JP3248210B2 - 超伝導素子 - Google Patents

超伝導素子

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JP3248210B2 JP00015292A JP15292A JP3248210B2 JP 3248210 B2 JP3248210 B2 JP 3248210B2 JP 00015292 A JP00015292 A JP 00015292A JP 15292 A JP15292 A JP 15292A JP 3248210 B2 JP3248210 B2 JP 3248210B2
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武富 上川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超伝導現象を利用した
超伝導素に関する。
【0002】
【従来の技術】超伝導素子は、スイッチング速度が短
く、消費電力が少ないという利点があるため、従来、さ
まざまな2端子素子、3端子素子が提案されている。図
5は、ジョセフソン効果を利用した積層型と呼ばれる2
端子素子であり、二つの超伝導電極011,012の間
に数ナノメータの厚さの絶縁体013を挟んだ構造を有
する。この素子では、二つの超伝導電極011,012
が超伝導状態となると、絶縁体013を通じて二つの超
伝導電極011,012の間に無抵抗で電流が流れる現
象を生じる。
【0003】即ち、図7に示すように極低温において二
つの超伝導電極011,012が超伝導状態となると、
ジョセフソン効果のため、電圧ゼロで二つの超伝導電極
011,012の間に超伝導電流Iが流れる。しかし、
臨界電流I0を越えると、もはや超伝導状態を保てなく
なり、2Δ/eの電圧Vを発生する。つまり、常伝導状
態となるのである。但し、eは、電子の電荷、Δは超伝
導電極011,012のエネルギーキャップである。
【0004】一方、3端子素子としては、図6に示す電
界効果型と呼ばれるものが知られている。この素子は、
二つの超伝導電極021,022を半導体023の表面
に一定間隔を隔てて形成すると共に半導体023の裏面
に絶縁体024を介してゲート電極025を設けたもの
である。この素子では、超伝導電極021,022から
半導体023へ超伝導波動関数が近接効果により滲み出
す現象が起こり、そのコヒーレンス長さξnは、半導体
023内のキャリア濃度により影響を受ける。即ち、図
8に示すようにゲート電圧Vgにより半導体023中の
キャリア濃度を変化させることにより、両側の超伝導電
極021,022から中央の半導体023中に滲み出し
ている超伝導電子の巨視的な波動関数が重なり合うコヒ
ーレンス長さξnが変化する。従って、超伝導電極02
1,022の間隔がコヒーレンス長さξnと同程度の長
さであれば、このコヒーレンス長さξnの重なり合いを
大きくし、又は、小さくして、超伝導電流を増幅するこ
とが可能である。
【0005】その他の超伝導素子としては、図9に示す
マイクロブリッジ型と呼ばれる2端子素子がある。この
素子は、超伝導体031の中央部にコヒーレンス長さξ
n以下のくびれ部031aを形成し、その超伝導体03
1の両側をソース電極、ドレイン電極としたものであ
る。図10はキャリア密度変調型と呼ばれる3端子素子
である。この素子は、超伝導体041の中央部に誘電体
042を介してゲート電極043を形成し、超伝導体0
41の両側部をソース電極、ドレイン電極としたもので
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の3端子
素子は、2端子素子に比較して、ゲート電極を設ける
為、製造工程が複雑となり易いとう欠点がある。即ち、
図5に示す積層型2端子素子を製造する場合、超伝導電
極011、012をそれぞれ形成した後、それらの間に
絶縁体013を挟む工程が必要となる。また、図9に示
すマイクロブリッジ型2端子素子を製造する場合には、
超伝導体031を形成する工程の後、更に、この超伝導
体031にくびれ部031aを設ける工程が必要とな
る。
【0007】これに対し、図6に示す電界効果型3端子
素子を製造する場合、超伝導電極021,022、接合
体である半導体023別々に形成し、その後にそれらを
組み立てた後、更に、絶縁体024を介して半導体02
