JP3207267B2 - N−アルキルマレイミド化合物の輸送ないし貯蔵方法 - Google Patents

N−アルキルマレイミド化合物の輸送ないし貯蔵方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明はN−アルキルマレイミド
化合物の着色防止方法およびN−アルキルマレイミド化
合物を加熱溶融し、着色を生じることなく、安全かつ簡
単に輸送ないし貯蔵する方法に関する。N−アルキルマ
レイミド化合物は光学材料として用いられているポリメ
タクリル酸メチル、ポリスチレンなどの透明性熱可塑性
樹脂の耐熱性を向上させるための共重合用単量体などと
して有用である。
【従来の技術】マレイミド化合物は一般に固体または加
熱溶融状態(液体)で取り扱われる。例えば、固体状の
マレイミド化合物は常温においてタブレット、フレー
ク、粉体などの形態で取り扱われ、その貯蔵時の荷姿も
フレコンバック入り、ドラム缶入り、ガロン缶入り、紙
袋入り、タンクコンテナ入りなどさまざまである。ま
た、加熱溶融状態のマレイミド化合物は貯蔵タンクなど
に入れて貯蔵される。マレイミド化合物は人体に対して
刺激性があり、特にその微粉末を吸収すると鼻腔、咽喉
を刺激して咳、くしゃみを引き起こし、また皮膚に付着
したまま放置すると炎症を起こすなど好ましくない性質
を有している。このため、微粉末状のマレイミド化合物
を取り扱う場合には、できる限り皮膚への接触を避ける
ように厳重な注意を払う必要がある。このように常温で
固体のマレイミド化合物の輸送(または移送)方法には
数々の困難な問題がある。同様のことは、その貯蔵方法
についてもいえる。特に、マレイミド化合物のなかでも
N−アルキルマレイミド化合物は、その融点が常温付近
にあるため、僅かな温度変化により固体から液体、ある
いは液体から固体へと相変化してしまうことから、その
取り扱いは非常に困難である。マレイミド化合物の上記
問題点を解決するため、特開平4−26673号公報に
は、マレイミド化合物を融点以上に加熱して溶融品すな
わち液状品として輸送ないし貯蔵する方法が開示されて
いる。この方法は、人体に悪影響を与えるマレイミド化
合物の微粉末の発生もないことから、固体品として扱う
方法に比較して優れた方法といえる。しかし、上記方法
によっても、溶融状態のN−アルキルマレイミド化合物
は輸送ないし貯蔵中に徐々に着色し、極端な場合には全
く透明性を失ってしまうという問題がある。N−アルキ
ルマレイミド化合物の着色はその使用に際し大きな問題
となる。その理由は、N−アルキルマレイミド化合物は
光学材料に用いられているポリメタクリル酸メチル、ポ
リスチレンなどの透明性熱可塑性樹脂の耐熱性を改良す
る目的で共重合用単量体として用いられるため、N−ア
ルキルマレイミド化合物が着色していると、これを用い
て得られる透明性熱可塑性樹脂も着色し、その商品価値
が大幅に低下してしまうからである。かくして、N−ア
ルキルマレイミド化合物は高い透明性と着色が全くない
ことが要求される。なお、これら透明性熱可塑性樹脂は
通常溶液重合法または注型重合法により製造されるが、
これら重合反応中でも、一度着色したN−アルキルマレ
イミド化合物の色は軽減されることはなく、最終製品の
色にも影響してしまう。このように、高度の透明性が要
求される、耐熱性の熱可塑性樹脂の着色を防止するため
には、N−アルキルマレイミド化合物の着色を根本的に
防止する必要がある。
【発明が解決しようとする課題】本発明の一つの目的
は、N−アルキルマレイミド化合物の着色を効果的に防
止する方法を提供することである。本発明の他の目的
は、溶剤に溶解することなく、融点以上に加熱した溶融
状態、すなわち微粉末が発生する心配のない安全な液状
品としてN−アルキルマレイミド化合物を輸送ないし貯
蔵する際のN−アルキルマレイミド化合物の着色を効果
的に防止した、N−アルキルマレイミド化合物の輸送な
いし貯蔵方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】本発明者らは、N−アル
キルマレイミド化合物の着色について鋭意研究した結
果、N−アルキルマレイミド化合物の着色の原因はN−
アルキルマレイミド化合物自体の経時変化によるもので
はなく、N−アルキルマレイミド化合物中の水分による
ものであること、すなわちN−アルキルマレイミド化合
物は一般に無水マレイン酸と第一アミン類とを反応させ
てN−アルキルマレインアミド酸類とし、これを加熱脱
