JP3252929B2 - 透明ガスバリア性フィルム - Google Patents

透明ガスバリア性フィルム

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JP3252929B2 JP13182193A JP13182193A JP3252929B2 JP 3252929 B2 JP3252929 B2 JP 3252929B2 JP 13182193 A JP13182193 A JP 13182193A JP 13182193 A JP13182193 A JP 13182193A JP 3252929 B2 JP3252929 B2 JP 3252929B2
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寿幸 大谷
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガスバリア性、高温特
性に優れた食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求さ
れる包装材料、または、ガス遮断材料として優れた特性
を持つフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガスバリア性のすぐれたフィルムとして
は、プラスチックフィルム上にアルミニウムを積層した
もの、塩化ビニリデンやエチレンビニールアルコール共
重合体をコーティングしたものが知られている。また、
無機薄膜を利用したものとしては、酸化珪素、酸化アル
ミニウム薄膜等を積層したものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のガス
バリア性フィルムは、次のような課題を有していた。ア
ルミニウム積層品は、経済性、ガスバリア性の優れたも
のではあるが、不透明なため、包装時の内容物が見え
ず、また、マイクロ波を透過しないため電子レンジの使
用ができない。塩化ビニリデンやエチレンビニールアル
コール共重合体をコーティングしたものは、水蒸気、酸
素等のガスバリア性が十分でなく、特に高温処理におい
てその低下が著しい。また、塩化ビニリデン系について
は、焼却時の塩素ガスの発生等があり、地球環境への影
響も懸念されている。一方、内容物が見え、電子レンジ
の使用が可能なガスバリアフィルムとして、特公昭51
−48511号に、合成樹脂体表面にSixy(例えば
SiO2)を蒸着したガスバリアフィルムが提案されて
いるが、ガスバリア性の良好なSiO x系(x=1.3
〜1.8)は、やや褐色を有しており、透明ガスバリア
フィルムとしては、不十分なものである。
【0004】一方、酸化ジルコニウムを用いたものとし
て(特開昭63−237940)に見られるようなもの
がスパッタ−法で得られているが、高速作製ができない
ためコストの安いものへの適用が難しい。また、これは
初期酸素バリア性は優れているが、レトルト性、耐屈曲
性が不十分なものである。このように、充分な酸素バリ
ア性と耐レトルト性を兼ね備え持つ、安価な無色透明ガ
スバリアフィルムはないのが現状である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガスバリア性
に優れ、かつ、レトルト性の高い安価なガスバリアフィ
ルムを提供せんとするものである。すなわち、本発明
は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、酸化ジ
ルコニウムと酸化硅素の2つの成分からなる薄膜が形成
されたガスバリアフィルムにおいて、該薄膜内に酸化ジ
ルコニウムの比率が1重量%以上、80重量%以下であ
って、該薄膜の比重が下記式を満足することを特徴とす
るガスバリアフィルムであって、D=0.029A+b
但し D:薄膜の比重、A:薄膜中の酸化ジルコニウム
の重量%b:酸化ジルコニウムが0%のときの薄膜の比
重1.6≦b≦2.65 である。
【0006】本発明におけるプラスチックフィルムと
は、有機高分子を溶融押出しをして、必要に応じ、長手
方向、および、または、幅方向に延伸、冷却、熱固定を
施したフィルムであり、有機高分子としては、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタート、ポ
リエチレン−2、6−ナフタレート、ナイロン6、ナイ
ロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニー
ル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニールアルコール、全
芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポ
リエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリッフェニレン
スルフィド、ポリフェニレンオキサイドなどがあげられ
る。また、これらの(有機重合体)有機高分子は他の有
機重合体を少量共重合をしたり、ブレンドしたりしても
よい。
【0007】さらにこの有機高分子には、公知の添加
剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑
剤、着色剤などが添加されていてもよく、その透明度は
特に限定するものではないが、透明ガスバリアフィルム
として使用する場合には、50%以上の透過率をもつも
のが好ましい。本発明のプラスチックフィルムは、本発
明の目的を損なわない限りにおいて、薄膜層を積層する
に先行して、該フィルムをコロナ放電処理、グロー放電
処理、その他の表面粗面化処理を施してもよく、また、
公知のアンカーコート処理、印刷、装飾が施されていて
もよい。本発明のプラスチックフィルムは、その厚さと
して5〜500μmの範囲が好ましく、さらに好ましく
は8〜300μmの範囲である。
【0008】酸化ジルコニウム・酸化硅素薄膜は酸化ジ
ルコニウムと酸化硅素の混合物、あるいは化合物等とか
ら成り立っていると考えられる。ここでいう酸化ジルコ
ニウムとは、Zr,ZrO,ZrO2 等の各種ジルコニ
ウム酸化物の混合物から成り立ち、酸化ジルコニウム内
での各々の含有率等は作成条件で異なる。酸化珪素と
は、Si,SiO,SiO2 等から成り立っていると考
えられ、これらの比率も作成条件で異なる。本発明にお
ける該薄膜の酸化ジルコニウムの比率としては、1重量
%以上、80重量%以下であって、好ましくは3重量%
以上、70重量%以下であって、更に望ましくは、5重
量%以上、65重量%以下である。また、この成分中
に、特性が損なわれない範囲で微量(全成分に対して高
々3%まで)の他成分を含んでもよい。該薄膜の厚さと
しては、特にこれを限定するものではないが、ガスバリ
ア性及び可きょう性の点からは、50〜5000Å(オ
ングストロ−ム)が好ましく、更に好ましくは、70〜
3000Åである。
【0009】本発明の酸化ジルコニウム・酸化硅素系薄
膜の作成には、真空蒸着法、スパッタ−法、イオンプレ
−テイングなどのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、
CVD法(化学蒸着法)などが適宜用いられる。例え
ば、真空蒸着法においては、蒸着源材料としてZrO2
とSiO2 やZrO2 とSiの混合物等が用いられ、ま
た、加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電
子ビ−ム加熱等を用いることができる。また、反応性ガ
スとして、酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン
添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を用
いてもよい。また、基板にバイアス等を加えたり、基板
温度を上昇、あるいは、冷却したり等、本発明の目的を
損なわない限りに於て、作成条件を変更してもよい。ス
パッタ−法やCVD法等のほかの作成法でも同様であ
る。
【0010】本発明でいう比重とは、ある温度で、ある
体積を占める物質の質量と、それと同体積の標準物質の
質量(4℃における水)との比をいう。比重の測定は、
通常物体の質量と体積を測り、同体積の4℃の水の質量
との比を求めればよいが、本発明の薄膜の測定では、体
積の測定が困難である。そこで、まず基板から薄膜をは
がす、あるいは、基板のみを溶解することにより、薄膜
のみからなる単独膜の状態としたのちに、(JIS K
7112)にあるような比重測定法を用いることが望ま
しい。例えば、浮沈法では、試料を比重既知の溶液の中
に浸せきさせ、その浮沈状態から薄膜の比重を測定する
ことができる。この溶液としては、四塩化炭素とブロモ
ホルム、または、ヨウ化メチレンなどの混合液を用いる
ことができる。また、連続的な密度勾配をもつ溶液中に
単独膜を浸積させる密度勾配管法によっても比重の値を
測定できる。
【0011】このようにして得られた該薄膜の比重の値
が、薄膜中の酸化ジルコニウムの重量%との関係を、D
=0.029A+b(D:薄膜の比重、A:薄膜中の酸
化ジルコニウムの重量%、b:酸化ジルコニウムが0%
のときの薄膜の比重)という式で示すとき、bの値が
1.6よりも小さい領域のときには、酸化ジルコニウム
・酸化硅素薄膜の構造が粗雑となり、充分なガスバリア
性が得られない。また、該薄膜の比重が、b値で、2.