3にゲート電極025を設ける必要がある。このよう
に、2端子素子の製造工程に比較し、3端子素子は、半
導体等の接合体にゲート電極を設ける必要があるため、
製造工程が複雑となりやすかった。特に、超伝導体と接
合体とを別々に形成して組み立てると、凹凸形状が多く
なるため、この凹凸形状に設けられるゲート電極は段差
割れを起こすおそれがあった。本発明は、上記従来技術
に鑑みてなされたものであり、製造工程が少なく製造容
易で、ゲート電極割れのおそれのない超伝導素子を提供
することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】斯かる目的を達成する本発明の請求項
係る超伝導素子は基板上に形成されたゲート電極と、該
ゲート電極表面及び前記基板表面を覆って積層された超
伝導体とから構成される超伝導素子において、前記ゲー
ト電極と前記超伝導体とのミスマッチに起因して前記ゲ
ート電極に直接接触する部分の前記超伝導体は、前記基
板上に接触する部分の前記超伝導体に比較して臨界温度
の低い構造であり、且つ、動作温度T、前記基板上に接
触する部分の超伝導体の臨界温度Tc、前記ゲート電極
に直接接触する部分の超伝導体の臨界温度Tc’の関係
がTc’−T<Tc−Tc’であることを特徴とする。ま
た、上記目的を達成する本発明の請求項に係る超伝導
素子は基板上に順に形成されたゲート電極及び誘電体層
と、該ゲート電極、該誘電体層及び前記基板表面を覆っ
て積層された超伝導体とから構成される超伝導素子にお
いて、前記ゲート電極及び誘電体層と前記超伝導体との
ミスマッチに起因して、前記ゲート電極に前記誘電体層
を介して接触する部分の前記超伝導体は、前記基板に接
触する部分の前記超伝導体に比較して臨界温度が低い構
造であり、且つ、動作温度T、前記基板上に接触する部
分の超伝導体の臨界温度Tc、前記ゲート電極に誘電体
層を介して接触する部分の超伝導体の臨界温度Tc’の
関係がTc’−T<Tc−Tc’であることを特徴とす
る。
【0010】
【実施例】以下、本発明について、図面に示す実施例を
参照して詳細に説明する。図1に本発明の第一の実施例
を示す。同図に示すように、先ず、基板1上にゲート電
極2、誘電体層3を順に形成し、その後、ゲート電極
2、誘電体層3及び基板1表面を覆う超伝導体4を積層
する。つまり、超伝導体4を、ゲート電極2、誘電体層
3より両側に広がるようにして積層する。積層の方法と
しては、MBE(モレキュラー・ビーム・エピタキシ
ィ)、スパッタリング等により行う。スパッタリング
は、ゲート電極2、誘電体層3の段差に回り込んで超伝
導体4を積層するので、段差に強いという特徴がある。
【0011】ここで、超伝導体4は、ゲート電極2、誘
電体層3とのミスマッチにより、その本来の臨界温度が
変化して成長するものが用いられる。つまり、超伝導体
4とゲート電極2及び誘電体3とは格子定数が不整合と
なるものが組み合わせて使用する。一方、超伝導体4と
基板1とは格子定数が整合するものを組み合わせて使用
する。従って、超伝導体4のうち、誘電体3を介してゲ
ート電極2に接触する中央の部分(以下、ミスマッチ部
分)4bは、基板1に接触する両側の部分(以下、超伝
導電極部分という)4a,4cに比較して臨界温度が変
化することになる。但し、超伝導電極部分4a,4cの
臨界温度Tcに比較して、ミスマッチ部分4bの臨界温
度Tc’が低くなるように、ゲート電極2、誘電体層3
及び超伝導体4の材質が組み合わせられる。動作温度T
において、中央のミスマッチ部分4bが、両側の超伝導
電極部分4a,4cに対して弱い超伝導状態となるよう
にする為である。
【0012】例えば、臨界温度TcとCuO2の面間隔に
は相関があり、これを利用するとミスマッチにより臨界
温度Tcを制御することができる。具体例として、ゲー
ト電極2としてPtを用い、誘電体3として酸化物プロ
ブスカイトを用いるとき、エピタキシャル成長が可能で
あり、且つ、適度なミスマッチが得られる。尚、ゲート
電極2、誘電体3のどちらかがミスマッチに支配的に影
響するかは問題である。しかし、ゲート電極2は誘電体
層3に対して影響を与えることから、一般的には、ゲー
ト電極2がミスマッチは支配的に影響する。超伝導電極
部分4aはソース電極として、超伝導電極部分4cはド
レイン電極として使用する。
【0013】ここで、超伝導電極部分4a,4cの臨界
温度Tc、ミスマッチ部分4bの臨界温度Tc’及び動作
