JP3168725B2 - 積層ポリエステルフイルム - Google Patents

積層ポリエステルフイルム

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JP3168725B2
JP3168725B2 JP26507292A JP26507292A JP3168725B2 JP 3168725 B2 JP3168725 B2 JP 3168725B2 JP 26507292 A JP26507292 A JP 26507292A JP 26507292 A JP26507292 A JP 26507292A JP 3168725 B2 JP3168725 B2 JP 3168725B2
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尚 三村
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は積層ポリエステルフイル
ムに関し、更に詳しくは易接着性、易滑性、耐ブロッキ
ング性、帯電防止性に優れた積層ポリエステルフイルム
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】2軸配向ポリエステルフイルムは、その
優れた機械特性、電気特性、寸法安定性、透明性、耐熱
性などから磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各
種写真用途、グラフィツクア−ツ用途などの多くの分野
の基材フイルムとして使用されている。しかし反面、2
軸配向ポリエステルフイルムは表面が高度に結晶配向し
ているため接着性に乏しい、摩擦による静電気を帯びや
すいなどの欠点がある。これを改良するため従来多くの
提案がなされてきた。例えば接着性を付与するため各種
ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外
線照射処理などの物理的方法やアルカリ、トリクロロ酢
酸、アミン、フェノ−ルなどによる化学的処理、あるい
はこれらを併用した処理方法などが試みられているが、
いずれも十分な接着性が得られなかったり、経時的に処
理効果が薄れるなどの欠点があった。
【0003】一方ポリエステルフイルムの表面にプライ
マ−層を設けることによる易接着処理が近年盛んに行な
われており、特にポリエステルフイルム製造工程中で一
気にプライマ−処理を行なう方法(インラインコ−ト
法)が工程簡略化や製造コスト、環境保全などの点で有
力視され盛んに実施されている。これに使用されるプラ
イマ−層として易接着性を目的とした有機スルホン酸塩
基含有ポリエステル樹脂(特開昭58−1727号公
報)、有機スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂とアニ
オン性ウレタン樹脂の混合物(特開昭58−78761
号公報)、などがある。また易滑性の付与を目的として
特定のアクリル樹脂を塗布し延伸したもの(特開昭61
−204241号公報、特開昭61−204242号公
報)がある。また易接着性と易滑性の両立を目的として
スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂と水に溶解あるい
は分散するアクリル樹脂の混合物を塗布したもの(特開
昭58−124651号公報)がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし前述した従来の
技術には次のような問題がある。すなわちスルホン酸塩
基含有ポリエステルを易接着層として用いた場合には初
期には所望の接着性が得られたとしても易接着層の耐湿
性や耐水性が不足するし、高湿度下でロ−ル状に巻いて
保管した場合、ブロッキングし易いという問題や高湿下
での易滑性が不足するという欠点がある。これはウレタ
ン樹脂やアクリル樹脂を混合した塗布膜においても同様
である。
【0005】一方ポリエステルフイルムはフイルム同士
の摩擦によって極めて帯電しやすい。また前記スルホン
酸塩基を導入したポリエステル樹脂層はポリエステルフ
イルムとの摩擦において著しく負に帯電しやすい。通
常、易接着層上に他の樹脂層(例えばインキ、磁性塗料
など)を設ける工程においてはロ−ル状に巻かれたフイ
ルムを巻だし、シリコンや金属などのロ−ルと接触しな
がら搬送されるがこの工程中ではポリエステルフイルム
は負に帯電されやすくしばしば静電吸着による塵埃の付
着が問題になる。従ってポリエステルフイルムとの摩擦
帯電においては0〜弱正帯電するのが好ましい。
【0006】本発明はこれらの欠点を解消せしめ接着性
に優れ、高湿下でのブロッキングがなく、ポリエステル
フイルムとの摩擦帯電においても0〜弱正帯電し、かつ
易滑性に優れた積層ポリエステルフイルムを提供するも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、ポリエステルフイルムの少なくとも片面
に、スルホン酸金属塩基を有するポリエステル樹脂層を
設け、該層の上にアクリル樹脂層が積層された積層ポリ
エステルフイルムであって、前記2つの層はポリエステ
ルフイルムの結晶配向が完了する前に塗布され、少なく
とも1方向に延伸された後、ポリエステルフィルムの結
晶配向を完了せしめることにより得られたものであるこ
とを特徴とする積層ポリエステルフイルムをその骨子と
するものである。
【0008】本発明でいうポリエステルフイルムのポリ
エステルとはエステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする
高分子の総称であって、特に好ましいポリエステルとし
てはポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレン2,6
ナフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−トなどであり
これらの中でも品質、経済性などを総合的に勘案すると
ポリエチレンテレフタレ−トが最も好ましい。従って以
後はポリエチレンテレフタレ−ト(以下ポリエチレンテ
レフタレ−トをPETと略省する。)をポリエステルの
代表例として記述を進める。
【0009】PETとは80モル%以上、好ましくは9
0モル%以上がエチレンテレフタレ−トを繰り返し単位
とするものであるが、この限定範囲内で他のジカルボン
酸成分、ジオ−ル成分を共重合しても良い。またこのP
ET中に公知の添加剤、例えば耐熱安定剤、耐酸化安定
剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、
染料、有機または無機の微粒子、帯電防止剤、核剤など
を配合しても良い。上述したPETの極限粘度(25℃
のオルソクロロフェノ−ル中で測定)は0.40〜1.
