JP3190485B2 - バインダー繊維 - Google Patents

バインダー繊維

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JP3190485B2 JP17531293A JP17531293A JP3190485B2 JP 3190485 B2 JP3190485 B2 JP 3190485B2 JP 17531293 A JP17531293 A JP 17531293A JP 17531293 A JP17531293 A JP 17531293A JP 3190485 B2 JP3190485 B2 JP 3190485B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はバインダー繊維に関す
る。さらに詳しくは、ポリエステル繊維との低温での熱
接着性に優れ、その製造工程及び使用工程においてトラ
ブルがなく、安定して製造、使用することができるバイ
ンダー繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、不織布用途において、ポリエステ
ル繊維の占める割合が大きくなってきたことに伴ない、
ポリエステル繊維への接着性が良好なポリエステル系ポ
リマーを接着成分としたバインダー繊維が望まれるよう
になってきている。さらに、不織布等の製造において
は、生産効率、省エネルギーの観点から、100〜15
0℃の比較的低温でかつ短時間の熱処理で接着させる方
法が多く用いられているため、低温で接着性の良好なポ
リエステル系バインダー繊維が必要である。
【0003】また、バインダー繊維を製造する工程での
トラブル、例えば溶融ポリマーを重合槽から取り出して
チップ化する際のカッター工程でのチップの融着や紡糸
延伸工程での繊維の膠着がなく、このバインダー繊維を
用いて不織布を製造する工程でのトラブル、例えば接着
処理時におけるバインダー繊維の装置への粘着、融着が
起こらないことが要求される。
【0004】これらの要求を満たすことを目的として、
接着成分として非晶性共重合ポリエステルを用いた繊維
が特公平1−30926号公報で提案されている。しか
し、この繊維は、熱接着性の点では十分であるが、繊維
の製造工程、不織布の製造工程におけるトラブルを満足
できる程度まで解消できるものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
エチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル繊
維に対する低温での熱接着性に優れ、かつ熱接着性成分
である共重合ポリエステルの製造工程、バインダー繊維
の製造工程、及びバインダー繊維を使用して不織布を製
造する工程でトラブルが発生することなく、安定して製
造、使用することができるバインダー繊維を提供するこ
とにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の共重合ポリエ
ステルを熱接着性成分とする複合繊維が、熱接着性及び
製造、使用時の工程安定性共に優れていることを見出
し、本発明に到着した。
【0007】すなわち、本発明によれば全酸成分に対し
てテレフタル酸が50〜75モル%、炭素数6〜12の
脂肪族ジカルボン酸が1〜4モル%、イソフタル酸と該
脂肪族ジカルボン酸の和が25〜50モル%である酸成
分と、エチレングリコールを主成分とするグリコール成
分とからなり、ガラス転移温度が50〜70℃である共
重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレートとか
らなる複合繊維であって、該共重合ポリエステルが少な
くとも繊維表面の一部を占めていることを特徴とするバ
インダー繊維が提供される。
【0008】本発明のバインダー繊維における熱接着性
成分となる共重合ポリエステルは、全酸成分に対してテ
レフタル酸が50〜75モル%、炭素数6〜12の脂肪
族ジカルボン酸が1〜4モル%、イソフタル酸と該脂肪
族ジカルボン酸の和が25〜50モル%である酸成分
と、エチレングリコールを主成分とするグリコール成分
からなる。
【0009】イソフタル酸と脂肪族ジカルボン酸の合計
量が、25モル%より少ないと、熱接着性が低下し好ま
しくない。また、50モル%より多いと、コスト的に不
利となる。
【0010】脂肪族ジカルボン酸が1モル%より少ない
と低温熱接着性が低下し好ましくない。また、4モル%
より多いと、ポリマーチップの融着、あるいは得られる
バインダー繊維の膠着が起こり易くなって、チップ化工
程、繊維製造工程でのトラブルが多発し、さらには、不
