JP3243240B2 - 優れた磁場遮蔽特性を有する薄い冷間圧延内部シールド鋼板を製造する方法 - Google Patents

優れた磁場遮蔽特性を有する薄い冷間圧延内部シールド鋼板を製造する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラウン管に使用
される薄い冷間圧延内部シールド鋼板の製造方法に関す
る。より具体的には、本発明は、優れた磁気特性を有す
る内部シールド鋼板を高価な合金元素を添加せずに、ま
たOCA(open coil annealing)
のような特別な脱炭設備を用いずに製造することができ
る、薄い冷間圧延内部シールド鋼板を製造する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】一般に、外部磁場、地球磁場等のような
磁場を遮蔽することができる材料は磁気シールド材と呼
ばれる。磁気シールド材の一例としては、図1に示すよ
うに陰極線管10内に装備された内部シールド材11が
ある。地球磁場等のような外部磁場が、陰極線管10の
中に侵入すれば、電子ビーム13は進行経路から逸れ、
その結果、電子ビームはシャドーマスク15を通過した
後に適切な画素に到達することができなくなる。その結
果として、スクリーン上で色の広がりが生じ、画質を悪
化させるようになるため、電子ビームの漂遊を防止する
のに外部磁場を遮蔽する必要がある。内部シールド材
は、正にこの目的に用いられる。図1では、参照記号1
4はフレームを示し、16は、蛍光面を示す。
【0003】内部シールド材のための冷間圧延鋼板は、
大きく軟質材料と硬質材料とに分類される。すなわち、
内部シールド材製造方法において、曲げ加工だけが行わ
れる場合と、深絞り加工だけが行われる場合とがある。
曲げ加工が行われる場合は、変形量があまり多くなく、
従って成形性はあまり高く要求されないため、冷間圧延
鋼板は再結晶焼鈍しを行わずに使用される。この材料は
「硬質材料」と呼ばれる。硬質材料の場合、冷間圧延鋼
板が曲げられ、黒化工程の間に再結晶を起こさせること
によって、磁気特性を確保する。
【0004】これに対して深絞り加工が行われる場合
は、かなりの変形量となるため、成形性が優れていなけ
ればならない。この事実から、成形性を向上させるため
に再結晶焼鈍しが行われる。しかしながら軟質材料の場
合、再結晶焼鈍しを実施するため、成形性は優れている
が、工程段階の追加に製造コストの増加が伴うという不
利益がある。
【0005】軟質及び硬質の冷間圧延内部シールド鋼板
に要求される最も重要な特性は、磁場遮蔽特性である。
この特性は、透磁率(μ)及び保磁力(Hc)によって
決められる。磁場遮蔽能力が保証されるようにするなら
ば、低不純物含有量を有する高純度鋼、及び低レベルの
非金属含有物を有する高清浄鋼が要求される。さらに、
製造工程中に、結晶粒度は粗くさせねばならない。上記
要件を満たす従来技術には、(1)脱炭焼鈍し法、
(2)低温熱間圧延法、(3)歪取焼鈍し法がある。
【0006】(1)脱炭焼鈍し法は、特開昭62−28
0329号公報に記載されている。この技術では、低い
スラブ再加熱温度を取り入れることによって熱間圧延を
行うために、0.02重量%以下の炭素含有量を有する
鋼が使用される。次に、第一冷間圧延が60%以上の圧
下率(reduction ratio)で行われ、次
いで炭素含有量を0.003重量%以下に下げるため
に、脱炭焼鈍しが行われる。その後、第二冷間圧延が6
0%以下の圧下率で行われ、次に650℃以上の温度で
最終焼鈍しが行われる。
【0007】この方法では、第一冷間圧延後、炭素含有
量を下げるために脱炭が行われ、要求される特性を満た
すようになる。しかしながら、この方法ではOCAのよ
うな特別な脱炭設備が必要とされ、これは不都合であ
る。
【0008】(2)脱炭方法の上記問題を解決するため
に、特開平2−166230号公報は低温熱間圧延方法
を開示している。この技術では、0.005重量%の炭
素含有量を有する鋼に0.005〜0.08重量%のチ
タンが添加され、次いで、低温熱間圧延が行われる。次
に冷間圧延が行われ、それから620℃以上の温度で焼
鈍しが行われる。
【0009】この技術では一段階の冷間圧延が行われる
という利点がある。しかしながら、冷間圧延圧下率が非
常に高く、その結果、最終産物の結晶粒度が非常に微細
になるため、磁気特性は優れていない。すなわち、実施
例に記載されているように、保磁力が1.75Oeより
大きくなり、従って優れた磁気特性を有する鋼板は得ら
れない。さらに、高価な元素のチタンを添加し、熱間圧
延温度が通常の熱間圧延温度(720〜800℃)より
低いので、この方法を連続熱間圧延工程に適用すること
は容易でない。
【0010】(3)上記問題を解決するために、韓国特
許出願第97−714422号は歪取焼鈍し法を提案し
ている。この技術では、冷間圧延と再結晶焼鈍しが行わ
れ、次いでスキン・パスが行われる。次に、660〜7
20℃の温度で、歪取焼鈍しが行われる。
【0011】この方法では、一段階の冷間圧延にもかか
わらず、粗い結晶粒度が得られるため、優れた磁気特性
を有する冷間圧延鋼板を製造することができる。しかし
ながら、歪取焼鈍しを行うとき焼鈍し温度が比較的高い
ため、バッチ焼鈍しの間にスティッキング現象が起こる
かもしれない。
【0012】一回冷間圧延法の問題を解決するために、
特開昭60−255924号公報は冷間圧延を二回ある
いはそれ以上行う方法を提案している。この方法では、
熱間圧延及び第一冷間圧延を行うために、0.08重量
%の炭素含有量を有する鋼が使用される。次いで、0.
