JP3258570B2 - 舶用複合シリンダーライナー - Google Patents
舶用複合シリンダーライナーInfo
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- JP3258570B2 JP3258570B2 JP21964596A JP21964596A JP3258570B2 JP 3258570 B2 JP3258570 B2 JP 3258570B2 JP 21964596 A JP21964596 A JP 21964596A JP 21964596 A JP21964596 A JP 21964596A JP 3258570 B2 JP3258570 B2 JP 3258570B2
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶のディーゼル
エンジンに使用される複合シリンダーライナーに関す
る。
エンジンに使用される複合シリンダーライナーに関す
る。
【0002】
【従来の技術】船舶のディーゼルエンジンに使用される
舶用シリンダーライナーは、その内周面をピストンが摺
動するため、耐摩耗性と耐焼付性が必要とされる。従
来、このライナー用材料として、耐焼付性に有効なA型
黒鉛と耐摩耗性に有効な炭化物を夫々、組織中に晶出さ
せた特殊鋳鉄材が使用されていた。しかし、近年コンテ
ナ船等の大型化、高出力化に伴なって、シリンダーライ
ナーに加わる内圧が大きくなるにつれ、シリンダーライ
ナーの強度的な不足が問題となってきた。そこで、出願
人は、以前に、耐摩耗性と耐焼付性にすぐれる鋳鉄材の
内層と、強靱性にすぐれる鋳鋼の外層を溶着一体化した
複合シリンダーライナーを提案した(特開昭60−16
9654)。
舶用シリンダーライナーは、その内周面をピストンが摺
動するため、耐摩耗性と耐焼付性が必要とされる。従
来、このライナー用材料として、耐焼付性に有効なA型
黒鉛と耐摩耗性に有効な炭化物を夫々、組織中に晶出さ
せた特殊鋳鉄材が使用されていた。しかし、近年コンテ
ナ船等の大型化、高出力化に伴なって、シリンダーライ
ナーに加わる内圧が大きくなるにつれ、シリンダーライ
ナーの強度的な不足が問題となってきた。そこで、出願
人は、以前に、耐摩耗性と耐焼付性にすぐれる鋳鉄材の
内層と、強靱性にすぐれる鋳鋼の外層を溶着一体化した
複合シリンダーライナーを提案した(特開昭60−16
9654)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この複合シリンダーラ
イナーは、遠心力鋳造により製造され、まず外層材溶湯
を投入し、外層の凝固が完了した段階を見計って、内層
材溶湯を投入し、外層の内面部を再溶融させた後、内層
を凝固させることにより、両層が溶着一体化される。し
かし、前記複合シリンダーライナーの場合、外層に使用
される鋳鋼は鋳鉄に比べてCの含有量が少ないため、高
融点で凝固温度が高い。一方、内層に使用される鋳鉄は
Cの含有量が多いため、低融点で凝固温度が低く、その
溶湯温度も低い。このため、外層の凝固後、内層材溶湯
投入のタイミングが遅れると、温度の低い内層材溶湯で
は外層内面部を均一に再溶融することができなくなり、
再溶融層にバラツキが生じ、得られたライナーの外層と
内層の肉厚バランスが崩れる結果となる。また、外層内
面の再溶融が不十分な部分は、スラグなどを含む不健全
な最終凝固部が残存したままで複合層が形成されるた
め、外層と内層の境界部で強度不足の問題が生ずる。一
方、内層材溶湯の投入タイミングが早すぎると、未凝固
状態の外層材に高Cの内層材溶湯が混入する結果、外層
は強靱性の低下を招く。このように、2層構造のシリン
ダーライナーを製造する場合、内層材溶湯を適当なタイ
ミングで投入するのが難しく、外層と内層を溶着一体化
させるのに非常に高度な技術を必要とした。
イナーは、遠心力鋳造により製造され、まず外層材溶湯
を投入し、外層の凝固が完了した段階を見計って、内層
材溶湯を投入し、外層の内面部を再溶融させた後、内層
を凝固させることにより、両層が溶着一体化される。し
