JPH10326406A - 磁気ヘッドスライダおよびその製造方法 - Google Patents

磁気ヘッドスライダおよびその製造方法

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JPH10326406A
JPH10326406A JP30172197A JP30172197A JPH10326406A JP H10326406 A JPH10326406 A JP H10326406A JP 30172197 A JP30172197 A JP 30172197A JP 30172197 A JP30172197 A JP 30172197A JP H10326406 A JPH10326406 A JP H10326406A
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JP
Japan
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magnetic head
head slider
diamond
carbon film
film
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JP30172197A
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English (en)
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Koji Fujii
浩司 藤井
Nobuhito Fukushima
信人 福島
Izumi Yamamoto
泉 山本
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Citizen Watch Co Ltd
Original Assignee
Citizen Watch Co Ltd
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Publication date
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  • Adjustment Of The Magnetic Head Position Track Following On Tapes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐久性、耐摩耗性に優れた磁気ヘッドスライ
ダを提供する。 【解決手段】 磁気ヘッドスライダのディスク対向面に
中間層を介して、DLC保護層を形成する。DLC保護
層は炭化水素系ガスに加えてArを添加してプラズマC
VD法で形成することで弾性率が高く、耐摩耗性に優れ
たDLC保護層を形成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気ディスク装置
や磁気テープなどに用いる磁気ヘッドスライダ、特に高
密度記録に適した低浮上量、もしくは接触型の薄膜磁気
ヘッドスライダおよびその製造方法に関するものであ
る。このため耐久性、耐摩耗性に優れた磁気ヘッドスラ
イダを提供することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置に用いられる浮上型磁
気ヘッドは、記録密度の増大にともなって、その浮上量
の極小化がもとめられ、最近では25nm程度の浮上量
をもつヘッドも提案されている。一方、携帯用情報処理
端末の普及にともない電池駆動を前提としたドライブの
省電力化がもとめられ、このためスピンドルモーターの
頻繁な起動・停止が行なわれるようになってきた。これ
らの要求は、磁気ヘッドの側からみると、いずれもスラ
イダーの摩擦・摩耗特性の改善が求められるものであ
り、そこに内在する問題点について以下に具体的事例を
述べる。
【0003】第一に、ヘッドとディスクが近接すること
により両者の接触確率が増加し、ヘッドの摩耗が無視で
きなくなることがあげられる。これはヘッドの機能的な
ダメージと同時に摩耗によって生じるダストの発生が課
