車両用電動格納式ミラーにおいては、ミラー回転部をモータ駆動で格納位置から展開位置の方向へ移動させて展開位置で山谷反復形状の傾斜面どうしをばねの付勢力で係合させて停止させる際に該傾斜面に大きな力が加わり、この力で山を破損させる恐れがある。そこで、山谷反復形状は回転軸中心からある程度離れたところに配置して傾斜面に大きな力が加わらないようにするとともに、山谷反復形状の径方向幅を広くして(すなわち山の板厚を厚くして)、山の剛性を高める必要がある。したがって、山谷反復形状の外径はもともとあまり小径に構成することはできない。特許文献1に記載の、山谷反復形状の複数の山谷対を径方向の異なる位置に配置する構成によれば、複数の山谷対を同一径方向位置に配置する構成に比べて山谷反復形状を配置する径方向幅が拡大されるので、山谷反復形状の外径が更に拡大される。山谷反復形状の外径が拡大されることは、電動格納ユニットの大型化、回転部とその支持部の相対回転部分の大径化等につながる。
この考案は、回転部がモータ駆動で格納位置から展開位置に回転するために必要な回転部の回転範囲を確保しつつ回転部を前方傾倒位置からモータ駆動で逆方向に戻せるようにするための仕組みを、山谷反復形状の複数の山谷対を径方向の異なる位置に配置することなく実現するものである。
この考案の車両用電動格納式視認装置は、車体に固定支持されるベースと、該ベースに回転自在に支持される回転部を有する車両用電動格納式視認装置において、前記ベースはシャフトと、該シャフトの基部に配置された回転部支持面を有し、前記回転部は前記シャフトの軸周り方向に回転自在にかつばねによる付勢力で前記回転部支持面に押圧当接されて前記ベースに支持され、前記回転部はモータを搭載し、該車両用電動格納式視認装置は前記モータの駆動力を前記シャフトに伝達して、前記回転部を前記シャフトの軸周り方向に回転させて該回転部を格納位置と展開位置とに移動させる動力伝達機構を有し、前記回転部は、前記シャフトが挿通されて該回転部を該シャフトの軸周り方向に回転可能にする円筒を有し、前記回転部は前記円筒の外周側に、前記回転部支持面に向けて配置されかつ該円筒の軸周り方向に同一径方向位置で山と谷を複数回繰り返して配列された回転部側山谷反復形状を有し、前記回転部支持面は、前記回転部側山谷反復形状に向けて配置されかつ前記シャフトの軸周り方向に同一径方向位置で山と谷を複数回繰り返して配列されて該回転部側山谷反復形状と嵌合する回転部支持面側山谷反復形状を有し、前記両山谷反復形状は、前記モータの駆動による前記回転部の前記格納位置から前記展開位置の方向への回転動作を許容しつつ、該展開位置で前記ばねの付勢力により該両山谷反復形状の前記山と前記谷の境界に位置する傾斜面どうしを係合させて該回転動作を停止させるように該回転方向について該山および該谷がそれぞれ区画され、前記両山谷反復形状は、前記回転部が前記展開位置にある状態で該回転部に車両前方向への所定量以上の外力が加えられたときに、該外力により前記山どうしが前記ばねの付勢力に抗して互いに相手方の前記傾斜面を摺動して登り、相手方の前記山の頂面に乗り上げて前記係合を解除して、該回転部が該車両前方向へ回転して所定の前方傾倒位置に至るのを許容し、前記回転部は前記円筒の内周面に接続されて前記回転部支持面に向けて突出して構成された回転部側高さ維持突起を有し、前記回転部支持面は前記回転部側高さ維持突起と対面する径方向位置に該回転部側高さ維持突起と対面する方向に向けて突出して構成された回転部支持面側高さ維持突起を有し、前記展開位置にある前記回転部が前記外力で車両前方向へ回転して、前記両山谷反復形状の前記山どうしが互いに相手方の前記傾斜面を摺動して登り、相手方の前記山の頂面に乗り上げた後、相手方の前記谷に落ち込む前に、前記両高さ維持突起の頂面どうしは当接摺動して、前記山どうしが互いに相手方の前記谷に落ち込むのを阻止するようにしたものである。この考案によれば、回転部がモータ駆動で格納位置から展開位置に回転するために必要な該回転部の回転範囲を確保しつつ該回転部を前方傾倒位置からモータ駆動で逆方向に戻せるようにするための仕組みを、山谷反復形状の複数の山谷対を径方向の異なる位置に配置することなく実現することができる。また、この考案によれば回転部をモータ駆動で格納位置から展開位置の方向へ移動させて展開位置で停止させる際の力を両山谷反復形状の傾斜面で受けることができるので(あるいは両高さ維持突起の段差部を傾斜面で構成して、前記停止させる際の力を両山谷反復形状の傾斜面と両高さ維持突起の傾斜面で分担して受けるにしても、該高さ維持突起の傾斜面で受ける力は全体の力の一部で済むので)、高さ維持突起は破損しにくく回転中心に近い位置に配置することができる。しかも、回転部側高さ維持突起は円筒の内周面に接続されていることにより剛性が得られるので、薄肉に構成することができる。したがって、高さ維持突起を設けたことによる山谷反復形状の外径の拡大は抑制することができる。
この考案において、前記回転部支持面側高さ維持突起は前記シャフトの外周面に接続して構成されているものとすることができる。これによれば、回転部支持面側高さ維持突起はシャフトの外周面に支持されて剛性が得られるので、薄肉に構成することができる。
この考案において、前記両高さ維持突起の肉厚は前記両山谷反復形状の径方向の幅よりも薄く設定されているものとすることができる。前述のとおり、高さ維持突起の段差部は、回転部をモータ駆動で格納位置から展開位置の方向へ移動させて展開位置で停止させる際の力を受けないか、あるいは受けるにしても該力の一部で済むので、高さ維持突起は両山谷反復形状の径方向の幅よりも薄く構成することができる。
この考案において、前記回転部側山谷反復形状は前記円筒の外周面に接続して構成されているものとすることができる。これによれば、回転部側山谷反復形状は円筒の外周面に支持されるので剛性が得られる。
