JP3166663B2 - 車両用変速機の変速制御装置 - Google Patents

車両用変速機の変速制御装置

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JP3166663B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用車やトラック
等の走行車両に搭載される車両用変速機の変速制御装置
に関し、特にハイドロメカニカルトランスミッション
(Hydro MechanicalTransmission :以下、「HMT」
という)といわれる無段変速機を備えたものの技術分野
に属する。このHMTは、流体の静圧エネルギーを利用
するハイドロスタティックトランスミッション(Hydro
Static Transmission :以下「HST」という)と、機
械式トランスミッション(Mechanical Transmission :
以下「MT」という)とを組み合わせて無段階の変速を
行うようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の無段変速機として
は、米国特許第4,341,131号や特開昭54−3
5560号公報により提案されたものが知られている。
これは、図1に示すように、可変斜板(51b)を有す
る油圧ポンプ(51)及び固定斜板を有する油圧モータ
(59)を閉回路(53)により接続したHST
(5′)と、第1及び第2の2つの遊星歯車機構(4
1,42)及びこの各遊星歯車機構(41,42)の作
動条件を切換えるための第1〜第3の3つのクラッチ機
構(44,45,46)を備えたMT(4′)とを組み
合わせたものである。そして、上記2つの遊星歯車機構
(41,42)の各歯数比の関係を特定条件に設定し、
かつ、3つの運転モードに分けて運転する場合の各モー
ド切換の際に、上記可変斜板(51b)を上記固定斜板
と同じ斜板角度(最大斜板角度)とする等の条件の下で
制御を行うものである。
【0003】通常、このようなHMT(2′)において
は、図2に示すように、上記油圧ポンプ(51)の可変
斜板(51b)がHMT(2′)の運転モードに応じて
第1〜第3の3つの運転モードに分けて変更制御され、
これにより、エンジン等からHMT(2′)の入力軸
(21)に入力される一定回転数の回転が、HMT
(2′)の出力軸(22)に対し回転数を無段階かつ連
続的に変化させて伝達されるようにシステムが設計され
ている。この場合、上記油圧ポンプ(51)の可変斜板
(51b)は、同図に二点鎖線で示すように、第1〜第
3モードの3つの各運転モードにおいて、最大斜板角度
位置(例えば斜板角度17度)と中立位置(斜板角度0
度)との間で斜板角度が一定の増減変更比率で徐々に増
減変更制御される。一方、上記油圧モータ(59)の斜
板は固定斜板とされて、その斜板角度は、同図に一点鎖
線で示すように常に上記最大斜板角度になるように固定
されている。そして、上記可変斜板(51b)が最大斜
板角度になって固定斜板と同じ傾斜角度になる変速比
(同図にI及びIIで示す変速比)において、第1モード
から第2モードへの切換え、及び、第2モードから第3
モードへの切換えが行われるようになっている。
【0004】一方、上記MT(4′)では、上記第1モ
ードで第1クラッチ機構(44)のみが、また第2モー
ドで第2クラッチ機構(45)のみが、さらに第3モー
ドで第3クラッチ機構(46)のみがそれぞれ接続状態
にされるようになっており、各モード切換えの際に各ク
ラッチ機構(44,45,46)の断続が切換えられる
ようになっている。そして、この各クラッチ機構(4
4,45,46)の切換前後で連続した変速比で回転伝
達されるように、上記第1及び第2の遊星歯車機構(4
1,42)の各歯数比が次の特定関係を有するように条
件付けられている。すなわち、上記第1遊星歯車機構
(41)の太陽歯車(41a)と内歯歯車(41c)と
の間の歯数比をYとし、第2遊星歯車機構(42)の太
陽歯車(42a)と内歯歯車(42c)との間の歯数比
をXとした場合に、 Y=X+1 の関係が成立するよ
うに条件付けられている(図3参照)。なお、図3は、
横軸に上記第1及び第2の両遊星歯車機構(41,4
2)の各要素の歯数比を示し、また、縦軸にそれらの各
要素のそれぞれの回転数を示したHMT(2′)の遊星
速度線図であり、第1モードの範囲が矢印M1で、第2
モードの範囲が矢印M2で、第3モードの範囲が矢印M
3でそれぞれ示されている。
【0005】そして、上記従来のHMT(2′)を搭載
した車両では、車両の減速時にも加速時と同様に車速の
変化に応じて斜板角度の増減変更とモード切換えとを行
ってHMT(2′)の変速比を連続して無段階に変更さ
せるようにしており、これにより、車速が低下してもエ
ンジン回転数を略一定に保ってエンジンブレーキを有効
利用し得るようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
車両用変速機の変速制御装置においては、車両の急減速
時にその車速の急速な変化に斜板角度の増減変更がつい
ていけなくなって、変速比の変更が車速の低下に追従し
きれないという問題がある。特に、車両の運転効率の向
上のために4つ以上の運転モードを有するようにした所
謂多モード型のHMTにおいては、車速の低下に対する
変速比の追従遅れが著しい。
【0007】すなわち、例えば5つの運転モードを有す
るようにした5モード型のHMT(図15参照)におい
ては、高変速比域の第5モードから低変速比域の第1モ
ードまでの間で液圧ポンプ(51)の可変斜板(51
b)を2往復以上も作動させなくてはならない(図16
参照)。そして、上記可変斜板(51b)の往復にある
程度の時間を要することから、図4に示すように、車両
の急減速の開始時(t=t0 )から急減速の終了時(t
=t1 )までの間、車速の低下に対し変速比の変更が徐
々に遅れていってエンジン回転数が低下してしまうこと
になる。この結果、エンジンブレーキの効きが悪くな
り、さらにノッキングの発生やエンジンストール(エン
スト)の虞れもある。
【0008】そして、車両の急減速の終了時(t=t1
)には、エンジン回転数が大幅に低下してしまうの
で、上記車両の再加速に必要な所要トルクが十分に得ら
れない。このため、HMT(7)の変速比の変更が車速
の低下に追いつき、エンジン回転数が高くなって(t=
t2 )所要トルクが得られるようになるまでの間は、車
両を良好に加速することができない。つまり、車両の加
速応答性が悪くなるという不具合がある。
【0009】本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたも
のであり、その目的とするところは、車両の急減速時
に、通常の減速時とは異なる変速制御を行うようにする
ことで、エンジンブレーキの確保、エンストやノッキン
グの防止及び再加速時の加速応答性の低下の防止を図る
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の解決手段では、車両の急減速時に、静液圧
式トランスミッションの液圧ポンプの斜板角度の増減変
更を行うことなく、機械式トランスミッションの変速ク
ラッチの作動により無段変速機の運転モードを低速側へ
切換えて、変速比を素早く小さく変更するようにした。
【0011】具体的には、請求項1記載の発明は、図5
及び図6、並びに図9、図10及び11に示すように、
エンジン(1)から駆動輪(11,11)までの動力伝
達経路に、少なくとも1つの変速クラッチ(44,4
5,…)を有する機械式トランスミッション(4)と、
上記エンジン(1)側に連結された液圧ポンプ(51)
及び上記駆動輪(11,11)側に連結された液圧モー
タ(52)を有し該液圧ポンプ(51)及び液圧モータ
(52)の少なくとも一方を斜板角度の増減変更により
容量可変に構成した静液圧式トランスミッション(5)
とが並列に配設された無段変速機(2,7)を備え、上
記機械式トランスミッション(4)の変速クラッチ(4
4,45,…)、及び、上記静液圧式トランスミッショ
ン(5)の液圧ポンプ(51)又は液圧モータ(52)
の斜板角度を、基本制御手段(31)により制御するこ
により、上記無段変速機(2,7)の変速比を無段階
に変更させるようにした車両用変速機の変速制御装置を
