JP3170957B2 - 有機薄膜発光素子 - Google Patents

有機薄膜発光素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は各種表示装置の発光源
として用いる有機薄膜発光素子に係り、特に素子の発光
層に用いられる発光物質に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のブラウン管に代わるフラットディ
スプレイの需要の急増に伴い、各種表示素子の開発及び
実用化が精力的に進められている。エレクトロルミネッ
センス素子(以下EL素子とする)もこうしたニ−ズに
即するものであり、特に全固体の自発発光素子として、
他のディスプレイにはない高解像度及び高視認性により
注目を集めている。現在、実用化されているものは、発
光層にZnS/Mn系を用いた無機材料からなるEL素
子である。しかるに、この種の無機EL素子は発光に必
要な駆動電圧が100V以上と高いため駆動方法が複雑
となり製造コストが高いといった問題点がある。また、
青色発光の効率が低いため、フルカラ−化が困難であ
る。これに対して、有機材料を用いた薄膜発光素子は、
発光に必要な駆動電圧が大幅に低減でき、かつ各種発光
材料の適用によりフルカラ−化の可能性を充分に持つこ
とから、近年研究が活発化している。
【0003】特に、電極/正孔注入層/発光層/電極か
らなる積層型において、発光物質にトリス(8−ヒドロ
キシキノリン)アルミニウムを、正孔注入物質に1,1
−ビス(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロ
ヘキサンを用いることにより、10V以下の印加電圧で
1000cd/m2 以上の輝度が得られたという報告が
なされて以来開発に拍車がかけられた(Appl.Phys.Let
t. 51,913,(1987))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この様に、有機材料を
用いた薄膜発光素子は低電圧駆動やフルカラ−化の可能
性等を強く示唆しているものの、性能面で解決しなけれ
ばならない課題が多く残されている。特に約1万時間の
長時間駆動に伴う特性劣化の問題は乗り越えなければな
らない課題である。また、フルカラー化におけるRGB
三原色の発光を可能にする発光材料の開発、また有機層
の膜厚が1μm以下であるために、成膜性が良好でピン
ホール等の電気的欠陥がなく、電子,正孔の輸送能力に
優れた有機材料の開発、有機層への電荷の注入性に優れ
る電極材料の選択等がある。
【0005】さらには量産性の観点から大量製造が可能
で安価な有機材料の開発や素子形成方法の改良等も重要
な課題である。この発明は上述の点に鑑みてなされその
目的は、成膜性に優れる新規な青色発光物質を開発する
ことにより、寿命安定性に優れる高輝度青色発光の有機
薄膜発光素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的はこの発明に
よれば正極と負極とからなる一対の電極と、その間に挟
まれた電荷注入層と発光層とを有し、電荷注入層は電子
注入層と正孔注入層の内の少なくとも一方からなり、電
子注入層は負極と発光層の間に挟まれ、正孔注入層は正
極と発光層の間に挟まれ、発光層は注入された電子と正
孔を再結合させて発光するものであり、下記一般式
(I)のピリダジン誘導体を含む層であるとすることに
より達成される。
【0007】
【化2】
【0008】〔式(I)中、R1 ,R2 ,R5 ,R6
それぞれアルキル基,アルコキシ基またはアリール基、
3 ,R4 は水素原子,アルキル基を表す。〕 一般式(I)で示されるピリダジン誘導体の具体例が以
下に示される。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
【作用】本発明者等は前記目的を達成するために各種物
質について多くの実験を重ねた結果、詳細は不明である
が前記一般式(I)で示されるピリダジン誘導体が有効
であることを見い出した。
【0012】
【実施例】次にこの発明の実施例について図面に基づい
て説明する。図1はこの発明の実施例に係る有機薄膜発
光素子を示す断面図である。図2はこの発明の異なる実
施例に係る有機薄膜発光素子を示す断面図である。図3
はこの発明のさらに異なる実施例に係る有機薄膜発光素
子を示す断面図である。1は絶縁性基板、2は正極、3
は正孔注入層、4は発光層、5は電子注入層、6は負極
である。
【0013】絶縁性基板1は素子の支持体でガラス,樹
脂等を用いる。発光面となるときは透明な材料を用い
