JP3216772B2 - チタン酸ジルコン酸鉛粉末の製造方法 - Google Patents

チタン酸ジルコン酸鉛粉末の製造方法

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JP3216772B2 JP07801395A JP7801395A JP3216772B2 JP 3216772 B2 JP3216772 B2 JP 3216772B2 JP 07801395 A JP07801395 A JP 07801395A JP 7801395 A JP7801395 A JP 7801395A JP 3216772 B2 JP3216772 B2 JP 3216772B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、チタン酸ジルコン酸
鉛セラミックスの原料であるチタン酸ジルコン酸鉛粉末
の製造方法、具体的には、その際に必要な性状の良いチ
タン酸ジルコン酸鉛水和物の沈澱の製造方法に関するも
のである。さらに詳しくは、この発明は、圧電着火素
子、ピックアップ、圧電送話器、圧電ブザー、圧電スピ
ーカー、圧電型平面スピーカー、圧電受話器、空気中超
音波送受波器、水中超音波送受波器、超音波診断装置、
超音波パワー振動子、電子時計用圧電発振子、圧電セラ
ミックス発振子、AM用中間周波フィルター、FM用中
間周波フィルター、表面波フィルター(TVおよびVT
R用フィルター)などに有用な、優れた品質のチタン酸
ジルコン酸鉛セラミックスの原料粉末を製造するための
新しい方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】チタン酸ジルコン酸鉛は、圧
電性が高く、また物性を多様に変化させることができる
ため、極めて優れた圧電体セラミックス材料として知ら
れており、実用的にも広く用いられている。ただ、組成
相転移境界付近における組成(PbZr0. 52Ti0.48
3 )では、圧電定数、誘電率、弾性コンプライアンス定
数などの物性値が極めて大きいものとなり、特性の安定
したセラミックスを製造することが難しい。そのために
一般には第3成分を加えて変成(Modify)することで、機
能性セラミックス材料として広い分野に利用可能とす
る。
【0003】このチタン酸ジルコン酸鉛セラミックスの
微構造や圧電特性は、原料粉末であるチタン酸ジルコン
酸鉛粉末の均質性や焼結性などの粉末特性やその組成に
よって大きく左右される。この原料粉末の粉末特性が悪
いと、得られるチタン酸ジルコン酸鉛セラミックスの微
構造が不均質となり、圧電特性が著しく低下してしま
う。たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛粉末の1次粒子が
大きいと、セラミックスを製造する際の焼結温度が高く
なり、酸化鉛(PbO)の蒸発が顕著になって厳密な組
成制御ができない。従って、チタン酸ジルコン酸鉛の組
成が組成相転移境界から外れてしまうと、これらの物性
値が急激に低下してしまう。さらにまた、ジルコニウム
イオン(Zr4+)とチタニウムイオン(Ti4+)の間に
組成変動が起こると、組成相転移境界付近の電圧特性が
拡散し、同時にその値が著しく低下してしまう。そし
て、2次粒子が大きいと、厳密な焼結体が得られず、チ
タン酸ジルコン酸鉛の基本性質である電気−振動変換な
どの特性を有効に利用することができない。
【0004】従って、これらの問題を起こさずに特性の
安定した質の良いセラミックスを製造する上で、原料粉
末であるチタン酸ジルコン酸鉛粉末の易焼結性や高均質
性などの粉末特性や組成の安定が必要とされる。従来よ
り、チタン酸ジルコン酸鉛セラミックスは乾式法によっ
て製造されている。乾式法とは、チタンジルコン酸鉛セ
ラミックスの構成酸化物粉末である酸化鉛(PbO)、
ジルコニア(ZrO2 )、チタニア(TiO2 )粉末を
混合、仮焼、粉砕、形成、焼成(焼結)の順序でそれぞ
れの過程を遂行していくことによりセラミックスを製造
する方法である。しかしながら、この乾式法において粉
末特性が十分でない酸化物粉末であるジルコニア粉末を
混合及び仮焼すると、ジルコニア粉末が極めて凝集し易
