JP3229435B2 - 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法

Info

Publication number
JP3229435B2
JP3229435B2 JP12489393A JP12489393A JP3229435B2 JP 3229435 B2 JP3229435 B2 JP 3229435B2 JP 12489393 A JP12489393 A JP 12489393A JP 12489393 A JP12489393 A JP 12489393A JP 3229435 B2 JP3229435 B2 JP 3229435B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnet
binder
sintered
injection molding
alloy powder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP12489393A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06316745A (ja
Inventor
治 山下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Metals Ltd
Original Assignee
Sumitomo Special Metals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Special Metals Co Ltd filed Critical Sumitomo Special Metals Co Ltd
Priority to JP12489393A priority Critical patent/JP3229435B2/ja
Priority to DE1993614098 priority patent/DE69314098T2/de
Priority to EP19930304944 priority patent/EP0576282B1/en
Publication of JPH06316745A publication Critical patent/JPH06316745A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3229435B2 publication Critical patent/JP3229435B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Hard Magnetic Materials (AREA)
  • Manufacturing Cores, Coils, And Magnets (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、射出成形によるR−
Fe−B系焼結異方性永久磁石を製造する方法に係り、
微細結晶化したR−Fe−B系合金微粉末と所定温度に
よりゾル・ゲル反応を起こすバインダーとしてメチルセ
ルロースおよび/または寒天と水との混練物を射出成形
し、得られた成形体を冷凍真空乾燥により脱水処理した
後、脱バインダー処理し、焼結することにより、焼結体
中の炭素量と酸素量の残留を抑制し、磁気特性の劣化防
止とともに、射出成形時の成形性を向上させ、三次元的
に複雑な形状の焼結磁石が得られる射出成形による焼結
異方性磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、家電製品を初めコンピュータの周
辺機器や自動車等用途に用いられる小型モーターやアク
チュエータなどには、小型化、軽量化とともに高性能化
が求められており、その磁石材料も小型化、軽量化、薄
肉化からさらに三次元的に複雑な形状製品が要求されて
いる。
【0003】複雑な形状の高性能永久磁石を得る方法と
して、Sm−Co系磁性材またはR−Fe−B系磁性材
を用いて樹脂バインダー等を混練して機械的に成形する
希土類系ボンド磁石の製造方法、あるいはR−Fe−B
系合金鋳塊を粉砕して得られた合金粉末と樹脂バインダ
ーを混練して射出成形し、脱バインダー後に焼結するR
−Fe−B系焼結永久磁石の製造方法(特開昭61−2
20315号公報、特開昭64−28302号公報、特
開昭64−28303号公報)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般に、希土類元素
(R)を含有する金属間化合物はO、H、C、N等の元
素と反応し易く、当該系磁性粉と有機物バインダー等の
混練時、あるいは脱バインダー時に磁性粉中のR成分と
バインダーが反応し、磁気特性が劣化したり、特に射出
成形時の成形性が非常に悪くなり、複雑な形状が得難い
問題があった。
【0005】従来の射出成形法で一般的に使用されてい
る熱可塑性のバインダー(アクリル系、ワックス系、ポ
リエチレン、ポリスチレン等のポリマー)をR−Fe−
B合金粉末に添加混合した場合、一般的に炭素と酸素の
含有量がRとの反応により増加するために、射出成形、
脱脂した後、焼結後でもかなりの炭素と酸素が残留し、
特に永久磁石の場合磁気特性の劣化を招き、射出成形法
による複雑形状品の磁石部品への応用の妨げになってい
る。
【0006】そこで、発明者は、従来のパラフィン系ワ
ックスや熱可塑性樹脂からなるバインダーに代えて、メ
チルセルロースと水あるいはメチルセルロースと寒天と
水を主成分とするバインダーを用い、該バインダーのゾ
ル・ゲル反応を利用して射出成形することにより、バイ
ンダーとR成分との反応を抑制し、残留酸素、炭素量を
低減したR−Fe−B系焼結磁石の製造方法(特願平4
−191727号、特願平4−191728号)を提案
した。
【0007】かかる方法にて総バインダー中の炭素量を
低減することはできたが、該方法に用いるバインダーは
その大部分が水であるために、R−Fe−B合金粉末の
R成分と水との反応により、合金粉末中の酸素量が増加
し、得られる焼結体の磁気特性を劣化させる問題があっ
た。
【0008】また、上記方法においては、バインダーの
大部分が水であるために、例えば成形体を大気中あるい
は真空中で約100℃まで加熱するなどの脱水処理が必
要となり、該脱水処理において水の急激な気化蒸発の際
に水分子中の酸素と成形体中のR−Fe−B合金粉末の