対象にする。そして、車両の急減速状態を判定する急減
速判定手段(32)と、該急減速判定手段(32)によ
り車両の急減速状態が判定されたとき、上記液圧ポンプ
(51)又は液圧モータ(52)の基本制御手段(3
1)による斜板角度制御を制限するとともに、無段変速
機(2,7)の変速比が小さくなるよう機械式トランス
ミッション(4)の変速クラッチ(44,45,…)を
切換作動させる急減速時制御手段(33)と、上記急減
速判定手段(32)により車両の急減速状態が判定され
たとき、上記液圧ポンプ(51)の斜板角度を0度にさ
せる斜板中立制御手段(33a)とを備える構成とす
る。
【0012】この構成では、車両の急減速状態が急減速
判定手段(32)により判定されたとき、急減速時制御
手段(33)により、基本制御手段(31)による液圧
ポンプ(51)又は液圧モータ(52)の斜板角度の増
減変更制御が制限されるとともに、機械式トランスミッ
ション(4)変速クラッチ(44,45,…)の作動制
御が行われ、変速クラッチ(44,45,…)の切換作
動により機械式トランスミッション(4)が低速側に変
速作動されて、無段変速機(2,7)の変速比が素早く
変更される。
【0013】このことで、例えば上記車両が比較的高速
で走行していて、無段変速機(2,7)が高変速比域で
運転されているときに急減速が行われた場合でも、上記
無段変速機(2,7)の変速比を車速の低下に遅れるこ
となく小さくさせることができ、これにより、エンジン
回転数の大幅な低下を防止することができる。よって、
エンジンブレーキの効きを確保するとともにノッキング
やエンストの発生を防止することができ、さらに、車両
の再加速時の加速応答性の低下を防止することができ
る。
【0014】しかも、その際、上記急減速時制御手段
(33)によりクラッチ制御と同時に、斜板中立制御手
段(33a)による制御が行われて、液圧ポンプ(5
1)の斜板角度が0度にされ、該液圧ポンプ(51)が
空転状態にされる。このため、変速クラッチ(44,4
5,…)の切換作動により機械式トランスミッション
(4)が変速作動されたときに、この機械式トランスミ
ッション(4)で発生する変速ショックが静液圧式トラ
ンスミッション(5)に伝わらずにエンジン(1)側に
逃がされるようになり、これにより、変速ショックが緩
和される。
【0015】請求項記載の発明は、図13に示すよう
に、請求項1における急減速時制御手段(33)を、遮
断状態にされる側の変速クラッチ(44,45,…)を
離合させた後に、接続状態にされる側の変速クラッチ
(44,45,…)を係合させるものとする。
【0016】このことで、急減速時制御手段(33)に
よるクラッチ制御において、遮断状態にされる側の変速
クラッチ(44,45,…)と接続状態にされる側の変
速クラッチ(44,45,…)とが同時に係合状態にな
ることがなくなる。このため、この両変速クラッチ(4
4,45,…)における伝達回転数がそれぞれ同一回転
数になっていなくても、該変速クラッチ(44,45,
…)における伝達トルク異常(例えば過大な滑りの発
生)を防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基いて説明する。
【0018】(実施形態1) 図5は本発明の実施形態1に係る車両用変速機の変速制
御装置をトラック等の車両に適用した例を示し、(1)
はディーゼルエンジン等のエンジン、(2)はこのエン
ジン(1)からの入力回転を無段階に変速して左右の駆
動輪(11,11)側に伝達する無段変速機としてのH
MT、(3)は上記エンジン(1)及びHMT(2)を
制御するコントローラである。また、(12)は運転者
によるアクセル操作量を検出するアクセル操作量セン
サ、(13)は運転者によるブレーキ操作量を検出する
ブレーキ操作量検出手段としてのブレーキ操作量セン
サ、(14)は上記HMT(2)の後述の入力軸(2
1)の回転数(即ち、エンジン回転数)を検出するエン
ジン回転数検出手段としての入力回転数センサ、(1
5)は出力軸(22)の回転数を検出する出力回転数セ
ンサである。
【0019】(HMTの構成) 上記HMT(2)は、図6に詳細を示すように、エンジ
ン(1)からの回転入力を受ける入力軸(21)と、駆
動輪(11,11)側に接続された出力軸(22)と、
上記入力軸(21)及び出力軸(22)の間に介装され
た機械式トランスミッションとしてのMT(4)と、こ
のMT(4)に対し並列に配設され、入力側が上記入力
軸(21)に、また出力側が上記MT(4)を介して出
力軸(22)にそれぞれ接続された静液圧式トランスミ
ッションとしてのHST(5)とを備えている。さらに
上記HMT(2)は、エンジン(1)からの入力回転を
減速するための第3遊星歯車機構(23)と、この第3
遊星歯車機構(23)により減速された回転を上記MT
(4)に伝えるための変速クラッチとしての第4クラッ
チ機構(24)と、上記第3遊星歯車機構(23)に入
力された入力回転をそのまま上記MT(4)に伝えるた
めの変速クラッチとしての第5クラッチ機構(25)と
を備えている。
【0020】(MTの構成) 上記MT(4)は、第1遊星歯車機構(41)と、第2
遊星歯車機構(42)と、入力軸(21)及び出力軸
(22)と同軸に配設された中間軸(43)と、上記各
遊星歯車機構(41,42)の作動条件を切換えるため
の変速クラッチとしての第1〜第3の3つのクラッチ機
構(44,45,46)等を備えたものであり、このM
T(4)の入力側に上記第4及び第5クラッチ機構(2
4,25)と第3遊星歯車機構(23)とが付設されて
いる。以下、上記各機構(23,24,25,41,4
2,44,45,46)について詳細に説明する。
【0021】上記第1遊星歯車機構(41)は、第1太
陽歯車(41a)と、この第1太陽歯車(41a)に噛
み合う第1遊星歯車(41b)と、この第1遊星歯車
(41b)に噛み合う第1内歯歯車(41c)と、上記
第1遊星歯車(41b)を保持する第1キャリア(41
d)とを備えている。また、上記第2遊星歯車機構(4
2)は、上記中間軸(43)に形成された第2太陽歯車
(42a)と、この第2太陽歯車(42a)に噛み合う
第2遊星歯車(42b)と、この第2遊星歯車(42
b)に噛み合う第2内歯歯車(42c)と、上記第2遊
星歯車(42b)を保持する第2キャリア(42d)と
を備えている。
【0022】そして、上記第1太陽歯車(41a)は、
出力軸(22)に対し相対回転可能に外挿された環状の
接続軸(41e)を介して歯車(41f)と一体的に形
成されており、この歯車(41f)と後述の歯車(5
6)とを介して上記液圧モータ(52)のモータ軸(5
2a)に接続されている。また、上記第1キャリア(4
1d)は管状部材(47)に取り付けられており、この
管状部材(47)の内周面には上記第2内歯歯車(42
c)が形成され、これにより、第1キャリア(41d)
と第2内歯歯車(42c)とが互いに同期して回転す
る。さらに、上記第1内歯歯車(41c)は鍔状部材
(41g)の外周側に形成され、この鍔状部材(41
g)には上記第2キャリア(42d)が取り付けられて
いる。この鍔状部材(41g)は上記出力軸(22)に
一体的に取り付けられており、これにより、上記第2キ
ャリア(42d)は上記第1内歯歯車(41c)と同期
して回転し、かつ、上記第1内歯歯車(41c)及び第
2キャリア(42d)が出力軸(22)と結合されるよ
うになる。
【0023】上記第1クラッチ機構(44)は、管状部
材(47)の周囲に取り付けられた複数のクラッチプレ
ート(44a,44a,…)と、この各クラッチプレー
ト(44a)を間に挟む複数のプレッシャプレート(4
4b,44b,…)とを備えている。各プレッシャプレ
ート(44b)は、本HMT(2)のケーシング(図示
省略)である非回転部(26)に相対回転が阻止された
状態で固定されており、これにより、上記第1クラッチ
機構(44)はこれを接続状態にして上記管状部材(4
7)にブレーキ力を付与することで、第1キャリア(4
1d)と第2内歯歯車(42c)とを上記非回転部(2
6)に対して断続切換可能に連結するようになってい
る。
【0024】上記第2クラッチ機構(45)は、中間軸
(43)の周囲に取り付けられた複数のクラッチプレー
ト(45a,45a,…)と、筒状部材(48)の内周
面に取り付けられた複数のプレッシャプレート(45
b,45b,…)とを備えている。上記筒状部材(4
