JP3164259B2 - 水冷穴を有するダイカスト金型およびその製造方法 - Google Patents

水冷穴を有するダイカスト金型およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金型内部に水冷穴を有
し、かつ金型の部分によって硬さを調整したダイカスト
金型およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車産業をはじめ、各産業において
は、近年アルミニウム合金の適用が広がって来ている。
アルミニウム合金の加工法の中でダイカスト鋳造法は、
その良好な寸法精度、高生産性、ニアネットシェイプに
よる後加工の削減効果等により広く用いられて来ている
が、最近はアルミホイール、バルブロッカーカバー等の
鋳肌を外装面として用いられる製品への適用が増加して
いる。したがって、鋳造後の鋳肌を良好にするために、
ダイカスト金型のヒートラック寿命の改善が重要課題と
なってきている。また、自動車軽量化の一環として、ダ
イカスト製品の重量の管理限界を厳しくする動きも出て
きており、ヒートクラックの発生した型面の修正に基づ
くダイカスト製品の重量増加をも制限されようとしてお
り、この面からもヒートクラック抑制が重要となってき
ている。
【0003】ヒートクラックの抑制に対しては、型材自
体の高温強度の向上が効果的である。溶湯温度が700℃
前後までの一般アルミ用ダイカストの場合、型面の昇温
は600℃を大きく越えないため、耐ヒートクラック性を
高めるのに必要となるのは600℃前後までの高温強度で
ある。また、スクイズダイカストの場合、溶湯温度は高
いが、溶湯が金型の中心部に設けられた面積の大きいゲ
ートから緩やかな速度で層流充填されるため、スクイズ
ダイカストにおいては、型面の温度上昇はそれほど大き
くない。しかし、鋳込時間が長いため、金型中心から外
周部にかけての金型内の温度差が大きくなり易く、熱応
力によるヒートクラックが早期に型の中心部や応力集中
をまねくコーナー部に発生し易い。したがって、スクイ
ズダイカスト型材のヒートクラック対策としては、600
℃前後までの強度向上への取組みが一般のダイカスト型
材にも増して重要なポイントとなる。
【0004】600℃前後までの高温強度は初期硬さの影
響が大きい。したがって、ヒートクラック抑制が重要な
型では初期硬さを高目に設定することが行なわれて来て
おり、HRC50以上の高硬度に熱処理されるダイカスト型
が登場してきている。一方では、近年、鋳造サイクルの
短縮および鋳造品の結晶粒微細化を目的とするために、
ダイカスト金型の型彫面近傍に水冷穴を加工し、金型全
体を冷却させながら、使用する必要が生じてきている。
【0005】しかしながら、溶湯を鋳造する一方で金型
を水冷することにより、金型表面から内部にかけて急激
な温度勾配が発生し、特に金型にHRC50以上の高硬度材
を使用する場合においては、水冷穴先端部に使用中の過
大な熱応力が発生し、金型の型彫面(以下、キャビティ
ともいう)からのクラックは入らないが、水冷穴付近が
割れ易くなるため、金型寿命に限界があった。これは、
金型全体の硬さを高くしているために、破壊靭性値が極
度に低下するためである。
【0006】金型内部の水冷穴付近からの割れを防止す
るために、金型の硬さをある程度下げることが効果があ
るが、これでは高硬度材を使用するメリットがなくな
り、金型表面のヒートクラックも発生し易くなって金型
は短寿命となる。このため、水冷穴を有するダイカスト
金型において、近年金型の型彫表面側が高硬度という特
徴を活かしつつ、鋳造品と接触する型彫面側以外の部分
は、型彫表面側より硬さを下げ靭性の向上を図った部位
に水冷穴を配置した金型が登場してきている。その一例
として、特開平4−367360号公報には、金型の鋳
造面となる型彫側の硬度を他の部位の硬度よりも高め、
この金型の鋳造面よりも硬度が低く靭性が高い部位に冷
却水通路を配置したダイカスト金型が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ダイカスト金型の型彫
面側より硬さを下げ、靭性向上を図った部位に水冷穴を
設置する方法として、金型に水冷穴を形成後、この金型
に焼入れと焼もどしを施し、金型の型彫面側以外の金型
底面側より水冷穴設置部位までの範囲を熱浴中で焼もど