題となる。第二に、一般に低浮上型磁気ヘッドスライダ
は、浮上するまでの速度、すなわちテイク・オフ・ベロ
シティが大きく、スピンドルモーターの起動後、浮上す
るまでに必要とするディスクとの摺動距離が長くなり、
摩耗しやすいことが知られている。第三に低浮上を実現
するためには、ディスクに形成したテクスチュアを小さ
くしなければならないが、これはスティクションと呼ば
れるヘッドとディスクの張り付き現象につながる。一
方、システムの省電力化のために、磁気ディスクドライ
ブを頻繁に起動・停止させることは、磁気ヘッドスライ
ダーと磁気ディスクがもっともダメージを受け、またス
ティクションが発生する恐れのある接触停止状態が増加
することであり、連続運転を前提とした磁気ヘッドスラ
イダーと比較して、数段上の耐摩擦・摩耗特性が求めら
れている。この例としてコンタクト・スタート・ストッ
プテストすなわちCSSテストにおいて、従来、5万回
程度でよしとされていたものが、一桁上の50万回のC
SSに耐え得るような磁気ヘッドスライダが必要とされ
てきた。
【0004】このような要求に応えるための技術とし
て、DLC保護層、すなわちダイヤモンド・ライク・カ
ーボン保護層の磁気ヘッドスライダのディスク対向面へ
の形成がある。これはDLCの優れた潤滑性と硬度によ
り、摩擦力の低減と起動・停止時の摩耗を低減しようと
いうものである。また、DLC保護層の形成はスティク
ションの防止にも効果的であることが知られ、それはた
とえばIDEMA主催の“Head Media In
terface Symposium,1994年9月
27日,米国サンノゼ市”の講演概要集135ページに
も述べられている。
【0005】以下に従来のDLCを形成する方法につい
て述べる。図.9に示すように高周波プラズマを用いて
DLCを成膜した場合の従来の技術について述べる。高
周波電源20にマッチングボックスを介して接続された
基板電極21上に磁気ヘッドスライダ1を設置し、それ
に対向するように接地された対向電極22を設ける。原
料となる炭化水素系のガス、例えばメタンガスやエチレ
ンガスを導入し、両電極間でプラズマを発生させ、磁気
ヘッド上にDLC膜を形成することができる。いわゆる
プラズマCVD(プラズマ化学的気相成長法)法を用い
た成膜である。
【0006】特開平4−182916号公報には炭化水
素系ガスに加え、水素やその他の元素を添加してDLC
膜を形成することが述べられているが、その場合の成膜
条件や効果等については特に述べられていない。
【0007】またその中では膜中の水素含有量はCVD
条件、例えば原料ガス圧、プラズマを発生させる際に投
入する電力等を適切に制御すれば容易に行うことができ
ると記載されている。
【0008】そのほか特開平8−045045号公報に
は磁気ヘッドのディスク対向面にDLC膜を付着させる
ことで、耐摩耗性を改善することが開示されている。こ
こでは電子サイクロトロン共鳴プラズマ化学気相堆積法
(ECR−CVD)によりエチレンガス(C24)から
DLCを形成することが開示されている。
【0009】しかしながらこのような高硬度を有するD
LC膜であっても、現行のHDDシステムにおいて従来
の膜でのCSS耐久回数は概ね20万回が限界であっ
た。さらにグライドハイト(ヘッドとディスクが接触を
始める浮上量)と駆動時の実際の浮上量が非常に接近し
たようなヘッド−ディスクインターフェースを有するシ
ステムあるいは接触記録を行うシステムにおいては厳し
い耐摩耗性が要求され、DLCの膜質のより一層の改良
が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
たように急速に進みつつある磁気ヘッドの低浮上化と省
電力化による頻繁な起動・停止の必要性を考慮すると、
今後は少なくとも50万回のCSSに耐える必要があ
り、より優れた耐久性の確保が課題として上げられてい
た。そこで本発明のうち請求項1、2および3に記載の
発明は、こうした課題を解決するために、低浮上特性と
高信頼性を両立させた磁気ヘッドスライダを提供するこ
とを目的としたものである。請求項4から8の発明は請
求項1、2もしくは3に記載の磁気ヘッドスライダを製
造するための方法を提供するものである。ひいては本発
