JP3196837B2 - 磁気ヘッドスライダの製造方法 - Google Patents

磁気ヘッドスライダの製造方法

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  • Adjustment Of The Magnetic Head Position Track Following On Tapes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気ディスク装置等
の磁気記録装置に用いられる磁気ヘッドスライダの製造
方法に関し、特に、磁気記録媒体と対向する表面部に保
護膜が形成された磁気ヘッドスライダの製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】現在、コンピュータの外部記憶装置とし
て浮上型磁気ヘッドを備えた磁気記録装置が広く用いら
れている。浮上型磁気ヘッド装置では、停止時には磁気
ヘッドを搭載したスライダと記録媒体は接触しており、
記録媒体が回転すると回転によって生じる空気流によっ
てスライダは記録媒体と微小な間隔を保持した状態で浮
上する。このような浮上型磁気ヘッド装置では、装置の
起動時と停止時にスライダと記録媒体は摺動する。ま
た、スライダが浮上中であっても、偶発的にスライダが
記録媒体表面と接触することがある。このようなスライ
ダと記録媒体の摺動や接触は両者の表面に磨耗や損傷を
与え、装置の信頼性や寿命の低下、さらには突発的な故
障の原因となる。これらを防止あるいは低減するため
に、記録媒体表面には数十nmの炭素から成る保護膜お
よび数nmの厚さの潤滑層が設けられている。
【0003】近年、磁気記録装置の高密度記録化、高速
化に伴い、磁気ヘッドの浮上量はすでに50nm以下に
なりディスク回転数も7,200rpmになるなど、摩
擦、摩耗に対する環境はますます厳しい状況になってい
る。そこで摩擦磨耗特性を改善するために、記録媒体表
面にのみ設けていた保護膜を、磁気ヘッドスライダの表
面にも設けるようになっている。磁気ヘッドスライダの
保護膜としては、記録媒体保護膜と同様に自己潤滑性を
有し、硬度が高い硬質非晶質炭素膜が用いられており、
その厚さは10nm程度が実用化されている。
【0004】磁気ヘッドスライダ上に保護膜を設ける技
術は、摩擦磨耗特性の向上に関しては効果があるが、保
護膜の厚さだけ磁気ヘッドと記録媒体の距離、すなわち
磁気分離長を増大させる。磁気記録装置の記録密度を向
上させるためには磁気分離長を短くすることが重要であ
り、そのため磁気ヘッドスライダ上の保護膜は、摩擦摩
耗特性が損なわれない範囲で、可能な限り厚さが薄いも
のであることが要求される。例えば、1平方インチあた
りの記録密度が10ギガビットを越える高密度磁気記録
装置では、磁気ヘッドスライダ表面に形成する保護膜の
厚さとして3nm程度が要求されている。このような、
極めて薄い保護膜においては、従来のような厚さが10
nm程度の保護膜では問題とならなかった、保護膜の表
面領域での耐久性が保護膜全体の耐久性を決定づけるよ
うになる。
【0005】従来、硬質非晶質炭素からなる保護膜の表
面の摺動特性を向上させる種々の技術が提案されてい
る。例えば、特開平7−129943号公報(以下、従
来例1という)では、磁気ディスクに対向する表面部
に、イオン注入処理を施した改質処理層が形成されてい
る磁気ヘッドスライダが開示されている。従来例1の磁
気ヘッドスライダによれば、スライダ表面の硬度と面粗
さとを制御することにより、スライダの摺動特性を向上
させることができる、としている。
【0006】また、特開平8ー147655号公報(以
下、従来例2という)では、磁気ディスクとの摺動面上
にフッ素イオン注入されたカーボン保護膜を備えた磁気
ヘッドスライダが開示されている。従来例2の磁気ヘッ
ドスライダによれば、スライダ表面の疎液性と面粗さと
が得られ、摩擦力の低減を図ることができる、としてい
る。
【0007】さらに、特開平7−14152号公報(以
下、従来例3という)では、炭素系の保護膜表面の耐摺
動性を向上させるために、表面をアルゴン等の不活性ガ
スプラズマで処理することで不活性ガスを0.05〜
5.0%含有させる技術が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来例1及び
従来例2の磁気ヘッドスライダでは、処理後の表面粗さ
が数nmと大きく、極薄の保護膜の処理に適用すること
は困難である。
【0009】また、従来例3の技術では、元素を添加す
ることにより、硬質非晶質炭素膜自体の機械的、化学的
