JP3196686B2 - 路面摩擦係数推定装置 - Google Patents

路面摩擦係数推定装置

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JP3196686B2 JP11133597A JP11133597A JP3196686B2 JP 3196686 B2 JP3196686 B2 JP 3196686B2 JP 11133597 A JP11133597 A JP 11133597A JP 11133597 A JP11133597 A JP 11133597A JP 3196686 B2 JP3196686 B2 JP 3196686B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両が走行する
路面の摩擦係数を推定して、路面の状況を的確に把握す
ることができる路面摩擦係数推定装置に関する。
【0002】
【関連する背景技術】この種の路面摩擦係数推定装置に
関連する一例として、特開平4−55158号公報に
は、車両の発進時、路面摩擦係数を推定して駆動輪のス
リップを防止する車両のトラクション制御装置が開示さ
れている。この公知のトラクション制御装置にあって
は、車両の発進時、駆動輪にスリップが生じた際、検出
した駆動輪の加速度が所定値以上となると、エンジンの
出力状態に基づいて路面摩擦係数を推定するものとなっ
ている。また、このトラクション制御装置では、推定し
た路面摩擦係数からトラクション制御のための目標スリ
ップ値が設定され、この目標スリップ値に基づいて駆動
輪のスリップが制御される。
【0003】従って、このトラクション制御装置によれ
ば、車両の発進時、駆動力に対する車輪のスリップ量か
ら、路面と車輪の間における摩擦係数を正しく算出する
ことができるものと考えられる。また、このトラクショ
ン制御装置によれば、算出した路面の摩擦係数に応じて
エンジンの出力及び制動力が適切に制御され、車両の駆
動力が過大とならないように考慮されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た公知のトラクション制御装置にあっては、駆動輪の加
速度が所定値以上にならなければ路面摩擦係数の推定が
行われないため、比較的小さい駆動力で車両が発進する
場合、駆動輪に発生するスリップ量もまた小さく、この
ような状況では、路面摩擦係数の推定が確実に行われる
とはいえない。
【0005】この発明は上述した事情に基づいてなされ
たもので、その目的とするところは、車輪のスリップ量
にかかわらず確実に路面摩擦係数を推定することがで
き、しかも、推定した路面摩擦係数の信頼性を確保でき
る路面摩擦係数推定装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、請求項1の路面摩擦係数推定装置は、車輪速を検出
して出力する車輪速検出手段と、車輪速から車輪加速度
を演算する車輪加速度演算手段と、車輪加速度演算手段
にて演算した車輪加速度の最大値を検出して出力する車
輪加速度最大値出力手段と、車両のスロットル開度を検
出して出力するスロットル開度検出手段と、車両が発進
時を含む発進状態にあって、車輪加速度最大値出力手段
から車輪加速度の最大値が出力されたとき、この出力時
点にて、スロットル開度検出手段にて検出したスロット
ル開度に最大値が既に存在する場合にはその最大値を、
その最大値が存在しない場合には出力時点にて検出した
スロットル開度を最大スロットル開度として出力する最
大スロットル開度検出手段と、車輪加速度の最大値及び
前記最大スロットル開度に基づき路面摩擦係数を推定す
る推定手段とを備えている。
【0007】請求項1の路面摩擦係数推定装置によれ
ば、車両が発進時を含む実質的な発進状態にあるとき、
車輪加速度の最大値及び最大スロットル開度がそれぞれ
検出される。これら車輪加速度の最大値と最大スロット
ル開度とは車両の発進状態において、その路面摩擦係数
に応じた特有の関係を有し、従って、車輪加速度の最大
値及び最大スロットル開度に基づき、路面摩擦係数の推
定が可能となる。
【0008】また、請求項2における路面摩擦係数推定
装置の推定手段は、前記車輪加速度の最大値と前記最大
スロットル開度が前記路面摩擦係数を推定する上で曖昧
な領域にあるときには、その推定を複数回繰り返し、最
終的に路面摩擦係数を推定するものとなっている。この
場合、推定された路面摩擦係数の信頼性が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して路面摩擦係
数推定装置の実施例について詳細に説明する。図1を参