20dl/g、好ましくは0.50〜0.80dl/g
の範囲にあるものが本発明の内容に適したものである。
【0010】上記PETを使用したPETフイルムは塗
布層が積層された状態においては、2軸配向されたもの
であり、2軸配向PETフイルムとは、無延伸状態のP
ETシ−トまたはフイルムを長手方向および幅方向にそ
れぞれ約2.5〜5.0倍程度延伸され、その後150
〜250℃で熱処理を施し、結晶配向を完了させたもの
であり、広角X線回折で2軸配向パタ−ンを示すものを
いう。PETフイルムの厚みは特に限定されず用途に応
じて適宜選択される。
【0011】本発明においてはPETフイルムの同一面
側に異なる2種の樹脂層を積層することを特徴とする。
すなわち第1層としてスルホン酸金属塩基を有するポリ
エステル樹脂層を設け、該層の上にアクリル樹脂層が積
層されたものである。
【0012】ここでスルホン酸金属塩基含有ポリエステ
ルとは、エステル形成性スルホン酸金属塩基含有化合物
を共重合成分として有するポリエステルのことをいう。
エステル形成性スルホン酸金属塩基含有化合物としては
スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、2−ス
ルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スル
ホナフタレン−2,6−ジカルボン酸などのアルカリ金
属塩、およびこれらのエステル形成性誘導体などを挙げ
ることができる。これらの内、PETフイルムとの密着
性の点で5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩が好ま
しい。エステル形成性スルホン酸金属塩基含有化合物の
共重合量は全ジカルボン酸成分中の5〜30モル%、好
ましくは8〜20モル%、更に好ましくは10〜15モ
ル%であるのがPETフイルムとの密着性、熱水への溶
解性などの点で望ましい。
【0013】エステル形成性スルホン酸金属塩基含有化
合物と共重合される他の組成物としては、各種ジカルボ
ン酸およびそのエステル形成性誘導体、ジオ−ルを挙げ
ることができる。ジカルボン酸およびそのエステル形成
性誘導体としては芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボ
ン酸、脂環族ジカルボン酸およびそれらのエステル形成
性誘導体であり、具体的な例を挙げれば、テレフタル
酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカ
ルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−
ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ア
ゼライン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ε−オキシカ
プロン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリッ
ト酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げら
れる。またジオ−ル成分としてはエチレングリコ−ル、
プロピレングリコ−ル、ブチレングリコ−ル、ヘキサメ
チレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,1−
シクロヘキサンジメタノ−ル、1,4−シクロヘキサン
ジメタノ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレング
リコ−ル、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロ
パン、ポリエチレングリコ−ル、ポリテトラメチレング
リコ−ルなどを挙げることができる。これらの酸成分、
ジオ−ル成分は任意の比率で共重合しても良いが、重合
ポリマの取り扱い性の点からテレフタル酸が酸成分の5
0モル%以上、好ましくは65モル%以上、更に好まし
くは75モル%以上とするのが望ましい。また上記ポリ
エステルを骨格とし、側鎖にアクリル系モノマをグラフ
ト共重合させたものなども用いることができる。
【0014】次にスルホン酸金属塩基含有ポリエステル
樹脂層の上に設けるアクリル樹脂層について説明する。
本発明に用いるアクリル樹脂は公知の方法によって製造
