JPH06207240A

JPH06207240A - シリンダライナ用鋳鉄

Info

Publication number: JPH06207240A
Application number: JP130893A
Authority: JP
Inventors: Yoshiaki Yamagami; 喜昭山上; Kazuharu Fujikawa; 計治藤川; Akiro Takahashi; 昭郎高橋; Shoichi Yoshino; 彰一吉野
Original assignee: Kubota Corp
Current assignee: Kubota Corp
Priority date: 1993-01-07
Filing date: 1993-01-07
Publication date: 1994-07-26

Abstract

(57)【要約】【目的】圧縮強さに優れたシリンダライナ用鋳鉄を提
供する。【構成】化学組成が重量％で、Ｃ：2.9 〜3.2 ％、
Ｓｉ：1.8 〜2.6 ％、Ｍn ：0.5 〜1.0 ％、Ｐ：
0.1 〜0.5 ％、Ｃr ：0.2 〜0.6 ％、Ｃu ：0.4 〜
1.2 ％、Ｍo ：0.2 〜0.8 ％、Ｂ：0.02〜0.08％、
および残部が実質的にＦｅからなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は圧縮強度に優れ、ライナ
肉厚の薄肉化に好適なシリンダライナ用鋳鉄に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、自動車、自動二輪車等の燃費、運
動性能の向上等の見地から、部材の軽量化が指向されて
おり、それらの内燃機関についてもエンジンブロックが
鋳鉄からアルミニウム合金で製造されるようになった。
もっとも、シリンダ内周面はピストンリングと摺動し、
気密性を保持しなければならないため、高温における耐
摩耗性と耐焼付性とが要求され、鋳鉄製のシリンダライ
ナが鋳包み、あるいは圧入されて装着される。

【０００３】従来のシリンダライナ材としては、組織中
にＡ型黒鉛を有し、耐摩耗性向上元素としてＰ, Ｃr ,
Ｃｕなどを含有する特殊鋳鉄が用いられている。また、
ライナの鋳造は、従来、Ａ型黒鉛を晶出させるため、凝
固速度を低くすることができる砂型置注鋳造や砂型遠心
力鋳造が適用されていたが、特公昭58−36664 号公報に
開示されているように金型遠心力鋳造によっても製造さ
れるようになってきた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
ますます軽量化が指向されるようになってきており、シ
リンダライナもより薄肉化が要求されている。この場
合、ライナ材としての基本的性質すなわち耐摩耗性、耐
焼付性が必要なことは勿論であるが、特に圧縮強さの向
上が要求される。圧縮強さが低いと、鋳包み等によりシ
リンダブロックに装着する際の変形が大きくなり、それ
に伴って加工代も大きくなり、製造コストの上昇を招来
する。圧縮強さが高いとかかる問題もなく、ライナの薄
肉化を達成することができる。

【０００５】本発明はかかる問題に鑑みなされたもの
で、特に優れた圧縮強さを有するシリンダライナ用鋳鉄
を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明のシリンダライナ
用鋳鉄は、化学組成が重量％で、Ｃ：2.9 〜3.2 ％、
Ｓｉ：1.8 〜2.6 ％、Ｍn ：0.5 〜1.0 ％、Ｐ：
0.1 〜0.5 ％、Ｃr ：0.2 〜0.6 ％、Ｃu ：0.4 〜
1.2 ％、Ｍo ：0.2 〜0.8 ％、Ｂ：0.02〜0.08％、
および残部が実質的にＦｅからなる。

【０００７】

【作用】本発明のシリンダライナ用鋳鉄の化学組成は以
下の理由により限定される。単位は重量％である。Ｃ：2.9 〜3.2 ％Ｃは、黒鉛晶出のためおよび炭化物形成のために必要で
あり、 2.9％未満では黒鉛が晶出し難くなると共に炭化
物量も減少し、耐摩耗性、耐焼付性が低下する。一方、
3.2 ％を越えると機械的強度が低下する。

【０００８】Ｓｉ：1.8 〜2.6 ％Ｓｉは黒鉛を晶出させるために必要で、 1.8％未満では
黒鉛の晶出が困難となり、耐焼付性が低下する。一方、
2.6％を越えるとフエライトを析出しやすく機械的強
度、耐摩耗性、耐焼付性が低下する。Ｍn ： 0.5〜1.0 ％Ｍn は硬度向上のために添加され、 0.5％未満ではその
効果は期待できず、一方 1.0％を越えると硬度が高くな
り過ぎ、加工性が低下する。

