JP3254160B2 - 接着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

接着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は接着性に優れた合金
化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、耐食性に
優れているため自動車車体用表面処理鋼板として広く用
いられている。このような合金化溶融亜鉛めっき鋼板を
使用した自動車車体の組立作業において、従来では、重
ね合わされた2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の接合に
スポット溶接が用いられてきたが、近年、溶接打点数の
削減や耐食性、制振性等の改善を目的として、スポット
溶接の代わりに接着剤による接合が行われるようになっ
てきた。このような接合のための接着剤としては、一般
に、次工程である電着塗料の焼付工程において硬化する
熱硬化型接着剤が使用されている。一方、自動車車体等
に適用する塗料に関しては、コスト低減を図り且つ地球
環境対策の観点からCO2排出量を低減するために低温
焼付型の電着塗料が開発され、この低温焼付型電着塗料
の使用によって、従来よりも塗料の焼付温度が低温化し
つつある。しかし、このように焼付温度が低温化する
と、接着剤を使用した場合の合金化溶融亜鉛めっき鋼板
の接着性が冷延鋼板のそれに較べて劣るという問題が生
じる。
【0003】このような問題を解決し、合金化溶融亜鉛
めっき鋼板の接着性を向上させる方法として、例えば特
開平4−131386公報には、鋼板面上に形成された
溶融亜鉛めっき層の上層にAlまたはAl合金めっき層
を形成し、その上で合金化処理を施すことによって鋼板
面上にFe含有率が7〜20重量%のZn−Fe−Al
系合金めっき層を形成する技術(以下、従来技術1とい
う)が、また、特開平3−215685号公報には、鋼
板面上に形成された合金化溶融亜鉛めっき層の上層にF
eまたはFe系合金層を形成した後、Cu、Niなどの
金属または合金の被覆層を形成する技術(以下、従来技
術2という)が開示されている。また、特開平6−10
156公報には、鋼板面上に形成された溶融亜鉛めっき
層の表面に5〜20nm程度の厚さで生成しているリン
酸塩、ケイ酸塩等を含んだAl23やZnOからなる不
純物あるいは初期酸化物を除去した後、1nm以上の厚
さのAl23やZnOからなる酸化物層を再形成する技
術(以下、従来技術3という)が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の従来技
術には以下のような問題点ある。まず、従来技術1は鋼
板面上の溶融亜鉛めっき層の上層にAlまたはAl合金
めっき層を形成し、しかる後に合金化処理を施すもので
あるため、めっき最表層がAl系酸化皮膜となる。この
ため十分な接着性が得られず、また、Al系酸化皮膜は
高融点でしかも電気電導性が低いために、スポット溶接
における連続打点性にも劣るという欠点がある。また、
めっき層を2層構造とするために製造コストが高く、実
用的ではない。
【0005】また、従来技術2もめっき層を3層構造と
するために製造コストが高く、これも実用的ではない。
さらに、従来技術3は溶融亜鉛めっき層表面に存在する
不純物や初期酸化物を除去するプロセスが必要であるた
め製造コストが高く、これも実用的ではない。したがっ
て本発明の目的は、上述したような従来技術の問題点を
解決し、鋼板どうしの重ね合せ部を接着剤で接合した後
に低温で塗装焼付した場合でも優れた接着性が得られ、
しかも低コストに製造することができる合金化溶融亜鉛
めっき鋼板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】合金化溶融亜鉛めっき鋼
板を接着剤で接合する場合には、接着強度とともに接合
部分の剥離形態が問題となる。接合部分の剥離形態とし
ては、接着剤内部での剥離(凝集破壊)、接着剤とめっ
き鋼板界面での剥離(界面剥離)およびめっき鋼板側の
破壊という3つの形態が考えられる。このうち接合部分
の剥離形態が接着剤内部での凝集破壊の場合には、鋼板
面が接着剤で覆われているため耐食性は良好である。
【0007】接着剤内部の凝集破壊強度に較べて接着剤
/めっき鋼板界面の剥離強度が低い場合に界面剥離が起
こる。このような界面剥離が起こると、十分な接着強度
が得られなくなり、また剥離面は金属が露出するために
耐食性が劣化する等の問題が生じる。合金化溶融亜鉛め
っき鋼板はこの界面剥離が冷延鋼板に較べて起こりやす
く、したがって接着性が劣る。接着剤の凝集破壊強度は
接着剤自体の性質に左右されるため、接着剤を選定する
ことにより改善することができるが、界面破壊はめっき
鋼板表面の性質により左右されるために、めっき鋼板側
からの改善が必要となる。一方、接着強度レベルが高い
接着剤を用いたとき、接着剤/めっき鋼板界面の剥離強