される各種共重合体を使用することができるが、好まし
くはポリマ構造中に少なくとも1種以上の架橋性官能基
を有するものが耐ブロッキング性、易滑性の点で好まし
い。アクリル樹脂を構成するモノマ成分としてはアルキ
ルアクリレ−ト、アルキルメタクリレ−ト(アルキル基
としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプ
ロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル
基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル
基、シクロヘキシル基など)を基本骨格とし、更に架橋
性官能基を付与するため以下のモノマと共重合されたも
のが好ましい。このような官能基としてはカルボキシル
基、メチロ−ル基、酸無水物基、スルホン酸基、アミド
基またはメチロ−ル化されたアミド基、アミノ基(置換
アミノ基を含む)、あるいはアルキロ−ル化されたアミ
ノ基、水酸基、エポキシ基などを例示することができ
る。上記官能基を有するモノマを例示するとアクリル
酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル
酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン
酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメ
タクリルアミド、メチロ−ル化アクリルアミド、メチロ
−ル化メタクリルアミド、ジエチルアミノエチルビニル
エ−テル、2−アミノエチルビニルエ−テル、3−アミ
ノプロピルビニルエ−テル、2−アミノブチルビニルエ
−テル、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、および
上記アミノ基をメチロ−ル化したもの、β−ヒドロキシ
エチルアクリレ−ト、β−ヒドロキシエチルメタクリレ
−ト、β−ヒドロキシプロピルアクリレ−ト、β−ヒド
ロキシプロピルメタクリレ−ト、β−ヒドロキシビニル
エ−テル、5−ヒドロキシペンチルビニルエ−テル、6
−ヒドロキシヘキシルビニルエ−テル、ポリエチレング
リコ−ルモノアクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルモ
ノメタクリレ−ト、グリシジルアクリレ−ト、グリシジ
ルメタクリレ−トなどを挙げることができるが必ずしも
これに限定されるものではない。さらに上記以外に次の
ような化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニ
トリル、スチレン類、ブチルビニルエ−テル、マレイン
酸およびイタコン酸のモノあるいはジアルキルエステ
ル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデ
ン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、
ビニル基を有するアルコキシシランなどを共重合成分と
しても良い。
【0015】本発明に用いるアクリル樹脂は上記基本骨
格を形成するモノマおよび架橋性官能基含有モノマなど
を任意の比率で共重合したものを用いることができるが
本発明の効果をより顕著に発現させるにはアクリル樹脂
のガラス転移点が20℃以上、好ましくは40℃以上で
あり、分子量が10万以上好ましくは30万以上とする
のが望ましい。また架橋性官能基を架橋させる目的で熱
以外に官能基と反応する架橋剤、例えばメラミン樹脂、
イソシアネ−ト基を有するポリマなどを添加するとより
好ましい。
【0016】本発明においてはアクリル樹脂層は平滑な
均一塗膜でも良いが、アクリル樹脂層によって表面に微
細な突起を形成させることにより本発明の効果をより顕
著に発現させることができるので特に好ましい。このよ
うな突起は架橋性官能基を有するアクリル樹脂またはこ
れに架橋剤を併用した塗剤をポリエステルフィルムに塗
布後乾燥し、少なくとも1方向に延伸することにより発
現させることができる。上記アクリル樹脂は水分散体で
あるのが好ましく、樹脂の平均粒子径が5nm〜500
nmのものが好適に使用できる。
【0017】上記2つの層の積層厚みは特に限定されな
いが、通常ポリエステル樹脂層が0.01〜0.5μ
m、好ましくは0.05〜0.2μmである。またアク