い性質があるために、混合過程における均一分散が困難
であり、さらに仮焼後に得られる仮焼粉末の焼結性を良
いものとすることは困難である。つまり、その後の粉
砕、成形、焼成の各過程で必要とされる易焼結性や高均
質性などの粉末特性を持った仮焼粉末を得ることができ
ず、そのために酸化鉛(PbO)が蒸発し易くなり、チ
タン酸ジルコン酸鉛組成のズレやZr4+とTi4+の組成
変動などが引き起こされる。よって、最終的に質の良い
チタン酸ジルコン酸鉛セラミックスを製造することが困
難となってしまう。たとえば、酸化鉛(PbO)は約8
00℃において、さらには850℃以上において蒸散し
てしまうのである。さらに、酸化鉛の蒸発により成形体
の焼成用坩堝や匣鉢が容易に汚染されてしまうので、そ
れら容器の消耗や酸化鉛の処理などの問題も生じてしま
う。
【0005】そこで、これらの乾式法の問題点を解決す
るために、湿式法を用いたチタン酸ジルコン酸鉛セラミ
ックス製造方法が検討されている。この湿式法では、先
ず鉛とジルコニウム、およびチタニウムの溶液を混合さ
せ、得られたチタン酸ジルコン酸鉛水和物沈澱を洗浄、
乾燥、熱分解、仮焼してチタン酸ジルコン酸鉛粉末を生
成させる。そして次に、その粉末を焼結(成形、焼成)
することによりセラミックスを製造する。
【0006】この湿式法は、乾式法に比べ得られる仮焼
粉末の焼結性が格段に優れるので、焼結過程での焼結温
度が低くなるために酸化鉛の蒸発を抑制することができ
る。従って、組成変動が起こり難くなり、また圧電特性
も優れたものとなる。ただ、この湿式法においては、得
られるチタン酸ジルコン酸鉛粉末の粉末特性は原料のチ
タン酸ジルコン酸鉛水和物の沈澱に依存する。水和物の
沈澱の性状が悪いと、洗浄性や濾過性が悪くなり、製造
工程にトラブルが起こる原因となる。この様な沈澱には
水和物の母液がその表面に吸蔵したり、また金属イオン
が沈澱中へ吸着するので、沈澱の洗浄課程や濾過課程後
にも不純物が残存してしまう。この沈澱に吸蔵された母
液(アニオン)は仮焼時に得られるチタン酸ジルコン酸
鉛粉末の1次粒子や2次粒子を著しく成長させる。また
吸着した金属イオン不純物(カチオン)は仮焼後にも粉
末中に残存するため、その後の焼結過程に悪い影響を及
ぼす。このため、湿式法では粉末特性の良いチタン酸ジ
ルコン酸鉛粉末を得るために性状の良いチタン酸ジルコ
ン酸鉛水和物沈澱を生成することが必要とされている。
【0007】この必要性に応えるために共沈性、多段
法、改良多段法、アルコキシド法などの様々な湿式法が
検討されているが、どの湿式法もそれぞれ問題点があ
り、チタン酸ジルコン酸鉛粉末の製造には実用には今一
歩である。たとえば共沈法は、やや安価な硝酸塩を水和
物の母塩として使用するため、経済的に他の湿式法に比
べて有利であるが、硝酸チタニウムは10℃以上になる
と容易に加水分解するため製造過程中常に10℃以下に
保たれなければならないという製造上の問題がある。ま
た、多段湿式法及び改良型多段湿式法は、得られる粉末
特性や焼結性が比較的好ましいが、沈澱の洗浄性や濾過
性が悪く、また酸化鉛の蒸発が十分抑制されるほど焼結
温度を低くすることができない。アルコキシド法も、粉
末特性や焼結性の比較的良い仮焼粉末を得ることができ
るが、仮焼過程において斜方晶(ZrTiO4 )と立法
晶(Pb〔Zr、Ti〕O3 )の2相に分離するなどの
技術的問題がある。またイソ・プロパノールを使用する
ので極めて製造コスト高くなってしまう。さらにまた、
これらの湿式法は、チタン酸ジルコン酸鉛粉末を1つの
プラントで自在に製造することが困難なため、乾式法に
比べてコスト高になるという経済的問題もある。
【0008】このように、実際には、製造、技術、経済
上の問題が有り、まだ根本的な解決には至っていない。
なお、一般にこれらの湿式法の中では製造コストが比較
的低い共沈法が実用的であるとされることから、チタン
酸ジルコン酸鉛粉末の製造に用いることができる様々な
共沈法の改良法が検討されている。
【0009】その改良の一つとして中和共沈法(正滴定
法)が知られており、この方法は、混合溶液を沈澱させ
る際に沈澱形成剤としてアンモニア水を加え、混合溶液
を中和させて沈澱を生成させる方法である。しかしなが
ら、この中和法で組成の均一なチタン酸ジルコン酸鉛水