65よりも大きい領域のものを作製することは実用上困
難である。以上の理由からガスバリアフィルムとして好
ましい酸化ジルコニウム・酸化硅素薄膜の比重は、該薄
膜の比重と薄膜内の酸化ジルコニウム組成比率との関係
をD=0.029A+b(D:薄膜の比重、A:薄膜中
の酸化ジルコニウムの重量%、b:酸化ジルコニウムが
0%のときの薄膜の比重)という関係式であらわす時、
bの値で1.6から2.65であり、更に好ましくは
1.7から2.65である。
【0012】本発明のガスバリアフィルムは透明である
と共に高度なバリア性を有する。すなわち、PETフィ
ルムを基材とした場合で酸素透過率が5.0cc/m2
・24hrs・atm 以下で、かつ水蒸気バリア性も
良好であり、プラスチック基材の水蒸気透過量を1/1
5以下にすることができる。したがって、本発明の包装
材料で包装した食品は長期保存が可能である。更に、機
械的変形に対するバリア特性の安定性が優れているた
め、ラミ工程、印刷工程での劣下が少なく、工程の処理
速度を大きくすることができる。又、製袋化したのち
も、その取扱いに対して必要以上の注意を要しない。本
発明品は、そのままで使用されてもよいが、他の有機高
分子のフィルム、または薄層をラミネートまたはコーテ
ィングして使用してもよい。本発明の包装材料の使用形
態としては、袋、ふた材、カップ、チュ−ブスタンデイ
ングパック、トレイ、ペ−パ−カ−トン等がある。ま
た、内容物としては、レトルト食品、スナック、かつお
節等の乾燥食品、こんにゃく類、漬物類等の水物食品、
冷凍食品などがある。また、マイクロ波殺菌用、電子レ
ンジ用、脱酸素剤入り包装等にも使用できる。また、工
業用フィルムの例としては、液晶、EL等用の基板フィ
ルムとしても使用できる。
【0013】次に実施例をあげて本発明を説明する。 (実施例1)蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの
粒子状のZrO2(純度99.5%)とSiO2(純度9
9.9%)を用い、電子ビ−ム蒸着法で、12μm厚の
PETフィルム(東洋紡績(株):E5100)上に酸
化ジルコニウム・酸化硅素系薄膜(約400A厚)の形
成を行った。蒸着材料は、混合せずに、ハ−ス内をカ−
ボン板で2つに仕切り、加熱源として一台の電子銃(以
下EB銃)を用い、ZrO2とSiO2のそれぞれを時分
割で加熱した。その時のEB銃のエミッション電流は1
〜2Aとし、ZrO2とSiO2への加熱比を5:10〜
40:10と変え、組成を変化させた。又、フィルム送
り速度は、膜厚が一定となるように変化させたが、酸素
ガスの供給量は、100ccM、チルロ−ル冷却温度
は、−10℃一定とした。このようにして得られたガス
バリア薄膜の比重をPETフィルムを溶解したのち、浮
沈法で測定した。更に、このPET上の複合膜に対し、
また、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム
(OPPフィルム)を二液硬化型ポリウレタン系接着剤
(厚さ4μm)を用いて、ドライラミネ−トして、本発
明応用の包装用プラスチックフィルムを得た。この包装
用フィルムの酸素、水蒸気バリア性及び、レトルト処理
(120℃×30min、130℃×30min)を施
したのち酸素、水蒸気バリア性を測定した。
【0014】・酸素透過率の測定方法 作成したガスバリアフィルムの酸素透過率を酸素透過率
測定装置(モダンコントロールズ社製 OX−TRAN
100)を用いて測定した。 ・水蒸気透過率の測定方法 作成したガスバリアフィルムの水蒸気透過率を水蒸気透
過度テスタ−(リッシ−社製 L80−4000型)を
用いて測定した。このようにして測定した酸素透過率
は、1.0cc前後と非常に優秀であった。さらにレト
ルト試験後の結果も、1cc以下の上昇に留まり、総合
特性の優れたガスバリアフィルムが得られた。(表1)
【0015】(比較例1)実施例1と同様にEB蒸着で
酸化硅素系透明ガスバリア薄膜の作成を行なった。得ら
れたサンプルに対して、実施例1と同様に、比重測定お
よびレトルト処理前後の酸素バリア性を測った。その結
果、120℃のレトルト処理後のバリア特性は優れてい
るが、130℃の処理では悪化し不良となった。(表
1) (比較例2)反応性直流マグネトロンスパッタ法で酸化
