JP3165688B2 - 発酵法によるd―イソクエン酸の製造法 - Google Patents

発酵法によるd―イソクエン酸の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、発酵法によるd−イソクエン酸の製造法に
関する。
d−イソクエン酸は医薬品あるいは食品添加物などと
して有用な有機酸である。
従来の技術 従来、d−イソクエン酸の製造法としては、酵母を用
いる発酵法が知られている〔日本農芸化学会誌,44(1
1),493−498(1970)、英国特許1199700、フランス特
許1596056〕。
d−イソクエン酸生産性の高い変異株を収得すること
を目的として、カンディダ・リポリティカ(Candida li
polytica)からフルオロ酢酸耐性変異株の誘導が試みら
れ、フルオロ酢酸の阻害部位であるアコニターゼ活性の
上昇した株は取得できたが、この菌株はd−イソクエン
酸比率の向上した株ではなかった。〔農芸化学,48(1
0),543−548,549−554(1974)〕。
また、酵母菌を使用する発酵法によるd−イソクエン
酸の製造において、d−イソクエン酸生産量比を向上さ
せるためイタコン酸を添加する方法〔日本農芸化学会大
会要旨集,348(1976)、特公昭56−39194号公報〕、カ
ンディダ・ゼイラノイデス(Candida zeylanoides)を
用いた発酵法によるd−イソクエン酸の製造において、
黄血塩を添加する方法〔ジャーナル・オブ・ファーメン
テーション・テクノロジー(J.Ferment.Technol),52
(8),542−550(1974)〕が知られている。
発明が解決しようとする課題 医薬品あるいは食品添加物などとして有用なd−イソ
クエン酸を、工業的により効率よく安価に製造する方法
が求められている。
課題を解決するための手段 本発明は、カンディダ属に属し、モノフルオロ酢酸に
耐性であり、d−イソクエン酸を唯一の炭素源として生
育できないか、または生育能がその親株に比べて著しく
低下しており、かつd−イソクエン酸生産能を有する微
生物を培地に培養し、培養物中にd−イソクエン酸を生
成蓄積させ、該培養物よりd−イソクエン酸を採取する
ことを特徴とする発酵法によるd−イソクエン酸の製造
法を提供する。
本発明で用いられる微生物としては、カンディダ属に
属し、モノフルオロ酢酸に耐性でありd−イソクエン酸
を唯一の炭素源として生育できないか、または生育能が
その親株に比べて著しく低下しており、かつd−イソク
エン酸生産能を有する微生物であればいずれでもよい。
該微生物が属する酵母の種名としては、例えば、カンデ
ィダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、カンディ
ダ・ゼイラノイデス(C.zeylanoides)、カンディダ・
ギヤマンディ(C.guilliermondii)、カンディダ・アル
ビカンス(C.albicans)、カンディダ・フミコラ(C.hu
micola)、カンディダ・パラプシロシス(C.parapsilos
is)、カンディダ・ブルムプチ(C.brumptii)などがあ
げられる。具体的には、カンディダ・ゼイラノイデス
(Candida zeylanoides)H−7728(平成2年2月16日
付で工業技術院微生物工業技術研究所にFERM BP−2756
として寄託してある)などがあげられる。
本発明で用いる微生物は、上記性質を有するものであ
れば野生株、変異株のいずれも用いることができる。
変異株は、紫外線照射やN−ニトロ−N′−メチル−
N−ニトロソグアニジン(NTG)処理などの化学的変異
処理など公知の変異手段により得ることができる。
本発明によるd−イソクエン酸の生産は、上記微生物
を通常の有機酸生産に用いる培養法で培養することによ
り可能である。使用培地としては、炭素源、窒素源、無
機物その他使用菌株の必要とする栄養素をほどよく含有
するものならば、合成培地または天然培地のいずれも使
用可能である。
炭素源としては、グルコース、シュークロース、糖
蜜、澱粉加水分解物などの炭水化物、エタノール、グリ
セロールなどのアルコール類、酢酸などの有機酸、オレ
イン酸などの脂肪酸、大豆油、魚油などの油脂類、ある
いはテトラデカン、ヘキサデカンなどのパラフィン系炭
化水素が使用できる。さらに使用する微生物の資化性に
よって、有機化合物なども単独または混合状態で用いら
れる。
窒素源としては、アンモニアまたは塩化アンモニウ
ム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモ
ニウムなどの各種無機および有機アンモニウム塩類ある
いは尿素および他の窒素含有物質ならびにペプトン、肉
エキス、酵母エキス、コーン・スチープ・リカー、カゼ
イン加水分解物などの窒素含有有機物など種々のものが
使用可能である。使用する酵母によっては、硝酸塩もま
た窒素源として用いられる。以上の各種窒素源は、単独
または2種以上混合しても使用できる。
さらに無機物としては、リン酸第一水素カリウム、リ
ン酸第二水素カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモ
ニウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一
鉄、硫酸マンガンおよび炭酸カルシウムなどを使用す
る。
微生物の生育に必要であるビタミン、アミノ酸源など
は、前記したような他の培地組成に伴って培地に供給さ
れれば特に加えなくてもよい。
培養は、振盪培養または通気攪拌培養などの好気的条
件下に行う。培養温度は一般に20〜35℃が好適である。
培地のpHは、一般に2.5〜10、好ましくは3〜8の範囲
である。培養期間は通常2〜8日間である。
培養液からd−イソクエン酸を採取する方法は、培養
