JP3250102B2 - コンバイン等の水平姿勢制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、コンバイン等の水平
姿勢制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】コン
バインのような収穫機では、車体の前方に刈取装置のよ
うな前処理装置を昇降すべく設け、作業中の圃場端等で
旋回するときは、車体の後退時にこの前処理装置を一旦
上昇させて、接地しないように操作し、旋回等を的確に
行わせる。しかし、湿田圃場で後退しながら前処理装置
を上昇させようとすると、油圧力がこの前処理装置の上
昇のために消費されて、水平制御用の油圧力が不足し、
水平制御が行われなかったり、又前処理装置自体の上昇
も遅れることとなり易い。車体の後退時は後端側が浮上
しようとするのに対して、前側の刈取装置の上昇によっ
て、車体は更に前傾斜となり易く、このようなとき前処
理装置の上昇や車体の水平制御等が油圧力不足等で遅れ
ると、作業を円滑に速やかに行うことができない。

【０００３】

【課題を解決するための手段】この発明は、同じ油圧ポ
ンプＰにもとづく油圧回路３６に、前処理装置３２を昇
降するリフトシリンダ４１と、車台５の前後傾斜を変え
るピッチングシリンダ２６と、車台５の左右傾斜を変え
るローリングシリンダ２７とを設け、前記リフトシリン
ダ４１による前処理装置３２の上昇方向作動時に、前記
ピッチングシリンダ２６、又は、ローリングシリンダ２
７、又は、ピッチングシリンダ２６とローリングシリン
ダ２７とによる水平制御を所定時間禁止することを特徴
とするコンバインの水平姿勢制御装置の構成とする。

【０００４】

【作用、及び発明の効果】油圧ポンプＰの駆動のもとに
リフトシリンダ４１を伸縮制御することによって前処理
装置３２が昇降され、作業時はこの前処理装置３２を下
降させ、単なる走行や旋回走行時にはこの前処理装置３
２を非作業位置にまで上昇させる。又、乾田圃場等での
作業時は、水平制御を行わないで作業走行するが、湿田
のように車体の傾斜が大きく行われ易い条件のもとで
は、自動制御によって車台５が略水平方向に維持される
ように制御される。即ち、前後方向の傾斜時のみにはピ
ッチングシリンダ２６を伸縮し、左右方向の傾斜時のみ
にはローリングシリンダ２７を伸縮し、前後方向と左右
方向が同時に傾斜する時にはピッチングシリンダ２６と
ローリングシリンダ２７を伸縮して車台５を前後左右方
向に略水平姿勢に維持制御する。

【０００５】前述のような水平制御を行うとき、前処理
装置３２を上昇させる方向にリフトシリンダ４１が伸出
されると、ピッチングシリンダ２６、又は、ローリング
シリンダ２７、又は、ピッチングシリンダ２６とローリ
ングシリンダ２７による水平制御が所定時間に亘って禁
止され、その前処理装置３２を優先して上昇させる。こ
の所定時間の経過後に自動的に水平制御が開始される。
このように前処理装置３２を上昇するリフトシリンダ４
１と、水平制御を行うピッチングシリンダ２６、又は、
ローリングシリンダ２７、又は、ピッチングシリンダ２
６とローリングシリンダ２７とが同時に行われるとき
は、ピッチングシリンダ２６、又は、ローリングシリン
ダ２７、又は、ピッチングシリンダ２６とローリングシ
リンダ２７の伸縮出力を所定時間禁止させることによっ
て、油圧ポンプＰの油圧力をリフトシリンダ４１側へ集
中させて刈取上昇を的確に速やかに行わせることがで
き、しかも、前処理装置３２の上昇から水平制御の開始
が自動的に行われて、車台５の水平制御を速やかに行わ
せることができる。

【０００６】

【実施例】図例のコンバインについて説明する。このた
め、前処理装置３２は、刈取装置３２とし、リフトシリ
ンダ４１は、刈取上下シリンダ４１として説明する。車
体フレーム１は、角パイプ材を平面視方形状の囲桁形態
として、この車体フレーム１の左右外側において、前端
部と後端部とにリンクピン１０，１１を突出して、前後
一対の平行リンク３，４を枢支し、この平行リンク３，
４の下端外側部にクローラフレーム９の前後部をリンク
ピン１２，１３で枢支して、クローラフレーム９を車体
フレーム１に対して平行状態で上下動自在の構成として
いる。左右の各クローラフレーム９には、外側に沿って
適数個の転輪１４を転輪軸１５で回転自在にして配設
し、これら各転輪１４と後記スプロケット１６との間に
亘ってゴム材を主体とするクローラ２を掛け渡して、駆
動走行する構成としている。