この考案において、前記円筒の前記回転部支持面に向く側の端面は、前記回転部が前記モータの駆動で前記格納位置と前記展開位置との間を回転動作するときに、該回転部を前記回転部支持面に軸受け支持する軸受け面を構成するものとすることができる。これによれば、回転部がモータ駆動で格納位置と展開位置との間を回転動作するときに、回転部を円筒部の端面で回転部支持面に軸受け支持するので、両山谷反復形状の山と谷の対向面を軸受け面として摺動させなくて済む。したがって、該回転動作を円筒の端面で支持して円滑に行うことができるとともに、該回転動作による両山谷反復形状の山と谷の摩耗を防止できる。
この考案において、前記円筒の前記軸受け面を軸受け支持する前記回転部支持面の軸受け面は、該回転部支持面の前記回転部支持面側高さ維持突起と前記回転部支持面側山谷反復形状の間の径方向位置に配置されているものとすることができる。これによれば、回転部支持面の回転部支持面側高さ維持突起と回転部支持面側山谷反復形状の間の径方向の空間を利用して回転部支持面の軸受け面を構成することができる。
この考案において、前記両高さ維持突起は、前記回転部の回転軸を中心とする周方向に180度の配置間隔で2個ずつ配置されているものとすることができる。これによれば、高さ維持突起は前方傾倒時にシャフトを挟んだ両側で回転部を支持することができるので、回転部を安定に前方傾倒させることができる。
この考案において、前記両山谷反復形状は、前記回転部の回転軸を中心とする周方向に120度の配置間隔で山と谷を3回繰り返して配列しているものとすることができる。これによれば、回転部をモータ駆動で格納位置から展開位置方向へ回転させて、展開位置で両山谷反復形状の傾斜面どうしを当接させて該回転を停止させるときに、該停止させるための力を該両山谷反復形状の3箇所の傾斜面で分散して受けることができるので、該力を3箇所よりも少ない傾斜面で受ける場合に比べて、該山谷反復形状の山の破損を防止することができる。
この考案において、前記円筒および前記回転部側山谷反復形状および前記回転部側高さ維持突起は樹脂を基材とする1つの部品に一体に構成され、前記シャフトおよび前記基部は樹脂を基材とする別の1つの部品に一体に構成され、前記回転部支持面側山谷反復形状および前記回転部支持面側高さ維持突起は前記別の1つの部品に一体に構成されているものとすることができる。これによれば、前記1つの部品を樹脂成形する際に円筒および回転部側山谷反復形状および回転部側高さ維持突起を一体に成形することができ、前記別の1つの部品を樹脂成形する際にシャフトおよび基部および回転部支持面側山谷反復形状および回転部支持面側高さ維持突起を一体に成形することができる。
なお、特許文献2には高さ維持突起(同文献図6の符号6r)が記載されている。しかし、特許文献2に記載の車両用ミラーは手動格納式ミラーである。高さ維持突起(6r)は外力による前方傾倒動作の途中で、回転部支持面上の突部(8e)が格納姿勢保持用の凹部(6i)に嵌り込んでその動作が一旦停止する現象を回避するために設けられたものである。電動格納式ミラーの場合は、格納姿勢保持用の凹部を設けて格納位置で回転部支持面上の突部を嵌め込んだのでは、モータ駆動で該嵌め込みを抜け出せず格納位置から展開位置の方向に起動できなくなるから格納姿勢保持用の凹部は設けられない。したがって、特許文献2において高さ維持突起(6r)を設けた理由は電動格納式ミラーにおいて高さ維持突起を設ける理由とはならない。この考案は、前方傾倒動作で山谷反復形状の山が相手方の谷に落ち込むとモータ駆動では逆戻りできなくなる電動格納式ミラー固有の課題を解決するもので、手動格納式ミラー固有の課題を解決することしか意図されていない特許文献2の知見から着想できるものではない。
この考案の実施の形態を説明する。図2はこの考案が適用された車両右側用電動格納式ドアミラーの分解斜視図を示す。図2ではミラー回転部15を展開位置の姿勢で背面側(車両前方側)から見た状態を示す。また、図2ではバイザー14の正面開口14a内に配置される鏡面調整用アクチュエータおよびミラー板、バイザー14の背面側に装着するハウジングカバー(図6の符号17)等は図示を省略している。このドアミラー10はミラーベース12と、ミラー回転部15と、これら両者の間に接続される電動格納ユニット16を具える。ミラー回転部15はバイザー14を有する。ミラーベース12は車体(右ドア)13に車両右方に向けて突設されている。電動格納ユニット16は下部に固定体16aと上部に回転体16bを有し、回転体16bは固定体16aに対し回転軸18の周り方向に回転可能である。バイザー14の背面側には電動格納ユニット16の回転体16bが2本のねじ20をバイザー14の下面から電動格納ユニット16の回転体16bにねじ込んで固定される。回転体16bがバイザー14に固定された電動格納ユニット16の固定体16aは、3本のねじ22をミラーベース12の下面から電動格納ユニット16の固定体16aにねじ込んでミラーベース12に固定される。これによりバイザー14を含むミラー回転部15は、電動格納ユニット16を介して回転軸18の周り方向に回転可能にミラーベース12に取り付け支持される。バイザー14の背面には、図示しないハウジングカバー(図6の符号17)が装着される。これによりバイザー14の背面の開口部14bはハウジングカバー17で塞がれて、電動格納ユニット16はバイザー14とハウジングカバー17で包囲される空間に収容される。ミラー回転部15は電動格納ユニット16による電動駆動で回転して格納位置と展開位置に択一的に移動可能である。また、ミラー回転部15は外力により回転して、格納位置から展開位置を経て前方傾倒位置まで、またその逆方向に移動可能である。