明は高密度記録・低消費電力を実現する磁気ディスクド
ライブを提供するものである。
【0011】従って本発明の目的は、耐久性、耐摩耗性
に優れた磁気ヘッドスライダを提供することであり、極
低浮上型磁気ヘッドや接触型磁気ヘッドを有するシステ
ムの信頼性、耐久性を向上する。また本発明のもう一つ
の目的は耐久性、耐摩耗性に優れたカーボン膜を被覆す
る際の成膜方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、DLCを成膜する際に原料となる炭化水素系ガスに
加えてArガスを添加する。Arはプラズマ中の炭化水
素の解離を促進し、DLC膜の膜質を大幅に改善する。
【0013】従来Arガスを加えてプラズマを発生させ
ることは常套手段である。一般的に考えられるAr添加
の効果は次のようである。Arイオンは解離しやすく、
また不活性で他のガスとも反応しにくいためアシストガ
ス、すなわちプラズマを安定させるためによく使用され
るガスである。また負の電位を基板に印加するシステム
では解離した Ar+イオンは基板に衝突し、膜をスパッ
タリングする。これは一般的にイオンボンバード効果と
よばれるものである。従って基板に成膜される膜のうち
結合の弱いものがボンバードで弾き飛ばされ、強固な結
合のみが残る。よって一般的には適正にArを添加する
と膜は固くなることが知られている。ところが我々はこ
れを負の高電圧を基板に印加するDCプラズマシステム
に適用し、Arガス圧力および基板印加電圧をある範囲
にしぼることによって、膜に新たな特性を与えうること
を見出した。すなわちDLC膜にかつてない高い弾性率
を与えることが出来た。以下に詳細な実施例を述べる。
【0014】
【発明の実施形態】ディスクと対向する面にダイアモン
ドライクカーボン膜が形成された磁気ヘッドスライダで
あって、前記ダイアモンドライクカーボン膜中にArが
含まれていることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。な
らびに、磁気ヘッドスライダのディスク対向面にプラズ
マ化学気相成長法によってダイアモンドライクカーボン
膜を製造する製造方法であって、成膜時に炭化水素系ガ
スと同時にArガスを添加して成膜することを特徴とす
る磁気ヘッドスライダの製造方法である。
【0015】(実施例1)本発明の磁気ヘッドスライダ
の構成を図.1を用いて説明する。本発明の磁気ヘッド
スライダ1はアルミナ−炭化チタンを主成分とする磁気
ヘッド材料を所望のスライダ形状に加工した後、その磁
気ディスク対向面4すなわちエアベアリング面(以下A
BS面と記す)には中間層2を介してDLC保護層3が
形成されている。またスライダ短手方向片側側面に磁気
信号を読み書きするための薄膜磁気ヘッド素子5を備え
ている。
【0016】続いて本発明による磁気ヘッドスライダの
製造方法の実施例を図2により説明する。アルミナ−炭
化チタンを主成分とする磁気ヘッドスライダ基材11
は、ここでは住友特殊金属(株)製AC−2を用いてお
り、複数の薄膜磁気ヘッド素子5がアレイ状に形成さ
れ、ポールハイト加工や洗浄等が既に終了しているもの
であり、これはローと呼ばれるものである(図2−
(a))。この磁気ヘッドスライダ基材を、スパッタ装
置内の基板電極上に設置し、ディスク対向面4をArプ
ラズマによりクリーニングを行ったのち、Arガス3m
torr、高周波電力400WでのSiをターゲットに
したスパッタリングにより、シリコンからなる中間層2
を2nmの厚さで形成した(図2−(b))。
【0017】この後、プラズマCVD法を用いてDLC
保護層3を8nmの厚さで形成した(図2−(c))。
なおシリコン中間層2やDLC保護層3の厚さについて
はここで示した値に限るものではなく、耐久性の観点か
らはより厚いものが望ましいが、磁気ヘッドとディスク
とのスペーシング損失を抑える点からはなるべく薄いこ
とが要求され、両者の兼ね合いから本実施例の値が決定
されている。成膜方法に関する詳細は後述する。
【0018】つぎにディスク対向面4を所望のABS形
状に機械研削ないしフォトリソグラフィを用いたドライ
エッチング法などにより形成し(図2−(d))、最後
