JP3165875B2 - 薄片状二酸化チタンの製造方法 - Google Patents
薄片状二酸化チタンの製造方法Info
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- JP3165875B2 JP3165875B2 JP30773393A JP30773393A JP3165875B2 JP 3165875 B2 JP3165875 B2 JP 3165875B2 JP 30773393 A JP30773393 A JP 30773393A JP 30773393 A JP30773393 A JP 30773393A JP 3165875 B2 JP3165875 B2 JP 3165875B2
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Description
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、塗料・樹脂顔料、フィ
ルムコーティング組成物、導電粉末用基材、化粧料等の
構成材料として有用な薄片形状を有する二酸化チタンの
製造方法に関する。
ルムコーティング組成物、導電粉末用基材、化粧料等の
構成材料として有用な薄片形状を有する二酸化チタンの
製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】二酸化チタン（ＴｉＯ2 ）粉末は、無機
顔料等として各種分野で幅広く使用されている。従来よ
り製造されている二酸化チタン粉末の一般的な粒子形状
は、球状、または不定形である。その光学的性質や、高
配向性による補強効果等の諸特性をより優れたものとす
るには、薄片状ないしは繊維状の形状異方性を付与する
ことが必要である。そのような形状異方性を持つ二酸化
チタン粉末を製造する方法について、これまで種々の工
夫がなされ、例えば特開昭58-88121号公報には、チタン
酸カリウム繊維の工業的合成法の一つであるフラックス
法で製造したチタン酸カリ〔Ｋ2 Ｏ・n ＴｉＯ2 〕の繊
維に酸処理を施し、酸処理で得られる含水二酸化チタン
の針状粒子を熱処理することにより、特定の結晶軸方向
に成長したルチル型二酸化チタン粒子を得ることが開示
され、また特開平4-144918号公報には、チタンアルコキ
サイドと有機アルカリ物質を有機溶剤に溶解して溶液を
調製し、これを平滑面に塗布して塗膜を形成した上、塗
膜に加水分解, 乾燥, 剥離, および焼成の各処理を施す
ことにより、薄片状の二酸化チタンを得ることが開示さ
れている。
顔料等として各種分野で幅広く使用されている。従来よ
り製造されている二酸化チタン粉末の一般的な粒子形状
は、球状、または不定形である。その光学的性質や、高
配向性による補強効果等の諸特性をより優れたものとす
るには、薄片状ないしは繊維状の形状異方性を付与する
ことが必要である。そのような形状異方性を持つ二酸化
チタン粉末を製造する方法について、これまで種々の工
夫がなされ、例えば特開昭58-88121号公報には、チタン
酸カリウム繊維の工業的合成法の一つであるフラックス
法で製造したチタン酸カリ〔Ｋ2 Ｏ・n ＴｉＯ2 〕の繊
維に酸処理を施し、酸処理で得られる含水二酸化チタン
の針状粒子を熱処理することにより、特定の結晶軸方向
に成長したルチル型二酸化チタン粒子を得ることが開示
され、また特開平4-144918号公報には、チタンアルコキ
サイドと有機アルカリ物質を有機溶剤に溶解して溶液を
調製し、これを平滑面に塗布して塗膜を形成した上、塗
膜に加水分解, 乾燥, 剥離, および焼成の各処理を施す
ことにより、薄片状の二酸化チタンを得ることが開示さ