R成分とが反応し、上記の問題点と同様に成形体の含有
酸素量を増加させ、得られる焼結体の磁気特性を劣化さ
せる問題があった。
【0009】さらに、上述した脱水処理後に、さらに真
空中で加熱しながら行う脱バインダー処理においても、
バインダー成分を完全に除去することができず、焼結後
の焼結体に若干量の炭素が残留して磁気特性を劣化させ
る問題があった。
【0010】この発明は、射出成形にて成形し、これを
焼結するR−Fe−B系焼結永久磁石の製造方法におい
て、R成分とバインダーとの反応や、炭素および酸素の
残留による磁気特性の劣化を防止し、射出成形性を向上
させて複雑な形状、特に小型製品のR−Fe−B系焼結
磁石が得られる製造方法の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者らは、R−Fe−
B系合金粉末中のR成分とバインダーとの反応を抑制で
き、残留する炭素及び酸素量を低減できる方法を目的に
種々検討した結果、従来の射出成形法で一般的に使用さ
れている熱可塑性のバインダーの代わりに、バインダー
として所定温度によりゾル・ゲル変態を起こすメチルセ
ルロースまたは寒天あるいはそれらを複合したものに水
を添加したものを用い、あるいはさらにR−Fe−B系
合金粉末表面を樹脂被覆した合金粉末を使用して、水と
Rとの反応を抑制し、混練後の合金粉末の酸素量を安定
化させるとともに射出成形時の成形性を向上させ、さら
に射出成形時に金型内でゲル化させて硬化させて所定の
形状に成形した後、成形体を冷凍真空乾燥により脱水処
理することによりR−Fe−B合金粉末のR成分と水と
の反応を抑制して、成形体の含有酸素量をより一層低減
でき、その後、真空中加熱による脱バインダー処理、あ
るいは水素流気中での脱バインダー処理および脱水素処
理の後、焼結することにより、残留酸素量及び炭素量を
大幅に低減させた、優れた磁気特性を有する3次元的に
複雑な形状の焼結磁石が得られることを知見し、この発
明を完成した。
【0012】すなわち、この発明は、R−Fe−B系合
金粉末(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種)
に、バインダーとして所定温度によりゾル・ゲル反応を
起こすメチルセルロースおよび/または寒天と水とを加
えて混練した後、射出成形により成形体となし、該成形
体を冷凍真空乾燥により脱水処理した後、さらに脱バイ
ンダー処理し、焼結することを特徴とする射出成形法に
よるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法である。
【0013】また、この発明は、上記の構成において、
原料微粉末の表面に樹脂を被覆した後、射出成形するこ
とを特徴とする射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁
石の製造方法を提案する。また、この発明は、上記の構
成において、水素流気中で脱バインダー処理し、さらに
脱水素処理後に焼結することを特徴とする射出成形法に
よるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法を提案する。ま
た、この発明は、上記の構成において、バインダーに潤
滑剤としてグリセリン、ステアリン酸、エマルジョンワ
ックス、水溶性アクリル樹脂の少なくとも1種を0.1
〜1.0wt%、水6〜18wt%を添加することを特
徴とする射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製
造方法を提案する。さらに、この発明は、上記のいずれ
の構成においても、焼結体が含有する炭素量を900p
pm以下、酸素量9000ppm以下にすることが可能
な射出成形によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法で
ある。
【0014】R−Fe−B系合金粉末 この発明において、R−Fe−B系合金粉末としては、
R(但しRはYを含む希土類元素のうち少なくとも1
種)8原子%〜30原子%、Fe42原子%〜90原子
%、B2原子%〜28原子%を主成分とする平均粒度1
〜10μmが望ましく、さらに1〜6μmの微粉末が好
ましい。
【0015】希土類元素R(但しRはYを含む希土類元
素のうち少なくとも1種)は、Nd、Pr、Ho、Tb
のうち少なくとも1種、あるいはさらにLa、Sm、C
e、Er、Eu、Pm、Tm、Yb、Yのうち少なくと
も1種を含むものが好ましく、8原子%未満では結晶構
造がαー鉄と同一構造の立方晶組織となるため、高磁気
特性、特に高保磁力が得られず、30原子%を越えると
Rリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)
が低下して、すぐれた特性の永久磁石が得られない。よ
って、Rは8原子%〜30原子%が好ましい範囲であ
る。
【0016】Bは、2原子%未満では菱面体組織とな
り、高い保磁力(iHc)は得られず、28原子%を越
えるとBリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度
(Br)が低下するため、すぐれた永久磁石が得られな
い。よって、Bは2原子%〜28原子%が好ましい範囲
である。
【0017】Feは、42原子%未満では残留磁束密度
(Br)が低下し、90原子%を越えると高い保磁力が
得られないので、Feは42原子%〜90原子%が好ま
しい。また、この発明において、Feの一部をCoで置
換することは、得られる磁石の磁気特性を損うことなく
温度特性を改善することができるが、Co置換量がFe
の50%を越えると、逆に磁気特性が劣化するため好ま
しくない。
【0018】また、下記添加元素のうち少なくとも1種
を添加することは、Fe−B−R系永久磁石に対してそ
の保磁力等を改善あるいは製造性の改善、低価格化に効
果がある。 Ti、Ni、V、Nb、Ta、Cr、M
o、W、Mn、Al、Sb、Ge、Sn、Zr、Bi、
Hf、Cu、Si、S、C、Ca、Mg、P、H、L
i、Na、K、Be、Sr、Br、Ag、Zn、N、
F、Se、Te、Pb。
【0019】この発明において、R−Fe−B系合金粉
末の平均粒度は1〜10μmが好ましく、合金粉末の平
均粒径が1μm未満では合金粉末の表面積が増大するた
め、混練物とするためのバインダー添加量を合金粉末と
