JP3174682B2 - 光ファイバ用ガラス母材の製造方法 - Google Patents

光ファイバ用ガラス母材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光ファイバ用ガラス母材
の製造方法、特には高品質の石英系光ファイバ用ガラス
母材を低コストで製造することができる光ファイバ用ガ
ラス母材の製造方法関するものである。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法
についてはVAD法、OVD法、MCVD法などが主流
とされており、これらによれば高品質の光ファイバ用石
英ガラス母材を得ることができる。これらのうちVAD
法、OVD法は生産性が高く、光ファイバ用石英ガラス
母材を比較的低コストで得ることができ、これらの2法
(以下スート法と略記する)は四塩化けい素(SiCl4) な
どを酸水素火炎中で火炎加水分解させ、得られたシリカ
微粒子を石英ガラス棒などの担体上に堆積し成長させて
多孔質ガラス母材を製造し、その後これを塩素ガスなど
の雰囲気中で脱水透明ガラス化して透明ガラス母材とす
るものである。
【0003】しかし、この多孔質ガラス母材がOH基を
含んでいると、光通信に用いられる光の波長が赤外域の
ものであるために、この光ファイバに損失が生ずること
になるが、この方法で得られた高品質な光ファイバ用ガ
ラス母材はOH基が充分に除去されており、通常これは
10ppb以下の含有率のものとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】石英ガラス母材の製造
方法については、上記した方法以外にも数多くの方法が
提案されており、これには例えば酸水素火炎中で SiC
l4などを火炎加水分解して得たガラス微粒子を当該酸水
素火炎中で加熱して直接溶融し透明ガラスとして堆積
させ透明石英ガラス母材とする方法(以下、火炎直接法
と呼称する)も知られており(特開昭55-75932号公報参
照)、この方法には前記したスート法のように多孔質ガ
ラス母材の製造、脱水透明ガラス化という2段階の工程
が不要な単純なものであることから極めて低いコスト
で石英ガラス母材を得ることができるという利点がある
が、この火炎直接法ではOH基の除去が不可能であり、
この石英ガラス母材はOH基を 500〜1,000ppmも含有す
るものとなるので、これは光ファイバの製造用に使用す
ることができないという欠点があり、そのために前記し
たスート法よりも品質、生産性がよく、低いコストで光
ファイバ用石英ガラス母材を製造する方法が求められて
いる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような従
来法における不利、問題点を解決した光ファイバ用ガラ
ス母材の製造方法に関するものであり、これはガス状
ラス原料化合物の酸水素火炎中での火炎加水分解により
発生させたガラス微粒子を石英ガラス棒などの担体上に
堆積させて、コア中心から第1クラッドの外側までの厚
さがコア径の1.5〜8倍の厚さになるように第1クラ
ッド層を設けた多孔質ガラス母材を、塩素ガスの存在下
で脱水透明ガラス化して得たOH基の含有量が0.1pp
m以下の光ファイバ用透明石英ガラス母材を出発材と
し、この出発材の外周部に原料ガス酸水素火炎中での
火炎加水分解で発生させたガラス微粒子を当該酸水素
火炎中で直接溶融して透明ガラスとして堆積することを
特徴とするものである。
【0006】すなわち、本発明者らは光ファイバ用石英
ガラス母材を低コストで製造する方法について種々検討
した結果、この石英ガラス母材についてはこれに伝播さ
れる光の強度分布について検討したところ、OH基によ
る伝送損失に影響を与えるクラッド層の範囲はコア中心
からコア径の 1.5倍程度で、これは充分な安全をみても
コア径の8倍であれば問題がなく、これより外側のクラ
ッド層は伝送損失には全く関係しないことを見出し、し
たがってコア中心からコア径の 1.5〜8倍の厚さにクラ
ッド層を設けた多孔質ガラス母材をスート法で製作し、
これを塩素ガスなどの雰囲気下で脱水透明ガラス化して
OH基量の少ない透明石英ガラス母材としたものを出発
材とし、この外周部にいわゆる直接法で透明ガラスのク
ラッド層を設ければ、この出発材が伝送損失に影響のな
いものとされているので実用上光ファイバ用として有用
とされる光ファイバ用ガラス母材を低いコストで得るこ
