JP3180961U - 内燃機関のためのピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】ボス孔に特に簡単に局所的な幾何学的な逸脱を設けることができるピストンを提供する。
【解決手段】ピストンピンを収容するための少なくとも2つのボス孔(18)を有しており、これらのボス孔(18)が、円筒形状から外れた少なくとも1つの形状を有している、内燃機関のためのピストン(10)であって、ボス孔(18)が、円筒形状を備える孔(21)から形成されており、該孔(21)に、固体潤滑剤粒子を含む樹脂を有するコーティング(22)が設けられており、該コーティング(22)が、前記ボス孔(18)の円筒形状から外れた少なくとも1つの形状を形成するようにした。
【選択図】図1

Description

本考案は、内燃機関のためのピストン、厳密に言えば、ピストンピンを収容するための少なくとも2つのボス孔を有しており、これらのボス孔が、円筒形状から外れた少なくとも1つの形状(幾何学的な逸脱)を有している、内燃機関のためのピストンに関する。
ピストンピンはピストンをコンロッドを介して内燃機関のクランク軸に結合する。ピストンピンは、ピンボスに設けられたボス孔内に支承されており、ピストンの往復運動時に、ピストンに作用する巨大な力に基づいて撓むことができる。ピンボスは、ピストンの、最も強く負荷される部分に数えられる。高いピストン負荷時、ボス孔に亀裂が形成される恐れが生じる。それゆえ、特に軽金属製ピストンにおいて、ボス孔の応力を軽減する方法が求められている。このことは例えば、通常は円筒形のボス孔の幾何学形状を局所的に変更することにより行われる。この幾何学形状の変更は、ピストンピンの変形により惹起される応力を減じる。この種の幾何学形状の変更は例えば、負荷軽減ポケット、だ円のボス孔またはコニカル形状またはクラウニング形状の、ピストンピンの撓み線に適合された孔であることができる(後者については例えば国際公開第96/07841号参照)。この種の幾何学形状の変更はこれまで、ボス孔の手間のかかる精密加工により製作されていた。
ドイツの特許出願(102004059392.9)から、滑り軸受面を有するボス孔を備えるピストンが公知である。滑り軸受面は、固体潤滑剤粒子を含む樹脂からなる自己潤滑性のコーティングで被覆されている。
本考案の課題は、ボス孔に特に簡単に局所的な幾何学的な逸脱を設けることができるピストンを提供することである。
解決策は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有するピストンにある。本考案によれば、ボス孔が、円筒形状を備える孔から形成されており、該孔に、固体潤滑剤粒子を含む樹脂を有するコーティングが設けられており、該コーティングが、前記ボス孔の円筒形状から外れた少なくとも1つの形状(幾何学的な逸脱)を形成するようにした。本考案に係るピストンは、好ましくは、まず、円筒形の内部輪郭を有する孔を製作し、引き続いて、この孔の内面に、コーティング手段により、固体潤滑剤粒子を含む樹脂を有するコーティング剤を被着し、結果として生じるコーティングが、ボス孔の円筒形の内部輪郭からの少なくとも1つの幾何学的な逸脱を形成するようにして形成されている。
本考案により、ボス孔を、円筒形の内部輪郭からの少なくとも1つの幾何学的な逸脱と、その内面の自己潤滑性のコーティングとを伴って、1回の同じ作業工程で製作することが可能である。このことは、かなりの時間的かつコスト的な節減を意味する。少なくとも1つの幾何学的な逸脱を付与するために、ボス孔の内面の金属を手間をかけて極めて複雑に切削しなければならない加工は、省略される。さらに、ボス孔の十分な潤滑性および抗スカッフ性を達成するために、軸受ブシュはもはや不要である。コーティングは付着層の事前の被着なしに行われ得る。ボス孔の所望の寸法安定性は高信頼性に達成される。ピストンピン支承部の耐性、ひいては寿命は、改善された潤滑特性の結果、従来公知の金属合金からなるコーティングに対してかなり改善される。
有利な構成は従属請求項にある。
前記少なくとも1つの幾何学的な逸脱は、少なくとも1つの負荷軽減ポケットおよび/またはだ円値(例えば高さ方向および/または横幅方向のだ円値)および/または成形孔として形成されていることができる。このことは例えば国際公開第96/07841号に開示されている。
有利には、ピストンピン支承部の潤滑をさらに改善するために、前記コーティング内に、少なくとも1つのオイル集合室が設けられていることができる。前記少なくとも1つのオイル集合室は、ボス軸方向で延びる通路として、ボス軸方向に対して半径方向で完全にまたは部分的に環状に延びる通路としてかつ/またはポケット状の切欠きとして形成されていることができる。