電動格納ユニット16内の全体の構成を図3およびそのほかの図を参照して説明する。図3の全部品は着脱可能に組み付けられて、電動格納ユニット16を構成する。電動格納ユニット16は固定体16aを構成するシャフト部品24を有する。シャフト部品24の拡大図を図4に示す。シャフト部品24はPA+GF樹脂(ガラス繊維強化ポリアミド樹脂)等の強化樹脂の一体成形品で構成されている。シャフト部品24は下部に大径で円板状の基部24aと上部に小径で円筒状のシャフト24bを同軸に有する。シャフト部品24は、基部24aの下面をねじ22(図2)でミラーベース12に固定することにより、ミラーベース12に垂直に立設される。基部24aの上面は回転部支持面25を構成する。すなわち、回転部支持面25はその最外周位置に、シャフト部品24の軸周り方向に山26bと谷26aを交互に3組、各組120度ずつ等間隔で繰り返し配列した山谷反復形状26が構成されている。山26bと谷26aの大きさおよび形状は3組とも同じである。3個の山26bの頂面26cはシャフト部品24の軸18(図2、図3の回転軸18に相当)に直交する1つの平面上に配置されている。同様に、3個の谷26aの底面26dはシャフト部品24の軸18に直交する別の1つの平面上に配置されている。山26bと谷26aの境界の傾斜面26eは左右対称の傾斜角度に構成されている。1つの谷26aの周方向の長さ(角度)は、1つの山26bの周方向の長さ(角度)よりも長い。また、基部24aの上面にはその最内周位置に、2個の高さ維持突起28がシャフト部品24の軸周り方向に180度ずつ等間隔でシャフト24bの外周面に接続して構成されている。2個の高さ維持突起28の大きさおよび形状は同じである。なお、図4では手前側の高さ維持突起28のみ現れている。もう1つの高さ維持突起28は軸18を挟んで手前側の高さ維持突起28の向かい側にある(図9参照)。2個の高さ維持突起28の頂面28aはシャフト部品24の軸18に直交する1つの平面上に配置されている。高さ維持突起28の頂面28aの両側の段差部28bはこの実施の形態では山谷反復形状26の傾斜面26eと同じ傾斜角度の傾斜面に構成されている。高さ維持突起28はミラー回転部15が外力で展開位置から前方傾倒位置方向に移動する際に、後述するフレーム36の高さ維持突起41と頂面28a,41aどうしが当接摺動して、シャフト部品24に対するフレーム36の高さを維持することにより、ミラー回転部15を前方傾倒位置から展開位置まで電動で戻せるようにするものである。また、基部24aの上面には、最外周位置の山谷反復形状26と最内周位置の高さ維持突起28の間の径方向位置に一定幅で溝状の軸受け面30がシャフト部品24の軸周り方向に平坦かつ環状に構成されている。軸受け面30にはその溝内に樹脂ワッシャ34(図3)が載置収容される。シャフト24bの中空部31は基部24aを貫通して開設されている。中空部31には電動格納ユニット16および鏡面調整用アクチュエータ等に電源を供給する、図示しないワイヤハーネス(外部給電配線)が通される。シャフト24bの外周面には、回転止め凹部32aと回転止め凸部32bを周方向に交互に5組、各組等間隔で繰り返し配列した回転止め形状32が構成されている。個々の回転止め凹部32aと回転止め凸部32bはシャフト部品24の軸方向に延在して構成されている。回転止め凹部32aの上端は、回転止め凹部32aに嵌合する相手方回転止め凸部(後述する図3のクラッチプレート58の内周面に構成された回転止め凸部62b)を進入させるために上方に開口している。シャフト24bの上部外周面には、後述する図3の金属プレート66を差し込みかつ回転させて留めるための溝35が構成されている。
図3において、シャフト部品24には回転体16bのフレーム36(後述するシールキャップ90と共に回転体16bの筐体を構成する)が回転可能に支持される。フレーム36はPA+GF樹脂等の強化樹脂の一体成形品で構成されている。フレーム36は上方に開口した内部空間38を有する。内部空間38の底面38aには円筒40が立設されている。円筒40の中空部43は底面38aを貫通している。ここで図5を参照してフレーム36の下面の構成を説明する。フレーム36の下面には円筒40と同軸かつ円筒40よりも大径で厚肉の円筒39が下方(図5の上方)に向けて突設されている。円筒39の内周面39aには、基部24aの2個の高さ維持突起28(図4)と頂面28a,41aどうしが当接摺動する2個の高さ維持突起41が円筒39の軸周り方向に180度ずつ等間隔で円筒39の内周面39aに接続して構成されている。2個の高さ維持突起41の大きさおよび形状は同じである。2個の高さ維持突起41の頂面41aは円筒39,40の軸18(図2、図3の回転軸18に相当)に直交する1つの平面上に配置されている。高さ維持突起41の頂面41aの両側の段差部41bはこの実施の形態では後述する山谷反復形状27の傾斜面27eと同じ傾斜角度の傾斜面に構成されている。高さ維持突起41の内周面41dは円筒40の内周面40aと同一径方向位置にあり、両内周面40a,41dは連続した面を構成している。高さ維持突起28,41は軸18に対して同一径方向位置にある。高さ維持突起28,41の肉厚は山谷反復形状26,27の径方向の幅よりも薄い。円筒39の下端面はシャフト部品24の軸受け面30と対面する軸受け面45を構成する。円筒39の外方には空隙47を介して外筒49が円筒39と同軸に配置されている。空隙47内には基部24aの上面の山谷反復形状26(図4)に嵌合する山谷反復形状27が構成されている。山谷反復形状27は円筒39の軸周り方向に山27bと谷27aを交互に3組、各組120度ずつ等間隔で繰り返し配列して構成されている。山27bと谷27aの大きさおよび形状は3組とも同じである。3個の山27bの頂面27cは円筒39,40の軸18に直交する1つの平面上に配置されている。同様に、3個の谷27aの底面27dは円筒39,40の軸18に直交する別の1つの平面上に配置されている。