とができることを確認して本発明を完成させた。以下に
これをさらに詳述する。
【0007】
【作用】本発明は光ファイバ用ガラス母材の製造方法に
関するものであり、これは前記したスート法で石英ガラ
ス棒などの担体上にガラス微粒子を堆積させて、コア中
心から第1クラッドの外側までの厚さがコア径の1.5
〜8倍の厚さになるように第1クラッド層を設けた多孔
質ガラス母材を、塩素ガスの存在下で脱水透明ガラス化
して得たOH基含有量が0.1ppm以下と少ない光ファ
イバ用透明石英ガラス母材を出発材とし、この出発材の
上に、ガス状けい素化合物の火炎加水分解で発生させた
ガラス微粒子を酸水素火炎中で直接溶融して透明ガラ
スの第2クラッド層を堆積することを特徴とするもので
ある。これによればスート法で得られる出発材の第1ク
ラッド層は伝送損失に影響ないものとなり、この上に設
けた第2クラッド層はそれがOH基を多く含むものであ
ってもこれは伝送損失に関係がないので、得られる光
ファイバ用ガラス母材は伝送損失の少ないものになると
いう有利性が与えられる。
【0008】本発明による光ファイバ用ガラス母材の製
造はまず本発明において出発材とされる光ファイバ用
ガラス母材をVAD法やOVD法などのスート法で作製
するのであるが、これはVAD法では例えば図1の縦
断面図で示した公知の方法で行なえばよい。すなわち、
本発明による光ファイバ用ガラス母材の製造は図1
(a)に示されているように、酸水素火炎バーナー2に
おいてこのバーナーに原料ガスとしての四塩化けい素(S
iCl4) 、ドーパントとしての四塩化ゲルマニウム(GeC
l4) と酸素ガス(O2 )と水素ガス(H2 )を供給し、
この火炎中で SiCl4、 GeCl4を火炎加水分解してシリカ
微粒子と酸化ゲルマニウム粒子を発生させ、これをター
ゲット材の先端に堆積してコア4を作り、これを回転さ
せつつこれに SiCl4、H2 およびO2 を送る酸水素火炎
バーナー5,7,9で発生させたシリカ微粒子をこのコ
アの上に堆積してここにクラッド層6,8,10からなる
第1クラッド層を形成する。
【0009】このようにして作られた多孔質ガラス母材
は通常OH基を10〜100ppm含有しているので、これはつ
いで図示していないけれども別の電気炉中において塩素
ガス存在下で 1,000〜 1,600℃に加熱すると脱水透明
化と共にこれが脱OH基されOH基の含有量が0.1ppm
以下の透明な石英ガラス母材となる。この多孔質ガラス
母材における第1クラッド層の厚さはこれから作られ
る透明石英ガラス母材の伝送損失をなくすためには
第1クラッド層の厚さがコア径の 1.5〜8倍であれば
よく、それ以上厚くする必要もない。
【0010】本発明ではこのようにして作られた出発
材としての光ファイバ用透明ガラス母材にシリカ微粒子
を堆積し、ここにさらに第2クラッド層を形成させるの
であるが、これは例えばこの装置の縦断面図で示され
図4に示した装置で行えばよい。すなわち、これは上
記合成石英ガラスからなる出発材11をチャック12で把持
して30〜50rpm で回転させ、これにこの出発材11と平行
に送行する酸水素火炎バーナー13を設け、 SiCl4の火炎
加水分解で発生させたシリカ微粒子を回転している出発
材11の上に堆積し酸水素火炎中で直接溶融して透明ガラ
ス化して第2クラッド層16を形成し、光ファイバ用ガラ
ス母材15を製造する。
【0011】なお、本発明の原料ガスとしてのけい素化
合物は、例えば特公平2-31010号公報の3欄19行〜29行
に開示されているものが用いられ、またバーナーについ
ては特公平2-31010号公報の第3図に開示されているも
のを用いることができる。このようにして作られた出発
材としての光ファイバ用透明ガラス母材は図1(b)
に示したようにスート法で製造され、脱OH基されたコ
ア材と第1クラッド層からなり、コア径Aとこの光ファ
イバ用透明ガラス母材の直径Bとの比が1.5≦B/A≦
8とされているので、これは伝送損失のないものであ
り、この上に積層される第2クラッド層は火炎直接法で
ガラス化されるのでOH基含有量の多いものとなるが、
これは伝送損失に影響を与えず、これで得られる光ファ
イバ用ガラス母材は安価に得ることができるという有利
性が与えられる。
【0012】
【実施例】つぎに本発明の実施例をあげる。 実施例1 VAD法で、石英ガラス棒などの担体上にガラス微粒子
を堆積させて製造した多孔質ガラス母材を、塩素ガスの
存在下で脱水透明ガラス化して、OH基の含有量が0.