の容積比で、1:1.2に増加させる必要があり、射出
成形後の焼結品の焼結密度が95%程度と低下するため
好ましくなく、また、10μmを超える平均粒径では粒
径が大きすぎて焼結密度が95%程度で飽和し、該密度
の向上が望めないため好ましくない。
【0020】また、R−Fe−B系合金粉末として、R
(但しRはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)
12原子%〜25原子%、B4原子%〜10原子%、C
o0.1原子%〜10原子%、Fe68原子%〜80原
子%を主成分とし、R2Fe14B相を主相とする平均粒
径1〜5μmの主成分系合金粉末と、R3Co相を含む
Co又はFeとRとの金属間化合物相に一部R2(Fe
Co)14B相等を含み、R(但しRはYを含む希土類元
素の内少なくとも1種)20原子%〜45原子%、Co
3原子%〜20原子%、B12原子%以下、残部Feと
する平均粒径8〜40μmの液相系化合物粉末を所定の
割合で配合混合した原料を用いることができる。これら
の合金粉末を用い2種類の原料の平均粒度を変えると同
時に、希土類元素の酸化物の発生を見込んで予め過剰の
R成分を添加することにより、過剰の液相系化合物粉末
の添加により焼結時の液相の発現を充分にすることが可
能で、R成分とバインダーとの反応による磁気特性の劣
化を防止することができる。
【0021】上記の配合合金粉末において、主成分系合
金粉末を得るには、Rは、12原子%未満では合金溶製
時に晶出するα−Fe相が増加し好ましくなく、Rが2
5原子%を超えると残留磁束密度(Br)が低下するた
め、Rは12原子%〜25原子%が好ましい。また、B
は、4原子%未満では高い保磁力(iHc)が得られ
ず、10原子%を超えると残留磁束密度(Br)が低下
するため、Bは4原子%〜10原子%が好ましい。主成
分系合金粉末中のCoは、0.1原子%以上含有する
と、原料中の酸素量を低減させる効果がある。またCo
が10原子%を超えると、R2Fe14B相中のFeと置
換されて保磁力を失うために、Coを含有させる場合は
0.1原子%〜10原子%が好ましい。さらに、残部は
Feおよび不可避的不純物からなり、Feは68原子%
未満では相対的に希土類元素がリッチとなり、Rリッチ
相が増加し、80原子%を超えると残留Fe部が増加し
すぎて、相対的に希土類元素が少なくなり、バインダー
との酸化反応により、液相焼結に必要な希土類元素が消
耗しすぎるため、68原子%〜80原子%の範囲が好ま
しい。主成分系合金粉末には、主相となるR2Fe14
相とともに、焼結性の向上及び焼結後の残留磁束密度の
向上のため、4wt%〜20wt%のRリッチ相を含有
させることができる。
【0022】R3Co相を含むCo又はFeとRとの金
属間化合物相(但しCoの1部あるいは大部分をFeに
て置換できる)からなる液相系化合物粉末は、R3Co
相あるいはR3Co相のCoの一部Feで置換された相
とからなり、中心相が、RCo5、R2Co7、RCo3
RCo2、R2Co3、R2Fe17、RFe2、Nd2
17、Nd5Co19、Dy6Fe2、DyFe等、及び前
記金属間化合物相とR2(FeCo)14B、R1.11(F
eCo)44等のいずれかからなる合金粉末である。
【0023】液相系化合物粉末の組成は、前述の如く、
目的組成の希土類元素の種類とその量に応じて、金属間
化合物の含有希土類元素比率を変化させる。しかし、R
が20%原子未満では主成分系原料と配合して磁石を製
造する際に、主成分系のRの一部酸化によるRの消耗分
の補充が充分でなく、焼結時の液相の発現が十分でなく
なる。また45原子%を超えると含有酸素量の増加を招
き好ましくない。また、Coは前記の化合物を形成させ
るためには3原子%以上必要であり、20原子%を超え
ると保磁力が低下するため、3〜20原子%とし、残部
はFeで置換することができる。さらに、Bは12原子
%を超えるとR2(FeCo)14B相以外にB−ric
h相やFe−B化合物等が余剰に存在することとなるの
で好ましくない。さらに、主成分系合金粉末および/ま
たはR3Co相を含むCo又はFeとRとの金属間化合
物相及びR2(FeCo)14B相等からなる液相系化合
物粉末に、Cu、S、Ni、Ti、Si、V、Nb、T
a、Cr、Mo、W、Mn、Al、Sb、Ge、Sn、
Zr、Hf、Ca、Mg、Sr、Ba、Be、のうち少
なくとも1種を添加含有させることにより、得られる永
久磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可
能になる。
【0024】上記の配合合金粉末において、主成分系合
金粉末の平均粒径が1μm未満では合金粉末の表面積が
増大するため、混練物とするためのバインダー添加量を
合金粉末との容積比で、1:1.2に増加させる必要が
あり、射出成形後の焼結品の焼結密度が95%程度と低
下するため好ましくなく、また、5μmを超える平均粒
径では粒径が大きすぎて焼結密度が95%程度で飽和
し、該密度の向上が望めないため、平均粒径は1〜5μ
mの範囲が好ましい。
【0025】一方、液相系化合物粉末の平均粒径は、8
μm未満ではバインダーとの反応が単一組成の合金粉末
(1〜5μmの平均粒径)と同程度であり、主成分系粉
末の添加の効果がほとんど見られない。また合金粉末の
平均粒径が、40μmを超えるとバインダーとの反応は
かなり抑制されるが、逆に焼結時の焼結性が悪化し、焼
結密度が低下すると同時に保磁力が低下するので、液相
系の合金粉末の平均粒径は8〜40μmが好ましい。ま
た、主成分系合金粉末と液相系化合物粉末は、70〜9
9:30〜1の比率で配合することができ、さらに70
〜97:30〜3が好ましく、磁石特性に応じた複数種
組成の合金粉末を得ることができる。
【0026】上述のR−Fe−B系合金粉末の製造方法
としては、溶解・粉化法、超急冷法、直接還元拡散法、
水素含有崩壊法、アトマイズ法などの公知の方法を適宜
選定し、所要平均粒度の合金粉末を得ることができる。
いずれのR−Fe−B系合金粉末を用いても、平均粒度
をそれぞれ好ましい範囲とすることにより、一般的な射
出成形用の遷移金属粉末、例えばFe基合金粉末やCo
基合金粉末等の場合よりも、平均粒径が数分の1から1
0分の1程度となり、該遷移金属粉末を射出成形する際
に用いるバインダーの添加量よりも、大幅にバインダー
の添加量を低減することができる。
【0027】樹脂被覆 上述の合金粉末に樹脂を被覆することは、バインダー混