和物の沈澱を生成させるためには、Pb〔Zr,Ti〕
3 で表されるチタン酸ジルコン酸では結晶構造上Pb
2+はA位置に、〔Zr 4+,Ti4+〕はB位置に配置され
るが、このB位置のジルコニウム・イオン(Zr4+)及
びチタニウム・イオン(Ti4+)の沈澱するpH領域
と、A位置の鉛イオン(Pb2+)の沈澱するpH領域を
pH<3の範囲まで接近させる必要がある。しかし、ジ
ルコニウム・イオンとチタニウム・イオンは酸性領域
(pH<1.5)で沈澱し、鉛イオンはほぼ中性領域
(pH>7.5)で沈澱するため、各pH領域間にはp
H=6もの差があり、そのままでは組成の均一な沈澱を
生成させることができない。
【0010】そこで、このpH領域の問題を解決するた
めに逆滴定法が試みられている。この逆滴定法は、過剰
のアンモニア水中へ混合溶液を滴定することにより鉛、
ジルコニウム、チタニウムの3成分のpH価をほぼ一定
にさせる方法である。しかしながら、計器測定上pH価
が一定なので3成分が完全に共沈するように見えるが、
実際には局所的にpH価がかなり異なっている。それ
故、この方法によると、ある程度は組成の均一なチタン
酸ジルコン酸鉛水和物沈澱を得ることができるが、その
沈澱はどうしても性状の悪いものとなってしまうという
欠点がある。
【0011】このように、これまでは、改良法によって
も、粉末特性の良いチタン酸ジルコン酸鉛粉末を得るた
めに必要な高均質で性状の十分に良いチタン酸ジルコン
酸鉛水和物沈澱を生成することが困難であった。この発
明は、以上のような従来技術の欠点を解決するために創
案されたものであり、組成が均一で高純度な性状の良い
チタン酸ジルコン酸鉛粉末を製造することのできる新し
い方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、この発明のチタン酸ジルコン酸鉛粉末の製造方法
は、鉛とジルコニウム、およびチタニウムの混合溶液を
アンモニア水で中和して沈澱を生成させ、得られた沈澱
を仮焼してチタン酸ジルコン酸鉛粉末とする方法におい
て、ジルコニウムとチタニウム溶液に過酸化水素を加え
て錯体を形成させ、アンモニア水には溶液安定化剤を加
ることを特徴としている(請求項1)。
【0013】また、この発明は、上記方法において、
液安定化剤が、硫酸アンモニウムであること(請求項
2)や、過酸化水素水の添加量を
【0014】
【数3】
【0015】とすること(請求項3)、そしてまた、硫
酸アンモニウムの添加量を
【0016】
【数4】
【0017】とすること(請求項4)をもその一態様と
して提供する。
【0018】
【作用】上記の通りのこの発明のチタン酸ジルコン酸鉛
粉末の製造方法は、沈澱の生成におけるpH領域の問題
を解決する方法として、中和沈澱法におけるジルコニウ
ム・イオン(Zr4+)及びチタニウム・イオン(T
4+)の沈澱するpH領域(pH<1.5)と、鉛イオ
ン(Pb2+)の沈澱するpH領域(pH>7.5)の差
をpH<3の範囲にするという方法である。また、その
実現のために、マスキング剤(溶液安定剤)として過酸
化水素(H22)を用いる方法である。マスキング剤
、沈殿生成のpH領域が極めて低いジルコニウム溶液
とチタニウム溶液に加えることによりジルコニウム及
びチタニウム・イオンの錯体を形成させ、それらのイオ
ン濃度−pH曲線を必要条件範囲のpH領域へ移動させ
る。すなわち、鉛イオン(Pb 2+ )の沈澱するpH領域
に近づける。そして錯体とした後に沈殿形成剤を添加し
て沈殿を形成させるようにする。
【0019】この方法では、過酸化水素のマスキング剤
としての作用は、(イ)沈澱を形成する際に用いられる
沈澱形成剤としてアンモニア水が使用できること、
(ロ)仮焼後にそれ自身が不純物として残存しないこ
と、(ハ)得られる沈澱が高均質であることの条件を満
たすものとして実現される。過酸化水素を添加すること
により組成の均一なチタン酸ジルコン酸鉛水和物沈澱を
生成させることができる。
【0020】なお、錯体を経由して沈澱を得ると、中和
反応速度に対して沈澱生成速度が遅くなり、沈澱の性状
が影響を受けることが多い。そこで、この発明の製造方
法では、さらにアンモニア水に溶液安定化剤を加えるこ