る。正極2は金,ニッケル等の半透膜やインジウムスズ
酸化物(ITO),酸化スズ(SnO2 )等の透明導電
膜からなり抵抗加熱蒸着、電子ビ−ム蒸着、スパッタ法
により形成する。該正極2は、透明性を持たせるため
に、10〜200nmの厚さにすることが望ましい。
【0014】正孔注入層3は正孔を効率良く輸送し、且
つ注入することが必要で発光した光の発光極大領域にお
いてできるだけ透明であることが望ましい。成膜方法と
してスピンコ−ト、キャスティング、LB法、抵抗加熱
蒸着、電子ビ−ム蒸着等があるが抵抗加熱蒸着が一般的
である。膜厚は20ないし500nmであり、好適には
30ないし80nmである。正孔注入物質としてはヒド
ラゾン化合物,ピラゾリン化合物,スチルベン化合物,
アミン系化合物などが用いられる。代表的な正孔注入物
質が以下に示される。
【0015】
【化5】
【0016】発光層4は正孔注入層3または正極2から
注入された正孔と、負極6または電子注入層5より注入
された電子の再結合により効率良く発光を行う。成膜方
法はスピンコ−ト、キャスティング、LB法、抵抗加熱
蒸着、電子ビ−ム蒸着等があるが抵抗加熱蒸着が一般的
である。膜厚は20ないし500nmであるが好適には
30ないし80nmである。
【0017】電子注入層5は電子を効率良く発光層に注
入することが望ましい。成膜方法はスピンコ−ト、キャ
スティング、LB法、抵抗加熱蒸着、電子ビ−ム蒸着等
があるが抵抗加熱蒸着が一般的である。膜厚は20ない
し500nmであるが好適には30ないし80nmであ
る。電子注入物質としてはオキサジアゾール誘導体,ペ
リレン誘導体などが用いられる。以下に代表的な電子注
入物質が示される。
【0018】
【化6】
【0019】負極6は電子を効率良く有機層に注入する
ことが必要である。成膜方法としては抵抗加熱蒸着,電
子ビーム蒸着,スパッタ法が用いられる。負極6用材料
としては、仕事関数の小さいMg,Ag,In,Ca,
Al等およびこれらの合金,積層体等が用いられる。 参考例 例えば一般式(I)のうち化学式(I−2)に示すピリ
ダジン誘導体は下記(II)式に示す化合物と下記(III)
式に示す化合物とを触媒の存在下、炭酸カリウムK2CO3
等と共に有機溶媒中で加熱還流することにより合成され
る。
【0020】
【化7】
【0021】実施例1 膜厚約150nmのITOを設けた50mm角のガラス
を基板とし該基板を抵抗加熱蒸着装置内に載置し、前記
図1に示すように正孔注入層、発光層と順次成膜した。
成膜に際して、真空槽内圧は8×10-4Paとした。正
孔注入層には前記化学式(IV−1)に示される化合物を
用い60nm厚さに形成した。続けて発光層として前記化
学式(I−2)に示されるピリダジン誘導体を用いボ−
ト温度約240ないし270℃にて加熱し、成膜速度を
約0.1nm/sとして60nm厚さに形成した。この
後、基板を真空槽から取り出し、直径5mmドットパタ
−ン用ステンレス製マスクを取りつけ、新たに抵抗加熱
蒸着装置内に載置し負極6として Mg/In(10:
1の重量比率)を形成した。
【0022】上記実施例1において、発光層は均一な蒸
着膜となり、かつ該直径5mmの有機薄膜発光素子に直
流電圧を印加したところ、青緑色(発光中心波長480
nm)の均一な発光が得られた。また発光輝度105c
d/cm2 で120h以上の安定性を確認した。 実施例2 膜厚約150nmのITOを設けた50mm角のガラス
を基板とし該基板を抵抗加熱蒸着装置内に載置し、前記
図2に示すように発光層、電子注入層と順次成膜した。
成膜に際して、真空槽内圧は8×10-4Paとした。発
光層には前記化学式(I−2)に示されるピリダジン誘
導体を用いボ−ト温度約240ないし270℃にて加熱
し、成膜速度を約0.1nm/sとして60nm厚さに
形成した。続けて電子注入層として化学式(V−4)に
示される化合物を用い60nm厚さに形成した。この後
基板を真空槽から取り出し、直径5mmドットパタ−ン
用ステンレス製マスクを取りつけ、新たに抵抗加熱蒸着
装置内にセットし負極6として Mg/In(10:1
の重量比率)を形成した。
【0023】上記実施例2において、該ピリダジン誘導
体からなる発光層は均一な蒸着膜となり、かつ該直径5
mmの有機発光素子に直流電圧を印加したところ、青緑
色(発光中心波長480nm)の均一な発光が得られ
た。また発光輝度70cd/cm2 で100h以上の安
定性を確認した。 実施例3 膜厚約150nmのITOを設けた50mm角のガラス
を基板とし該基板を抵抗加熱蒸着装置内に載置し、前記
図3に示すように正孔注入層、発光層、電子注入層と順