な特性が変わってしまうという問題がある。特に、極薄
の保護膜では、保護膜全体の厚さに占める、元素を添加
された領域の厚さの割合が極めて大きくなるので、炭素
膜本来の特性を失ってしまうという問題がある。
【0010】本発明の目的は、磁気記録媒体と対向する
表面部に耐久性の高い硬質非晶質炭素からなる保護膜を
形成する磁気ヘッドスライダの製造方法を提供すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気ヘッドスラ
イダの製造方法は、磁気記録媒体と対向するスライダ本
体の表面部に硬質非晶質炭素膜を形成する工程と、硬質
非晶質炭素膜の耐磨耗性の低い表面領域を除去して保護
膜を形成する工程と、を有することを特徴とするもので
ある。
【0012】表面領域の除去は、機械的研磨又は不活性
ガスや炭素との反応性を有するガスプラズマを照射して
エッチングすることで行う。不活性ガスの具体例として
はアルゴン、炭素との反応性を有するプラズマを生成す
るガスの具体例としては、水素、酸素、窒素、二酸化炭
素、一酸化炭素がある。
【0013】磁気記録媒体と対向するスライダ本体の表
面部に下地層を形成した後に硬質非晶質炭素膜を形成し
てもよい。
【0014】硬質非晶質炭素膜の表面領域の全部及び内
部領域の一部を除去して、残存する内部領域の厚さが所
望の厚さになるように保護膜を形成するのが好ましい。
【0015】図1は、高周波プラズマCVD法で形成し
た硬質非晶質炭素膜の表面をダイアモンド針を用いて荷
重20マイクロニュートンで摺動したときの、表面から
の深さと摺動回数あたりの磨耗深さ、すなわち磨耗速度
の関係を示したグラフである。測定は、摺動ごとに原子
間力顕微鏡で磨耗痕の深さを測定することで行った。図
1から、硬質非晶質炭素膜の磨耗速度が、表面から1.
5nmの範囲では速く(約0.20nm/回)、それよ
りも内部では急速に遅くなることがわかる。本発明に係
る磁気ヘッドスライダの製造方法では磨耗速度が速い表
面領域を除去することで、磨耗速度の遅い、すなわち耐
磨耗性に優れた保護膜が形成される。
【0016】また、表1は、アルゴンプラズマによっ
て、硬質非晶質炭素膜の表面層を除去する前と、除去し
た後の、硬質非晶質炭素膜の表面、および膜内部のラマ
ン分光分析法の高波数ピークに対する低波数ピークの比
を示す。
【0017】
【表1】 膜表面のラマンスペクトルは、表面増強ラマン分光法に
より観測した。硬質非晶質炭素膜のラマン分光スペクト
ルは、波数1360cm−1と1540cm 付近の
2つのピークから構成される。高波数ピークに対する低
波数ピークの面積強度の相対比は、膜中の炭素の結合状
態を反映し、この面積強度の相対比が小さいほど、膜中
の炭素の結合状態は、ダイヤモンド的な結合の成分が多
く、グラファイト的な結合の成分がすくない。
【0018】表1からわかるように、表面層を除去する
前の硬質非晶質炭素膜のラマン分光スペクトルは、膜表
面の方が、膜内部よりも高波数ピークに対する低波数ピ
ークの面積強度の相対比が大きく、グラファイト的な結
合成分が多い。これは、硬質非晶質炭素膜の表面の耐磨
耗性が、膜の内部よりも低いことと一致する。一方、表
面層を除去した後のラマン分光スペクトルは、膜の表面
と膜の内部で高波数ピークに対する低波数ピークの面積
強度の相対比が等しい。したがって、膜の表面と内部で
は炭素の結合状態が等しく、表面領域の除去によって形
成された新たな表面は、表面領域の除去による形成過程
で炭素の結合状態に変化を生じていない。
【0019】このように、本発明に係る磁気ヘッドスラ
イダの製造方法では、硬質非晶質炭素からなる保護膜を
一旦形成した後に、硬質非晶質炭素膜の表面領域に存在
する耐磨耗性の低い層を除去することで、耐磨耗性に優
れた表面をもつ硬質非晶質炭素膜からなる保護膜を形成
することができる。
【0020】本発明は、硬質非晶質炭素膜の表面領域に
存在する耐磨耗性の低い領域を除去し、耐磨耗性の高い
内部を表面とすることで、硬質非晶質炭素膜からなる保
護膜表面の耐磨耗性を向上させる。そのため、スライダ
の材料や構造、磁気ヘッドスライダと保護膜の間に設け
る密着のための下地層の有無や種類に影響は受けない。
【0021】また、極薄の膜を厚さの精度良く成膜する
ことは、薄膜形成装置の膜形成速度などの制限により困
難な場合があるが、本発明では、一旦所定の厚さ以上に
硬質非晶質炭素膜を成膜した後に表面領域を除去し、所
定の厚さの保護膜を形成することにより、必ずしも成膜
時に厳密な膜厚の制御を行う必要はない。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。図2は、本発明の磁気ヘッドスライダの製造方法