れている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】フラックス法で合成し
たチタン酸カリウム繊維〔Ｋ2 Ｏ・n ＴｉＯ2 〕を酸処
理し、ついで熱処理する上記方法により得られる二酸化
チタン粒子は、ウイスカ状のものに限られる。このもの
は、そこに記載されているようにコンデンサや圧電材料
等として有用な電気特性を有してはいても、極めて微細
な粒子であるため、例えば塗料等の顔料として使用する
場合は、比表面積・吸油量（JIS K 5101）の著しい増大
（塗料の増粘傾向が顕著）による塗料調製の困難を免れ
ず、かつ形成される塗膜の補強作用も乏しい。また、極
微細形態のため、アスベスト繊維に指摘されていると同
様の安全衛生・健康面での懸念がある。他方、金属チタ
ン化合物を有機溶剤で処理し、塗膜の形成，加水分解，
焼成等の処理を行う製造法による場合は、そこに記載さ
れているような光透過性の良好な粉末を得ることができ
ても、有機溶剤，有機アルカリ物質等の使用による環境
衛生・安全性等の問題を付随し、かつ製造コスト面の負
担も大きく、また得られる薄片状粒子はアスペクト比が
小さく、配向性に欠けるため、塗料・樹脂等の補強材と
して使用した場合の補強効果に乏しい。本発明は、二酸
化チタンの製造に関する上記問題を解消し、高アスペク
ト比で配向性を有し、補強特性、光学特性等に優れた薄
片状の二酸化チタンの製造方法を提供するものである。
たチタン酸カリウム繊維〔Ｋ2 Ｏ・n ＴｉＯ2 〕を酸処
理し、ついで熱処理する上記方法により得られる二酸化
チタン粒子は、ウイスカ状のものに限られる。このもの
は、そこに記載されているようにコンデンサや圧電材料
等として有用な電気特性を有してはいても、極めて微細
な粒子であるため、例えば塗料等の顔料として使用する
場合は、比表面積・吸油量（JIS K 5101）の著しい増大
（塗料の増粘傾向が顕著）による塗料調製の困難を免れ
ず、かつ形成される塗膜の補強作用も乏しい。また、極
微細形態のため、アスベスト繊維に指摘されていると同
様の安全衛生・健康面での懸念がある。他方、金属チタ
ン化合物を有機溶剤で処理し、塗膜の形成，加水分解，
焼成等の処理を行う製造法による場合は、そこに記載さ
れているような光透過性の良好な粉末を得ることができ
ても、有機溶剤，有機アルカリ物質等の使用による環境
衛生・安全性等の問題を付随し、かつ製造コスト面の負
担も大きく、また得られる薄片状粒子はアスペクト比が
小さく、配向性に欠けるため、塗料・樹脂等の補強材と
して使用した場合の補強効果に乏しい。本発明は、二酸
化チタンの製造に関する上記問題を解消し、高アスペク
ト比で配向性を有し、補強特性、光学特性等に優れた薄
片状の二酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】本発明の薄片状二酸化チ
タンの製造方法は、ＴｉＯ2 または加熱によりＴｉＯ2
を生成するチタン化合物と、Ｋ2 Ｏまたは加熱によりＫ
2 Ｏを生成するカリウム化合物とを、TiO 2 /K2 O のモ
ル比が１．５〜２．５となる比率に配合した混合物を加
熱溶融し、溶融生成物を冷却することにより、繊維状二
チタン酸カリウム結晶を含む塊状物を得、上記塊状物を
酸水溶液に浸漬し、結晶中のＫ+ イオンの全量を溶出せ
しめると共に、湿式粉砕処理を施すことにより、薄片形
状を有する二チタン酸水和物の粉末を回収し、脱水・乾
燥後、温度５００〜１０００℃で焼成処理することを特
徴としている。
タンの製造方法は、ＴｉＯ2 または加熱によりＴｉＯ2
を生成するチタン化合物と、Ｋ2 Ｏまたは加熱によりＫ
2 Ｏを生成するカリウム化合物とを、TiO 2 /K2 O のモ
ル比が１．５〜２．５となる比率に配合した混合物を加
熱溶融し、溶融生成物を冷却することにより、繊維状二
