JP3164300B2 - 単一電子素子およびその製造方法 - Google Patents

単一電子素子およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば単一電子電
荷計や単一電子トランジスタのような単一電子素子およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】単一電子素子の構成要素である微小なト
ンネル接合を作成するには精密なリソグラフィ技術が不
可欠である。従来、金属系の材料を用いた微小なトンネ
ル接合を形成するためのリソグラフィ技術として最も一
般的に使用されているものに、図8に示す懸架マスクを
用いた2重蒸着法がある。ここで、(a)は蒸着の様子
を示す斜視図であり、(b)は蒸着により形成されたト
ンネル接合を示す断面図である。この方法によれば、図
8(a)に示すように、基板41の上に2個のスペーサ
42を配置し、その上に懸架マスク43を載せる。懸架
マスク43はその両端の近傍のみがスペーサ42の上に
載っており、中央部などは空間を挟んで基板41に対向
している。そして、まず矢印の方向(例えば基板41
の垂直方向)から第1金属膜の蒸着を行い、その金属膜
を酸化させて酸化膜を形成した後、次に角度を変えて矢
印の方向から第2金属膜の蒸着を行う。
【0003】このようにすると、図8(b)に示すよう
に、基板41上に第1金属膜44が形成される。この
時、懸架マスク43の下の領域には第1金属膜44が蒸
着されないので、第1金属膜44の中央部に側壁面が形
成される。次に、第1金属膜44の表面および側壁面に
酸化膜45が形成される。さらに、酸化膜45の上に第
2金属膜46が形成される。この時、蒸着方向が異なる
ため、第2金属膜46においてはその側壁面が形成され
る位置が変わる。第1金属膜44の側壁面に形成された
酸化膜45の部分に微小なトンネル接合47が形成され
る。
【0004】このようにマスクを固定し蒸着方向を変え
て微小なトンネル接合を形成する代わりに、蒸着方向は
垂直方向に固定し、マスクを水平方向に移動させて微小
なトンネル接合を形成する方法も知られている。最も単
純な単一電子素子である2つのトンネル接合を有する単
一電子トランジスタを例にとり、そのマスクパタンおよ
び形成工程を示す。図9(a)はマスクのパターンであ
る。マスク51には孔51aが3個空けてある。このマ
スク51を用いて、まず、図9(b)のような第1金属
膜52を成膜する。第1金属膜の酸化処理後、成膜位置
を横方向にずらして第2金属膜53を成膜する。このよ
うにすると、図9(c)のように、第1金属膜52と第
2金属膜53が重なった部分に、2つのトンネル接合5
6a、56bと島55よりなる単一電子トランジスタが
構成される。ここで島とはトンネル接合により外部電極
(ここではリード電極54a、54b)に接続された孤
立した電極を意味する。なお、ここではゲート電極は省
略してある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図9に示した方法で
は、図9(c)から明らかなように、最終的に成膜され
た素子は2重のパターンを有し、その内半分程度は不要
で余計な副産物である。そのような意味で、従来の2重
蒸着法による素子形成方法では、素子の集積度を上げる
ことが自ずと制限されていた。そして、図9(a)のマ
スクパターンも実際に必要な素子の大きさより余計な面
積をとる事を余儀なくされている。また、図8に示した
2重蒸着法では、成膜角度により素子の作られる向きが
一義的に決まってしまうので、回路設計の自由度が制限
されている。その意味でも集積回路の製造には適してい
ない。また懸架マスクの作成手順も煩雑であった。した
がって、本発明の目的は、このような問題点を解決した
単一電子素子およびその製造方法を提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決する手段】前記本発明の課題は、基板の凸
部上に配置された島と、少なくとも前記島の側面に形成
された電気絶縁膜を介してリード電極に接続されている
構造を有する単一電子素子であって、前記リード電極が
前記電気絶縁膜を挟んで上下二層の導電膜を備えること
を特徴とする単一電子素子により解決される。また、前
記本発明の課題は、基板上に凸部を形成する工程と、前
記基板上に第1の導電膜を形成する工程と、前記第1の
導電膜上に第1の電気絶縁膜を形成する工程と、前記第
1の電気絶縁膜上に第2の導電膜を形成する工程と、前
記第2の導電膜上に第2の電気絶縁膜を形成する工程と
を備えることを特徴とする単一電子素子の製造方法によ
り解決される。本発明に係る単一電子素子は、従来の単
一電子素子と比較して、実効面積が小さいため集積回路
