JP4828049B2 - 新規微生物および当該微生物によるピルビン酸の生産方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規微生物および当該微生物によるピルビン酸の生産方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、カンジダ属に属しかつピルビン酸生産能を有する新規な微生物および当該微生物を用いて短時間でピルビン酸を高収率で生産できる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ピルビン酸は、糖類、特にグルコースから乳酸(乳酸発酵)またはエタノール(アルコール発酵)を生成する解糖系における生体代謝の重要な中間体であり、それ自体反応性に富む2−ケトカルボン酸であるため、パーキンソン氏病薬L−ドーパや抗インフルエンザ薬等の医薬品合成原料・中間体をはじめとして、各種α−アミノ酸製造原料、代謝促進物質、化粧品原料、培地成分、香料原料など、多様な用途に有用な物質である。
【0003】
加えて、ピルビン酸は、筋細胞へのグルコースの輸送の増加に関わることが判明し、これにより、ピルビン酸の摂取によりスポーツ時の持久力を高めることができると考えられている。さらに、ピルビン酸塩が代謝の促進および脂肪の利用促進という2つのメカニズムによって、体重と体脂肪の減少を共に加速することも判明した。このような理由からピルビン酸単独で、または他の化合物を配合して、ダイエット製剤、ピルビン酸補充用製剤、手術時の移植溶液や灌流溶液、腸内製剤、口腔内組成物、化粧料、ならびに医薬品原料の中間体等、医薬、食品、工業薬品などの用途に適用されたり、ピルビン酸自体の酸性を利用して酸味料や滅菌などの用途への利用も増加してきている。このように、近年、各種産業においてピルビン酸の需要が高まり、多くのピルビン酸が流通されている。
【0004】
このピルビン酸は、従来より、これら有用な代謝産物の一つであるピルビン酸を分泌する微生物を用いて、発酵法により基質の炭水化物からピルビン酸を調製する方法が研究され、報告されている。例えば、ピルビン酸生産能を有し、且つピルビン酸資化能の低下又は欠失したヤロイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)の変異株を、糖類を添加した培地で培養し、該培地中にピルビン酸を生成蓄積せしめ、該培地よりピルビン酸を分離採取することによるピルビン酸の製造方法(特開平9−252790号公報)および高濃度のピルビン酸および/またはハロゲン化ピルビン酸に対して耐性を有し、かつピルビン酸生産能を有する微生物、特にトルロプシス・グラブラータ(Torulopsis glabrata)を用いてピルビン酸を生産させ、これを分離採取することによるピルビン酸の製造方法(特開2000−78996号公報)などが報告されている。
【0005】
しかしながら、上記公報に開示される方法では、ピルビン酸が生体代謝の中心に位置する化合物であり、多くの生合成反応に使用され、代謝速度が速いため、ピルビン酸を効率良く培地あるいは菌体内に蓄積することは困難であり、ケトグルタル酸、グリセリン、エタノールや乳酸等の副生成物が多量に副生する上、ピルビン酸自身が化学的に反応性に富んでいるため、培地や菌体内に生成したピルビン酸を精製することが非常に困難であるという問題があった。上記問題に加えて、上記公報に開示される方法で使用される微生物の多くは、その生育に必要とするアミノ酸やビタミンなどの合成を行う能力が欠損する微生物であるため、これら栄養要求性の微生物が必要とする特定の栄養素、すなわち、特定のビタミンやアミノ酸を培地に添加する必須であり、添加するビタミンやアミノ酸の種類によっては高価であり、ゆえにピルビン酸を安価に製造できないという問題もあった。