チタン酸カリウム結晶を含む塊状物を得、上記塊状物を
酸水溶液に浸漬し、結晶中のＫ+ イオンの全量を溶出せ
しめると共に、湿式粉砕処理を施すことにより、薄片形
状を有する二チタン酸水和物の粉末を回収し、脱水・乾
燥後、温度５００〜１０００℃で焼成処理することを特
徴としている。
【０００５】
【作用】本発明は、チタン酸カリウムの工業的合成法の
一つであるメルト法を利用し、原料粉末の加熱溶融物を
冷却して初生相として繊維状の二チタン酸カリウム結晶
〔Ｋ2 Ｔｉ2 Ｏ5 〕を生成させ、これにＫ+ イオンの溶
出と湿式粉砕を施し、ついで結晶構造を変換する焼成処
理を加えて薄片形状の二酸化チタンを収得するものであ
る。その製造工程では、初生相である二チタン酸カリウ
ム結晶のＫ+ イオンの溶出（脱カリウム処理〕の処理液
として、塩酸，硫酸等の酸水溶液が使用される以外は、
有機溶剤，その他の薬液を必要としない。初生相である
繊維状二チタン酸カリウム結晶は、ＴｉＯ5 三角両錐体
の連鎖が積層した層状構造結晶を有し、酸水溶液による
脱カリウム過程で、層間のＫ+ イオンがＨ+ またはＨ3
Ｏ+ と置換されて膨潤・劈解を生じる。これに湿式粉砕
処理を加えることにより、繊維同士の分離，層間の剥離
が促進され、形態の揃った薄片形状を有する水和二酸化
チタンの粉末が高収率で回収される。その水和二酸化チ
タンの粉末を焼成処理して得られる本発明の薄片状二酸
化チタンの粒子形態は、平均最長さしわたし径（平均長
さ）約５〜１００μｍ、平均最短さしわたし径（平均
幅）約２〜２０μｍ、厚さ約０．０１〜２μｍで、アス
ペクト比（平均長さを厚さで除した値）は約３０〜２０
０である。本発明の薄片状二酸化チタン粒子は、塗料・
樹脂等の添加剤として適度の大きさを有するので、ウィ
スカのような極微細粒子と異なって混練調製が容易であ
り、かつ高いアスペクト比により良好な配向性を有し、
高い補強作用を奏する。またその薄片粒子は光学的特性
として、高い光反射率と高い屈折率を有している。
一つであるメルト法を利用し、原料粉末の加熱溶融物を
冷却して初生相として繊維状の二チタン酸カリウム結晶
〔Ｋ2 Ｔｉ2 Ｏ5 〕を生成させ、これにＫ+ イオンの溶
出と湿式粉砕を施し、ついで結晶構造を変換する焼成処
理を加えて薄片形状の二酸化チタンを収得するものであ
る。その製造工程では、初生相である二チタン酸カリウ
ム結晶のＫ+ イオンの溶出（脱カリウム処理〕の処理液
として、塩酸，硫酸等の酸水溶液が使用される以外は、
有機溶剤，その他の薬液を必要としない。初生相である
繊維状二チタン酸カリウム結晶は、ＴｉＯ5 三角両錐体
の連鎖が積層した層状構造結晶を有し、酸水溶液による
脱カリウム過程で、層間のＫ+ イオンがＨ+ またはＨ3
Ｏ+ と置換されて膨潤・劈解を生じる。これに湿式粉砕
処理を加えることにより、繊維同士の分離，層間の剥離
が促進され、形態の揃った薄片形状を有する水和二酸化
チタンの粉末が高収率で回収される。その水和二酸化チ
タンの粉末を焼成処理して得られる本発明の薄片状二酸
化チタンの粒子形態は、平均最長さしわたし径（平均長
さ）約５〜１００μｍ、平均最短さしわたし径（平均
幅）約２〜２０μｍ、厚さ約０．０１〜２μｍで、アス
ペクト比（平均長さを厚さで除した値）は約３０〜２０
０である。本発明の薄片状二酸化チタン粒子は、塗料・
樹脂等の添加剤として適度の大きさを有するので、ウィ
スカのような極微細粒子と異なって混練調製が容易であ
り、かつ高いアスペクト比により良好な配向性を有し、
高い補強作用を奏する。またその薄片粒子は光学的特性
として、高い光反射率と高い屈折率を有している。
【０００６】以下、本発明について工程順に説明する。 〔原料調製〕出発原料は、ＴｉＯ2 または加熱によりＴ
