となす
ことによって引張強度、衝撃強度をさらに一層向上でき
る。このように本発明で特定した複屈折分布を有するモ
ノフィラメントでは、中心複屈折>表面複屈折>複屈折
極小部の複屈折という関係が成り立つ。その具体的な一
例の複屈折分布を図1に示す。図1は、直径0.24m
mの本発明のモノフィラメントの一例について繊維直径
方向の複屈折(示差的複屈折)を測定した結果を示すも
のであり、表面複屈折が38.2×10-3、複屈折極小
部の値が31.8×10-3、中心複屈折が58.8×1
-3であり、複屈折極小部の値が表面から8μの位置に
存在する。
【0027】この繊維構造を有する本発明のモノフィラ
メントは、請求項5の方法で製造することができるが、
更に具体的に詳述する。
【0028】ポリアミドは、カプラミド単位が80重量
%以上で、相対粘度(ηr)が3.2以上の重合体が好
ましい。この重合体のチップを溶融紡糸機に供給し、溶
融紡出しモノフィラメントとする。その紡糸温度は、ポ
リカプラミド系ポリマの場合、260℃〜320℃、好
ましくは280℃〜305℃がよい。260℃未満の温
度ではポリマのスムーズな紡出が困難で線径斑となり易
く、320℃を越える温度は紡出時にポリマの分解が起
こり易く、実用上好ましくない。
【0029】この紡出モノフィラメントは、紡糸口金の
直下に設けられた温度200〜400℃のような高温に
加熱された窒素ガス又は加熱水蒸気等の不活性ガスで充
満された雰囲気長150mm程度の高温気体中を通過さ
せ、その後直ちに温度20℃以下のような低温の液体中
を通過させて急冷固化させ、未延伸モノフィラメントと
する。その低温液体としては、水、n−ヘキサン等の脂
肪族炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素、デカリン
等の脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、あるいはこ
れらの混合物等のような、ポリアミドと不活性な液体を
用いればよい。
【0030】冷却された未延伸モノフィラメントは、洗
浄浴を通過させてモノフィラメントの表面に付着した冷
却媒体を除去させた後、20℃以下のような窒素または
空気等の不活性気体でモノフィラメントの表面の冷媒を
除去させ、連続的に1段目の延伸ゾーンに送られる。
【0031】延伸時の雰囲気(浴)としては、例えば、
ポリエチレングリコール、グリセリン、シリコーンオイ
ル等の熱媒浴、乾熱気体浴、および過熱あるいは加圧水
蒸気浴等が用いられる。
【0032】1段目の延伸は延伸倍率3.5から7.0
の範囲で行なう。好ましくは4.0から6.5倍がよ
い。その延伸温度は(Tm−100℃)以上の温度であ
ればよい。
【0033】ここで、Tmは、ポリアミドの融点(℃)
であり、チップないしはバルク状のポリマをセイコー電
子工業(株)製SSC5200型示差走査熱量計を用
い、昇温速度10℃/分で測定した際の結晶融解ピーク
温度(ただし、融解ピークがいくつも重なって出現する
場合は、最も発熱量の多いピーク温度)(℃)を意味す
る。
【0034】1段目の延伸温度が(Tm−100℃)よ
りも低いと延伸時ネックポイントを浴中に固定すること
が難しく延伸斑が発生し易く好ましくない。また、1段
目の延伸温度の上限に関しては、熱効率の高い熱媒(例
えば液体熱媒)を使用する場合には、ポリアミドモノフ
ィラメントの融点以下が好ましく、熱効率の低い熱媒
(例えば乾熱気体)を使用する場合は、ポリアミドモノ
フィラメントの融点を大巾に越える温度も許容される。
これらの温度条件は、以後の延伸における上限温度でも
同様である。
【0035】1段目の延伸の後、延伸浴温度より80℃
以上低い温水または不活性気体で冷却と同時に付着した