とにより中和反応速度よりも沈澱生成速度を速め、得ら
れる沈澱の性状をさらに改善することを可能としてい
る。
【0021】この溶液安定化剤は、(イ)中和反応に悪
い影響を与えないこと、(ロ)仮焼後に金属イオンなど
の不純物が残存しないこと、(ハ)少量で効果が大きい
こと、(ニ)沈澱プロセスが複雑なものにならないこ
と、(ホ)得られる沈澱の性状が良くなるとの条件を満
たす必要があるが、これら条件に対して、硫酸塩が有効
な溶液安定化剤として作用する。
【0022】ただ、硫酸塩としての金属塩は、金属成分
が混入されるため、あまり好ましくない。金属成分の混
入が問題とされない場合には使用できるが、その意味で
は、粉末組成への影響のない硫酸アンモニウム((NH
4 2 SO4 )がその作用において優れたものである。
例えばこの硫酸アンモニウムを添加することにより高純
度な性状の良いチタン酸ジルコン酸鉛水和物沈澱を生成
することができる。
【0023】以上の通り、この発明では、マスキング剤
として過酸化水素を添加することにより、沈澱を形成す
る際に用いられる沈澱形成剤としてアンモニア水が使用
でき、また、仮焼後にそれ自身が不純物として残存せず
に、ジルコニウム・イオン(Zr4+)及びチタニウム・
イオン(Ti4+)の沈澱するpH領域と鉛イオン(Pb
2+)の沈澱するpH領域をpH<3の範囲にすることが
できる。さらにまた、既存のプラントをそのまま使用し
て沈澱及び粉末を生成することができるため、コストが
低くなり経済的問題も解決することができる。
【0024】過酸化水素は、沈澱生成に際しては、ジル
コニウム溶液とチタニウム溶液に添加されるのであれ
ば、各々別になっていてもよいし、あるいは混合されて
いてもよい。また、ジルコニウ溶液に過酸化水素が添加
される場合、あるいはこの逆の順序の手順であってもよ
い。本質的には、ジルコニウム・イオンとチタニウム・
イオンが過酸化水素の添加で錯体を形成する条件とす
る。
【0025】また、溶液安定化剤として硫酸塩、より好
ましくは硫酸アンモニウムを添加することにより、中和
反応に悪い影響を与えず、また、仮焼後に金属イオンな
どの有害な不純物が残存せず、また、少量で大きな効果
を得られ、また、沈澱プロセスが複雑なものにならず
に、中和反応速度に対して沈澱生成速度を速めることが
できるので、高純度で性状の良いチタン酸ジルコン酸鉛
水和物沈澱を生成することができる。
【0026】過酸化水素水は、前記の通りの、
【0027】
【数5】
【0028】の範囲で添加することで、ジルコニウム・
イオンとチタニウム・イオンの錯体形成とチタン酸ジル
コン酸鉛水和物沈澱の組成均一化の効果が必要十分に得
ることができる。過酸化水素そのものの濃度は、それに
対応して適宜とすればよい。添加量が2×10-3以下に
なると、錯体形成や溶液の安定性には効果が認められる
ものの、必ずしも十分でない。また、添加量が2×10
-2以上になるとその効果はほぼ飽和状態となる。飽和量
以上添加してもよいが、母液中に存在する過剰の〔H2
2 〕が、衝撃や加熱などによって急速に発泡し、トラ
ブル発生の原因となることがあるので留意すべきであ
る。
【0029】硫酸アンモニウムの添加量については、
【0030】
【数6】
【0031】の範囲とすることで、チタン酸ジルコン酸
鉛水和物沈澱の性状が必要十分に良いものを得ることが
できる。添加量が0.01以下になると、水和物沈澱の
性状を良くする作用は認められるものの、必ずしも十分
でない。また、添加量が5.0を超えると、仮焼粉末の
1次粒子径が大きくなるのみならず、2次粒子が形成さ
れる傾向がある。この添加量については、より好ましく
は、1.5以下とするのがよい。
【0032】以上の方法により得られたチタン酸ジルコ
ン酸鉛沈澱からチタン酸ジルコン酸鉛粉末を生成するに
は、通常の湿式法と同様に、得られた沈澱に洗浄、濾
過、乾燥、熱分解、仮焼過程を施すことにより粉末を生
成することができる。また、原料としての、溶液を構成
するZr,Ti,Pbについては、従来と同様の各種の
塩として用いることができ、この点についても特段の制
約はない。
【0033】なお、過酸化水素に代えてオゾン(O3
をジルコニウム溶液およびチタニウム溶液に吹き込んで
もマスキング効果や溶液安定化効果が同様に得られる。