かし、前記複合シリンダーライナーの場合、外層に使用
される鋳鋼は鋳鉄に比べてCの含有量が少ないため、高
融点で凝固温度が高い。一方、内層に使用される鋳鉄は
Cの含有量が多いため、低融点で凝固温度が低く、その
溶湯温度も低い。このため、外層の凝固後、内層材溶湯
投入のタイミングが遅れると、温度の低い内層材溶湯で
は外層内面部を均一に再溶融することができなくなり、
再溶融層にバラツキが生じ、得られたライナーの外層と
内層の肉厚バランスが崩れる結果となる。また、外層内
面の再溶融が不十分な部分は、スラグなどを含む不健全
な最終凝固部が残存したままで複合層が形成されるた
め、外層と内層の境界部で強度不足の問題が生ずる。一
方、内層材溶湯の投入タイミングが早すぎると、未凝固
状態の外層材に高Cの内層材溶湯が混入する結果、外層
は強靱性の低下を招く。このように、2層構造のシリン
ダーライナーを製造する場合、内層材溶湯を適当なタイ
ミングで投入するのが難しく、外層と内層を溶着一体化
させるのに非常に高度な技術を必要とした。
【0004】外層と内層の間に、中間層として、外層材
と内層材の中間成分の材料を鋳込むようにすれば、外層
の内面部が未凝固状態のときに中間層溶湯を投入し中間
層成分が外層に混入しても、溶湯成分が近似しているた
め外層の強靱性低下は最少限に抑えられる。このため、
溶湯投入タイミングの条件が緩和され、上記の不都合は
解消されるが、追加の溶湯を準備する必要が生ずる等、
コスト高を招く。
と内層材の中間成分の材料を鋳込むようにすれば、外層
の内面部が未凝固状態のときに中間層溶湯を投入し中間
層成分が外層に混入しても、溶湯成分が近似しているた
め外層の強靱性低下は最少限に抑えられる。このため、
溶湯投入タイミングの条件が緩和され、上記の不都合は
解消されるが、追加の溶湯を準備する必要が生ずる等、
コスト高を招く。
【0005】本発明の目的は、外層に使用する鋳鋼材
を、強靱性を損なうことなく低融点化することにより、
内層の鋳鉄材溶湯を投入したとき、外層内面の再溶融を
容易ならしめることであり、外層内面の不健全な最終凝
固部をほぼ均一に再溶融することにより、外層と内層の
溶着層の均一化と、溶着部分の健全化を確実に達成でき
るようにしたものである。
を、強靱性を損なうことなく低融点化することにより、
内層の鋳鉄材溶湯を投入したとき、外層内面の再溶融を
容易ならしめることであり、外層内面の不健全な最終凝
固部をほぼ均一に再溶融することにより、外層と内層の
溶着層の均一化と、溶着部分の健全化を確実に達成でき
るようにしたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の舶用複合シリンダーライナーは、外層に使
用する鋳鋼材のSiの含有量を増やして低融点化を図っ
たものである。より具体的には、本発明の舶用複合シリ
ンダーライナーは、強靱性にすぐれる外層材として、重
量%にて、C:0.3〜0.7%、Si:1.6〜3.0
%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:1.0%以下、C
r:1.0%以下、Mo:1.0%以下、残部実質的にF
eからなる鋳鋼を使用したもので、耐摩耗性、耐焼付性
にすぐれる鋳鉄の内層とを溶着一体化させたものであ
る。
に、本発明の舶用複合シリンダーライナーは、外層に使
用する鋳鋼材のSiの含有量を増やして低融点化を図っ
たものである。より具体的には、本発明の舶用複合シリ
ンダーライナーは、強靱性にすぐれる外層材として、重
量%にて、C:0.3〜0.7%、Si:1.6〜3.0
%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:1.0%以下、C
r:1.0%以下、Mo:1.0%以下、残部実質的にF
eからなる鋳鋼を使用したもので、耐摩耗性、耐焼付性
にすぐれる鋳鉄の内層とを溶着一体化させたものであ
る。
【0007】
【作用】外層に高Si材を用いたことにより、従来の外
層材に比べて、同一C含有量であっても、凝固温度がC
当量変化で0.4〜0.6に相当する低融点化が達成され