し後の硬さ硬さ以下に再度焼もどしをする焼もどし方法
が考えられる。前述した特開平4−367360号公報
には、型彫側の硬度を他の部位よりも高める方法につい
て、(1)初めに金型全体の焼入れ焼戻しを行ない、そ
の後裏面のみソルト炉浸漬を行ない、次に型彫面側を断
熱材で覆い、再焼戻しする方法および、(2)局部焼入
れ方法として、金型全体を加熱した後、型彫面側を油冷
し、裏面側を保温剤シールで覆う方法があると説明され
ている。
【0008】しかし、水冷穴側(いわゆる金型の裏面で
ある)全体を焼もどしして硬さを下げることは、最近の
傾向として金型が薄型になってきている状況からは、使
用時において金型全体の剛性が不足して撓みを発生し、
型彫面側や水冷穴などの応力集中部からの大割れの発生
をまねきやすくなる。また薄型であるため熱浴を使って
金型の裏面の焼もどしを行なうと、型彫部の最も深い部
分は熱浴浸漬部に接近してしまい、熱伝導により型彫面
の硬さの低下をまねき、金型表面のヒートクラックも発
生し易くなって金型が短寿命となる。すなわち、金型の
裏面全体を焼もどしすることは温度コントロールが難し
いという問題がある。本発明の目的は、上記の従来技術
の熱処理方法上の問題点を解決し、水冷穴を有し特に高
硬度の熱間工具鋼製の金型の水冷穴付近の割れを防止す
るためになされたもので、型彫面側の硬さを維持して金
型表面のヒートクラックを抑制し、しかも水冷穴付近か
らの割れを防止したダイカスト金型およびその製造方法
を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者はダイカスト金
型の水冷孔からの割れ原因を研究した結果、割れは水冷
穴表面の応力腐食割れ(SCC)によるクラックを起点
にしていることをつきとめ、このクラックの発生を防止
するため、水冷穴周辺に限って硬さを下げてやれば十分
であること、および水冷穴周辺部以外はむしろ高硬度を
維持した方が金型の寿命は伸びることを見出した。そこ
で本発明者は、水冷穴を有するダイカスト金型の製造方
法について、金型の表面が高硬度という特徴を活かしつ
つ、水冷穴周辺からの割れを防止する手段を検討した。
その結果、金型全体を例えばHRC50〜52程度の高硬度に
なるような焼入れと焼もどしの熱処理を施した後、さら
に水冷穴に沿った部分のみを加熱して、水冷穴に沿った
領域を金型の全体よりも硬さを下げる(例えばHRC40〜45
程度にする)と、金型表面ではヒートクラックは生じに
くく、金型内部も強度的に十分でしかも水冷穴からの割
れが生じにくい金型が製造できることを確認した。
【0010】そして、水冷穴に沿った局部的な範囲を除
く金型全体は高硬度を維持しているため、金型底面を含
む水冷穴を有する部位全体を焼もどしをした金型に比べ
て金型全体の剛性が高く、鋳造応力や熱応力による撓み
も少なく型彫面側あるいは型底面側の水冷穴などの応力
集中を招きやすいコーナー部からの割れも生じにくくな
ることもわかった。前述したように最近の傾向として金
型が薄型化しており、金型が薄型になればなるほど、金
型全体が高い硬さを維持し、水冷穴に沿った限定された
部分の硬さを下げて靭性向上を狙う本発明の利点が大き
い。もちろん、金型の硬さをHRC50〜55程度の高硬度に
するためには、金型材質の選択も必要である。
【0011】このような高硬度が得られる材料として
は、例えば重量%で、C 0.3〜0.6%、Si 1.5%以下、Mn
0.1〜1.5%、Cr 4.0〜6.0%、1/2W+Mo(WとMoは1
種または2種) 1.8〜5.0%、V 0.5〜2.0%からなる材
料、あるいはこれらの元素以外にCo 0.1〜5.0%、Ni
0.1〜1.5%を1種または2種添加したような材料が推奨
される。さらに具体的に言えば、本発明者が開発した熱
間工具鋼である、C 0.37%、Si 0.17%、Mn 0.6%、Ni
0.6%、Cr 5.2%、Mo 2.2%、V 0.85%、Co 0.8%の
鋼、またはC 0.52%、Si 0.1%、Mn 0.4%、Cr 4.2%、
W 1.6%、Mo 2.0%、V 1.15%、Co 0.8%の鋼などが適
するものである。後者の鋼を用いれば、十分な靭性を確
保しながらHRC55程度の金型にすることもできる。しか
し、本発明は高硬度材のみに適用されるのではなく、従