練後の水とのR元素の反応、成形時のゲル化段階及び射
出成形後の脱水処理時の水とのR元素の反応を抑え、残
留酸素量の安定化及び低減化を図るために有効である。
合金粉末に被覆する樹脂としては、ポリメチルメタクリ
レート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PM
A)などのメタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチ
レン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレ
ン、ポリアクリロニトリルなどの熱可塑性樹脂の単独ま
たは複合したものを用いることが好ましい。
【0028】樹脂の添加量は、合金粉末に対して0.3
0wt%以下が好ましい、これは樹脂の被覆膜厚が50
Å〜200Åに相当し、0.30wt%を超えると被覆
樹脂からの残留酸素量が増加するために好ましくない。
しかし被覆樹脂の炭素は、後述する水素流気中での脱バ
インダー処理によりほぼ完全に除去できるので、被覆樹
脂の添加量を増やしても残留炭素量は増加しない。被覆
の方法は、通称メカノフュージョンシステムあるいはハ
イブリダイゼーションシステムと呼ばれる方法やボール
ミルを用いる方法であり、被覆用樹脂粉末の粒径として
は1000Å〜5000Å位が好ましい。このように樹
脂被覆した合金粉末は、残留酸素量の点で比較的安定で
あるために、射出成形時のリサイクルが可能であるとい
う利点がある。また樹脂被覆した合金粉末では、混練時
に滑剤を添加しなくても射出成形できる利点もある。
【0029】さらに、原料粉末が、主成分系合金粉末
と、R3Co相を含むCo又はFeとRとの金属間化合
物相及びR2(FeCo)14B相等からなる液相系化合
物粉末の場合は、主成分系合金粉末および/または液相
系化合物粉末に上記の樹脂被覆を行うことができ、さら
には主成分系合金粉末に液相系化合物粉末をメカノフュ
ージョンシステムで被覆した後、上記の樹脂被覆を行う
こともでき、上述と同様の作用効果が得られる。
【0030】バインダー成分 この発明において、射出成形用のバインダーには、所定
温度によりゾル・ゲル変態を起こすメチルセルロースま
たは寒天あるいはそれらを複合したものに水を添加した
ものを用いる。バインダーとして、メチルセルロースを
単独で用いる場合の含有量は、0.05wt%未満では
成形時の強度が著しく低下し、また0.50wt%を越
えると、残留炭素量と酸素量が増加して保磁力が下がり
磁気特性が劣化するので、0.05wt%〜0.50w
t%の含有量がこれらの点で好ましい。寒天を単独で用
いる場合の含有量は、0.2wt%未満では成形時の強
度が著しく低下し、また4.0wt%を越えると、残留
炭素量と酸素量が増加して保磁力が下がり、磁気特性が
劣化するので、0.2wt%〜4.0wt%の含有量が
これらの点で好ましい。またメチルセルロースと寒天を
複合して用いる場合は、0.2wt%未満になると成形
時の強度が著しく低下するとともに成形金型と成形体と
の離型性が悪化するため好ましくなく、また、4.0w
t%を超えると焼結後の焼結密度が低下するとともに残
留炭素量と酸素量が増加して得られる磁石の特性が劣化
し好ましくないため、0.2wt%〜4.0wt%が好
ましい。
【0031】この発明において、バインダーとしてメチ
ルセルロースおよび/または寒天とともに水を使用する
ことを特徴とするが、Rとの反応を抑制するために、脱
酸素処理した純水を使用することが望ましい。メチルセ
ルロースを単独で用いる場合の水の含有量は6wt%未
満では成形時の流動性が悪くなり、ショート・ショット
が発生しやすくなり、16wt%を越えると実質総バイ
ンダー量が増加するために、焼結後の焼結密度が低下す
ると同時に残留酸素量が増加し、磁気特性が劣化するの
で、6〜16wt%が最も好ましい。寒天を単独で用い
る場合の水の含有量は8wt%未満では成形時の流動性
が悪くなり、ショート・ショットが発生しやすくなり、
18wt%を越えると実質総バインダー量が増加するた
めに、焼結後の焼結密度が低下すると同時に残留酸素量
が増加し、磁気特性が劣化するので、8〜18wt%が
最も好ましい。またメチルセルロースと寒天を複合して
用いる場合は、メチルセルロースと寒天の割合を考慮し
て6〜18wt%の範囲から適宜選定される。
【0032】寒天は、一般によく知られているように、
水の中で95℃前後に加熱すると溶解して粘性のあるゾ
ル状物質となり、約40℃以下に冷却すると弾性のある
ゲル状物質となって固化する。一方、メチルセルロース
は、水に溶解した後約50℃前後に加熱すると溶解して
弾性のあるゲル 状物質となって固化し、約35℃以下
に冷却すると粘性のあるゾル状物質となり、寒天バイン
ダーとは温度に対して正反対にゾル・ゲル反応を起こ
す。この両者の性質を利用すると、寒天バインダーを主
成分として考えると、メチルセルロースの少量の添加に
より80℃前後の温度ではゾル状態の粘度を向上させる
ことができる。従って、メチルセルロースの僅かの添加
により、通常の寒天バインダーの添加量(約3wt%)
の数分の1に減らすことが可能になる。
【0033】このように水分を多量に含む割りには、僅
かの寒天バインダー量で粘弾性が発生するために、射出
成形用のバインダーとしては総バインダー中の炭素含有
量を大幅に減らすことができるのである。さらには脱脂
時には後述する冷凍真空乾燥による脱水処理により殆ど
の水分が除去されるので、R−Fe−B粉末が活性にな
る温度では、すでに大量の水分に起因する酸素が抜けた
状態であるために、R−Fe−B合金粉末の酸化が大幅
に抑えられる利点がある。
【0034】また上述したバインダーにグリセリン、ワ
ックスエマルジョン、ステアリン酸、水溶性アクリル樹
脂等の滑剤のうち少なくとも1種を添加することも有効
であり、添加含有量は、メチルセルロース及び寒天とも
に0.10wt%未満では成形体の密度が不均一になり
やすく、メチルセルロースを単独で用いる場合は0.3
0wt%を越えると、寒天を単独で用いる場合は1.0
wt%を越えると、それぞれ成形体の強度が低下するの
で、0.10wt%〜1.0wt%が最も好ましい。
【0035】射出成形条件 射出条件はバインダーの添加量に応じて変動するが、メ
チルセルロースを単独で用いる場合は、金型温度は70
℃〜90℃が好ましく、70℃未満では成形後の取出時