に個々の磁気ヘッドスライダに切断することにより(図
示せず)、図1のような磁気ヘッドスライダーが完成す
る。ここで、シリコン中間層2とDLC保護層3の形成
工程は、ポールハイト加工後であればどの工程中にあっ
てもよく、たとえば個々の磁気ヘッドスライダに切断さ
れた後でもよい。
【0019】(実施例2)つぎに本発明の磁気ヘッドス
ライダのDLC保護層3の形成方法について詳細に説明
する。図.3は前記保護層を成膜するための装置の概略
図である。真空槽10内部には直流電源6に接続された
基板電極21と、前記基板電極と対向する位置に対向電
極22が置かれ、接地されている。磁気ヘッドスライダ
1をそのエアベアリング面が下面になるように基板電極
に設置した後、真空槽内を10-7torr以下に排気す
る。その後Arと CH4を分圧でそれぞれ0.03to
rr、0.02torr、全圧で0.05torrにな
るように導入し、基板を−900Vの電位にして、両電
極間でプラズマを発生させDLC膜を形成した。この時
の成膜速度は約1Å/secであった。
【0020】(実施例3)このような条件で形成した膜
について往復摺動テストにより耐摩耗性を評価した。
図.1のような1mm角程度といったサイズのスライダ
では評価が難しいため、40mm程度の長さを有するロ
ーの状態で行った。ポールハイト加工とよばれる研磨工
程と洗浄が終了しているロー上に前記記載の条件でDL
Cを成膜した。膜上を摺動させるポスト材料は1.5m
mRのサファイアの半球であり、押付け荷重100g
f、往復回数500回、試料の移動速度100mm/m
in.、往復距離5mmである。摺動時に発生した摩耗
粉等を洗浄で除去した後、試験部について原子間力顕微
鏡を用いて表面形状を測定し、摩耗領域の平均断面積を
求めた。図.4には成膜時の条件、すなわち基板印加電
位と CH4に対するArの希釈率を変えて成膜したサン
プルについて摩耗試験を実施し、 CH40.1tor
r、基板電位−700Vの条件で成膜した膜の摩耗領域
の平均断面積を1としたとき、各条件で成膜したサンプ
ルの被摩耗量とAr希釈率の関係を示している。ここで
の総ガス圧は0.1torrである。
【0021】各電圧においてArを添加することで耐摩
耗性が向上することが認められた。またその効果は−8
00V以上の絶対値で高電位の条件では顕著であり、優
れた耐摩耗性を示した。またAr希釈率66%、基板電
位−900Vで成膜したDLC膜は比摩耗量が0.07
と極めて小さく、優れた耐摩耗性を示した。
【0022】前記のAr添加の条件でDLC膜を形成し
た磁気ヘッドについてCSSテストを行った。使用した
ディスクはAl合金板の上に、NiP層、Cr層、磁性
層、スパッタカーボンおよび有機物の潤滑剤30Åが形
成されたものである。図.5にその結果を示す。比較と
して従来の炭化水素系ガスのみでDC法で形成したDL
C膜でのCSS特性データも添付するが、このサンプル
はCSS約18万回で急激に摩擦係数μが増加し、その
時点では磁気ヘッドスライダのABS面の一部に小さな
ギズが発生し、マイクロオージェ分析によりDLC膜が
なくなっていることが確認された。これに対し本発明の
磁気ヘッドスライダーはCSS50万回後もμは1以下
であり、優れたCSS特性を示した。またこの時点でど
の部分においてもDLC膜は残っていることが確認され
た。
【0023】(実施例4)次に本発明の磁気ヘッドスラ
イダに形成するDLC膜の硬度と弾性率について評価し
た。測定したサンプルはSiウェハー上に約5000Å
の厚さでDLC膜を形成したものであり、評価にはハイ
ジトロン社製トライボスコープを用いた。これはダイア
モンドの三角錐圧子を試料に静電気力を用いてサブミリ
ニュートンオーダーの超微小荷重で押し込み、その時の
変位量(押し込み深さ)をリアルタイムで測定できるシ
ステムである。そのため1ミクロン以下の薄膜の硬度や
弾性率等の薄膜の材料係数等を求めるのに有効な測定器
である。ただし従来の様な規格化されたビッカース硬度
等への換算は困難であり、新たな尺度で薄膜の機械的特
性を与えるものである。
【0024】比摩耗量と同様に従来のDLC膜の一例と
してCH40.1torr、基板電位−700V(条件
A)、および本発明のスライダに用いるDLC膜の一例
