JP3216664B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

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JP3216664B2
JP3216664B2 JP32815992A JP32815992A JP3216664B2 JP 3216664 B2 JP3216664 B2 JP 3216664B2 JP 32815992 A JP32815992 A JP 32815992A JP 32815992 A JP32815992 A JP 32815992A JP 3216664 B2 JP3216664 B2 JP 3216664B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、縦振動型圧電素子を駆
動手段とし、印字信号に応じてインク滴を吐出して、記
録紙等の記録媒体上にインク像を形成するインクジェッ
ト記録ヘッドを用いた記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】圧電素子の変形によりインク加圧室の容
積を変化させてインク滴を形成するインクジェット記録
装置として、振動板と板状の圧電素子を積層したユニモ
ルフ振動子をインク加圧室の一面に構成する従来技術が
実用化されている。この振動子は、外部からの印加電圧
による圧電素子の変形方向に対して直交する方向にたわ
み変形するたわみ振動子である。
【0003】また、このようなインクジェット記録装置
に対し、インク滴の形成を制御し、安定したインク滴の
吐出特性を得るための駆動方法として、特開平2−19
2947号明細書に開示された従来技術が有る。
【0004】さらに、圧電素子の変形によってインク加
圧室の容積を変化させる他の構成として、棒状の圧電素
子用いて圧電素子の変形方向にインク加圧室の振動板を
変形させる縦振動子を用いた従来技術が米国特許第44
59601号明細書に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】インク加圧室とそれに
連通するノズルやインク供給流路を含むインク流路系
と、圧電素子と加圧室の振動板を含む振動子系とを組み
合せた連成振動系は、インクジェット記録装置の応答や
インク滴の吐出特性を支配する。
【0006】この連成振動系の観点で従来技術として述
べた2つのインクジェット記録装置を比較すると、両者
には大きな相違点が存在する。即ち、たわみ振動子を用
いた系では、振動子がインク加圧室上に乗る形で構成さ
れているため、振動子系の応答はインク加圧室の音響容
量に支配されるインク流路系の応答そのものとなる。こ
れに対し、縦振動子を用いた系では圧電素子がインク加
圧室とは別の構造物へ機械的に連結されているため、振
動子はインク流路系の応答とは別に応答する。更に、縦
振動子を用いた系ではインク加圧室の振動板が縦振動子
によって別の構造物へ固定されるため、インク加圧室の
音響容量が小さく、縦振動子による外部からの入力に対
して、インク流路系の応答が速い。
【0007】本発明者らは、縦振動子を用いたインクジ
ェット記録装置を研究開発する過程で、次のような問題
点に遭遇した。
【0008】1)従来のたわみ振動子の駆動方法の一つ
である引き打ちと同様に、振動子の固有周期に比べ十分
に速い立ち上がりを持つパルスを圧電素子に印加する
と、振動子の急激な運動によってインク加圧室に大きな
圧力振動が発生し、この時の大きな負圧によって、時間
が経過するとインク加圧室に気泡が発生し、インク滴が
形成されなくなってしまった。また、この大きな圧力振
動によってノズル開口に形成されるメニスカスが激しく
振動するため、インク加圧室の容積を減少させるパルス
の立ち下がりに先立ちインク滴が吐出してしまったり、
環境やパルスの僅かな変化によって吐出特性が大きく変
化し、安定した吐出特性と良好な印字品質が得られなか
った。
【0009】2)従来のたわみ振動子の駆動方法の一つ
である引き打ちでは、振動子の固有周期の2分の1の幅
の矩形パルスを圧電素子に印加することにより振動子の
動的なたわみ変位量が最大になり、低い電圧で速い速度
のインク滴が得られた。これに対して縦振動子を用いた
インクジェット記録装置では、インク加圧室の音響容量
に支配されるインク流路系の応答速度が振動子の応答速
度に比べて低いために、インク流路系が振動子の運動に
追従できず、インク滴が吐出しなかった。