山27bと谷27aの境界の傾斜面27eは左右対称の傾斜角度に構成されている。1つの谷27aの周方向の長さ(角度)は、1つの山27bの周方向の長さ(角度)よりも長い。また、山谷反復形状26,27は傾斜面26e,27eの傾斜角度が互いに等しく設定されている。山26b,27bおよび谷26a,27aの各周方向の長さ(角度)は、ミラー回転部15がモータ駆動で格納位置から展開位置に回転するために必要なミラー回転部15の回転範囲(例えば70度以上)を確保できるような長さにそれぞれ設定されている。傾斜面26e,27eの傾斜角度は、ミラー回転部15をモータ駆動で格納位置から展開位置に向けて回転させて展開位置で3組の傾斜面26e,27eどうしが同時に係合したときに、後述するコイルスプリング64の付勢力によりミラー回転部15の回転が停止され、かつ展開位置にあるミラー回転部15に車両前方へ所定値以上の外力が与えられたときに、コイルスプリング64の付勢力に抗して3組の傾斜面27e,26eどうしの係合が解除されるような角度に設定されている。山27bは円筒39の外周面と外筒49の内周面と空隙47の底面に接続して配置されている。外筒49の周方向の一部の領域にはストッパ51が下方(図5の上方)に向けて突出して構成されている。ストッパ51はミラーベース12に構成されたストッパ溝57(図2)に周方向に移動自在に差し込まれて、ミラー回転部15の最大回転範囲(格納位置から前方傾倒位置まで)を設定する。フレーム36の円筒39,40の連続した中空部43には円筒39側からシャフト24bが差し込まれる。このときフレーム36の軸受け面45は樹脂ワッシャ34を挟んでシャフト部品24の軸受け面30に軸受け支持される。また、シャフト24bの外周面には上側の円筒40の内周面40aと下側の円筒39の高さ維持突起41の内周面41d(図5に示されているように、両内周面40a,41dは連続した面を構成している)が、軸18に沿った方向および軸18の周り方向に摺動自在に当接支持される。これにより、フレーム36はシャフト部品24の軸周り方向に回転可能にかつ軸方向に移動可能にシャフト部品24に支持される。シャフト部品24の山谷反復形状26の山26bはフレーム36の底部の空隙47に入り込む。この状態では、山谷反復形状26と山谷反復形状27は、山26bと谷26aの境界の傾斜面26eと、山27bと谷27aの境界の傾斜面27eとが当接して係止されるまで(または格納方向についてはストッパ51がストッパ溝57の一端で係止されるまで)の両回転方向の角度範囲で摺動可能に嵌合し、ミラー回転部15(図2)が格納位置と展開位置との間で回転するのを許容する。また、展開位置にあるミラー回転部15に車両前方への所定値以上の外力が与えられたときは、後述するコイルスプリング64の付勢力に抗して山26bと山27bどうしが互いに相手方の傾斜面27e,26eを摺動して登り、相手方の山の頂面27c,26cに乗り上げて山谷反復形状26と山谷反復形状27の嵌合を解除し、ミラー回転部15が前方傾倒位置まで回転するのを許容する。フレーム36の一側には、フレーム36をバイザー14の裏面の上下2箇所のボス44(図2)にねじ止め固定するためのねじ通し穴46が構成されている。この実施の形態ではねじ通し穴46が上中下の3箇所設けられているが、このうち上下2箇所のねじ通し穴46にそれぞれねじ(図示せず)を差し込んで上下2箇所のボス44にねじ込むことにより、フレーム36をバイザー14の裏面に固定する。
図3において、フレーム36の内部空間38の円筒40の外周には、樹脂ワッシャ48が緩く装着される。樹脂ワッシャ48は内部空間38の底面38aに載置支持される。樹脂ワッシャ48は前記樹脂ワッシャ34と同一製品である。樹脂製のウォームホイール50は金属製のウォーム52の軸52aに差し込まれて、両者は相対回転不能に組み付けられる。組み付けられたウォームホイール50とウォーム52はフレーム36の内部空間38に収容され、所定位置に配置されて、ウォーム52の軸52aの両端部52b,52cの下面が内部空間38内の軸受(図8の符号38b,38c)に載置支持される。これによりウォームホイール50とウォーム52は内部空間38で一体に回転する。フレーム36の内部空間38の円筒40の外周には、シャフト外挿ギヤ54が回転可能に装着される。シャフト外挿ギヤ54はPA+GF樹脂等の強化樹脂の一体成形品で構成されている。シャフト外挿ギヤ54の中央部にはフレーム36の円筒40およびシャフト24bが回転可能に差し込まれる中空部55が構成されている。シャフト外挿ギヤ54の下面の軸受け面106(図6)は樹脂ワッシャ48の上に摺動可能に載置支持される(図6)。シャフト外挿ギヤ54の外周面は、はす歯によるギヤ歯54bが構成されてウォームホイールを構成している。ギヤ歯54bはウォーム52と噛み合わされてウォームギヤを構成する。シャフト外挿ギヤ54の上面には、クラッチ谷56aとクラッチ山56bをシャフト外挿ギヤ54の軸周り方向に交互に5組、各組等間隔で繰り返し配列したシャフト外挿ギヤ側クラッチ面56が構成されている。1つのクラッチ谷56aの周方向の長さ(角度)と、1つのクラッチ山56bの周方向の長さ(角度)は等しく設定されている。