照すると、車輪加速度及びスロットル開度を出力するま
での処理手順がブロック図で示されている。この路面摩
擦係数推定装置は、例えば自動車に適用されており、車
両の駆動輪には車輪の回転数、即ち、車輪速を検出する
車輪速センサ2が設けられ、また、アクセルペダルには
ペダルストロークからスロットル開度を検出するスロッ
トル開度センサ4が設けられている。
【0010】これら車輪速センサ2及びスロットル開度
センサ4からのセンサ信号は、先ず、入力処理ブロック
6にてそれぞれ入力処理される。より詳しくは、車輪速
センサ2からの回転数信号は、各駆動輪毎にその回転数
から移動速度、つまり、車輪速への変換がなされ、各駆
動輪の車輪速信号として出力される。また、スロットル
開度センサ4からのスロットル開度信号は、A/D変換
されて出力される。
【0011】次のフィルタ8では、入力処理済みの各セ
ンサ信号がフィルタ処理される。なお、ここでは再帰型
の1次ローパスフィルタが使用されている。演算ブロッ
ク10では、各駆動輪の車輪速VWを微分演算処理する
ことで、車輪加速度Afwが算出される。演算ブロック1
0から出力された車輪加速度Afwは、フィルタ12にて
再びフィルタ処理が施される。
【0012】そして、フィルタ12にてフィルタ処理さ
れた車輪加速度Awは、フィルタ処理済みのスロットル
開度Asと共に出力される。図2を参照すると、車輪加
速度の最大値及び最大スロットル開度をそれぞれ検出し
て出力する検出回路の構成がブロック図で示されてい
る。この検出回路では、入力される車輪加速度及びスロ
ットル開度のうち、車輪加速度は、演算ブロック13に
て全駆動輪の車輪加速度の平均値が算出された後、その
平均値が車輪加速度Awとして判定ブロック14に供給
されるようになっている。なお、スロットル開度As
は、そのまま判定ブロック16に供給される。そして、
車輪加速度Aw及びスロットル開度Asは、これら判定ブ
ロック14,16での処理が施された後、2つのスイッ
チ18a,20a及びスイッチ18b,20bをそれぞ
れ経て、後述する車輪加速度最大値及び最大スロットル
開度としてそれぞれ出力されるものとなっている。
【0013】より詳しくは、検出された車輪加速度Aw
及びスロットル開度Asは、共に一定の時間間隔をおい
て検出回路に順次入力される。それ故、この検出回路
は、これら車輪加速度Aw及びスロットル開度Asの入力
周期に同期して作動するようになっており、演算ブロッ
ク13、判定ブロック14,16、スイッチ18a,1
8b及びスイッチ20a,20bは、いずれも検出回路
の1作動周期にそれぞれ1回ずつ作動するようになって
いる。つまり、演算ブロック13は、検出回路の作動周
期毎に演算処理を行い、車輪加速度の平均値を判定ブロ
ック14に毎回供給する。各判定ブロック14,16
は、検出回路の作動周期毎に判定処理を行って、その結
果を毎回出力する。また、スイッチ18a,18b及び
スイッチ20a,20bでは、検出回路の作動周期毎に
何れか一方の切換位置が毎回選択される。なお、各スイ
ッチ18a,18b及びスイッチ20a,20bは、そ
れぞれオン又はオフ位置に切り換え可能となっている。
【0014】各サンプリングオペレータ22は、毎回の
作動周期でのスイッチ18a,18bからの出力を読み
込み、その出力を1作動周期の間保持する一方、次回の
作動周期の開始時、判定ブロック14,16に供給する
ようになっている。従って、判定ブロック14,16に
は、このようなサンプリングオペレータ22を介して前
回のスイッチ18a,18bからの出力、つまり、判定
ブロック14,16自身から出力された前回値が供給可
能となっている。
【0015】車両の停車時、車輪加速度及びスロットル
開度は共に検出されず、この場合、検出回路が作動中で
あっても、判定ブロック14,16には車輪加速度Aw
(n)及びスロットル開度As(n)は入力されない。従っ
て、各判定ブロック14,16における判定処理は実行
されず、これら判定ブロック14,16から判定結果と
しての車輪加速度Awp(n)及びスロットル開度Asp(n)は
出力されない。
【0016】判定ブロック14,16から出力がない場
合、スイッチ18a,18bは図示の切換位置、つま
り、オフの状態にある。従って、車両の停車時、スイッ
チ18a,18bから出力される初期値(=0)が、サ
ンプリングオペレータ22に保持される。なお、この時
点ではサンプリングオペレータ22に前回値が保持され
ていないので、サンプリングオペレータ22から判定ブ
ロック14,16にその前回値が供給されることはな
い。
【0017】車両の停止状態にて、検出回路での次回の
作動周期では、サンプリングオペレータ22にて保持さ