来から汎用的に用いられているJIS-SKD61クラスの熱間
ダイス鋼にも広く適用できるものである。
【0012】本発明は、金型に冷却用の水冷穴を有し、
該金型の全体硬さよりも、前記水冷穴周辺に限定された
部分の硬さが低いことを特徴とする水冷穴を有するダイ
カスト金型である。このような本発明のダイカスト金型
を得る製造方法は、次に示す通りである。すなわち、水
冷穴が形成された金型に焼入れと焼もどしを施した後、
前記水冷穴の中に加熱手段を挿入して、前記水冷穴の内
径表面に沿った部分を前記焼もどしの温度以上に加熱し
て前記焼もどし後の硬さ以下となるように再焼もどしを
施すことを特徴とする水冷穴を有するダイカスト金型の
製造方法である。本願発明の特徴の一つは、従来のよう
に金型の裏面全体を再焼もどしするのではなく、硬さを
下げることでクラック発生防止に有効な水冷穴周辺に限
定して加熱することである。したがって、水冷穴周辺以
外は金型に必要な高硬度が型彫面だけでなく、金型内部
でも維持されることになる。
【0013】さらに本発明の第2の方法は水冷穴が形成
された金型に焼入れを施した後、前記水冷穴の中に加熱
手段を挿入して、前記水冷穴の内径表面に沿って、穴表
面部部の限定された部分を金型全体の焼もどしの温度以
上に加熱して、目標とする金型全体の焼もどし硬さ以下
の硬さとなるように焼もどし、さらに金型全体を所定の
焼もどし硬さに焼もどすことを特徴とする水冷穴を有す
るダイカスト金型の製造方法である。加熱手段として
は、水冷穴に挿入して加熱できればどのような方法でも
よいが、特に高周波加熱または低周波加熱などの誘導加
熱、バーナー加熱またはレーザ加熱を用いると簡便であ
り、水冷穴周辺に限定した加熱ができるので都合がよ
い。
【0014】本発明は、水冷穴を有するSKD61やS
KD61の改良材である前述の組成のような高硬度が得
られる熱間工具鋼からなるダイカスト金型の使用寿命向
上のため、金型全体をHRC50〜55程度の高硬度にする一
方、実質的に水冷穴の周辺部のみをHRC40〜45程度の低
硬度にする。このために、水冷穴を有する金型全体を通
常の焼入れ、焼もどし、または焼入れにより高硬度とし
た後、水冷穴の内径周辺の限定された部分を加熱するた
め、誘導加熱電極、バーナー、レーザビームトーチ等の
加熱媒体を水冷穴に挿入して、穴表面から加熱すること
により割れ感受性の高い水冷穴表面を金型全体よりは相
対的に軟化させることを骨子としている。したがって、
このような熱処理で得られた金型は、型彫面を含む金型
全体の硬さ(約HRC50〜55程度)より、金型の水冷穴表面
から限られた範囲の深さの硬さ(約HRC40〜45程度)を低
くすることを特徴としている。本発明によれば、加熱は
水冷穴内部から行なうため、通常は水冷穴の内径表面部
が最も低い硬さとなる。
【0015】加熱媒体により焼もどしして、軟化させる
水冷穴内径表面部の硬さレベルやその深さは、金型のサ
イズや使用条件等の状況に応じて適宜選択すればよい。
実験の結果では、誘導加熱の周波数(Hz)をFとすると
加熱深さD(mm)は次式で表わされる。 D=500/√F したがって、例えば200KHzの高周波領域の加熱を選ぶと
加熱深さは1.1mm程度となり、600Hz程度の中周波加熱を
選ぶと20mm近い加熱深さとなる。すなわち、誘導加熱の
手段をとる場合には、高周波領域から低周波領域まで周
波数を変化させた加熱により加熱深さをコントロールで
きるのである。ただし、上記の式は実験式であり、加熱
条件により変わり得るものであるから、上記の説明は周
波数の選択により加熱深さを制御できるという一例を示
すものである。
【0016】加熱手段で水冷穴から焼もどしして得られ
る軟化深さは、金型の大きさや型彫面の形状にもよる
が、水冷穴表面から片側で約40mm、望ましくは約30mm以
内に留めるのが望ましい。この値以上を軟化してしまう
と金型全体の剛性が小さくなり、撓みや割れが発生する
危険性が高くなるからである。ただし、金型が大きい場
合や型彫面の形状によっては、上記の数値にはこだわら
ない。
【0017】
【作用】上記のような熱間工具鋼製のダイカスト金型
は、用途に応じ様々な形状のキャビティ面を有する。図
7は水冷穴を有する金型1の一例の断面模式図を示す上
面図と側面図である。一般に水冷穴2はキャビティ底面
3から30〜60mm程度の距離に鋳型外周部に沿って加工さ
