JP3200256B2 - アルギン酸塩ゲル - Google Patents

アルギン酸塩ゲル

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JP3200256B2 JP21996293A JP21996293A JP3200256B2 JP 3200256 B2 JP3200256 B2 JP 3200256B2 JP 21996293 A JP21996293 A JP 21996293A JP 21996293 A JP21996293 A JP 21996293A JP 3200256 B2 JP3200256 B2 JP 3200256B2
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    • C08B37/0084Guluromannuronans, e.g. alginic acid, i.e. D-mannuronic acid and D-guluronic acid units linked with alternating alpha- and beta-1,4-glycosidic bonds; Derivatives thereof, e.g. alginates
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、特に、創傷用包帯としての並び
に他の医学的及び外科手術的利用における使用に関する
アルギン酸塩ゲル及びそれらの製造に関する。アルギン
酸塩は、褐色の海藻から抽出される天然物質である。そ
れらは、グルロン酸(G) 及びマンヌロン酸(M) のコポリ
マーである多糖類である。このポリマー中のG とM との
割合、並びにこのポリマー中のG 及びM ブロックの分布
は、前記アルギン酸源に依存する。いくつかのアルギン
酸、例えば、アルギン酸ナトリウム及びカリウムは、水
に可溶である。他のアルギン酸塩、例えば、アルギン酸
カルシウム及び亜鉛は、アルギン酸がそうであるよう
に、水に不溶である。水に不溶のアルギン酸塩ファイバ
ーは、水に可溶なアルギン酸塩、例えばアルギン酸ナト
リウムの水溶液を、紡糸口金を通して、沈殿化( 不溶
化) カチオン、例えばカルシウムを含む水溶液に押し出
すことにより製造されてきた。水に可溶なアルギン酸塩
ファイバーは、水に可溶なアルギン酸塩を、紡糸口金を
通して、親水性有機溶媒、例えばエタノールの沈殿浴に
押し出すことにより製造されてきた。アルギン酸塩ゲル
は、水に可溶なアルギン酸塩水溶液と沈殿化カチオン水
溶液とを混合することにより製造されてきた。
【0002】外科手術包帯におけるアルギン酸塩材料の
使用は、例えば、粉体、ファイバー及びゲルの形態にお
いて、よく知られている。包帯において使用されるアル
ギン酸塩材料は、治療目的のために、少量又は多量のカ
チオン、例えば亜鉛、銅、銀、セリウム、マンガン又は
コバルトを取り込むことができる。アルギン酸塩ファイ
バーは、織物、編み物又は非織物の形態で、包帯におい
て使用されることができる。乾燥アルギン酸塩包帯( 粉
体又はファイバー) において使用されるアルギン酸塩材
料は、一般的には、アルギン酸カルシウム、又は、カル
シウムとナトリウムとの等量比が30:70 から70:30 若し
くは95:5の範囲にあるアルギン酸カルシウム・ナトリウ
ムである。乾燥アルギン酸塩包帯は、創傷の脱水効果を
もつことができ、そして一般的な手順は、その創傷に使
用する前に水又は生理食塩水により、このような包帯を
湿らせることである。創傷用包帯への利用において使用
されるアルギン酸塩ゲルは、一般的には、アルギン酸塩
カルシウム・ナトリウム・ゲルである。このようなゲル
は、高い水分含有量をもっており、そして使用前に湿ら
せることを必要としない。
【0003】可溶化カチオン、例えばナトリウム及び不
溶化カチオン、例えばカルシウムの両方を含むアルギン
酸塩材料が、いくつかの創傷用包帯への利用において好
まれることができる。このような材料は、不溶化カチオ
ンを単独で含むものよりも、より高い親水性をもち、そ
して、より吸収性が高い。アルギン酸カルシウム・ナト
リウムのファイバー及びゲルは、このような材料の例で
ある。アルギン酸カルシウム・ナトリウムのファイバー
は、良好な機械的性質をもち、そして扱いやすいが、し
かしながら、それらの製造は、アルギン酸カルシウム・