01重量%以下の炭素含有量を有する再結晶産物を作り
出すために脱炭焼鈍しが行われる。その後、第二冷間圧
延が5〜17%の圧下率で行われ、次に、第二焼鈍しが
680〜800℃で行われる。それから最後に、第三焼
鈍しが50%以上の圧下率で行われる。
【0013】この技術では、磁気特性が優れているが、
三段階の冷間圧延、及び二段階の脱炭焼鈍しと再結晶焼
鈍しを行わなければならず、その結果、この複雑な方法
は製造コストの増加をもたらす。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術にお
ける上記不利益を克服することを目的とするものであ
る。従って、本発明の目的は、冷間圧延内部シールド鋼
板の製造方法を提供することにあり、この方法では、高
価な合金元素を添加せずに、またOCAのような特別な
脱炭設備を用いずに、二段階の冷間圧延を行うことによ
って優れた磁気特性を有する鋼板を製造することにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、優れた磁場遮蔽特性を有する薄い
冷間圧延内部シールド鋼板を製造する方法において、
0.0025重量%以下の炭素、0.05〜0.25重
量%のマンガン、0.05〜0.15重量%のシリコ
ン、0.015重量%以下のアルミニウム、残部は鉄と
他の不純物元素から構成される鋼スラブを準備する段
階、910℃以上の温度で該鋼スラブに熱間圧延を行う
段階、第一冷間圧延を行う段階、再結晶温度より高い温
度で第一焼鈍しを行う段階、及び25〜45%の圧下率
で第二冷間圧延を行う段階を含む、薄い冷間圧延内部シ
ールド鋼板の製造方法である(請求項1)。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の上記の目的及び他の利点
は、添付図面を参照して本発明の好ましい実施態様を詳
細に記載することにより、より明らかになるであろう。
本発明は、優れた磁気特性を有する冷間圧延内部シール
ド鋼板を、高価な合金元素を一切添加せずに、またOC
Aのような特別な脱炭設備を用いずに、二段階の冷間圧
延を行うことによって製造することができるという特徴
を有する。これは、製造条件と本発明の組成方式とを、
組織的に組み合わせることによって実現される。従っ
て、本発明は鋼組成と製造条件とを区別して記載する。
【0017】まず、本発明による鋼組成を記載する。炭
素(C)は鋼組成の最も重要な元素の一つである。炭素
含有量が増加するにつれ、透磁率は減少し、磁気時効の
ため磁気劣化が生じる。従って、炭素含有量が低くなる
につれて有益なのだが、本発明で炭素含有量は0.00
25重量%に制限するのは、これが産業上大量生産の可
能な限度だからである。
【0018】マンガン(Mn)は、鋼に不可避的に含有
する硫黄によって引き起こされる、赤熱脆さを防止する
ために添加される。一般に、マンガンは0.05重量%
以上の量で添加される必要がある。しかしながら、マン
ガン含有量が上がれば、透磁率が低下し、保磁力は上昇
するため、磁気特性は劣化する。従って、その上限は
0.25重量%にすべきである。
【0019】アルミニウム(Al)は脱酸の目的で添加
される。さらに、アルミニウムは窒素と反応して、結晶
粒度を微細にする窒化アルミニウム(AlN)を形成す
る。従って、本発明のように磁場遮蔽効果が優れていれ
ば、アルミニウム含有量は制限される必要がある。よっ
て、アルミニウム含有量は0.015重量%以下にすべ
きである。
【0020】シリコン(Si)もまた脱酸剤として添加
され、アルミニウム含有量は制限されるならば、脱酸は
シリコンで行わなければならない。さらに、シリコンが
少量添加されれば、透磁率が向上するため、シリコン含
有量の下限は0.05重量%にすべきである。しかし、
添加量が過度に多くなれば、黒色酸化膜の接着性を悪化
させるので、その上限は0.15重量%にすべきであ
る。
【0021】上記元素のほかに、硫黄(S)、りん
(P)のような不可避元素が鋼に含有し、これらの不可
避元素は通常の処理しやすい範囲に制限されるべきであ
る。
【0022】ここで、製造条件を記載する。鋼スラブ