を工程順に説明するための断面図である。
【0023】まず、図2(a)に示すように、Al
−TiC(AlTiC)等からなるスライダ本体1の
表面に下地層2を形成する。スライダ本体1の材質はA
lTiC以外の材料、例えばZrO等でもよい。また、
下地層2は、密着層としての働きをするものであれば、
組成等に制限はない。また、下地層2は、保護膜に要求
される密着力を達成できる場合には、必ずしも形成する
必要はない。
【0024】次いで、図2(b)に示すように、下地層
2の上に硬質非晶質炭素膜3を形成する。このとき、硬
質非晶質炭素膜3の表面には、耐磨耗性が内部領域3a
よりも低い表面領域3bが存在する。一般に、硬質非晶
質炭素膜はグラファイト成分とダイヤモンド成分から構
成されているが、膜の表面にグラファイト成分が多く存
在するため、表面の耐磨耗性が膜内部よりも低くなる。
【0025】膜の表面にグラファイト成分が多く存在す
る理由は、以下の通りである。すなわち、炭素膜の成長
過程では、炭素膜に炭素粒子が侵入することによって発
生した応力によって、炭素膜中にダイヤモンド成分が生
成する。このプロセスにおいて、炭素粒子は成長中の膜
の表面からある程度の深さに侵入し、そこで、ダイヤモ
ンド成分を生成するので、膜の表面ではダイヤモンド成
分は生成されない。したがって、硬質非晶質炭素膜の表
面は、常にグラファイト成分を多く含むことになる。
【0026】なお、表面領域の厚さは膜の内部応力と関
係があり、内部応力が小さい膜では厚く、内部応力が大
きい膜では薄い。本発明者の行った実験では、膜の内部
応力が200MPa〜5GPaでは、表面領域の厚さ
は、5nm〜0.4nmであった。
【0027】硬質非晶質炭素膜3の形成は、高周波プラ
ズマCVDやスパッタ法、レーザーアブレイション、イ
オンビームデポジションなどの方法で行う。また、硬質
非晶質炭素膜3は、炭素を主成分とする硬質膜であれ
ば、炭素の他に水素や窒素、硅素などを含んでいてもよ
い。
【0028】次いで、硬質非晶質炭素膜3の表面を、機
械的研磨による摺動磨耗や、プラズマによるエッチング
で除去する。摺動磨耗は、ダイヤモンドなどの研磨微粒
子や硬質材料の平面で研磨することで行うが、硬質非晶
質炭素膜3内部への影響を抑え、また処理面の平滑性を
得るために、軽荷重で摺動することが好ましい。また、
プラズマによるエッチングは、磨耗粉の発生がないた
め、処理表面を清浄に保つことができるという利点があ
る。硬質非晶質炭素膜3の除去する表面の厚さは、内部
領域3aが最表面になるように、表面領域3bよりも厚
くなければならない。また、硬質非晶質炭素膜3の表面
の除去は、残存する内部領域3aの厚さが所定の厚さに
なるまで行う。
【0029】なお、表面領域を除去する厚さ(必要最小
限の厚さ)は、ダイヤモンドチップ等で磨耗試験を行
い、表面領域の厚さを測定する。いくつかのサンプルに
ついて、表面領域の厚さと膜の内部応力を測定して検量
線を作成すれば、それ以降は、内部応力の測定だけで表
面領域の厚さを知ることができる。
【0030】以上の工程を経て、図2(c)に示すよう
に、スライダ本体1の表面に形成された下地層2の上
に、保護膜4が形成される。
【0031】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。本実施例
では、スライダ本体1の材質としてAlTiCを用い
た。下地層2には厚さ1nmのSi層を用いた。下地層
2の形成は、Siをターゲットとした高周波マグネトロ
ンスパッタリング法を用いた。下地層2の上に、硬質非
晶質炭素膜3を形成し、ダイヤモンド結晶との摺動、あ
るいはアルゴン、酸素、窒素、水素、一酸化炭素、二酸
化炭素のそれぞれの純気体のプラズマによるエッチング
によって硬質非晶質炭素膜3の表面に形成された表面領
域3bを除去して保護膜4を形成した。プラズマの発生
は、反応室に所定のガスを圧力0.5Paになるように
流し、13.56MHzの高周波を電力300Wで印加
して発生させた。保護膜4を形成するためには、硬質非
晶質炭素膜3の表面を表面領域3bの厚さ以上に除去し
なければならない。表面領域3bの厚さは、ダイヤモン
ド針で硬質非晶質炭素膜3の表面を摺動し、磨耗速度
の、表面からの深さによる変化を測定して決定した。こ
の測定結果を基準にして、保護膜4所定の厚さに表面領
域3bの厚さの和を越える厚さになるように、硬質非晶
質炭素膜3を形成した。
【0032】保護膜4の耐久性の試験は、記録媒体の起
動と回転、停止動作を繰り返すコンタクト・スタート・
ストップ試験(以下、CSS試験という)、記録媒体を
