JP3240873B2 - 低温焼成セラミック誘電体及び低温焼成セラミック多層回路基板 - Google Patents

低温焼成セラミック誘電体及び低温焼成セラミック多層回路基板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、1000℃以下で焼成
された低温焼成セラミック誘電体及び低温焼成セラミッ
ク多層回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、セラミック基板として最も良
く使用されているアルミナ基板は、1500℃以上の高
温で還元雰囲気中で焼成する必要があり、また、導体材
料としてMo,W等のシート抵抗値の高い高融点金属を
使用せざるを得ない等の欠点があることから、近年、こ
れらの欠点を解決するために、1000℃以下の低温度
で酸化雰囲気(空気)中で焼成できる低温焼成セラミッ
ク基板が開発されている。この低温焼成セラミック基板
は、多層化することによって、基板内層にコンデンサ、
抵抗体等を内蔵させることができ、一層の高密度実装化
・小型化が可能となる利点がある。
【0003】このような低温焼成セラミック多層回路基
板にコンデンサを内蔵させる場合、コンデンサの容量を
大きくするために電極間の誘電体層の誘電率を高める必
要があることから、例えば特開平1−166599号公
報や特開昭62−265795号公報等に示すように、
酸化鉛を主成分とする1000℃以下で焼成可能なPb
系ペロブスカイト型の強誘電体セラミック材料で作った
グリーンシートをコンデンサの誘電体層として基板内層
に積層して同時焼成するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、地球環境保護、
低公害性の社会的要求が益々強まり、有害物質である鉛
の使用もできるだけ廃止することが産業界全体の重要な
技術的課題となっている。従って、上述したように、内
層コンデンサの誘電体層として、酸化鉛を主成分とする
材料を使用することは、鉛不使用という社会的要求に反
する。しかも、Pb系ペロブスカイト型の強誘電体セラ
ミック材料は、製造コストも高くつくという欠点もあ
る。
【0005】本発明はこのような事情を考慮してなされ
たものであり、従ってその目的は、鉛不使用という社会
的要求を満たしながら、製造工程を簡単化できて、低コ
スト化の要求も満たすことができる低温焼成セラミック
誘電体及び低温焼成セラミック多層回路基板を提供する
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の低温焼成セラミック誘電体は、CaO−S
iO2 −Al2 3 −B2 3 系ガラス粉末50重量%
〜65重量%とAl23 粉末50重量%〜35重量%
との混合物からなる低温焼成セラミック中に、誘電率を
高めるための金属粉体が5重量%〜35重量%混入され
た構成となっている(請求項1)。
【0007】また、低温焼成セラミック多層回路基板に
コンデンサを内蔵させる場合には、CaO−SiO2
Al2 3 −B2 3 系ガラス粉末50重量%〜65重
量%とAl2 3 粉末50重量%〜35重量%との混合
物からなる低温焼成セラミックで形成した絶縁体層と、
該低温焼成セラミックに誘電率を高めるための金属粉体
を5重量%〜35重量%混入させてなる内層コンデンサ
を形成する誘電体層とを1000℃以下で同時焼成した
構成とすると良い(請求項2)。
【0008】
【作用】本発明の低温焼成セラミック誘電体は、CaO
−SiO2 −Al2 3 −B23 系ガラス粉末50重
量%〜65重量%とAl2 3 粉末50重量%〜35重
量%との混合物からなる低温焼成セラミック中に金属粉
体を5重量%〜35重量%混入することで、誘電率を高
める(請求項1)。この誘電体は1000℃以下で低温
焼成するため、金属粉体として例えばAg、Pd、A
u、Pt、Cu、Ag−Pd合金等、比較的低融点の電
気的特性の良い金属を使用することができる。この場
合、金属粉体の混入量が5重量%未満であると誘電率の
上昇が不十分で、35重量%以上であるとショートが発
生する。従って、金属粉体の混入量が5重量%〜35重