8)は、第4クラッチ機構(24)の断続切換えにより
第3遊星歯車機構(23)を介して入力軸(21)と連
結可能になっており、これにより、上記第2クラッチ機
構(45)は第2太陽歯車(42a)に対し接続状態の
第4クラッチ機構(24)から入力する回転を断続切換
可能に伝達する。また、上記第3クラッチ機構(46)
は、上記管状部材(47)の周囲に取り付けられた複数
のクラッチプレート(46a,46a,…)と、上記筒
状部材(48)の内周面に設けられたプレッシャプレー
ト(46b,46b,…)とを備えたものであり、これ
により、上記第1キャリア(41d)と第2内歯歯車
(42c)とに対し接続状態の第4クラッチ機構(2
4)から入力する回転を断続切換可能に伝達する。
【0025】また、上記第3遊星歯車機構(23)は、
入力軸(21)に対し後述の歯車(49)と並設して固
定された第3太陽歯車(23a)と、この第3太陽歯車
(23a)と噛み合う第3遊星歯車(23b)と、この
第3遊星歯車(23b)と噛み合いかつ上記ケーシング
である非回転部(27)に相対回転が阻止された状態で
固定された第3内歯歯車(23c)と、上記第3遊星歯
車(23b)を保持する第3キャリア(23d)とを備
えている。そして、上記第3遊星歯車機構(23)の各
歯車(23a,23b,23c)は、第3太陽歯車(2
3a)に入力する入力軸(21)の入力回転を後述の如
く所定の減速比で減速して上記第3キャリア(23d)
を回転させるように歯数設定がなされている。
【0026】さらに、上記第4クラッチ機構(24)
は、上記第3キャリア(23d)の外周囲に取り付けら
れた複数のクラッチプレート(24a,24a,…)
と、上記筒状部材(48)の内周面に設けられた複数の
プレッシャプレート(24b,24b,…)とを備え、
接続状態にされることにより第2及び第3クラッチ機構
(45,46)の入力端側である筒状部材(48)に対
し上記第3遊星歯車機構(23)により減速された回転
を伝達するようになっている。加えて、上記第5クラッ
チ機構(25)は、上記入力軸(21)の先端部に固定
された環状部材(25a)と、この環状部材(25a)
の内周面に設けられた複数のプレッシャプレート(25
b,25b,…)と、中間軸(43)の外周囲に設けら
れた複数のクラッチプレート(25c,25c,…)と
を備え、接続状態にされることにより中間軸(43)を
介して第2太陽歯車(42a)と入力軸(21)とを直
結してこの入力軸(21)の回転を上記第2太陽歯車
(42a)にそのまま伝達するようになっている。
【0027】このような構造において、上記第1及び第
2の両遊星歯車機構(41,42)の各要素の歯車比
と、上記第3遊星歯車機構(23)による減速比とが以
下の関係を有するように設定され、これにより、後述の
第1〜第4モードの4つの運転モードの切換前後で実質
的に連続した伝達比を与えるようになっている。すなわ
ち、図7の遊星速度線図に示すように、第1太陽歯車
(41a)と第1内歯歯車(41c)との間の歯車比を
Yとし、第2太陽歯車(42a)と第2内歯歯車(42
c)との間の歯車比をXとした場合に、Y=X+1の関
係が成立するように設定され、また、上記第3遊星歯車
機構(23)による減速比が、Y/(2X+Y+2)で
表される値になるように設定されている。そして、上記
歯数比Xが略2に、歯数比Yが略3にそれぞれ設定さ
れ、従って、上記第3遊星歯車機構(23)における減
速比が略1/3に設定されており、これにより、エンジ
ン(1)から回転数(Ni )の入力回転が入力される場
合には、上記第3遊星歯車機構(23)で減速された回
転の回転数Nirは、 Nir = Ni /3 の関係を満
たすようになる。なお、上記遊星速度線図は、横軸に上
記第1及び第2の両遊星歯車機構(41,42)の各要
素の歯車比を示し、また、縦軸にそれらの各要素のそれ
ぞれの回転数を示したものである。
【0028】(HSTの構成) 一方、上記HST(5)は、互いに略同じ構成の一対の
油圧ユニット(51,52)が一対の連通管(53a,
53b)により互いに接続されて閉回路(53)を構成
しており、エンジン(1)からの回転力が入力される入
力側の油圧ユニット(51)を液圧ポンプと呼び、変速
後の回転力が出力される出力側の油圧ユニット(52)
を液圧モータと呼ぶものである。
【0029】上記液圧ポンプ(51)は、図示しない
が、スプラインを介してポンプ軸(51a)と一体に回
転するシリンダブロックと、このシリンダブロック内に
ポンプ軸(51a)を中心とする円周上位置に列状に収
容された複数の往復動ピストンとを備え、これらのピス
トンの往復動の行程を可変斜板(51b)により変更調
整する可変斜板式ピストンポンプである。そして、上記
ポンプ軸(51a)に連結された歯車(54)が入力軸
(21)の歯車(49)に噛み合わされており、これに
より、上記ポンプ軸(51a)にエンジン(1)からの
回転力が入力される。また、上記可変斜板(51b)は
その斜板角度が0度になる中立位置を挟んで、斜板角度
が最大(例えば、17度)になる正転側及び逆転側の両
方の最大傾斜位置の間で傾動可能に構成され、コントロ
ーラ(3)からの作動信号を受けて作動する斜板角度変
更調整機構(55)により傾動されて斜板角度が増減変
更調整されるようになっている。この斜板角度変更調整
機構(55)は、例えば圧油により作動されるアクチュ
エータにより構成されており、上記コントローラ(3)
からの作動信号を受けて図示しない制御用補助ポンプか
らの作動油圧を導入され、これにより、上記可変斜板
(51b)を傾動させるようになっている。
【0030】そして、上記液圧ポンプ(51)は、上記
ポンプ軸(51a)が上記エンジン(1)からの入力に
よって回転駆動されることにより、上記の各ピストン
が、上記シリンダブロックと共に上記ポンプ軸(51
a)の回りに回転されるとともに、上記可変斜板(51
b)の傾斜角度に略比例する行程を往復動されるように
構成されており、このピストンの往復動により上記斜板
角度に応じた流量の作動油を吐出して一方の連通管(5
3a又は53b)を介して液圧モータ(52)側に供給
するようになる。
【0031】上記液圧モータ(52)は、図示しない
が、スプラインを介してモータ軸(52a)と一体に回
転するシリンダブロックと、このシリンダブロック内に
モータ軸(52a)を中心とする円周上位置に列状に収
容された複数の往復動ピストンとを備え、これらのピス
トンの往復動の行程を斜板(52b)により調整する斜
板式ピストンモータである。そして、上記各ピストン
が、上記液圧ポンプ(51)側から供給される作動油を
受けて上記斜板(52b)を押すことにより、上記シリ
ンダブロックが上記作動油の供給流量に応じた回転数で
回転され、この回転が上記モータ軸(52a)に出力さ
れる。そして、このモータ軸(52a)に連結された歯
車(56)が、第1太陽歯車(41a)と一体の接続軸
(41e)に結合された歯車(41f)と噛み合わされ
ており、このことで、上記モータ軸(52a)からの出
力回転が第1太陽歯車(41a)に伝達されるようにな
る。
【0032】また、上記液圧モータ(52)の斜板(5
2b)は、コントローラ(3)からの作動信号を受けて
作動する斜板角度変更機構(57)により傾動されるよ
うになっており、これにより、液圧モータ(52)の斜
板角度が、第1〜第3モードにおいては最大斜板角度
(17度)にされる一方、第4モードの最高変速比域に
おいては最小斜板角度(6度)にされる。上記斜板角度
変更機構(57)は、例えば圧油により作動されるアク
チュエータにより構成されており、非作動状態では上記
斜板(52b)を最大傾斜角度位置に保持する一方、上
記コントローラ(3)からの作動信号を受けて図示しな
い制御用補助ポンプからの作動液圧を導入され、これに
より、上記斜板(52b)を切換作動させるようになっ
ている。
【0033】このような構成により上記HST(5)で
は、車両の加速時において、液圧ポンプ(51)から吐
出された作動油が一方の連通管(53a又は53b)を
流通して液圧モータ(52)に供給され、この液圧モー
タ(52)を回転作動させた後に他方の連通管(53b
又は53a)を流通して液圧ポンプ(51)に還流され
て閉回路(53)内を循還するようになっている。ま
た、車両の減速時においては、上記液圧モータ(52)