水によりイミド化した後、水洗によって精製するため製
品N−アルキルマレイミド化合物への水の混入は不可避
であり、この水がN−アルキルマレイミド化合物の輸送
ないし貯蔵中にその加水分解を徐々に引き起こし、この
加水分解によって生成した着色物質がN−アルキルマレ
イミド化合物の着色の原因となること、またその水含量
を特定範囲内に調整することにより上記目的が達成でき
ることを知り、この知見に基づいて本発明を完成するに
至った。すなわち、第一の発明は、N−アルキルマレイ
ミド化合物中の水含量を0.5重量%以下にすることを
特徴とするN−アルキルマレイミド化合物の着色防止方
法である。第二の発明は、N−アルキルマレイミド化合
物を加熱溶融して輸送ないし貯蔵する際に、該化合物の
水含量を0.5重量%以下にして着色を防止することを
特徴とするN−アルキルマレイミド化合物の輸送ないし
貯蔵方法である。以下、本発明を詳細に説明する。本発
明におけるN−アルキルマレイミド化合物のアルキル基
は炭素数1〜20程度のものであり、直鎖状でも、ある
いは分岐状でもよい。具体例としては、N−メチルマレ
イミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミ
ド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレ
イミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert
−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オ
クチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステ
アリルマレイミドなどを挙げることができる。本発明は
上記N−アルキルマレイミド化合物の水含量を0.5重
量%以下に調整し、維持することを特徴とするものであ
り、これによりN−アルキルマレイミド化合物の着色を
効果的に防止することができる。N−アルキルマレイミ
ド化合物は、通常、無水マレイン酸と第一アミン類とを
反応させてマレインアミド酸類とし、このマレインアミ
ド酸類を脱水反応によりイミド化して製造される。マレ
インアミド酸類を脱水反応によりイミド化する方法とし
ては、例えば(1)トルエン、キシレン、クロロベンゼ
ンなどの非極性溶媒、あるいはこの非極性溶剤とジメチ
ルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピ
ロリドン、スルホランなどの極性溶剤との混合物を希釈
剤として用い、酸触媒の存在下に加熱脱水する方法、
(2)希釈剤を用いることなく酸触媒の存在下に直接加
熱脱水する方法、(3)無水酢酸のような脱水剤を用い
て脱水する方法、(4)有機溶剤を用い、酸触媒と安定
剤の存在下に加熱脱水する方法などが知られている。上
記脱水反応により得られた粗製N−アルキルマレイミド
化合物は続いて精製工程に供され、ここで水洗処理およ
び必要に応じて溶剤分離処理を行う。先ず、反応液から
N−アルキルマレイミド化合物を結晶として析出させ、
この結晶を分離した後水洗処理して結晶中の不純物を除
去するか、あるいは反応液をそのまま水洗処理して反応
液中の無水マレイン酸、第一アミン類、フマル酸、N−
アルキルマレインアミド酸類およびその他の水可溶性の
不純物を除去する。反応液をそのまま水洗処理する場合
には、引続き、N−アルキルマレイミド化合物を含有し
た反応液(有機溶剤中)を精製処理して有機溶剤を分
離、除去し(以下、「溶剤分離処理」または「溶剤分離
工程」という場合もある)、製品N−アルキルマレイミ
ド化合物を得る。しかし、例えば反応液をそのまま水洗
処理した後、溶剤分離処理する場合、水が有機溶剤に溶
解するため、その処理条件によっては製品N−アルキル
マレイミド化合物の水含量が大きく変化する。例えば、
蒸留法により分離する場合、単蒸留によっては製品N−
アルキルマレイミド化合物への水の混入は不可避であ
る。また、N−アルキルマレイミド化合物は非常に吸湿
性が高いため保存中に水を吸収してしまう場合もある。
かくして、製品N−アルキルマレイミド化合物中には不
純物として水が含有されることになる。なお、本発明の
N−アルキルマレイミド化合物は上記方法によって製造
されたものに限定されるものではなく、いずれの方法に
よって得られたN−アルキルマレイミド化合物も本発明