れていた前回値(=初期値)が前回車輪加速度Awp(n-
1)及び前回スロットル開度Asp(n-1)として判定ブロッ
ク14,16にそれぞれ与えられる。この後、車両が発
進して車輪加速度及びスロットル開度が検出されると、
判定ブロック14,16には、車輪加速度Aw(n)及びス
ロットル開度As(n)がそれぞれ入力される。
【0018】このとき、判定ブロック14では、今回の
車輪加速度Aw(n)と、前回車輪加速度Awp(n-1)(=初
期値)とが比較される。この時点では、今回の車輪加速
度Aw(n)は前回車輪加速度Awp(n-1)よりも大であるか
ら、Aw(n)≧Awp(n-1)の判定条件が成立し、判定ブロ
ック14での判定結果として出力される今回車輪加速度
Awp(n)には、今回検出した車輪加速度Aw(n)の値が代
入されている。
【0019】判定ブロック14からの判定結果、つま
り、今回車輪加速度Awp(n)が出力されると、スイッチ
18aの今回の切換位置にはオンの状態が選択され、ス
イッチ18aは図示の位置から切り換わることで、今回
車輪加速度Aw(n)をスイッチ20aに出力する。また、
スイッチ18aから出力される今回車輪加速度Awp(n)
の値は、次回の作動周期までサンプリングオペレータ2
2に保持される。なお、判定ブロック18aから毎回の
出力があるうちは、スイッチ18aは常にオン状態に維
持される。
【0020】この後、検出された車輪加速度Aw(n)がサ
ンプリングオペレータ22の出力である前回車輪加速度
Awp(n-1)と同じであるか又は前回車輪加速度Awp(n-1)
よりも大であると、判定ブロック14ではAw(n)≧Awp
(n-1)の判定条件が常時成立するので、判定ブロック1
4からはその検出した車輪加速度Aw(n)の値が今回車輪
加速度Awp(n)として出力される。従って、スイッチ2
0aには、この間検出した車輪加速度Aw(n)がスイッチ
18aを経て新たに供給されることになる。
【0021】これに対し、この後、検出した車輪加速度
Aw(n)が減少すると、判定ブロック14ではAw(n)<A
wp(n-1)の判定条件が成立するので、判定ブロック14
の出力である今回車輪加速度Awp(n)には前回車輪加速
度Awp(n-1)の値が代入されることになる。つまり、判
定ブロック14は、今回検出した車輪加速度Aw(n)の値
が、前回出力した車輪加速度Awp(n-1)の値以上であれ
ば、その検出した車輪加速度Aw(n)の値を判定結果とし
て出力し、今回検出した車輪加速度Aw(n)の値が前回出
力した車輪加速度Awp(n-1)よりも小であれば、前回出
力した車輪加速度Awp(n-1)の値をそのまま出力する。
【0022】この間、スイッチ18aは常時オンの状態
であるので、スイッチ20aには、車両の発進後におけ
る車輪加速度Aw(n)の最初の最大値が保持となってい
る。一方、判定ブロック16でも同様に、今回のスロッ
トル開度As(n)が入力されると、今回のスロットル開度
As(n)と前回スロットル開度Asp(n-1)とが比較され、
As(n)≧Asp(n-1)の判定条件が成立したとき、判定ブ
ロック16から今回スロットル開度Asp(n)として今回
検出したスロットル開度As(n)の値が出力される。これ
に対し、As(n)<Asp(n-1)の判定条件が成立すれば、
判定ブロック16から出力される今回スロットル開度A
sp(n)の値は、前回スロットル開度Asp(n-1)となる。こ
のように判定ブロック16から判定結果としてスロット
ル開度Asp(n)が出力される状況にあっては、スイッチ
18bは前述したスイッチ18aの場合と同様に図示の
位置から切り換えられ、常にオンの状態に維持される結
果、判定ブロック16からのスロットル開度Asp(n)は
スイッチ18bを経てスイッチ20bに供給され、この
スイッチ20bには、車両の発進後における検出したス
ロットル開度As(n)の最初の最大値が保持可能となって
いる。
【0023】また、スイッチ18a,18bは、車両の
停車時、つまり、判定ブロック14,16から判定結果
の出力がないときのみならず、リセット信号の供給を受
けて図示のオフ位置にそれぞれ強制的に戻されるように
なっており、そのリセット信号は、OR回路24から出
力される。OR回路はその入力条件の何れかが満たされ
たときにリセット信号をスイッチ18a,18bにそれ
ぞれ供給するようになっている。ここで、OR回路24
の入力条件とは、ハンドル角Taの絶対値が5゜を超え
ているか否か、車両に発生する横加速度GYの絶対値が
重力加速度の0.15倍を超えているか否か、そして、車両
の駆動力Fxが0以下であるか否かの3つの条件であ
る。上述した入力条件の何れかが満たされる状況にあっ