として、Ar分圧0.03torr、CH4分圧0.0
2torr、全圧0.05torr、基板電位−900
V(条件B)の両サンプルについてダイアモンドの三角
錘圧子を用いたインデンテーションテストを行い、その
測定データを図.6に示す。条件AのDLC膜では徐々
に負荷をかけていき、100μNの押し込み荷重時にお
いて、約0.034μmの押し込み深さであり、最大押
し込み深さ (hmax)とその時の印加荷重Fmaxより次
式(1) を用いて膜の硬度を算出することができる。 H=Fmax/23.897(hmax)2‥‥‥‥(1) (1)式で分子は力、分母は投影断面積であり、後者は
ここで用いた対頂角115°の圧子の先端形状から有限
要素法を用いて算出された式である。
【0025】また図.6の除荷曲線における最大押し込
み深さからの傾き(接線)はスティフネス(Stiffnes
s)とよばれ、この値を用いて次式より弾性率を算出で
きる。 Er=(S/2)×〔π/23.897(hmax)20.5‥‥‥(2) ここでErは弾性率(Reduced Modulus)であり、Sは
スティフネスである。これにより計算される条件A、B
でのDLC膜の硬度、弾性率を表1に示す。また同時に
走査型電子顕微鏡(SEM)で求めたDLC膜の膜厚と
ラザフォード後方散乱法(RBS)から算出したDLC
膜の膜密度も表1に記載する。
【0026】 表1 DLC膜の機械的特性 硬度(GPa) 弾性率(GPa) 膜密度(g/cm3) 条件A 9.2 76 1.80 条件B 10.1 89 2.07 表1の様に良好な耐摩耗性を示した本発明の一実施例で
ある条件BのDLC膜は従来のDLC膜と比較して硬度
は若干高いことはもちろんであるが、弾性率が極めて高
く、また膜密度も大きくなっており、これが膜の耐久性
に大きく関連しているものと考えられる。
【0027】従って本発明の磁気ヘッドスライダに用い
られるDLC保護層は高い耐摩耗性、耐久性を示し、そ
れは膜の硬度よりはむしろ、弾性率および膜密度が非常
に大きいことに起因していることを発明者らは明らかに
した。
【0028】ここで弾性率と比摩耗量の相関について示
す。比摩耗量は実施例3に記述したものと同様な評価方
法で行っている。図.7に示すように弾性率が85GP
a以上の値を有する本発明の磁気ヘッドスライダに形成
するDLC膜は概ね比摩耗量が0.5以下の値となり、
良好な耐摩耗特性を示すことも確かめられた。
【0029】この耐摩耗性に優れたDLC膜は炭素およ
び約30at%以下の水素からなり、膜中に均一にAr
原子を含有していることがわかっており、その量は約1
at%以下の微量である。これは摩耗特性に関与してい
るものとは考えらず、製造上やむをえず混入してしまう
ものである。本発明の磁気ヘッドスライダに用いるDL
C膜の優れた耐摩耗性は炭素原子同士のネットワークの
組みかた、結合状態に関係しているものと考えられる。
この膜の構造はFT−IRや微小ラマン等で調査を行う
ことができるがそのデータの解釈には、さまざまな見解
があり、この耐摩耗性の差が膜の構造として何に起因し
ているのかは、今のところわかっていない。また膜密度
はDLC膜中の炭素同士の平均原子間距離と相関がある
ものと考えられ、この原子間距離がより小さいと思われ
る条件BのDLC膜はより変形に対する抗力が大きく、
そのため弾性率、すなわちある変位量を与えるために必
要な力が大きくなっているものと考えられる。
【0030】また比摩耗量が0.5以下の値を示せばC
SSテストにおいて約50万回のCSSテストに耐えう
ること、すなわち摩擦係数μが1以下の値で推移するこ
とが確認された。
【0031】そしてそのような比摩耗量0.5以下のD
LC膜を作成するための成膜時の条件としては CH4
Arの混合比が1より小さく、また基板電位は−800
V以上であることが望ましい。
【0032】また CH4とArを加えた総圧力は高くて
も、成膜は可能であるが、圧力の上昇とともに成膜速度
が増加する。通常磁気ヘッドスライダに形成するDLC
保護層の厚さは100Å以下であり、従って膜厚の管理
を考えた場合多くても2〜3Å/min以下には成膜速
度を抑えることが望ましい。そのためには総圧力が0.