れ、冷却水は矢印の方向に流れる。鋳造された製品のセ
ンターラインから半分が製品4として示されている。実
際の鋳造中は、図5に示すごとく、水冷穴を境界とし
て、例えば断面A−Bでは図7の右図に示すような急激
な温度勾配を生ずるため過大な熱応力が発生し、水冷穴
周辺に割れが発生することがある。このような割れの典
型的な例を図6の上面図に割れ5として、その割れ破面
の状況を破面6として示す。
【0018】このような割れが発生する要因は、キャビ
ティ部の耐ヒートクラック性を向上させるために金型全
体の硬さを高くしていること、それに伴って破壊靭性値
が低下してしまうため、特に過大な熱応力が発生し易い
水冷穴付近で割れが発生し易くなるものと思われる。こ
のような割れは応力腐食割れがあるとさらに助長され
る。したがって、このような水冷穴付近の割れを防止す
るためには、表面硬さを維持しつつ、水冷穴の存在する
領域付近を軟化させて破壊靭性値を十分高くする必要が
ある。
【0019】そのため、金型全体を通常の焼入れ、焼も
どしにより金型全体を高硬度とした後、割れ起点となり
易い水冷穴が存在する領域全体を焼もどしにより硬さを
下げる方法も考えられる。この方法を採用した金型の水
冷穴付近の硬さ分布は、図8で示すようになる。すなわ
ち、従来の方法は水冷穴部分だけでなく、硬さを下げる
必要のない金型底部や、キャビティ底部に近接する付近
まで硬さを下げることになる。このような方法では前述
したように最近の傾向として金型が薄くなってきている
ため、金型全体の剛性が不足して撓みを発生し、型彫
面、型裏面、水冷穴などの応力が集中するコーナー部か
ら割れをまねき易くなる。したがって、本発明によっ
て、通常の焼入れ、焼もどしにより、キャビティ部を含
む金型全体を高硬度とした後、水冷穴に沿って前記焼も
どし温度より高い温度で誘導加熱やレーザビームなどの
加熱手段により焼もどしを行なって、水冷穴の周辺部の
みを軟化することにより、水冷穴表面およびその周辺部
以外の金型型彫面を含む金型全体の硬さが高く、水冷穴
の表面部分は硬さが低い理想的なダイカスト金型が得ら
れるのである。
【0020】バーナーやレーザビームトーチなどの加熱
媒体を水冷穴に挿入して加熱させるに際しては、金型の
温度が低いと急熱割れを起こす恐れがある。これに対す
る予防手段としては、予め金型全体を予熱しておくとよ
い。しかし、この予熱温度が高すぎると、金型全体の硬
さが低下してしまうので、予熱の上限温度は400℃以下
とすることが望ましい。誘導加熱、バーナーやレーザビ
ームによって、水冷穴の内径周辺部に限定して焼もどし
する方法は、ソルトバスを使用する焼もどしに比べて、
焼もどし後金型表面を洗浄するというような煩雑な作業
は不要であり、作業場の環境汚染の観点からも有利であ
る。また、金型全体よりも軟化させる水冷穴付近の硬さ
レベルやその深さは、誘導加熱の周波数、電極に付加す
る電力量や時間あるいはバーナーやレーザビームの強さ
と加熱時間を調整することによって任意に選択できるの
で、金型の使用条件に応じて最適な水冷穴表面の硬さと
することが可能である。
【0021】
【実施例】
(実施例1)以下に本発明の実施例を詳しく説明する。
表1に示す合金組成を有するSKD61および鋼Aについて
図2に示すような水冷穴を有する金型を焼なまし状態で
加工した。SKD61および鋼Aの焼もどし特性は、図
3に示す通りであり、鋼AはSKD61より高硬度で破
壊靭性が高い。ダイカスト金型として必要なキャビティ
を加工した後、焼入れ(1020℃)、焼もどし(560℃×2回)
により、全体の硬さをHRC51狙いとした後、図1に示す
ように250℃に予熱した金型1に対して、その水冷穴2
に高周波加熱電極7を挿入し7分間通電して穴表面温度
を680〜730℃まで加熱した。
【0022】図4は、水冷穴周辺部のみを再度焼もどし
した後の図2の断面C−Dの硬さ分布を示す図である。
図からわかるように、キャビティ表面部の硬さは両鋼種
ともHRC51付近の高硬度を有し、水冷穴表面付近を片側
がせいぜい10mm以内の範囲でHRC40〜41程度まで軟化さ
せることができた。従来のように水冷穴を含む金型の裏
面全体を軟化させてしまう図8の硬さ分布との差異が明
らかである。表2に実際の金型の寿命テストを行なった
結果を比較例の結果と共に示す。比較例は金型の硬さを
変化させるのみで、本発明のような水冷穴表面に焼もど