量%であれば、ショートが発生しない範囲内で、誘電率
を効果的に高めることができる。
【0009】また、請求項2のように、低温焼成セラミ
ック多層回路基板の内層に、CaO−SiO2 −Al2
3 −B2 3 系ガラス粉末50重量%〜65重量%
Al2 3 粉末50重量%〜35重量%との混合物から
なる低温焼成セラミックで形成した絶縁体層と同じ組成
の絶縁体に誘電率を高めるための金属粉体を5重量%〜
35重量%混入させてなる内層コンデンサを形成する誘
電体層を1000℃以下で同時焼成して、コンデンサを
内蔵する低温焼成セラミック多層回路基板を製造する
と、誘電体層とそれ以外の絶縁体層との組成の相違が金
属粉体の混入の有無のみとなり、製造が極めて容易であ
る。しかも、誘電体層と絶縁体層とは、金属粉体の混入
の有無を除き、同じ組成の絶縁体で形成されているた
め、焼成による層間の接合性も良い。
【0010】
【実施例】まず、図1に基づいて、低温焼成セラミック
多層回路基板11の構成を説明する。低温焼成セラミッ
ク多層回路基板11は、絶縁体層となる低誘電率グリー
ンシート12と、内層コンデンサ13の誘電体層となる
高誘電率グリーンシート14とを複数枚積層して、10
00℃以下で低温焼成して一体化したものであり、高誘
電率グリーンシート14が内層側に積層されている。低
誘電率グリーンシート12と高誘電率グリーンシート1
4とは、金属粉体の混入の有無を除き、同じ組成であ
り、共にガラス粉末とAl2 3 粉末との混合物を用い
て形成されている。高誘電率グリーンシート14は、例
えばAg、Pd、Au、Pt、Cu、Ag−Pd合金等
の金属粉体を混入して誘電率を高めると共に、薄く成形
して、内層コンデンサ13の容量を増加させている。
【0011】各層のグリーンシート12,14の所定位
置には、0.05〜1.00mmφ程度のビアホール1
5が打ち抜き形成され、層間を電気的に接続できるよう
に、各ビアホール15にAg,Ag−Pd、Au等の導
体ペースト(ビア)16が充填されている。表層及び内
層の各低誘電率グリーンシート12にも、導体パターン
17が導体ペーストでスクリーン印刷されている。一
方、高誘電率グリーンシート14には、内層コンデンサ
13の電極18が上述と同じ導体ペーストでスクリーン
印刷されている。
【0012】次に、上記構成の低温焼成セラミック多層
回路基板11の製造方法を説明する。まず、CaO1
8.2重量%、Al2 3 18.2重量%、SiO2
4.5重量%及びB2 3 9.1重量%を含む混合物を
1450℃で溶融してガラス化した後、水中で急冷しこ
れを粉砕してCaO−SiO2 −Al2 3 −B2 3
系ガラス粉末を作製する。このガラス粉末60重量%と
アルミナ粉末40重量%とを混合した低温焼成セラミッ
ク原料に溶剤(例えばトルエン、キシレン、ブタノー
ル)、バインダー(例えばアクリル樹脂)及び可塑性
(例えばDOP)を加え、充分混練してスラリーを作製
し、通常のドクターブレード法を用いて低誘電率グリー
ンシート12を作製する。
【0013】一方、高誘電率グリーンシート14を作製
するために、上述と同じ方法で作った低温焼成セラミッ
ク原料にAg、Pd、Au、Pt、Cu、Ag−Pd合
金等の金属材料を一種又は複数種混合して、ボールミル
にて平均粒径DSO=1.0〜3.0μmになるように粉
砕する。この混合粉体に、溶剤(例えばトルエン、キシ
レン、ブタノール)、バインダー(例えばアクリル樹
脂)及び可塑性(例えばDOP)を加え、充分混練して
低粘度のスラリーを作製し、通常のドクターブレード法
を用いて、例えば厚さ10〜80μm程度の薄い高誘電
率グリーンシート14を作製する。
【0014】この後、打抜き型やパンチングマシーン等
を用いて、各グリーンシート12,14を例えば30m
m角に切断すると共に、所定位置に例えば0.3mmφ
のビアホール15を打ち抜き形成する。次いで、Ag、
Ag−Pd、Au、Cu等の導体ペースト16を上記ビ
アホール15に充填し、表層及び内層の各低誘電率グリ
ーンシート12には、配線用の導体パターン17をスク
リーン印刷し、高誘電率グリーンシート14には、内層
コンデンサ13の電極18をスクリーン印刷する。これ