【０００９】Ｐ： 0.1〜0.5 ％Ｐはリン共晶 (ステダイト) を生成させるために必要で
あり、 0.1％未満では共晶量が過少で硬度向上効果がほ
どんどなく、一方 0.5％を越えると共晶量が過多となっ
て脆くなる。Ｃr ：0.2 〜0.6 ％Ｃr は炭化物に入って複炭化物を形成し耐摩耗性の向上
に寄与すると共に、黒鉛形状の均一化および耐酸化性の
向上に効果がある。0.2 ％未満ではその効果がほとんど
なく、一方 0.6％を越えると遊離セメンタイトが析出
し、脆くなると共に加工性が低下する。

【００１０】Ｃu ： 0.4〜1.2 ％Ｃu はパーライトの緻密化による基地強度向上、耐摩耗
性の向上および耐食性向上のために添加され、 0.4％未
満ではその効果がほとんどなく、一方 1.2％を越えると
基地硬度が高くなり過ぎ、また耐食効果が飽和する。Ｍo ： 0.2〜0.8 ％Ｍo は微細パーライトを生成して基地を強化し、機械的
強度、耐衝撃性および耐熱性を向上させるために添加さ
れる。 0.2％未満ではかかる効果が不足し、一方 0.8％
を越えると硬くなり過ぎ、加工性が低下する。

【００１１】Ｂ：0.02〜0.08％Ｂはカーバイドの析出を促進する作用をなし、0.02％未
満ではその効果が期待できず、一方0.08％を越えるとカ
ーバイドの析出が過多となり、硬度が高くなり過ぎる。
本発明の鋳鉄は以上の合金成分のほか、残部が実質的に
Ｆｅで形成される。尚、Ｓは材質を脆くするので少ない
程望ましく、Ｓ： 0.1％以下に止めておくのがよい。

【００１２】

【実施例】下記表１の化学組成を有する鋳鉄を溶製し、
鋳込温度1400℃、金型回転数1800rpm で金型遠心力鋳造
し、外径100 mmφ、肉厚 7.5 mm 、長さ1800mmのライナ
素材を得た。尚、鋳造に際し、金型予熱温度を 200℃と
し、ウェットスプレーコーティングにより、ケイソウ土
を主材とした厚さ 0.8mmの塗型を金型内周面に形成し
た。尚、試料No. １〜４は実施例、No. ５及び６は従来
例である。

【００１３】

【表１】

【００１４】上記ライナ素材より、組織観察用試料を採
取し、顕微鏡観察したところ、いずれの試料も組織中に
Ａ型黒鉛の晶出が認められた。また、硬度を測定すると
共に、同素材から外形6 mmφ、長さ15mmの試験片を採取
し、試験片の高さ中央両側面に二軸歪ゲージを貼付し、
荷重−歪曲線を求め、圧縮の機械的性質を調べた。その
結果を下記表２に示す。

【００１５】

【表２】

【００１６】表２より、Ｃ含有量が略同じである実施例
のNo. １及び４と従来例のNo. ５及び６とを比較する
と、硬度すなわち耐摩耗性は略同等であるが、0.2 ％耐
力において10％程度の向上が認められ、強さも５％程度
以上向上していることが分かる。

【００１７】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明のシリンダラ
イナ用鋳鉄は、Ｃ： 2.9 〜3.2 ％、Ｍo ：0.2 〜0.8
％及びＢ：0.02〜0.08 ％を含有した特定の成分で形成
したので、従来のライナ用鋳鉄に比べて、耐摩耗性およ
び耐焼付性を損なうことなく、優れた圧縮強さを具備し
たものとなり、薄肉のライナを容易に製造することがで
る。

フロントページの続き (72)発明者吉野彰一兵庫県尼崎市西向島町64番地株式会社クボタ尼崎工場内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】化学組成が重量％で、Ｃ：2.9 〜3.2 ％、Ｓｉ：1.8 〜2.6 ％、Ｍn ：
0.5 〜1.0 ％、Ｐ：0.1 〜0.5 ％、Ｃr ：0.2 〜0.6 ％、Ｃu ：
0.4 〜1.2 ％、Ｍo ：0.2 〜0.8 ％、Ｂ：0.02〜0.08％、および残
部が実質的にＦｅからなることを特徴とするシリンダラ
イナ用鋳鉄。