ファイバー内のカルシウムイオンをナトリウムイオンに
より部分的に置換することを含む複雑な工程である。公
知のアルギン酸塩ゲルは、取扱に困難を伴う非晶質材料
である。本発明の目的は、改良された機械的性質をもつ
アルギン酸塩ゲルを提供することである。本発明の他の
目的は、このようなゲルの便利な製造方法を提供するこ
とである。
【0004】G.Blaine,in Annals of Surgery, Volume
125 (1947),pages 102-114は、アルギン酸塩ゲルを、柔
軟で、可とう性の固まりの形態に形成するための、水溶
性のアルギン酸ナトリウム溶液と水溶性の塩化カルシウ
ム溶液との反応について記載している。アルギン酸塩
は、Kelco International(London) 出版の'Properties
of Alginates' R.H.McDowell著, 第5 版(1986)の中に詳
しく調べられている。この刊行物は、アルギン酸塩ゲル
が、カルシウムイオンをアルギン酸ナトリウム溶液に導
入することにより調製されることができることを述べて
いる。高強度ゲルは、高い割合のG ブロックを含むアル
ギン酸塩から調製される。遊離のカルシウムイオンとア
ルギン酸塩との間の反応は、比較的速く、そのため、強
い不可逆ゲルを与えるのに十分なカルシウムの導入が、
その速く形成された網状構造を破壊するであろう剪断を
伴わずに、その全体容量にわたり分配されてしまうとい
う問題を引き起こす。
【0005】WO-A-89/12471 は、第一及び第二カチオン
をもつ混合塩のアルギン酸塩ゲル・ファイバーを含んで
成る湿ったパッドにより調製された創傷用包帯について
記載している。この第一カチオン( 例えば、カルシウ
ム) は、不溶のアルギン酸塩を形成することができ、そ
してこの第二カチオン( 例えば、ナトリウム) は、可溶
のアルギン酸塩を形成することができ、この第一対第二
カチオンの等量比は、30:70 から70:30 、好ましくは約
50:50 である。この第二( 可溶化) カチオンの性質によ
り、このシートは、湿らせたとき、ゲル様の品質を手に
入れる。この湿潤液は、好ましくは滅菌水溶液、例えば
蒸留水又は生理食塩水である。このパッドは、一般的に
は、織物、編み物又は好ましくは非織物であってもよい
シートの形態で提供される。本発明は、1つの視点にお
いては、2 〜11重量パーセントの範囲内( アルギン酸と
しての表示) のアルギン酸塩含有量をもつ繊維性パスタ
の形態をもつことを、特徴とするアルギン酸塩ゲルを提
供する。
【0006】本発明は、他の視点においては、繊維性パ
スタの形態に前記ゲルを形成するために、水に不溶の、
又は水に膨潤するアルギン酸塩ファイバーが、可溶化塩
の水溶液により処理されることを特徴とする、アルギン
酸塩ゲルの製造方法を提供する。可溶化塩は、水に可溶
なアルギン酸塩を形成することができるカチオンを含む
塩として定義され、そしてこのカチオンは、可溶化カチ
オンと称してもよい。本発明に記載の、繊維性パスタの
形態のアルギン酸塩ゲルは、例えば、オリフィスを通し
ての成型、塗布又は押出しにより難なく変形される粘性
ペーストの形態をもつ。本発明のアルギン酸塩ゲルは、
一般的に、透明又は半透明のヒドロコロイド若しくはヒ
ドロゲルの形態をとる。ファイバーの構造は、肉眼観察
又は顕微鏡観察のいずれかを用いてそのゲル中に観察さ
れることができ、ファイバー材料は、そこから少量、手
で引き出されることができる。本発明のアルギン酸塩ゲ
ルは、従来技術のアルギン酸塩ゲルよりもはるかに簡単
に取扱われることができ、そして、良好な保形性をも
つ。
【0007】本発明に記載の繊維性ゲルのアルギン酸塩
含有量( 前記のようにアルギン酸として表示された)
は、好ましくは、10重量パーセント以下である。このゲ
ルのアルギン酸塩含有量は、少なくとも3 又は4 重量パ
ーセントでもよい。3 〜7 重量パーセントの範囲のアル
ギン酸塩含有量をもつゲルが、好まれることができる。
【0008】本発明に記載の繊維性アルギン酸塩ゲル
は、好ましくは、可溶化カチオンとしてナトリウムを、
不溶化カチオンとしてカルシウムを含む。これらのカチ
オンは、単独で、又は他の好適なカチオンと一緒に使用
してもよい。この不溶化カチオンは、ポリマーのカチオ
ン、例えば、キトサンを含んで成ることができる。本発
明に記載の繊維性アルギン酸塩ゲルは、一般的には、0.