【0010】そこで本発明者らは、更に研究開発を進め
た結果、メニスカスに大きな振動を与えないようにイン
ク加圧室の容積を拡大させる電圧の変化を緩やかに行
い、メニスカスがノズル開口近傍に復帰した段階で、イ
ンク加圧室の容積を縮小させる急激な電圧の変化を与え
ることにより、低い電圧で十分なインク滴重量と速度が
得られることを見いだした。
【0011】しかし、このようにメニスカスがノズル開
口近傍に確実に復帰するまで電圧パルスの変化を遅くす
ると、1つのパルスの幅が長くなり過ぎ、インクジェッ
ト記録装置の繰返しの吐出周波数を高く出来ず、記録の
高速化に対する要求に応えることが出来ない。
【0012】また、メニスカスがノズル開口近傍に復帰
する以前にインク吐出を行うと、環境変化や製造上の変
動等により、インク滴の吐出速度と重量が大きく変化し
てしまうという問題点が発生する。
【0013】更に、メニスカスがノズル開口近傍に復帰
した辺りでインク吐出を行うと、インク滴の吐出形状や
安定性が悪くなるという問題点も明らかになった。
【0014】そこで本発明の課題は、これらの問題点を
解決することで、その目的とするところは、連成振動系
の応答を制御することによって、 (1)温湿度等の環境変化や製造誤差や駆動電圧波形の
変化等の影響を受け難い、安定したインク滴吐出特性を
有する高周波数で応答するインクジェット記録装置を提
供する。
【0015】(2)主インク滴の形状が良好で印字品質
の優れたインクジェット記録装置を提供することにあ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】このような課題を達成す
るために本発明においては、ノズルに連通するインク加
圧室と、一端が前記インク加圧室を構成する振動板に当
接する縦振動の圧電素子とを備え、前記圧電素子に略台
形状の電圧パルスを印加して、前記インク加圧室を膨張
させ、その後に前記インク加圧室を収縮させて前記ノズ
ルからインク滴を吐出させるインクジェット記録装置に
おいて、前記電圧パルスは、前記圧電素子を収縮させて
前記インク加圧室の容積を拡大させる方向に電圧が変化
する第1の期間と、所定電圧に所定時間t2だけ保持す
る第2の期間と、前記圧電素子を伸長させて前記インク
加圧室の容積を収縮させる方向に電圧が変化する第3の
期間とからなり、前記第2の期間の所定時間t2が、
インク加圧室の音響容量に支配されるインク流路系の
固有周期Tcの1/4乃至3/4に設定されている
【0017】
【作用】図1に示すインクジェット記録装置を等価電気
回路に置き換えると、図2に示すとおりになる。同図に
おいて、m〔kg/m4〕はイナータンス、c〔m5/N〕は音
響容量、r〔Ns/m5〕は音響抵抗、U〔m3/s〕は体積速
度を示し、これらに関する添字0は圧電素子22とそれ
が接続するインク加圧室5の振動板8を含む振動子系、
添字1は圧電素子22が接続していない部分のインク加
圧室系、添字2はインク供給流路系、添字3はノズル流
路系をそれぞれ意味している。振動子系のP〔Pa〕は、
外部より加えられる圧力で、圧電素子22へ印加する電
圧パルスを等価圧力に変換したものである。また、〔〕
内はそれぞれの単位である。図2の等価電気回路をイン
クジェット記録装置で重要となる回路に分解すると、図
3に示す3つの電気回路となる。まず、これらの回路の
意味を以下に説明する。
【0018】図3(i)は振動子系のみの回路で、
【0019】
【数1】
【0020】で示される振動子で決る固有周期を持つ。
【0021】図3(ii)はインク加圧室とノズル流路
系とインク供給流路系からなる回路で、インク加圧室か
ら見るとノズル流路系とインク供給流路系が並列に接続
されており、
【0022】
【数2】
【0023】で示されるインク加圧室の音響容量に支配
されるインク流路系の固有周期を持つ。
【0024】図3(iii)はノズル流路系とインク供
給流路系の直列回路で、
【0025】
【数3】
【0026】で示されるノズル開口に形成されるインク
メニスカスの表面張力による音響容量に支配されるイン
ク流路系の固有周期を持つ。この回路は、インクメニス
カスの表面張力によって、共通インク室4からインク供
給流路6とインク加圧室5を経てノズル開口2までイン
クを供給する流れを記述している。
【0027】図2に示すインクジェット記録装置の要素
を連成させた全体系の等価電気回路が、図3に示す各部
分の電気回路に分解できるには、それぞれの固有周期が
互いに離れている必要が有る。