が車両の走行慣性力により出力軸側から回転駆動されて
ポンプ作動するようになり、このポンプ作動する液圧モ
ータ(52)から吐出された作動油が上記他方の連通管
(53b又は53a)内を流通して上記液圧ポンプ(5
1)に供給され、この液圧ポンプ(51)をモータ作動
させるようになっている。
【0034】(MT及びHSTの変速作動) 上記MT(4)及びHST(5)は、コントローラ
(3)の作動制御により、HMT(2)の変速比に応じ
て第1〜第4モードの4つの運転モードに分けて、すな
わち、発進から低変速比域(低速域)の第1モードと、
中低変速比域(中低速域)の第2モードと、中高変速比
域(中高速域)の第3モードと、高変速比域(高速域)
の第4モードとの4つの運転モードに分けて作動される
ように構成されている。
【0035】ここで、上記第1〜第4モードの4つの運
転モードにおけるHMT(2)の変速比の変化の様子を
図8に基づいて具体的に説明する。この図8には、上記
第1〜第4の4つの運転モードにおけるMT(4)の各
クラッチ機構(44,45,…)の接続状態が示されて
いる。また、エンジン(1)からある一定の回転数(例
えば1800rpm)が入力されて車両が加速される場
合について、液圧ポンプ(51)の可変斜板(51b)
の斜板角度とHMT(2)の変速比との関係が示されて
おり、さらに、この場合の入力軸(21)及び出力軸
(22)の回転数とHMT(2)の変速比との関係が示
されている。なお、同図において、S1,S2及びR2
は、それぞれ第1太陽歯車(41a)、第2太陽歯車
(42a)及び第2内歯歯車(42c)の回転数を示し
ている。
【0036】上記第1モードでは、MT(4)の第1ク
ラッチ機構(44)及び第4クラッチ機構(24)のみ
が接続状態にされることにより、入力軸(21)からの
入力回転はHST(5)側にのみ伝達されるようにな
り、出力軸(22)はHST(5)からの伝達力のみに
よって回転される。すなわち、この第1モードにおける
前進側の変速範囲では、HST(5)の液圧モータ(5
2)の斜板(52b)が正転側{(+)の側}における
斜板角度17度の最大傾斜位置に固定される一方、液圧
ポンプ(51)の可変斜板(51b)が斜板角度0度の
中立位置から逆転側{(−)の側}における斜板角度1
7度の最大傾斜位置まで(−)方向に徐々に傾動される
ようになっており、この斜板角度の変更に応じて上記液
圧モータ(52)の出力回転数が無段階に変更されて、
上記出力軸(22)の出力回転数が前進側に無段階に増
大される。なお、上記第4クラッチ機構(24)は、第
1モードにおいては回転力の伝達はしていない。このク
ラッチを接続状態にしているのは、第1モードから第2
モードへの切換え時点で、第2クラッチ機構(45)が
接続する、中間軸(43)と筒状部材(48)の回転を
同調しておくためである。
【0037】上記第2モードでは、第2クラッチ機構
(45)及び第4クラッチ機構(24)のみが接続状態
にされ、これにより、入力軸(21)からの回転入力は
HST(5)に対し入力回転がそのまま伝達される一
方、中間軸(43)に対し第3遊星歯車機構(23)で
減速された回転が、第4クラッチ機構(24)及び第2
クラッチ機構(45)を介して伝達されるようになる。
そして、出力軸(22)は第2遊星歯車機構(42)を
介した中間軸(43)からの伝達力と、第1遊星歯車機
構(41)を介したHST(5)からの伝達力との合成
によって回転される。すなわち、この第2モードにおけ
る変速範囲では、HST(5)の液圧モータ(52)の
斜板(52b)が最大傾斜位置に固定される一方、液圧
ポンプ(51)の可変斜板(51b)が、逆転側
{(−)の側}における最大傾斜位置から正転側
{(+)の側}における最大傾斜位置まで(+)方向に
徐々に傾動されるようになっている。そして、この斜板
角度の(+)方向への増大に応じて液圧モータ(52)
の出力回転数が無段階に変更されることにより、第1遊
星歯車機構(41)を介したHST(5)からの回転が
無段階に増大されて上記出力軸(22)の出力回転数が
前進側に無段階に増大される。
【0038】また、上記第3モードでは、第3クラッチ
機構(46)及び第4クラッチ機構(24)のみが接続
状態にされ、これにより、入力軸(21)からの回転入
力はHST(5)に対し入力回転がそのまま伝達される
一方、管状部材(47)に対し第3遊星歯車機構(2
3)で減速された回転が、第4クラッチ機構(24)及
び第3クラッチ機構(46)を介して伝達されるように
なる。そして、上記第1モードと同様、HST(5)の
液圧モータ(52)の斜板(52b)が最大傾斜位置に
固定される一方、液圧ポンプ(51)の可変斜板(51
b)の斜板角度が(−)方向へ漸減され、これにより液
圧モータ(52)の出力回転数が無段階に変更される。
そして、HST(5)から第1遊星歯車機構(41)を
介して伝達される回転と上記管状部材(47)から伝達
される回転との合成により、上記出力軸(22)の出力
回転数が前進側に無段階に増大される。
【0039】さらに、上記第4モードでは,第3クラッ
チ機構(46)及び第5クラッチ機構(25)のみが接
続状態にされ、これにより、入力軸(21)からの回転
入力はHST(5)に対し入力回転がそのまま伝達され
る一方、中間軸(43)に対し入力回転がそのまま伝達
されて第2太陽歯車(42a)に伝達されるようにな
る。そして、出力軸(21)は、第2遊星歯車機構(4
2)の第2キャリア(42d)からの伝達力と、第1遊
星歯車機構(41)の第1太陽歯車(41a)を介した
HST(5)からの伝達力の合成力によって回転され
る。なお、上記第3クラッチ機構(46)は、第4モー
ドにおいては回転力の伝達はしていない。このクラッチ
を接続状態にしているのは、第4モード最高速域でロッ
クアップ運転に移行する時点で第2クラッチ機構(4
5)が接続する、中間軸(43)と筒状部材(48)の
回転を同調しておくためであるに過ぎない。
【0040】すなわち、上記第4モードにおける低変速
比側の変速範囲では、HST(5)の液圧モータ(5
2)の斜板(52b)が最大傾斜位置に固定される一
方、液圧ポンプ(51)の可変斜板(51b)の斜板角
度が0度まで(+)方向に漸増され、これにより、液圧
モータ(52)の出力回転数が無段階に変更されるよう
になる。また、上記第4モードにおける高変速比側の変
速範囲では、上記各モードとは異なり、斜板角度変更機
構(57)の作動により液圧モータ(52)の斜板(5
2b)が最小傾斜位置に切換えられられて斜板角度が最
大傾斜角度の略1/3とされる一方、液圧ポンプ(5
1)の可変斜板(51b)の斜板角度が上記各モードの
略1/3の割合で徐々に漸増されて最大傾斜角度に至る
ようになっており、これにより、液圧モータ(52)の
出力回転数が上記各モードと同様の割合で無段階に変更
されるようになっている。そして、上記液圧モータ(5
2)の出力回転数の変更に応じて上記出力軸(22)の
出力回転数が前進側に無段階に増大される。
【0041】さらに、上記第1〜第4の各運転モードの
切換前後で、第1〜第5の各クラッチ機構(44,4
5,46,24,25)の切換作動の際に係合及び離合
される両クラッチ機構のクラッチプレート(44a,4
5a,46a,24a,25c)とプレッシャプレート
(44b,45b,46b,24b,25b)とがそれ
ぞれ同じ回転数で同調して切換前後で連続した変速比で
回転伝達されるようになっており、これにより、HMT
(2)の変速比は上記第1〜第4モードの全部の変速範
囲において無段階かつ連続的に変更されるようになる。
また、上記係合及び離合される両クラッチ機構において
は、図9に示すように、まず係合される側のクラッチ機
構(同図のクラッチ2)をクラッチオン指令により係合
させ(同図に実線で示す)、続いて離合される側のクラ
ッチ機構(同図のクラッチ1)をクラッチオフ指令によ
り離合させる(同図に破線で示す)ようにしており、こ
れにより、運転モード切換の際にも動力伝達が継続され
るようになる。
【0042】なお、上記第1モードにおける前進側の変
速範囲は、図7の遊星速度線図における矢印M1 の範囲
に、上記第2モードの変速範囲は同図の矢印M2 の範囲
に、また、上記第3モードの変速範囲は同図の矢印M3
の範囲に、さらに、上記第4モードの変速範囲は同図の
矢印M4 の範囲に、それぞれ対応している。
