JP3245337B2 - 加熱用ヒータ及び定着用ヒートローラ及び定着装置 - Google Patents

加熱用ヒータ及び定着用ヒートローラ及び定着装置

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JP3245337B2
JP3245337B2 JP31253195A JP31253195A JP3245337B2 JP 3245337 B2 JP3245337 B2 JP 3245337B2 JP 31253195 A JP31253195 A JP 31253195A JP 31253195 A JP31253195 A JP 31253195A JP 3245337 B2 JP3245337 B2 JP 3245337B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加熱用ヒータに関
し、特にプリンタ等の電子写真装置におけるトナー定着
用ヒートローラ及び定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、プリンタ等の電子写真装置に
おけるトナー定着装置は、発熱手段を備えたヒートロー
ラと、加圧ローラを対向して配置し、これらのローラ間
に印字後の用紙を通過させることによって、トナーを加
熱定着するようになっている。
【0003】そして、上記ヒートローラとしてはアルミ
ニウムやステンレス等の金属パイプ中にハロゲンランプ
等の加熱素子を設けたものが用いられてきたが、発熱効
率が悪いため1分以上のウォームアップ時間が必要であ
り、また消費電力も大きいという問題点があった。
【0004】そこで、金属パイプの外周にポリイミド等
の有機樹脂からなる絶縁層を介して発熱抵抗体を備え、
さらにその表面に離形層を備えた構造のヒートローラが
提案されている(特開昭55−72390号、特開昭6
2−200380号公報等参照)。
【0005】一方、ヒートローラの発熱抵抗体層として
ガラスと金属等の導電材料との混合物を用いることも提
案されている(特開昭63−158582号公報等参
照)。これは、金属等の導電材料は、ガラスとの濡れ性
が良くなじみやすいことから、均一な厚みの発熱抵抗体
層を形成できるためである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ガラスと導
電材料との混合物により発熱抵抗体層を形成した従来の
ヒートローラにおいて、ON−OFFを繰り返すと、加
熱冷却の繰り返しのために発熱抵抗体層の抵抗値が変化
してしまうという問題点があった。そのため、ヒートロ
ーラを使用しているうちに初期の特性が変化してしま
い、長期使用できないという不都合があった。
【0007】また、上記ヒートローラの発熱抵抗体層を
なす導電材料として、銀(Ag)は電気伝導性が高く耐
酸化性に優れているため、好適に用いられる。しかし、
Agは低温では焼成しにくいため、上記のように絶縁層
として有機樹脂を用いる場合、焼成温度を高くできない
ことから、Agを含む発熱抵抗体を焼成することが困難
であるという不都合もあった。
【0008】さらに、従来のヒートローラでは、通電す
るための電極がヒートローラの外表面とほぼ同一面上に
あったため、トナー粉や紙粉が電極に付着して、スパー
クやノイズが発生するという問題もあった。
【0009】また、従来の定着装置では、加圧ローラ側
以外の方向にヒートローラの熱が放射してしまうため、
加熱効率が悪いという問題点もあった。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、少なく
とも表面が絶縁性をもった基体上に、結晶化ガラスと導
電材料を混合してなる発熱抵抗体を備えて加熱用ヒータ
を構成したものであり、特に上記基体をパイプとして定
着用ヒートローラを構成したことを特徴とする。
【0011】即ち、本発明は、発熱抵抗体層を成すガラ
スとして結晶化ガラスを用いることによって、加熱冷却
サイクルの繰り返しに対する抵抗値変化の少ないヒート
ローラを得るようにした。
【0012】さらに本発明は、少なくとも表面が絶縁性
をもった基体上に、AgOを含む導電材料とガラスとを
混合してなる発熱抵抗体を備えて加熱用ヒータを構成し
たものであり、特に上記基体をパイプとして定着用ヒー