熱媒を除去し、表面に付着した水滴等は布またはエアー
で完全に除去し、その後引続き不活性な高温流体中で短
時間熱処理を行なう。
【0036】その高温流体としては、加熱空気、加熱窒
素等の不活性気体を用いることが好ましく、この場合、
熱伝導率が小さいので450℃以上、好ましくは550
℃以上という高い温度が必要である。しかし、あまりに
も高過ぎるとモノフィラメントの溶断を生じ易くなるの
で、高くとも1300℃以下が好ましい。さらに好まし
くは600℃〜1000℃が安定した熱処理のために好
ましい。
【0037】また、その高温流体が液体である場合は、
ポリアミドの融点(Tm)以上の高温が必要であり、ポ
リエチレングリコール、グリセリン、およびシリコーン
オイル等の不活性液体が用いられる。あまりにも高過ぎ
ると極く短時間でもモノフィラメントは極めて溶断し易
いので、ポリアミドモノフィラメントの融点よりも50
℃高い温度(Tm+50℃)以下とすることが好まし
い。
【0038】モノフィラメントを高温流体に接触させる
時間は、高温流体の種類により最適時間は異なるが、2
秒以下と短時間であることが必要である。接触させる時
間がそれよりも長いと溶断もしくは配向緩和が進み過ぎ
て強度低下を誘発する。好ましくは1秒以下である。そ
の高温短時間熱処理を行なう際の倍率は0.80から
1.20倍が好ましい。処理倍率が0.80未満では、
糸溶断が生じ易く糸物性も急激に悪化を生じ易いから好
ましくない。
【0039】その後引続いて再延伸されるが、その延伸
温度や延伸倍率は表面複屈折が所望の水準となるような
条件とすればよく、一般的には、(Tm−100℃)以
上が好ましく、総合延伸倍率5.5倍以上となるような
倍率が好ましい。
【0040】なお、ここでいう総合延伸倍率は、1段目
の延伸倍率と再延伸時の延伸倍率との積である。
【0041】再延伸が終了後、その延伸浴温度より60
℃以上低い温水または不活性気体で冷却と同時に付着し
た熱媒を除去し、表面に付着した水滴等は布またはエア
ーで完全に除去する。
【0042】続いてリラックス熱処理されるが、その温
度は(Tm−100℃)以上が好ましく、そのリラック
スの倍率は0.80から0.98が、特に、0.90か
ら0.98が好ましい。このリラックス熱処理により、
延伸工程で生じた繊維内部の不安定構造(横方向の歪、
伸びの低下、クラック)が是正される。この弛緩熱処理
終了後、仕上油剤を付着して巻き取る。
【0043】本発明のポリアミドモノフィラメントに
は、例えば顔料、染料、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防
止剤、結晶化抑制剤及び可塑剤などの添加剤を、本発明
の効果を阻害しない範囲で含有することができる。
【0044】
【作用】本発明のポリアミドモノフィラメントにおける
中心部の高い複屈折は、分子鎖が繊維方向に高度に配向
していることを示し、高い引張強度の発現に寄与してい
る。一方、極小部を含む低い複屈折の中間層部分は柔軟
構造であり、中心部の高い引張強度を発現する構造を保
護していると同時に結節時の応力集中を緩和し、亀裂が
生じ難いため高い結節強度の発現に寄与している。ま
た、表面の高い複屈折の表面部分は、複屈折極小部を含
む中間の柔軟構造を岩ずれ等による破壊から保護し、硬
い粗面での耐摩耗性、耐久性を向上させるのに寄与して
いる。
【0045】この結果、高い引張強度と結節強度ととも
に、優れた耐衝撃性、耐摩耗性を有する。そしてこの引
張強度、結節強度、および耐衝撃性はいずれもモノフィ
ラメントの直径によって変化し、直径が大きいほど低下
するが、本発明のポリアミドモノフィラメントは直径の
増大に伴う強度低下および耐衝撃性の割合が低いという
利点もある。