の対象となり得るものである。本発明において、N−ア
ルキルマレイミド化合物の水含量を0.5重量%以下に
するには各種方法によって行うことができるが、以下に
代表的な方法を説明する。前記無水マレイン酸と第一ア
ミン類とを出発原料とする公知の方法によって得られ
た、N−アルキルマレイミド化合物を含有した反応液を
そのまま水洗処理して反応液中の無水マレイン酸、第一
アミン類、フマル酸、N−アルキルマレインアミド酸類
およびその他水可溶性の不純物を除去する。この水洗処
理においては、粗製N−アルキルマレイミド化合物は有
機溶剤に溶解しておくほうが水洗処理が容易となるので
好ましい。この目的のために使用する有機溶剤として
は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメ
ン、エチルベンゼン、シメン、クロロベンゼンなどが好
適に使用されるが、これら有機溶剤はジメチルホルムア
ミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、
スルホランなどの極性溶剤とともに使用することもでき
る。特に、N−アルキルマレイミド化合物の製造工程に
おいて、上記のような有機溶剤が用いられる場合には、
反応液をそのまま水洗処理に供することができるので特
に好ましい。上記水処理はバッチ式でも半回分式でもよ
いが、連続式による短時間の効率のよい水洗処理を行う
のが好ましい。具体的には、N−アルキルマレイミド化
合物を含有する反応液である有機溶剤層と水層とを10
〜100℃の範囲で空塔または充填塔、もしくは段塔で
連続的に0.1〜60分間接触させることにより効率よ
く水可溶性成分を除去することができる。この水処理に
おいては、N−アルキルマレイミド化合物は水との接触
により溶解度分の水を容易に溶解してしまうため、これ
に続く溶剤分離処理において、この工程での負担は大き
くなるが、溶解した水をできる限り留去する条件を設定
しなければならない。上記反応液、すなわちN−アルキ
ルマレイミド化合物、水および有機溶剤からなる混合液
を溶剤分離工程に導入して、ここで有機溶剤および水を
加熱により留去する。この溶剤分離工程は、前記水処理
と同様に、バッチ式でも連続式でもよいが、連続式によ
り、短時間に効率よく有機溶剤および水を留去するのが
好ましい。この目的のためには、精留塔、液膜流下式濃
縮器、薄膜蒸発器などが特に好適に使用される。かくし
て、水含量を0.5重量%以下に調整されたN−アルキ
ルマレイミド化合物が得られる。N−アルキルマレイミ
ド化合物の水含量はできるだけ少ないほうが好ましい
が、実質的に0ppm(検出不能)とするには極めて過
酷な操作条件を必要とし、必然的に大幅なコストアップ
となって経済的ではない。加熱溶融したN−アルキルマ
レイミド化合物の輸送ないし貯蔵時の着色を防止するに
は、その防止効果、経済性なども考慮して、その水含量
を0.5重量%以下とすればよく、特に0.5重量%〜
10ppm(重量)の範囲にするのが好ましい。N−ア
ルキルマレイミド化合物は吸湿性であるため大気中に放
置すると水分を吸収して水含量が増加し、その結果着色
する場合もある。このため、N−アルキルマレイミド化
合物の製品容器への充填に当たっては、水分の吸収を少
なくするために乾燥不活性ガスあるいは空気で容器の空
間部をシールしておくことも有効である。また、加熱溶
融したN−アルキルマレイミド化合物は密閉容器中で輸
送ないし貯蔵するのがよい。さらに、本発明者らの研究
によれば、N−アルキルマレイミド化合物中に未反応原
料である無水マレイン酸および/またはその反応中間体
であるN−アルキルマレインアミド酸が含有されている
場合、この酸成分により酸性度が上がるにともなって水
による加水分解が促進され、N−アルキルマレイミド化
合物の着色速度が速くなり、特に無水マレイン酸および
N−アルキルマレインアミド酸の含量が各々1000p
pmを超えるとその影響が大きくなること、またN−ア
ルキルマレイミド化合物の着色は未反応原料である第一
アミン類によっても促進され、特にその含量が1000
ppmを超えるとその影響が大きくなることが判明し
た。このため、水が原因となる着色物質の生成を助長す
る無水マレイン酸、第一アミン類およびN−アルキルマ
レインアミド酸類はできるだけN−アルキルマレイミド
化合物中に混入しないようにするのが好ましい。無水マ
レイン酸およびN−アルキルマレインアミド酸の含量は
N−アルキルマレイミド化合物の精製工程において各々