しかし、この場合には添加量の制御がやや難しくなる。
また、硫酸塩に代えて亜硫酸塩をアンモニア溶液中に加
えてもよい。
【0034】
【実施例】以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明
について説明する。もちろん、この発明は以下の例によ
って限定されるものではない。実施例1 共沈法に沿ってこの発明を実施した。
【0035】すなわち、最初に3塩化チタニウムまたは
4塩化チタニウム溶液にアンモニア水を加えて水酸化チ
タニウムを沈澱させる。この水酸化チタニウムを硝酸で
溶解し、濃度0.1mol/lの硝酸チタニウム溶液を
調製する。この硝酸チタニウム溶液26ml中に過酸化
水素水(30%)を1m加える。予め準備した鉛0.1
mol/lおよびジルコニウム0.1mol/lの硝酸
溶液に硝酸チタニウム溶液26mlを加え、混合溶液を
準備する。この混合溶液中へ硫酸アンモニウムを含むア
ンモニア水を滴定して共沈物を生成させる。その後、得
られた共沈物を洗浄及び乾燥し、空気中700℃にて2
hr仮焼する。得られた仮焼物の化学組成はPbZr
0.52Ti0.483 であり、その結晶相は100%偽立方
晶であった。また、この仮焼時において850℃付近ま
では全く酸化鉛の蒸発はなかった。得られた粒子の平均
粒径は0.28μmで、図に示した通り、その粒径分布
は極めて均一な粒子であることを示していることがわか
る。
【0036】さらに、この仮焼物を静水圧下2ton/
cm2 で成形し、得られた圧粉体を10℃/min定速
昇温し、1100℃で1hr焼成する。得られた焼結体
は、空気中及び酸化鉛過剰の酸素雰囲気での焼結密度が
それぞれ理論密度の96.8%及び99.5%であっ
た。また、1100℃における酸化鉛の蒸発速度は7.
4×10-6g/cm2 /secであった。
【0037】比較のために、過酸化水素水及び硫酸アン
モニウムを使用せずに従来の共沈により行なった。得ら
れた仮焼物の比表面積は4.0m2 /gで、2次粒子の
平均径は0.50μmであり、2相以上の混合相であっ
た。また、仮焼時において約750℃付近から酸化鉛の
蒸発があった。また、焼成時の1100℃における酸化
鉛の蒸発速度は7.7×10-5g/cm2 /secであ
った。
【0038】これらの値を比較すると、過酸化水素水と
硫酸アンモニウムの添加により組成が高均質で性状の良
いチタン酸ジルコン酸鉛水和物沈澱を生成することがで
き、高純度、易焼結性で酸化鉛の蒸発が少ない粉末特性
の良いチタン酸ジルコン酸鉛粉末を生成することがで
き、質の良い焼結体、つまり質の良いチタン酸ジルコン
酸鉛セラミックスを製造することができることがわか
る。この方法で得られたPZT粉末は、他の製造法で得
られた粉末に比べ、最も酸化鉛の蒸発が少なく、均一性
が高く、且つ焼結性が良かった。実施例2 多段湿式法でこの発明の方法を実施した。
【0039】すなわち、濃度0.1mol/lの硝酸ジ
ルコニル溶液26ml中に過酸化水素水(30%)を1
ml加える。この溶液の濃度0.1mol/lの硝酸鉛
溶液50mlを混合する。予め硫酸アンモニウム3gを
溶解した0.75Nのアンモニア水を、この混合溶液に
滴定し、沈澱を生成させる。また、別に濃塩酸に金属チ
タンを溶解して得た濃度0.1mol/lの3塩化チタ
ニウム溶液24ml中に過酸化水素水(30%)を1m
l加える。この溶液を上記混合溶液中に滴定して共沈物
を生成させる。その後、得られた共沈物を洗浄及び乾燥
し、空気中700℃にて2時間仮焼する。得られた仮焼
物の化学組成はPbZr0.52Ti0.48 3 であり、その
結晶相は90%偽立方晶であった。またこの仮焼時にお
いて850℃付近まではまったく酸化鉛の蒸発はなかっ
た。粉末の平均粒子径は0.28μmであり、その粒径
分布は図2に示す通りであった。2次粒子のないことが
わかる。
【0040】さらに、この仮焼物を静水圧下2ton/
cm2 で成形し得られた圧粉体を10℃/minで定速
昇温し、1100℃で1hr焼成する。得られた焼結体
は、空気中及び酸化鉛過剰の酸素雰囲気中での焼結密度
がそれぞれ理論密度の96.2%及び99.0%であっ
た。また、1100℃における酸化鉛の蒸発速度は1.
