JP3246064B2 - 魚節の製造方法 - Google Patents

魚節の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、風味が強化されかつ風
味劣化が抑制された、鰹、宗田鰹、鯖、鰺、鰯、鮪等を
原料とした魚節の製造方法に関する。さらに詳しくは、
削り節や節粉末または風味原料として各種食品に利用さ
れる魚節の製造時に含硫化合物を添加する事によって節
あるいは節を利用した製品の節風味を強化し、かつ製造
後の風味の劣化を抑制する魚節の製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】公知の常法により生切り、煮熟、焙乾を
行なって製造された荒節および荒節にさらにカビ付けを
行なって製造された枯節の風味は節の状態では比較的長
期間保持されるが、切削または粉砕すると、その直後の
肉質的な好ましい風味は急速に消失してしまう。従来、
このような変化を抑制するためには切削または粉砕した
節を窒素置換包装あるいは脱酸素剤封入によって不活性
ガス雰囲気下に置くなどの処置が施されていた。このよ
うに切削または粉砕後の節を不活性ガス雰囲気下に置く
ことによって節風味の変化はある程度抑制可能である。
しかしながら、このような方法では魚節を利用したあら
ゆる製品に適用することは、設備上あるいはコスト面か
ら不可能であった。また、たとえこのような方法をとっ
ても風味の弱化を完全に防ぐ事はできなかった。
【0003】一方、これらの節の風味を強化する方法と
しては焙乾時に表面積を増やすことによって焙乾を強化
する方法(日特開昭54−113466)、削り節に燻
液を添加する事によってスモークフレーバーを付与する
方法(日特開昭53−142559)などが知られてい
るが、これら方法はいずれも主として燻煙臭を強化する
為の方法であり本来の節にある肉質的な風味は強化され
ないため風味全体の力価は強化されるものの風味の質が
本来の節の風味とは異なったものとなってしまい、使用
目的によっては好ましくない場合があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上述の
問題点に鑑み、魚節の製造工程において初期の風味をバ
ランスよく強化し、かつ切削または粉砕後の風味の劣化
を抑制する方法を提供することであり、さらには魚節を
利用したあらゆる食品の風味を強化し、かつ風味の変化
を抑制することによって好ましい風味の製品を提供する
ことである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上述の目的
を達するための方法について鋭意研究を重ねた結果、魚
節を製造する際に魚肉に含硫化合物を添加することによ
って節の風味が強化され、かつ切削または粉砕などの処
理を行なった後も節風味の劣化が抑制されることを見い
だし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、魚節を製造する工程
において魚肉に含硫化合物を添加することによって節風
味が強化され、かつ粉砕または切削後の劣化が抑制され
た魚節を提供するものであり、また上記魚節を用いて魚
節を含有する製品を製造することによって節風味が強化
され、かつ劣化の抑制された魚節含有製品を提供するも
のである。以下、本発明を詳細に説明する。本発明にお
ける含硫化合物としては多くの物質が利用可能であるが
対象が食品であることから、食品素材中に一般的に含ま
れる含硫化合物が望ましい。具体的にはシステイン、シ
スチン、メチオニン、タウリンなどの含硫アミノ酸およ
びグルタチオン、グルタミルシステインなどの含硫ペプ
チドおよびチアミンなどの含硫ビタミンを用いる事がで
きる。これらの含硫アミノ酸、ペプチドおよびビタミン
はいずれも本発明における含硫化合物としての効果を有
しているが、重量あたりの効果が大きいものとしてはシ
ステイン、グルタチオンおよびチアミンが好ましい。し
かしながら本発明において利用可能な含硫化合物は上記
具体例に限定されるものではなく分子内にチオール、ス
ルフィド、ジスルフィド、スルフォキシド、スルホン、
チアゾールなどの構造を有する化合物であれば同様の効
果を得る事ができる。さらに、これらの化合物は単一で
も数種類の混合物でもよく、またその存在形態は問わな
い。したがって、これらの化合物またはその塩を結果的
に含有する素材であればよく、これらの成分を含有する
天然素材あるいは加工素材、具体的にはエキス類や各種
蛋白加水分解物などを用いることもできる。
【0007】本発明において添加する含硫化合物の量は
添加対象となる節の乾燥重量に対して硫黄元素の重量比
で0.0001%〜5.0%好ましくは0.001%〜
1.0%の範囲で添加するのが望ましい。添加量がこれ
以下であると充分な効果が得られないことがあり、添加
量がこれ以上であると異風味が強くなりすぎて節本来の
風味を損ねる可能性がある。
【0008】節の製造工程中含硫化合物を添加する時期
は特に限定されるものではないが焙乾前または焙乾と次
の焙乾の間に添加するのが操作上好ましい。すなわち原
料魚から節を製造する過程のいずれかの時点において添
加した含硫化合物が節と共存する状態で存在し加熱され
ることにより目的の効果を得る事ができる。
【0009】本発明における含硫化合物の添加方法は特
に限定されるものではないが、より高い効果を得るため
には含硫化合物をできるだけ均一に節に添加するのが好
ましく、そのためには含硫化合物の溶液を節に塗布また
は噴霧する、あるいは節を含硫化合物の溶液に浸漬する
などの方法を用いることができる。さらにこれらの方法
を複数組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0010】本発明において利用の対象となる節の種類
としては、鰹、宗田鰹、鯖、鰺、鰯、鮪等が挙げられ、
これら通常風味原料として利用される魚節についてはい