【０００７】車台５は、前後方向に沿う縦桁と横方向の
横桁等からなり、前記左右両側部の車体フレーム１の上
側部から後側部に亘って対向する支持ブラケット６が、
下側に突出して設けられ、この支持ブラケット６の前端
部は厚く後端部は薄くなるように下面を前方下部に傾斜
させて、この支持ブラケット６の前端部を、前記車体フ
レーム１の前端部において、平行リンク３のリンクピン
１０よりも前位に設けられる横方向のピッチング軸１７
回りに回動自在に支持する。又、この支持ブラケット６
の前端部は走行伝動ケース１８から左右両側方へ突出す
るクローラ２駆動軸１９のアクスルハウジング２０に連
結し、このアクスルハウジング２０の左右両側端部の駆
動軸１９に、前記スプロケット１６を設けている。

【０００８】後部のピッチングブラケット７は、車台５
の後部下方に突出させて、車体フレーム１の後方に対向
し、ベルクランク２１をリンクピン２２で枢支し、この
ベルクランク２１の前端部を、車体フレーム１後端に上
下回動自在に枢着２３したリンク２４にリンクピン２５
で枢着して、ピッチングリンク８を構成し、このベルク
ランク２１上端と車台５後端部との間に亘って連結する
ピッチングシリンダ２６の油圧による伸縮によって、こ
のピッチングリンク８を上下に起伏揺動させて、車台５
をピッチング軸１７回りに上下動する構成としている。

【０００９】上記のような車台５は、支持ブラケット６
と、ピッチングブラケット７とが、車体フレーム１の前
方、後方部で下方に大きく突出する形態であるから、こ
の下側の車体フレーム１との間隔は大きく保つことがで
き、車台５の車体フレーム１に対するピッチング量も大
きくできる。平行リンク３，４を回動させる左右一対の
ローリングシリンダ２７は、後部平行リンク４及びリン
クピン１１と一体のローリングアーム２８と、車体フレ
ーム１との間に連結され、又、前部平行リンク３及びリ
ンクピン１０と一体のローリングアーム２９と、該ロー
リングアーム２８との間をロッド３０で連結し、各ロー
リングシリンダ２７の伸縮によって、クローラフレーム
９を車体フレーム１に対して上下動させて、車高を変
更、調節したり、左右にローリングさせることができ
る。

【００１０】車台５上には、操縦席３１、エンジン、刈
取装置３２、脱穀装置３３、及び穀粒タンク３４等を搭
載して、コンバインを構成する。又、このエンジンによ
って駆動される油圧ポンプＰによって前記ビッチングシ
リンダ２６、及びローリングシリンダ２７等を伸縮でき
る油圧回路３６を有し、この油圧回路３６には、ピッチ
ング制御弁３７及び左右のローリング制御弁３８等を設
け、手動操作や、車台５の傾斜角等を検出する傾斜セン
サ３９，４０によって連動制御する構成としている。

【００１１】該油圧回路３６には、刈取装置３２を車台
５に対して上下動する刈取上下シリンダ４１を設け、刈
取上、下弁４２，４３によって、この刈取上下シリンダ
４１を伸縮して連動する構成である。４４はアンロード
バルブ、４５はリリーフバルブ、Ｔはタンクポートであ
る。マイクロコンピユータを有するコントローラＣＰＵ
の入力として、前記前後傾斜センサ３９、左右傾斜セン
サ４０の他に、車体の走行速を検出する車速センサ４
６、自動スイッチ４７、手動レバーによってＯＮ、ＯＦ
Ｆされる左、右、前、後、上、下の各スイッチ４８〜５
３、前記各ローリングシリンダ２７やピッチングシリン
ダ２６等の伸縮量を検出する各ストロークセンサ５４，
５５，５６、エンジンの回転数を検出するエンジン回転
センサ５７、及び脱穀クラッチの入切を検出する脱穀ク
ラッチセンサ５８、刈取レバーによって刈取上下シリン
ダ４１を伸縮作動しうる昇降スイッチ６６等を設けてい
る。