度および接着剤の凝集破壊強度が合金化溶融亜鉛めっき
鋼板のめっき層/地鉄界面の破壊強度より高いと、鋼板
側の破壊が生じる。しかし、このような鋼板側の破壊は
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の内部(地鉄或いはめっき層
/地鉄界面)の問題であるか若しくは接着剤選定の問題
であり、めっき鋼板表面の性状の問題ではないため、課
題としては本発明の対象外である。
【0008】本発明者らは合金化溶融亜鉛めっき鋼板の
めっき層表面の形態(組成及び性状)と接着性(前記界
面剥離に関係する接着性)との関係について検討を行
い、その結果、以下のような知見を得た。一般の合金化
溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融したAlを含む亜鉛浴に浸
漬された後、合金化のための加熱処理が施され、次いで
調質圧延することにより製造される。このようにして製
造された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、汚染によって付
着するCを除き、Al酸化物(Al23)およびZn酸
化物(ZnO)と金属Zn及びFeが存在する清浄なめ
っき表面を有している。このめっき表面は、その一部に
Al23とZnOとの存在比(Al23/ZnO)が
0.85を超え、酸化物の厚さが2〜40nm程度と厚
い部分が存在するとともに、酸化物の厚さが2nm未満
と薄く金属ZnやFeが比較的多く存在する部分が全面
積に対して25〜80%程度の割合で存在している。
【0009】上記のようにめっき表面の酸化物の厚さが
不均一である理由は、合金化処理による鉄と亜鉛の合金
化過程において、鋼板の部分によって合金化速度が異な
るためにめっき厚さに不均一が生じ、これに調質圧延が
施されると、めっき層が厚くて凸状となっている部分
(以下、説明の便宜上この部分を“凸状部分”という)
では酸化物が伸延されるためその厚さが薄くなり、一
方、めっき層の厚さが薄くて凹状となっている部分(以
下、説明の便宜上この部分を“凹状部分”という)では
酸化物はあまり伸延されないため、厚い酸化物が残存し
てしまうためである。また、上記凹状部分は凸状部分に
較べて表面粗さが大きく、通常、Ra0.5〜2.5μ
m程度の表面粗さを有している。
【0010】このような事実に基づきさらに研究を進め
た結果、次のような事実が明らかとなった。 (1) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の接着性は、めっき層表
面の酸化物の組成と濃度、特にAl23濃度とZnO濃
度に大きく支配されており、めっき層表面にAl23
多く存在すると接着性は劣化し、一方、ZnOが多く存
在すると接着性は逆に向上する。したがって、基本的に
はめっき層表面のAl23濃度を低減させ、一方におい
てZnO濃度を増大させれば、合金化溶融亜鉛めっき鋼
板の接着性は向上する。 (2) 上述したように、一般の合金化溶融亜鉛めっき鋼板
のめっき層表面には、酸化物の厚さが薄い凸状部分とA
23濃度が高く酸化物が厚く生成した凹状部分とがあ
るが、このうち元々酸化物が薄くAl23濃度も低い凸
状部分については酸化物の組成と濃度を制御することが
可能であり、且つこの部分はめっき層表面に対する面積
率で25〜80%程度を占めることから、この凸状部分
の酸化物組成及び濃度を制御してAl23濃度を低減さ
せ且つZnO濃度を増大させることにより、接着性を効
果的に改善することができる。
【0011】(3) 一方、元々酸化物が厚く存在している
凹状部分については酸化物の組成や濃度の制御は殆どで
きないが、この凹状部分は凸状部分に較べて表面粗さが
大きく、この表面粗さを利用した接着性の向上が期待で
きる。すなわち、めっき層の表面粗さが大きいと接着剤
がめっき表面の粗面の凸凹部分に回り込むため実効的な
接着面積が高くなり、これが接着性の向上に寄与する。
本発明は以上のような知見に基づきなされたもので、そ
の特徴とする構成は以下の通りである。
【0012】本発明は以上のような知見に基づきなされ
たもので、その特徴は、鋼板の少なくとも片面側に、F
e含有率が7〜20重量%の合金化溶融亜鉛めっき層が
形成された合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記合
金化溶融亜鉛めっき層表面の組成が、下記(a)、(b)及び
(c)を満足することを特徴とする接着性に優れた合金化
溶融亜鉛めっき鋼板である。 (a) Al 濃度とZnO濃度の比[Al /Z
nO]が0.85を超える部分と0.85以下の部分と
が混在するとともに、Al の平均濃度が5〜50
mol%、ZnOの平均濃度が15〜95mol%であ
り、 (b) Al の平均濃度とZnOの平均濃度の比[A
/ZnO]が0.05〜1.5であり、 (c) Al 濃度が5〜35mol%で且つZnO濃
度が20〜95mol%であって、Al 濃度とZ
nO濃度の比[Al /ZnO]が0.05〜0.