さらに、ピルビン酸を安価に製造することを目的として、特定のビタミンやアミノ酸を少量に抑えて培地に添加することも試みられたが、このような方法では、微生物の生育に伴い、これら特定の栄養素が培地に欠乏して、菌体の生育に阻害が生じ、結果として、目的とする代謝中間体ピルビン酸の収率が低下してしまうという問題が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、ピルビン酸生産能は高いがピルビン酸資化能は低く、かつ高濃度のピルビン酸に対する耐性を有する新規な微生物およびこれによるピルビン酸の生産方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、特定のビタミンやアミノ酸に対する栄養要求性が低く、エタノールや乳酸等の副生成物の生成が抑制された新規な微生物およびこれによるピルビン酸の生産方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる他の目的は、糖の資化速度が速く、アンモニア耐性を有する新規な微生物およびこれによるピルビン酸の生産方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、上記諸特性を満足する微生物をスクリーニングすることに成功した。また、この微生物の培養方法についてさらに鋭意検討を行った結果、培地中の糖の初発濃度を特定の範囲に調整した培地でこの微生物を培養することによって、ピルビン酸を短期間で高い収率で生産できることを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、上記諸目的は、下記(1)〜(5)によって達成される。
【0011】
(1) カンジダ属(Candida)に属し、かつ下記特性:
(i)ピルビン酸生産能は高いがピルビン酸資化能は低い;
(ii)高濃度のピルビン酸に対する耐性を有する;
(iii)ビタミンやアミノ酸に対する栄養要求性が低い;
(iv)副生成物の生成が抑制される;
(v)糖の資化速度が速い;ならびに
(vi)アンモニア耐性を有する
を有する微生物。
【0012】
(2) カンジダ・エスピー MC−P0101株(Candida sp. MC-P0101)FERM BP−7539である、前記(1)に記載の微生物。
【0013】
(3) 前記(1)または(2)に記載の微生物を用いることからなるピルビン酸の生産方法。
【0014】
(4) 初発糖濃度を50〜200g/リットルに調整した培養液中で前記(1)または(2)に記載の微生物を培養してピルビン酸を生産させる、前記(3)に記載の方法。
【0015】
(5) 前記(1)または(2)に記載の微生物を培養して、培養液中にピルビン酸を生産する、前記(3)または(4)に記載の方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、カンジダ属(Candida)に属し、かつ(i)ピルビン酸生産能は高いがピルビン酸資化能は低い;(ii)高濃度のピルビン酸に対する耐性を有する;(iii)ビタミンやアミノ酸に対する栄養要求性が低い;(iv)副生成物の生成が抑制される;(v)糖の資化速度が速い;ならびに(vi)アンモニア耐性を有するという特性を有する微生物に関するものである。この微生物の特に好ましい例としては、カンジダ・エスピー・MC−P0101株(Candida sp. MC-P0101)が挙げられ、この菌株は、以下のスクリーニング方法によって、カンジダ・ユティリス(Candida utilis) IFO 0396を親株として得られたものである。
【0017】
また、本発明の第二は、本発明の微生物を用いることからなるピルビン酸の生産方法に関するものである。この方法は、特に初発糖濃度を50〜200g/リットルという特定の範囲に調整した培地でこの微生物を培養することによって、ピルビン酸を短期間で高い収率で生産できるものである。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明者は、チアミンを補酵素とするピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDC)によるピルビン酸の代謝分解を制御することがピルビン酸発酵には必要である点に着目し、PDC活性の低下について一次スクリーニングを行った後、高濃度のピルビン酸の存在下でも耐性があることが好ましい点をふまえて、ピルビン酸耐性について二次スクリーニングを行った。ここで、本発明によるスクリーニング方法を以下により詳細に記載する。
【0020】
<一次スクリーニング>