6 〜1.4 重量% の範囲の、好ましくは0.6 〜1.0%の範囲
の、より好ましくは0.6 〜0.9%の範囲の、さらに好まし
くは0.65〜0.75% の範囲の含有量のナトリウムイオンを
もつ。本発明の繊維性ゲルは、等張性又は中程度の低張
性若しくは高張性でもよい。本発明の繊維性ゲルは、あ
るいは、例えば、少なくとも5 重量パーセントの、又は
少なくとも10パーセントの塩化ナトリウムを含む高い高
張性でもよい。本発明に記載のゲルは、好ましくは、1
重量% 以下、より好ましくは0.6 % 以下の含有量のカル
シウムイオンをもつ。本発明に記載のゲルは、好ましく
は、少なくとも0.05重量% の、より好ましくは少なくと
も0.1%の、さらに好ましくは0.10〜0.45重量% 又は0.15
〜0.35% の範囲の含有量のカルシウムイオンをもつ。本
発明に記載のゲルの水分含有量は、一般的には、少なく
とも85重量% であり、そして少なくとも90% であっても
よい。本発明に記載のゲルの水分含有量は、一般的に
は、約97〜98重量% 以下である。本発明に記載の固形含
有量( オーブン乾燥により測定された) は、好ましく
は、3 〜10重量% の範囲、より好ましくは3.5 〜8.0 重
量% の範囲にある。
【0009】上記のアルギン酸塩は、高-G又は高-Mアル
ギン酸塩でもよい。約50:50 より大きい、より好ましく
は約55:45 〜75:25 の範囲のM:G 比をもつ高-Mアルギン
酸塩が好まれることができる。繊維性ゲルが、高-Gアル
ギン酸塩からよりも高-Mから、本発明の方法により、よ
り難なく形成されることができることが、驚くべきこと
に発見された。本発明に記載の高-Mアルギン酸塩ゲル中
の、カルシウム対ナトリウムの重量比は、好ましくは5
0:50 以下であり、そして好ましくは少なくとも5:95、
より好ましくは少なくとも10:90 である。本発明に記載
の高-Gアルギン酸塩ゲル中の、カルシウム対ナトリウム
の重量比は、好ましくは20:80 以下であり、そして好ま
しくは少なくとも2:98である。本発明に記載の高-Mアル
ギン酸塩ゲル中の、カルシウム対アルギン酸の重量比
は、好ましくは0.06:1以下であり、そして好ましくは少
なくとも0.02:1である。本発明に記載の高-Gアルギン酸
塩ゲル中の、カルシウム対アルギン酸の重量比は、好ま
しくは0.03:1以下であり、そして好ましくは少なくとも
0.0025:1である。
【0010】本発明の方法の中で使用されるアルギン酸
塩ファイバーは、一般的に、1 〜10デシテックスの範囲
の、好ましくは2 〜5 デシテックスの範囲の単位重量を
もつ。このアルギン酸塩ファイバーは、連続性フィラメ
ント又はステープルファイバーの形態で使用されること
ができる。但し、ステープルファイバーが一般的には好
まれる。このようなアルギン酸塩ファイバーのステープ
ルの長さは、不可欠ではないが、一般的には5 〜100mm
の範囲にあってもよい。デシテックス又はステープルの
長さ、あるいは両方の範囲の材料から成るファイバー
は、本発明における使用に好適である。自然乾燥ファイ
バー又は湿式ファイバー、例えば、非乾燥ファイバー
が、本発明において使用されてもよい。上記の可溶化塩
の溶液による処理前に、上記アルギン酸塩ファイバー
は、他の医薬として許容されるファイバー、例えば、ペ
クチン又はカラゲニンのファイバーと共に混合せれても
よい。このアルギン酸塩ファイバーは、好ましくはステ
ープルファイバーの緩やかな組み立て物、例えば、カー
ド・ウェブの形態で提供される。アルギン酸塩ファイバ
ーの布、例えば、織物、編物又は不織物の布は、一般的
には好ましくない。本発明の方法においては、アルギン
酸塩ファイバーを可溶化塩の溶液で処理することが、上
記ファイバーを膨潤させる。布内への取り込みにより拘
束されたファイバーは、一般的に、所望の程度までの可
溶化塩の溶液による処理の間、膨潤しないこと、そし
て、結果として、繊維性ゲルが形成されないことが、判
明している。可溶化塩の水溶液により処理されたとき
は、アルギン酸塩の粉体は、繊維性ゲルを形成しない。
【0011】本発明の方法において使用されるアルギン
酸塩ファイバーは、便利には、水に不溶のアルギン酸
塩、特にアルギン酸カルシウムである。他の水に不溶の
アルギン酸塩、例えば、アルギン酸亜鉛を、使用しても
よい。このような水に不溶のアルギン酸塩内のカチオン
は、不溶化カチオンと称してもよい。不溶化カチオンの
1 つより多いタイプを含む、水に不溶のアルギン酸塩フ
ァイバーが使用されてもよい。この水に不溶のアルギン
酸塩ファイバーは、あるいは、水素カチオン、例えば、