織布製造工程で装置への粘着、融着が起こるため好まし
くない。
【0011】本発明で用いられる脂肪族ジカルボン酸
は、炭素数が6〜12であることが必要であり、炭素数
が5以下では低温での熱接着性が低下し、13以上では
ポリマーチップの融着、繊維の膠着及び不織布製造工程
での装置への粘着、融着が起こり不適当である。
【0012】炭素数が6〜12の脂肪族ジカルボン酸と
しては、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ア
ゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二
酸が挙げられる。
【0013】本発明の共重合ポリエステルは、ガラス転
移温度が50〜70℃であることが必要である。ガラス
転移温度が50℃より低いと、ポリマーチップの融着、
バインダー繊維の膠着及び不織布製造装置への粘着、融
着が起こり易くなって、工程安定性が問題となり好まし
くない。一方、70℃より高いと、低温での熱接着性能
が低下して好ましくない。
【0014】本発明の共重合ポリエステルの固有粘度
(オルソクロロフェノール溶媒中30℃で測定)は、
0.40〜0.60であることが好ましい。固有粘度が
0.40より低いと、共重合ポリエステルの機械的特性
が低下し、最終的に得られる不織布等の熱接着処理製品
の強度が不十分なものとなり易い。また、0.60より
も高いと、ポリマーの流動性が低下して、熱接着性能が
低下する傾向がある。
【0015】かかる共重合ポリエステルは、従来から公
知の方法で製造することができる。例えば、上記ジカル
ボン酸成分とエチレングリコールとをエステル化反応せ
しめて、ビスグリコールエステル及び/又はその初期縮
合物を得る。次いで重縮合触媒の存在下で重縮合反応せ
しめる。
【0016】本発明で用いられる共重合ポリエステル中
には、少量の添加剤、例えば艶消剤、酸化防止剤、螢光
増白剤、安定剤、紫外線吸収剤等を含んでいてもよい。
【0017】本発明のバインダー繊維は、上記共重合ポ
リエステルとポリエチレンテレフタレートとからなる複
合繊維である。
【0018】ポリエチレンテレフタレートとしては、通
常、繊維の製造に用いられる固有粘度が0.50〜0.
75のものが用いられる。
【0019】接着成分となる共重合ポリエステルは、少
なくとも該複合繊維表面の一部、好ましくは表面の40
%以上を占めていることが必要である。共重合ポリエス
テルが複合繊維表面に露出していない場合には、接着効
果が得られないので不適当である。なお、複合繊維の任
意の横断面における共重合ポリエステルの面積率は、好
ましくは10〜70%、より好ましくは30〜70%、
特にこのましくは30〜50%とするのが望ましい。
【0020】かかる複合繊維としては、サイドバイサイ
ド型複合繊維、芯鞘型複合繊維等任意の形態をとり得る
が、共重合ポリエステルを鞘成分とし、ポリエチレンテ
レフタレートを芯成分とした芯鞘型複合繊維が特に好ま
しい。
【0021】本発明のバインダー繊維は、このバインダ
ー繊維のみの集合体としても用いられるが、通常は、該
繊維を10重量%以上含む他繊維との混合接着繊維集合
体として用いられる。
【0022】本発明のバインダー繊維は、ポリエステル
繊維を熱接着させて不織布を製造する際に使用するのに
適しているが、その他の熱接着用途にも広く用いること
ができる。
【0023】
【実施例】以下、実施例を挙げてさらに詳細に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。なお実施
例中の部は重量部を示す。また各種特性は下記の方法に
より評価した。
【0024】(1)固有粘度[η] オルソクロルフェノールを溶媒として30℃で測定し、
その相対粘度から常法により求めた。
【0025】(2)接着強度 バインダー繊維20重量部、カット長51mmのポリエ
チレンテレフタレート短繊維80重量部とを混綿し、1
30℃で熱接着処理して得た不織布から、装置方向に巾
6cm長さ20cmの試験片を切り取り、JIS L1
096に準じて、つかみ間隔10cm、伸長速度20c
m/分で引張破断力を測定した。接着強度は、引張破断
力を試験片重量で除した値とした。
【0026】
【実施例1】テレフタル酸ジメチル450部、エチレン
グリコール220部及びエステル交換触媒として酢酸カ
ルシウム一水塩0.50部を、撹拌機、精留塔及びメタ
ノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、14
0℃から徐々に昇温し、反応の結果生成するメタノール
を系外に留出させながら、エステル交換反応を行なっ