ては、後述する路面摩擦係数の推定が不能であるため、
その状況にあっては、その間スイッチ18a,18bを
図示の切換位置に戻すことで、路面摩擦係数の推定に使
用される車輪加速度の最大値及び最大スロットル開度の
検出自体を中止する。なお、このような状況から上述し
たOR回路24の入力条件がいずれも満たされなくなれ
ば、スイッチ18a,18bは前述した判定ブロック1
4,16からの出力の有無に基づいて切り換えられる。
【0024】一方、スイッチ20a,20bは、判定ブ
ロック26からの切換信号の供給を受けて図示の位置か
ら切り換えられ、この切換時点にて、現在保持している
車輪加速度Awp(n)及びスロットル開度Asp(n)を車輪加
速度最大値及び最大スロットル開度としてそれぞれ出力
する。より詳しくは、判定ブロック26には、今回検出
した車輪加速度Aw(n)及び前回車輪加速度Awp(n-1)が
供給されており、ここでは、今回の車輪加速度Aw(n)
と、前回車輪加速度Awp(n-1)とが比較され、今回の車
輪加速度Aw(n)が前回車輪加速度Awp(n-1)から0.5
%以上低下したとき、つまり、Aw(n)≦Awp(n-1)・(1
−5/1000)の判定条件が成立したとき、判定ブロック
26からスイッチ20a,20bに切換信号がそれぞれ
出力される。スイッチ20a,20bは、判定ブロック
26から切換信号を受け取ったとき、図示の位置から切
り換えられる。
【0025】次に、図3から図5を参照すると、車両の
発進時、アクセルペダルの種々の踏み込み形態に対する
スロットル開度の時間変化がそれぞれ示されている。先
ず、図3には、アクセルペダルが一定の割合で踏み込ま
れている状況での、車輪加速度における時間変化の一例
が示されており、ここでは、時刻T1にて車輪加速度の
ピークが発生している。なお、図3に示されるようなア
クセルペダルの踏み込みに対する車輪加速度の上昇は、
発進時における車輪の空転による見かけ上の車輪加速度
の上昇、つまり、車輪のスリップ量の増加を示してい
る。この後、スロットル開度が更に上昇しても車輪加速
度は次第に減少しており、これは、タイヤがグリップを
徐々に回復し、車輪のスリップもまた徐々に減少してい
ることを示している。図3の車輪加速度変化特性での場
合、図2に示される判定回路26からは時刻T1と略同
時刻に切換信号が出力され、スイッチ20a,20bが
それぞれ切り換えられる。この結果、スイッチ20aか
らは保持している車輪加速度Awp(n)が車輪加速度最大
値Aw1として出力され、一方、スイッチ20bからはそ
の時点でのスロットル開度Asp(n)が最大スロットル開
度As1として出力される。
【0026】次に、図4を参照すると、アクセルペダル
が一定の割合で踏み込まれた後、その踏み込みに維持さ
れる状況での、車輪加速度における時間変化の一例が示
されている。ここでは、スロットル開度がピークを迎え
た時刻T2と、略同時刻に車輪加速度にもピークが発生
している。このような車輪加速度の変化特性にあって
は、車輪加速度がピークに達した後、スロットル開度は
一定に保持されるため、タイヤのスリップが抑えられ
て、そのグリップが回復していることを示している。こ
の場合、図2の判定回路26からは時刻T2と略同時刻
に切換信号が出力され、スイッチ20a,20bが切り
換えられる。従って、この場合にも、スイッチ20a,
bからは保持している車輪加速度Awp(n)が車輪加速度
最大値Aw2として出力され、一方、スイッチ20bから
はその時点でのスロットル開度Asp(n)が最大スロット
ル開度As2として出力される。
【0027】そして、図5を参照すると、アクセルペダ
ルが一旦踏み込まれてから、その踏み込みがある程度戻
された状況での、車輪加速度における時間変化の一例が
示されている。ここでは、スロットル開度のピーク時刻
と車輪加速度のピーク時刻との間にずれ、つまり、時間
差が生じている。これは、アクセルペダルの踏み込みに
対して駆動力の立ち上がりが遅れており、このため、車
輪加速度のピークもまた遅れて発生することを示してい
る。この場合、図2に示される判定ブロック26は時刻
T3と略同時刻にて切換信号を出力し、スイッチ20
a,20bをそれぞれ切り換える。この場合、スイッチ
20aは保持していた車輪加速度Awp(n)を車輪加速度
最大値Aw3として出力し、一方、スイッチ20bは、そ
の時点でのスロットル開度As3ではなく、時刻T3以前
の時刻T4にて得られたスロットル開度Asp(n)を最大ス
ロットル開度As4として出力する。
【0028】以上のように図2に示される検出回路は、
アクセルペダルの踏み込み形態に拘わらず、車両の発進
後、車輪加速度の最大値が検出された時点にて車輪加速