シャフト外挿ギヤ54の上にはクラッチプレート58がシャフト24bに差し込まれて同心状に載置支持される。クラッチプレート58はPA+GF樹脂等の強化樹脂の一体成形品で構成されている。クラッチプレート58の中央部にはシャフト24bが回転不能にかつ軸方向に移動可能に差し込まれる中空部59が構成されている。クラッチプレート58の下面には、クラッチ谷60aとクラッチ山60bをクラッチプレート58の軸周り方向に交互に5組、各組等間隔で繰り返し配列したシャフト側クラッチ面60が構成されている。シャフト外挿ギヤ側クラッチ面56とシャフト側クラッチ面60はクラッチ機構61を構成する。シャフト側クラッチ面60の1つのクラッチ谷60aの周方向の長さ(角度)と、1つのクラッチ山60bの周方向の長さ(角度)は等しく設定されている。また、シャフト外挿ギヤ側クラッチ面56とシャフト側クラッチ面60とは内径および外径が等しい。したがって、シャフト外挿ギヤ側クラッチ面56のクラッチ谷56aとクラッチ山56bは、シャフト側クラッチ面60のクラッチ山60bとクラッチ谷60aにがたつきなく嵌合する。クラッチ谷56aとクラッチ山56bの境界位置の段差、クラッチ谷60aとクラッチ山60bの境界位置の段差は傾斜角度が互いに等しい傾斜面でそれぞれ構成されている。これにより、シャフト外挿ギヤ側クラッチ面56とシャフト側クラッチ面60の嵌合は、これら両クラッチ面56,60の相互間に作用する回転力により外れることができる。クラッチプレート58の内周面には、回転止め凹部62aと回転止め凸部62bを周方向に5組配列した回転止め形状62が軸方向に延在して構成されている。回転止め凹部62aと回転止め凸部62bはシャフト24bの外周面に構成された回転止め凸部32bと回転止め凹部32aにそれぞれ僅かな隙間を介して対面する。これにより、回転止め凹部62aと回転止め凸部62bは回転止め凸部32bと回転止め凹部32aに対し軸周り方向に回転不能にかつ軸方向に摺動可能に嵌合する。その結果、クラッチプレート58はシャフト24bの軸周り方向に回転不能で軸方向に移動可能にシャフト24bに装着される。
図3において、クラッチプレート58の上にはコイルスプリング64がシャフト24bに差し込まれて同心状に載置支持される。コイルスプリング64の上には金属プレート66がコイルスプリング64を押圧圧縮しながらシャフト24bに差し込まれる。金属プレート66の内周面に構成された突起66aをシャフト24bの上部外周面に構成された溝35に沿って差し込み回転させることで、金属プレート66はシャフト24bの上部に装着される。これにより、コイルスプリング64は圧縮状態でシャフト24bに装着される。このとき、コイルスプリング64の伸長力がクラッチプレート58の上面と金属プレート66の下面との間に作用する。この伸長力により基部24aの上面の山谷反復形状26とフレーム36の下面の山谷反復形状27(図5)との間、およびシャフト外挿ギヤ54の上面のシャフト外挿ギヤ側クラッチ面56とクラッチプレート58の下面のシャフト側クラッチ面60との間にそれぞれ嵌合力が与えられる。ただし、ミラー回転部15が格納位置と展開位置の間にあるときは、コイルスプリング64からフレーム36に与えられる伸長力は軸受け面45から樹脂ワッシャ34を介して軸受け面30で受けられて、ミラー回転部15の回転は軸受け面45,30どうしが樹脂ワッシャ34を挟んで摺動することにより行われるので(すなわち樹脂ワッシャ34を挟んだ軸受け面45,30どうしの当接摺動でミラー回転部15の回転を軸受け支持するので)、山谷反復形状26,27の対向面どうしは離されていて当接摺動しない(図6参照)。
図3の右側に示した各部品を全て組み付けた後、フレーム36の上端の開口36aの内周側の段部36bにプレートアウタ68が載置されて、開口36aが閉じられる。プレートアウタ68はPOM(ポリアセタール)等の樹脂の一体成形品で構成されている。プレートアウタ68は上面にモータ76を収容保持する筒部72および、フレーム36の開口36aから上方に突出しているシャフト24bの上部とコイルスプリング64と金属プレート66を包囲するドーム74を有する。これにより、モータ76はシャフト24bの側方位置に、モータ76の回転軸をシャフト部品24の軸18と平行にして配置されることになる。ドーム74の中央部にはシャフト24bの上部を突き出させる丸穴74aが開設されている。プレートアウタ68がフレーム36に被せられる前に、プレートアウタ68には筒部72にモータ76が上方から挿入されて装着される。モータ76のモータシャフト(出力シャフト、回転軸棒)78は、筒部72内の底部73(図6)の中央部に構成された穴73aを貫通して鉛直下方に向けてプレートアウタ68の下方に突出している。モータシャフト78にはウォーム80が装着される。プレートアウタ68はこのようにモータ76およびウォーム80を保持した状態でフレーム36の開口36aの内周側の段部36bに載置される。このときウォーム80はウォームホイール50と噛み合わされてウォームギヤを構成する。また、ウォーム80、ウォームホイール50、ウォーム52、シャフト外挿ギヤ54、クラッチプレート58は、モータ76の駆動力をシャフト24bに伝達する動力伝達機構81を構成する。また、プレートアウタ68の下面から下方に向けて突出して構成された2本の突片77(図3では手前側の突片77のみ現れている。もう1本の突片は手前側の突片77の斜め向かい側にある)の下端面がウォーム52の軸52aの両端部52b,52cの上面に僅かな隙間を介してそれぞれ対面し、ウォーム52とウォームホイール50が上方に移動するのを規制する。プレートアウタ68がフレーム36の開口36aの内周側の段部36bに載置された後、プレートアウタ68は4本のねじ82でフレーム36に固定される。