ｉＯ2 を生成するチタン化合物と、Ｋ2 Ｏまたは加熱に
よりＫ2 Ｏを生成するカリウム化合物を、TiO 2 /K2 O
（モル比）が１．５〜２．５となる割合で混合すること
により調製される。チタン化合物は、精製アナターゼ、
精製ルチル等が使用される。天然産のアナターゼサンド
やルチルサンド等の使用も可能ではあるが、これらは不
純物元素（Ｃｒ，Ｆｅ，Ｓｉ，Ａｌ，Ｚｒ，Ｖ等）を多
く含むため、焼成処理工程で、薄片粒子に亀裂を生じ易
く、適正な薄片形状を確保することが困難となる。また
得られる製品粉末が着色（例えば黄ないし褐色）し、具
体的用途の適用に制約を受ける原因ともなる。このた
め、高純度（約９８％以上）の精製アナターゼや精製ル
チル等を使用するのがよい。チタン化合物に混合される
カリウム化合物は、代表的には炭酸カリウム（Ｋ2ＣＯ
3 ）であるが、このほか水酸化物や硝酸塩等も使用する
ことができる。チタン化合物とカリウム化合物との混合
割合〔TiO 2 /K2 O 〕を１．５〜２．５とするのは、そ
の加熱溶融物の冷却凝固工程で、初生相として二チタン
酸カリウム結晶〔Ｋ2 Ｔｉ2 Ｏ5 〕の繊維を効率よく生
成させるためである。また初生相結晶繊維として二チタ
ン酸カリウム繊維を生成させることとしているのは、こ
のものが層状の結晶構造を有することにより、Ｋ+ イオ
ンの溶出と薄片状粒子への粉砕を比較的容易に行うこと
ができるからである。
ｉＯ2 を生成するチタン化合物と、Ｋ2 Ｏまたは加熱に
よりＫ2 Ｏを生成するカリウム化合物を、TiO 2 /K2 O
（モル比）が１．５〜２．５となる割合で混合すること
により調製される。チタン化合物は、精製アナターゼ、
精製ルチル等が使用される。天然産のアナターゼサンド
やルチルサンド等の使用も可能ではあるが、これらは不
純物元素（Ｃｒ，Ｆｅ，Ｓｉ，Ａｌ，Ｚｒ，Ｖ等）を多
く含むため、焼成処理工程で、薄片粒子に亀裂を生じ易
く、適正な薄片形状を確保することが困難となる。また
得られる製品粉末が着色（例えば黄ないし褐色）し、具
体的用途の適用に制約を受ける原因ともなる。このた
め、高純度（約９８％以上）の精製アナターゼや精製ル
チル等を使用するのがよい。チタン化合物に混合される
カリウム化合物は、代表的には炭酸カリウム（Ｋ2ＣＯ
3 ）であるが、このほか水酸化物や硝酸塩等も使用する
ことができる。チタン化合物とカリウム化合物との混合
割合〔TiO 2 /K2 O 〕を１．５〜２．５とするのは、そ
の加熱溶融物の冷却凝固工程で、初生相として二チタン
酸カリウム結晶〔Ｋ2 Ｔｉ2 Ｏ5 〕の繊維を効率よく生
成させるためである。また初生相結晶繊維として二チタ
ン酸カリウム繊維を生成させることとしているのは、こ
のものが層状の結晶構造を有することにより、Ｋ+ イオ
ンの溶出と薄片状粒子への粉砕を比較的容易に行うこと
ができるからである。
【０００７】〔加熱溶融および溶融物の冷却凝固〕出発
原料を融点以上の適当な温度（約９５０〜１１００℃）
に加熱して溶融物とする。ついで、加熱溶融物を冷却凝
固して塊状物を得る。その塊状物は、冷却凝固過程での
温度勾配に沿つて初生相繊維として成長した二チタン酸
カリウム結晶の束状集合体である。
原料を融点以上の適当な温度（約９５０〜１１００℃）
に加熱して溶融物とする。ついで、加熱溶融物を冷却凝
固して塊状物を得る。その塊状物は、冷却凝固過程での
温度勾配に沿つて初生相繊維として成長した二チタン酸
カリウム結晶の束状集合体である。
【０００８】〔脱カリウム・粉砕処理〕上記塊状物を液
中に浸漬して繊維状二チタン酸カリウム結晶から、Ｋ+
イオンの全量を溶出させ、二酸化チタン組成の水和物
（ＴｉＯ2 ・n Ｈ2 Ｏ）に組成変換する。この脱カリウ
ム処理は酸水溶液を処理液として行われる。その好適な