次成膜した。真空槽内圧は8×10-4Paとした。正孔
注入層には前記化学式(IV−1)に示される化合物を用
い60nm厚さに形成した。続いて発光層として化学式
(I−2)で示されるピリダジン誘導体を用いボ−ト温
度約240ないし270℃にて加熱し、成膜速度を約
0.1nm/sとして60nm厚さに形成した。さらに
続けて電子注入層として前記化学式(V−4)で示され
る化合物をを用い、60nm厚さに形成した。この後該
基板を真空槽から取り出し、直径5mmのドットパタ−
ンからなるステンレス製マスクを取りつけ、新たに抵抗
加熱蒸着装置内に載置し負極6としてMg/In(1
0:1の比率)を形成した。
【0024】前記実施例3において、該ピリダジン誘導
体からなる発光層は均一な蒸着膜となり、かつ該直径5
mmの有機薄膜発光素子に直流電圧を印加したところ、
青緑色(発光中心波長480nm)の均一な発光が得ら
れた。また発光輝度165cd/cm2 で150h以上
の安定性を確認した。 実施例4 化学式(I−9)で示されるピリダジン誘導体を用いる
他は実施例2と同様にして有機薄膜発光素子を作製し
た。
【0025】実施例4において、該ピリダジン誘導体か
らなる発光層は均一な蒸着膜となり、かつ該直径5mm
の有機薄膜発光素子に直流電圧を印加したところ、青緑
色(発光中心波長490nm)の均一な発光が得られ
た。また発光輝度60cd/cm2 で100h以上の安
定性を確認した。 実施例5 化学式(I−4)で示されるピリダジン誘導体を用いる
他は実施例3と同様にして有機薄膜発光素子を作製し
た。
【0026】実施例5において、該ピリダジン誘導体か
らなる発光層は均一な蒸着膜となり、かつ該直径5mm
の有機薄膜発光素子に直流電圧を印加したところ、青緑
色(発光中心波長485nm)の均一な発光が得られ
た。また発光輝度95cd/cm2 で120h以上の安
定性を確認した。
【0027】
【発明の効果】この発明によれば正極と負極とからなる
一対の電極と、その間に挟まれた電荷注入層と発光層と
を有し、電荷注入層は電子注入層と正孔注入層の内の少
なくとも一方からなり、電子注入層は負極と発光層の間
に挟まれ、正孔注入層は正極と発光層の間に挟まれ、発
光層は注入された電子と正孔を再結合させて発光するも
のであり、下記一般式(I)のピリダジン誘導体を含む
層であるとするので、成膜性が良好で寿命安定性に優れ
る高輝度青色発光の有機薄膜発光素子が得られる。
【0028】
【化8】
【0029】〔式(I)中、R1 ,R2 ,R5 ,R6
それぞれアルキル基,アルコキシ基またはアリール基、
3 ,R4 は水素原子,アルキル基を表す。〕
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例に係る有機薄膜発光素子を示
す断面図
【図2】この発明の異なる実施例に係る有機薄膜発光素
子を示す断面図
【図3】この発明のさらに異なる実施例に係る有機薄膜
発光素子を示す断面図
【符号の説明】
1 絶縁性透明基板 2 正極 3 正孔注入層 4 発光層 5 電子注入層 6 負極

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】正極と負極とからなる一対の電極と、その
    間に挟まれた電荷注入層と発光層とを有し、 電荷注入層は電子注入層と正孔注入層の内の少なくとも
    一方からなり、 電子注入層は負極と発光層の間に挟まれ、 正孔注入層は正極と発光層の間に挟まれ、 発光層は注入された電子と正孔を再結合させて発光する
    ものであり、下記一般式(I)のピリダジン誘導体を含
    む層であることを特徴とする有機薄膜発光素子。 【化1】 〔式(I)中、R1 ,R2 ,R5 ,R6 はそれぞれアル
    キル基,アルコキシ基またはアリール基、R3 ,R4
    水素原子,アルキル基を表す。〕
  2. 【請求項2】請求項1記載の素子において、R1
    2 ,R5 ,R6 はそれぞれp−トリル基、R3 ,R4
    は水素原子であることを特徴とする有機薄膜発光素子。
  3. 【請求項3】請求項1記載の素子において、R1
    2 ,R5 ,R6 はそれぞれCH3 OC6 4 基、
    3 ,R4 は水素原子であることを特徴とする有機薄膜
    発光素子。
  4. 【請求項4】請求項1記載の素子において、R1
    2 ,R5 ,R6 はそれぞれC2 5 6 4 基、
    3 ,R4 は水素原子であることを特徴とする有機薄膜
    発光素子。
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