【0046】釣糸として用いた場合にどのような結び方
をしても高強度が発揮されるために、引張強度と結節強
度が同時に高いことは重要である。比較的小さい曲げ歪
を受ける場合は引張強度に近く、大きな曲げ歪を受ける
場合は結節強度でほぼ代表されるからである。
【0047】さらに、硬い粗面に対する耐摩耗性にも優
れており、例えばサンドペーパー法によって評価する
と、本発明のポリアミドモノフィラメントは従来の物に
比べ2.5倍以上の耐切断摩耗回数を示すことができ
る。このように硬い粗面での耐摩耗性等に優れ耐久性に
優れることは、本発明のポリアミドモノフィラメントが
特異な繊維構造を有することによる。
【0048】本発明のポリアミドモノフィラメントの他
の特徴は引張剛性が高い一方、曲げに対して柔軟なこと
である。このことにより、例えば釣糸として用いた時に
「アタリ」を感知し易い特徴を有すると同時にリール等
による巻ぐせがつきにくいという相反する特性を満足さ
せることができる。
【0049】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて説明する。
得られたポリアミドモノフィラメントの物性等は以下の
方法によって測定する。
【0050】(A)相対粘度(ηr): 試料ポリマ1
gを98%硫酸100mlに溶解し、オストワルド粘度
計を用いて25℃で測定した。
【0051】(B)平均複屈折: 日本光学工業(株)
製のPOH型偏光顕微鏡を用い、D線(単色光、Naラ
ンプ)を光源として通常のベレックコンペンセータ法に
より求めた。
【0052】(C)表面複屈折: ベッケ法により、測
定温度20℃〜21℃下で、繊維表面において、繊維軸
に垂直な方向の屈折率(n亠)と、繊維に平行な方向の
屈折率(n‖)を測定し、その差ΔnS=(n‖)−
(n亠)でもって定義される。
【0053】(D)繊維直径方向の複屈折(示差的複屈
折): Carl Zaise Jena社製透過干渉
顕微鏡を使用して干渉縞法で測定した。測定部位は表面
より直径の1/15までは2μ間隔で測定し、その後5
0μ間隔で中心部まで測定し、示差的複屈折の曲線を得
た。そして、この示差的複屈折の曲線から、複屈折極小
部の値、及び中心複屈折の値を求めた。
【0054】(E)引張強度、結節強度: JIS−L
1017の定義によった。試料をかせ状にとり、20
℃、65%RHの温湿度調節室で24時間放置後、
(株)オリエンテック社製“テンシロン”UTM−4−
100型引張試験機を用い、試長250mm、引張速度
300mm/分で測定した。
【0055】(F)耐摩耗性: (D×1/20)g
(D=モノフィラメントのデニール)の荷重をかけたモ
ノフィラメントを、サンドペーパー#320で被覆した
外径50mmφのステンレス棒が180回/分で回転し
ている上に置き、更にトラバース速度70mm/分(ト
ラバース幅35mm)でモノフィラメントを移動させて
切断に至るまでの回転数とした。
【0056】(G)衝撃結節強度: 島津製振子型衝撃
試験機により、試料長250mmにひとえ結びをしてセ
ットし、振子アーム長281.7mm、振子荷重3.7
29Kg、持上げ角度90度、引張速度1.5m/se
cの条件でモノフィラメントに衝撃を与え、切断時の強
力を繊度で割った値を衝撃結節強度とした。なおモノフ
ィラメントの切断強力は、ミネベア製DSA6−11型
自動平衡式動歪測定器と横河北辰電気製フォトコーダー
(2932型)から切断した瞬時の強力を記録させて読
取った。
【0057】[実施例1]相対粘度が3.2のポリカプ
ラミド単独重合体チップ(融点Tm=220℃)を溶融
紡糸機に供給し、280℃の温度で溶融紡出し、口金の
直下に設けられた温度300℃に加熱された雰囲気長1
50mmの空間内を通過させた後、直ちに温度7℃の冷