前記コーティングの最小厚さは、個々の事例の要求に依存しており、例えば5μm〜15μmであることができる。
有利には、コーティング内に含まれる樹脂が、熱硬化性の樹脂、特にポリアミドイミド樹脂である。ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性に優れ、ピストンピン支承部が運転中に曝される負荷に特に良好に耐えることができる。
コーティング内の50質量%〜60質量%が固体潤滑剤粒子であるとき、特に有利な潤滑特性を示すことが判っている。この場合、前記固体潤滑剤粒子が、グラファイト、硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶系の窒化ホウ素およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を有する材料群から選択されている材料からなることができる。固体潤滑剤粒子は有利には唯一の材料からなる。すべての固体潤滑剤粒子が同じ材料からなるか、または2つの異なる材料からなる固体潤滑剤粒子が混合、例えばグラファイトからなる固体潤滑剤粒子が金属硫化物からなる固体潤滑剤粒子と混合されると特に有利である。特に効果的な潤滑のために、前記固体潤滑剤粒子は、1μm〜3μmの粒径を有する。
本考案に係るピストンでは、前記少なくとも1つの幾何学的な逸脱を、コーティング手段から放出されるコーティング剤の量の調節および/またはコーティングしたい孔内でのコーティング手段の送りの調節により形成することができる。
択一的な可能性はもちろん、コーティング剤を均一な厚さで被着し、少なくとも1つの幾何学的な逸脱を、結果的に生じたコーティングの後加工により形成することにある。この方法は、当然のことながら、少なくとも1つの幾何学的な逸脱をコーティングプロセスの最中に設ける場合に比べて遥かに手間がかかる。しかし、結果物、つまり、ボス孔の円筒形の内部輪郭からの少なくとも1つの幾何学的な逸脱を形成するコーティングを備えるボス孔を有するピストンは、同じである。
本考案に係るピストンの一態様は、前記コーティング剤を孔の内面に、≦0.8μmの表面粗さRa(平均粗さ値)で被着することを特徴とする。
本考案に係るピストンの一態様は、前記コーティング剤を、孔内に導入された回転するノズルからの回転噴霧により被着することを特徴とする。
本考案に係るピストンの一態様は、前記回転噴霧を、14000〜18000rpmのノズルの回転速度で実施することを特徴とする。
孔の内面へのコーティング剤の付着をさらに改善するために、孔の内面をコーティング剤の被着前かつ/または被着中に予熱、有利には50℃〜80℃の温度まで予熱することができる。
本考案に係るピストンの有利な構成は、熱により硬化可能なコーティング剤を使用し、被着終了直後に熱処理、有利には200℃の温度での熱処理にかけることにある。
本考案の一実施例について以下に添付図面を参照しながら詳説する。図面は、縮尺に非忠実な概略図である。
本考案に係るピストンの一実施形態の部分断面図である。 図1に示したピストンのボス孔の部分の断面図である。 図2に示したボス孔を矢印Aの方向で見た図である。 コーティング手段の概略図である。
図1は、本考案に係るピストン10の一実施例、この場合は一体形のピストン10を示す。ピストン10は自体公知の形式で例えば軽合金からなる。ピストン10は、燃焼室くぼみ12と、トップランド13、およびピストンリング(図示せず)を収容するためのリング部14を備える環状に延びる側壁とを備えるピストンヘッド11を有する。さらにピストン10は、ピストンヘッド11の下にピストンスカート15を有する。ピストンスカート15は、ピストンヘッド11の下面に支持される2つのボス連結部16を有する。ボス連結部16は2つのピストンボス17に移行する。各ピストンボスには、ピストンリング(図示せず)のためのリテーナリング溝19を備えるボス孔18が設けられている。もちろん、ピストンの構造形式(二分割式または多分割式)次第で、2つより多くのピストンボスが、相応のボス孔を備えて設けられていてもよい。
ボス孔18は、本実施例では、円筒形状から外れた所定の内部輪郭23を備える成形孔であり、このような内部輪郭は例えば国際公開第96/07841号に開示されている。この構成は、ボスのき裂の危険を回避するために、運転中のピストンピンの負荷軽減のために役立つ。同じ目的に役立つボス孔の別の構成は、例えばだ円値(高さ方向および/または横幅方向のだ円)または負荷軽減ポケット(Entlastungstasche)を備えるボス孔である(図示せず)。これらの構成は自体公知である。