度最大値が出力されると同時に、この時点にてスロット
ル開度に最大値が既に存在する場合にはその最大値が出
力され、スロットル開度に最大値が存在しない場合には
この時点でのスロットル開度が出力される。つまり、最
大スロットル開度の出力では、車両の発進から車輪加速
度最大値の出力時点までの期間におけるスロットル開度
の最大値が最大スロットル開度として出力されることに
なる。
【0029】図6を参照すると、検出回路から出力され
た車輪加速度最大値及び最大スロットル開度に基づい
て、路面摩擦係数を推定する推定回路の構成がブロック
図で示されている。先ず、車輪加速度最大値及び最大ス
ロットル開度はそれぞれ判定ブロック30に入力され
る。判定ブロック30では、車輪加速度最大値及び最大
スロットル開度が図7に示されるμ判定マップに照会さ
れて、このμ判定マップに基づき、路面摩擦係数の高低
(高μ又は低μ)が判定される。
【0030】より詳しくは、例えば車両の発進時などの
状況にあっては、スロットル開度と車輪加速度とはタイ
ヤの摩擦特性との関係から路面μに固有の特性を示す。
即ち、アスファルト路などの高μ路にあっては、図8中
の実線で示すようにスロットル開度の増加にほぼ追従す
るようにして車輪加速度も増加する傾向にあるが、しか
しながら、圧雪路などの低μ路にあっては、スロットル
開度がある程度以上に増加すると、図8中破線で示すよ
うにスロットル開度に対して車輪加速度は急激に増加す
る傾向を示す。それ故、本発明の発明者は上述したスロ
ットル開度と車輪加速度との関係から路面摩擦係数の推
定が可能となることに着目する一方、その推定には車輪
加速度の最大値と、アクセルペダルの踏み込みの状況を
正確に示す最大スロットル開度とを使用することが有効
であることを確認している。それ故、図2の検出回路で
は、車輪加速度の最大値が出力される時点でのスロット
ル開度ではなく、前述した最大スロットル開度を検出す
るようにしている。
【0031】具体的には、図7のμ判定マップは図8の
路面μに応じたスロットル開度−車輪加速度特性をベー
スにして作成され、最大スロットル開度と車輪加速度最
大値に基づき高μ領域及び低μ領域を区分している。図
7中、高μ領域及び低μ領域はハッチングを施して示さ
れている。高μ領域は、最大スロットル開度が大きくて
も車輪加速度の最大値が比較的小さい領域を示してしお
り、逆に、低μ領域は、最大スロットル開度が比較的小
さいにも拘わらず、車輪加速度の最大値が高い領域を示
している。従って、最大スロットル開度と車輪加速度の
最大値にて特定される点が高μ領域に入れば、その路面
摩擦係数は高いと判定でき、これに対し、その特定点が
低μ領域に入ればその路面摩擦係数は低いと判定するこ
とができる。
【0032】しかしながら、図7のμ判定マップに示さ
れているように高μ領域にて最大スロットル開度が所定
値Amよりも小さい領域部分や、また、低μ領域にて車
輪加速度の最大値が所定値Awmよりも小さい領域部分、
つまり、図8でみて高μ路(アス中ファルト路)特性と
低μ路(圧雪路)特性との間に顕著な相違が発生しない
領域部分は曖昧領域としてそれぞれ設定されている。
【0033】判定ブロック30にて、入力された車輪加
速度最大値及び最大スロットル開度から特定されるμ判
定マップ上の点が高μ領域、曖昧高μ領域、低μ領域、
曖昧低μ領域の何れかにあると判定された場合、その領
域を示すμ判定値が判定ブロック30から出力される。
一方、車輪加速度最大値と最大スロットル開度から決定
される点が上記の領域の何れにも入っていない場合、即
ち、その領域が特定されない場合、判定ブロック30か
らのμ判定値の出力はない。
【0034】なお、図7の各領域の境界を定める基準
値、つまり、Aw1〜Aw5及びA1〜A4は、実際の車両の
発進時、既知の高μ路及び低μ路にてそれぞれ測定した
車輪加速度最大値及び最大スロットル開度のデータに基
づいてそれぞれ適切に設定されていることはいうまでも
ない。また、各曖昧領域の境界値であるAm,Awmの値
は、車両の発進時、最大スロットル開度と車輪加速度最
大値との関係のみからはその路面が高μ路であるか、又
は、低μ路であるかの判定が困難となる最大スロットル
開度及び車輪加速度最大値の上限値にそれぞれ設定され
ている。
【0035】判定ブロック30から出力されたμ判定値
は、スイッチ32を介して車速フィルタ34に供給可能
となっている。スイッチ32は、判定ブロック30から
μ判定値が出力されると、図示の位置から切り換えら
れ、そのμ判定値の通過を許容する。これに対し、上述
のように判定ブロック30からμ判定値が出力されなけ
れば、スイッチ32は図示の切換位置にあり、この場