リル樹脂層は突起形成の点から、0.003〜0.1μ
m、好ましくは0.007〜0.05μmが望ましい。
【0018】本発明においては該塗膜は基材のポリエス
テルフイルムの結晶配向が完了する前に塗布され、その
後、少なくとも1方向に延伸された後、PETフイルム
の結晶配向を完了させる方法によって製造されるもので
ある。すなわち無延伸あるいは長手方向に延伸された基
材PETフイルムの片面あるいは両面にコロナ放電処理
を施し、第1層目のスルホン酸金属塩基を有するポリエ
ステル樹脂の水性液を塗布する。その後塗布面を120
℃以下の温度で乾燥させた後、必要に応じてコロナ放電
処理を施し、第2層目のアクリル樹脂の水分散体を塗布
する。塗布後連続的にクリップで把持しながら80〜1
30℃の熱風ゾ−ンに導き乾燥後、あるいは乾燥しつつ
幅方向に延伸し、更に160〜250℃の熱風ゾ−ンに
導き、約1〜30秒の熱処理を行ない、結晶配向を完了
させる方法である。また幅方向の延伸後であって熱処理
前の段階において更に長手方向に1.1〜1.8倍の延
伸を施すことにより表面の突起がさらに顕在化し、易滑
性、耐ブロッキング性が向上するので好ましい。この方
法を用いることにより、基材PETフイルムとの密着
性、アクリル樹脂層の微細な突起が形成され、本発明の
目的をより効果的に達成できるものである。該方法以外
の方法、例えば2軸配向PETフイルム上に通常の塗布
方法で上記2層を積層した場合には、基材フイルムとの
密着性や第1層と第2層の密着性が不足したり、耐ブロ
ッキング性、易滑性の点で不十分となる。
【0019】突起の形状、密度については特に限定しな
いが平均突起径(長手方向と幅方向の突起の長さの平均
値)が0.001〜1μm、好ましくは0.005〜
0.2μmであるのが好ましい。突起密度は1×105
個/mm2 以上、好ましくは1×106 /mm2 以上、
更に好ましくは1×107 個/mm2 以上であるのが表
面の易滑性の点で望ましい。突起の高さは0.001μ
m〜0.5μm、好ましくは0.002μm〜0.2μ
mであるのが望ましい。
【0020】上記第1層(スルホン酸金属塩基を有する
ポリエステル樹脂層)および第2層(アクリル樹脂層)
中には本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添
加剤、例えば耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、
紫外線吸収剤、有機の易滑剤、例えばワックス、有機、
無機の微粒子、帯電防止剤、および架橋剤などを添加し
ても良い。特にアクリル樹脂層への架橋剤の添加は突起
形成の点で好ましい。架橋剤の具体例を挙げればメチロ
−ル化、あるいはアルキロ−ル化された尿素系、メラミ
ン系、アクリルアミド系、ポリアミド系、およびエポキ
シ化合物、ブロックされたイソシアネ−ト化合物などが
ある。塗布の方法は公知の塗布方法、例えばリバ−スコ
−ト法、グラビアコ−ト法、ロッドコ−ト法、ダイコ−
ト法など任意の方法を用いることができる。
【0021】次に本発明の積層ポリエステルフイルムの
製造方法の一例について説明するが当然これに限定され
るものではない。実質的に粒子を含有しないPETのペ
レットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約2
80℃でシ−ト状に溶融押出し、冷却固化せしめて未延
伸PETシ−トを作成する。このシ−トを80〜120
℃に加熱したロ−ルで長手方向に2.5〜5倍延伸して
1軸配向PETフイルムを得る。このフイルムの片面に
コロナ放電処理を施し、所定の濃度に希釈したスルホン
酸金属塩基含有ポリエステル樹脂の水溶液を塗布する。
塗布後連続的に80〜120℃に加熱された熱風ゾ−ン
に導き水分を十分に乾燥除去する。このフイルムの塗布
面に必要に応じてコロナ放電処理を施し、所定の濃度に
希釈されたアクリル樹脂の水分散体を塗布する。塗布後
フイルムの端部をクリップで把持して80〜140℃に
加熱された熱風ゾ−ンに導き幅方向に2.5〜5.0倍
に延伸する。引続き160℃〜240℃の熱処理ゾ−ン
に導き、1〜10秒間の熱処理を行ない、結晶配向を完
了させる。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向ある
いは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施しても良い。