1torr以下での成膜条件を選択することが望まし
い。
【0033】さらに従来例で述べたような高周波放電プ
ラズマを発生するシステム(図.9)において前記のA
r添加の条件を適用してDLCを成膜し、同様に摩耗、
硬度、弾性度を評価したが、同様な効果を得ることはで
きず、膜質の改善は観察されなかった。その時の直流分
のセルフバイアス(Vdc)は−250Vであり、電位
差をこれ以上とるのは困難であった。一般的にRFプラ
ズマで基板バイアスを誘起するシステムにおいては−3
00V以上の負の高電位をセルフバイアスのみで発生す
ることは困難であり、したがって本発明はDC法に適用
するのが望ましいものと思われる。ただし前記DC法に
はプラズマの発生は直流に限らず、高周波、誘導結合、
マイクロ波、ECRなどにより行い、それとは別に基板
に直流電源でバイアス電位を印加する方式にも本発明が
適用可能であることは当業者は容易に理解できるであろ
う。
【0034】(実施例5)次に条件A、Bで成膜したD
LC膜を磁気ヘッド保護膜として成膜したトライパッド
を有するコンタクトヘッドに適用し、このヘッドについ
てシーク摩耗テストを行った。ヘッドを支持するサスペ
ンションの荷重は0.5gfである。平均浮上量0.0
5μmは磁気ディスクのグライドハイトにほぼ近い値で
あり、かなりの頻度で接触しながらシークを行ったもの
と思われる。 106回のシーク後、試験後X線マイクロ
アナライザーのマッピング機能を用いてエッチングを行
いながらパッド部を測定した。これにより試験後のパッ
ド部の傷や摩耗状況、DLC膜の残膜厚を推定できる。
条件Aで成膜したヘッドにおいては完全に母材まで摩耗
が進行している個所が発生していることがわかった。ま
た条件Bで成膜したヘッドにおいては母材まで進行した
摩耗は見られなかったものの一部に中間層であるSiが
露出している個所が確認された。このように耐摩耗性に
優れた条件Bにおいても摩耗条件によっては耐摩耗性が
不十分である事がわかった。
【0035】我々はこの個所を詳細に解析した結果、剥
離が中間層であるSiとDLC膜間の密着不良から生じ
ていることを解明し、この対策として図.8に示すよう
な2層構造のDLC膜を作製した。本実施例の磁気ヘッ
ドスライダ1のディスク対向面4にはSiからなる中間
層2、第一のDLC層30の上面に本発明におけるDL
C膜である第二のDLC膜31が形成してある。本ヘッ
ドについて上記と同様なシーク摩耗テストを行った。こ
の保護膜の構成はSi2nmの上に比較的密着性が良好
である成膜条件 (CH40.1torr、基板電位−9
00V−条件C)で第一のDLC膜を2nm成膜した
後、良好な耐摩耗性を有する条件Bで第二のDLC膜を
6nm形成した。このヘッドについて前記と同様のシー
ク摩耗試験を行ったところほとんど摩耗が見られず極め
て良好な耐摩耗性を示すことが確認された。これはこの
2層のDLC膜が優れた密着性と高い弾性率を有する所
以であると考えられる。
【0036】また本実施例でにおける第一のDLC層と
第二のDLC層の膜厚は、前者は1nm以上、後者は4
nm以上あれば耐摩耗性向上の効果が認められた
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、プラズマ中の炭化水素
ガスにArを添加することでプラズマ中の解離を促進
し、従来にない弾性率が極めて高く、耐摩耗性の高いD
LC膜をABS面にコートすることで耐久性、耐摩耗性
に優れた磁気ヘッドスライダが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気ヘッドスライダの構成を示す断面
図である。
【図2】本発明の磁気ヘッドスライダの製造方法を示す
断面図である。
【図3】本発明の磁気ヘッドスライダを製造するための
成膜装置の概略図である。
【図4】実施例で行った摩耗テスト結果を示すグラフで
ある。
【図5】実施例で行ったCSSテストの結果を示すグラ
フである。
【図6】実施例で行ったインデンテーションテストにお
けるDLC膜の負荷除荷時の変形を示すグラフである。
【図7】本発明の磁気ヘッドスライダに使用するDLC
膜の弾性率と耐摩耗性(比摩耗量)の関係を示してい
る。
【図8】本発明の磁気ヘッドスライダの別の構成を示す
断面図である。
【図9】従来の磁気ヘッドスライダを製造するための成