合、スイッチ32からはμ判定値としての「不明」が車
速フィルタ34に供給される。
【0036】車速フィルタ34では、車両の車速が一定
値(例えば7km/h)より大きいか否かが判別され、
この条件が満たされた場合のみ、車速フィルタ34はμ
判定値を有効なものとし、その通過を許容する。一方、
条件が満たされない場合、μ判定値が車速フィルタ34
を通過することはなく、この場合、車速フィルタからは
μ判定値として「不明」が出力される。
【0037】次のABSフィルタ36でも同様に、車両
のABS(アンチスキッドブレーキシステム)が作動し
ている場合、ABSフィルタ36はμ判定値の通過を許
容せず、μ判定値として「不明」を出力する。上述した
各フィルタ34,36を通過した後、μ判定値は次のμ
判定カウンタ38に供給される。
【0038】図6に示される推定回路は、路面摩擦係数
の高μ度合い及び低μ度合いから最終的に推定路面μを
確定して出力する。すなわち、車両の発進後、判定ブロ
ック30から出力されたμ判定値は、μ判定カウンタ3
8に供給される。μ判定カウンタ38では、車両が発進
する毎にその供給を受けるμ判定値(高μ,曖昧高μ,
曖昧低μ,低μの何れか)に基づいて、走行路面の摩擦
係数の高低度、つまり、高μ度合及び低μ度合が決定又
は増減され、その結果をリミッタ42に出力する。
【0039】より詳しくは、μ判定カウンタ38では、
μ判定値の種別に応じて高μ度合及び低μ度合がそれぞ
れ決定されるか、又は、その高μ度合及び低μ度合毎に
増減値がそれぞれ増減カウントされるようになってい
る。次のリミッタ42には、高μ度合及び低μ度合の上
限値及び下限値がそれぞれ設定されており、リミッタ4
2は、μ判定カウンタ42にて増減された高μ度合及び
低μ度合をその上限値及び下限値の範囲内にてそれぞれ
制限するようになっている。
【0040】また、μ判定カウンタ38からリミッタ4
2を経て出力された高μ度合及び低μ度合は、それぞれ
サンプリングオペレータ44に保持される一方、後述す
る推定ブロック46に供給されるようになっている。こ
こで、サンプリングオペレータ44は、次回車両が発進
して、その後に新たなμ判定値がμ判定カウンタ38に
入力されると、保持していた高μ度合及び低μ度合、即
ち、それらの前回値をμ判定カウンタ38に供給する。
従って、μ判定カウンタ38にて高μ度合及び低μ度合
毎の増減値がそれぞれ増減カウントされるときには、高
μ度合及び低μ度合の前回値に対して増減値がそれぞれ
加算又は減算されることになる。
【0041】以下の表1には、μ判定値の種別毎に設定
された高μ度合及び低μ度合の決定値と、高μ度合及び
低μ度合の前回値に対する増減値がそれぞれ示されてい
る。
【0042】
【表1】
【0043】表1から明らかなように、μ判定カウンタ
38では、μ判定値として「高μ」が入力されると、高
μ度合の前回値がリセットされ、そして、高μ度合は新
たに5に決定される。一方、低μ度合の前回値は単にリ
セットされ、その低μ度合は0に決定される。従って、
この場合、高μ度合の決定値は5となり、また、低μ度
合の決定値は0となる。
【0044】μ判定値が「曖昧高μ」の場合、高μ度合
はその前回値に加算値1が加えられる。これに対し、低
μ度合はその前回値から減算値1が減算される。μ判定
値「曖昧低μ」についても同様に、表1に示される増減
値だけ高μ度合及び低μ度合が増減される。また、μ判
定値「低μ」についても、高μ度合及び低μ度合がそれ
ぞれ決定される。なお、μ判定値が「不明」のときは、
高μ度合、低μ度合共に決定又は増減されず、高μ度合
及び低μ度合はそれぞれの前回値に維持される。
【0045】このようにしてμ判定カウンタ38にて高
μ度合及び低μ度合が算出されると、これら高μ度合及
び低μ度合は、次のリミッタ42を経て確定ブロック4
6に供給される。このときリミッタ42では、μ判定カ
ウンタ38から出力された高μ度合及び低μ度合がそれ
ぞれ0より小さい場合、リミッタ42は高μ度合及び低
μ度合を最小値0に制限して出力する。
【0046】図9を参照すると、車両の発進毎のμ判定
値と、μ判定カウンタ38からリミッタ42を経て出力
される高μ度合及び低μ度合の時間推移を表したタイム
チャートが示されている。いま、車両が最初に発進した
とき(1回目)、路面摩擦係数推定装置は、図1及び図
2に示されるように、車輪加速度及びスロットル開度、
そして、車輪加速度最大値及び最大スロットル開度の検
出を開始する。
【0047】図6に示される推定回路の判定ブロック3
0では、車輪加速度最大値及び最大スロットル開度に基
づきμ判定値がマップにより決定される。このとき、発
進1回目のμ判定値が図9に示されるように「不明」と