の作成に好適である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら詳細に説明する。 (第1の実施の形態)図1および図2は本発明の第1の
実施の形態を示す図である。ここで、図1は単一電子電
荷計の成膜プロセスの断面図であり、図2は図1の成膜
プロセスの途中および終了後の斜視図である。
【0008】まず、図1(a)に示すように、第1レジ
スト11をマスクとして基板1をエッチングし、高さh
の基板凸部1aを形成する。図2(a)は図1(a)に
対応する斜視図である。ここで、第1レジスト11は線
状のパターンに形成されている。この線の幅は、数々の
リソグラフィー技術で単一電子素子に必要な例えば数十
nmの微細な寸法である。次に、図1(b)に示すよう
に、基板1の全面に基板1に垂直な方向から第1導電膜
2を厚さがT1になるように成膜する。この成膜処理は
真空蒸着装置などの真空成膜装置により行う。第1導電
膜の種類は良質な酸化膜が成長しやすい金属性膜が望ま
しい。例えば、アルミニウム、ドープされたポリシリコ
ンなどが典型的な金属性膜の例である。
【0009】次いで、図1(c)に示すように、前述し
た真空成膜装置と同一の真空成膜装置中で酸素分圧など
の制御によって第1導電膜2の表面を所望の厚さ酸化さ
せ、第1酸化膜3を形成する。ここで、所望の厚さは
0.7〜2nm程度であり、典型的には約1nmであ
る。この時、図1(b)で基板凸部1aの側壁に付着し
た第1導電膜2の部分は全て酸化され絶縁体と化す。そ
のため所要の酸化膜の厚さをt1とすると(これは下記
のようにトンネル障壁となるので大事な設計パラメータ
である)、側壁に付着した第1酸化膜3の厚さもその程
度が上限である。側壁に付着した第1酸化膜2の厚さは
成膜条件で制御できる。側壁に付着した第1酸化膜3の
厚さの上限は約t1であり、それと第1導電膜2の膜厚
Tとの比t1/T1は、例えば第1導電膜2の成膜時の
蒸着源の大きさDと蒸着源と基板の距離Lの比D/Lに
等しい。 したがって、 D・T1/L>t1 という条件で成膜すれば、これは達成出来る。
【0010】次に、図1(d)に示すように、第1酸化
膜3の上に第2導電膜4を成膜する。この時、第1酸化
膜3の側壁に付着した第2導電膜4の部分の厚さt2も
前記のように制御する。次いで、図1(e)に示すよう
に、第2導電膜4の表面を酸化させて第2酸化膜5を形
成し、成膜プロセスが終了する。この時、側壁に付着し
た第2導電膜4の部分は全て酸化されたものとする。ま
た、以上のプロセスにおいて、 T1<h 、T1+T2>h という条件を満たすように成膜する。
【0011】次に、図1(f)に示すように、第2酸化
膜5の上に第2レジスト12を塗布する。図2(b)は
図1(f)に対応する斜視図である。第2レジスト12
のパターンは、第1レジスト11のパターンと交差する
ように配置される。その後、エッチングにより不要な部
分(第2レジスト12が形成されていない部分)を取り
除き、第2レジスト12を除去することで、図2(c)
に示すような構造を有する素子を得ることができる。
【0012】これは単一電子電荷計であり、微細な島8
と、二つのトンネル接合9a、9bを介して島8に接続
された二つのリード電極7a、7bにより構成されてい
る。島8はトンネル接合9a、9bを介して直接リード
電極7a、7bの第2導電膜4の部分に接続されてい
る。リード電極7a、7bでは、第1導電膜2と第2導
電膜4が第1酸化膜3を挟んでいるが、広い面積で接触
しているので、第1導電膜2と第2導電膜4は実質的に
同電位となり、一体の電極とみなせる。また島8の上部
にもう一つ浮遊した島が形成されるが、これは単一電子
電荷計の動作に影響を与えない。
【0013】この単一電子電荷計において、リード電極
7a、7bの間に直流電圧Vを印加したときにリード電
極7a、7bの間に流れる直流電流をIとすると、 V=Vc=e/(Ca+Cb) を越えるまで電流が流れない。ここで、eは電子の電
荷、Ca、Cbはトンネル接合9a、9bの静電容量で
ある。この電流が流れない領域はクーロンブロッケード
領域と呼ばれており、電子をトンネルさせるためには、
2つのトンネル接合の静電エネルギー以上の電圧を印加
しなけらばならないことを示している。この電圧Vcは
クーロンブロッケード臨界電圧と呼ばれている。この単
一電子電荷計において、電子が島8の付近に存在すると
きには、クーロンブロッケード領域が変調されるので、
電荷の存在を検出することができる。本実施の形態の単
一電子電荷計では、基板凸部上に自己整合的に電荷計が
形成されるので、実施が困難である数十nmでのリソグ
ラフィの目合わせは不要である。
【0014】(第2の実施の形態)図3および図4は本
発明の第2の実施の形態を示す図である。ここで、図3