トローラを構成したことを特徴とする。
【0013】即ち、本発明は、発熱抵抗体層を成す導電
材料として、Agを含むものを用いて酸化雰囲気で焼成
しAgOを生成すれば、比較的低温でAgを焼成できる
ことから耐酸化性に優れた発熱抵抗体層を得られること
を見出したのである。
【0014】なお、上記本発明の加熱用ヒータは、定着
用ヒートローラのみに限らず、液晶基板や各種素子加熱
用ヒータ、あるいは流体加熱用ヒータ等としても利用す
ることができる。
【0015】また、本発明は、発熱抵抗体層に通電する
ための電極を離形層の外表面から突出させることによっ
て、トナー粉や紙粉の付着を防止するようにした。
【0016】さらに、本発明は、ヒートローラの加圧ロ
ーラと反対側にリフレクターを備えることによって、こ
の方向に放射される熱を反射させ、加圧ローラ側を効率
的に加熱するようにした。
【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を図によっ
て説明する。
【0018】図1に定着用ヒートローラ1を示すよう
に、金属パイプ2の外周面に、絶縁層3を介して発熱抵
抗体層4を備え、さらに最外表面に離形層5を形成し、
発熱抵抗体層4の両端部にリング状の電極6を取り付け
て構成してある。
【0019】上記金属パイプ2は熱伝導率0.03ca
l/℃・cm・sec以上の金属から成り、具体的には
アルミニウムやアルミニウム合金、あるいはステンレス
等を用い、その肉厚は0.5〜1mmとする。また、絶
縁層3はポリイミド、フェノール、シリコン、ボロシロ
キサン等の耐熱性に優れた有機樹脂からなり、その厚み
は絶縁耐力によって異なるが、例えばポリイミドの場合
10〜200μmの厚みが好ましい。また、絶縁層3を
成すポリイミドは、金属パイプ2との熱膨張率の差が小
さいものを用いる。さらに、離形層5はトナーとの離形
性に優れたフッ素樹脂、シリコン等から成るものであ
る。
【0020】このヒートローラ1は、ブラシ状の給電部
材(不図示)によって両端の電極6、6間に通電しなが
ら回転させれば、発熱抵抗体層4が発熱し、定着用ヒー
トローラとして作用することができる。
【0021】そして、上記発熱抵抗体層4は、ガラスと
導電材料の混合物からなるものを用いるが、発熱抵抗体
層4中の導電材料の含有量は5〜40重量%とする。こ
れは、導電材料が5重量%未満であると発熱抵抗体層4
の比抵抗が高く成りすぎるためであり、一方40重量%
を超えると発熱抵抗体層4の密着性が悪くなり剥離が生
じやすくなるためである。
【0022】さらに、上記発熱抵抗体層4を成す導電材
料としては、Agを5%以上含むものを用い、酸素濃度
1%以上の酸化雰囲気で焼成すれば、比較的低温で焼成
でき、最終的な発熱抵抗体層4中にはAgOが存在して
耐酸化性を高くできる。なお、AgOが存在するとは、
発熱抵抗体層4をX線回折で分析した際にAgOのピー
クがわずかでも検出されるものを言う。
【0023】また、その他の成分としてはNi,Au,
Pd,Mo,Mn,W等の金属材、あるいはRe
2 3 、Mn2 3 、LaMnO3 等の金属化合物の少
なくとも1種を用いれば良い。これらの成分のうち、A
gは上記したように電気伝導性が高く、耐酸化性に優れ
たものであり、またPdは主に抵抗温度係数(TCR)
の調整に用い、さらにMn2 3 、LaMnO3 等の金
属化合物は低TCR化と比抵抗の調整に用いる。また、
発熱抵抗体層4のTCRを3000ppm/℃以下とす
れば、昇温速度が早く、局部発熱や温度バラツキを少な
くすることができる。
【0024】ここで、発熱抵抗体層4のTCRを300
0ppm/℃以下とするためには、例えば発熱抵抗体層
4の導電材料としてAgとPdを用い、その重量比をA
g/Pd=0.5〜19の範囲内とすれば良い。
【0025】さらに、発熱抵抗体層4を成すガラスとし
ては、結晶化ガラスを用いることにより、加熱冷却サイ
クルによっても抵抗値の変化の少ない発熱抵抗体層4と
することができる。その組成としては、PbOを50重
量%以上含むものを用いる。これは低融点とするためで
あり、好ましくは軟化点が500℃以下の低融点のもの
が良い。そして、PbO以外の成分として、B2 3
SiO2 、ZnO、BaO等を含むものを用いる。