アルギン酸ファイバー又はアルギン酸水素カルシウムフ
ァイバーを含んでもよい。この不溶化カチオンは、ポリ
マーのカチオン、例えば、キトサンを含んで成ることも
できる。あるいは、水膨潤可能なアルギン酸塩ファイバ
ー、例えば、アルギン酸カルシウム・ナトリウム・ファ
イバーが、使用されてもよい。
【0012】上記の可溶化塩は、好ましくはナトリウム
塩、例えば、塩化ナトリウムである。生理学的に許容さ
れるアニオンをもつ他のナトリウム塩、例えば、酢酸ナ
トリウム及びクエン酸ナトリウムも、使用されることが
できが、一般的には、ほとんど好まれない。他のカチオ
ン、例えばマグネシウム、アンモニウム又は置換された
アンモニウムの可溶化塩も、使用されることができる。
アルギン酸ナトリウムの溶液を、使用してもよい。可溶
化塩の混合物を使用してもよい。上記溶液中の可溶化塩
の濃度は、好ましくは、生理学的に許容される濃度の可
溶化カチオンを含むゲルを提供するように選ばれる。生
理学的又は等張性の生理食塩水が、本発明の方法におけ
る使用のための溶液として好まれることができる。この
水溶液は、場合によっては、少ない割合の、一般的には
10重量% 以下の、1 つ又はそれより多くの生理学的に許
容される水に混和性の有機溶媒、例えばエタノールを含
んでもよい。
【0013】本発明の方法は、上記アルギン酸塩ファイ
バーを過剰な上記溶液に沈めること、次の、例えば、過
剰溶液を除去するための弱い真空又は重力下での濾過す
ることにより、実施され得る。例えば、1 部のファイバ
ーを、20〜100 部の溶液に沈めてもよい。本発明の方法
を、好ましくは、周囲温度で、又はその付近で実施す
る。ゲルは、沈降物上で速やかに形成し、そして濾過
は、一般的に、その後直ちに、例えば、沈降後1 〜10分
間以内に、実施され得る。沈降及び濾過のサイクルを、
より親水性の製品を提供するために繰り返すことがで
き; 例えば、このサイクルを、10又は15回、通常3 〜6
回まで実施してもよい。上記サイクルのこのような反復
の間、不溶化カチオンは、可溶化カチオンにより、だん
だんと置き換えられる。上記アルギン酸材料は、一般的
には、1 回処理後、ゼラチンの繊維性塊まりの形態をと
り、そして数回処理後には、本発明に記載の半透明又は
透明な繊維性ゲルの形態をとる。
【0014】濾過は、一般的に、それぞれの沈降(subme
rsion)後、ゼラチンの繊維性塊まりが肉眼観察により乾
燥するまで、又は、場合によって、上記の繊維性ゲルが
したたり落ちなくなるまで続けられる。本発明の方法
は、あるいは、フィルター上に支持されたアルギン酸塩
に、上記溶液の一部分を繰り返し添加することにより、
そしてその溶液がそのアルギン酸塩を通って滴り落ちる
のを許すことにより実施されてもよい。あるいは、本発
明の方法は、上記繊維性ゲルが形成されるまで、上記ア
ルギン酸塩ファイバーの薄い床を通して、上記可溶化塩
溶液を連続的に通過させることにより実施されてもよ
い。あるいは、本発明の方法は、いかなる濾過段階を必
要としないで、直接的に繊維性アルギン酸塩ゲルを形成
するように、好適に選ばれたアルギン酸塩ファイバーと
好適な可溶化塩水溶液とを混合することにより実施され
てもよい。この後者の他法は、一般的には、殆ど好まれ
ない、なぜなら、上記ゲルの、所望の繊維性・性質を保
持しながら、均質なゲルを形成するための、十分に激し
い混合を適用することが困難であるとが分かるであろう
からである。
【0015】上記のアルギン酸塩ファイバーは、本発明
の方法に従って、生ずるゲルが本質的に繊維性構造をも
たないような程度まで、可溶化塩の溶液により処理され
るべきではない。本発明のアルギン酸塩ゲルは、このゲ
ルが本明細書中に前記したような繊維性構造をもつよう
に、最小限の割合の不溶化カチオンを含む。本発明のア
ルギン酸塩ゲルは、水に可溶なアルギン酸塩ファイバ
ー、例えば、アルギン酸ナトリウム・ファイバーを、不
溶化塩、例えば、カルシウム塩の水溶液により処理する
ことにより製造されてもよい。本発明の方法に従い調製
されたアルギン酸塩ゲルは、より高い吸収性をもつ材料
を提供するために、乾燥されることができるが、このゲ
ルを形成し、そして回収されたものとして使用すること
が、一般的に好まれる。
【0016】本発明の方法は、滅菌材料を使用して、か
つ、無菌条件下で、実施されることができる。アルギン
酸塩ファイバーは、可溶化塩の水溶液による処理に先立
って、例えば、電離線、例えば、電子線又はガンマ線、
あるいは、化学的殺菌剤、例えば、エチレンオキサイド
に晒すことにより、滅菌されることができる。ガンマ線