回転させた状態でスライダを記録媒体の内周と外周を繰
り返し往復させるシーク試験、雰囲気を減圧することで
スライダが浮上しないようにして記録媒体と接触させ、
その状態で記録媒体を回転させる減圧高速摺動試験の3
種類の方法によって行った。
【0033】CSS試験では、スライダの記録媒体に対
する摩擦特性を知ることができる。CSS動作を5万回
行った後、記録媒体表面を光学顕微鏡で観察して損傷の
有無を調べた。
【0034】シーク試験および減圧高速摺動試験はスラ
イダ保護膜の耐磨耗性を評価する手法である。シーク試
験では、シーク動作50万回後のスライダ保護膜の損傷
を光学顕微鏡で観察した。
【0035】減圧高速摺動試験では、スライダと記録媒
体が摺動することによって放出されるアコースティック
・エミッションの強度をモニターし、スライダ保護膜が
磨滅や剥離のために失われると生じるアコースティック
・エミッションの急激な増加までの時間を、減圧高速摺
動寿命とした。
【0036】まず、硬質非晶質炭素膜3を、炭素からな
るターゲットをアルゴンでスパッタリングすることで成
膜した実施例について説明する。形成された硬質非晶質
炭素膜3は、炭素のみから構成され、表面領域3bの厚
さは2nmであった。
【0037】実施例1〜7は、硬質非晶質炭素膜3を7
nmの厚さで形成し、それぞれ、ダイヤモンドの結晶面
による摺動磨耗、アルゴン、酸素、窒素、水素、一酸化
炭素、二酸化炭素のプラズマにより、厚さが2nmにな
るまで硬質非晶質炭素膜3の表面を除去して、保護膜4
を形成した。
【0038】比較例1は、硬質非晶質炭素膜3を厚さ2
nmに形成し、その後、表面除去は行わずに耐久性を試
験した。
【0039】表2は実施例1〜7と比較例1の耐久性試
験の結果をまとめたものである。
【0040】
【表2】 硬質非晶質炭素膜3を厚さ7nmで形成した後に厚さが
2nmになるまで表面を摺動研磨やガスのプラズマによっ
てエッチングした実施例1〜7では、いずれも媒体損傷
及び保護膜損傷はなく、減圧摺動寿命は500分以上で
あった。従って、実施例1〜7は、優れた摩擦磨耗特性
を有していることがわかる。
【0041】これに対し、表面除去を行わない比較例1
では、CSS試験、シーク試験後のスライダ本体1の表
面は、硬質非晶質炭素膜3と下地層2が失われ、また、
記録媒体表面に傷が生じていた。これは、硬質非晶質炭
素膜3の厚さが表面領域3bの厚さと同程度のため硬質
非晶質炭素膜3全体の耐磨耗性が十分でなく、そのため
硬質非晶質炭素膜3が磨滅し、さらに、耐磨耗性の低い
Siによる下地層2も摺動により磨滅したためである。
また、比較例1では、スライダ本体1の表面と記録媒体
が直接接触したために、記録媒体表面に傷が生じてい
た。さらに、減圧摺動寿命は45分であり、実施例1〜
7に比べて短かった。
【0042】表3は、走査型原子間力顕微鏡を用いて測
定した、実施例1と実施例2の、表面領域3bを除去す
る前の硬質非晶質炭素膜3と、表面領域3bを除去して
形成した保護膜4の表面の、平均中心線粗さ(Ra)を
示す。
【0043】
【表3】 実施例1では、Raは0.7nmにまで減少している
が、実施例2では、保護膜4のRaは表面領域3bの除
去前と等しい1.5nmである。実施例1、実施例2と
も摩擦磨耗特性に優れており、摩擦磨耗特性の向上は、
保護膜4の表面粗さの変化に依存しないことがわかる。
【0044】また、実施例2〜7の保護膜4の表面の組
成を二次イオン質量分析で調べた結果、いずれの実施例
も、プラズマを形成したガスに含まれる、炭素以外の元
素の含有量は、0.01原子%以下であった。
【0045】次に、硬質非晶質炭素膜3を、メタンと水
素の混合ガスを原料として高周波プラズマCVD法によ
って形成した実施例を説明する。形成された硬質非晶質
炭素膜は水素を30%含み、表面領域3bの厚さは、
1.5nmであった。
【0046】実施例8〜14は、水素を含有する硬質非
晶質炭素膜3を厚さ7nmに形成し、それぞれ、摺動磨
耗、アルゴン、酸素、窒素、水素、一酸化炭素、二酸化
炭素のプラズマにより、厚さが2nmになるまで硬質非
晶質炭素膜3の表面を除去して、保護膜4を形成した。
【0047】比較例2は、それぞれメタンと水素、メタ
ン、水素、窒素を原料として、硬質非晶質炭素膜3を厚
さ2nmに形成し、その後、表面除去は行わずに耐久性
を試験した。
【0048】表4は、実施例8〜14と比較例2の表面
処理の方法と耐久性試験の結果をまとめたものである。
【0049】
【表4】 硬質非晶質炭素膜3を厚さ7nmで形成した後に厚さが
2nmになるまで表面を摺動研磨、エッチングした実施例
8〜14では、いずれも媒体損傷及び保護膜損傷はな