酸水溶液の例として、０．８％以上の硫酸水溶液、０．
８％以上の塩酸水溶液等が挙げられる。酸水溶液中での
処理により、二チタン酸カリウム繊維（層状構造）の層
間のＫ + イオンは、Ｈ+ やＨ3 Ｏ+ で置換され、これに
伴つて層間の膨潤・剥離を生じる。また繊維同士の分離
も生じる。しかし、酸水溶液中に単に浸漬するだけで
は、二酸化チタン水和物に組成変換することはできて
も、これを薄片形状の粒子として高収率で回収すること
はできない。これを可能とするために、本発明では湿式
粉砕処理を加えることとしている。その湿式粉砕処理
は、ミキサー、ボールミル、乳化分散機、乳鉢等を使用
し適用時間（概ね５〜６０分間）処理することにより達
成することができる。なお、酸水溶液を処理液とする上
記脱カリウム・粉砕処理の実施に先立って、塊状物を、
水中に適当時間、例えば一夜浸漬する予備処理を施すこ
とは、脱カリウムおよび粉砕処理をより効率よく達成す
ることが可能となる点で好ましいことである。
中に浸漬して繊維状二チタン酸カリウム結晶から、Ｋ+
イオンの全量を溶出させ、二酸化チタン組成の水和物
（ＴｉＯ2 ・n Ｈ2 Ｏ）に組成変換する。この脱カリウ
ム処理は酸水溶液を処理液として行われる。その好適な
酸水溶液の例として、０．８％以上の硫酸水溶液、０．
８％以上の塩酸水溶液等が挙げられる。酸水溶液中での
処理により、二チタン酸カリウム繊維（層状構造）の層
間のＫ + イオンは、Ｈ+ やＨ3 Ｏ+ で置換され、これに
伴つて層間の膨潤・剥離を生じる。また繊維同士の分離
も生じる。しかし、酸水溶液中に単に浸漬するだけで
は、二酸化チタン水和物に組成変換することはできて
も、これを薄片形状の粒子として高収率で回収すること
はできない。これを可能とするために、本発明では湿式
粉砕処理を加えることとしている。その湿式粉砕処理
は、ミキサー、ボールミル、乳化分散機、乳鉢等を使用
し適用時間（概ね５〜６０分間）処理することにより達
成することができる。なお、酸水溶液を処理液とする上
記脱カリウム・粉砕処理の実施に先立って、塊状物を、
水中に適当時間、例えば一夜浸漬する予備処理を施すこ
とは、脱カリウムおよび粉砕処理をより効率よく達成す
ることが可能となる点で好ましいことである。
【０００９】〔焼成処理〕脱カリウムと湿式粉砕処理を
施して処理液中から回収された二酸化チタン水和物の薄
片状粒子は、焼成処理により、化学組成的にも結晶構造
的にも完全な二酸化チタンの薄片状粒子に変換される。
焼成処理温度は約５００〜１０００℃の範囲が適当であ
る。処理温度の下限を５００℃とするのは、それより低
いと、処理に長時間を要するだけでなく、結晶構造の完
全な変換が困難となるからであり、１０００℃を上限と
するのは、それより高温度では、粒子相互の融着や、粒
子形状の変形を生じ、形状のよい薄片粒子を得ることが
困難となるからである。好ましくは、約７００〜９６０
℃である。
施して処理液中から回収された二酸化チタン水和物の薄
片状粒子は、焼成処理により、化学組成的にも結晶構造
的にも完全な二酸化チタンの薄片状粒子に変換される。
焼成処理温度は約５００〜１０００℃の範囲が適当であ
る。処理温度の下限を５００℃とするのは、それより低
いと、処理に長時間を要するだけでなく、結晶構造の完
全な変換が困難となるからであり、１０００℃を上限と
するのは、それより高温度では、粒子相互の融着や、粒
子形状の変形を生じ、形状のよい薄片粒子を得ることが
困難となるからである。好ましくは、約７００〜９６０
℃である。
【００１０】なお、二酸化チタンの結晶相には、ルチル
型とアナターゼ型とがあり、焼成処理を温度約９００℃
以下で行う場合は、アナターゼ型の二酸化チタン、それ
を越える温度域で行う場合はアナターゼ型にルチル型の
混在した二酸化チタンが得られる。アナターゼ型とルチ