を使用して滅菌されたファイバーは、離液現象の傾向が
あるつぶつぶのゲルを産生することが免れないことが分
かっており、そして、それ故、本法の滅菌は、一般的に
ほとんど好まれない。本発明に記載のアルギン酸塩ゲル
は、充填前に、好ましくは後に、好ましくはオートクレ
ーブにより、例えば、110 〜130 ℃で、10〜30分間、そ
の無菌性を確認するために滅菌れてもよい。ガンマ線に
よりゲルを照射することは、一般的に、ゲルを分解する
ことが知られている。本発明のアルギン酸塩ゲルは、照
射のこのような効果に対してゲルを安定化するために、
フリー・ラジカルの脱除剤(scavenger) 、例えば、ポリ
ヒドロキシ・アルコール、例えばマニトール又はリビト
ールを含んでもよい。
【0017】本発明のアルギン酸塩ゲルは、薬用アルギ
ン酸塩のための普通の防腐剤、例えば、プロピレングリ
コールを含んでもよい。本発明のアルギン酸塩ゲルは、
医薬、例えば、医薬的及び抗微生物剤を含んでもよい。
このような物質は、その製造の間、ゲルに取り込まれる
ように、可溶化塩の溶液に溶解又は懸濁されてもよい。
本発明のアルギン酸塩ゲルは、好ましくは、人体又は動
物体上の損傷の上での使用のためにそこから押し出され
ることができるシリンジ、チューブ又はサッシェ内に充
填される。あるいは、このアルギン酸塩ゲルは、他の方
法、例えば、ジャー、トレー又は他のコンテナ内に、あ
るいは保護ポリマーフィルムの間に置かれた例えば、1
〜10mm厚のスラブ又はシートの形態で、充填されてもよ
い。本発明のアルギン酸塩ゲルは、好ましくは、1 回投
与の形態に充填される。本発明のアルギン酸塩ゲルは、
一般的には、少なくとも数カ月にわたり無菌形態での保
存に関して安定であり、この期間の間、ゲルは、その繊
維性・性質を保持し、そして有意な程度の離液現象を示
さない。
【0018】本発明のアルギン酸塩ゲルは、成型可能で
あり、そして高い適合性(conformable) がある。それら
は、変形可能であり、そしてそれ故に、曲面上の包帯と
して使用されることができる。これらは、深い傷をパッ
クするために使用されることができる。より剛いゲル
が、創傷への直接的な使用のために好まれ、そしてより
剛くないゲルが、創傷への押出しのためには好まれる。
本発明のゲルは、吸湿性があり、そして創傷表面から水
のベーパーを通過させる。それらは、創傷上の壊死組織
除去(debriding) の効果をもち、そして非脱水性であ
る。より高い高張性のゲルが、深い、分泌している又は
感染している炎症性の局面における慢性的な創傷上での
使用に関して、向けられることができる。本発明のゲル
は、滅菌蒸留水、若しくは好ましくは滅菌生理食塩水に
よる洗浄により、必要なときに、創傷から除去されるこ
とができる。以下の例により、本発明を説明する。
【0019】例 1 既知の含有量の可溶化及び不溶化カチオン(Na 及びCa)
をもち、そして既知の割合のマンヌロン酸及びグルロン
酸(M:G比) を含む、既知量の自然乾燥アルギン酸塩ファ
イバーを、ねじぶたボトル内に置いた。次に、このボト
ルに、塩化ナトリウム水溶液(100ml) を加えた。ボトル
のフタを締め、次にこれを振とうし、そして少なくとも
2 分間放置した。生理食塩水中の膨潤ファイバー又は繊
維性ゲルから成る混合物を、ブフナー漏斗上のワットマ
ンNo.1濾紙を通して真空下( 約34kPa 絶対) で濾過し
た。回収したファイバー又はゲルの外観を記し、そして
その重さを記録した。元のアルギン酸塩ゲルの重さに対
する回収したファイバー又はゲル中の液体の重さの比(
ゲル比) を計算した。この濾液量を測定し、そして0.1M
のEDTAに対する滴定により、そのカルシウム含有量を測
定した。回収したファイバー又はゲル内のカルシウム量
を、差により計算し、そしてファイバー又はゲルが、濾
液と同じ組成をもつ液体と一緒になったアルギン酸カル
シウム・ナトリウムから成るという仮定の下、並びにア
ルギン酸塩が濾液に溶けなかったという仮定の下で、絶
乾(B.D) アルギン酸塩と一緒になったカルシウム量を計
算した。上記ファイバー又はゲル中の、アルギン酸(Alg
H)、ナトリウム、カルシウム及び水の重量パーセント並
びにカルシウム/ ナトリウム重量比も、計算した。塩化
ナトリウム水溶液による処理、濾過及び分析の段階を、
この濾過段階が極端にお遅くなるまで、繰り返した。M:
G 比63:37 をもつアルギン酸カルシウム・ファイバー2
.5g 及び0.9w/v% の生理食塩水を使用して、以下の結
果を得た。
【0020】
【表1】
【0021】乾燥ファイバーについては、F として、ゼ