ずれも好ましい効果を得る事ができる。
【0011】以上のごとく本発明の方法によって製造さ
れた魚節は焙乾工程において、添加された含硫化合物が
反応する事によって節の風味が強化される。また、含ま
れる含硫化合物によって、切削または粉砕後の風味の劣
化も抑制され、特別な設備の必要なしに良好な風味の節
原料をあらゆる製品に利用することが可能である。
【0012】次に実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。
【0013】比較例1 生鰹を常法により生切り、煮熟、骨抜きした後10番火
まで焙乾を施して鰹荒本節を得た。得られた鰹荒本節は
水分18%であった。
【0014】比較例2 生鰹を常法により生切り、煮熟、骨抜きした後10番火
まで焙乾して得た鰹荒本節の表面を削り落とし、天日乾
燥とかび付けを繰り返し5番かびの後さらに天日乾燥し
て鰹本枯節を得た。得られた鰹本枯節は水分15%であ
った。
【0015】実施例1 常法により生切り、煮熟、骨抜きした鰹なまり節をL−
システイン塩酸塩一水和物の1%水溶液に室温で1時間
浸漬する。自然に水切りした後通常どうり焙乾を施して
水分18%の鰹荒本節を得た。この操作により遊離のシ
ステインは硫黄元素として鰹節乾燥重量あたり0.02
%含まれていた。比較例1で得た節および実施例1で得
た節を市販の鰹節削り器を用いて切削して、削り節とし
た。調製した削り節についてその香りを比較した結果、
本実施例において得られた節の方が比較例1において得
られた節に比べ明らかに鰹節の香りが強かった。次に沸
騰水に1%重量の比較例1の削り節を加え、1分間放置
後瀘布で残渣を濾過し、1%のだし汁を得た。同様に、
実施例1の削り節を用いて0.1%,0.2%,0.3
%,0.5%,1.0%のだし汁を調製した。比較例1
の節の1%のだし汁をコントロールとして実施例1の節
の各濃度のだし汁の風味強度を評価した結果、0.2%
のものが最もコントロールの強度に近かった。このこと
から実施例1の節は重量あたり比較例1の節のおよそ5
倍の風味強度を有することが分かる。
【0016】実施例2 実施例1と同様に調製した鰹なまり節の表面にL−シス
テイン塩酸塩一水和物の10%水溶液を塗布した後通常
どうり焙乾を施して水分18%の鰹荒本節を得た。この
操作により遊離のシステインは硫黄元素として鰹節乾燥
重量あたり0.1%含まれていた。得られた節から実施
例1と同様な方法で1%のだし汁を調製し、比較例1の
節の1%のだし汁と比較したところ本実施例において調
製しただし汁の方が明らかに鰹節の風味が強かった。
【0017】実施例3 実施例1で得た鰹荒本節の表面を常法に従って削り落と
した後、比較例2と同様に天日乾燥とかび付けを繰り返
し、5番かびの後さらに天日乾燥して鰹本枯節を得た。
得られた鰹本枯節は水分15%であった。得られた節か
ら実施例1と同様な方法で1%のだし汁を調製し、比較
例2の節の1%のだし汁と比較したところ本実施例にお
いて調製しただし汁の方が明らかに鰹節の風味が強かっ
た。
【0018】実施例4 比較例1および実施例1で得た鰹荒本節を市販の鰹節削
り器を用いて切削して削り節とした。両サンプルそれぞ
れ100gを1リットル容のガラス瓶に入れ、室温で1
週間保存後両サンプルのヘッドスペースの香りを評価し
た。その結果、比較例1の節のサンプルでは削りたての
節の香りが消失し、強い油焼け臭を感じたのに対し、実
施例1の節のサンプルは削りたての節の香りが残ってお
り、油焼け臭の発現は認められなかった。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、添加した含硫化合物に
よって節の風味が強化されるとともに含まれる含硫化合
物によって風味の劣化が抑制されるため、良好な風味を
有しかつ粉砕または切削後の風味劣化が抑制された魚節
を得る事ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 市川 恒子 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味 の素株式会社 食品総合研究所内 (72)発明者 石黒 恭佑 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味 の素株式会社 食品総合研究所内 審査官 鵜飼 健 (56)参考文献 特開 昭53−32155(JP,A) 特開 昭53−32156(JP,A) 特開 昭53−32157(JP,A) 特開 昭53−32158(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23B 4/00 - 4/32 A23L 1/325 - 1/326

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原料魚から節を製造する際に、原料魚に、
    含硫化合物としてシステイン、シスチン、メチオニン、
    タウリン、グルタミルシステイン、グルタチオン、チア
    ミン又はそれらの塩の中から選ばれる1つまたは複数の
    混合物を添加することを特徴とする魚節の製造方法。
  2. 【請求項2】含硫化合物を製造時の煮熟液に添加するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の魚節の製造方法。
  3. 【請求項3】煮熟前の魚肉および/又は煮熟後の魚肉お
    よび/又は焙乾途中の節を含硫化合物の溶液に浸漬する
    ことを特徴とする請求項1に記載の魚節の製造方法。
  4. 【請求項4】煮熟前の魚肉および/又は煮熟後の魚肉お
    よび/又は焙乾途中の節に含硫化合物の溶液を塗布する
    ことを特徴とする請求項1に記載の魚節の製造方法。
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