キャンディダ ユティリス(Candida utilis)IFO 0396株の菌体を、常法によりN−メチル−N’−ニトロソグアニジン(以下、「NTG」と略す)処理を行った。この際、寒天プレートとして、市販のYM寒天培地(培地1000mlあたり、Yeast Extract 3g、Dextrose 10g、Malt Extract 3g、Agar 20g、Peptone 5g)に1質量%濃度となるように酢酸ナトリウムを添加した培地を使用した。このプレートに、NTG処理を行った菌体を適当に希釈して塗布し、24℃で48時間培養し、生育してきた菌体を採取した。
【0021】
このようにして変異処理を行い採取した菌株は、培地中の酢酸の存在によりピルビン酸(以下、「PA」とも略す)を多く生成しうる菌である可能性が期待できる。つまり、得られた変異株は、親株よりもPDC活性が低下しており、PAを多く生成することができる菌株であるとすれば、発酵液中へのPAの蓄積量は増加しエタノール蓄積量は減少しているものと考えられる。
【0022】
上記一次スクリーニングで得られた菌株のPA発酵能を確認するため、基質グルコースからのPA及びエタノールの蓄積量についてフラスコ培養で親株との比較を行った。フラスコで30℃、40時間培養後の培養液のHPLCによる分析結果を表1に示す。表1に示されるように、いずれの菌においても親株よりもPA蓄積量は多く、エタノール蓄積量は少なかった。なお、培地組成は、ファーメンターにおける発酵用培地組成と同じであり、pHコントロールの目的で培地には炭酸カルシウムが40g/Lの割合で添加された。
【0023】
【表1】
Figure 0004828049
【0024】
<二次スクリーニング>
上記一次スクリーニングで選択された菌株のうち、最もPA蓄積量の高かったキャンディダ ユティリス P−27菌を、さらに市販のYM寒天培地に5質量%の割合でピルビン酸ナトリウムを添加した寒天プレート上に播いて、上記と同様に培養を行い、高濃度のPAに対して耐性を有すると考えられる菌体を採取した。こうして採取した菌株は、高濃度のPAに対して耐性を有し、なおかつ高いPA生成能力を有するものと考えられる。
【0025】
上記二次スクリーニングにより得られた菌株を一次スクリーニングの確認と同様にフラスコ培養により蓄積能力の確認を行った。フラスコで30℃、40時間培養後の培養液のHPLCによる分析結果を表2に示す。表2に示されるように、選択された菌株中で親株に比べてPA蓄積量が顕著に高かった菌株を、キャンディダ エスピー MC−P0101(Candida sp. MC-P0101)と名付けた。
【0026】
【表2】
Figure 0004828049
【0027】
次に、上記したような一次及び二次スクリーニングから得られたキャンディダエスピー MC−P0101(Candida sp. MC-P0101)について、菌学的性質を分析したところ、以下に示されるような結果が得られた。
【0028】
(a)培養的・形態的性質
YM寒天培地で24℃で5〜10日培養したカンジダ・エスピー・MC−P0101は、白色からクリーム色でやや光沢のある円形のコロニーを形成する。
【0029】
また、YM寒天培地で、25℃の生育温度で培養した際の、形態学的性状を下記表3に示す。
【0030】
【表3】
Figure 0004828049
【0031】
(b)生理学的・化学分類学的性質
Figure 0004828049
【0032】
【表4】
Figure 0004828049
【0033】
▲5▼炭素化合物資化能:
【0034】
【表5】
Figure 0004828049
【0035】
▲6▼窒素化合物資化能:
【0036】
【表6】
Figure 0004828049
【0037】
このようにしてスクリーニングされた微生物は、上述したように、カンジダ・ユティリス(Candida utilis) IFO 0396を親株として得られたものであるため、カンジダ(Candida)属に属する。また、このようにしてスクリーニングされた微生物は、ピルビン酸生産能は高いがピルビン酸資化能は低い;高濃度のピルビン酸に対する耐性を有する;特定のビタミンやアミノ酸に対する栄養要求性が低い;エタノールや乳酸等の副生成物の生成が抑制される;糖の資化速度が速い;およびアンモニア耐性を有するという特性、さらには低い酸素要求性を有し、本菌は明らかに公知の菌種とは区別されるため、この微生物を新規な微生物であると判断し、カンジダ・エスピー MC−P0101株(Candida sp. MC-P0101)(以下、「MC−P0101株」と称する)と命名した。また、このMC−P0101株は、平成13年4月10日付にて独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され、その受託番号は、FERM BP−7539である。