【0028】図1に示すインクジェット記録装置では、
【0029】
【数4】
【0030】の関係が成り立つため、図3の回路で本発
明の作用が理解できる。
【0031】図1に示すインクジェット記録装置へ、図
4(i)に示す電圧パルスを印加したときの応答(即ち
等価電気回路の応答)を説明する。電圧パルスは、時間
t1で示した圧電素子22の変形によりインク加圧室5
の容積が拡大する方向に電圧が変化する第1の期間と、
時間t2で示した電圧を一定に保持する第2の期間と、
時間t3で示した圧電素子22の変形によりインク加圧
室5の容積が縮小する方向に電圧が変化する第3の期間
からなっており、それぞれの期間で電圧の変化は直線と
した。この時の振動子先端変位の応答を図4(ii)
に、ノズル開口に形成されるインクメニスカスの応答を
図4(iii)に示す。
【0032】電気回路の過渡応答として良く知られるよ
うに、時刻0あるいは時刻T1あるいは時刻T2で不連
続に電圧(等価電気回路では圧力)が変化すると、振動
系に不連続の大きさに比例した、それぞれの固有周期の
運動が励起される。
【0033】振動子先端変位の応答には、電圧パルスの
立上り時間t1が固有周期Taに比べ十分に長いため、
時刻0とT1における不連続性によって励起される振動
は小さく、振動子はほぼ電圧パルスの変化にしたがって
応答する。電圧パルスの立下がりでは、時間t3が固有
周期Taとほぼ同程度の時間であるため、時刻T2にお
ける不連続性によって、固有周期Taで振動するオーバ
ーシュートが見られる。
【0034】この振動子先端変位によって励起されるイ
ンクの運動をインクメニスカスの応答として、図4(i
ii)を用いて説明する。電圧パルスの立上り時間t1
が固有周期Tcの数倍で、固有周期Tmとは同程度の時
間であるため、時刻0の不連続性によって、比較的大き
な固有周期Tmの振動に比較的小さな固有周期Tcの振
動が重畳する。固有周期Tmの振動によってインクメニ
スカスは、Tm/2の時間より少しかかってノズル開口
に戻ってくる。しかし、メニスカスがノズル開口に戻る
前の時刻T1で電圧パルスが不連続に変化し、電圧を一
定に保持する第2の期間となると、時刻0で励起される
不連続性と大きさが等しく符号が反対の振動が励起され
る。時間t2は固有周期Tmに比べ十分に短いため、第
2の期間におけるインクメニスカスの運動は固有周期T
cの振動の影響が支配的となる。即ち、この振動によっ
てメニスカスを急速にノズル開口に復帰させることがで
き、この効果が最も有効に作用するのが、時間t2が固
有周期Tcの1/4以上であることは、この条件で固有
周期Tcの振動速度が最大になり、メニスカスの復帰量
が十分に大きくなるからである。更に、時間t2が固有
周期Tcの3/4以下であれば、逆方向の振動によって
メニスカスがノズル開口から引き込まれることなく、早
くかつ安定して、第3の期間の始まりである時刻T2で
インクをノズル開口に復帰させることができる。したが
って、インクジェット記録装置の高応答が得られる。更
に、図4(i)に示した電圧パルスのように、電圧変化
が直線的であると、先に述べたように時刻0と時刻T1
の不連続性が、大きさが等しく符号が反対であるため、
温湿度等の環境変化や製造誤差による影響が相殺され、
特性を一定にする作用も生じる。
【0035】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。
【0036】図1は、本発明の実施例を適用するインク
ジェット記録装置の構成を示す断面図である。
【0037】図1において、流路形成部材3には、イン
ク加圧室5が細長い直線状のキャビティとして形成され
ており、キャビティの一端はインク供給流路6を経て共
通インク室4に連通している。この流路形成部材3はノ
ズル基板1と弾性板7とで挟み込まれて流路ユニットを
構成しており、インク加圧室5の他の一端はノズル基板
1にインク加圧室5に対応して形成されたノズル2に連
通している。
【0038】インク滴吐出の駆動源となる棒状の積層圧
電素子22は、その長手方向の約半分の一面を振動子基
板21に固着され、固着されない部分が振動子基板21
から梁状に突き出ている。積層圧電素子22は、梁状部
分で互い違いに交差する電極層26、27を持つ活性部
を有し、一方の電極層27は個別電極として、他方の電
極層26は共通電極として、図示していない外部の駆動
回路へ圧電素子22の表面に形成された電極層29、2
8を経て接続している。
【0039】流路ユニットと振動子基板22は、ヘッド