なっているとき、μ判定カウンタ38では、高μ度合、
低μ度合は共に前回値、この場合、初期値0のまま維持
されている。
【0048】次回車両が発進して(2回目)、μ判定値
が「曖昧高μ」となると、この場合、高μ度合は加算値
1だけ増加される結果、高μ度合の値は1となる。これ
に対し、低μ度合は減算値1だけ減算されて0より小さ
くなる。しかしながら、前述のようにリミッタ42は低
μ度合の値を最小値0に制限するので、この場合、リミ
ッタ42から出力される高μ度合及び低μ度合はそれぞ
れ1,0となる。
【0049】そして、この後、車両が発進を繰り返し、
この間、図9に示されるようにμ判定値がいずれも「曖
昧高μ」であると、μ判定カウンタ38にて、高μ度合
はその値が+1ずつ増加されていき、発進6回目で高μ
度合の値は5に達する。確定ブロック46では、供給さ
れた高μ度合の値が5に達すると、推定μを「高μ」に
確定して出力する。なお、低μ度合についても同様に、
その値が5に達したとき、推定μを「低μ」に確定して
出力する。このように、μ判定値が「曖昧高μ」または
「曖昧低μ」となる状況にあっては、そのμ判定値を繰
り返して求めることで、推定μを「高μ」又は「低μ」
に確定するようにしており、その路面μを正確に推定す
ることができる。
【0050】これに対して、車輪加速度最大値及び最大
スロットル開度にて決定される点が図7の高μ領域又は
低μ領域に完全に入っており、そのμ判定値が「高μ」
又は「低μ」であると、高μ度合及び低μ度合は共に5
に決定されることから、この場合、確定ブロック46で
は直ちに推定μを「高μ」又は「低μ」として確定す
る。このように、確定ブロック46にて確定された結果
が、路面摩擦係数推定装置による最終的な路面摩擦係数
の推定結果となる。
【0051】なお、上述のように確定ブロック46にて
推定μが「高μ」又は「低μ」として一旦確定される
と、次回の発進時にサンプリングオペレータ44から供
給される高μ度合及び低μ度合の前回値はそれぞれ0に
リセットされる。そして、μ判定カウンタ38は、上述
した手順で次回の発進時から新たに高μ度合及び低μ度
合をそれぞれカウントする。
【0052】この後、車両がある程度の距離を走行して
路面状況が変化し、発進N1回目にμ判定値が「曖昧低
μ」となると、低μ度合の値は0から加算値+1だけ増
加されて1となる。なお、高μ度合は0から減算値−1
だけ減算されるが、リミッタ42によりその値は最小値
0に制限される。この場合、確定ブロック46では推定
μが「高μ」又は「低μ」の何れにも確定されない。
【0053】次の発進N2回目にμ判定値が「低μ」と
なり、低μ度合が5に決定されると、この場合、確定ブ
ロック44では推定μを「低μ」として確定する。上述
した実施例の路面摩擦係数推定装置によれば、車両の発
進時などの場合、スロットル開度と車輪加速度との間の
特性は路面μに応じて顕著に現れることから、発進時の
車輪加速度最大値と最大スロットル開度とに基づき路面
摩擦係数を容易且つ正確に判定できる。従って、車両が
走行を開始したときから早期に路面摩擦係数を推定する
ことができる。
【0054】また、車輪加速度最大値及び最大スロット
ル開度が共に小さく、これらに基づき路面摩擦係数を正
確に推定できないような曖昧な状況にあるときには、複
数回(例えば5回以上)の推定結果から推定μを確定し
ているので、この場合にも、正確に路面摩擦係数を推定
することができる。この発明は上述した実施例に制約さ
れることなく、種々に変形して実施可能である。上述し
た車輪加速度最大値及び最大スロットル開度の検出は車
両の発進時のみに制約されるものではなく、車両の極低
速走行(例えば2〜3km/h程度の渋滞走行)状態か
ら加速するような発進に相当する発進状態にて、車輪加
速度最大値及び最大スロットル開度をそれぞれ検出し、
これらに基づき路面摩擦係数を推定するようにしてもよ
い。この場合でも、これら車輪加速度最大値及び最大ス
ロットル開度が共に小さいとき、複数回の推定結果から
路面μを確定することができることはもちろんである。
【0055】なお、この路面摩擦係数推定装置によれ
ば、車両の発進直後に路面μを推定することができるた
め、得られた路面μの推定結果を単に車室内に設けられ
たディスプレイ上に表示して運転者に知らせるだけでな
く、車両に別途設けられたその他の装置、例えば、公知
の車両のヨーモーメント制御や自動減速制御を実行する
旋回制御装置、又はABS装置やトラクション制御装置
等、その制御に路面μを使用する車両挙動制御装置に推
定した路面μを早期に供給することで、これら車両挙動
制御装置による制御の実効を更に高めることも可能であ
る。従って、車両の走行時、路面摩擦係数に依存して変