【0043】(コントローラの構成) 上記コントローラ(3)は、アクセル操作量センサ(1
2)、ブレーキ操作量センサ(13)、入力回転数セン
サ(14)及び出力回転数センサ(15)からの入力信
号に基づいてエンジン(1)の運転制御及びHMT
(2)の変速制御を行うものである。具体的には、上記
コントローラ(3)は、基本制御手段としての基本制御
部(31)と、急減速判定手段としての急減速判定部
(32)と、急減速時制御手段としての急減速時制御部
(33)とを備えている。
【0044】上記基本制御部(31)は、車両の加速時
にはエンジン(1)を所定の一定回転数で定速運転させ
るとともに、アクセル操作量センサ(12)により検出
された運転者のアクセル操作量に応じて上記HMT
(2)の変速比を増減変更させることにより、上記車両
を運転者の速度要求に対応する走行速度になるよう加速
させるものである。また、上記アクセル操作量センサ
(12)又はブレーキ操作量センサ(13)により検出
された運転者のアクセル操作量又はブレーキ操作量に基
づいて車両の減速が判定されたときには、上記エンジン
(1)に付設された図示省略の排気ブレーキ装置を作動
させるとともに、エンジン回転数を高いエンジンブレー
キ効果が得られる所定の回転数に保つために、車両の走
行速度の低下に応じてHMT(2)の変速比を徐々に変
更するようになっている。
【0045】上記急減速判定部(32)は、ブレーキ操
作量センサ(13)及び入力回転数センサ(14)から
の入力信号を受け、運転者によるブレーキ踏込み量と入
力軸(21)の回転数(即ち、エンジン回転数)とに基
づいて車両の急減速を判定するように構成されている。
また、上記急減速時制御部(33)は、液圧ポンプ(5
1)の可変斜板(51b)を斜板角度0度の中立位置に
固定(斜板中立制御)する斜板中立制御手段としての斜
板中立制御部(33a)と、各クラッチ機構(44,4
5,…)の作動制御により機械式トランスミッション
(4)を低速側に変速作動させるクラッチ制御を行うク
ラッチ制御部(33b)とを備え、上記急減速判定部
(32)により車両の急減速が判定されたときに、上記
斜板中立制御部(33a)及びクラッチ制御部(33
b)による制御を実行するようになっている。
【0046】以下に、上記急減速時制御部(33)によ
る具体的な制御を、図10、図11、図12及び図13
を参照して説明する。この図12は、車両の急減速時に
ついて、図8同様に第1〜第4の4つの運転モードにお
けるMT(4)の各クラッチ機構(44,45,…)の
接続状態と、液圧ポンプ(51)の可変斜板(51b)
の斜板角度及びHMT(2)の変速比の対応関係とを示
したもので、さらに、この場合の入力軸(21)及び出
力軸(22)の回転数とHMT(2)の変速比との対応
関係を示したものである。
【0047】図10のフローチャートにおいて、ステッ
プS1では車両が最高速で走行していてHMT(2)の
変速比が最高変速比(図例では1.00)になっている
(図12のAの状態)。このとき、ステップS2で運転
者のブレーキ操作に基づいて減速要求が判定されると、
ステップS3において基本制御部(31)による通常の
減速制御を行い、エンジン回転数が所定の一定回転数
(例えば1500rpm)に保たれるようにHMT
(2)の変速比を徐々に変更させる。すなわち、斜板角
度変更調整機構(55)の作動により液圧ポンプ(5
1)の可変斜板(51b)を徐々に傾動させて斜板角度
を減少させるようにし、上記可変斜板(51b)が中立
位置に位置付けられて斜板角度が0度になったとき(図
12のBの状態)に、ステップS4において、運転者の
ブレーキ踏込み量が全ブレーキ踏みしろの例えば半分
(50%)以上であるか否かによって急減速要求の有無
を判定する。
【0048】上記ステップS4で運転者のブレーキ踏込
み量が50%未満であると判定された場合には後述のス
テップS11に進んで通常の減速制御を継続する一方、
運転者のブレーキ踏込み量が50%以上であると判定さ
れた場合には、ステップS5に進んで液圧ポンプ(5
1)の可変斜板(51b)を中立位置に固定する。これ
により、HMT(2)の変速比が一定値(図例では0.
67)に固定され、車速の低下に伴うHMT(2)の出
力回転数の低下に応じてエンジン回転数が低下するよう
になる。続くステップS6では、上記ステップS4と同
様に運転者のブレーキ踏込み量が50%以上であるか否
かを判定し、50%未満であると判定された場合にはス
テップS11に進んで通常の減速制御に戻る一方、50
%以上であると判定された場合にはステップS7に進
む。このステップS7では、エンジン回転数を設定回転
数(例えば1200rpm)と比較し、該エンジン回転
数が設定回転数よりも大きければ上記ステップS6にリ
ターンする。一方、エンジン回転数が設定回転数以下に
なれば(図12のCの状態)、ステップS8に進んで後
述の如く運転モードの切換を行う。つまり、運転者のブ
レーキ操作量が十分に大きい場合(S4,S6)であっ
て、かつ、実際に車両が急減速状態になっており車速の
低下に変速比の変更が追いつかない結果、エンジン回転
数が低下しているとき(S7)に急減速時制御部(3
3)による制御を行う。
【0049】すなわち、ステップS8で第5クラッチ機
構(25)を離合させ、続くステップS9で第4クラッ
チ機構(24)を係合させて、HMT(2)の運転モー
ドを第4モードから第3モードに切換える。これによ
り、HMT(2)の変速比は、0.67から0.44ま
で(図12のCの状態からDの状態まで)不連続に素早
く変更される。そして、ステップS10ではHMT
(2)が第3モードで運転されるようになる(図12の
Dの状態)。
【0050】その際、図13に示すように、まず遮断状
態になる側の第5クラッチ機構(25)(同図のクラッ
チ1)がクラッチオフ指令により離合され(同図に破線
で示す)、その後、接続状態になる側の第4クラッチ機
構(24)(同図のクラッチ2)がクラッチオン指令に
より係合される(同図に実線で示す)ようになってい
る。このため、第4及び第5クラッチ機構(24,2
5)のクラッチプレート(24a,25c)とプレッシ
ャプレート(24b,25b)とがそれぞれ同じ回転数
で同調していなくても、係合される側の第4クラッチ機
構(24)では、クラッチプレート(24a)とプレッ
シャプレート(24b)との間の滑りが速やかに収束し
て接続状態になる。なお、上記第4クラッチ機構(2
4)の係合によりエンジン回転数は一時的に急上昇する
ことになる(図12のDの状態)が、このときのエンジ
ン回転数は、回転数を十分低く(<1200rpm)し
た後の急上昇であるためエンジンにダメージを与えない
程度のものであり問題はない。
【0051】一方、上記ステップS4又はステップS6
において、運転者のブレーキ踏込み量が50%未満であ
ると判定された場合には、液圧ポンプ(51)の可変斜
板(51b)を徐々に傾動させる通常の減速制御(図1
2にHMT変速比に対する斜板角度の関係を二点鎖線で
示す)に戻る。すなわち、上記液圧ポンプ(51)の可
変斜板(51b)を傾動させていって、ステップS11
で斜板角度が−16度以下であると判定されたときにス
テップS12に進み、このステップS12で第4クラッ
チ機構(24)を係合させ続くステップS13で第5ク
ラッチ機構(25)を離合させて(図9参照)、HMT
(2)の運転モードを第4モードから第3モードに切換
える。そして、続くステップS10ではHMT(2)が
第3モードで運転されるようになる。
【0052】上記図10のフローチャートにおいて、ス
テップS4、S6及びS7が急減速判定部(32)に対
応しており、ステップS5が斜板中立制御部(33a)
に、ステップS8及びS9がクラッチ制御部(33b)
に、それぞれ対応している。
【0053】図11のフローチャートにおいて、上記図
10のステップS10に続くステップS14では、上記
ステップS4と同様、液圧ポンプ(51)の可変斜板
(51b)が中立位置に位置付けられた状態(図12の
Dの状態)で、運転者のブレーキ踏込み量が50%以上
であるか否かを判定する。そして、50%未満であると
判定された場合には後述のステップS21に進んで通常
の減速制御に戻る一方、50%以上であると判定された
場合には、ステップS15に進んで液圧ポンプ(51)
の可変斜板(51b)を中立位置のまま固定する。これ
により、HMT(2)の変速比は一定値(図例では0.