は単一電子電荷計の成膜プロセスの断面図であり、図4
は図3の成膜プロセスの途中および終了後の斜視図であ
る。この単一電子電荷計の構造は第1の実施の形態と同
じであるが、成膜プロセスにリフトオフ法を採用してい
る。まず、図3(a)、(b)に示すように、第1レジ
スト31をリフトオフマスクとして、絶縁体膜からなる
基板凸部22aを形成する。すなわち、図3(a)に示
すように、基板21上に線状の開口を有する第1レジス
ト31を形成し、次に絶縁体膜22、22aを形成す
る。図4(a)は図3(a)に対応する斜視図である。
次に、第1レジスト31と共にその上に形成された絶縁
体膜22を除去する。ここで、基板凸部22aとなる絶
縁体の材料は成膜が容易な絶縁体が望ましい。
【0015】その後、図3(c)、(d)に示すよう
に、線状の開口を有する第2レジスト32を形成する。
ここで、図3(d)は図3(c)を水平面内で90°回
転した方向から見た側面図である。これらの図に示すよ
うに、第2レジスト32の開口は前述した第1レジスト
31の開口と直交する方向に形成されている。図4
(b)は図3(c)、(d)に対応する斜視図である。
次に、第2レジスト32をリフトオフマスクとして、第
1の実施の形態と同じ要領で、基板上および基板凸部上
に線状の第1導電膜と島28を形成する。その後第1酸
化膜を形成し、リフトオフ法を適用して第2導電膜を形
成する。その後、第2酸化膜を形成すると、図4(c)
に示すような構成の回路を得ることができる。これは単
一電子電荷計であり、微細な島28と、二つのトンネル
接合29a、29bを介して、その島28に接続された
二つのリード電極27a、27bにより構成されてい
る。
【0016】(第3の実施の形態)図5は本発明の第3
の実施の形態を示す斜視図である。この実施の形態は、
第1の実施の形態の単一電子電荷計に、ゲート電極10
aをサイドゲートとして付加した単一電子トランジスタ
である。ゲート電極10aはその一端面が島8と対向す
るように、基板凸部1a上に配置されている。このゲー
ト電極10aの形成は、第1の実施の形態における第2
レジスト12のパターンを形成する際に、ゲート電極1
0aを形成する場所にゲート電極10aのパターンに対
応するレジストを同時に形成すればよい。なお、第2の
実施の形態の単一電子電荷計に、ゲート電極をサイドゲ
ートとして付加するように構成することもできる。この
ように構成された単一電子トランジスタにおいては、ゲ
ート電極10aに印加するゲート電圧のレベルにより、
前述したクーロンブロッケード臨界電圧を周期的に変調
する(変調周期はe/Cg。ただし、Cgはゲート接合
容量)ことが出来る。
【0017】(第4の実施の形態)図6は本発明の第4
の実施の形態を示す図である。ここで、(a)は断面図
であり、(b)は斜視図である。この実施の形態は、第
1の実施の形態の単一電子電荷計に、絶縁膜6を介して
ゲート電極10bをトップゲートとして付加した単一電
子トランジスタである。ゲート電極をトップゲートにす
ると、サイドゲートにした場合にした場合よりも電圧ゲ
インを大きくすることが出来る。なお、第2の実施の形
態の単一電子電荷計に、ゲート電極10bをトップゲー
トとして付加するように構成することもできる。
【0018】(第5の実施の形態)図7は本発明の第5
の実施の形態を示す断面図である。この実施の形態は、
第1の実施の形態の単一電子電荷計の基板凸部の直下に
下部ゲート10cと浮遊ゲート10dをトンネルゲート
膜10eを介して配置した単一電子不揮発性メモリ素子
である。第2の実施の形態の単一電子電荷計に対して同
様に構成することもできる。基板凸部の直下に下部ゲー
ト10cと浮遊ゲート10dをトンネルゲート膜10e
を介して配置する方法としては、例えば「IEDM96
プロシーディング、955ページ」に記述されている方
法などがある。
【0019】この単一電子不揮発性メモリ素子において
は、少数の電子が島8より浮遊ゲート10dに注入され
メモリ動作をする。このような単一電子不揮発性メモリ
素子の動作については、アプライド・フィジックス・レ
ター(Applied Physics Letter)誌71巻2038ペー
ジに記述されている。本実施の形態では、メモリの読み
出しには第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態の
ような単一電子電荷計を利用する。すなわち、単一電子
電荷計の1対のリード電極間に電圧をかけてある時に
は、それらのリード電極間に流れる電流は島8の近傍の
電荷により変化するので、浮遊ゲート10d内に存在す
る電子により電流が変化する。この電流変化を検出する
ことにより、浮遊ゲート10d内に電子が存在すること
を検知することができる。