フレーム11によって相互に固定されている。インクは
図示していない外部のインクタンクより流路ユニットの
共通インク室4を経てインク加圧室5へと供給される。
インク加圧室5の壁を構成する弾性板7の部分は振動板
8として変形可能であり、インク加圧室5と反対面にイ
ンク加圧室5に対応して形成されている島状の厚肉部9
を持つダイアフラムとなっている。この島状の厚肉部9
に積層圧電素子22の梁状の先端が接合されている。振
動板8の島状の厚肉部9の周囲10は、肉厚が薄くなっ
ている。
【0040】図示していない外部の駆動回路より、積層
圧電素子22の個別電極27と共通電極26間に電圧が
印加されると、積層圧電素子22の活性部は長手方向に
縮み、インク加圧室5の振動板8を下方にたわませ、イ
ンク加圧室5の容積を拡大させる。インク加圧室5の容
積の拡大によって、インクが共通インク室4より供給流
路6を経て、インク加圧室5に供給される。引き続く時
間で個別電極27と共通電極26間の電圧印加が解除さ
れると、積層圧電素子22の活性部は元の長さに伸びイ
ンク加圧室5の容積を縮小させ、このとき発生する圧力
によってインク加圧室5を満たすインクの一部をインク
加圧室5に連通するノズル2よりインク滴として吐出さ
せる。このように、圧電素子の圧電歪みの方向の変位を
用いる振動子を縦振動子とよぶ。本実施例では、積層圧
電素子を用いたため、インク吐出に必要な圧電素子駆動
電圧を30V以下に抑えることができる。
【0041】次に、このインクジェット記録装置の特性
を、図3に示す等価電気回路を用いて具体的に説明す
る。
【0042】インク流路系のイナータンスmの計算は、
インクの密度をρ、流れの方向に直交する流路の断面積
をS、流れの方向に取った座標をxとすると、
【0043】
【数5】
【0044】によって計算される。定数κは、流れの振
動周波数に依存する係数で、ここでは、1.4を用い
る。
【0045】インク流路系の抵抗rの計算は、日本機械
学会編の機械工学便覧に記載されている層流の流体摩擦
の式を用いて行った。例えば、流路が直径dの円管の場
合には、インクの粘度をμとして、
【0046】
【数6】
【0047】によって計算される。
【0048】インク加圧室のコンプライアンスc1は、
インク加圧室を構成する部材の剛性とインクの圧縮性か
らなる。インク加圧室の剛性は式で記述することは難し
く、一般には有限要素法等による構造解析手法によって
数値的に求められる。
【0049】インクメニスカスの表面張力による音響容
量c3は、ノズルの直径をd、インクの表面張力をσと
して、
【0050】
【数7】
【0051】で計算した。
【0052】振動子系のコンプライアンスc0は、圧電
素子の長さをl、圧電素子の断面積をs、圧電素子の弾
性係数をyとすると、
【0053】
【数8】
【0054】によって振動子系の機械系で記述したばね
定数kが計算でき、これを音響系の音響容量へ、
【0055】
【数9】
【0056】を用いて変換することで求められる。ここ
でαは、振動板によって変化したインク加圧室の容積
と、その時の振動子の変位の比である。
【0057】振動子系のイナータンスm0は、固定−自
由の棒の縦振動の固有周期が、
【0058】
【数10】
【0059】となるから、式1と式10を用いてm0を
計算することができる。ここで、振動子系の計算では圧
電素子のみ考慮し、振動板を無視した。実際に本実施例
では、振動板は圧電素子に比べ非常に軽くばね定数も小
さいので、上式を用いてもよい数値が得られた。
【0060】本実施例を適用した図1に示すインクジェ
ット記録装置の典型的形状は、ノズル開口が直径38μ
m、長さが100μmであり、インク加圧室に向かって
拡がるようにテーパーが付けられている。インク加圧室
は、長さが1mm、幅が150μm、高さが200μm
の直方体に近い形状である。インク供給流路は、長さが
300μm、幅が70μm、高さが50μmの直方体に
近い形状である。圧電素子は長さが4mm、幅が500
μm、厚さが80μmである。
【0061】インクは水を主体に調製したもので、比重
は1、粘度は2mPa・s、表面張力は50mN/mで
ある。
【0062】これらの数値を用いて、図2の等価電気回
路のパラメタを計算すると、表1のようになる。
【0063】
【表1】
【0064】また、これらの数値を用いて、式1から式
3より計算される固有周期と、実験によって計測された
固有周期を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】実験による測定方法は、振動子系ではイン