【0026】さらに、結晶化ガラスとしては、結晶化度
が0.5以上のものを用いる。ここで結晶化度とは、ガ
ラスの結晶化の度合いを示す尺度であり、以下のように
して測定する。
【0027】まず、上記結晶化ガラスを含む発熱抵抗体
層4を粉砕したものに、標準試料としてNi又はZrO
2 を10〜100%の範囲で加えて混合する。この粉砕
物にX線回折を行い、得られたチャート図からPbOの
結晶のピークP1 と標準試料のピークP2 の比P1 /P
2 を求め、これを結晶化度と定義する。そして、このP
1 /P2 で定義される結晶化度が0.5以上であるよう
な結晶化ガラスを用いれば、加熱冷却サイクルによる抵
抗変化の小さい発熱抵抗体層4とすることができるので
ある。
【0028】また、発熱抵抗体層4の厚みtは5〜10
0μmとする。これは厚みtが5μm未満であると抵抗
値が高くなってバラツキが生じやすくなり、一方100
μmを超えると剥がれやすくなるためである。なお、発
熱抵抗体4のパターン形状は、必要な抵抗値に応じて全
面、短冊状、蛇行状等のさまざまに変化させることがで
きる。
【0029】さらに、上記電極6は、Niメッキを施し
た真鍮、銅、0.01〜0.1%の銀を含む銅等により
形成し、発熱抵抗体層4上に銀ペーストを用いて固着し
てある。そして、この電極6は離形層5の外表面に対し
て高さhだけ突出させて形成することが重要である。
【0030】即ち、このヒートローラ1の使用時に生じ
るトナー粉や紙粉等が、電極6の外周面に付着すると、
スパークが発生したりノイズが生じる等の不都合を生じ
てしまう。そこで、電極6を離形層5の外表面から高さ
hだけ突出させることによって、上記トナー粉や紙粉の
電極6への付着を防止できるのである。この高さhは、
0.1mm未満では上記付着防止効果に乏しく、一方5
mmを超えると段差のために実機に組み込むことが困難
となるため、0.1〜5mmの範囲内が好ましい。
【0031】さらに、電極6の周囲に溝を形成すること
によって、段差部にトナー粉や紙粉が溜まることを防止
できる。この溝は、電極6の周囲に段差部の内外を連通
するように軸方向に形成すれば良い。
【0032】次に、図1に示す本発明のヒートローラ1
の製造方法を説明する。
【0033】まず、金属パイプ2を所定形状に加工し、
表面に有機樹脂からなる絶縁層3をスピンコート、スプ
レーコート、ディッピング等によって塗布し200〜4
50℃の空気中または窒素雰囲気中で焼き付ける。この
表面に、上述したようなガラスと導電材料の混合物を有
機溶剤、バインダー、分散剤等と混合してペースト状に
したものをスクリーン印刷、ディッピング、スプレーコ
ーティング等により所定のパターン形状に塗布して40
0〜500℃で焼成し、発熱抵抗体層4とする。なお、
発熱抵抗体層4としてAgを含む場合は、焼成時の雰囲
気を酸素濃度1%以上の酸化雰囲気とする。その後、電
極6を接合し、離形層5をスプレーコート等によって塗
布し、390℃程度で焼成すれば良い。
【0034】このような製造工程中に加熱冷却サイクル
を受けても、発熱抵抗体層4として結晶化ガラスを用
い、AgOを含むものを用いることにより、抵抗変化が
少なく耐酸化性に優れるため、長期間良好に使用するこ
とができる。
【0035】また、図1の実施例では、金属パイプ2の
外側表面に絶縁層3と発熱抵抗体層4を備えたヒートロ
ーラ1を示したが、他の実施例として図示していない
が、金属パイプ2の内側表面に絶縁層3と発熱抵抗体層
4を備え、一方金属パイプ2の外側表面に離形層5を備
えた構造のヒートローラ1とすることも可能である。
【0036】さらに、上記実施例では金属パイプ2の表
面に絶縁層3を備えた例を示したが、この他にパイプ自
体をガラス、セラミックス、樹脂等の絶縁体で形成し、
その表面に発熱抵抗体4を備えることもできる。要する
に少なくとも表面が絶縁性をもったパイプを用意し、こ
の表面上に発熱抵抗体4を形成すれば良い。これらの場
合に、パイプの内側に補強部材を備えて強度を向上させ
ることもできる。
【0037】また、ヒートローラ1を使用する場合は、
図2に示すようにヒートローラ1と加圧ローラ21と対
向させて配置し、ヒートローラ1を加熱しながら両者間
に印字後の用紙22を通過させることによって、用紙2
2の上にトナーを定着するようになっている。このと