る。遠心力鋳造では、外層材を鋳込んだとき、外面から
内面に凝固が進むにつれて、スラグ等の軽量不純物は内
面側に移動する。このため、外層材の凝固が完了した段
階では、外層の内面側にスラグ等を含む不健全部が形成
される。しかし、外層材に低融点材を使用することによ
り、引き続いて内層材用の鋳鉄溶湯を投入すると、一旦
凝固した外層内面の再溶融が容易に行なわれ、外層内面
の不健全部は内層材溶湯と混ざり合って、内層の凝固の
進行と共に内層の内面側に移動し、内層の内面で凝固す
る。この結果、外層と内層との境界部では、健全な成分
のみが凝固して溶着層が形成される。なお、内層内面側
の不健全部分は、鋳造工程終了後、機械切削加工によっ
て簡単に取り除くことができる。
層材に比べて、同一C含有量であっても、凝固温度がC
当量変化で0.4〜0.6に相当する低融点化が達成され
る。遠心力鋳造では、外層材を鋳込んだとき、外面から
内面に凝固が進むにつれて、スラグ等の軽量不純物は内
面側に移動する。このため、外層材の凝固が完了した段
階では、外層の内面側にスラグ等を含む不健全部が形成
される。しかし、外層材に低融点材を使用することによ
り、引き続いて内層材用の鋳鉄溶湯を投入すると、一旦
凝固した外層内面の再溶融が容易に行なわれ、外層内面
の不健全部は内層材溶湯と混ざり合って、内層の凝固の
進行と共に内層の内面側に移動し、内層の内面で凝固す
る。この結果、外層と内層との境界部では、健全な成分
のみが凝固して溶着層が形成される。なお、内層内面側
の不健全部分は、鋳造工程終了後、機械切削加工によっ
て簡単に取り除くことができる。
【0008】
【成分限定理由の説明】本発明の複合シリンダーライナ
ーの外層を構成する特殊鋳鋼の材質の成分限定理由につ
いて説明する。 C:0.3〜0.7% Cは、強度と靱性を付与するために添加されるが、含有
量が少ないと、フェライトが多くなり、耐力の低下、疲
労強度の低下を招く。また、溶解温度、鋳造温度の上昇
を招き、外層と内層との溶着部に欠陥を生じ易くなる。
このため、0.3%以上含有させる。一方、含有量が多
くなると、セメンタイトが晶出して材質を脆くする。こ
のため、上限は0.7%に規定する。
ーの外層を構成する特殊鋳鋼の材質の成分限定理由につ
いて説明する。 C:0.3〜0.7% Cは、強度と靱性を付与するために添加されるが、含有
量が少ないと、フェライトが多くなり、耐力の低下、疲
労強度の低下を招く。また、溶解温度、鋳造温度の上昇
を招き、外層と内層との溶着部に欠陥を生じ易くなる。
このため、0.3%以上含有させる。一方、含有量が多
くなると、セメンタイトが晶出して材質を脆くする。こ
のため、上限は0.7%に規定する。
【0009】Si:1.6〜3.0% Siは、湯流れ性を改善すると共に溶湯の凝固点を下げ
る働きを有しており、複合シリンダーライナーの外層材
の低融点化に寄与する。また、Siの含有量が多くなる
と、熱処理時の焼入れ性向上が顕著となり、遅い焼入れ
速度でも鋳鋼の強度向上を達成することができる。この
ため、少なくとも1.6%以上含有させるものとし、熱
処理時の焼入れ性をより高めたい場合は、2.1%以上
含有させることが好ましい。一方、含有量が多くなりす
ぎると、材質の脆化を招来する。このため、上限は、
3.0%に規定する。
る働きを有しており、複合シリンダーライナーの外層材
の低融点化に寄与する。また、Siの含有量が多くなる
と、熱処理時の焼入れ性向上が顕著となり、遅い焼入れ
速度でも鋳鋼の強度向上を達成することができる。この
ため、少なくとも1.6%以上含有させるものとし、熱
処理時の焼入れ性をより高めたい場合は、2.1%以上
含有させることが好ましい。一方、含有量が多くなりす
ぎると、材質の脆化を招来する。このため、上限は、
3.0%に規定する。
【0010】Mn:0.2〜1.0% Mnは、通常Sと結合してSの悪影響を除去すると共
に、基地のパーライトを安定化し、強度を増す。0.2
%未満では、この効果は期待できず、一方、1.0%を
超えると、焼入れ効果が強くなり過ぎ、また、低温脆性
の問題を発生し易くなり、脆くなる。このため、含有量