に固化が不十分で変形する恐れがあり、また90℃を超
えると混練物の流動性が悪くなる。また、寒天を単独で
用いる場合は金型温度は10℃〜30℃が好ましく、1
0℃未満では流動性が悪くなり、30℃を超えると成形
後の取出時に固化が不十分で変形する恐れがある。ま
た、射出成形圧力は、30kg/cm2未満ではウエル
ドが発生し成形密度が不均一になり、焼結後に曲がりや
うねりが発生し、また、メチルセルロースを単独で用い
る場合は50kg/cm2を超えると、寒天を単独で用
いる場合は70kg/cm2を超えるとそれぞればりが
発生して好ましくないため、圧力は30〜70kg/c
2が好ましい。従って、メチルセルロースと寒天を複
合して用いる場合は、メチルセルロースと寒天の割合を
考慮して、金型温度や射出成形圧力等を上記の範囲から
適宜選定するとよい。焼結異方性磁石を得るための磁場
中射出成形時の磁場が10kOe未満では配向が不十分
なため、10kOe以上の磁場中射出成形が好ましい。
【0036】脱水処理 この発明の第一の特徴は、射出成形により得られた成形
体を、冷凍真空乾燥により脱水処理することある。周知
の如く、この発明の対象とするR−Fe−B系合金粉末
は希土類元素(R)を主成分として含有するために、大
気中の酸素あるいは水分中の酸素などと反応し易い。そ
こで、成形体を冷凍真空乾燥により、バインダー中の水
分子を氷の状態、すなわち固体状態から一気に気化させ
ることにより、R−Fe−B系合金粉末中のR成分と水
中の酸素との反応を抑制することができ、成形体中ある
いは最終的に得られる焼結体中の残留酸素量を大幅に低
減することができる。
【0037】上記の冷凍真空乾燥による脱水処理におい
て、冷却速度は特に限定しないが、冷却速度が遅いと冷
却途中に成形体が酸化が進行する恐れがあるため、冷却
速度は早い方が好ましい。また冷却温度は、−5℃以下
〜−100℃が好ましい。−5℃よりも高温では乾燥に
長時間を有するため好ましくなく、また、−100℃よ
り低温では冷凍に要する電力量が急激に増大するため好
ましくないためである。さらに、真空乾燥時の真空度は
酸化を抑制するためには、1×10-3Torrより高真
空が好ましく、また冷凍真空乾燥後は処理品をゆっくり
と室温まで戻すとよい。
【0038】脱バインダー処理 脱水処理後の脱バインダー処理は、真空中で加熱する一
般的な方法を用いてもよいが、前記の方法に代えて、水
素流気中で100〜200℃/時間で昇温し、300〜
600℃で1〜2時間程度保持する処理を施すことによ
り、ほぼメチルセルロース、寒天バインダーあるいは被
覆樹脂中の全炭素が脱炭され、通常のパラフィン系ワッ
クスや熱可塑性樹脂からなるバインダーの場合に比べて
大幅に処理時間を短縮することができる。R元素を含む
合金粉末は、水素を吸蔵しやすいために、水素流気中で
の脱バインダー処理後には脱水素処理工程が必要であ
る。この脱水素処理は、真空中で昇温速度は、50〜2
00℃/時間で昇温し、500〜800℃で1〜2時間
保持することにより、吸蔵されていた水素はほぼ完全に
除去される。なお脱水素処理後は、引き続いて昇温加熱
して焼結を行うことが好ましく、500℃を超えてから
の昇温速度は任意に選定すればよく、例えば100〜3
00℃/時間など、焼結に際して取られる公知の昇温方
法を採用できる。特に、この発明においては、メチルセ
ルロースおよび/または寒天と水からなるバインダーを
用いているので、元々バインダー中の炭素量が低減され
ており、加熱時の昇温速度を早く、例えば100〜30
0℃/時間にしても成形体にワレやヒビの発生がなく、
従来のパラフィン系ワックスや熱可塑性樹脂からなるバ
インダーの場合に比べて脱バインダー処理に要する時間
を短縮できる利点がある。
【0039】脱水処理後の成形品の焼結並びに焼結後の
熱処理条件は、選定した合金粉末組成に応じて適宜選定
されるが、従来公知のFe−B−R系焼結永久磁石の製
造条件と同様でよい。好ましい焼結並びに焼結後の熱処
理条件としては、1000〜1180℃、1〜2時間保
持する焼結工程、450〜800℃、1〜8時間保持す
る時効処理工程が好ましい。
【0040】この発明において、焼結体が含有する炭素
量と酸素量の上限を規定するが、これは炭素量が900
ppmを越え、酸素量が9000ppmを越えると磁気
特性の劣化を招来し好ましくないためである。
【0041】
【作用】この発明は、R−Fe−B系合金粉末に加える
バインダーとして、所定温度によりゾル・ゲル変態を起
こすメチルセルロースまたは寒天あるいはそれらを複合
したものに水を添加したものを用いることにより、総バ
インダー中の炭素量を大幅に低減し、かつ射出成形時の
成形性を向上させるとともに、その後の脱脂工程におい
て、冷凍真空乾燥による脱水処理、またそれに続く真空
中あるいは水素流気中での加熱による脱バインダー処理
により、残留するほぼ全ての酸素及び炭素を除去するこ
とができ、引き続く焼結後に得られる焼結体における残
留酸素量・炭素量を大幅に減少でき、優れた磁気特性を
有する3次元的に複雑な形状の焼結磁石が得られる。さ
らに、予めR−Fe−B系合金粉末表面に樹脂を被覆し
ておくことにより、水と合金粉末中のR成分との反応を
抑制し、混練後の各工程における合金粉末の酸化を防止
でき、得られる焼結体中の残留酸素量を低減できるとと
もに、水素気流中での脱バインダー処理を併用すると被
覆した樹脂のほぼ全てが除去できるので、焼結体中の残
留炭素量を増加させることがない。
【0042】
【実施例】
実施例1 RとしてNd12.0原子%とPr0.3原子%、B
7.0原子%、残部はFeおよび不可避的不純物からな
る合金塊をArガス中で高周波加熱溶解して作成したボ
タン状溶製合金を粗粉砕した後、ジョークラッシャーな
どにより平均粒径約15μmに粗粉砕し、更にジェット
ミル粉砕により微粉砕して得た平均粒度3μmの主相原
料粉末と、Nd20.1原子%とPr0.9原子%、D
y1.1原子%、Co15.0原子%、B4.5原子
%、残部Feからなる合金塊をArガス中で高周波加熱
溶解して作成したボタン状溶製合金をジョークラッシャ
ーなどにより平均粒径約14μmに粗粉砕した液相原料
粉末を重量比90:10の割合で配合し混合した。この
混合粉の分析値は、Nd13.9原子%とPr0.45
原子%、Dy0.26原子%、Co3.6原子%、B
6.4原子%、残部はFeからなるものであった。この
混合粉と、バインダーとして市販のメチルセルロースの