は、上記鋼を用いて、そして連続鋳造工程あるいはイン
ゴット鋳造工程を適用して製造される。これは図2を参
照して詳細に記載する。
【0023】鋼スラブは再加熱後、熱間圧延を施され
る。この条件下で、熱間圧延は910℃以上の温度で仕
上られる。この理由は次の通りである。すなわち、その
温度がArより低ければ、相変態のためフェライト
が成形され、その結果、圧延の間に型や厚さを容易に制
御することができなくなる。
【0024】熱間圧延鋼板は、酸洗及び冷間圧延が施さ
れ、第一焼鈍しが再結晶温度より高い温度で行われる。
本発明者等による調査結果によれば、再結晶温度は焼鈍
し方法に従って変化する。連続焼鈍しの場合は、約61
0℃であるが、バッチ焼鈍しの場合は、約540℃であ
る。
【0025】第一焼鈍し後、第二冷間圧延が行われる。
本発明は、この条件下で冷間圧延圧下率が25〜45%
の範囲に制御されていることを特徴とする。冷間圧延圧
下率が低すぎれば、黒化処理の間に再結晶が起こらず、
適度な磁気特性を確保することが難しくなる。一方、冷
間圧延圧下率が45%を超えれば、結晶粒度が微細にな
り過ぎるため、磁気特性が劣化する。ところで、黒化処
理は通常の条件で行われるのだが、すなわち熱処理は5
70〜600℃の温度で10〜20分間行われる。
【0026】第二冷間圧延を施された産物は、内部シー
ルド鋼板として使用することができる。この場合、再結
晶は内部シールド成形段階に至るまで起こらず、従って
曲げ工程が成形工程として適している。深絞りを行われ
なければならない場合は、第二冷間圧延後に再結晶焼鈍
しを行わねばならない。この場合もまた、再結晶温度が
焼鈍し方法に従って変化する。すなわち、連続焼鈍しの
場合は、約640℃であるが、バッチ焼鈍しの場合は、
約560℃である。
【0027】
【実施例】ここで、本発明を実施例に基づいて記載す
る。 (実施例1)表1の組成の鋼を溶融し、表2に明示した
条件で冷間圧延鋼板に製造した。これらの特性を評価
し、その結果を下記表2に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】上記表2から判るように、製造条件が本発
明の範囲内に入るけれども、化学組成によって特性に大
きな差異があった。まず、比較鋼Aの場合、炭素含有量
が非常に高いため、磁気特性が著しく劣化した。これ
は、添加された炭素が炭化物を形成し、磁気特性を悪化
させるようになったという事実のためである。
【0031】比較鋼Bの場合、炭素含有量は低かった
が、アルミニウム含有量が高かったため、アルミニウム
が鋼の窒素と反応して微細な窒化アルミニウムの析出物
を形成し、結果として結晶粒度を粗くさせることができ
なかった。
【0032】比較鋼Cの場合、磁気特性は優れていた
が、黒化処理が施された被膜は接着性が低かった。従っ
て、内部シールド材が、高真空陰極線管に装備されると
き、黒化処理が施された被膜はばらばらに剥離し、電子
ビームの進行経路を妨げるようになる。従って、これら
全てが適切な化学組成を有するとは言えない。
【0033】これに対して、シリコン含有量を比較鋼C
と比べて減少させた本発明鋼Dの場合、優れた磁気特性
が維持され、さらに黒化処理が施された被膜の接着性は
優れていた。従って、本発明鋼Dは適切な化学組成を有
することが言える。
【0034】(実施例2)表3の化学組成を有する鋼を
表4の条件で製造した。それから、黒化処理が、580
℃の温度で10分間、鋼を熱処理することで行われた。
そのとき、磁気特性が調べられ、調べた結果を表4に示
した。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】上記表4から判るように、磁気特性が優れ
ていた第二冷間圧延圧下率は、(保磁力が1.30Oe
以下であり、最大透磁率が4000gauss以上であ
るという基準に基づいた)25〜40%の範囲と一致し
ていた。優れた磁気特性が冷間圧延圧下率の特定の範囲
でだけ得られたのは、次のように考えられた。
【0038】すなわち、第二冷間圧延圧下率が低すぎれ
ば、黒化処理の間に再結晶が十分に起こることができな
いため、冷間圧延の間にかかった歪エネルギーが、完全