ラチン状ファイバーについては、G/F として、繊維性ゲ
ルについては、F/G として、外観を記録している。
【0022】例 2 例 1を繰り返した。但し、アルギン酸カルシウム・ファ
イバーの重さは、5.0gであった。以下の結果を得た。
【0023】
【表2】
【0024】例 3 例 1を繰り返した。但し、アルギン酸カルシウム・ファ
イバーの重さは、1.25g であった。以下の結果を得た。
【0025】
【表3】
【0026】上記ゲル比の値が、絶乾アルギン酸塩中の
与えられたカルシウム含有量に関して、例1 〜3 のそれ
ぞれにおいて、本質的に同じであるということが、注目
される。
【0027】例 4 例 1を繰り返した。但し、1.35w/v%の生理食塩水を使用
した。以下の結果を得た。
【0028】
【表4】
【0029】上記ゲル比の値が、絶乾アルギン酸塩中の
与えられたカルシウム含有量に関して、例1 〜3 におけ
るよりも、例 4において、一般的に低いということが、
注目される。
【0030】例 5 例 1を繰り返した。但し、M:G 比25:75 をもつアルギン
酸カルシウム・ナトリウム・ファイバーを使用した。以
下の結果を得た。
【0031】
【表5】
【0032】例 6 例 1を繰り返し、以下の結果を得た。
【0033】
【表6】
【0034】それぞれの処理からの濾過液中のアルギン
酸塩量を、塩化カルシウムを用いた沈殿及び重量分析法
により評価した。回収したファイバー又はゲルの組成
を、この溶解したアルギン酸塩を考慮に入れて計算し
た、以下の結果を得た。
【0035】
【表7】
【0036】例 7 M:G 比63:37 をもつアルギン酸カルシウム・ファイバー
(25g) を、0.9%の塩化ナトリウム水溶液(1 l) に沈め、
そして得られた混合液を、100 メッシュのナイロン・ガ
ーゼと通して注ぎ、そして大気圧でそれを通過して、し
たたり落ちるのを許容した。本工程を、全体として3 回
実施した。このガーゼ上のアルギン酸塩材料は、繊維性
ゲルの外観をもっていた。次に弱い真空を、このゲルが
したたり落ちなくなるまで、適用した。このゲルは、28
3gの重さであり、重量として0.32% のカルシウムを含
み、そして6.4 重量% の固形分含有量( オーブン乾燥に
より測定した) をもっていた。このゲルのアルギン酸塩
含有量( アルギン酸として表示した) を、約6.5 重量%
と推定した。
【0037】例 8 M:G 比63:37 をもつアルギン酸カルシウム・ファイバー
(2.5g)を、激しく混合しながら、水(50ml)中にクエン酸
3 ナトリウム(0.5g)を含む溶液に添加した。繊維性ゲル
が、直ちに形成した。この繊維性ゲルは、0.44重量% の
カルシウムを含み、そして5.5 重量% の固形分含有量を
もつと計算された。混合が十分に激しくない場合は、こ
のゲルが塊になる傾向があり; 混合が過度に激しい場合
は、このゲルは、その繊維の特徴を失う傾向にある。こ
のゲルのアルギン酸塩含有量( アルギン酸として表示し
た) を、約4 重量% と推定した。
【0038】例 9 M:G 比63:37 をもつアルギン酸カルシウム・ファイバー
(2.5g)を、激しく混合しながら、2.5%w/w のアルギン酸
ナトリウム(100g)を含む水溶液に添加した。繊維性ゲル
が、直ちに形成した。この繊維性ゲルは、0.23重量% の
カルシウムを含み、そして5.0 重量% の固形分含有量を
もつと計算された。混合が十分に激しくない場合は、こ
のゲルが塊になる傾向があり; 混合が過度に激しい場合
は、このゲルは、その繊維の特徴を失う傾向にある。こ
のゲルのアルギン酸塩含有量( アルギン酸として表示し
た) を、重量として約4%と推定した。
【0039】例 10 M:G 比63:37 をもつアルギン酸カルシウム・ファイバー
(5g)を、0.1M HCl(200ml) と水(50ml)との混合物である
溶液で洗浄した。過剰の液体を滴り落とし、そしてEDTA
に対する滴定によりそのカルシウム含有量を分析した。
これにより、カルシウムイオンの66% がファイバーから
除去され、そして水素イオンにより置き換えられたこと
が示された。このファイバーを蒸留水で洗浄し、そして
この湿ったファイバーを0.2M NaOH(70ml) に激しく攪拌
しながら添加し、繊維性アルギン酸塩ゲルを形成した。
ゲルのカルシウム含有量を、約0.41% と、そして固形分
含有量を、約6.7 重量% と推定した。このゲルのアルギ
ン酸塩含有量( アルギン酸として表示した) を、約5.5
重量% と推定した。
【0040】例 11 M:G 比63:37 をもつアルギン酸カルシウム・ファイバー