85である部分のめっき層表面に占める面積率が25〜
80%である。
【0013】
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細と限定理由に
ついて説明する。本発明において合金化溶融亜鉛めっき
鋼板とは、素材鋼板に溶融亜鉛めっきを施した後、合金
化処理を施すことにより、鋼板の少なくとも片面側に合
金化溶融亜鉛めっき層を形成させた鋼板である。なお、
合金化溶融亜鉛めっき層中には、耐食性や他の性能向上
を目的としてB,C,P,Mg,Mn,Ti,Si,S
b,Bi,Pb,W等の元素の1種または2種以上を含
有させてもよい。合金化溶融亜鉛めっき層表面は、Al
23濃度とZnO濃度の比[Al23/ZnO]が0.
85を超える部分、つまりAl23濃度が極めて高い部
分と、Al23濃度とZnO濃度の比[Al23/Zn
O]が0.85以下の部分とが混在しており、このうち
Al23濃度とZnO濃度の比[Al23/ZnO]が
0.85を超える部分が上述した凹状部分に相当し、そ
れ以外の部分(比[Al23/ZnO]が0.85以下
の部分)が上述した凸状部分に相当する。通常、この凸
状部分はめっき層表面における面積率で25〜80%程
度を占めている。
【0015】本発明では、上記凸状部分におけるZnO
濃度を高め、且つAl23濃度を低減させるため、めっ
き層表面におけるAl23の平均濃度の上限を50mo
l%、ZnOの平均濃度の下限を15mol%と規定す
る。めっき層表面のAl23の平均濃度が50mol%
を超えると、上記凸状部分におけるAl23濃度が高す
ぎるため、Al23濃度の低減化による接着剤/めっき
層界面での接着力の改善効果が十分に得られず、接着性
が劣る。同様に、めっき層表面のZnOの平均濃度が1
5mol%未満では、上記凸状部分におけるZnO濃度
が不十分であるため、ZnOによる接着剤/めっき層界
面間での接着力の改善効果が十分に得られず、この場合
も接着性が劣る。このようにめっき層表面におけるAl
23の存在により接着性が低下し、一方においてZnO
の存在により接着性が向上する理由は必ずしも明らかで
ないが、接着剤/めっき層界面の水素結合力や分子間力
等の化学結合力が影響しているものと考えられる。
【0016】一方、合金化溶融亜鉛めっきでは、めっき
層中のFe含有量を制御するためにめっき層中に添加さ
れたAlが表面に酸化物として濃化するため、めっき層
表面のAl23濃度を5mol%未満、ZnO濃度を9
5mol%超の範囲に制御することは事実上できない。
以上の理由から本発明では、合金化溶融亜鉛めっき層表
面のAl23の平均濃度を5〜50mol%、ZnOの
平均濃度を15〜95mol%の範囲にそれぞれ限定す
る。
【0017】上述したように合金化溶融亜鉛めっき層表
面にはAl23濃度が極めて高い凹状部分(Al23
度とZnO濃度の比[Al23/ZnO]が0.85を
超える部分)が存在しており、この部分は元々厚い酸化
物が不可避的に存在し且つAl23濃度も高いため、上
述した凹状部分のような酸化物の組成や濃度の制御は殆
どできない。しかし、この凹状部分は凸状部分に較べて
表面粗さが大きく、この表面粗さによる接着性の改善作
用が得られる。すなわち、めっき層の表面粗さが大きい
と接着剤がめっき表面の粗面の凸凹部分に回り込むため
実効的な接着面積が高くなり、これが接着性の向上に寄
与する。したがって本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板
では、このようなAl23濃度が極めて高い凹状部分が
めっき層表面に存在していても、全体として高い接着性
を確保することができる。
【0018】また、本発明ではAl23の平均濃度とZ
nOの平均濃度の比[Al23/ZnO]を0.05〜
1.5の範囲とすることにより、接着性をさらに良好な
ものとすることができる。Al23の平均濃度とZnO
の平均濃度の比[Al23/ZnO]が1.5超では、
接着性をより向上させるという観点からして、接着性を
阻害するAl23に対して接着性を向上させる作用を有
するZnOの存在比率が相対的に不十分となり、より優
れた接着性は得られない。一方、上記凹状部分を含めて
めっき層表面にはAl23が不可避的に存在するため、
Al23の平均濃度とZnOの平均濃度の比[Al23
/ZnO]を0.05未満とすることは事実上できな
い。
【0019】また、さらに優れた接着性を得るために、
上述した条件に加えてめっき層表面のAl濃度と