粉末を0.25wt%添加して室温で混練し、水分量が
13wt%になるように水を添加すると同時に、グリセ
リンを0.10wt%添加して室温にて混練した。この
混練ペレットを射出温度を25℃に設定し、金型温度は
80℃に保温して20mm×20mm×3mmの板に磁
場中(15kOe)で成形した。この成形体を真空中で
−50℃まで急冷して、該温度で24時間保存して完全
脱水した後、ゆっくりと室温まで戻し、室温から500
℃まで昇温速度150℃/時間で昇温し、脱バインダー
処理を行ない、さらに加熱して1100℃で1時間保持
して焼結を行なった。焼結完了後にArガスを導入して
7℃/分の速度で800℃まで冷却し、その後100℃
/時間で冷却して550℃、2時間保持する時効処理を
施した。得られた焼結体にはワレ、ヒビ、変形等は全く
見られなかった。この工程によって得られたこの発明の
Nd−Fe−B焼結異方性磁石(本発明試料No.1〜
4)の磁石特性並びに残留酸素量、残留炭素量の測定結
果を表1に示す。
【0043】比較例 上記の実施例と同一成形体を真空中で昇温速度50℃/
時間で昇温し、100℃で1時間保持して脱水処理を行
なった後、500℃まで昇温速度150℃/時間で昇温
して脱バインダー処理を行ない、さらに加熱して110
0℃で1時間保持して焼結した。焼結後の工程は実施例
1と同一条件で行なった。得られた比較例のNd−Fe
−B焼結異方性磁石(比較例試料No.5〜6)の磁石
特性並びに残留酸素量、残留炭素量の測定結果を表1に
示す。
【0044】
【表1】
【0045】表1から明らかなように、比較例に示す真
空中での加熱による脱水処理を行なったものに比べ、実
施例に示す冷凍真空乾燥による脱水処理を行なったもの
は、得られる焼結体の残留酸素量及び残留炭素量が低減
され、すぐれた磁石特性を発揮することがわかる。
【0046】実施例2 RとしてNd14.5at%、B6.5at%、残部は
Feおよび不可避的不純物からなる合金塊をArガス中
で高周波加熱溶解して作製したボタン状溶製合金を粗粉
砕した後、ジェットミル粉砕により微粉砕して得た平均
粒度3μmの微粉末と、バインダーとして、市販のメチ
ルセルロースの粉末を0.20wt%添加して室温で混
練し、さらに、95℃の温水に溶かした寒天(清水食品
製 MA−2000)を実質寒天重量が0.70wt%
となるように添加し、その後、水分量が12wt%にな
るように水を添加すると同時に、グリセリンを0.10
wt%添加して室温にて混練した。この混練ペレットを
射出温度を80℃に設定し、金型温度は25℃に保温し
て20mm×20mm×3mmの板に磁場中(15kO
e)で成形した。この成形体を真空中で−50℃まで急
冷して、該温度で24時間保存する冷凍真空乾燥により
完全に脱水処理した後、該成形体を室温まで戻し、続い
て水素流気中で室温から500℃まで昇温速度150℃
/時間で昇温し、この温度で1時間保持する脱バインダ
ー処理を行なった。さらに吸蔵された水素を除去するた
めに、真空中で室温から500℃まで昇温速度150℃
/時間で昇温し、1時間保持して脱水素処理を行なった
後、さらに加熱して1100℃で1時間保持して焼結し
た。焼結完了後にArガスを導入して7℃/分の速度で
800℃まで冷却し、その後100℃/時間で冷却して
550℃、2時間保持する時効処理を施した。得られた
焼結体にはワレ、ヒビ、変形等は全く見られなかった。
この工程によって得られたこの発明のNd−Fe−B焼
結異方性磁石と、比較のため室温での真空による脱水処
理のみで冷凍真空乾燥による脱水処理を施さない以外は
実施例2と全く同一条件にて得られた磁石の磁石特性並
びに残留酸素量、残留炭素量の測定結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】実施例3 RとしてNd16.5at%、B6.2at%、残部は
Feおよび不可避的不純物からなる合金塊をArガス中
で高周波加熱溶解して作成したボタン状溶製合金を粗粉
砕した後、ジェットミル粉砕により微粉砕して得た平均
粒度3μmの微粉末に疎水性の平均粒径0.15μmの
ポリメチルメタクリレート(PMMA)を0.20wt
%添加した合金粉末を300g、メカノフュージョンシ
ステムの容器内に投入し、温度を70℃に保持し、容器
の回転数を最高1800rpmで10分間保持して樹脂
被覆(膜厚約100Å)を行った。この被覆合金粉末に
バインダーとして寒天(清水食品製 MA−2000)
の粉末を2.0wt%と水を水分含有量が12wt%に
なるように添加して70℃で20分間混練し、さらに混
練途中にグリセリンを0.20wt%添加して10分間
混練した。この混練ペレットを射出温度90℃に設定
し、金型温度20℃に設定して20mm×20mm×3
mmの板に磁場中(15kOe)で成形した。この成形
体を真空中で−50℃まで急冷して、該温度で24時間
保存する冷凍真空乾燥により完全に脱水処理した後、該
成形体を室温まで戻し、続いて水素流気中で室温から5
00℃まで昇温速度150℃/時間で昇温し、この温度
で1時間保持し脱バインダー処理を行なった。さらに吸
蔵された水素を除去するために、真空中で室温から50
0℃まで昇温速度150℃/時間で昇温し、1時間保持
し完全脱水素処理を行なった後、さらに加熱して110
0℃で1時間保持して焼結した。焼結完了後にArガス
を導入して7℃/分の速度で800℃まで冷却し、その
後100℃/時間で冷却して550℃、2時間保持する
時効処理を施した。得られた焼結体にはワレ、ヒビ、変
形等は全く見られなかった。この工程によって得られた
この発明のNd−Fe−B焼結異方性磁石と、比較のた
め室温での真空による脱水処理のみで冷凍真空乾燥によ
る脱水処理を施さない以外は実施例3と全く同一条件に
て得られた磁石の磁石特性並びに残留酸素量、残留炭素
量の測定結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】実施例4 RとしてNd10.5原子%とPr3.1原子%、B
6.6原子%、Co3.0原子%、残部はFeおよび不
可避的不純物からなるR2Fe14B相とRリッチ相を有
する合金塊をArガス中で高周波加熱溶解して作成した
ボタン状溶製合金を粗粉砕した後、ジョークラッシャー
などにより平均粒径約15μmに粗粉砕し、更にジェッ
トミル粉砕により微粉砕して得た平均粒度3μmの主相
原料粉末と、Nd19.7原子%とPr0.8原子%、