ら各グリーンシート12,14を積層し、この積層体を
例えば80〜150℃、50〜250kg/cm2 の条
件で熱圧着して一体化する。この後、Ag、Ag−P
d、Au等の酸化焼成の場合には、この積層体を通常の
電気式連続ベルト炉を使用して、800〜1000℃
(好ましくは900℃)、20分ホールドの条件で酸化
雰囲気(空気)中で焼成することで、内層コンデンサ1
3を内蔵した低温焼成セラミック多層回路基板11を作
製する。尚、上記焼成の過程で、有機バインダーが分
解、飛散する温度までは酸化熱処理した後、還元焼成し
ても良い。また、表層導体については必ずしも同時焼成
する必要はなく、後焼成するようにしても良い。
【0015】本発明者は、内層コンデンサ13の誘電体
層となる高誘電率グリーンシート14に混合する金属粉
体としてAg−Pd合金(Ag80%−Pd20%)を
用いた場合と、Agを用いた場合について、金属混合量
と誘電率εとの関係を実験で調べたので、その試験結果
を下記の表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】この試験結果によれば、低温焼成セラミッ
ク原料に金属を混合しない場合(試験No.7,10)
は、誘電率εが7.8であり、金属混合量が5重量%未
満では誘電率εがほとんど上昇せず、金属添加の効果が
十分でなかったが、金属混合量が増えるに従って、誘電
率εが上昇し、金属を30〜35重量%程度混合すると
(試験No.3,4,9)、誘電率εを20前後まで上
昇させることができる。但し、金属混合量が40重量%
より多くなると(試験No.5,6)、ショートが発生
するため、ショートが発生しない金属の最大混合量は3
5重量%程度であった。
【0018】このように、低温焼成セラミックに金属粉
体を混合するだけで、極めて簡単に誘電体層を作ること
ができるため、従来の酸化鉛を主成分とするPb系ペロ
ブスカイト型の強誘電体セラミック材料と比較して、製
造が極めて容易であり、低コスト化の要求を満たすこと
ができる。この場合、1000℃以下で低温焼成するた
め、酸化雰囲気(空気)中で焼成可能であると共に、金
属粉体として例えばAg、Pd、Au、Pt、Cu、A
g−Pd合金等、比較的低融点の電気的特性の良い金属
を使用することができる利点もある。しかも、誘電体層
に全く酸化鉛を含まないため、鉛不使用という社会的要
求も満たすことができ、地球環境保護、低公害化にも貢
献することができる。
【0019】更に、上記実施例では、低誘電率グリーン
シート12と高誘電率グリーンシート14とは、金属粉
体の混入の有無を除き、同じ組成の低温焼成セラミック
原料を用いるようにしたので、低誘電率グリーンシート
12の作製が一層容易になると共に、焼成による低誘電
率グリーンシート12と高誘電率グリーンシート14と
の間の接合性も良くなる利点がある。
【0020】
【0021】また、上記実施例では、低誘電率グリーン
シート12と高誘電率グリーンシート14とは、共に、
CaO−SiO2 −Al2 3 −B2 3 系ガラス粉末
とAl2 3 粉末との混合物からなる低温焼成セラミッ
ク原料を用いているが、この場合の好ましい組成は、C
aO10〜55重量%、SiO2 45〜70重量%、A
2 3 0〜30重量%、B2 3 5〜20重量%から
なるガラス粉末65〜50重量%、Al2 3 粉末50
〜35重量%である。このような組成のグリーンシート
12,14を用いると、焼成過程においてアノーサイト
若しくはアノーサイト+ケイ酸カルシウムの部分結晶化
を起こさせて、酸化雰囲気(空気)中で800〜100
0℃の低温焼成を可能にするだけでなく、焼成過程にお
ける微細パターンのずれを上述した部分結晶化により抑
えることができて、ファインパターンの形成が容易であ
る。また、焼成時に30〜50℃/分という早いスピー
ドで昇温しても、730〜850℃までガラス層が全く
軟化せず、収縮もしない多孔質体を維持するため、クラ
ックが入ったり、カーボンをガラス層に封じ込めること
無く、バインダーを容易に除去でき、更に、800〜1
000℃の焼成温度付近で急速に収縮焼結するため、大
型の緻密なセラミック多層回路基板を短時間で焼成可能
である。
【0022】