プレートアウタ68がフレーム36に固定された後、プレートアウタ68の上面の筒部72とドーム74の間の空間(言い換えれば、モータ76とシャフト24bの間の空間)75内に回路基板(プリント基板)84が立てて配置される。シャフト外挿ギヤ54は樹脂を基材とする材料で構成されているので、シャフト外挿ギヤとして必要な強度を確保するために、シャフト外挿ギヤ54は金属製のシャフト外挿ギヤに比べて大径となる。これに伴いモータ76とシャフト24bの間の空間75は拡げられているので、回路基板84がコネクタ受け具(ソケット)88等を搭載しているために搭載部品を含めた全体の厚さが厚くなっていても、該回路基板84を空間75に容易に配置することができる。回路基板84にはモータ76に駆動電力を供給するモータ駆動回路と、このモータ駆動回路とモータ76の端子85(モータ端子、雌型端子、図7)を接続するモータ接続端子86(雄型端子)と、ワイヤハーネス(図示せず)の先端のコネクタ89(図7)が差し込まれてワイヤハーネスとモータ駆動回路を接続するコネクタ受け具88(ソケット、コネクタ受部)が搭載されている。コネクタ受け具88内には、ワイヤハーネスの先端のコネクタ89の端子(図示せず)と電気的に接続されるコネクタ接続端子91(図7)が配置されている。回路基板84の下端84aはプレートアウタ68の筒部72とドーム74の間の空間75の底部に構成された溝75aに差し込まれて支持され、モータ接続端子86の先端はモータ端子85に差し込まれて支持される。これにより回路基板84は空間75に立てて配置されると共にモータ接続端子86とモータ端子85が電気的に接続される。
図3において、フレーム36にプレートアウタ68が固定され、プレートアウタ68に回路基板84が取り付けられた後、プレートアウタ68の上にはシールキャップ90が被せられる。シールキャップ90はPP(ポリプロピレン)等の樹脂の一体成形品で構成されている。シールキャップ90の上面には、シャフト24bの中空部31の上部開口31aに連通する丸穴92が開設されている。また、シールキャップ90の一側面には、回路基板84のコネクタ受け具88のコネクタ差込口88aに連通するコネクタ挿入口94が開設されている。また、シールキャップ90の下端の開口96の周囲4箇所には爪係止枠98が構成されている。シールキャップ90をプレートアウタ68に被せて押下すると、フレーム36の上部外周面の周囲4箇所に突出構成された爪100がシールキャップ90の爪係止枠98に係合する。これにより、フレーム36とシールキャップ90が連結され、電動格納ユニット16が一体に組み立てられた状態となる。このようにして組み立てられた電動格納ユニット16のシャフト24bの中空部31にはワイヤハーネスが通される。ワイヤハーネスは、電動格納ユニット16用配線のほか、ドアミラー10に搭載する機能に応じて、鏡面調整用アクチュエータ用配線、ターンランプ用配線等を含んでいる。ワイヤハーネスのミラー回転部15側の端部はシールキャップ90の丸穴92から排出される。ワイヤハーネスの車体側の端部はシャフト部品24の中空部31の下端から排出されて、車体内に導かれる。ワイヤハーネスの各配線のミラー回転部15側の端部にはコネクタがそれぞれ装着されている。このうち、電動格納ユニット16用配線の先端のコネクタ89(図7)は、コネクタ挿入口94に差し込まれて、回路基板84のコネクタ受け具88に接続される。
図6は以上の構成を有するドアミラー10をシャフト部品24およびモータ76の各中心軸を通る位置で切断して示したものである。これは、図7のA−A矢視位置での切断端面構造に相当する。この図6は、バイザー14にハウジングカバー17を装着し、ミラー回転部15が展開位置の姿勢にあり、かつシャフト外挿ギヤ側クラッチ面56とシャフト側クラッチ面60が噛み合っているときの状態を示す。このとき、山谷反復形状26と山谷反復形状27は、図6では現れていないが、山26bと谷26aの境界の傾斜面26e(図4)と、山27bと谷27aの境界の傾斜面27e(図5)とが当接して係止されている。図6の展開位置にある状態からミラースイッチを操作して格納指令を与えると、モータ76が起動される。モータ76の回転はウォーム80、ウォームホイール50、ウォーム52を介してシャフト外挿ギヤ54に伝達される。このときシャフト外挿ギヤ側クラッチ面56とシャフト側クラッチ面60は噛み合っていて、シャフト外挿ギヤ54はシャフト24bに対して回転できないので、代わりにフレーム36をシャフト24bの軸周り方向を回転させるように力が作用する。これにより、軸受け面30と軸受け面45が樹脂ワッシャ34を挟んで摺動し、かつ、フレーム36の内部空間38の底面38aとシャフト外挿ギヤ54の下面の軸受け面106が樹脂ワッシャ48を挟んで摺動してミラー回転部15は格納方向に回転する。ミラー回転部15の回転が格納位置でストッパ51(図5)とストッパ溝57(図2)の一端との係合により機械的に停止されると、該停止が検知されてモータ76の駆動は停止される。これでミラー回転部15が格納位置に保持される。この状態からミラースイッチを操作して展開指令を与えると、モータ76が逆方向に起動され、ミラー回転部15は展開方向に回転する。ミラー回転部15の回転が展開位置で山谷反復形状26の山26bと谷26aの境界の傾斜面26eと、山谷反復形状27の山27bと谷27aの境界の傾斜面27eとの係合により停止されると、該停止が検知されてモータ76の駆動は停止される。これでミラー回転部15は展開位置に保持される。
図7は図2のドアミラー10を組み立てて車両に搭載して、ミラー回転部15が展開位置にある姿勢で上方から見た状態を示したものである。図7では、ハウジングカバー17(図6)を外し、かつ電動格納ユニット16内を透視した状態で示し、かつコネクタ受け具88にワイヤハーネスの電動格納ユニット16用配線のコネクタ89をゴムパッキン101を付けて差し込んだ状態で示す。図7において、回路基板84は、モータ接続端子86をモータ端子85に差し込み、かつ回路基板84の下端84aをプレートアウタ68に構成された溝75a(図3、図6)に差し込んで支持した状態で、モータ76とシャフト24bの間の空間75に全体が縦置きに配置されている。