ZnO濃度を下記の形態に制御する。 合金化溶融
亜鉛めっき層表面においてAl濃度が5〜35m
ol%で且つZnO濃度が20〜95mol%であっ
て、Al濃度とZnO濃度の比[Al/Z
nO]が0.05〜0.85である部分のめっき層表面
に占める面積率が25〜80%であること
【0020】このは先に述べた凸状部分のより好まし
い形態を規定したものであり、上述した鋼板面全体のA
の平均濃度とZnOの平均濃度だけでなく、合
金化溶融亜鉛めっき層表面の面積率で25〜80%を占
める凸状部分について、そのAl濃度の低減化と
ZnO濃度の確保を規定したものである。上記が規定
する面積率が25%未満では、低Al濃度で且つ
高ZnO濃度である凸状部分の面積比率が少な過ぎるた
め、凸状部分を低Al濃度化、高ZnO濃度化す
ることによる接着力の改善効果が不十分となり、より優
れた接着性は得られない。一方、酸化物の組成および濃
度を制御し得る凸状部分のめっき層表面に占める面積率
は80%が上限であることから、上記で規定する面積
率も必然的に80%が上限となる。
【0021】また、凸状部分のAl23濃度が35mo
l%を超えると、Al23濃度の低減化による接着剤/
めっき層界面での接着力の改善効果が十分に得られず、
接着性が劣る。同様に、凸状部分のZnO濃度が20m
ol%未満では、ZnOによる接着剤/めっき層界面間
での接着力の改善効果が十分に得られず、この場合も接
着性が劣る。一方、Al23濃度の下限とZnO濃度の
上限については、先に述べたように、合金化溶融亜鉛め
っきでは表面のAl23濃度を5mol%未満、ZnO
濃度を95mol%超の範囲に制御することはできな
い。
【0022】さらに、Al 濃度とZnO濃度の比
[Al/ZnO]が0.05〜0.85であるこ
とを条件とすることにより、接着性のより優れた改善効
果を期待できる。Al濃度とZnO濃度の比[A
/ZnO]が0.85を超えると、接着性をよ
り向上させるという観点からして、接着性を阻害するA
に対して接着性を向上させる作用を有するZn
Oの存在比率が相対的に不十分となり、より優れた接着
性は得られない。一方、凸状部分においてもAl
は不可避的に存在するため、Al濃度とZnO濃
度の比[Al/ZnO]を0.05未満とするこ
とは事実上できない。
【0023】本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっ
き層のFe含有率は7〜20重量%とする。めっき層中
の鉄含有率が7重量%未満では、めっき層表面に純亜鉛
層(η相)が残存するためプレス成形時にめっき層のフ
レーキングが生じ、摩擦係数が上昇する結果、プレス成
形性が劣化する。一方、めっき層中のFe含有率が20
重量%を超えると鋼板/めっき層界面に脆いΓ相が生成
するため、プレス成形時にめっき層が剥離しやすくな
り、耐パウダリング性が劣化する。合金化溶融亜鉛めっ
き層の付着量は20〜120g/m2の範囲とすること
が望ましい。付着量が20g/m2未満では十分な耐食
性が得られず、一方、付着量が120g/m2を超える
と加工性、溶接性等が劣化する。
【0024】本発明が規定するような合金化溶融亜鉛め
っき層表面の組成(Al23濃度およびZnO濃度)を
得る方法は種々考えられが、代表的な方法としては合金
化溶融亜鉛めっき鋼板を酸化性溶液中に浸漬処理する方
法、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を陰極電解または陽極電
解処理する方法、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を特定の条
件下で加熱する方法がある。このうち合金化溶融亜鉛め
っき鋼板を酸化性溶液中に浸漬する方法では、合金化溶
融亜鉛めっき鋼板を過酸化水素、塩素酸、臭素酸、過マ
ンガン酸カリウム、亜硝酸イオン等の酸化剤の中から選
ばれる1種または2種以上を合計で0.1〜50g/l
程度添加した処理液(水溶液)に浸漬させ、めっき層表
面に酸化物を形成させる。この際、めっき層表面に形成
される酸化物量は酸化剤の濃度、処理液への浸漬時間等
によって実質的に決まるため、形成させるべき酸化物量
に応じてこれらを制御する。
【0025】また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を加熱に
よる方法では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を大気雰囲気