き、ヒートローラ1の加圧ローラ21とは反対側にリフ
レクター23を備えることにより、加熱効率を向上させ
ることができる。
【0038】即ち、ヒートローラ1の熱は全方向に放射
するが、必要となるのは加圧ローラ21と対向した部分
のみであり、反対側へ放射する熱は無駄となっている。
そこで、ヒートローラ1の外形に沿った曲面形状のリフ
レクター23を備えることによって、加圧ローラ21と
反対側に放射する熱を反射して加圧ローラ21側を効率
的に加熱できるのである。
【0039】上記リフレクター23は、金属材またはプ
ラスチックから成り、内面が金属色又は白色で、内面の
表面粗さ(Rz)が100μm以下のものを用いること
により、反射性を高くできる。また、リフレクター23
の厚みは薄い方が電力のロスが少ないため、0.1〜1
mmの厚みとし、特に薄い部材を複数積層すると効率的
である。さらに、リフレクター23とヒートローラ1と
の距離dは、近すぎても遠すぎても効率が悪くなり、
0.1〜10mmの範囲が好ましい。また、リフレクタ
ー23の内面に遠赤外線を放射する物質をコーティング
しておけばより効果的である。
【0040】さらに、以上の実施例では円筒形の定着用
ヒートローラについてのみ述べたが、本発明はこれだけ
に限るものではない。
【0041】例えば、図3(a)に示す加熱用ヒータ1
1は、金属板12上に有機樹脂からなる絶縁層13を形
成し、この上にガラスと導電材料からなる発熱抵抗体層
14を備えたものである。そして、各部材の材質や、発
熱抵抗体層14の材質等は全て上記実施例と同様となっ
ている。
【0042】なお、金属板12と絶縁層13の代わりに
ガラス、セラミックス、樹脂等の絶縁体で基体を形成
し、この表面に発熱抵抗体14を形成することもでき
る。要するに少なくとも表面が絶縁性をもった基体を用
意し、この表面に発熱抵抗体14を形成すれば良い。ま
た、図では発熱抵抗体14を全面に塗布した例を示した
が、短冊状や蛇行状などの所定のパターン形状とするこ
ともできる。
【0043】この加熱用ヒータ11は、上記実施例と同
様の定着用ヒータとして用いたり、一般的なヒータとし
て各種気体や流体の加熱用、素子加熱用等のさまざまな
用途に好適に使用することができる。そして、図1の実
施例と同様に、製造工程中あるいは使用中に加熱冷却サ
イクルを受けても、発熱抵抗体層4の抵抗変化が少な
く、耐酸化性が高いため、長期間良好に使用することが
できる。
【0044】例えば、この加熱用ヒータ11を液晶パネ
ルの加熱に用いることもできる。この場合は、金属板1
2として熱伝導率の高いアルミニウム板を用い、この表
面にポリイミドフィルムを20〜30μmの厚みにコー
ティングして絶縁層13を形成する。該絶縁層13上
に、結晶化ガラスとAg,Pd,Ag−Pd等を混合し
てなる材料を用いて、温度が均一となるようなパターン
を形成して発熱抵抗体層14とする。その後、大気中5
00℃で焼成し、Agとポリイミド樹脂の複合材を用い
て電極を形成し、必要があれば発熱抵抗体層14を覆う
保護層(不図示)を樹脂等で形成する。そして、この上
に液晶パネルを載置して発熱抵抗体層14に通電すれ
ば、液晶パネルを加熱することができる。
【0045】また、他の実施例として、図3(b)に示
す流体加熱用ヒータ21として用いることもできる。こ
の場合は、アルミニウム等の金属パイプ22の外周にポ
リイミド等の絶縁層23をコーティングし、ガラスと導
電材料を混合してなる発熱抵抗体層24を備え、該発熱
抵抗体24にはコントローラ25を介して電圧を印加で
きるようになっている。そして、金属パイプ22中に流
体を通過させながら発熱抵抗体層24に通電すれば、流
体を加熱することができる。この時、コントローラ25
にサーミスタ等を接続して流体の温度を検知するように
しておけば、流体を所定の温度に加熱できるように印加
電圧を調整することができる。
【0046】さらに、本発明は、上記実施例に示したも
の以外に、さまざまな形状、用途のヒータにも適用でき
ることは言うまでもない。
【0047】
【実施例】実験例1 本発明実施例として、アルミニウム合金からなり、肉厚
0.7mm、外径18mm、長さ260mmの金属パイ
プ2を用意し、この金属パイプ2上にポリイミドからな
る絶縁層3を10〜50μmの厚みで 絶縁耐圧1.5