フレーム36の内部空間38内の構成を図8を参照して説明する。フレーム36の内部空間38内には、既に説明した構成のほか、ウォームホイール収容空間111、ウォーム収容空間113、ウォームホイール進入口115、4個のねじ穴117等が構成されている。ウォームホイール収容空間111はウォーム52の軸52aに同軸に固定装着されたウォームホイール50を収容する。このときウォーム52の軸52aは両端部52b,52cが軸受38b,38cに支持されている。ウォーム収容空間113はウォーム80を同軸に収容する空間で、ウォーム80よりも大径の円柱状の空間で構成される。ウォームホイール進入口115はウォームホイール収容空間111とウォーム収容空間113を連通させて、ウォームホイール50の外周面をウォームホイール進入口115を通してウォーム収容空間113に進入させ、ウォームホイール50とウォーム80とが噛み合うようにする。4個のねじ穴117はプレートアウタ68をフレーム36の上に固定するための4本のねじ82(図3)をねじ込むためのねじ穴である。ウォーム収容空間113の底部にはウォーム収容空間113の一般径よりも小径の軸受凹部93が構成されている。軸受凹部93にはグリースが充填され、ウォーム80の先端部80a(図3、図6)が収容されて、軸受け支持される。ウォーム収容空間113の円形の上部開口部113aには、プレートアウタ68の下面の穴73a(モータシャフト78を通すための穴、図6)と同心に、プレートアウタ68の下面に構成された円形の凸部119(図6)が、ウォームホイール進入口115に臨む箇所を除き、周囲に隙間なく(またはほぼ隙間なく)収容される。これにより、凸部119の外周面は上部開口部113aの内周面に全周の半周以上の領域が包囲されて支持され、その結果凸部119の中心の穴73aから突出するモータシャフト78はウォーム収容空間113に対し、モータシャフト78の軸に直交する面方向に位置決めされる。ウォーム収容空間113の周囲には、ウォームホイール進入口115に臨む箇所を除き、一定厚の円筒状壁部121を残して平面C字形状の肉抜き123が深く構成されている。肉抜き123を設けることにより、フレーム36の樹脂成形に伴うヒケを抑制して、ウォーム収容空間113の上部開口部113aの成形精度を高めることができる。これにより、ウォーム収容空間113に対するモータシャフト78の、モータシャフト78の軸に直交する面方向の位置決め精度が向上する。その結果、ウォーム80とウォームホイール50との噛み合い状態を正常な状態に維持して、ウォーム80とウォームホイール50とが噛み合って回転する際の動作音を正常なレベルに保つことができる。
図9は図2のドアミラー10を組み立てた状態におけるミラーベース12に対するシャフト部品24の配置を示す。図9によればミラーベース12における山谷反復形状26の山26bと谷26aおよび高さ維持突起28の回転軸18の周り方向の位置関係が分かる。また、図10は同じく図2のドアミラー10を組み立てた状態におけるミラー回転部15に対するフレーム36の配置を示す。図10によれば、ミラー回転部15における山谷反復形状27の山27bと谷27aおよび高さ維持突起41の回転軸18の周り方向の位置関係が分かる。
ここで、図1を参照して、ミラー回転部15の前方傾倒動作におけるストッパ51とストッパ溝57、山谷反復形状26,27、高さ維持突起28,41の各動作を説明する。図1において、(a)はミラー回転部15が展開位置にあるときの状態、(b)はミラー回転部15の前方傾倒動作により山谷反復形状26,27の傾斜面26e,27eどうしの係合が解除された直後の状態、(c)はミラー回転部15が前方傾倒位置に達した状態をそれぞれ示す。なお、図1では山谷反復形状26,27について1組の山谷の動作を示しているが、3組の山谷とも同時に同じ動作をする。同様に、図1では高さ維持突起28,41について1組の動作を示しているが、2組の高さ維持突起28,41とも同時に同じ動作をする。ミラー回転部15が展開位置から外力による前方傾倒動作で前方傾倒位置に至り、そこから電動で格納方向に戻るときの一連の動作を順を追って説明する。
(1) 展開位置(図1(a)):
ミラー回転部15が展開位置にあるときは、ストッパ51はストッパ溝57内の全移動幅の中間位置にある。山谷反復形状26,27は傾斜面26e,27eどうしが当接して係止されている。高さ維持突起28,41は周方向に互いに離れた位置にある。なお、このときミラー回転部15は、シャフト部品24の軸受け面30とフレーム36の軸受け面45どうしが樹脂ワッシャ34を挟んで当接することによりミラーベース12に軸受け支持されているので、ストッパ51の下端面51aとストッパ溝57の底面57aどうし、山谷反復形状26,27の山26bの頂面26cと谷27aの底面27dどうし、山27bの頂面27cと谷26aの底面26dどうし、高さ維持突起28,41の頂面28aと底面41cどうし、底面28cと頂面41aどうしはそれぞれ離れていて当接していない。
(2) 前方傾倒動作開始(図1(b)):
展開位置にあるミラー回転部15に車両前方へ所定値以上の外力が与えられると、コイルスプリング64の付勢力に抗して山26b,27bどうしが互いに相手方の傾斜面27e,26eを摺動して登り、相手方の山の頂面27c,26cに乗り上げて傾斜面27e,26eどうしの係合を解除する。この動作により、ミラー回転部15はミラーベース12に対して高さ方向に距離h上昇する。ミラー回転部15がミラーベース12に対して上昇するのに伴い、軸受け面30,45どうしは当接を解除し互いに離れる。ミラー回転部15が更に外力で回転され続けると、山の頂面27c,26cどうしがコイルスプリング64の付勢力に抗して当接して摺動する。山の頂面27c,26cどうしが摺動している間に、高さ維持突起28,41どうしは対面する位置に来る。このとき、山の頂面27c,26cどうしが当接摺動するのと並行して、高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしも当接摺動するようにしてもよい。あるいは、山の頂面27c,26cどうしのみが当接摺動し、高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしは当接せずに少し離れていて摺動しないようにしてもよい。