く、減圧摺動寿命は500分以上であった。従って、実
施例8〜14は、優れた摩擦磨耗特性を有していること
がわかる。
【0050】これに対し、表面除去を行わない比較例2
では、CSS試験、シーク試験後のスライダ本体1の表
面は、硬質非晶質炭素膜3と下地層2が失われ、また、
記録媒体表面に傷が生じていた。さらに、減圧摺動寿命
は55分であり、実施例8〜14に比べて短かった。
【0051】上記実施例では、スパッタリング法と高周
波プラズマCVDで硬質非晶質炭素膜3を形成したが、
レーザーアブレイションやイオンビームデポジションで
形成した場合にも、表面領域3bを除去することによ
り、耐磨耗性が高い表面を有した保護膜4を形成するこ
とができる。
【0052】また、硬質非晶質炭素膜3は炭素を主成分
としていればよく、水素に限らず、窒素、硅素を含有し
ている場合にも同様な、摩擦磨耗特性の向上効果が得ら
れた。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
磁気記録媒体と対向するスライダ本体の表面部に硬質非
晶質炭素膜を形成する工程と、硬質非晶質炭素膜の耐磨
耗性の低い表面領域を除去して保護膜を形成する工程
と、を有するので、耐磨耗性に優れた極薄の保護膜を有
する磁気ヘッドスライダを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】硬質非晶質炭素膜をダイヤモンド針で摺動して
測定した、表面からの深さと摺動回数あたりの磨耗深さ
の関係を示したグラフである。
【図2】本発明の磁気ヘッドスライダの製造方法を工程
順に説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 スライダ本体 2 下地層 3 硬質非晶質炭素膜 3a 内部領域 3b 表面領域 4 保護膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/60 G11B 21/21

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁気記録媒体と対向するスライダ本体の表
    面部に硬質非晶質炭素膜を形成する工程と、 前記硬質非晶質炭素膜の耐磨耗性の低い表面領域を除去
    して保護膜を形成する工程と、 を有することを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方
    法。
  2. 【請求項2】前記表面領域の除去は、機械的研磨によっ
    て行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッドス
    ライダの製造方法。
  3. 【請求項3】前記表面領域の除去は、不活性ガスのプラ
    ズマの照射によって行うことを特徴とする請求項1に記
    載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  4. 【請求項4】前記不活性ガスがアルゴンであることを特
    徴とする請求項3に記載の磁気ヘッドスライダの製造方
    法。
  5. 【請求項5】前記表面領域の除去は、炭素との反応性を
    有するガスプラズマの照射によって行うことを特徴とす
    る請求項1に記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  6. 【請求項6】炭素との反応性を有するガスプラズマが、
    水素、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素の少なくと
    も一種以上含むガスによって形成されていることを特徴
    とする請求項5に記載の磁気ヘッドスライダの製造方
    法。
  7. 【請求項7】磁気記録媒体と対向するスライダ本体の表
    面部に下地層を形成した後に硬質非晶質炭素膜を形成す
    ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つの項
    に記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  8. 【請求項8】硬質非晶質炭素膜の表面領域の全部及び内
    部領域の一部を除去して、残存する内部領域の厚さが所
    望の厚さになるように保護膜を形成することを特徴とす
    る請求項1乃至7のいずれか1つの項に記載の磁気ヘッ
    ドスライドの製造方法。
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