【0020】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように本発明によ
れば、集積回路作成に適した実効面積の小さな単一電子
素子を実現できる。また、本発明によれば、高速で制御
性の良い単一電子不揮発性メモリセルを実現することも
できる。さらに、本発明によれば、それらを製造する際
に、懸架マスクを使用した二重蒸着法のような煩雑な手
順を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である単一電子電荷
計の成膜プロセスの断面図である。
【図2】図1の成膜プロセスの途中および終了後の斜視
図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態である単一電子電荷
計の成膜プロセスの断面図と側面図である。
【図4】図3の成膜プロセスの途中および終了後の斜視
図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態である単一電子トラ
ンジスタの断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態である単一電子トラ
ンジスタの断面図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態である単一電子不揮
発性メモリの断面図である。
【図8】微小なトンネル接合を形成する従来の方法の一
例を示す図である。
【図9】微小なトンネル接合を形成する従来の方法の別
の一例を示す図である。
【符号の説明】
1、21 基板 1a、22a 基板凸部 2 第1導電膜 3 第1酸化膜 4 第2導電膜 5 第2酸化膜 7a、7b、27a、27b リード電極 8、28 島 9a、9b、29a、29b トンネル接合 10a、10b ゲート電極 10c 下部ゲート 10d 浮遊ゲート 10e トンネルゲート膜

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板の凸部上に配置された、導電性材料
    からなる島と、前記島の側面に形成されたトンネリング
    可能な電気絶縁膜を介して前記島に対向配置された一対
    のリード電極と、を有する単一電子素子であって、 前記リード電極が電気絶縁膜を挟む上下二層の導電膜を
    備えることを特徴とする単一電子素子。
  2. 【請求項2】 前記凸部は線状であり前記リード電極
    いに交差するように配置されていることを特徴とする
    請求項1記載の単一電子素子。
  3. 【請求項3】 前記凸部上の前記島に対向する位置に配
    置されたサイドゲート電極をさらに備えることを特徴と
    する請求項1記載の単一電子素子。
  4. 【請求項4】 前記島の上方に電気絶縁膜を介して配置
    されたオーバーゲート電極をさらに備えることを特徴と
    する請求項1記載の単一電子素子。
  5. 【請求項5】 前記凸部の内部に配置された浮遊ゲート
    と、該浮遊ゲートの下方に配置された下部ゲートとをさ
    らに備えることを特徴とする請求項1記載の単一電子素
    子。
  6. 【請求項6】 (a)基板上に線状の凸部を形成する工
    程と、 (b)前記基板上に前記凸部と交差するパターンの第1
    の導電膜を形成する工程と、 (c)前記第1の導電膜上にトンネリング可能な厚さ
    第1の電気絶縁膜を形成する工程と、 (d)前記第1の電気絶縁膜上に前記第1の導電膜と同
    等のパターンの第2の導電膜を形成する工程と、 (e)前記第2の導電膜上に第2の電気絶縁膜を形成す
    る工程と、 を備えることを特徴とする単一電子素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記凸部、前記第1の導電膜または前記
    第2の導電膜をエッチング法またはリフトオフ法により
    形成することを特徴とする請求項6記載の単一電子素子
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記凸部の高さをh、前記第1の導電膜
    の高さをT1、前記第2の導電膜の高さをT2とすると
    き、 T1<h T1+T2>h の2式を満たすように成膜を行うことを特徴とする請求
    項6記載の単一電子素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記第1、第2の電気絶縁膜を形成する
    工程は、それぞれ前記第1、第2の導電膜の表面を酸化
    させるものであることを特徴とする請求項6記載の単一
    電子素子の製造方法。
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