は0.2〜1.0%に規定する。
に、基地のパーライトを安定化し、強度を増す。0.2
%未満では、この効果は期待できず、一方、1.0%を
超えると、焼入れ効果が強くなり過ぎ、また、低温脆性
の問題を発生し易くなり、脆くなる。このため、含有量
は0.2〜1.0%に規定する。
【0011】Ni:1.0%以下 Niは、焼入れ性を向上させ、基地の強化に有効に作用
する。一方、含有量が増えてNiがシリンダーライナー
の内層に混入すると内層が硬化し、ピストンリングを摩
耗させる虞れがある。本発明の場合、焼入れ性の向上は
高Si含有により期待できるので、Niの上限は1.0
%に規定する。
する。一方、含有量が増えてNiがシリンダーライナー
の内層に混入すると内層が硬化し、ピストンリングを摩
耗させる虞れがある。本発明の場合、焼入れ性の向上は
高Si含有により期待できるので、Niの上限は1.0
%に規定する。
【0012】Cr:1.0%以下 Crは、Niと同様、焼入れ性を向上させ、基地を強化
する効果がある。しかし、Crがシリンダーライナーの
内層に混入すると内層が硬化し、ピストンリングを摩耗
させる虞れがある。このため、上限は1.0%に規定す
る。
する効果がある。しかし、Crがシリンダーライナーの
内層に混入すると内層が硬化し、ピストンリングを摩耗
させる虞れがある。このため、上限は1.0%に規定す
る。
【0013】Mo:1.0%以下 Moは、Ni、Crと同様、基地の強化に有効である。
しかし、1.0%を超えて含有しても含有量の増加に対
応する効果が得られず、また、材質を脆くする作用も現
われる。また、シリンダーライナーの内層へMoが混入
すると、内層が硬化しピストンリングを摩耗させる虞れ
がある。このため、含有量の上限は1.0%とする。
しかし、1.0%を超えて含有しても含有量の増加に対
応する効果が得られず、また、材質を脆くする作用も現
われる。また、シリンダーライナーの内層へMoが混入
すると、内層が硬化しピストンリングを摩耗させる虞れ
がある。このため、含有量の上限は1.0%とする。
【0014】本発明のシリンダーライナーの外層材は、
上記成分の他、残部はFe及び不可避的に含まれる不純
物からなる。例えば、この外層材では、P、Sは不純物
であり、材質を脆くするので少ない程好ましい。それゆ
え、P:0.1%未満、S:0.1%未満にするのが望ま
しい。
上記成分の他、残部はFe及び不可避的に含まれる不純
物からなる。例えば、この外層材では、P、Sは不純物
であり、材質を脆くするので少ない程好ましい。それゆ
え、P:0.1%未満、S:0.1%未満にするのが望ま
しい。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の複合シリンダーライナー
(1)は、図1に示す如く、強靱性にすぐれ、かつ低融点
の鋳鋼からなる外層(2)に、耐摩耗性、耐焼付性にすぐ
れる鋳鉄の内層(3)を溶着一体化して形成される。な
お、船舶用ディーゼルエンジンに使用されるシリンダー
ライナーは、上死点部は燃焼爆発の影響を大きく受ける
ため、前述の如く強靱性を要求されるが、下死点部では
燃焼爆発の影響が小さいため、強度的にあまり問題にな
らないことから、上部側を複層スリーブ、下部側を耐摩
耗性、耐焼付性にすぐれる材質からなる単層スリーブと
し、両スリーブを一体に構成したものがある。この場合
には、本発明の複合シリンダーライナーは上部側の複層
スリーブに適用される。
(1)は、図1に示す如く、強靱性にすぐれ、かつ低融点
の鋳鋼からなる外層(2)に、耐摩耗性、耐焼付性にすぐ
れる鋳鉄の内層(3)を溶着一体化して形成される。な
お、船舶用ディーゼルエンジンに使用されるシリンダー
ライナーは、上死点部は燃焼爆発の影響を大きく受ける
ため、前述の如く強靱性を要求されるが、下死点部では
燃焼爆発の影響が小さいため、強度的にあまり問題にな
らないことから、上部側を複層スリーブ、下部側を耐摩
耗性、耐焼付性にすぐれる材質からなる単層スリーブと
し、両スリーブを一体に構成したものがある。この場合
には、本発明の複合シリンダーライナーは上部側の複層