(3) 高さを維持して前方傾倒位置へ(図1(c)):
ミラー回転部15が更に外力で回転され続けると、山の頂面27c,26cどうしの対面が外れる位置に来る。これにより山の頂面27c,26cどうしの当接摺動が解除される。このとき、それまで山の頂面27c,26cどうしの当接摺動と並行して高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしも当接摺動していた場合には、高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしは引き続き当接摺動する。また、それまで山の頂面27c,26cどうしのみが当接摺動し、高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしは当接摺動せずに少し離れていた場合には、山の頂面27c,26cどうしの対面が外れるのに伴いミラー回転部15が僅かに下降して、ここではじめて頂面28a,41aどうしが当接して摺動を始める。いずれの場合も、山の頂面27c,26cどうしの対面が外れても、高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしが当接して摺動することにより、山26b,27bは相手方の谷27a,26aに落ち込まない。したがって、ミラーベース12に対するミラー回転部15の高さが、上昇した位置に維持される。ミラー回転部15が更に回転されると、ストッパ51がストッパ溝57の一端の壁面57bに当接して係止され、ミラー回転部15は高さが維持されたまま回転が機械的に停止される。
(4) 前方傾倒位置から電動での復帰:
ミラー回転部15が前方傾倒位置にある状態からミラースイッチを操作して格納指令を与えると、モータ76が起動される。このとき高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしが摺動してミラー回転部15は格納方向に回転する。山の頂面27c,26cどうしが対面し始める位置まで回転すると、高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしの摺動と並行して山の頂面27c,26cどうしの摺動が開始される。あるいは、山の角27f,26f(図1(c))どうしが当たってミラー回転部15がミラーベース12に対して僅かにせり上がり、山の頂面27c,26cどうしの摺動が開始されるとともに、高さ維持突起28,41の頂面28a,41aどうしが僅かに離れて頂面28a,41aどうしの摺動が解除される。山の角27f,26fは丸みが付けられているので、山の角27f,26fどうしが当たったときにミラー回転部15の回転は係止されることなく、スムーズに山の頂面27c,26cどうしの摺動に移行させることができる。ミラー回転部15が更に格納方向に回転されて(図1(b))、その後山の頂面27c,26cどうしの対面が外れると、コイルスプリング64の付勢力により山26b,27bは相手方の谷27a,26aに落ち込み、展開位置(図1(c))を経て格納位置に至る。ミラー回転部15の回転が格納位置でストッパ51とストッパ溝57の他端の壁面(図示せず)との係合により機械的に停止されると、該停止が検知されてモータ76の駆動は停止され、ミラー回転部15が格納位置に保持される。これで、電動駆動による通常の展開・格納動作を行える状態に復帰する。
前記実施の形態ではミラー回転部15をモータ駆動で格納位置から展開位置の方向へ移動させて展開位置で停止させる際の力を、山谷反復形状26,27の傾斜面26e,27eの係合のみで受けるようにしたが、展開位置で高さ維持突起28,41の傾斜面による段差部28b,41bも同時に係合させて、該停止させる力の一部を高さ維持突起28,41の段差部28b,41bで分担させることもできる。あるいは段差部28b,41bにこのような分担をさせない場合には、高さ維持突起28,41の段差部28b,41bは傾斜面に構成することなく直角に切り立った面に構成することもできる。また、前記実施の形態では、単一の部品であるシャフト部品24で基部24aとシャフト24bを構成したが、基部とシャフトは別部品で構成することもできる。また、前記実施の形態では円筒39の端面45を回転部支持面25の軸受け面30と対面するミラー回転部15の軸受け面45としたが、これに代えて、ミラー回転部15が格納位置と展開位置の間にあるときに山26bの頂面26cと谷27aの底面27d、および山27bの頂面27cと谷26aの底面26dをそれぞれ当接摺動させることにより、ミラー回転部15をミラーベース12に軸受け支持することもできる。この場合、山谷反復形状26が回転部支持面25の軸受け面を構成し、山谷反復形状27がミラー回転部15の軸受け面を構成する。またこの場合、円筒39の端面45と回転部支持面25の軸受け面30どうしは当接させずに離すことができる。また、前記実施の形態ではこの考案を車両用電動格納式後方視認ミラーに適用した場合について説明したが、この考案はこれに限らない。すなわち、この考案はドアミラーに代えて車両のドア等に車両側方に突出して搭載される車両用電動格納式後方視認カメラや、その他の車両用電動格納式後方視認装置さらには後方視認用途以外の車両用電動格納式視認装置に適用することもできる。車両用電動格納式後方視認カメラは、例えば図2のバイザー14を小型に構成して、ミラー板に代えてカメラを、バイザー14が使用位置にあるときに該カメラの光軸が車両後方に向くように搭載したものとして構成することができる。