【００１２】このうち、該自動スイッチ４７のＯＮのと
きは、ローリング制御、及びピッチング制御が傾斜セン
サ４０、３９等の検出とストロークセンサ５４，５５，
５６等のフィードバックとによって行われ、走行土壌面
の傾斜に拘らず、車台５をほぼ水平姿勢（図８のＡ）に
維持するように制御するものである。又、この自動スイ
ッチ４７のＯＦＦのときは、これらローリング制御やピ
ッチング制御等は行わず、車体フレーム１に対して左右
のクローラフレーム９を同高にするように平行姿勢に作
動する平行制御（図８のＢ）を行う。又、手動レバーに
よる各スイッチは、各ローリングシリンダ２７、又はピ
ッチングシリンダ２６の作動を手動操作で行うもので、
左スイッチ４８のＯＮでは車台５を左側へ傾斜し、右ス
イッチ４９のＯＮでは車台５を右側へ傾斜するようにロ
ーリングする。前スイッチ５０、後スイッチ５１のＯＮ
においても同様にしてピッチングする。又、上、下スイ
ッチ５２，５３は、車体フレーム１に対して左右のクロ
ーラフレーム９が同量平行的に上下動するものである。

【００１３】脱穀クラッチセンサ５８は、脱穀装置への
伝動を入り切りする脱穀クラッチ３５の状態を検出する
ものであり、脱穀クラッチ３５入りでＯＮし、切りでは
ＯＦＦとなる。コントローラＣＰＵの出力側には、ピッ
チング制御３７、ローリング制御弁３８、及びアンロー
ド４４等のソレノイド５９〜６５を設け、前記いずれか
のセンサ乃至スイッチの操作によって出力し、ピッチン
グシリンダ２６、又はローリングシリンダ２７を伸縮さ
せて、車台５の姿勢制御を行わせるものである。又、前
記昇降スイッチ６６によって刈取上弁４２、刈取下弁４
３を電磁的に切換える刈取上ソレノイド６７、刈取下ソ
レノイド６８等を設ける。

【００１４】該刈取レバーによる昇降スイッチ６６を上
昇側にＯＮすると、これによって刈取上ソレノイド６７
が出力されると同時に、ピッチングシリンダ２６、及び
ローリングシリンダ２７へのソレノイド５９〜６４出力
が禁止され、タイマーを（例えば２秒）設定する。この
タイマーのタイムアップによって、該各ソレノイド５９
〜６４の出力禁止を解除するように構成している（図
２）。上記のようにタイマーを２秒に設定し、又、フロ
ーを１サイクルするのに要する時間を０．１秒とする
と、１／０．１＝２０デクリメントでタイムアップす
る。

【００１５】このようなタイマーの設定は、刈取装置３
２の上昇に要する時間にほぼ等しく設定する。このタイ
ムアップによって、水平制御が行われて、車台５のピッ
チング制御、及びローリング制御が行われ、水平姿勢と
なる。このときは該刈取装置３２の上昇は出力完了して
いるため、水平制御における油圧流量は十分となり、速
やかな制御が行われる。

【００１６】又、このようなタイマーによる所定時間の
設定に代えて、刈取装置３２の上限リミットスイッチを
設け、刈取装置３２が上限位置に上昇されたとき、この
上限リミットスイッチのＯＮによって所定時間のタイム
アップとし、水平制御の禁止を解除する構成とするもよ
い。又、同様にして、刈取上下シリンダ４１の伸縮を検
出するストロークセンサ等によるもよい。

【図面の簡単な説明】

図はこの発明の一実施例を示す。

【図１】制御ブロック図。

【図２】その一部制御のフローチャート。

【図３】一部制御のタイムチャート。

【図４】油圧回路図。

【図５】クローラ走行装置の一部の側面図。

【図６】その平面図。

【図７】その正断面図。

【図８】その作動状態を示す正面図。

【図９】コンバインの側面図。

【符号の説明】

５ 車台 ２６ ピッチングシリンダ ３２ 前処理装置（刈取装置） ３６ 油圧回路 ４１ リフトシリンダ（刈取上下シリンダ） Ｐ 油圧ポンプ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 同じ油圧ポンプＰにもとづく油圧回路３
   ６に、前処理装置３２を昇降するリフトシリンダ４１
   と、車台５の前後傾斜を変えるピッチングシリンダ２６
   と、車台５の左右傾斜を変えるローリングシリンダ２７
   とを設け、前記リフトシリンダ４１による前処理装置３
   ２の上昇方向作動時に、前記ピッチングシリンダ２６、
   又は、ローリングシリンダ２７、又は、ピッチングシリ
   ンダ２６とローリングシリンダ２７とによる水平制御を
   所定時間禁止することを特徴とするコンバインの水平姿
   勢制御装置。