ピーダンスアナライザやドップラー振動計を用いて行っ
た。インク流路系の測定は、振動子に正弦波状の入力を
加え、その時のノズル開口におけるインクメニスカスの
挙動を入力に同期させて発光するストロボスコープを用
いて観察すると、特定の周波数に対して、インクメニス
カスが大きく振動することによって確認した。また、通
常駆動によるインク吐出後のインクメニスカスの残留振
動を観察することによっても測定することができた。
【0067】次に、本実施例で用いた電圧パルスについ
て詳細に説明する。
【0068】図4(i)において、Vhはインクジェッ
ト記録装置に必要なインク滴重量によって決定される。
本実施例では、1インク滴当たりの重量として0.1μ
gが必要であり、そのためのVhは25Vであった。電
圧の立ち下がり時間t3は、インク滴の速度を決定する
上で重要である。t3を短くするほど、インク滴速度は
速くなる。しかし、本実施例のインクジェット記録装置
の様に振動子系の固有周期Taがインク加圧室の音響容
量に支配されるインク流路系の固有周期Tcより短い場
合には、必要以上にt3を短くしてもインク流路系は応
答せず、逆に必要以上の圧力変化を発生したり、振動子
系の振動がオーバーシュートし、インク滴を不安定にさ
せる。また、t3を固有周期Tcより十分短くしない
と、流路系の応答が小さくなり、インク滴重量と速度の
減少を引き起こす。そこで、実験により最適な値を求め
たところ、t3として6μsから9μsが得られた。こ
のことは、先に述べた作用と合わせると、t3は振動子
系の固有周期Ta以上で、固有周期Tcの1/2以下が
最適であると言える。
【0069】次に、図5に示すような電圧波形を用い
て、インク加圧室の容積が拡大する方向に電圧が変化す
る第1の期間の時間t1を変化させて、ノズル開口のイ
ンクメニスカスがノズル開口に戻ってくる時間(戻り時
間)を測定した。測定結果は、図6に示すようになっ
た。t1が120μsのときインクメニスカスの戻り時
間がt1と等しくなった。この値は固有周期Tmの1/
2より少し大きな値であった。t1が120μs以上で
はメニスカスの戻り時間はt1より短くなる。これは、
インクメニスカスがノズル開口よりほとんど引き込まれ
ることなく、インク加圧室の容積が拡大中であるにもか
かわらず、メニスカスが既に戻っていることを意味す
る。この様な条件では、インクを吐出させるためにイン
ク加圧室の容積が縮小する方向に電圧を変化させる第3
の期間に始まり時刻T2は、メニスカスの戻り時間では
なく第1の期間の時間t1で決ってしまうため、t1を
120μs以上にすることは、インク吐出の繰返し周波
数を低下させることになり好ましい駆動状態ではない。
更に、戻り時間より時間が経過すると、インクメニスカ
スは固有周期Tmの運動によってゆっくりとノズル開口
より突出してくる。この突出量が最大になるのは、イン
クメニスカスの戻り時間よりおよそTm/4後である。
本実施例のインクジェット記録装置では、電圧パルスを
加えてからおよそ170μsである。本発明者らが、実
験を重ねたところ、このように固有周期Tmのゆっくり
とした速度でインクメニスカスがノズル開口より突出し
た状態で急激にインク加圧室の容積を縮小させインク滴
を吐出させると、吐出するインク滴は図7(ii)に示
すような状態になり、著しく印字品質を低下させた。こ
の現象は、ゆっくりとしたメニスカスの突出によってノ
ズル開口部にインクの淀みができ、これがノズル内部よ
り急速に吐出するインクに引きずられ不安定なインク滴
を形成するためである。また、ゆっくりとしたインクメ
ニスカスの突出は、ノズル開口部の濡れ性の影響を大き
く受けるため、ノズル基板1のノズル開口部周辺の濡れ
性が、記録紙の紙紛等によって劣化すると、インク滴の
飛行曲がりやサテライトインク滴が発生してしまう。従
って、時間t1+t2は、この電圧パルスにおけるメニ
スカスの戻り時間+Tm/4より短くし、好ましくはメ
ニスカスの戻り時間+Tm/8より短くするべきであ
る。
【0070】図6においてt1が100μsと110μ
sでは、メニスカスの戻り時間が速くなっている。これ
は、先に説明したように時刻T1で電圧パルスが第2の
期間となることによって、インク加圧室の音響容量に支
配されるインク流路系の固有周期Tcの振動が励起さ
れ、メニスカスの戻りが加速されたためである。また、
この場合の戻り時間は、環境変化や製造誤差の影響を受
け難いことが確認された。