2×10-5g/cm2 /secであった。
【0041】比較のために、過酸化水素及び硫酸アンモ
ニウムを使用せずに従来の多段湿式法により行った。得
られた仮焼物の比表面積は4.2m2 /gで、その粒径
分布は図3の通りであって、2次粒子の平均径は0.4
3μmであり、2相以上の混合相であった。また仮焼時
において約800℃付近から酸化鉛の蒸発があった。ま
た、焼成時の1100℃における酸化鉛の蒸発速度は
2.7×10-5g/cm 2 /secであった。
【0042】これらの値を比較すると、過酸化水素水と
硫酸アンモニウムの添加により組成が高均質で性状の良
いチタン酸ジルコン酸鉛水和物沈澱を生成することがで
き、高純度、易焼結性で酸化鉛の蒸発が少ない粉末特性
の良いチタン酸ジルコン酸鉛粉末を生成することがで
き、質の良い焼結体、つまり質の良いチタン酸ジルコン
酸鉛セラミックスを製造することができることがわか
る。実施例3 改良型多段湿式法でこの発明を実施した。
【0043】すなわち、実施例1における硝酸ジルコニ
ル溶液についても、その一部を3塩化チタニウム溶液に
混合して実施例1と同様に行なった。〔Zr〕/〔T
i〕>0.5の範囲において実施例1とほぼ同様の結果
を得ることができた。得られた焼結体は、空気中及び酸
化鉛過剰の酸素雰囲気中での焼結密度がそれぞれ理論密
度の90〜94%及び95〜98%であった。それ等の
中で、〔Zr〕/〔Ti〕=1がもっとも良質の沈澱が
得られた。ただ、〔Zr〕/〔Ti〕>0.13の範囲
では共沈物を1相とするのが極めて難しくなる傾向が認
められた。
【0044】比較のために、過酸化水素水と硫酸アンモ
ニウムを使用せずに従来の改良型多段湿式法により行っ
た。得られた仮焼物の比表面積は4.5m2 /gで、2
次粒子の平均径は0.50μmであり、2相以上の混合
相であった。また仮焼時において約800℃付近から酸
化鉛の蒸発があった。また、得られた焼結体は空気中で
の焼結密度が理論密度の86.5%であった。また、焼
成時の1100℃における酸化鉛の蒸発速度は3.0×
10-5g/cm2 /secであった。
【0045】図4および図5は、各々、上記のこの発明
の実施例と、比較例について熱天秤分析の結果を示した
ものであって、この結果からは、この発明の場合には、
PbOの蒸発が押さえられていることがわかる。これら
の値を比較すると、過酸化水素水と硫酸アンモニウムの
添加により組成が高均質で性状の良いチタン酸ジルコン
酸鉛水和物沈澱を生成することができ、高純度、易焼結
性で酸化鉛の蒸発が少ない粉末特性の良いチタン酸ジル
コン酸鉛粉末を生成することができ、質の良い焼結体を
製造することができることがわかる。実施例4 逐次沈澱法に沿ってこの発明の方法を実施した。
【0046】すなわち、実施例1において、硝酸ジルコ
ニル溶液中にアンモニウム水を滴定し、引き続きこの溶
液に硝酸鉛溶液を滴定し、さらに塩化チタニウム溶液を
滴定した。実施例1とほぼ同様の結果が得られた。得ら
れた焼結体は、空気中及び酸化鉛過剰の酸素雰囲気中で
の焼結密度がそれぞれ理論密度の89.2%及び93.