1000ppm以下とするのが好ましい。また、第一ア
ミン類の場合、原料としての無水マレイン酸と第一アミ
ン類とのモル比が1に近い場合や、第一アミン類のほう
が過剰である場合には、その残存量は多くなる。また、
生成N−アルキルマレイミド化合物を含有した反応液の
水洗処理において、N−アルキルマレイミド化合物が水
によって加水分解し、第一アミン類を生成してしまう場
合もある。さらに、N−アルキルマレイミド化合物の製
造、精製などの工程で原料第一アミン類から副生した不
純物が熱により分解し、第一アミン類を再び遊離する場
合もある。このため、例えば無水マレイン酸(M)と第
一アミン類(A)とのモル比(M/A)を1以上にして
N−アルキルマレイミド化合物を製造し、第一アミン類
の含量を1000ppm以下とするのが好ましい。ま
た、無水マレイン酸、N−アルキルマレインアミド酸お
よび第一アミン類の含量を各々1000ppm以下とす
るために、精製工程では連続式による短時間の効率のよ
い水洗処理を、また溶剤分離工程では、連続式により高
温下での滞留時間を短くするなど各工程における諸条件
を最適化するのが好ましい。
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明する。 実施例1 マレイミド化合物として表1に示す性状と組成とを有す
るN−イソプロピルマレイミド100gをステンレス製
の容器(直径5cm、高さ10cmの円筒状容器)に密
封して、温度を40℃に保ち、直射日光はあたらいない
ようにした。貯蔵期間は1年間であり、この間3ヶ月毎
に内容物を取り出し、その外観を観察した。結果を表1
に示す。 実施例2 実施例1において、マレイミド化合物として表1に示す
性状と組成とを有するN−イソプロピルマレイミドを用
いた以外は実施例1と同様にして貯蔵による外観変化を
観察した。結果を表1に示す。
【表1】 比較例1〜3 実施例1において、マレイミド化合物として表2に示す
性状と組成とを有するN−イソプロピルマレイミドを用
いた以外は実施例1と同様にして貯蔵による外観変化を
観察した。結果を表2に示す。いずれも水含量が0.5
重量%を超えるため貯蔵により着色が生じた。また、水
以外の不純物によっても着色が促進されることが分か
る。
【表2】 実施例3 実施例1において、マレイミド化合物として表3に示す
性状と組成とを有するN−tert−ブチルマレイミド
を用いた以外は実施例1と同様にして貯蔵による外観変
化を観察した。結果を表3に示す。 実施例4 実施例1において、マレイミド化合物として表3に示す
性状と組成とを有するN−n−ブチルマレイミドを用い
た以外は実施例1と同様にして貯蔵による外観変化を観
察した。結果を表3に示す。
【表3】 比較例4〜6 実施例1において、マレイミド化合物として表4に示す
性状と組成とを有するN−tert−ブチルマレイミド
とN−n−ブチルマレイミドを用いた以外は実施例1と
同様にして貯蔵による外観変化を観察した。結果を表4
に示す。いずれもの水含量が0.5重量%を超えるため
貯蔵により着色が生じた。また、水以外の不純物によっ
て着色が促進されることが分かる。
【表4】
【発明の効果】本発明の方法によれば、N−アルキルマ
レイミド化合物の水含量を0.5重量%以下にすること
により着色を効果的に防止することができる。また、N
−アルキルマレイミド化合物を加熱溶融して輸送ないし
貯蔵する際に、その水含量を0.5重量%以下にするこ
とにより、着色を防止し、安全かつ簡単に輸送ないし貯
蔵することが可能となる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 207/448 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 N−アルキルマレイミド化合物を液状品
    として輸送ないし貯蔵する際に、該化合物の水含量を
    0.5重量%以下にして着色を防止することを特徴とす
    N−アルキルマレイミド化合物の輸送ないし貯蔵方
  2. 【請求項2】 N−アルキルマレイミド化合物を加熱溶
    融して輸送ないし貯蔵する際に、該化合物の水含量を
    0.5重量%以下にして着色を防止することを特徴とす
    るN−アルキルマレイミド化合物の輸送ないし貯蔵方
    法。
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