または酸素やオゾンを20vol%以上含む気体中で加
熱し、めっき層表面に所望の酸化物を形成させる。この
場合の加熱条件としては、めっき層とめっき鋼板素地と
の合金化反応が過度に進行せず、且つめっき層表面の酸
化が促進するような温度範囲が望ましく、このような観
点から350〜400℃の範囲の加熱温度が推奨され
る。また、めっき層表面に形成される酸化物量は加熱温
度、加熱時間、加熱雰囲気中の酸素(またはオゾン)濃
度等により実質的に決まるため、形成させるべき酸化物
量に応じてこれらを制御する。
【0026】また、以上述べた2つの方法を併用するこ
とによっても目的とする合金化溶融亜鉛めっき層表面の
組成が得られる。なお、鋼板に溶融亜鉛めっきする際の
亜鉛めっき浴中のAl含有率は0.05〜0.3重量%
とすることが好ましい。めっき浴中のAl含有率が0.
05重量%未満または0.3重量%超では、合金化を均
一に行なうことができず、耐食性、プレス成形性等が劣
化する。
【0027】なお、本発明が規定する合金化溶融亜鉛め
っき層表面のAl23濃度やZnO濃度を測定するため
の方法は特に限定されるものではないが、これらの濃度
は、例えばX線光電子分光法(XPS)、オージェ電子
分光法(AES)、二次イオン質量分析法(SIMS)
等を用いて測定することができる。例えばAESで測定
する場合には、表面に付着した汚染層をArイオンスパ
ッタリングで除去した後、測定すべき各元素のスペクト
ルを測定する。測定されたAlのスペクトルを酸化物と
して存在するAlの成分と金属として存在するAlの成
分とにピーク分離し、同様に、測定されたZnのスペク
トルを酸化物として存在するZnの成分と金属として存
在するZnの成分とにピーク分離する。これらスペクト
ルの強度について相対感度因子補正を行い、めっき層表
面に存在するAl23とZnOの濃度を求める。また、
Al23およびZnOが特定の濃度で存在している領域
の割合(面積率)は、AESによる面分析を行い、それ
ぞれの酸化物の分布を測定することにより求める。
【0028】
【実施例】溶融亜鉛めっきラインにおいて、板厚0.8
mmの低炭素アルミキルド鋼板に以下のような条件で溶
融亜鉛めっきおよび合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛
めっき鋼板を製造した。 めっき浴組成:Al:0.1〜0.2重量%,残部:Z
n めっき浴温度:460℃ 合金化条件:450〜600℃の温度範囲で加熱を行
い、めっき層のFe含有率が所定値となるように加熱時
間を調整した。 これらの合金化溶融亜鉛めっき鋼板の一部に対して、ラ
ボ圧延機を用いて伸延率5%以下の範囲で調質圧延を施
した。なお、No.16、No.18、No.41〜N
o.46については調質圧延を行わなかった。次いで、
大気中において350〜400℃の加熱処理または酸化
剤溶液への浸漬処理を行い、めっき層表面のAl
濃度とZnO濃度の調整を行った。また、比較例である
No.30とNo.31については、調質圧延した後、
めっき表面の酸化物を取り除くためにアルカリ溶液への
浸漬処理を行ない、しかる後、酸素を含有する雰囲気中
において300℃で加熱を行った。
【0029】このようにして得られた各供試材につい
て、めっき層表面のAl23およびZnOの濃度を測定
するとともに、接着強度の測定とその測定値に基づく接
着性の評価を行った。その結果を、各供試材のめっき
量、めっき層のFe含有率、めっき層表面の組成および
濃度とともに、表1〜表5に示す。なお、めっき層表面
のAl23濃度およびZnO濃度の測定と、接着強度の
測定および接着性の評価は以下のようにして行った。
【0030】(1) めっき層表面のAl23濃度およびZ
nO濃度の測定 AESにより、表面に付着した汚染層をArイオンによ
って0.5分のスパッタリングで除去した後、測定すべ
き各元素のスペクトルを測定した。測定されたAlのス
ペクトルを酸化物として存在するAlの成分と金属とし
て存在するAlの成分とにピーク分離し、同様に、測定
されたZnのスペクトルを酸化物として存在するZnの
成分と金属として存在するZnの成分とにピーク分離し
た。これらスペクトルの強度について相対感度因子補正
を行なった後、僅かに見られた汚染に起因するCとAr
を除いて、めっき層表面でのAl23とZnOの濃度を
求めた。なお、スパッタ速度の標準試料としてはSiO
2薄膜を用い、そのスパッタ速度は4.5nm/min