ボス孔18は本考案により、円筒形の孔21とコーティング22とからなるように構成されている。この場合、コーティング22の表面輪郭は、成形孔の、円筒形状から外れた所望の内部輪郭23が生じるように構成されている。比較可能な形式で、だ円値もしくは負荷軽減ポケットが、コーティング22の表面輪郭により形成されていてもよい(図示せず)。コーティング22は、主として、固体潤滑剤粒子を含む樹脂からなり、これにより、自己潤滑性のコーティングである。
本実施例では、さらにコーティングに、ボス軸方向で延在する通路24の形のオイル集合室が設けられている。通路24からポケット25が半径方向で延在している。これらのオイル集合室は、ピストンピン支承部の潤滑をさらに改善するために役立つ。もちろん、オイル集合室はそれぞれの所望の使用のために任意の形状およびサイズで形成され、互いに任意に配置されていることができる。
ボス孔18の製作のために、まず、円筒形の孔21をピストンボス17内に設け、公知の形式で機械的な仕上げ加工を施す。表面粗さRa(平均粗さ値)は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4111368号明細書に記載されるものに相当することができる。この場合、一般には、30mmより小さな孔直径で、Ra値は0.63μm以下であり、30〜60mmの孔直径で、Ra値は0.8μm以下である。孔直径は本実施例ではコーティング前、ピストンピンが、完成したボス孔18内で、10μm〜40μmの直径方向の遊びを有するように選択される。円筒形の孔21は、切りくず、その他の粒子、加工油およびこれに類するものが完全に除去されているようにクリーニングされているべきである。円筒形の孔21の内面はリン酸塩処理されていてもよい。
付加的なオイル集合室、例えば通路24またはポケット25の形のオイル集合室が設けられているべきであれば、コーティング前に、自体公知の形式で、相応のカバーテンプレート(Abdeckschablone)が円筒形の孔21内に取り付けられる。カバーテンプレートは、円筒形の孔21の被覆された領域のコーティングを阻止する。択一的には、完成したコーティングを後加工し、こうしてオイル集合室を設けることができる。
本実施例で選択されるコーティング剤は、単数または複数の材料、グラファイト、硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶系の窒化ホウ素、PTFEからなる固体潤滑剤粒子を含む、熱で硬化可能な樹脂から形成されている。本実施例では、樹脂は優れた耐熱性を有するポリアミドイミドであり、固体潤滑剤は、1μm〜3μmの粒径を有する硫化モリブデン粒子およびグラファイト粒子の混合物である。固体潤滑剤の量は本実施例では、完成したコーティングが約50〜60質量%の固体潤滑剤粒子を含有するように選択されている。コーティング剤の粘性は、十分な塗布時、滴形成が回避されるように調節されている。
円筒形の孔21の内面にコーティングを被着するために、本実施例では、回転噴霧のための装置30が役立つ。この装置30は、ノズル体32に接続されている基体31を有する。ノズル体32は基体上に軸受33により回転可能に支承されている。ノズル体32は、流出開口35を備えるノズル34を備える。基体31はそれぞれ供給通路36,37を有し、供給通路36,37は液状のコーティング材料用ならびに圧縮空気用に決められており、混合および調量のための混合チャンバ38で終わっている。混合チャンバ38から流出通路39がノズル体32を通って延在し、流出開口35に開口する。流出開口35に対して垂直にバッフルプレート41が配置されている。その結果、バッフルプレート41とノズル体32との間に、本実施例では0.5mmの幅を有する環状のギャップ42が生じる。ギャップ42を通してコーティング剤/空気混合物が噴流43の形で半径方向に、かつノズル体32から間隔を置いて流出する。
駆動装置44によりノズル体32は回転させられ、本実施例では14000〜18000rpmの回転数領域で回転する。流出開口35から流出するコーティング剤/空気混合物は、流出開口35で発生する遠心力により、ディスク状の噴流43として半径方向で流出するように加速される。噴流43がピン軸方向で狭く形成されているので、円筒形の孔21の、コーティングしたい内面は、ピン軸方向でコーティング剤/空気混合物の簡単な供給管理によりシャープに制限され得る。本実施例では、5〜25mmの範囲の直径および50mmまでの深さを有するノズル34が使用可能である。その結果、装置30により、すべてのエンジンタイプのピストンのための円筒形の孔21がコーティングされ得る。ノズル34の直径は、一般に、円筒形の孔21の半径にほぼ相当するように選択される。
コーティング法を実施するために、Sprimag社(在キルヒハイム)の遠心機S‐520も適している。