Dy1.1原子%、Co15.0原子%、B4.5原子
%、残部Feからなる合金塊をArガス中で高周波加熱
溶解して作成したボタン状溶製合金をジョークラッシャ
ーなどにより平均粒径約14μmに粗粉砕した液相原料
粉末を重量比90:10の割合で配合し混合した。この
混合粉の分析値は、Nd11.4原子%とPr2.82
原子%、Dy0.11原子%、Co4.2原子%、B
6.4原子%、残部はFeからなるものであった。この
混合粉と、バインダーとして市販のメチルセルロースの
粉末を0.20wt%添加して室温で混練し、水分量が
10wt%になるように水を添加すると同時に、グリセ
リンを0.10wt%添加して室温にて混練した。この
混練ペレットを射出温度を25℃に設定し、金型温度は
80℃に保温して20mm×20mm×3mmの板に磁
場中(15kOe)で成形した。この成形体を真空中で
−50℃まで急冷して、該温度で24時間保存する冷凍
真空乾燥により完全に脱水処理した後、該成形体を室温
まで戻し、続いて水素流気中で室温から500℃まで昇
温速度150℃/時間で昇温し、この温度で1時間保持
し脱バインダー処理を行なった。さらに吸蔵された水素
を除去するために、真空中で室温から500℃まで昇温
速度150℃/時間で昇温し、1時間保持し完全脱水素
処理を行なった後、さらに加熱して1100℃で1時間
保持して焼結した。焼結完了後にArガスを導入して7
℃/分の速度で800℃まで冷却し、その後100℃/
時間で冷却して550℃、2時間保持する時効処理を施
した。得られた焼結体にはワレ、ヒビ、変形等は全く見
られなかった。この工程によって得られたこの発明のN
d−Fe−B焼結異方性磁石と、比較のため室温での真
空による脱水処理のみで冷凍真空乾燥による脱水処理を
施さない以外は実施例3と全く同一条件にて得られた磁
石の磁石特性並びに残留酸素量、残留炭素量の測定結果
を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
【発明の効果】この発明は、R−Fe−B系合金粉末に
加えるバインダーとして、所定温度によりゾル・ゲル変
態を起こすメチルセルロースまたは寒天あるいはそれら
を複合したものに水を添加したものを用いることによ
り、総バインダー中の炭素量を大幅に低減し、かつ射出
成形時の成形性を向上させるとともに、その後の脱脂工
程において、冷凍真空乾燥による脱水処理、またそれに
続く真空中あるいは水素流気中での加熱による脱バイン
ダー処理により、残留するほぼ全ての酸素及び炭素を除
去することができ、引き続く焼結後に得られる焼結体に
おける残留酸素量・炭素量を大幅に減少できる、従っ
て、この発明による射出成形法にて、優れた磁気特性を
有する3次元的に複雑な形状の焼結磁石を提供すること
ができる。さらに、バインダーとの混練前に予めR−F
e−B系合金粉末表面に樹脂を被覆しておくことによ
り、水と合金粉末中のR成分との反応を抑制し、混練後
の各工程における合金粉末の酸化を防止でき、得られる
焼結体中の残留酸素量を低減できるとともに、水素気流
中での脱バインダー処理を併用すると被覆した樹脂のほ
ぼ全てが除去できるので、焼結体中の残留炭素量を増加
させることがなく、優れた磁気特性を有する3次元的に
複雑な形状の焼結磁石を提供することができる。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R−Fe−B系合金粉末(RはYを含む
    希土類元素の少なくとも1種)に、バインダーとして所
    定温度によりゾル・ゲル反応を起こすメチルセルロース
    および/または寒天と水とを加えて混練した後、射出成
    形により成形体となし、該成形体を冷凍真空乾燥により
    脱水処理した後、さらに脱バインダー処理し、焼結する
    ことを特徴とする射出成形法によるR−Fe−B系焼結
    磁石の製造方法。
  2. 【請求項2】 原料微粉末の表面に樹脂を被覆した後、
    射出成形することを特徴とする請求項1記載の射出成形
    法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 水素流気中で脱バインダー処理し、さら
    に脱水素処理後に焼結することを特徴とする請求項1ま
    たは請求項2記載の射出成形法によるR−Fe−B系焼
    結磁石の製造方法。
  4. 【請求項4】 バインダーに潤滑剤としてグリセリン、
    ステアリン酸、エマルジョンワックス、水溶性アクリル
    樹脂の少なくとも1種を0.1〜1.0wt%、水6〜
    18wt%を添加することを特徴とする請求項1、請求
    項2または請求項3記載の射出成形法によるR−Fe−
    B系焼結磁石の製造方法。
  5. 【請求項5】 焼結体が含有する炭素量を900ppm
    以下、酸素量9000ppm以下にすることを特徴とす
    る請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の
    射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法。
JP12489393A 1992-06-24 1993-04-28 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 Expired - Lifetime JP3229435B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12489393A JP3229435B2 (ja) 1993-04-28 1993-04-28 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
DE1993614098 DE69314098T2 (de) 1992-06-24 1993-06-24 Verfahren zur Herstellung von R-Fe-B-Typ Sintermagneten durch Injektionsformen
EP19930304944 EP0576282B1 (en) 1992-06-24 1993-06-24 A process for preparing R-Fe-B type sintered magnets employing the injection molding method