ジルコニウム薄膜の作成を行なった。スパッタリングは
ジルコニウム金属板をタ−ゲットとし、5×10-5To
rrまで真空排気したのちにアルゴン・酸素混合ガス
(70:30)を導入した。圧力は、1×10-3Tor
rにしたのちに、直流電圧を印加しスパッタをおこなっ
た。得られたサンプルに対して、レトルト処理前後の酸
素バリア性を測った。その結果、120℃のレトルト処
理後のバリア特性は優れているが、130℃の処理では
悪化し不良となった。(表1)
【0016】(実施例2)蒸着源として、3〜5mm程
度の大きさの粒子状のZrO2(純度99.5%)とS
iO2(純度99.9%)を用い、EB蒸着法で、12
μm厚のPETフィルム(東洋紡績(株):E510
0)上に酸化ジルコニウム酸化硅素薄膜の形成を行っ
た。蒸着材料は混合せずに、ハ−ス内をカ−ボン板で2
つに仕切り、加熱源として一台EB銃を用いて、ZrO
2とSiO2のそれぞれを時分割で加熱した。その時のE
B銃のエミッション電流を0.8〜2.5Aと変化さ
せ、ZrO 2とSiO2への加熱比は、5:10〜40:
10と変え、組成を変化させた。フィルム送り速度は、
30〜180m/minと変化させ、300〜3000
Å厚の膜を作った。又、蒸気圧は、酸素ガスの供給量を
10〜500ccMと変えること等で、1×10-5〜2
×10-3Torrまで変え、チルロ−ルの冷却温度も−
20〜70℃まで変えた。このようにして得られた膜の
比重をPETフィルムを溶解したのち、測定した。以下
(実施例1)と同様にして、包装用フィルムを作り、酸
素、水蒸気バリア性を測定した。このようにして測定し
た酸素透過率は、1.0cc前後と非常に優秀であっ
た。さらにレトルト試験後の結果も、2〜3cc前後の
上昇に留まり、総合特性の優れたガスバリアフィルムが
得られた。(表2〜)
【0017】(比較例3)実施例2と同様にEB蒸着で
酸化ジルコニウム・酸化硅素系透明ガスバリア薄膜の作
成を行ない、得られたサンプルに対して、比重測定およ
び酸素、水蒸気バリア性、または、レトルト処理後のバ
リア性を測った。その結果、得られたサンプルの比重は
本発明の範囲外であり、酸素、水蒸気バリア性、あるい
は、レトルト特性のいずれかが不十分なものになった。
(表2−〜)
【0018】
【発明の効果】プラスチックフィルムの少なくとも片面
に、特定比重の酸化ジルコニウム・酸化硅素系薄膜が形
成されたガスバリアフィルムであり、酸素バリア性に優
れ、レトルト特性をはじめとする耐熱処理性の高い、包
装用やその他工業用途に総合的に実用特性のすぐれた酸
化ジルコニウム・酸化珪素系ガスバリアフィルムである
ことがわかる。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大谷 寿幸 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋 紡績株式会社 総合研究所内 (72)発明者 山田 陽三 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋 紡績株式会社 総合研究所内 審査官 平井 裕彰 (56)参考文献 特開 平3−187733(JP,A) 特開 平4−226343(JP,A) 特開 平3−218823(JP,A) 特開 平3−177568(JP,A) 特開 昭61−51333(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスチックフィルムの少なくとも片面
    に、酸化ジルコニウムと酸化珪素の2つの成分からなる
    薄膜が形成されたガスバリアフィルムにおいて、該薄膜
    内に酸化ジルコニウムの比率が1重量%以上、80重量
    %以下であって、該薄膜の比重が下記式を満足すること
    を特徴とする包装用透明ガスバリアフィルム。 D=0.029A+b 但し、D:薄膜の比重、A:薄膜中の酸化ジルコニウム
    の重量% 1.6≦b≦2.65
  2. 【請求項2】 請求項1記載の薄膜層上に、ヒートシー
    ル層が設けられている包装用ガスバリアフィルム。
  3. 【請求項3】 請求項1または、請求項2記載のガスバ
    リアフィルムを用いた包装用材料
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