コーティング剤/空気混合物の塗布は、本実施例では、円筒形の孔21の、50℃〜80℃に予熱された内面に行われる。ノズル34は外部から内部に円筒形の孔21内に中心的に挿入される。例えば図1に示した成形孔の、円筒形の内部輪郭からの幾何学的な逸脱を構成するために、ノズル34の送りは、例えば10〜20mm/sの範囲で変更される。付加的にまたは択一的に、ノズル34の流出開口35から流出するコーティング剤/空気混合物の量が変更され得る。このために、装置30がコンピュータ制御されて作業するようになっていると有利である。ノズル34が円筒形の孔21の端部に達すると、装置30はオフにされ、引き戻される。
円筒形の孔21内に、オイル集合室を製作するためのカバーテンプレートが設けられている場合、コーティング剤/空気混合物の供給は、この種のテンプレートに達すると停止される。その結果、噴流の残りがカバーテンプレートに吹付けられる。カバーテンプレートの終わりに達すると、コーティング剤/空気混合物の供給が再び行われる。
コーティング剤が被着されたら、ピストン、もしくはコーティングされたボス孔18を有するピストン構成部材をオーブンに入れ、その中で本実施例では10〜20分間200℃の温度に維持されることにより熱処理され硬化される。
完成したコーティング22は、本実施例では、最も薄い箇所で約5μm〜20μmの厚さであり、直径方向のピン遊びは約10μm〜20μmである。この狭小な遊びは、ピン打音によるノイズを回避するために特に有利である。さらにコーティング22は、狭小な遊びにもかかわらず焼付き(Fresser)が発生しないことを保証する。
10 ピストン、 11 ピストンヘッド、 12 燃焼室くぼみ、 13 トップランド、 14 リング部、 15 ピストンスカート、 16 ボス連結部、 17 ピストンボス、 18 ボス孔、 19 リテーナリング溝、 21 円筒形の孔、 22 コーティング、 23 内部輪郭、 24 通路、 25 ポケット、 30 回転噴霧のための装置、 31 基体、 32 ノズル体、 33 軸受、 34 ノズル、 35 流出開口、 36,37 供給通路、 38 混合チャンバ、 39 流出通路、 41 バッフルプレート、 42 ギャップ、 43 噴流、 44 駆動装置

Claims (12)

  1. ピストンピンを収容するための少なくとも2つのボス孔(18)を有しており、これらのボス孔(18)が、円筒形状から外れた少なくとも1つの形状を有している、内燃機関のためのピストン(10)であって、ボス孔(18)が、円筒形状を備える孔(21)から形成されており、該孔(21)に、固体潤滑剤粒子を含む樹脂を有するコーティング(22)が設けられており、該コーティング(22)が、前記ボス孔(18)の円筒形状から外れた少なくとも1つの形状を形成することを特徴とする、内燃機関のためのピストン。
  2. 前記円筒形状から外れた少なくとも1つの形状が、少なくとも1つの負荷軽減ポケットおよび/またはだ円形状および/または成形孔として形成されている、請求項1記載のピストン。
  3. 前記コーティング(22)に少なくとも1つのオイル集合室(24,25)が設けられている、請求項1または2記載のピストン。
  4. 前記少なくとも1つのオイル集合室が、ボス軸方向で延びる通路(24)として形成されている、請求項3記載のピストン。
  5. 前記少なくとも1つのオイル集合室が、完全にまたは部分的に環状に延びる通路として形成されている、請求項3記載のピストン。
  6. 前記少なくとも1つのオイル集合室が、ポケット状の切欠き(25)として形成されている、請求項3記載のピストン。
  7. 前記コーティング(22)の最小厚さが、5μm〜20μmである、請求項1から6までのいずれか1項記載のピストン。
  8. 前記樹脂が、熱硬化性の樹脂である、請求項1から7までのいずれか1項記載のピストン。
  9. 前記熱硬化性の樹脂は、ポリアミドイミド樹脂である、請求項8記載のピストン。
  10. 前記コーティング(22)が、50質量%〜60質量%の固体潤滑剤粒子を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載のピストン。
  11. 前記固体潤滑剤粒子が、グラファイト、硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶系の窒化ホウ素およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を有する材料群から選択されている材料からなる、請求項1から10までのいずれか1項記載のピストン。
  12. 前記固体潤滑剤粒子が、1μm〜3μmの粒径を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のピストン。
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