ル型とを対比すると、例えばその硬さ（モース硬度）は
前者では約５．５〜６，後者のそれは約７〜７．５であ
り、両者の混相を有する薄片状二酸化チタンはその混相
比率に対応する硬度を呈する。従って、具体的な製品用
途に応じて焼成処理温度を適宜調節することにより、そ
の用途に適った、アナターゼ型、またはアナターゼ型と
ルチル型の混相を有する二酸化チタンの薄片状粒子を得
ることができる。
型とアナターゼ型とがあり、焼成処理を温度約９００℃
以下で行う場合は、アナターゼ型の二酸化チタン、それ
を越える温度域で行う場合はアナターゼ型にルチル型の
混在した二酸化チタンが得られる。アナターゼ型とルチ
ル型とを対比すると、例えばその硬さ（モース硬度）は
前者では約５．５〜６，後者のそれは約７〜７．５であ
り、両者の混相を有する薄片状二酸化チタンはその混相
比率に対応する硬度を呈する。従って、具体的な製品用
途に応じて焼成処理温度を適宜調節することにより、そ
の用途に適った、アナターゼ型、またはアナターゼ型と
ルチル型の混相を有する二酸化チタンの薄片状粒子を得
ることができる。
【００１１】
（１）出発原料の調製 精製酸化チタン粉末（純度９９．８％）と工業用炭酸カ
リウム粉末（純度９９％）とを、ＴｉＯ2 ／Ｋ2 Ｏのモ
ル比が約２となる割合に混合。 （２）加熱溶融 上記原料粉末混合物を白金るつぼに入れ、１１００℃に
加熱し４０分間を要して溶融処理。 （３）冷却凝固 加熱溶融物を銅皿に流し込み、急速冷却し、繊維状の二
チタン酸カリウム結晶からなる塊状物を得る。 （４）脱カリウム・湿式粉砕処理 塊状物を５０倍量（重量）の水に一夜浸漬した後、これ
に工業用硫酸（６２．５％）を塊状物と同重量加え、プ
ロベラ攪拌下に、４時間を要して脱カリウム処理。つい
で、家庭用ミキサーにより湿式粉砕処理（１０分間）を
施す。 （５）焼成処理 脱カリウム・粉砕処理を施した粉末を処理液から回収
し、脱水・乾燥の後、アルミナるつぼに入れ、炉中に装
入し温度８００℃で２Ｈｒの焼成処理を行う。得られた
粉末は次のとおりである。 結晶相：アナターゼ型二酸化チタン（ＴｉＯ2 ）〔Ｘ線
回折による〕。 粒子形態：平均最長さしわたし径（長さ）約５０μｍ、 平均最短さしわたし径（幅） 約１５μｍ、 平均厚さ 約０．５μｍ、 アスペクト比 １００。 光学性質：光反射性が高く、乳白色を呈する。
リウム粉末（純度９９％）とを、ＴｉＯ2 ／Ｋ2 Ｏのモ
ル比が約２となる割合に混合。 （２）加熱溶融 上記原料粉末混合物を白金るつぼに入れ、１１００℃に
加熱し４０分間を要して溶融処理。 （３）冷却凝固 加熱溶融物を銅皿に流し込み、急速冷却し、繊維状の二
チタン酸カリウム結晶からなる塊状物を得る。 （４）脱カリウム・湿式粉砕処理 塊状物を５０倍量（重量）の水に一夜浸漬した後、これ
に工業用硫酸（６２．５％）を塊状物と同重量加え、プ
ロベラ攪拌下に、４時間を要して脱カリウム処理。つい
で、家庭用ミキサーにより湿式粉砕処理（１０分間）を
施す。 （５）焼成処理 脱カリウム・粉砕処理を施した粉末を処理液から回収
し、脱水・乾燥の後、アルミナるつぼに入れ、炉中に装
入し温度８００℃で２Ｈｒの焼成処理を行う。得られた
粉末は次のとおりである。 結晶相：アナターゼ型二酸化チタン（ＴｉＯ2 ）〔Ｘ線
回折による〕。 粒子形態：平均最長さしわたし径（長さ）約５０μｍ、 平均最短さしわたし径（幅） 約１５μｍ、 平均厚さ 約０．５μｍ、 アスペクト比 １００。 光学性質：光反射性が高く、乳白色を呈する。
【００１２】
【発明の効果】本発明方法によれば、チタン酸カリウム
繊維の工業的製造法のひとつとして知られているメルト
法により合成される二チタン酸カリウム繊維に、脱カリ
ウム・粉砕処理と焼成処理を施して二酸化チタンを製造