却水中で急冷固化させて未延伸モノフィラメントを得
た。
【0058】冷却した未延伸モノフィラメントは、モノ
フィラメントの表面に付着した冷却媒体を圧空で除去
し、連続的に180℃のポリエチレングリコール1段延
伸浴中で5.4倍に延伸し、60℃の温水で冷却し熱媒
を洗浄後、圧空でモノフィラメントの表面の水滴を除去
し800℃に加熱した空気中で1.0倍で0.15秒間
熱処理を行なった。
【0059】引続き185℃のポリエチレングリコール
浴中で総合延伸倍率6.4倍になるように再延伸し、6
0℃の温水で冷却洗浄後、圧空でモノフィラメントの表
面の水滴を除去し、180℃で0.95の倍率で乾熱弛
緩熱処理を行ない仕上油剤を付着して巻き取った。
【0060】得られたポリアミドモノフィラメントの特
性を表2に示した。
【0061】本発明で特定した製糸条件を満足する方法
により、本発明の構造物性を満足するモノフィラメント
が得られ、引張強度、結節強度、耐摩耗性、及び衝撃結
節強度のいずれにも優れ、繊維表面が非常に滑らかでそ
の結果水切り性も良く優れた操作性を有し、釣糸用とし
て好適な物性を具備していた。
【0062】[実施例2〜5]1段目延伸、高温短時間
熱処理、及び再延伸の際の条件を表1のように変更した
以外は、実施例1と同様のプロセスで製糸し、表2に示
す物性のポリアミドモノフィラメントを製造した。
【0063】得られたモノフィラメントは、いずれも、
本発明で特定した構造物性を有し、引張強度、結節強
度、衝撃結節強度、及び耐摩耗性のいずれにも優れてい
た。
【0064】[比較例1〜4]1段目延伸、高温短時間
熱処理、及び再延伸の際の条件を表1のように変更した
以外は、実施例1と同様のプロセスで製糸し、表2に示
す物性のポリアミドモノフィラメントを製造した。
【0065】いずれの場合も、本発明で特定した製糸条
件の全てを満足しておらず、得られたモノフィラメント
は、表2のとおり本発明の構造物性の一部または全部を
満足しない物であった。
【0066】比較例1の場合は高温短時間熱処理をせず
に製糸したので、表面複屈折が高過ぎ、表面複屈折と複
屈折極小値との差が小さ過ぎ、中心複屈折が表面複屈折
よりも低いモノフィラメントとなり、結節強度、衝撃結
節強度が低く耐摩耗性が悪かった。
【0067】比較例2の場合は、高温短時間熱処理の温
度が低過ぎたので、表面複屈折が高過ぎ、表面複屈折と
複屈折極小値との差が小さ過ぎ、中心複屈折と表面複屈
折との差が小さ過ぎるモノフィラメントとなり、結節強
度、衝撃結節強度が低く耐摩耗性が悪かった。
【0068】比較例3の場合は、高温短時間熱処理の時
間が長過ぎたので、高温短時間熱処理工程で糸が溶断
し、製糸できなかった。
【0069】比較例4の場合は、再延伸をせずに製糸し
たので、表面複屈折が低目で、複屈折極小部が存在しな
いモノフィラメントとなり、耐摩耗性が悪かった。
【0070】[比較例5]相対粘度が3.2のポリカプ
ラミド単独重合体チップ(融点Tm=220℃)を溶融
紡糸機に供給し、280℃の温度で溶融紡出し、口金の
直下に設けられた温度300℃に加熱された雰囲気長1
50mmの空間内を通過させた後、直ちに温度7℃の冷
却水中で急冷固化させて未延伸モノフィラメントを得
た。
【0071】冷却した未延伸モノフィラメントは、モノ
フィラメントの表面に付着した冷却媒体を圧空で除去
し、引続いて蒸気処理室に導入し、温度90℃、水蒸気
圧力65mmH2 Oの蒸気で0.18秒間処理し、引続
いて180℃のポリエチレングリコール1段延伸浴中で
5.4倍に延伸し、連続して185℃のポリエチレング
リコール浴中で総合延伸倍率6.4になるように2段延
伸し、次いで60℃の温水で冷却洗浄後、圧空でモノフ
ィラメントの表面の水滴を除去し、温度180℃で0.