スリーブに適用される。
【0016】外層(2)を構成する鋳鋼は、前述の如く、
重量%にて、C:0.3〜0.7%、Si:1.6〜3.0
%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:1.0%以下、C
r:1.0%以下、Mo:1.0%以下、残部実質的にF
eからなる。
重量%にて、C:0.3〜0.7%、Si:1.6〜3.0
%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:1.0%以下、C
r:1.0%以下、Mo:1.0%以下、残部実質的にF
eからなる。
【0017】内層(3)を構成する鋳鉄は、耐焼付性と耐
摩耗性にすぐれる材料として、Pを少なくとも0.1%
以上含有する材料、例えば、片状黒鉛鋳鉄、P−B鋳
鉄、高P鋳鉄などが使用される。Pは、一般に材質の機
械的性質を劣化させる元素として知られているが、シリ
ンダーライナーの内層材質においては、Pを含有させる
ことによって、P共晶物を生成し、このP共晶物が耐焼
付性、耐摩耗性の向上に大きな効果を発揮するため、有
効元素として添加される。それゆえ、本発明のシリンダ
ーライナーの内層には、耐焼付性、耐摩耗性向上のため
に、少なくともPを0.1%以上含有する材料を使用す
る。なお、Pの含有量があまり多くなると、機械的性質
の劣化が著しくなるため、1.5%を越えないようにす
ることが望ましい。なお、内層の強度は、FC200材
に相当する約20kg/mm2以上の引張強度を具備すること
が好ましい。
摩耗性にすぐれる材料として、Pを少なくとも0.1%
以上含有する材料、例えば、片状黒鉛鋳鉄、P−B鋳
鉄、高P鋳鉄などが使用される。Pは、一般に材質の機
械的性質を劣化させる元素として知られているが、シリ
ンダーライナーの内層材質においては、Pを含有させる
ことによって、P共晶物を生成し、このP共晶物が耐焼
付性、耐摩耗性の向上に大きな効果を発揮するため、有
効元素として添加される。それゆえ、本発明のシリンダ
ーライナーの内層には、耐焼付性、耐摩耗性向上のため
に、少なくともPを0.1%以上含有する材料を使用す
る。なお、Pの含有量があまり多くなると、機械的性質
の劣化が著しくなるため、1.5%を越えないようにす
ることが望ましい。なお、内層の強度は、FC200材
に相当する約20kg/mm2以上の引張強度を具備すること
が好ましい。
【0018】片状黒鉛鋳鉄の好適な組成例として、重量
%にて、C:2.5〜4.0%、Si:0.8〜2.5%、
Mn:0.3〜1.5%、P:0.1〜1.5%、S:0.
3%以下を含有すると共に、さらに、Ni:2.5%以
下、Cr:1.5%以下、Mo:0.8%以下、Sn:
0.5%以下、Cu:4.0%以下、B、Ti、V、N
b、Zrの少なくとも一種を合計で1.0%以下、A
l、Ca、Ba、Sr、希土類元素の少なくとも一種を
合計で0.2%以下、のうち一種又は二種以上を含み、
残部実質的にFeからなるものを示すことができる。P
−B鋳鉄の好適な組成例として、重量%にて、C:3.
0〜3.4%、Si:0.9〜1.5%、Mn:0.5〜
0.8%、P:0.2〜0.4%、S:0.15%以下、
B:0.02〜0.04%、残部実質的にFeからなるも
のを示すことができる。高P鋳鉄の好適な組成例とし
て、重量%にて、C:3.1〜3.6%、Si:1.0〜
1.9%、Mn:0.5〜0.9%、P:0.3〜0.6
%、S:0.1%以下、残部実質的にFeからなるもの
を示すことができる。
%にて、C:2.5〜4.0%、Si:0.8〜2.5%、
Mn:0.3〜1.5%、P:0.1〜1.5%、S:0.
3%以下を含有すると共に、さらに、Ni:2.5%以
下、Cr:1.5%以下、Mo:0.8%以下、Sn:
0.5%以下、Cu:4.0%以下、B、Ti、V、N
b、Zrの少なくとも一種を合計で1.0%以下、A
l、Ca、Ba、Sr、希土類元素の少なくとも一種を
合計で0.2%以下、のうち一種又は二種以上を含み、
残部実質的にFeからなるものを示すことができる。P
−B鋳鉄の好適な組成例として、重量%にて、C:3.