【0071】更にt1を短くすると、メニスカスがノズ
ル開口から深く後退しているため、時刻T1の不連続性
による振動でもノズル開口までメニスカスが復帰しなか
った。しかし、更にt1を短くし、例えば50μsとす
ると、t1がTcに近くなるため、固有周期Tcの大き
な振幅の振動が励起され、メニスカスの復帰が加速され
る。しかしながら、この振動は非常に大きいため、制御
することが困難で、環境変化や製造誤差によってインク
滴の吐出特性が大きく変わってしまい、実用的ではなか
った。
【0072】以上により、インク加圧室5の容積が拡大
する方向に電圧が変化する第1の期間は、インクメニス
カスが復帰する時間(上記の例では120μs)より最
大でTcだけ短くすると良いことが判明した。
【0073】次に、図4(i)の電圧パルスで、t1を
110μsとして、第2の期間の時間t2を変化させ
て、インク滴重量を測定した結果を図8に示す。この結
果より、t2がTcの1/4以上で特性が一定となる傾
向を示している。更に一定の特性を安定させ、環境変化
や製造誤差等の種々外乱に対して、その影響を受け難く
するには、t2はTcの1/4以上3/4以下とするべ
きであった。t2を更に大きくするとインク重量が増加
しており、効果的であるように見えるが、これは、先に
説明したように、固有周期Tmの振動によってインクメ
ニスカスが突出するためインク重量が増加することによ
る。しかし、この状態では図7(ii)のインク滴の飛
行状態であるため好ましくない。また、t2をTcの1
/2である10μsとしたときの良好な飛行状態を図7
(i)に示す。
【0074】以上述べた実施例では、電圧パルスとして
直線状に変化する台形波を用いたが、完全な台形波でな
くとも時刻0と時刻T1で不連続に近い変化をする電圧
パルスであれば、上記実施例に近い作用と効果が生じ
る。
【0075】
【発明の効果】本発明の上記の構成によれば、インクメ
ニスカスがノズル開口に戻る時間を短縮することが可能
となり、必要なインク滴重量を効率良く確保しながら
も、繰返しのインク滴吐出を高速化できるという効果を
有する。この時、インク滴の吐出特性は良好であり、か
つ、製造誤差や環境変化等による外乱の影響を受けない
インクジェット記録装置を提供できるという効果を有す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を適用したインクジェット記録
装置の部分断面図である。
【図2】本発明の実施例の作用を説明する等価電気回路
図である。
【図3】本発明の実施例の作用を説明する等価電気回路
図である。
【図4】本発明の実施例を説明する電圧パルスとそれに
よる応答のグラフである。
【図5】本発明の実施例を説明する電圧パルスのグラフ
である。
【図6】本発明の実施例を説明する、メニスカスの挙動
を示すグラフである。
【図7】本発明の効果を説明する、インク滴の飛行状態
を示す図である。
【図8】本発明の効果を説明する、メニスカスの挙動を
示すグラフである。
【符号の説明】
1 ノズル基板 2 ノズル 3 流路形成部材 4 共通インク室 5 インク加圧室 7 弾性板 8 振動板 9 振動板の島状の厚肉部 10 振動板の薄肉部 11 ヘッドフレーム 22 圧電素子 t1 第1の期間の時間 t2 第2の期間の時間 t3 第3の期間の時間

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ノズルに連通するインク加圧室と、一端
    が前記インク加圧室を構成する振動板に当接する縦振動
    の圧電素子とを備え、前記圧電素子に略台形状の電圧パ
    ルスを印加して、前記インク加圧室を膨張させ、その後
    に前記インク加圧室を収縮させて前記ノズルからインク
    滴を吐出させるインクジェット記録装置において、 前記電圧パルスは、前記圧電素子を収縮させて前記イン
    ク加圧室の容積を拡大させる方向に電圧が変化する第1
    の期間と、所定電圧に所定時間t2だけ保持する第2の
    期間と、前記圧電素子を伸長させて前記インク加圧室の
    容積を収縮させる方向に電圧が変化する第3の期間とか
    らなり、前記第2の期間の所定時間t2が、前記インク
    加圧室の音響容量に支配されるインク流路系の固有周期
    Tcの1/4乃至3/4に設定されているインクジェッ
    ト記録装置。
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