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12489393A JP3229435B2 (ja) 1993-04-28 1993-04-28 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06316745A JPH06316745A (ja) 1994-11-15
JP3229435B2 true JP3229435B2 (ja) 2001-11-19

Family

ID=14896717

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12489393A Expired - Lifetime JP3229435B2 (ja) 1992-06-24 1993-04-28 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3229435B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7105375B2 (en) 2004-07-30 2006-09-12 Xerox Corporation Reverse printing
US8033314B2 (en) 2008-03-31 2011-10-11 Tdk Corporation Method for producing sintered magnet
JP7407751B2 (ja) 2021-01-27 2024-01-04 三菱電機株式会社 ワイヤボンディング装置および半導体装置の製造方法

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000036403A (ja) 1998-07-21 2000-02-02 Seiko Epson Corp 希土類ボンド磁石用組成物、希土類ボンド磁石および希土類ボンド磁石の製造方法
CN115463265A (zh) * 2022-09-06 2022-12-13 西南医科大学附属医院 基于直写成型制备多孔钛方法
CN117198672B (zh) * 2023-10-07 2024-05-28 东莞市众旺永磁科技有限公司 一种注射成型钕铁硼磁铁的制造工艺方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7105375B2 (en) 2004-07-30 2006-09-12 Xerox Corporation Reverse printing
US8033314B2 (en) 2008-03-31 2011-10-11 Tdk Corporation Method for producing sintered magnet
JP7407751B2 (ja) 2021-01-27 2024-01-04 三菱電機株式会社 ワイヤボンディング装置および半導体装置の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06316745A (ja) 1994-11-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5427734A (en) Process for preparing R-Fe-B type sintered magnets employing the injection molding method
JPS63232301A (ja) 磁気異方性ボンド磁石、それに用いる磁粉及びその製造方法
JP3540438B2 (ja) 磁石およびその製造方法
JP3229435B2 (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
EP0576282A2 (en) A process for preparing R-Fe-B type sintered magnets employing the injection molding method
KR102632582B1 (ko) 소결 자석의 제조 방법
JP2960629B2 (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JP3174443B2 (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JP2954816B2 (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JPH06290922A (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JPH06168810A (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JP3338590B2 (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JP3078633B2 (ja) 焼結異方性磁石の製造方法
JP2989420B2 (ja) 射出成形用R−Fe−B系合金混練物等の保存方法
JPH0677028A (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JP3351554B2 (ja) 焼結異方性磁石の製造方法
JPH0677029A (ja) 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法
JP2823076B2 (ja) 温間加工磁石
JP3174442B2 (ja) R−Fe−B系焼結異方性永久磁石の製造方法
JPH044383B2 (ja)
JPH04214804A (ja) 希土類・鉄・ボロン系永久磁石用合金粉末の成型方法
JPH044384B2 (ja)
JPS62261102A (ja) スタ−タモ−タ用ボンド磁石
JP2739329B2 (ja) 高分子複合型希土類磁石用合金粉末の製造方法
JPH08250311A (ja) 樹脂結合型等方性Nd−Fe−B系ボンド磁石

Legal Events

Date Code Title Description
S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080907

Year of fee payment: 7

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080907

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090907

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100907

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110907

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120907

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130907

Year of fee payment: 12

EXPY Cancellation because of completion of term