【0038】
以下、本発明の微生物の培養方法について説明する。
【0039】
本発明の菌株の培養に使用する培地は、固体または液体培地のいずれでもよく、また、使用される微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩及び必要に応じてその他の微量成分を含有する培地であり、合成培地または天然培地のいずれでもよい。
【0040】
本発明の菌株の培養において使用できる炭素源としては、本菌株が資化できる炭素源であれば特に制限されない。具体的には、微生物の資化性を考慮して、グルコース、キシロース、スクロース、マルトース、α,α−トレハロース、メチルα−D−グルコシド、セロビオース、ラフィノース、メレチトース、デンプン、デンプン加水分解物、糖蜜、廃糖蜜等の糖類;グリセロール等のアルコール;グルコン酸、乳酸等の有機酸;n−パラフィン、n−ヘキサデカン、n−デカン等の炭化水素などが挙げられる。これらの炭素源は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、使用する菌株の種類や培養条件などによって適宜選択される。また、これらのうち、グルコース、デンプン、デンプン加水分解物糖蜜、廃密等が好ましく使用され、特にグルコースが好ましい。また、培地中の炭素源の初発濃度は、使用する菌株が良好に生育してピルビン酸を効率良く産生できる濃度であれば特に制限されないが、培地中の炭素源の初発濃度は、通常、50〜200g/リットル、好ましくは50〜150g/リットルである。特にグルコースを炭素源として用いた培地中でMC−P0101株を培養してピルビン酸を生産する際には、好ましくは50〜200g/リットル、より好ましくは75〜120g/リットルである。このような特定の初発グルコース濃度範囲とすることによって、グルコースの資化速度が有意に向上でき、短時間で発酵が終了でき、ゆえに、短い培養時間で高収量のピルビン酸を生産できることが判明した。
【0041】
また、本発明の菌株の培養において使用できる窒素源としては、特に制限されず、使用する菌株の種類や培養条件などによって適宜選択される。具体的には、肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、大豆加水分解物、大豆粉末、ミルクカゼイン、カザミノ酸、各種アミノ酸(バリン、イソロイシン、ビオチン、パントテン酸、ピリドキシン、チアミン、ニコチン酸、L−リジン等)、コーンスティープリカー、カダベリン、エチルアミン、その他の動物、植物、微生物の加水分解物等の有機窒素化合物;酢酸アンモニウム等の有機アンモニウム塩;硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等の無機アンモニウム塩;硝酸ナトリウムなどの無機硝酸塩;アンモニアガス、アンモニア水、尿素等の無機窒素化合物などが挙げられる。これらの窒素源は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、使用する菌株の種類や培養条件などによって適宜選択される。また、これらのうち、特に酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、アンモニア水、硫酸アンモニウムが好ましく使用される。また、培地中の初期窒素源濃度は、使用する菌株が良好に生育してピルビン酸を効率良く産生できる濃度であれば特に制限されない。
【0042】
本発明の菌株の培養において使用できる無機塩としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛などの塩化物、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩等から選ばれた1種または2種以上を使用することができる。また、培地中に、必要に応じて、チアミン、ニコチン酸、ピリドキシンやビオチン等のビタミン類、消泡剤、植物油、界面活性剤、その他の天然物等の微量成分を添加して、培養条件の安定化をはかってもよい。
【0043】