【0022】かくして得られた積層ポリエステルフイル
ムは易接着性、易滑性、帯電防止性に優れたものであ
り、磁気記録材料用ベ−スフイルム、写真用、製版用な
どに好適に使用できる。
【0023】
【特性の測定方法および効果の評価方法】本発明におけ
る特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりで
ある。
【0024】(1)塗布層の厚み 日立製作所製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、積
層フイルムの塗布層の断面を観察した写真から求めた。
厚みは測定視野内の平均値とし、30個の平均値とし
た。
【0025】(2)易滑性 塗布面同士を重ね合わせASTM−D−1894−63
に準じて静摩擦係数、動摩擦係数を測定した。
【0026】(3)帯電特性 塗布層のない厚さ50μmのPETフイルムを金属ドラ
ムに10層巻き付け1分間に1000回転させながら積
層ポリエステルフイルムの積層面を5秒間接触摩擦させ
た。この時、積層フイルムの一端には250gの荷重を
かけた。接触摩擦5秒後に積層フイルムをドラムから離
し、すぐに静電気測定機により積層面に蓄積した電位を
測定した。
【0027】(4)接着性−1(基材フイルムと積層膜
との密着性) 積層膜に1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチ
バン(株)製セロハンテ−プをその上に貼付け指で強く
押し付けた後、180度方向に急速に剥離し、残存した
個数で判定した。
【0028】(5)接着性−2(磁性塗料接着性) ダイフェラコ−トCAD4301(大日精化工業(株)
製)100重量部にスミジュ−ルN75(住友バイエル
(株)製)1重量部を加え固形分濃度20重量%の塗料
を作成し、バ−コ−タ−を用いて、乾燥後の厚みが約5
μmになるように塗布し、100℃で5分間乾燥した。
接着性は上記(4)と同様の方法によった。
【0029】(6)耐ブロッキング性 積層ポリエステルフイルムの積層膜面同士を3cm×4
cmの面積で重ね合わせ、500g/12cm2 の荷重
をかけて50℃85%RH中に24時間放置した後、重
ね合わせ部の剪断剥離応力を引張速度200mm/分で
測定した。
【0030】(7)突起の個数、形状、高さ 明石製作所製走査型電子顕微鏡DS−130型を使用し
て、1〜3万の倍率で写真撮影し粒子突起の数をカウン
トした。突起の形状(径)は写真から実測し、測定個数
100個の平均値とした。突起高さは小坂製作所製非接
触三次元微細形状測定機ET−10HK型を用いて測定
し、測定点30個の平均値とした。
【0031】
【実施例】次に実施例に基づいて本発明を説明するが必
ずしもこれに限定されるものではない。
【0032】実施例1 実質的に粒子を含まないPET(極限粘度0.65dl
/g)ペレットを十分に真空乾燥した後、280℃の加
熱された押出機に供給し、T字型口金よりシ−ト状に押
出した。このシ−トを表面温度50℃の鏡面ドラムに巻
き付けて冷却固化せしめて未延伸PETフイルムを作成
した。このPETフイルムを95℃の加熱ロ−ル群を通
過させながら長手方向に3.5倍延伸し、1軸配向フイ
ルムとした。このフイルムの片面にコロナ放電処理を施
し、以下に示すA液を結晶配向完了後において積層厚み
が0.05μmになるように塗布した。塗布後連続的に
85℃の熱風で乾燥し、十分に水分を除去した後、A液
塗布乾燥面にコロナ放電処理を施し下記B液を結晶配向
完了後において積層厚みが0.01μmになるように塗
布した。塗布後、連続的に端部をクリップで把持しなが
ら110℃の加熱ゾ−ンに導き乾燥、余熱を経て幅方向
に4.0倍延伸し、更に225℃の加熱ゾ−ンで3秒間
熱処理を施し、基材PETフイルム厚みが10μm、積
層厚みがA/B:0.05/0.01μmの2層積層2
軸配向PETフイルムを得た。
【0033】〔A液組成〕 テレフタル酸/5−ソディウムスルホイソフタル酸/エ
チレングリコール(85/15/100モル%)より成
るポリエステル共重合体を90℃の熱水中で攪拌しなが
ら溶解し、固形分濃度2.0重量%の塗布液を作成し
た。
【0034】「B液組成」メチルメタクリレ−ト/エチ
ルアクリレ−ト/アクリル酸/N−メチロ−ルアクリル
アミド(62/35/2/1重量%)より成るアクリル
共重合水分散体を水で希釈して固形分濃度0.5重量%
の塗布液を作成した。
【0035】上記により得られた積層ポリエステルフイ