0〜3.4%、Si:0.9〜1.5%、Mn:0.5〜
0.8%、P:0.2〜0.4%、S:0.15%以下、
B:0.02〜0.04%、残部実質的にFeからなるも
のを示すことができる。高P鋳鉄の好適な組成例とし
て、重量%にて、C:3.1〜3.6%、Si:1.0〜
1.9%、Mn:0.5〜0.9%、P:0.3〜0.6
%、S:0.1%以下、残部実質的にFeからなるもの
を示すことができる。
【0019】本発明の舶用複合シリンダーライナーは、
金型遠心力鋳造法により作製され、外層の溶湯を投入
し、外層の外面が凝固した直後に内層の溶湯を投入し、
外層の最外面部を再溶融させて外層と内層を溶着一体化
する。遠心力鋳造装置は、横型、傾斜型、立型のいづれ
も適用可能である。
金型遠心力鋳造法により作製され、外層の溶湯を投入
し、外層の外面が凝固した直後に内層の溶湯を投入し、
外層の最外面部を再溶融させて外層と内層を溶着一体化
する。遠心力鋳造装置は、横型、傾斜型、立型のいづれ
も適用可能である。
【0020】
【実施例】実施例1 表1に示す成分の溶湯を遠心力鋳造して供試材を作製
し、1000℃で5時間保持した後、400℃/Hの冷
却速度で常温まで空冷し、さらに550℃で10時間保
持後炉冷する熱処理を行なった。表1中、No.1は本発
明の外層材、No.2はSi含有量の少ない比較用の鋳鋼
材である。遠心力鋳造の際、溶湯の液相線と固相線の温
度を測定した。その結果を表1に併せて示す。なお、液
相線は凝固開始温度、固相線は強固終了温度を意味す
る。得られた供試材から試験片を切り出し、アムスラー
試験機により、引張強度と伸びを測定した。その測定結
果を表1に併せて示す。
し、1000℃で5時間保持した後、400℃/Hの冷
却速度で常温まで空冷し、さらに550℃で10時間保
持後炉冷する熱処理を行なった。表1中、No.1は本発
明の外層材、No.2はSi含有量の少ない比較用の鋳鋼
材である。遠心力鋳造の際、溶湯の液相線と固相線の温
度を測定した。その結果を表1に併せて示す。なお、液
相線は凝固開始温度、固相線は強固終了温度を意味す
る。得られた供試材から試験片を切り出し、アムスラー
試験機により、引張強度と伸びを測定した。その測定結
果を表1に併せて示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1の結果からわかるとおり、高Siであ
るNo.1の材料は、低SiであるNo.2の材料に比べて液
相線で28℃、固相線で25℃低くなっており、Siの
増量により融点が低下することを示している。また、N
o.1は、引張強度に関してはNo.2よりも大きいが、伸
びに関してはNo.2よりも小さい結果となっている。こ
れは、引張強度が大きくなった分だけ、伸びが小さくな
ったものと考えられ、材料としては、すぐれた強靱性を
具備していると考えてよい。
るNo.1の材料は、低SiであるNo.2の材料に比べて液
相線で28℃、固相線で25℃低くなっており、Siの
増量により融点が低下することを示している。また、N
o.1は、引張強度に関してはNo.2よりも大きいが、伸
びに関してはNo.2よりも小さい結果となっている。こ
れは、引張強度が大きくなった分だけ、伸びが小さくな
ったものと考えられ、材料としては、すぐれた強靱性を
具備していると考えてよい。
【0023】実施例2 横型遠心力鋳造金型に、外層材溶湯を鋳込み、外層が完
全に凝固した後直ちに、内層材溶湯を鋳込み、外層と内
層を溶着一体化させて、外径1130mm、内径760
mm、長さ800mmの供試スリーブを作製した。外層
と内層の成分を表2に示す。供試スリーブは、鋳造後、
1000℃で5時間保持した後、400℃/Hの冷却速
度で常温まで空冷し、さらに550℃で10時間保持後
炉冷する熱処理を行なった。
全に凝固した後直ちに、内層材溶湯を鋳込み、外層と内
層を溶着一体化させて、外径1130mm、内径760
mm、長さ800mmの供試スリーブを作製した。外層
と内層の成分を表2に示す。供試スリーブは、鋳造後、
1000℃で5時間保持した後、400℃/Hの冷却速
度で常温まで空冷し、さらに550℃で10時間保持後
炉冷する熱処理を行なった。
【0024】
【表2】
【0025】供試スリーブの外径と内径を機械切削加工
により、外径1100mm、内径800mmに仕上げた後、
超音波探傷機を用いて、供試スリーブの外周面から、溶
着状況の検査と肉厚を測定した。溶着状況は非常に良好
であった。肉厚は、外層の平均厚さが140mm、内層
の平均厚さが10mmであり、内層の肉厚変動は±3m
m以内にあり、良好であった。次に、得られた供試スリ
ーブを軸方向に切断し、溶着状況を目視観察したとこ
ろ、不健全部分は全く認められず、非常に良好であっ
た。
により、外径1100mm、内径800mmに仕上げた後、
超音波探傷機を用いて、供試スリーブの外周面から、溶
着状況の検査と肉厚を測定した。溶着状況は非常に良好