本発明において、菌株の培養は、通常、振盪、通気(バブリング)または通気撹拌培養により好気条件下で行なわれ、また、使用される培養槽も、回分式、反復回分式、連続式または半回分式、および攪拌槽型または気泡塔(エアリフト)型を問わず、使用される菌株の種類や発酵容量などによって適宜選択される。なお、MC−P0101株を用いてピルビン酸を生産する場合には、MC−P0101は酸素要求性が低いため、低通気量でも生育が可能である。
【0044】
また、本発明において、培養条件は、培地の組成や培養方法などによって適宜選択され、本菌株が増殖できる条件であれば特に制限されず、使用される菌株の種類や他の培養条件などによって適宜選択できる。例えば、培養温度は、菌株の種類によって異なるが、通常、20〜40℃、好ましくは、25〜35℃であり、培養時間は、初発糖濃度や菌株の種類などによって異なるが、通常、30〜70時間である。また、培養に適当な培地のpHは、4.0〜7.0、好ましくは5.0〜6.0である。なお、培養期間中、ピルビン酸が培地中に生成・蓄積されることに伴い、培地のpHの低下が引き起こされる。このため、このようなpHの低下が生じる際には、アンモニア、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ(水溶液の形態を含む)で、上記pH範囲に調節することが好ましい。または、上記したように、MC−P0101株はアンモニアに対して耐性を有するため、この菌株を使用する場合には、培地中にアンモニア水を窒素源及び中和剤双方として添加してもよい。上記アルカリは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、また、固体若しくは液体の状態を問わないが、取り扱いのし易さや微妙なpH調節が可能である点を考慮すると、アルカリを水溶液の形態で使用することがより好ましい。
【0045】
また、本発明において、ピルビン酸は主に培養液中に放出されるが、この生成したピルビン酸は単離・精製することなくそのまま利用してよいが、菌体を遠心分離などで除去した後、常法により単離・精製した後利用されることが好ましい。この際、ピルビン酸は、培養終了後、培地中に混在する菌体及びその他の不溶性不純物を濾過や固液分離により除去した後、ピルビン酸または塩の形態で培養上清から単離・回収できる。培養上清からの単離・回収方法は、特に制限されることなく公知の単離・精製方法が同様にして使用できる。具体的には、溶媒抽出法、イオン交換クロマトグラフィー法、不溶化処理による分別沈殿法、結晶化による分別結晶法、逆浸透膜による膜分離法及び濃縮晶析法等などが挙げられる。より具体的には、本発明の菌株を所定条件下で培養した後、培養液を濾過または遠心分離により菌体及びその他の不溶性不純物を除去する。次いで、得られた培養上清を塩酸などで酸性にした後、エーテル等の有機溶剤で抽出し、集められた有機相に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液等のアルカリを加えてpHを6前後に調整した後、50℃以下、減圧下で濃縮する。さらに、この濃縮液に、エタノールを加えることによって、ピルビン酸ナトリウムまたはピルビン酸カリウムが結晶として得られる。または、ピルビン酸をいったんフェニルヒドラゾン化した後、沈殿単離することによって、ピルビン酸を単離してもよい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例を参照しながらより具体的に説明する。なお、下記実施例において、特記しない限り、「%」は「質量%」を意味する。
実施例1
シード培地を、10g/リットルのグルコース、5g/リットルの硫酸アンモニウム、1g/リットルのKH2PO4、0.5g/リットルのMgSO4・7H2O、0.5g/リットルの酵母エキス、及び5g/リットルのポリペプトンを蒸留水に溶解した後、さらに蒸留水を加えて合計体積を1000mlに調整することによって調製した。
【0047】
500ml容の三角フラスコに、このようにして調製されたシード培地50mlを入れ、121℃で15分間、加圧蒸気滅菌を行った。この培地に、MC−P0101株(FERM BP−7539)を一白金耳植菌し、30℃で17時間、振盪培養を行うことによって、前培養液を調製した。
【0048】