ルムの特性は表1に示すように接着性、易滑性、耐ブロ
ッキング性、帯電特性とも良好であった。
【0036】比較例1 実施例1と同様の方法でA液のみを塗布した積層ポリエ
ステルフイルムを作成した。この積層ポリエステルフイ
ルムは負側に大きく帯電し、耐ブロッキング性、易滑性
とも不十分なものであった。
【0037】比較例2 実施例1と同様の方法でB液のみを塗布した積層ポリエ
ステルフイルムを作成した。この積層ポリエステルフイ
ルムは正側に大きく帯電した。
【0038】比較例3 実施例1において積層膜をまったく設けないポリエステ
ルフイルムを作成した。このフイルムは上塗り塗料との
密着性がまったくなく、易滑性も著しく劣るものであっ
た。
【0039】比較例4 積層膜のない2軸配向PETフイルムの片面にコロナ放
電処理を施し、実施例1のA液を塗布し120℃で3分
乾燥後、実施例1のB液を塗布し120℃で3分乾燥さ
せ積層ポリエステルフイルムを作成した。この積層ポリ
エステルフイルムは上塗り層との密着性が不十分であ
り、易滑性も不足するものであった。
【0040】比較例5 実施例1と同様の方法でA液とB液を逆にして積層した
積層ポリエステルフイルムを作成した。このフイルムは
上塗り層との密着性には優れるものの易滑性、耐ブロッ
キング性、が劣るものであった。
【0041】実施例2 実施例1のB液にアクリル樹脂固形分に対し10重量%
のヘキサメチロ−ル化メラミン樹脂を添加し、実施例1
と同様にして積層ポリエステルフイルムを作成した。こ
のフイルムは表面に極めて微細な突起が形成され表2の
ごとく優れた特性を有するものであった。
【0042】実施例3 実施例1において幅方向に延伸後、更に長手方向に10
0℃のロ−ル群により、1.3倍の延伸を行なった後、
熱処理を施し積層ポリエステルフイルムを作成した。こ
のフイルムの積層面には極めて微細な突起が形成されて
おり、表2に示すように優れた特性を示すものであっ
た。
【0043】
【表1】
【表2】
【0044】
【発明の効果】本発明はポリエステルフイルムの少なく
とも片面に、スルホン酸金属塩基を有するポリエステル
樹脂層を設け、該層の上にアクリル樹脂層が積層された
積層ポリエステルフイルムであって、前記2つの層はポ
リエステルの結晶配向が完了する前に塗布され、少なく
とも1方向に延伸された後、結晶配向を完了せしめるこ
とにより得られたものであって、以下のような優れた効
果を有するものである。
【0045】(1)PETとの摩擦帯電において0〜弱
正帯電となり、従来の単にスルホン酸金属塩基含有ポリ
エステルやアクリル樹脂を被覆したものに比べ帯電しに
くいため上塗り層塗布工程での塵埃の付着や溶剤引火な
ど静電気による障害が少ない。
【0046】(2)基材フイルムや上塗り層の磁性塗料
との密着性に優れる。
【0047】(3)易滑性に優れ、高湿下での耐ブロッ
キング性が良好である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B29L 9:00 (56)参考文献 特開 昭58−124651(JP,A) 特開 昭60−63161(JP,A) 特開 平2−3307(JP,A) 特開 昭63−46237(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 C08J 7/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステルフイルムの少なくとも片面
    に、スルホン酸金属塩基を有するポリエステル樹脂層を
    設け、該層の上にアクリル樹脂層が積層された積層ポリ
    エステルフイルムであって、前記2つの層はポリエステ
    ルフイルムの結晶配向が完了する前に塗布され、少なく
    とも1方向に延伸された後、ポリエステルフィルムの結
    晶配向を完了せしめることにより得られたものであるこ
    とを特徴とする積層ポリエステルフイルム。
  2. 【請求項2】 アクリル樹脂層が、微細な突起を有する
    層であることを特徴とする請求項1に記載の積層ポリエ
    ステルフイルム。
  3. 【請求項3】 アクリル樹脂層が、架橋性官能基を有す
    るアクリル樹脂より形成された層であることを特徴とす
    る請求項1または2に記載の積層ポリエステルフイル
    ム。
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