温度Tとエネルギーギャップとの関係について図4に示
す。同図に示すように、動作温度Tを接合体3の臨界温
度Tc’(<Tc)より低くすると、超伝導電極部分4
a,4c及びミスマッチ部分4bも超伝導状態となるた
め、図3に示すようにエネルギーギャップが超伝導電極
部分4a,4cの間でミスマッチ部分4bを通じて連続
することとなり、無抵抗で超伝導電流が流れる。但し、
両側の超伝導電極部分4a,4cに比べて中央のミスマ
ッチ部分4bは弱い超伝導状態にある。また、臨界温度
c’と臨界温度Tcとの中間の温度では、ミスマッチ部
分4bが超伝導状態にならないので、そのような温度範
囲を動作温度とすることは出来ない。
【0014】つまり、動作温度Tと超伝導電極部分4
a,4cの臨界温度Tc及びミスマッチ部分4bの臨界
温度Tc’との間には、次のような関係を満たす必要が
ある。 T<Tc’<Tc …(1) 本実施例では、動作温度Tが上記式(1)の温度条件を
満足すれば、ミスマッチ部分4bはコヒーレンス長さξ
nと無関係に超伝導状態となるため、超伝導電流Iはミ
スマッチ部分4bの形状、寸法に依存しないこととな
る。上記(1)式の温度条件下において、I−V特性を
測定したところ、図2に示す結果が得られた。この結果
から明らかなように、V=0でも、臨界電流I0までは
無抵抗で超伝導電流Iが流れることが判る。
【0015】また、ゲート電極2にゲート電圧Vgを印
加すると、ミスマッチ部分4bにおけるキャリア濃度が
変化し、エネルギーギャップが変化する。例えば、ゲー
ト電圧Vgを正電位とすると、ミスマッチ部分4bにお
いてホールと電子が結合して、キャリア濃度が減少し、
図4中に破線で示すようにエネルギーギャップの大きさ
が低くなる。この為、図2に示すように臨界電流I0
低下する。
【0016】ここで、図4に示すようにミスマッチ部分
4bにおけるエネルギーギャップの大きさの変化の割合
は、動作温度Tと臨界温度Tc’との温度差が狭いほど
大きい。従って、変調の容易さという観点からは、次の
数式に示すように、臨界温度T c’が動作温度Tに近
く、臨界温度Tcが動作温度Tより大きいほど好まし
い。 Tc’−T<Tc−Tc’ …(2) 但し、動作温度Tと臨界温度Tc’との温度差があまり
狭すぎると、動作温度Tが僅かに変動しただけで、超伝
導状態が破れることにもなるので、外乱に対する安定性
を考慮するという観点からは、その温度差については一
定の下限を設ける必要がある。
【0017】また、ミスマッチ部分4bとゲート電極2
との間に誘電率の高い誘電体層3を介装すると、ミスマ
ッチ部分4bに発生する電荷は誘電率に比例して多くな
るので、変調が容易となる利点があるが、逆に、スイッ
チング速度が遅くなる傾向がある。この為、誘電体層4
の誘電率は適度な大きさとするのが望ましい。誘電体層
は設けることが望ましいが、省略しても良い。誘電体層
を省略すると、超伝導体4とゲート電極2のミスマッチ
に基づいて臨界温度Tc’が決定されることになる。
尚、本発明では、ゲート電圧Vgによりミスマッチ部分
4bにおけるキャリア密度を変化させ、これによりミス
マッチ部分4bの超伝導状態を変化させることにより変
調を行うものであり、従来の3端子素子と異なり、コヒ
ーレンス長さξ nを変化させるものではない。
【0018】このように本発明では、ミスマッチ部分4
bと超伝導電極部分4a,4cとを一体的に同時形成す
るので、製造工程が簡略化する。また、ゲート電極2
は、基盤1上に最初に設けられるので、凹凸による段差
割れを起こす虞もない。更に、ミスマッチ部分4bの寸
法、形状は、コヒーレンス長さξnに制約を受けるもの
ではなく、フォトエッチング可能な程度の大きさ(0.5
μm)とすることが可能であり、酸化物超伝導体を用いて
超伝導素子を製造することが容易となる。更に、ミスマ
ッチ部分4bの寸法、形状が制約を受けないことから、
従来のように絶縁体、半導体等の常伝導体を使用する場
合に比較し、電流容量が大きく、大電流を流すことがで
きる。従って、本発明の超伝導素子は、パワーエレクト
ロニクスの分野に応用が可能である。
【0019】
【発明の効果】以上、実施例に基づいて具体的に説明し
たように、本発明の超伝導素は、臨界温度の低いミス
マッチ部分と臨界温度の高い超伝導電極部分とを一体的
に同時形成するので、製造工程が簡略化する。また、ゲ
ート電極は、基盤上に最初に設けられるので、凹凸によ