次に、3リットル容のバブルカラム型のジャーファーメンターに、下記のようにして調製された発酵培地を2リットル仕込み、121℃で15分間、加圧蒸気滅菌を行った。このジャーファーメンターに、上記で調製された前培養液20mlを接種し、水酸化ナトリウムの10%水溶液を用いて培地のpHを約5.5に保ちながら、30℃で45時間、本培養を行った。
【0049】
なお、発酵培地は、100g/リットルのグルコース、2.5g/リットルの硫酸アンモニウム、0.5g/リットルのKH2PO4、0.25g/リットルのMgSO4・7H2O、0.5g/リットルの酵母エキス、及び5g/リットルのポリペプトンを蒸留水に溶解した後、さらに蒸留水を加えて合計体積を1000mlに調整することによって調製した。
【0050】
所定時間培養を行った後、菌体を除いた培養上清について、液体クロマトグラフィーを用いて分析した。なお、ピルビン酸の定量は、高速液体クロマトグラフィーと乳酸脱水素酵素を用いたNADHの吸光度測定法により行い、両分析方法の結果はよく一致していた。結果を下記表7に示す。
【0051】
比較例1
実施例1において、MC−P0101株の代わりに、親株であるカンジダ・ユティリス(Candida utilis) IFO 0396を使用し、培養時間を30時間とする以外は、実施例1と同様にして培養を行い、培養上清を実施例1と同様に分析した。結果を下記表7に示す。
【0052】
実施例2
実施例1において、10%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、10%のアンモニア水をpH調製剤として用い、発酵培地としては硫酸アンモニウムを除いた培地を用い、実施例1と同様にして培養を行い、培養上清を実施例1と同様に分析した。結果を下記表7に示す。
【0053】
【表7】
Figure 0004828049
【0054】
表7から、本発明のMC−P0101株は、高収量のピルビン酸を培養液中に産生し、特にエタノールの副生を有意に抑制することが示される。
【0055】
実施例3
500ml容の三角フラスコに、グルコース濃度を下記表8に示すように変更した以外は実施例1と同様にして調製された発酵用培地50mlを入れ、121℃、15分間加圧蒸気滅菌を行った。この培地に、MC−P0101株を一白金耳植菌し、培地に炭酸カルシウムを4%の割合で添加して、30℃で下記表2に示される時間、振盪培養を行うことによって、培養液を調製した。
【0056】
このようにして調製された各培養液について、実施例1と同様の液体クロマトグラフィーによって、培養上清中に含まれるピルビン酸の存在量を分析した。結果を下記表8に示す。
【0057】
【表8】
Figure 0004828049
【0058】
実施例4
500ml容の三角フラスコに、実施例1と同様にして調製されたシード培地50mlを入れ、121℃、15分間加圧蒸気滅菌を行った。この培地に、MC−P0101株を一白金耳植菌し、30℃で17時間、振盪培養を行うことによって、前培養液を調製した。
【0059】
次に、3リットル容のエアリフト型のジャーファーメンターに、実施例1と同様にして調製された発酵培地を2リットル仕込み、121℃で15分間、加圧蒸気滅菌を行った。このジャーファーメンターに、上記で調製された前培養液20mlを接種し、水酸化ナトリウムの10%水溶液を用いて培地のpHを5.5に保ちながら、30℃で45時間、本培養を行った。
【0060】
このようにして調製された培養液について、実施例1と同様に液体クロマトグラフィーによって、培養上清中に含まれるピルビン酸量を分析した。結果を下記表9に示す。
【0061】
比較例2
実施例3において、MC−P0101株の代わりに、親株であるカンジダ・ユティリス(Candida utilis) IFO 0396を用いる以外は実施例1と同様にして培養を行い、培養上清中に含まれるピルビン酸量を、実施例1と同様の液体クロマトグラフィーによって分析した。結果を下記表9に示す。
【0062】
比較例3