終了後、菌体を除去して濃縮晶析する方法、活性炭処理
あるいはイオン交換樹脂処理などの公知の方法によって
行われる。
以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明する。
実施例1. 変異株の採取 d−イソクエン酸生産能を有するカンディダ・ゼイラ
ノイデス(Candida zeylanoides)ATCC 15585を親株と
して用いた。YM培地(麦芽エキス3g、酵母エキス3g、ポ
リペプトン5gおよびグルコース10gを水1に含み、pH
6.0に調整した培地)で30℃、20時間培養した菌体(10
8-9cell/ml)を集め、0.2M酢酸緩衝液(pH5.0)で洗浄
後懸濁し、これにNTGを最終濃度が1mg/mlとなるように
加え、30℃、1時間保持して変異処理を行った。この変
異処理菌体を同緩衝液で洗浄後、菌体を最少培地(バク
ト・ナイトロジェン・ベース(ディフコ社製)6.7g/
、寒天2%、pH5.5)にモノフルオロ酢酸ナトリウム4
g/、L−プロリン1g/を含有する平板寒天培地に塗
布し、30℃で5〜10日間培養し、該平板培地上に生育す
るコロニーをモノフルオロ酢酸耐性株として分離した。
このうちd−イソクエン酸1%を含む上記最少培地に生
育しないか、または親株であるカンディダ・ゼイラノイ
デスATCC15585に比べて著しく生育の遅い株を目的の変
異株として分離し、カンディダ・ゼイラノイデス(Cand
ida zeylanoides)H−7728(FERM BP−2756)とした。
ATCC15585(親株)およびH−7728(変異株)のモノ
フルオロ酢酸に対する感受性と各種炭素源での生育を第
1表に示す。
ATCC15585およびH−7728のモノフルオロ酢酸に対す
る感受性は、上記最少培地にモノフルオロ酢酸ナトリウ
ム4g/を含有する平板寒天培地に両菌体を塗布し、30
℃、7日間培養後の生育とモノフルオロ酢酸ナトリウム
無添加培地での同条件での培養後の生育で示す。
各種炭素源での生育は、YM培地で生育した菌体を0.85
%塩化ナトリウム溶液で洗浄し懸濁後、該菌体を最少培
地(バクト・ナイトロジエン・ベース 6.7g/、pH5.
5)に炭酸カルシウム2%および各種炭素源1%を含む
液体培地に植菌し、30℃、48時間振盪培養後の生育状態
を660nmでの吸光度を測定することにより調べた。その
結果を第1表に示す。
実施例2. d−イソクエン酸生産試験 種菌としては実施例1で得たカンディダ・ゼイラノイ
デスH−7728(FERM BP−2756)を用い、これを40mlの
種培地(組成:グルコース5%、NH4Cl 0.2%、KH2PO4
0.05%、MgSO4・7H2O 0.05%、酵母エキス 0.1%、コ
ーン・スチープ・リカー0.1%、 CaCO33.3%、pH5.5)を含む250ml容三角フラスコに接種
し、30℃で24時間、210rpmのロータリーシェーカー上で
振盪培養した。この種培養液4mlを40mlの下記組成の発
酵培地を含む250ml容三角フラスコに接種して、上記種
培養と同様の条件下で7日間培養した。
対照としてATCC15585(親株)も同様の方法で培養し
た。
発酵培地の組成:n−パラフィン(炭素数12から15を主
成分とする混合物、日本鉱業社製)5%、NH4Cl 0.4
%、KH2PO40.05%、MgSO4・7H2O 0.05%、ZnSO4・7H2O
2mg/、MnSO4・4〜6H2O 2mg/、FeSO4・7H2O 5m
g/、CuSO4・5H2O 150μg/、ビオチン100μg/、
サイアミン塩酸塩5mg/、CaCO33%(pH5.5) 発酵終了後のd−イソクエン酸および副生するクエン
酸の生成量は、高速液体クロマトグラフィー法により定
量した。なお、クエン酸はカルシウム塩として沈澱して
いるため、0.5規定塩酸溶液を添加して沈澱を溶解させ
た後、遠心分離して得られた上澄液を試料として用い
た。
その結果を第2表に示す。
H−7728株を用いて得たd−イソクエン酸含有発酵終
了液2を遠心分離して菌体およびその他の不純物を除
いた上澄液を、ダイヤイオンSK1B(H+型)(三菱化成
社製)の樹脂0.5を用いて脱カチオンし、10規定水酸
化カリウム溶液でpH3.6に調整後、活性炭処理して脱色
した。これを約100mlになるまで減圧濃縮したところ、
d−イソクエン酸モノカリウム塩が析出した。その重量
は56gで純度は95%であった。
さらに、その10gの結晶を250mlの水に溶解後、ダイヤ
イオンSK1B(H+型)(三菱化成社製)の樹脂40mlを用
いて脱カチオンし、常温下で濃縮したところ、計算量の
d−イソクエン酸を含むペースト状の標品が純品換算で
8.35g得られた。これを再び水50mlに溶解して100℃で30
分間加熱処理を行った後濃縮乾固したところ、d−イソ
クエン酸はラクトン体となって計算量7.57gが得られ
た。
発明の効果 本発明により、収率よくしかも安価にd−イソクエン
酸を発酵生産することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 1/00 - 41/00 WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カンディダ属に属し、モノフルオロ酢酸に
    耐性であり、d−イソクエン酸を唯一の炭素源として生
    育できないか、または生育能がその親株に比べて著しく
    低下しており、かつd−イソクエン酸生産能を有する微
    生物を培地に培養し、培養物中にd−イソクエン酸を生
    成蓄積させ、該培養物よりd−イソクエン酸を採取する
    ことを特徴とする発酵法によるd−イソクエン酸の製造
    法。
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