kV以上となるように形成し、この表面に、PbOを5
0%以上含む結晶化ガラス70重量%とAg及びPd、
LaMnO3 等から成る導電材料30重量%との混合抵
抗体粉末をコーティングし450℃で焼成してガラスを
結晶化させ、発熱抵抗体層4を形成した。
【0048】この発熱抵抗体層3の両端部に電極6を取
り付け、表面にフッ素樹脂により離形層5を形成して図
1に示す本発明のヒートローラ1を得た。
【0049】一方比較例として、上記と同様であるが、
発熱抵抗体層4を成すガラスとして非結晶化ガラスを用
いたものを用意した。
【0050】これらのヒートローラ1に対し、370℃
で30分間の再加熱を3回行った後の抵抗値Rを測定
し、初期抵抗値R0 に対する抵抗変化率(R−R0 )/
Rを求めた。結果は図4(a)(b)に示す通りであ
る。
【0051】この結果より明らかに、比較例(図4
(b))では3回の再加熱後に20%程度の抵抗変化が
あった。これに対し、本発明実施例(図4(a))では
3回の再加熱後も±1%程度の抵抗変化しかなく、熱サ
イクルに対する抵抗変化が極めて小さいことがわかる。
【0052】実験例2 次に、本発明のヒートローラ1において、発熱抵抗体層
4の焼成時の条件を表1にように変化させることによっ
て結晶化度の異なるものを用意し、それぞれについて1
40℃と180℃の間の熱サイクルを20000サイク
ル繰り返した後、初期抵抗値に対する抵抗変化率(%)
を求め、これが3%以下のものを○、3%を超えたもの
を×で評価した。
【0053】また、結晶化度については、前述したよう
に発熱抵抗体層4を剥がして粉砕したものに、標準試料
としてNiまたはZrO2 を10〜100%加えて混合
し、この粉砕物にX線回折を行った時の、PbOの結晶
のピークP1 と標準試料のピークP2 の比P1 /P2
結晶化度とした。
【0054】結果は表1に示す通り、結晶化度が0.5
以上であれば、20000サイクル後の抵抗変化率が3
%と低く、熱サイクルに対しても初期の抵抗値を維持で
きることがわかった。
【0055】
【表1】
【0056】次に、発熱抵抗体層4の厚みtを種々に変
化させて、表1中のNo.4の条件でヒートローラ1を
試作した。それぞれについて、比抵抗が目標値に対して
±10%以内のものを○、この範囲外のものを×として
評価した。また、発熱抵抗体層4にセロハンテープを貼
りつけて剥がすヒーリングテストを行った時に、発熱抵
抗体層4の剥離が無いものを○、剥離が有るものを×と
して評価した。
【0057】結果は表2に示す通りである。この結果よ
り、発熱抵抗体層4の厚みtが5μm未満であると抵抗
値のばらつきが大きいため目標値に設定することが困難
であり、一方厚みtが100μmを超えると剥離しやす
いことから、膜厚は5〜100μmの範囲が良いことが
わかった。
【0058】
【表2】
【0059】実験例3 次に、発熱抵抗体層4を成す導電材料として、Agのみ
を用いたもの、AgとPd(Ag:Pd=1:1)を用
いたものについて、発熱抵抗体層4中の導電材料の含有
量を変化させた時の、発熱抵抗体層4の比抵抗と抵抗温
度係数(TCR)を測定した。
【0060】結果を図5に示すように、いずれの場合も
導電材料の含有量を多くすることによって比抵抗を下げ
られ、またPdを含有することによって比抵抗を高くす
るとともにTCRを小さくできることがわかる。
【0061】したがって、導電材料の組成や含有量を変
化させることによって、発熱抵抗体層4の抵抗値やTC
R値を自由に調整できることがわかる。
【0062】なお、AgとPdの比率を種々に変化させ
て、発熱抵抗体層4の抵抗温度係数(TCR)を測定し
たところ、表3に示すようにAg/Pdの比率に応じて
TCRの値が変化し、Ag/Pdの比率を0.5〜19
の範囲とすれば好適に使用することができる。
【0063】
【表3】
【0064】実験例4 次に、上記実験例と同様にして、発熱抵抗体層4を成す
ガラスと導電材料との比率を種々に変化させ、それぞれ
比抵抗、剥離強度、ON−OFF試験後の抵抗変化を測
定した。
【0065】剥離強度は発熱抵抗体層4を2×5mmの
範囲で垂直に引き剥がすために必要な荷重であり、ON
−OFF試験は突入電力800Wでヒータ温度が200
℃となるように1分間電圧を印加し、2分間電圧を切る