95の倍率で乾熱弛緩処理を行ない仕上げ油剤を付着し
て巻き取った。
【0072】得られたポリアミドモノフィラメントの特
性を表2に示した。
【0073】この場合は、未延伸状態で蒸気処理をして
表層を低配向化した2層構造糸であって複屈折極小部が
存在しなかったので、岩等の固い物体に対する耐摩耗性
が悪かった。
【0074】[比較例6]相対粘度が3.2のポリカプ
ラミド単独重合体チップ(融点Tm=220℃)を溶融
紡糸機に供給し、280℃の温度で溶融紡出し、口金の
直下に設けられた温度300℃に加熱された雰囲気長1
50mmの空間内を通過させた後、直ちに温度7℃の冷
却水中で急冷固化させて未延伸モノフィラメントを得
た。
【0075】冷却した未延伸モノフィラメントは、モノ
フィラメントの表面に付着した冷却媒体を圧空で除去
し、連続的に180℃のポリエチレングリコール1段延
伸浴中で5.6倍に延伸し、次いで60℃の温水で冷却
洗浄後、圧空でモノフィラメントの表面の水滴を除去し
た後、圧力6.2気圧の飽和水蒸気を含む水蒸気室に通
し、倍率1.0、処理時間1秒という条件で処理し、仕
上げ油剤を付着して巻き取った。
【0076】得られたモノフィラメントの特性を表2に
示した。
【0077】この場合は、1段延伸後蒸気処理を行ない
表層を低配向化した2層構造糸であって複屈折極小部が
存在しなかったので、岩等の固い物体に対する耐摩耗性
が悪かった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】本発明のポリアミドモノフィラメント
は、引張強度、結節強度、衝撃結節強度に優れ、しか
も、硬い粗面での耐摩耗性にも優れているので、釣糸、
漁網用糸、のり網用糸などの水産用資材として好適であ
る。さらに、このように優れた機械的特性の他に、透明
性、柔軟性、繊維表面の平滑性等の特性にも優れている
ので、水切れ性が向上し、漁獲性、操作性、耐久性の優
れた水産用繊維製品とすることができる。
【0081】また、本発明のポリアミドモノフィラメン
トの優れた特徴を生かして水産用資材以外の用途、例え
ばゴムベルトの補強・スリング、ロープなどの運搬用資
材、フェンス・落石防止などの土木資材などの用途に有
効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリアミドモノフィラメントの複屈折
分布の一例を示す繊維直径方向の複屈折曲線のグラフで
ある。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維表面から繊維中心方向に繊維直径
    の1/20以内の位置に、表面複屈折よりも低い複屈折
    極小部が存在するポリアミドモノフィラメントであっ
    て、27×10-3≦表面複屈折≦50×10-3、(表面
    複屈折−複屈折極小部の複屈折)≧5×10-3、及び、
    (中心複屈折−表面複屈折)≧5×10-3を満足する複
    屈折分布を有することを特徴とする高強度ポリアミドモ
    ノフィラメント。
  2. 【請求項2】 30×10-3≦平均複屈折≦65×1
    -3を満足することを特徴とする請求項1記載の高強度
    ポリアミドモノフィラメント。
  3. 【請求項3】 ポリアミドがポリカプラミド系重合体
    であることを特徴とする請求項1記載の高強度ポリアミ
    ドモノフィラメント。
  4. 【請求項4】 表面複屈折が35×10-3〜45×1
    -3であることを特徴とする請求項1記載の高強度ポリ
    アミドモノフィラメント。
  5. 【請求項5】 ポリアミドを溶融紡出し、冷却固化
    し、延伸倍率3.5〜7.0で延伸を行なった後、45
    0℃以上の不活性な高温気体中、又はポリアミドの融点
    以上の不活性な高温液体中で2秒以下の高温短時間熱処
    理を行ない、引続き再延伸し、リラックス熱処理するこ
    とを特徴とする高強度ポリアミドモノフィラメントの製
    造方法。
  6. 【請求項6】 高温短時間熱処理時の倍率が0.80
    〜1.20倍であることを特徴とする請求項5記載の高
    強度ポリアミドモノフィラメントの製造方法。
  7. 【請求項7】 延伸温度が(Tm−100℃)以上
    (但し、Tmはポリアミドの融点である)であることを
    特徴とする請求項5記載の高強度ポリアミドモノフィラ
    メントの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2017209268A1 (ja) * 2016-06-03 2019-03-28 ユニチカ株式会社 耐摩耗性に優れるポリアミド繊維およびその製造方法

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