3%であった。
【0047】さらに、比較のために、過酸化水素水と硫
酸アンモニウムを使用せずに逐次沈澱法により行った。
得られた仮焼物の比表面積は2.9m2 /gで、2次粒
子の平均径は0.82μmであり、2相以上の混合相で
あった。また仮焼時において約750℃付近から酸化鉛
の蒸発があった。また、得られた焼結体は空気中での焼
結密度が理論密度の86.8%であった。また、110
0℃における酸化鉛の蒸発速度は7.4×10-5g/c
2 /secであった。
【0048】これらの値を比較すると、過酸化水素水と
硫酸アンモニウムの添加により組成が高均質で性状の良
いチタン酸ジルコン酸鉛水和物沈澱を生成することがで
き、高純度、易焼結性で酸化鉛の蒸発が少ない粉末特性
のチタン酸ジルコン酸鉛粉末を生成することができ、質
の良い焼結体を製造することができることがわかる。
【0049】
【発明の効果】この発明により、以上詳しく説明したよ
うに、マスキング剤として過酸化水素水を添加すること
により、沈澱を形成する際に用いられる沈澱形成剤とし
てアンモニア水が使用でき、また、仮焼後にそれ自身が
不純物として残存せずに、ジルコニウムイオン及びチタ
ニウムイオンの錯体を形成させ、それらのイオン濃度−
pH曲線を必要条件範囲のpH領域へ移動させることが
できるので、ジルコニウムイオン(Zr4+)及びチタニ
ウムイオン(Ti4+)の沈澱するpH領域と鉛イオン
(Pb2+)の沈澱するpH領域をpH<3の範囲にする
ことができる。さらに、溶液安定剤として硫酸アンモニ
ウムを添加することにより、中和反応に悪い影響を与え
ず、また、仮焼後に金属イオンなどの不純物が残存せ
ず、また、少量で大きな効果を得られ、また、沈澱プロ
セスが複雑なものにならずに、中和反応速度に対して沈
澱生成速度を速めることができる。組成が高品質で、高
純度な性状の良いチタン酸ジルコン酸水和物沈澱を生成
することができる。また、この発明によってPbOの蒸
散のない粉末が得られる。従って、この得られるチタン
酸ジルコン酸水和物沈澱により高純度、易焼結性、高均
質性、2次粒子フリーであるチタン酸ジルコン酸鉛粉末
を生成することができ、最終的に質の良いチタン酸ジル
コン酸鉛セラミックスを製造することができる。さらに
また、この発明の方法は既存のブランドをそのまま使用
して沈澱及び粉末を生成することができるため、安価に
製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例としての共沈法による場合の
粉末の粒径分布図である。
【図2】この発明の実施例としての多段湿式法による場
合の粉末の粒径分布図である。
【図3】比較例としての従来の多段湿式法の場合の粉末
の粒径分布図である。
【図4】この発明の実施例としての改良多段湿式法によ
る場合の熱天秤分析の結果を示した図である。
【図5】比較例としての従来の改良多段湿式法による場
合の熱天秤分析の結果を示した図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭50−150899(JP,A) 特開 昭63−248704(JP,A) 特開 昭62−78108(JP,A) 特開 昭62−59505(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 25/00 C04B 35/49 CA(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉛とジルコニウム、およびチタニウムの
    混合溶液をアンモニア水で中和して沈澱を生成させ、得
    られた沈澱を仮焼してチタン酸ジルコン酸鉛粉末とする
    方法において、ジルコニウムとチタニウム溶液に過酸化
    水素を加えて錯体を形成させ、アンモニア水には溶液安
    定化剤を加えることを特徴とするチタン酸ジルコン酸鉛
    粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】 溶液安定化剤が、硫酸アンモニウムであ
    ることを特徴とする請求項1のチタン酸ジルコン酸鉛粉
    末の製造方法。
  3. 【請求項3】 過酸化水素の添加量を 【数1】 とする請求項1または2のチタン酸ジルコン酸鉛粉末の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 硫酸アンモニウムの添加量を 【数2】 とする請求項2または3のチタン酸ジルコン酸鉛粉末の
    製造方法。
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