サイクルを5万サイクル繰り返した後の抵抗変化率を測
定した。この抵抗変化率が3%以内であれば良好の判定
をした。
【0066】結果は表4に示す通り、導電材料を5〜4
0重量%、ガラスを95〜60重量%の範囲とすれば好
適であることがわかる。
【0067】
【表4】
【0068】実験例5 次に、上記実験例と同様にして、発熱抵抗体層4を成す
ガラスと導電材料との比率を種々に変化させるととも
に、焼成温度をかえてAgOの生成率を変化させた。そ
れぞれ、実験例4と同様に剥離強度とON−OFF試験
後の抵抗変化を測定した。なおAgOの生成率はオージ
ェ分析により測定し、AgO/Agの比率で表した。
【0069】結果を表5に示すように、焼成温度を45
0℃以上とし、AgO/Agの比率を0.08以上とし
たものは、ON−OFF試験後の抵抗変化が小さく耐久
性に優れていることがわかる。
【0070】
【表5】
【0071】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、少なく
とも表面が絶縁性をもった基体上に、結晶化ガラスと導
電材料を混合してなる発熱抵抗体層を備えて加熱用ヒー
タを構成したことによって、ON−OFFの繰り返しに
よって熱サイクルが加わった際の抵抗値の変化を極めて
小さくすることができる。
【0072】また、本発明によれば上記発熱抵抗体層と
して、AgOを含む導電材料とガラスとの混合物を用い
たことによって、発熱抵抗体層の耐酸化性を高くでき
る。
【0073】特に上記基体をパイプ状として定着用ヒー
トローラに用いれば、初期の性能を長期間にわたって維
持し、寿命の長い定着用ヒートローラを提供することが
できる。
【0074】さらに、本発明によれば、ヒートローラの
電極を離形層の外表面から突出させたことによって、電
極にトナー粉や紙粉が付着することを防止し、スパーク
やノイズの発生を防ぐことができる。
【0075】また、本発明によれば、ヒートローラの加
圧ローラと反対側にリフレクターを備えたことによっ
て、反対側に放射する熱を反射して加圧ローラ側を効率
的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の定着用ヒートローラを示す一部破断側
面図である。
【図2】本発明の定着装置を示す断面図である。
【図3】(a)(b)は本発明の加熱用ヒータを示す斜
視図である。
【図4】定着用ヒートローラにおける再加熱回数と抵抗
変化率の関係を示すグラフであり、(a)は本発明実施
例(b)は比較例である。
【図5】本発明の定着用ヒートローラにおける、発熱抵
抗体層中の導電材料の含有量と比抵抗との関係を示すグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−66687(JP,A) 特開 平4−96201(JP,A) 特開 昭63−158582(JP,A) 特開 昭57−161768(JP,A) 特開 平5−188805(JP,A) 特開 平6−256037(JP,A) 特開 昭52−74890(JP,A) 特開 平7−94260(JP,A) 特開 昭62−55805(JP,A) 特開 平8−138835(JP,A) 実開 昭49−101327(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G03G 13/20 G03G 15/20 H05B 3/00 - 3/38

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属体の表面に、有機材料からなる絶縁層
    を介して、結晶化ガラスと5〜40重量%の導電材料と
    を混合してなる発熱抵抗体を備え、上記結晶化ガラスは
    50重量%以上のPbOを含み、上記導電材料はAgO
    を含むことを特徴とする加熱用ヒータ。
  2. 【請求項2】金属パイプの表面に、有機樹脂からなる絶
    縁層を介して、結晶化ガラスと5〜40重量%の導電材
    料とを混合してなる発熱抵抗体を備え、上記結晶化ガラ
    スは50重量%以上のPbOを含み、上記導電材料はA
    gOを含むことを特徴とする定着用ヒートローラ。
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