た。反応開始後3時間で内温は220℃に達し、メタノ
ール237部が留出した。 ここで反応系にイソフタル
酸275部、セバシン酸34部を、それぞれ50重量%
エチレングリコールスラリー(70℃迄予熱しておく)
として添加し、反応の結果生成する水を系外に留出させ
ながら反応させた。
【0027】次いで、安定剤としてトリメチルフォスフ
ェート0.56部、重合触媒として三酸化アンチモン
0.36部、さらに艶消剤として二酸化チタン4.0部
を加え、20分後に反応を終了した。
【0028】次いで、得られた反応生成物を撹拌機及び
グリコール留出コンデンサーを設けた別の反応器に移
し、220℃から285℃に徐々に昇温すると共に、常
圧から0.5mmHgの高真空に圧力を下げながら重合
反応を行なった。反応系の溶融粘度を追跡し、固有粘度
[η]が0.55となる時点で重合反応を打ち切った。
【0029】溶融ポリマーを反応器底部よりストランド
状に冷却水中に押出し、ストランドカッターを用いて切
断してチップ化した。チップの融着は全く起こらず、カ
ッター工程は極めて良好であった。
【0030】得られた共重合ポリエステルを鞘成分と
し、固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレートを
芯成分として、鞘/芯=50/50(重量比)で芯鞘型
複合紡糸口金から溶融吐出し、800m/分の速度で引
取った。この際、鞘成分の溶融温度は250℃、芯成分
の溶融温度は280℃とした。
【0031】得られた未延伸糸を延伸温度60℃、延伸
倍率3.0倍で延伸し、さらに捲縮率10%の捲縮を与
えた。次いで、得られた捲縮糸条を51mmの長さに切
断して、バインダー繊維を得た。
【0032】繊維の横断面における共重合ポリエステル
の面積率は、50%であり、紡糸、延伸中に繊維間の膠
着はなく、安定に製造することができた。
【0033】このバインダー繊維20重量部と、カット
長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維80重
量部とを混綿し、130℃で接着熱処理して、不織布を
得た。不織布製造中にバインダー繊維が装置に粘着する
ことはなく、工程性は良好であった。
【0034】この不織布の接着強度は25kg/gであ
った。
【0035】以上の結果を表1及び表2にまとめて示
す。
【0036】
【実施例2〜4、比較例1、2】共重合ポリエステルの
組成を表1に記載の如く変更する以外は実施例1と同様
にして、共重合ポリエステル、バインダー繊維及び不織
布を得た。結果は表2に示す通りであった。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】本発明のバインダー繊維は、ポリエチレ
ンテレフタレートをはじめとするポリエステル繊維に対
する低温での熱接着性能が優れていると同時に、熱接着
性成分である共重合ポリエステルをチップ化する際にチ
ップが融着することなく、紡糸延伸工程での繊維の膠着
も起こらず、さらに不織布製造時に装置へ粘着、融着す
るようなこともなく、安定に生産、使用することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−136828(JP,A) 特開 昭63−178129(JP,A) 特開 平4−153322(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 8/14 D01F 6/84

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全酸成分に対してテレフタル酸が50〜
    75モル%、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸が1
    〜4モル%、イソフタル酸と該脂肪族ジカルボン酸の和
    が25〜50モル%である酸成分と、エチレングリコー
    ルを主成分とするグリコール成分とからなり、ガラス転
    移温度が50〜70℃である共重合ポリエステルと、ポ
    リエチレンテレフタレートとからなる複合繊維であっ
    て、該共重合ポリエステルが少なくとも繊維表面の一部
    を占めていることを特徴とするバインダー繊維。
  2. 【請求項2】 共重合ポリエステルの固有粘度が0.4
    0〜0.60である請求項1記載のバインダー繊維。
  3. 【請求項3】 複合繊維の横断面における共重合ポリエ
    ステルの面積率が10〜70%である請求項1又は2記
    載のバインダー繊維。
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