ピルビン酸を高収率で産生することが知られている、トルロプシス・グラブラータ(Torulopsis glabrata) IFO 0005株をBacto Yeast Carbon Base培地(Difco社製)5mlに一白金耳植菌し、30℃で、24時間、振盪培養することによって、前培養液を調製した。次に、予め115℃で10分間蒸気滅菌した培地(組成:115g/リットル グルコース、5g/リットル 硫安、0.5g/リットル ポリペプトン、1mg/リットル ニコチン酸、0.02mg/リットル チアミン塩酸塩、40g/リットル 炭酸カルシウム)50mlを含む500ml容の三角フラスコに接種し、180rpm、振幅30cmの条件下で70時間培養した。
【0063】
このようにして調製された培養液について、実施例1と同様の液体クロマトグラフィーによって、培養上清中に含まれるピルビン酸量を分析した。結果を下記表9に示す。
【0064】
比較例4
ピルビン酸を高収率で産生することが知られている、ヤロイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica) ATCC 20363を、前培養用培地(組成:10%グルコース、0.1%KH2PO4、0.05%MgSO4・7H2O、4%ポリペプトン、4%CaCO3、pH5.5)200ml中に一白金耳植菌し、30℃で、48時間、振盪培養することによって、前培養液を調製した。次に、基本培地(組成:10%グルコース、0.1%KH2PO4、0.05%MgSO4・7H2O、4%ポリペプトン、pH5.5)2.5リットルに、上記で調製された前培養液200mlを接種し、30℃で96時間、培養した。なお、この培養は、水酸化ナトリウム水溶液でジャーファーメンターの中でpHを5.5に維持しながら行った。
【0065】
このようにして調製された培養液について、実施例1と同様の液体クロマトグラフィーによって、培養上清中に含まれるピルビン酸量を分析した。結果を下記表9に示す。
【0066】
【表9】
Figure 0004828049
【0067】
表9に示される結果から、本発明のMC−P0101株は、親株や他のピルビン酸を高収率で産生することが知られている菌株に比して、短時間で多くのピルビン酸を産生できることが示される。
【0068】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、カンジダ属(Candida)に属しかつピルビン酸生産能を有する新規な微生物を提供するものであり、特に本発明のカンジダ・エスピー・MC−P0101株(Candida sp. MC-P0101)FERM BP−7539は、ピルビン酸生産能は高いがピルビン酸資化能は低い;高濃度のピルビン酸に対する耐性を有する;特定のビタミンやアミノ酸に対する栄養要求性が低い;エタノールや乳酸等の副生成物の生成が抑制される;糖の資化速度が速い;およびアンモニア耐性を有する、という特性を有する。
【0069】
また、本発明は、本発明の新規な微生物を用いることからなるピルビン酸の生産方法を提供するものである。特に、培養培地中の初期グルコース濃度を75〜120g/リットルという特定の範囲に調整することによって、微生物による糖の資化速度を有意に向上でき、短時間で発酵が終了させることができるため、短い培養時間で高収量のピルビン酸を生産できる。
【0070】
さらに、本発明のカンジダ・エスピー・MC−P0101株(Candida sp. MC-P0101)FERM BP−7539は、培養液中にピルビン酸を産生するので、連続培養が可能であり、ゆえに、大量生産に好適である。

Claims (4)

  1. カンジダ属(Candida)に属し、かつ下記特性:
    (i)ピルビン酸生産能が高いがピルビン酸資化能は低い;
    (ii)高濃度のピルビン酸に対する耐性を有する;
    (iii)ビタミンやアミノ酸に対する栄養要求性が低い;
    (iv)副生成物の生成が抑制される;
    (v)糖の資化速度が速い;ならびに
    (vi)アンモニア耐性を有する
    を有する、カンジダ・エスピー MC−P0101株(Candida sp. MC-P0101)FERM BP−7539
  2. 請求項1に記載の微生物を用いることからなるピルビン酸の生産方法。
  3. 初発糖濃度を50〜200g/リットルに調整した培養液中で請求項1に記載の微生物を培養してピルビン酸を生産させる、請求項に記載の方法。
  4. 請求項1に記載の微生物を培養して、培養液中にピルビン酸を生産する、請求項またはに記載の方法。
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