膜装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 磁気ヘッドスライダ 2 中間層 3 DLC保護層 5 薄膜磁気ヘッド素子 6 直流電源 11 磁気ヘッドスライダ基材 21 基板電極 22 対向電極 30 第一のDLC保護層 31 第二のDLC保護層

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ディスクと対向する面にダイアモンドラ
    イクカーボン膜が形成されている磁気ヘッドスライダで
    あって、前記ダイアモンドライクカーボン膜中にArが
    含まれていることを特徴とする磁気ヘッドスライダ。
  2. 【請求項2】 前記Arはダイアモンドライクカーボン
    膜中に均一に取り込まれており、かつArの量が1原子
    パーセント以下であることを特徴とする磁気ヘッドスラ
    イダ。
  3. 【請求項3】 ディスクと対向する面にダイアモンドラ
    イクカーボン膜が形成された磁気ヘッドスライダであっ
    て、前記ダイアモンドライクカーボン膜の弾性率が85
    GPa以上の値を有することを特徴とする磁気ヘッドス
    ライダ。
  4. 【請求項4】 ディスクと対向する面にダイアモンドラ
    イクカーボン膜が形成された磁気ヘッドスライダであっ
    て、前記ダイアモンドライクカーボン膜の比摩耗量が
    0.5以下の値を有することを特徴とする磁気ヘッドス
    ライダ。
  5. 【請求項5】 ディスクと対向する面にダイアモンドラ
    イクカーボン膜が形成されている磁気ヘッドスライダで
    あって、前記ダイアモンドライクカーボン膜は二層から
    なり、その上層が請求項1から4に記載のダイアモンド
    ライクカーボン膜であることを特徴とする磁気ヘッドス
    ライダ。
  6. 【請求項6】 磁気ディスク装置に使用される磁気ヘッ
    ドスライダのディスク対向面にプラズマ化学的気相成長
    法によってダイアモンドライクカーボン膜を形成する方
    法であって、成膜時に炭化水素系ガスと同時にArガス
    を添加して成膜することを特徴とした磁気ヘッドスライ
    ダの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記炭化水素系ガスがCH4であって、
    CH4/Arガスの混合圧力比が1もしくはそれ以下で
    あって、またその総圧力が0.1torr以下の条件で
    ダイアモンドライクカーボン膜を成膜することを特徴と
    する磁気ヘッドスライダの製造方法。
  8. 【請求項8】 磁気ヘッドスライダを設置する基板に直
    接負の直流高電圧を印加する構成で前記ダイアモンドラ
    イクカーボン膜を形成したことを特徴とする請求項6、
    7に記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  9. 【請求項9】 磁気ヘッドスライダを設置する基板の電
    位を−800V以上で前記ダイアモンドライクカーボン
    膜を形成したことを特徴とする請求項6、7、8に記載
    した磁気ヘッドスライダの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記請求項6、7、8、9に記載した
    磁気ヘッドスライダの製造方法で形成したダイアモンド
    ライクカーボン膜を形成したことを特徴とする磁気ヘッ
    ドスライダ。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6722785B1 (en) * 1999-06-25 2004-04-20 Tdk Corporation Fluid dynamic bearing
US6958888B2 (en) * 2001-10-05 2005-10-25 Headway Technologies, Inc. Slider of thin-film magnetic head and method of manufacturing same
JP2014182869A (ja) * 2013-03-15 2014-09-29 Nhk Spring Co Ltd ヘッドジンバルアセンブリ
CN111378927A (zh) * 2020-04-20 2020-07-07 海南大学 一种敷设在弹性基底上的硬质薄膜结构及制备方法

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