44)のままとされ、車速の低下に伴い再びエンジン回
転数が低下するようになる。
【0054】続くステップS16では、上記ステップS
14と同様に運転者のブレーキ踏込み量が50%以上で
あるか否かを判定し、50%未満であると判定された場
合にはステップS21に進んで通常の減速制御に戻る一
方、50%以上であると判定された場合にはステップS
17に進む。このステップS17では、エンジン回転数
を設定回転数(例えば900rpm)と比較し、該エン
ジン回転数が設定回転数よりも大きければ上記ステップ
S16にリターンする一方、エンジン回転数が設定回転
数以下になれば(図12のEの状態)ステップS18に
進む。
【0055】そして、ステップS18及びステップS1
9において、上述の第4モードから第3モードへの運転
モードの切換えと同様、液圧ポンプ(51)の可変斜板
(51)を中立位置に固定したままで第3及び第2クラ
ッチ機構(46,45)を切換作動させて第3モードか
ら第2モードへのモード切換を行う。これにより、HM
T(2)の変速比は0.44から0.22まで(図12
のEの状態からFの状態まで)不連続に素早く変更さ
れ、続くステップS20においてHMT(2)は第2モ
ードで運転されるようになって急減速時制御を終了す
る。上記運転モード切換えの際、上記第2クラッチ機構
(45)の係合により、上記第4モードから第3モード
への切換えと同様、エンジン回転数は一時的に急上昇
(図12のFの状態)した後、車両の減速に伴い一定回
転数まで減少され(図12のGの状態)、その後、通常
の減速制御により該一定回転数に保たれるようになる。
【0056】一方、上記ステップS14又はステップS
16において、運転者のブレーキ踏込み量が50%未満
であると判定された場合には、通常の減速制御(図12
に二点鎖線で示す)に戻って液圧ポンプ(51)の可変
斜板(51b)を徐々に傾動させ、ステップS21で斜
板角度が+16度以上であると判定されたとき、ステッ
プS22に進んで第2クラッチ機構(45)を係合さ
せ、続くステップS23で第3クラッチ機構(46)を
離合させてHMT(2)の運転モードを第3モードから
第2モードに切換える。そして、HMT(2)は第2モ
ードで運転されるようになる(S20)。
【0057】上記図11のフローチャートにおいて、ス
テップS14、S16及びS17が急減速判定部(3
2)に対応しており、ステップS15が斜板中立制御部
(33a)に、ステップS18及びS19がクラッチ制
御部(33b)に、それぞれ対応している。
【0058】次に、上記実施形態1に係る車両用変速機
の変速制御装置による車両の急減速時制御の作用・効果
を図14を参照しながら説明する。
【0059】上記実施形態1では、車両の走行中に運転
者がブレーキ操作を行ったとき(t=t0 )に、そのブ
レーキ操作量が50%以上と大きく、車両に大きな制動
力が作用していると考えられる場合(S4,S6又はS
14,S16)であって、該車両が実際に急減速されて
車速の低下に変速比の変更が追従しきれないためエンジ
ン回転数が設定回転数以下まで低下している場合(S7
又はS17)に、急減速判定部(32)により上記車両
の急減速が判定される。
【0060】そして、車両の急減速が判定された場合、
液圧ポンプ(51)の可変斜板(51b)が、斜板中立
制御部(33a)により斜板角度0度の中立位置に固定
され(S5又はS15)、この状態で、各クラッチ機構
(44,45,…)の切換え作動(S8,S9又はS1
8,S19)により機械式トランスミッション(4)が
変速作動されて、HMT(2)の変速比(図14に一点
鎖線で示す)が不連続に素早く変更される。つまり、上
記液圧ポンプ(51)の斜板角度の増減変更制御を行う
ことなく、クラッチ制御のみにより素早くHMT(2)
の変速比を小さくさせることができ、このため、例えば
車両が最高速で走行していてHMT(2)が最高変速比
で運転されているときであっても、上記HMT(2)の
変速比を車速の低下に遅れることなく小さくさせること
ができる。このことで、車両の急減速時にエンジン回転
数(図14に破線で示す)の大幅な低下を防止すること
ができ、これにより、エンジンブレーキの効きを確保す
るとともに、ノッキングやエンストの発生を防止するこ
とができる。
【0061】その際、斜板中立制御により液圧ポンプ
(51)の可変斜板(51b)が中立位置に固定されて
該液圧ポンプ(51)が空転状態にされているため、各
クラッチ機構(44,45,…)の作動によりMT
(4)が変速作動されるときに発生する変速ショック
が、HST(5)側に伝わらずにMT(4)のみを伝わ
ってエンジン(1)側に逃がされるとともに、HST
(5)内部の圧油のリークが変速ショックに対するダン
パの役割を果たすようになり、これにより、変速ショッ
クの緩和が図られる。また、クラッチ制御による上記M
T(4)の変速作動においては、遮断状態にされる側の
第3又は第5クラッチ機構(46又は25)を離合させ
た後に、接続状態にされる側の第2又は第4クラッチ機
構(45又は24)を係合させるようにしている。この
ため、遮断状態にされる側の第3又は第5クラッチ機構
(46又は25)と接続状態にされる側の第2又は第4
クラッチ機構(45又は24)とが同時に係合状態にさ
れることがなく、従って、上記両クラッチ機構(46,
45又は25,24)における伝達回転数がそれぞれ同
一回転数でない場合に、該両クラッチ機構(46,45
又は25,24)の同時結合によって発生するクラッチ
部の伝達トルク異常を回避できる。
【0062】さらに、車両の急減速の終了時(t=t1
)にHMT(2)の変速比が車速の低下に遅れること
なく小さくなっていて、エンジン回転数がエンジンブレ
ーキの効きが高い比較的高めの回転数になっている。す
なわち、エンジン(1)が車両の再加速に必要な所要ト
ルク(図14に二点鎖線で示す)を直ちに出力し得る状
態になっているため、上記車両は急減速後に直ちに再加
速し得る状態になる。つまり、車両の急減速後の再加速
時における加速応答性の低下を防止することができる。
【0063】(実施形態2) 図15は本発明の実施形態2に係るHMT(7)を示
し、このHMT(7)は全変速比域を第1〜第5の5つ
の運転モードに分けて運転し得るように構成されたもの
である。同図において、(71)及び(72)はそれぞ
れ実施形態1とは異なる第4及び第5クラッチ機構であ
り、(73)は第6クラッチ機構である。なお、上記H
MT(7)におけるその他のMT(4)やHST(5)
の構成は上記実施形態1のものと同様であるため、以
下、異なる構成についてのみ説明する。
【0064】上記第4クラッチ機構(71)は、第3太
陽歯車(23a)の先端から突出した入力軸(21)の
軸端に固定された環状部材(71a)と、この環状部材
(71a)の内周面に設けられた複数のプレッシャプレ
ート(71b,71b,…)と、中間軸(43)の外周
囲に設けられた複数のクラッチプレート(71c,71
c,…)とを備え、接続状態にされることにより中間軸
(43)を介して第2太陽歯車(42a)と入力軸(2
1)とを直結してこの入力軸(21)の回転を上記第2
太陽歯車(42a)にそのまま伝達するようになってい
る。
【0065】上記第5クラッチ機構(72)は、第3遊
星歯車機構(23)の第3キャリア(23d)と一体の
筒部の外周囲に取り付けられたクラッチプレート(72
a,72a,…)と、筒状部材(48)の内周面に設け
られたプレッシャプレート(72b,72b,…)とを
備えている。そして、この第5クラッチ機構(72)
は、接続状態にされることにより、上記筒状部材(4