(2.5g)を、攪拌しながら、9.0%の塩化ナトリウム水溶液
(250ml) に添加した。弱い真空下で濾過により過剰の液
体を除去した。24.2g の重さのこのように回収した繊維
性ゲルは、重量として0.23% のカルシウム含有量、14.8
重量% の固形分含有量、そして約9 重量% の塩化ナトリ
ウム含有量をもつと計算された。このゲルのアルギン酸
塩含有量( アルギン酸として表示した) を、約7.5 重量
% と推定した。
【0041】例 12 以下の方法により、アルギン酸塩ゲルの吸収能力を評価
した。既知量のゲル(10+/-0.5g) を、No.1ガラスるつぼ
(crucible)内に置き、そして軽く押し下げた。142mM の
ナトリウム及び2.5mM のカルシウムを含む溶液( 水に適
切な量の塩化物を溶解することにより調製した) を、0.
5ml の部分として、液体がゲルから通過するのが見ら
れ、るつぼの茎からしたたり落ちるまでの、5 分間の間
に、上記ゲルに添加した。添加した溶液の全量を記録し
た。本発明に記載の繊維性アルギン酸塩ゲルを例 1の方
法により調製した。但し、M:G 比63:37 をもつ25g のア
ルギン酸カルシウム・ファイバーを使用した。以下の結
果を得た。ここで、' ゲルの重さ' は、このファイバー
の塩化ナトリウム溶液による反復処理及び濾過の後に得
られた繊維性ゲルの重さである。
【0042】 ゲルの重さg ca w/w% 固形分 w/w% 吸収能力 g 302 0.35 7.7 7.5 334 0.27 6.1 6.5 369 0.20 5.2 6.0 399 0.15 4.6 6.0 437 0.13 4.1 6.0
【0043】例 13 以下の方法で、アルギン酸塩ゲルの剛さを測定した。直
径60mm及び深さ50mmのプラスチック・サンプル・コンテ
ナを、テストすべきゲルで満たした。直径1 インチ(25m
m)及び長さ1.5 インチ(38mm)の円筒形の探針を装備した
Stevens LFRA Texture Analyser のプラットホーム上
に、このコンテナを置いた。この探針を、2mm/秒で、10
mmの深さまで、上記ゲル中にドライブした。例 12 に記
載したように調製したゲル上で、以下の結果を得た。
【0044】
【0045】上記のタイプの、より剛いゲルは、そのゲ
ルが創傷に合うように成形されることができるところの
接近容易な創傷への利用に、より好適であると考えられ
る。上記のタイプの、より剛くないゲルは、接近容易で
ない創傷へのシリンジによる利用に、より好適であると
考えられる。
【0046】例 14 例 12 に記載したように調製した繊維性アルギン酸塩
を、121 ℃で15分間、オートクレーブ処理により滅菌し
た。例 12 の方法により測定した吸収能力を、その滅菌
されてないゲルと比較した全ゲル重量で、0.5ml 分減少
させた。オートクレーブの前後に、例 13 の方法を使用
して、そしてグラムで表示した剛さについて、以下の結
果を得た。
【0047】 前 後 934 461 617 335 446 223 409 196 327 151 244 88 164 66
【0048】比較例 1 商標"Kaltostat" 下Britcair Limitedから入手可能な、
既知重量の針穴をあけた非編み物のアルギン酸カルシウ
ム・ナトリウム・ファイバーの創傷用包帯(M:G比25:75
、Ca:Na 比80:20)を、水又は0.9%w/v の生理食塩水に
より湿らし、そして再計量した。それぞれのケースにお
いて、この湿った包帯は、手により引き裂かれることに
対し抵抗性を与える高い構造的な完全性を、もつ半透明
の凝集性の生地の形態をとる。この湿った包帯は、ペー
スト状又はゼラチン状ではなく、そして成形、塗布(spr
ead)又は押し出しされることができない。この湿った包
帯は、以下の組成をもつと計算された。
【0049】
【表8】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−311535(JP,A) 特開 平4−146218(JP,A) 特開 平4−235124(JP,A) 英国特許出願公開1394741(GB,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61L 15/28 C08L 5/04 D01F 9/04

Claims (18)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可視性の繊維状構造を示す、変形可能
    な、粘性の、及び水に分散可能なペーストの形態を有