することができるので、大量生産性を有し、コスト的に
も有利である。しかもその製造工程は特殊な薬液の使用
を必要とせず、環境汚染の問題もない。また、本発明に
より製造される二酸化チタンは、ウィスカのような極微
細繊維と異なって比較的粗粒の粒子形態を有するので、
塗料や樹脂等の充填材として使用する場合にも混練の困
難はなく、かつアスペクト比の高い薄片形状を有してい
ることにより、配向性が高く、補強効果に優れている。
更に、光反射率が高く光学的性質を要求される用途にも
有用である。なお、ウィスカに比し粗大な粒子形態を有
しているので、アスペスト繊維に指摘されているような
健康面での懸念もない。
繊維の工業的製造法のひとつとして知られているメルト
法により合成される二チタン酸カリウム繊維に、脱カリ
ウム・粉砕処理と焼成処理を施して二酸化チタンを製造
することができるので、大量生産性を有し、コスト的に
も有利である。しかもその製造工程は特殊な薬液の使用
を必要とせず、環境汚染の問題もない。また、本発明に
より製造される二酸化チタンは、ウィスカのような極微
細繊維と異なって比較的粗粒の粒子形態を有するので、
塗料や樹脂等の充填材として使用する場合にも混練の困
難はなく、かつアスペクト比の高い薄片形状を有してい
ることにより、配向性が高く、補強効果に優れている。
更に、光反射率が高く光学的性質を要求される用途にも
有用である。なお、ウィスカに比し粗大な粒子形態を有
しているので、アスペスト繊維に指摘されているような
健康面での懸念もない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平４−321517（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−46926（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−258737（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−156347（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−144918（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) C01G 23/00 ＣＡ（ＳＴＮ)
Claims (1)
- 【請求項１】 ＴｉＯ2 または加熱によりＴｉＯ2 を生
成するチタン化合物と、Ｋ2 Ｏまたは加熱によりＫ2 Ｏ
を生成するカリウム化合物とを、TiO 2 /K2O のモル比
が１．５〜２．５となる比率に配合した混合物を加熱溶
融し、 溶融生成物を冷却することにより、繊維状二チタン酸カ
リウム結晶を含む塊状物を得、 上記塊状物を酸水溶液に浸漬し、結晶中のＫ+ イオンの
全量を溶出せしめると共に、湿式粉砕処理を施すことに
より、薄片形状を有する二チタン酸水和物の粉末を回収
し、 脱水・乾燥後、温度５００〜１０００℃で焼成処理する
ことを特徴とする薄片状二酸化チタンの製造方法。
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| JP30773393A JP3165875B2 (ja) | 1993-12-08 | 1993-12-08 | 薄片状二酸化チタンの製造方法 |
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| JP (1) | JP3165875B2 (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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