であった。また、Al23およびZnOが特定の濃度で
存在している領域の面積率は、AESにおいてビーム径
が0.5mmに絞られた電子ビームによりめっき表面を
走査し、それぞれの酸化物の分布を測定することにより
求めた。
【0031】(2) 接着強度の測定 図1に示すように2枚の供試材(サイズ:200mm×
25mm)を、両供試材間に0.15mmのスペーサー
を介することで接着剤厚が0.15mmとなるようにし
て接合した試験体を作成し、この試験体に対して150
℃×10分の焼付を行なった。この焼付後の試験体につ
いて、これを構成する両供試材を引張り試験機を用いて
200mm/minの速度で引っ張り、両供試材が剥離
する際の平均剥離強度を測定した。なお、接着剤は塩化
ビニル樹脂系のヘミング用アドヒシブを用いた。このよ
うにして測定された平均剥離強度に基づき、接着性を以
下のように評価した。 ◎ :剥離時の平均剥離強度が7.0kgf/25mm
以上 ○ :剥離時の平均剥離強度が5.0kgf/25mm
以上、7.0kgf/25mm未満 ○−:剥離時の平均剥離強度が4.5kgf/25mm
以上、5.0kgf/25mm未満 △ :剥離時の平均剥離強度が3.0kgf/25mm
以上、4.5kgf/25mm未満 × :剥離時の平均剥離強度が3.0kgf/25mm
未満
【0032】表1〜表5によれば、めっき層表面のAl
の平均濃度とZnOの平均濃度の比[Al
/ZnO]が0.05〜1.5であり、さらにめっき層
表面においてAl濃度が5〜35mol%で且つ
ZnO濃度が20〜95mol%であって、Al
濃度とZnO濃度の比[Al/ZnO]が0.0
5〜0.85である部分の面積率が25〜80%である
本発明例のNo.1〜No.10、No.22〜No.
37は、特に優れた接着性が得られている。これに対し
て、めっき層表面のAl濃度およびZnO濃度が
本発明条件を満足していない各比較例はいずれも接着性
が劣っている。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【発明の効果】以上述べたように本発明の合金化溶融亜
鉛めっき鋼板は、鋼板どうしの重ね合せ部を接着剤で接
合した後に低温で塗装焼付した場合でも優れた接着性を
示し、しかも、従来技術のように2層以上のめっき層を
設けたり或いは酸化物の除去処理を行ったりする必要が
ないため低コストに製造することでき、このため特に自
動車用途等において工業上極めて有用な素材鋼板となり
得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において接着強度の測定に用いた試験体
を示す説明図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 川口 博史 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−263964(JP,A) 特開 平2−263965(JP,A) 特開 平7−316769(JP,A) 特開 平6−10156(JP,A) 特公 平7−72332(JP,B2) 特公 平7−42590(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の少なくとも片面側に、Fe含有率
    が7〜20重量%の合金化溶融亜鉛めっき層が形成され
    た合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記合金化溶融
    亜鉛めっき層表面の組成が、下記(a)、(b)及び(c)を満
    足することを特徴とする接着性に優れた合金化溶融亜鉛
    めっき鋼板。 (a) Al 濃度とZnO濃度の比[Al /Z
    nO]が0.85を超える部分と0.85以下の部分と
    が混在するとともに、Al の平均濃度が5〜50
    mol%、ZnOの平均濃度が15〜95mol%であ
    り、 (b) Al の平均濃度とZnOの平均濃度の比[A
    /ZnO]が0.05〜1.5であり、 (c) Al 濃度が5〜35mol%で且つZnO濃
    度が20〜95mol%であって、Al 濃度とZ
    nO濃度の比[Al /ZnO]が0.05〜0.
    85である部分のめっき層表面に占める面積率が25〜
    80%である。
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