【0023】尚、図1の積層例では、高誘電率グリーン
シート14を2枚積層したが、1枚でも良く、勿論、3
枚以上積層して内層コンデンサ13の容量を増大させる
ようにしても良い。
【0024】また、低温焼成セラミックに混入する金属
粉体は、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ag−Pd合
金等の比較的低融点の金属に限定されず、高融点金属
等、他の金属を用いても良い。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の低温焼成セラミック誘電体によれば、CaO−SiO
2 −Al2 3 −B2 3 系ガラス粉末50重量%〜6
5重量%とAl2 3 粉末50重量%〜35重量%との
混合物からなる低温焼成セラミックに、誘電率を高める
ための金属粉体を5重量%〜35重量%混合するだけ
で、1000℃以下で極めて簡単に誘電体を焼成するこ
とができるため、製造工程を簡単化できて、低コスト化
の要求を満たすことができると共に、鉛不使用という社
会的要求も満たすことができ、地球環境保護、低公害化
にも貢献することができる(請求項1)。
【0026】更に、本発明の低温焼成セラミック多層回
路基板は、内層にCaO−SiO2−Al2 3 −B2
3 系ガラス粉末50重量%〜65重量%とAl2 3
粉末50重量%〜35重量%との混合物からなる低温焼
成セラミックで形成した絶縁体層と同じ組成の絶縁体に
誘電率を高めるための金属粉体を5重量%〜35重量%
混入させてなる内層コンデンサを形成する誘電体層を1
000℃以下で同時焼成するようにしたので、誘電体層
とそれ以外の絶縁体層との組成の相違が金属粉体の混入
の有無のみとなり、従来に比して、コンデンサ内蔵セラ
ミック多層回路基板の製造を極めて容易に行い得ると共
に、焼成による層間の接合性も向上させることができる
(請求項2)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す低温焼成セラミック多
層回路基板の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
11…低温焼成セラミック多層回路基板、12…低誘電
率グリーンシート(低温焼成セラミック絶縁体層)、1
3…内層コンデンサ、14…高誘電率グリーンシート
(低温焼成セラミック誘電体層)、15…ビアホール、
16…ビア、17…導体パターン、18…電極。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 絹夫 山口県美祢市大嶺町東分字岩倉2701番1 株式会社住友金属セラミックス内 (56)参考文献 特開 平3−151613(JP,A) 特開 昭62−265795(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 4/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1000℃以下で焼成された低温焼成セ
    ラミックからなる低温焼成セラミック誘電体であって、
    前記低温焼成セラミックは、CaO−SiO2 −Al2
    3 −B2 3 系ガラス粉末50重量%〜65重量%
    Al2 3 粉末50重量%〜35重量%との混合物から
    なり、該低温焼成セラミック中に、誘電率を高めるため
    の金属粉体が5重量%〜35重量%混入されていること
    を特徴とする低温焼成セラミック誘電体。
  2. 【請求項2】 CaO−SiO2 −Al2 3 −B2
    3 系ガラス粉末50重量%〜65重量%とAl2 3
    50重量%〜35重量%との混合物からなる低温焼成
    セラミックで形成した絶縁体層と、該低温焼成セラミッ
    クに誘電率を高めるための金属粉体を5重量%〜35重
    量%混入させてなる内層コンデンサを形成する誘電体層
    が1000℃以下で同時焼成されていることを特徴とす
    る低温焼成セラミック多層回路基板。
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