1ppm以下で、図2(a)に示したような屈折率分布を
有する光ファイバ用ガラス母材のコアの直径A1 とこの
ガラス母材の外径Bとの比B1/A1 が 5.3の光ファイバ
透明石英ガラス母材を出発材とし、この外周に図4に
示した方法で四塩化けい素の火炎加水分解で発生したシ
リカ微粒子を堆積し、これを酸水素火炎で加熱直接溶
融して透明ガラス化し、第2クラッド層を形成したとこ
ろ、外径が90mmφで長さが1,000mmLである光ファイバ用
ガラス母材が得られたこれは図2(b)に示したよう
にコア材の直径A2 とガラス母材の直径B2 との比B2/
2 が16.0のものであり、これを線引きして得たシング
ルモード光ファイバの特性を測定したところ、これは波
長 1.3μmにおける伝送損失が 0.34dB/kmと良好なもの
で、このすべてをスート法で製造したものと同等の結果
を示した。
【0013】実施例2 VAD法で、石英ガラス棒などの担体上にガラス微粒子
を堆積させて製造した多孔質ガラス母材を、塩素ガスの
存在下で脱水透明ガラス化して、OH基の含有量が0.
1ppm以下で、図3(a)に示したような屈折率分布を
有する光ファイバ用ガラス母材のコアの直径A3 とこの
ガラス母材の外径B3 との比B3/A3 =2.0 の光ファイ
バ用透明石英ガラス母材を出発材とし、この外周に図4
に示した方法で四塩化けい素の火炎加水分解で発生させ
たシリカ微粒子を堆積し、これを酸水素火炎で加熱して
直接溶融して透明ガラス化し、第2クラッド層を形成し
たところ、外径が92mmで長さが1,000mmLである光ファイ
バ用ガラス母材が得られたこれは図3(b)に示した
ようにコア材の直径A4 とガラス母材の直径との比B4/
4 が10.0のものであり、これを線引きして得た分散シ
フトタイプのシングルモード光ファイバの特性を測定し
たところ、これは波長1.55μmにおける伝送損失が 0.2
0dB/kmと良好なものであった。
【0014】
【発明の効果】本発明光ファイバ用ガラス母材の製造
方法によれば、スート法で製造した多孔質ガラス母材を
塩素ガスの存在下で脱水透明ガラス化して、OH基量を
少なくしたコア、第1クラッドからなる出発材上に、酸
水素火炎中で直接溶融した透明ガラスを堆積して第2ク
ラッド層を形成することにより、全てスート法で製造す
る従来の方法に比べ、低いコストで伝送損失の少ない光
ファイバ用ガラス母材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明による光ファイバ用多孔質ガ
ラス母材製造装置の縦断面図を例示したもの、(b)は
ここに使用される出発材としての光ファイバ用ガラス母
材の屈折率分布とコアと光ファイバ用ガラス母材の直径
比を示したものである。
【図2】 (a)は実施例1で使用された出発材の屈折
率分布とコア径と外径との比を例示したもの、(b)は
得られた光ファイバ用ガラス母材屈折率分布と外径とコ
ア径との比を示したものである。
【図3】 (a)は実施例2で使用された出発材の屈折
率分布とコア径と外径との比を例示したもの、(b)は
得られた光ファイバ用ガラス母材の屈折率分布と外径と
コア径との比を示したものである。
【図4】 本発明による光ファイバ用ガラス母材製造装
置の縦断面図を例示したものである。
【符号の説明】
1…光ファイバ用ガラス母材 2,5,7,9,13…酸水素火炎バーナー 3,17…排気口 4…コア 6,8,10,15…クラッド層 11…出発材 12…チャック 14…バーナー炎 15…光ファイバ用ガラス母材 16…第2クラッド層
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03B 8/04 C03B 20/00 C03B 37/00 - 37/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガス状ガラス原料化合物の酸水素火炎中
    での火炎加水分解により発生させたガラス微粒子を石英
    ガラス棒などの担体上に堆積させて、コア中心から第1
    クラッドの外側までの厚さがコア径の1.5〜8倍の厚
    さになるように第1クラッド層を設けた多孔質ガラス母
    材を、塩素ガスの存在下で脱水透明ガラス化して得た
    H基の含有量が0.1ppm以下の光ファイバ用透明石英
    ガラス母材を出発材とし、この出発材の外周部に原料ガ
    酸水素火炎中での火炎加水分解で発生させたガラス
    微粒子を当該酸水素火炎中で直接溶融して透明ガラス
    として堆積することを特徴とする光ファイバ用ガラス母
    材の製造方法。
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