    し、かつ、アルギン酸として表示して2 〜11重量パーセ
    ントの範囲内のアルギン酸塩含有量を有することを特徴
    とするアルギン酸塩ゲル。
  2. 【請求項2】 アルギン酸として表示して3 〜7 重量パ
    ーセントの範囲内のアルギン酸塩含有量をもつことを特
    徴とする、請求項1に記載のアルギン酸塩ゲル。
  3. 【請求項3】 0.6 〜1.4 重量パーセントの範囲内のナ
    トリウムイオン含有量をもつことを特徴とする請求項1
    又は2に記載のアルギン酸塩ゲル。
  4. 【請求項4】 0.65〜0.75重量パーセントの範囲内のナ
    トリウムイオン含有量をもつことを特徴とする、請求項
    3に記載のアルギン酸塩ゲル。
  5. 【請求項5】 0.05〜0.60重量パーセントの範囲内のカ
    ルシウムイオン含有量をもつことを特徴とする、請求項
    1〜4のいずれか1項に記載のアルギン酸塩ゲル。
  6. 【請求項6】 0.10〜0.45重量パーセントの範囲内のカ
    ルシウムイオン含有量をもつことを特徴とする、請求項
    5に記載のアルギン酸塩ゲル。
  7. 【請求項7】 3 〜10重量パーセントの範囲内( オーブ
    ン乾燥により測定された) の固形物含有量をもつことを
    特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアル
    ギン酸塩ゲル。
  8. 【請求項8】 前記固形物含有量が、3.5 〜8.0 重量パ
    ーセントの範囲内にあることを特徴とする、請求項7に
    記載のアルギン酸塩ゲル。
  9. 【請求項9】 前記アルギン酸塩が、約55:45 〜約75:2
    5 の範囲内の比でマンヌロン酸単位とグルロン酸ユニッ
    ト単位を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれ
    か1項に記載のアルギン酸塩ゲル。
  10. 【請求項10】 前記ゲルが、約5:95〜約50:50 の範囲
    内の重量比でカルシウムイオンとナトリウムイオンを含
    むことを特徴とする、請求項9に記載のアルギン酸塩ゲ
    ル。
  11. 【請求項11】 可視性の繊維状構造を示す、変形可能
    な、粘性の、及び水に分散可能なペーストの形態にゲル
    を形成するために、ステープルファイバーの緩やかな組
    み立て物の形態にある、水に不溶の又は水に膨潤するア
    ルギン酸塩ファイバーを、可溶化塩の水溶液により処理
    することを特徴とする、アルギン酸塩ゲルの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記アルギン酸塩ファイバーが、アル
    ギン酸カルシウム・ファイバーであることを特徴とす
    る、請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記可溶化塩が、塩化ナトリウムであ
    ることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方
    法。
  14. 【請求項14】 塩化ナトリウムの前記溶液が、生理学
    的な又は等張性の生理食塩水であることを特徴とする、
    請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 前記アルギン酸塩が、前記ゲル形成完
    了まで、繰り返し過剰の前記溶液中に沈められ、そして
    濾過により回収されることを特徴とする、請求項11〜
    14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記の沈め及び濾過サイクルを、3 〜
    6回行うことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
  17. 【請求項17】 前記ゲルを、オートクレーブ処理によ
    り、繰り返し滅菌することを特徴とする、請求項11〜
    16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 【請求項18】 請求項11〜17のいずれか1項に記
    載の方法により製造される、請求項1〜10のいずれか
    1項に記載のアルギン酸塩ゲルを含むことを特徴とす
    る、創傷用包帯。
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