化する車両の挙動に関する情報、例えば、駆動時の車輪
のスリップや旋回時のスリップ角、また、制動時の車輪
のロック傾向等については、これらを検出することなく
予測することが可能となり、予測したこれら情報に基づ
いて、公知の車両挙動制御装置により、駆動時に車輪の
スリップが発生する前にトラクション制御を行ったり、
旋回時に車両のアンダステア又はオーバステアが発生す
る前にヨーモーメント制御を行ったり、また、制動時に
車輪がロック傾向となる前にABS制御を行うことが可
能となる。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の路面摩
擦係数推定装置によれば、路面摩擦係数の推定基準とな
る車輪加速度とスロットル開度をそれぞれ最大値に特定
することで、これら車輪加速度及びスロットル開度の最
大値から特性が決定される路面摩擦係数を確実に推定す
ることができる。従って、車両の発進時のように車両の
駆動力が小さくても、路面摩擦係数を誤判定する虞がな
い。
【0057】また、車両の発進時や低速走行からの加速
時に検出される瞬間最大値を用いるので、車両が走行を
開始したときから路面摩擦係数を推定することができ、
早期に路面摩擦係数の情報を得ることができる点で車両
の姿勢制御技術への応用に非常に有利である。また、請
求項2の路面摩擦係数推定装置によれば、車輪加速度及
びスロットル開度の最大値の関係が顕著に現れない路面
であっても、その路面摩擦係数を推定することができ、
しかも、推定した路面摩擦係数の信頼性を更に向上させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車輪加速度及びスロットル開度を検出する手順
を説明するためのブロック図である。
【図2】車輪加速度最大値及び最大スロットル開度を出
力する検出回路の構成を表すブロック図である。
【図3】車輪加速度最大値及び最大スロットル開度の検
出時期を説明するためのグラフである。
【図4】車輪加速度最大値及び最大スロットル開度の検
出時期を説明するためのグラフである。
【図5】車輪加速度最大値及び最大スロットル開度の検
出時期を説明するためのグラフである。
【図6】路面摩擦係数を推定する推定回路の構成を表す
ブロック図である。
【図7】車輪加速度最大値及び最大スロットル開度から
路面摩擦係数を判定するためのマップ図である。
【図8】スロットル開度と車輪加速度との関係を示した
図である。
【図9】μ判定値の種別に応じて変化する高μ度合及び
低μ度合の値を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
2 車輪速センサ 4 スロットル開度センサ 10 検出ブロック 12 演算ブロック 14 判定ブロック 16 判定ブロック 18a,18b スイッチ 20a,20b スイッチ 30 判定ブロック 38 μ判定カウンタ 44 確定ブロック
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02D 29/00 - 29/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪速を検出して出力する車輪速検出手
    段と、 前記車輪速から車輪加速度を演算する車輪加速度演算手
    段と、 前記車輪加速度演算手段にて演算した車輪加速度の最大
    値を検出して出力する車輪加速度最大値出力手段と、 車両のスロットル開度を検出して出力するスロットル開
    度検出手段と、 前記車両が発進時を含む発進状態にあって、前記車輪加
    速度最大値出力手段から前記車輪加速度の最大値が出力
    されたとき、この出力時点にて、前記スロットル開度検
    出手段にて検出したスロットル開度に最大値が既に存在
    する場合にはその最大値を、前記最大値が存在しない場
    合には前記出力時点にて検出したスロットル開度を最大
    スロットル開度として出力する最大スロットル開度検出
    手段と、 前記車輪加速度の最大値及び前記最大スロットル開度に
    基づき路面摩擦係数を推定する推定手段とを具備したこ
    とを特徴とする路面摩擦係数推定装置。
  2. 【請求項2】 前記推定手段は、前記車輪加速度の最大
    値と前記最大スロットル開度が前記路面摩擦係数を推定
    する上で曖昧な領域にあるときには、その推定を複数回
    繰り返し、最終的に路面摩擦係数を推定することを特徴
    とする請求項1に記載の路面摩擦係数推定装置。
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