8)すなわち第2及び第3クラッチ機構(45,46)
の入力端側に対し、上記第3遊星歯車機構(23)によ
り減速された回転を伝達するようになっている。
【0066】また、上記第6クラッチ機構(73)は、
入力軸(21)の軸端に固定された環状部材(71a)
の外周囲に取付けられたクラッチップレート(73a,
73a,…)と、筒状部材(48)の内周面に設けられ
たプレッシャプレート(73b,73b,…)とを備え
ている。そして、この第6クラッチ機構(73)は、接
続状態にされることにより、上記筒状部材(48)すな
わち第2及び第3クラッチ機構(45,46)の入力端
側に対し、上記入力軸(21)からの回転を伝達するよ
うになっている。
【0067】(MT及びHSTの運転制御) MT(4)及びHST(5)は、変速比に応じて区分さ
れた5つの運転モード、すなわち、発進から低変速比域
(低速域)の第1モードと、中低変速比域(中低速域)
の第2モードと、中変速比域(中速域)の第3モード
と、中高変速比域(中高速域)の第4モードと、高変速
比域(高速域)の第5モードとの5つの運転モードに分
けて作動されるようになっている。
【0068】以下、上記MT(4)における第1〜第5
の各運転モードでの、第1〜第6クラッチ機構(44,
45,46,71,72,73)の切換制御を図15及
び図16に基づいて説明する。この図16は、図8同
様、エンジン(1)から一定の回転数が入力されて車両
が加速される場合について、第1〜第5の5つの運転モ
ードにおける各クラッチ機構(44,45,…)の接続
状態と、液圧ポンプ(51)の可変斜板(51b)の斜
板角度及びHMT(7)の変速比の対応関係とを示し、
さらに、この場合の入力軸(21)及び出力軸(22)
の回転数とHMT(7)の変速比との対応関係を示した
ものである。
【0069】上記第1モードでは、第1クラッチ機構
(44)のみ、又は第1及び第5クラッチ機構(44,
72)が接続状態にされ、これにより、入力軸(21)
からの入力回転はHST(5)側にのみ伝達されるよう
になって、出力軸(22)は実施形態1の第1モードと
同様にHST(5)からの伝達力のみによって回転され
る。また、上記第2モードでは、第2及び第5クラッチ
機構(45,72)のみが接続状態にされ、これによ
り、入力軸(21)からの回転入力はHST(5)に対
し入力回転がそのまま伝達される一方、中間軸(43)
に対し第3遊星歯車機構(23)で減速された回転が、
第5クラッチ機構(72)及び第2クラッチ機構(4
5)を介して伝達されるようになる。そして、出力軸
(22)は、実施形態1の第2モードと同様、第2遊星
歯車機構(42)を介した中間軸(43)からの伝達力
と、第1遊星歯車機構(41)を介したHST(5)か
らの伝達力との合成によって回転される。
【0070】上記第3モードでは、第3及び第5クラッ
チ機構(46,72)のみが接続状態にされ、これによ
り、入力軸(21)からの回転入力はHST(5)に対
し入力回転がそのまま伝達される一方、管状部材(4
7)に対し第3遊星歯車機構(23)で減速された回転
が、第5クラッチ機構(72)及び第3クラッチ機構
(46)を介して伝達されるようになる。そして、出力
軸(22)は、実施形態1の第3モードと同様に第1遊
星歯車機構(41)の第1キャリア(41d)を介した
管状部材(47)からの伝達力と、第1遊星歯車機構
(41)の第1太陽歯車(41a)を介したHST
(5)からの伝達力との合成によって回転される。
【0071】また、上記第4モードでは、第4クラッチ
機構(71)のみが接続状態にされ、これにより、入力
軸(21)からの回転入力はHST(5)に対し入力回
転がそのまま伝達される一方、第4クラッチ機構(7
1)及び中間軸(43)を介して入力回転がそのまま第
2太陽歯車(42a)に伝達されるようになる。そし
て、出力軸(22)は、第2遊星歯車機構(42)の第
2太陽歯車(42a)からの伝達力と、第1遊星歯車機
構(41)の第1太陽歯車(41a)を介したHST
(5)からの伝達力との合成によって回転される。
【0072】さらに、上記第5モードでは、第3及び第
6クラッチ機構(46,73)のみが接続状態にされ、
これにより、入力軸(21)からの回転入力はHST
(5)に対し入力回転がそのまま伝達される一方、第1
キャリア(41d)及び第2内歯歯車(42c)に対
し、第6クラッチ機構(73)、第3クラッチ機構(4
6)及び管状部材(48)を介して入力回転がそのまま
伝達される。そして、出力軸(22)は、第1遊星歯車
機構(41)の上記第1キャリア(41d)からの伝達
力と、第1太陽歯車(41a)を介したHST(5)か
らの伝達力との合成によって回転される。
【0073】一方、上記HST(5)における、液圧ポ
ンプ(51)の可変斜板(51b)及び液圧モータ(5
2)の斜板(52b)の斜板角度制御は、上記図16に
示すように、それぞれ実施形態1の場合と同様に行われ
る。すなわち、第1モードから第4モードの低変速比側
までの変速比において、上記液圧モータ(52)の斜板
(52b)が最大傾斜位置に固定される一方、上記液圧
ポンプ(51)の可変斜板(51b)が、逆転側
{(−)の側}における最大傾斜位置と正転側{(+)
の側}における最大傾斜位置との間で一定の増減変更比
率で増減変更される。また、第4モードの高変速比側及
び第5モードにおいては、上記液圧モータ(52)の斜
板(52b)が最小傾斜位置に固定されて斜板角度が略
1/3とされる一方、上記液圧ポンプ(51)の可変斜
板(51b)が上記一定の増減変更比率の略1/3の増
減変更比率で増減変更される。
【0074】このような第1〜第6の各クラッチ機構
(44,45,…)の作動制御と、液圧ポンプ(51)
の可変斜板(51b)及び液圧モータ(52)の斜板
(52b)の斜板角度制御とにより、HMT(7)の出
力軸(22)の回転数は、図16に太い実線で示すよう
に上記第1〜第5モードの5つの運転モードにわたって
無段階に変更されるようになっている。そして、車両の
加速時及び通常の減速時には、実施形態1と同様、コン
トローラ(3)の基本制御部(31)により上記各クラ
ッチ機構(44,45,…)の作動制御と液圧ポンプ
(51)及び液圧モータ(52)の斜板角度制御とが行
われ、これにより、上記HMT(7)の変速比が無段階
にかつ連続的に増減変更される。
【0075】一方、急減速判定部(32)により車両の
急減速状態が判定されたときには、上記実施形態1と同
様、斜板中立制御部(33a)による斜板中立制御とク
ラッチ制御部(33b)によるクラッチ制御とが行なわ
れて、液圧ポンプ(51)の可変斜板(51b)が中立
位置に固定された状態で第1〜第6の各クラッチ機構
(44,45,…)の切換作動によりモード切換えが行
われる(図17参照)。このことで、HMT(7)の変
速比が不連続に素早く変更されて、車速の低下に対し遅
れることなく小さくなり、これにより、エンジン回転数
の大幅な低下が防止されるようになる。
【0076】したがって、この実施形態2においては、
HMT(7)が実施形態1のHMT(2)よりも多い第
1〜第5の5つの運転モードを有しているため、基本制
御部(31)による通常の減速制御では、上記HMT
(7)の変速比の変更が上記実施形態1の場合よりも一
層遅れがちになってしまうところ、急減速時制御部(3
3)の制御によりHMT(7)変速比を素早く小さくさ
せて、エンジン回転数の大幅な低下を防止することがで
きるため、上記実施形態1の場合と同様の、車両の急減
速時のエンジンブレーキの効きの確保、ノッキングやエ
ンストの発生の防止、及び、急減速後の再加速時の加速