であった。肉厚は、外層の平均厚さが140mm、内層
の平均厚さが10mmであり、内層の肉厚変動は±3m
m以内にあり、良好であった。次に、得られた供試スリ
ーブを軸方向に切断し、溶着状況を目視観察したとこ
ろ、不健全部分は全く認められず、非常に良好であっ
た。
【0026】
【発明の効果】本発明は、外層に使用する鋳鋼材につい
て、強靭性を損なうことなく低融点化を図ったため、内
層の鋳鉄材溶湯を投入したときに再溶融し易く、外層内
面の不健全な最終凝固部はほぼ均一に再溶融され、外層
と内層の溶着層の均一化と溶着部分の健全化が達成され
る。このように、本発明に係る複合シリンダーライナー
は、遠心力鋳造法を利用することにより、船舶のディー
ゼルエンジン用シリンダーライナーとして要求される特
性を具えたものを容易に製造することができる。
て、強靭性を損なうことなく低融点化を図ったため、内
層の鋳鉄材溶湯を投入したときに再溶融し易く、外層内
面の不健全な最終凝固部はほぼ均一に再溶融され、外層
と内層の溶着層の均一化と溶着部分の健全化が達成され
る。このように、本発明に係る複合シリンダーライナー
は、遠心力鋳造法を利用することにより、船舶のディー
ゼルエンジン用シリンダーライナーとして要求される特
性を具えたものを容易に製造することができる。
【図1】本発明の舶用複合シリンダーライナーの構造を
示す断面図である。
示す断面図である。
(1) シリンダーライナー (2) 外層 (3) 内層
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−169654(JP,A) 特開 昭59−35650(JP,A) 特開 昭60−29445(JP,A) 特開 昭51−130618(JP,A) 特開 昭62−23958(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 F02F 1/00 F16J 10/04
Claims (1)
- 【請求項1】 重量%にて、C:0.3〜0.7%、S
i:1.6〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:
1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以
下、残部実質的にFeからなる鋳鋼の外層と、耐摩耗
性、耐焼付性にすぐれる鋳鉄の内層とが溶着一体化され
ていることを特徴とする舶用複合シリンダーライナー。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21964596A JP3258570B2 (ja) | 1996-08-21 | 1996-08-21 | 舶用複合シリンダーライナー |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21964596A JP3258570B2 (ja) | 1996-08-21 | 1996-08-21 | 舶用複合シリンダーライナー |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1060584A JPH1060584A (ja) | 1998-03-03 |
JP3258570B2 true JP3258570B2 (ja) | 2002-02-18 |
Family
ID=16738775
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP21964596A Expired - Fee Related JP3258570B2 (ja) | 1996-08-21 | 1996-08-21 | 舶用複合シリンダーライナー |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3258570B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2866352B3 (fr) * | 2004-02-12 | 2005-12-16 | Trefileurope | Fil de forme en acier trempe-revenu pour conduites en mer |
CN113046656A (zh) * | 2021-03-09 | 2021-06-29 | 云南昆钢耐磨材料科技股份有限公司 | 一种耐磨衬板及其制备方法 |
-
1996
- 1996-08-21 JP JP21964596A patent/JP3258570B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1060584A (ja) | 1998-03-03 |
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