る段差割れを起こす虞もない。ミスマッチ部分は、コヒ
ーレンス長さに接合体の寸法、形状が制約を受けない
為、酸化物超伝導材料を使用する場合でも、容易に製造
することができる利点がある。また、パワーエレクトロ
ニクスの分野に応用が可能であるという特徴もある。特
に、Tc’−T<Tc−Tc’の関係を形成し、即ち動作
温度とゲート電極上方の超伝導体層(ミスマッチ部分)
の臨界温度との差を小さくすることで、当該ミスマッチ
部分の超伝導層のエネルギーギャップの大きさの変化割
合を大きくし、変調を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る超伝導素子を示す断面
図である。
【図2】図1に示す超伝導素子のI−V特性を示すグラ
フである。
【図3】本発明の超伝導素子におけるエネルギーギャッ
プを示す説明図である。
【図4】エネルギーギャップと動作温度及び臨界温度と
の関係を示すグラフである。
【図5】従来の積層型2端子素子を示す斜視図である。
【図6】従来の電界効果型3端子素子を示す斜視図であ
る。
【図7】従来の積層型2端子素子におけるI−V特性を
示すグラフである。
【図8】従来の電界効果型3端子素子におけるコヒーレ
ンス長さの変化を示す説明図であり、同図(a)はこ重
なりが小さい場合、同図(b)は重なりが大きい場合を
示すものである。
【図9】従来のマイクロブリッジ型2端子素子を示す斜
視図である。
【図10】従来のキャリア密度変調型と呼ばれる3端子
素子を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 基板 2 ゲート電極 3 誘電体層 4 超伝導体 4a,4c 超伝導電極部分 4b ミスマッチ部分 011,012 超伝導電極 013 絶縁体 021,022 超伝導電極 023 半導体 024 絶縁体 025 ゲート電極 031 超伝導体 031a くびれ部 041 超伝導体 042 誘電体 043 ゲート電極 T 動作温度 Tc’ ミスマッチ部分の臨界温度 Tc 超伝導電極部分の臨界温度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下田 達也 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイ コーエプソン株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−49270(JP,A) 特開 平3−79092(JP,A) 特開 平2−194665(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 39/22 - 39/24 H01L 39/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成されたゲート電極と、該ゲ
    ート電極表面及び前記基板表面を覆って積層された超伝
    導体とから構成される超伝導素子において、前記ゲート
    電極と前記超伝導体とのミスマッチに起因して前記ゲー
    ト電極に直接接触する部分の前記超伝導体は、前記基板
    上に接触する部分の前記超伝導体に比較して臨界温度の
    低い構造であり、且つ、動作温度T、前記基板上に接触
    する部分の超伝導体の臨界温度Tc、前記ゲート電極に
    直接接触する部分の超伝導体の臨界温度Tc’の関係が
    c’−T<Tc−Tc’であることを特徴とする超伝導
    素子。
  2. 【請求項2】 基板上に順に形成されたゲート電極及び
    誘電体層と、該ゲート電極、該誘電体層及び前記基板表
    面を覆って積層された超伝導体とから構成される超伝導
    素子において、前記ゲート電極及び誘電体層と前記超伝
    導体とのミスマッチに起因して、前記ゲート電極に前記
    誘電体層を介して接触する部分の前記超伝導体は、前記
    基板に接触する部分の前記超伝導体に比較して臨界温度
    が低い構造であり、且つ、動作温度T、前記基板上に接
    触する部分の超伝導体の臨界温度Tc、前記ゲート電極
    に誘電体層を介して接触する部分の超伝導体の臨界温度
    c’の関係がTc’−T<Tc−Tc’であることを特徴
    とする超伝導素子。
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