には元に戻ることができず、その結果、磁気特性が劣化
してしまう。一方、第二冷間圧延圧下率が高すぎれば、
たとえ再結晶が起こっても結晶粒度が微細になるため、
磁気特性が悪化してしまう。
【0039】上記方法で製造された冷間圧延内部シール
ド鋼板は、2〜4%の伸びを示したが、これはプレス加
工が行われたときに再結晶が起こらなかったからであ
る。従って、この鋼板は深絞り等には適さないが、曲げ
成形内部シールド鋼板として使用できる。
【0040】(実施例3)本発明材料1、2、及び3が
表4に明示された条件で製造され、次いで再結晶焼鈍し
及び黒化処理が行われた。それから機械的性質及び磁気
特性が測定され、その測定結果を下記表5に示した。
【0041】
【表5】
【0042】表5に示すように、再結晶焼鈍しのために
磁気特性はあまり改善されなかったが、機械的性質、特
に伸びが大いに改善されたので、40%以上の伸びが得
られた。この伸びのレベルで深絞りを行っても問題がな
いことが実際に確かめられた。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
優れた磁気特性を有する冷間圧延内部シールド鋼板を、
二段階の冷間圧延だけを行うが、脱炭焼鈍しは行わずに
製造することができる。従って、従来の方法と比較して
経費が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】陰極線管の構造を示す概略図である。
【図2】本発明による冷間圧延内部シールド鋼板の製造
工程を例示する。
【符号の説明】
10…陰極線管、 11…内部シールド材、 12…電
子銃、13…電子ビーム、 14…フレーム、 15…
シャドーマスク、16…蛍光面。
フロントページの続き (72)発明者 キム ギョスン 大韓民国、キョンサンブック−ド、ポー ハング−シ、ナン−ク、コードン−ド ン、1 ポーハング アイアン アンド スティール シーオー.,エルティデ ィ.内 (72)発明者 リー チャン−ホーン 大韓民国、キョンサンブック−ド、ポー ハング−シ、ナン−ク、コードン−ド ン、1 ポーハング アイアン アンド スティール シーオー.,エルティデ ィ.内 (72)発明者 フー スン−ユイ 大韓民国、キョンサンブック−ド、ポー ハング−シ、ナン−ク、ドンチョン−ド ン、5 ポーハング アイアン アンド スティール シーオー.,エルティデ ィ.内 (72)発明者 キム ボーン−ジョーン 大韓民国、キョンサンブック−ド、ポー ハング−シ、ナン−ク、ドンチョン−ド ン、5 ポーハング アイアン アンド スティール シーオー.,エルティデ ィ.内 (56)参考文献 特開 昭60−255924(JP,A) 特開 平5−9665(JP,A) 特公 平8−6134(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 - 9/48 C22C 38/00 - 38/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 優れた磁場遮蔽特性を有する薄い冷間圧
    延内部シールド鋼板を製造する方法において、 0.0025重量%以下の炭素、0.05〜0.25重
    量%のマンガン、0.05〜0.15重量%のシリコ
    ン、0.015重量%以下のアルミニウム、残部は鉄と
    他の不純物元素から構成される鋼スラブを準備する段
    階、 910℃以上の温度で、該鋼スラブに熱間圧延を行う段
    階、 第一冷間圧延を行う段階、 再結晶温度より高い温度で、第一焼鈍しを行う段階、 及び25〜45%の圧下率で、第二冷間圧延を行う段階
    から成る、薄い冷間圧延内部シールド鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法において、二段階
    の冷間圧延の工程を行って製造された該冷間圧延鋼板
    が、再結晶温度より高い温度で、第二焼鈍しを施される
    薄い冷間圧延内部シールド鋼板の製造方法。
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