応答性の低下の防止等の作用効果を一層有効に得ること
ができる。 <他の実施形態> なお、本発明は上記実施形態1及び2に限定されるもの
ではなく、その他種々の実施形態を包含するものであ
る。すなわち、上記実施形態1及び2では、急減速時制
御部(33)による制御において、MT(4)の各クラ
ッチ機構(44,45,…)の切換作動の際に、HST
(5)の液圧ポンプ(51)の可変斜板(51b)を中
立位置に固定するようにしているが、これに限らず、可
変斜板(51b)は中立位置以外にあってもよい。
【0077】上記実施形態1及び2では、斜板中立制御
部(33a)により、液圧ポンプ(51)の可変斜板
(51b)を中立位置に固定するようにしているが、こ
れに限らず、例えば液圧ポンプ(51)、液圧モータ
(52)の斜板(51b,52b)を共に斜板角度0度
にするとともに、何らかの方法で液圧モータ(52)の
出力軸(52a)を固定させるように構成してもよい。
【0078】上記実施形態1及び2では、急減速判定手
段(32)として、運転者のブレーキ踏込み量及びエン
ジン回転数に基づいて車両の急減速状態を判定するよう
にしているが、これに限らず、それらのいずれか一方の
みに基づいて車両の急減速状態を判定するようにするこ
とも可能である。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の発
明における車両用変速機の変速制御装置によれば、車両
の急減速時に、急減速時制御手段(33)により、基本
制御部(31)による液圧ポンプ(51)又は液圧モー
タ(52)の斜板角度の増減変更制御を制限するととも
に、変速クラッチ(44,45,…)の切換作動により
機械式トランスミッション(4)を低速側に変速作動さ
せるようにしたので、上記無段変速機(2)の変速比を
車速の低下に遅れることなく小さくさせて、エンジンブ
レーキの効きを確保するとともにノッキングやエンスト
の発生を防止することができ、さらに、車両の再加速時
の加速応答性の低下を防止することができる。
【0080】また、上記急減速時制御手段(33)によ
るクラッチ制御の際に、斜板中立制御により液圧ポンプ
(51)の斜板角度を0度にさせるようにしたので、機
械式トランスミッション(4)で発生する変速ショック
を静液圧式トランスミッション(5)に伝えずにエンジ
ン(1)側に逃がすことができ、変速ショックの緩和を
図ることができる。
【0081】請求項記載の発明によれば、遮断状態に
される側の変速クラッチ(44,45,…)を離合させ
た後に接続状態にされる側の変速クラッチ(44,4
5,…)を係合状態にさせるようにしたので、両変速ク
ラッチ(44,45,…)における伝達トルク異常を回
避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のHMTの構成を示す全体模式図である。
【図2】従来のHMTにおける液圧ポンプの可変斜板の
斜板角度及びHMT変速比の関係と、入力軸及び出力軸
の回転数並びにHMT変速比の関係とを関連付けて示す
説明図である。
【図3】従来のHMTのMTにおける第1及び第2遊星
歯車機構の遊星速度線図である。
【図4】従来のHMTを搭載した車両における、急減速
時の、車速、変速比、エンジン回転数及び出力トルクの
変化を関連付けて示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る車両用変速機の変速
制御装置を示す概略構成図である。
【図6】上記実施形態1のHMTの構成を示す全体模式
図である。
【図7】上記実施形態1のHMTのMTにおける第1及
び第2遊星歯車機構の遊星速度線図である。
【図8】上記実施形態1のHMTにおける、各クラッチ
機構の接続状態と、液圧ポンプの可変斜板の斜板角度及
びHMTの変速比の関係と、入力軸及び出力軸の回転数
並びにHMTの変速比の関係とを関連付けて示す説明図
である。
【図9】通常の加減速時におけるクラッチ切換作動を示
す説明図である。
【図10】急減速時の第4モードから第3モードへの変
速手順を示すフローチャート図である。
【図11】急減速時の第3モードから第2モードへの変
速手順を示すフローチャート図である。
【図12】急減速時制御における図8対応図である。
【図13】急減速時制御における図9対応図である。
【図14】上記実施形態1のHMTにおける図4対応図
である。
【図15】本発明の実施形態2に係る図5対応図であ
る。
【図16】本発明の実施形態2に係る図8対応図であ
る。
【図17】本発明の実施形態2に係る図12対応図であ
る。
【符号の説明】
1 エンジン 2,7 HMT(無段変速機) 4 MT(機械式トランスミッション) 5 HST(静液圧式トランスミッション) 11,11 駆動輪 13 ブレーキ操作量センサ(ブレーキ操作量
検出手段) 14 入力回転数センサ(エンジン回転数検出
手段)31 基本制御部(基本制御手段) 32 急減速判定部(急減速判定手段) 33 急減速時制御部(急減速時制御手段) 33a 斜板中立制御部(斜板中立制御手段) 44,45,46,24,25,71,72,73 クラッチ機構(変速クラッチ) 51 液圧ポンプ 52 液圧モータ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン(1)から駆動輪(11,1
    1)までの動力伝達経路に、少なくとも1つの変速クラ
    ッチ(44,45,…)を有する機械式トランスミッシ
    ョン(4)と、上記エンジン(1)側に連結された液圧
    ポンプ(51)及び上記駆動輪(11,11)側に連結
    された液圧モータ(52)を有し該液圧ポンプ(51)
    及び液圧モータ(52)の少なくとも一方を斜板角度の
    増減変更により容量可変に構成した静液圧式トランスミ
    ッション(5)とが並列に配設された無段変速機(2,
    7)を備え、 上記機械式トランスミッション(4)の変速クラッチ
    (44,45,…)、及び、上記静液圧式トランスミッ
    ション(5)の液圧ポンプ(51)又は液圧モータ(5
    2)の斜板角度を、基本制御手段(31)により制御
    ることにより、上記無段変速機(2,7)の変速比を無
    段階に変更させるようにした車両用変速機の変速制御装
    置において、 車両の急減速状態を判定する急減速判定手段(32)
    と、 上記急減速判定手段(32)により車両の急減速状態が
    判定されたとき、上記基本制御手段(31)による液圧
    ポンプ(51)又は液圧モータ(52)の斜板角度制御
    を制限するとともに、無段変速機(2,7)の変速比が
    小さくなるよう機械式トランスミッション(4)の変速
    クラッチ(44,45,…)を切換作動させる急減速時
    制御手段(33)と 上記急減速判定手段(32)により車両の急減速状態が
    判定されたとき、上記液圧ポンプ(51)の斜板角度を
    0度にさせる斜板中立制御手段(33a)と を備えてい
    ることを特徴とする車両用変速機の変速制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 急減速時制御手段(33)は、遮断状態にされる側の変
    速クラッチ(44,45,…)を離合させた後に、接続
    状態にされる側の変速クラッチ(44,45,…)を係
    合させるものであることを特徴とする車両用変速機の変
    速制御装置。
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