しを施さないものである。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】いずれの鋼を用いた場合も、金型の硬さが
HRC44程度では、水冷穴周辺の割れはないものの、SKD61
では約8,200ショット、鋼Aでは約12,000ショットでヒ
ートクラックの発生により、型彫面の修正が必要になっ
た。これらの鋼をHRC51前後まで硬さを上げると、いず
れの鋼も型彫部にヒートクラックが発生するまでに金型
内部の水冷穴付近に割れを生じ、4,500〜5,000ショット
付近で金型を取り替える必要が生じた。本発明を適用し
た金型は水冷穴からの割れを生じることなく、金型表面
のヒートクラック発生までのショット数を約2倍に伸ば
すことができ、型彫面の修正などの手入れ回数も大幅に
減らすことができた。すなわち、本発明のダイカスト金
型を用いれば、本発明を適用しない従来の金型と比較し
てヒートクラックの発生も少なく、水冷穴付近の割れも
ないという相乗効果が得られるのである。
【0026】本実施例においては、図4に示すように水
冷穴の内径の最表面の硬さはHRC41前後、硬さを下げる
深さは10mm前後に調整したが、金型の寸法形状や使用状
況等の諸条件に応じて、最適な硬さレベルを定め、深さ
は水冷穴の表面から片側40mm以内、望ましくは約30mm以
内の範囲で選択すればよい。
【0027】(実施例2)表1に示す鋼Aを使用した金
型については、レーザビーム加熱で焼もどす方法も実施
した。図1bは、その実施状況を示すもので、レーザビ
ームトーチは、水冷穴に挿入後、次第に開口部に引き出
しながら加熱を行なった。放射温度計で確認した水冷穴
部の最高温度は720℃であった。この金型のダイカスト
によるヒートクラック発生ショット数を表3に示す。冷
却穴からの割れはなく、従来の方法による表2の比較例
と比べて寿命が1.7倍に延びた。表3の金型の水冷穴部
硬さは使用後の廃却型を切断したものを測定したもので
ある。
【0028】(実施例3)表1に示すSKD61と鋼A
でダイカスト金型を製造し、金型を焼入れ後、水冷穴内
径面をバーナー加熱により目標の硬さ(HRC41)に焼もど
しを行なった。ただし、金型が大きく焼入れ後の割れの
危険性があるので300℃での仮焼もどしを施した。水冷
穴内径面の焼もどしは、700℃に加熱するように管理し
ながら行ない、HRC41を狙った。次に金型全体を焼もど
す熱処理を行ない、型彫面の硬さ狙いをSKD61でHR
C50.5、鋼AでHRC51.5を狙った。硬さの実測値と寿命数
を表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、金型全体の十分な硬さ
による耐ヒートクラック性および耐撓み性と水冷穴内径
周辺部の硬さを下げて耐割れ性を有するので、型彫面の
修正までの寿命を従来の型の少なくとも1.7倍ないし2
倍程度に延長でき、金型の手入回数も減らすことができ
ると共に、従来より問題となっていた応力腐食割れを起
点とするクラックの進展を主原因とする水冷穴部付近の
割れを防止することが可能となるという相乗以上の効果
が得られる。また、本発明によれば、高硬度の材料を使
用しても応力腐食割れや靭性不足による割れの対策を局
部的に行なえるので、将来出現するであろう、より高硬
度の金型材質にも適用し得る点でその汎用性が高い発明
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水冷穴を有するダイカスト金型の
水冷穴内径の高周波加熱およびレーザビーム加熱による
焼もどし方法を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例に使用したダイカスト金型の断
面形状を示す図である。
【図3】SKD61および鋼Aの焼もどし特性を示す図であ
る。
【図4】本発明の実施例による金型の水冷穴近傍の硬さ
分布を示す図である。
【図5】水冷穴を有するダイカスト金型の使用中の温度
分布を模式的に示す図である。
【図6】水冷穴を有するダイカスト型金型の割れと破面
の形態を示す模式図である。
【図7】水冷穴を有するダイカスト型金型の上面図と側
面図を示す概念図である。
【図8】従来の焼もどし方法による水冷穴近傍の硬さ分
布を示す図である。
【符号の説明】
1 金型、2 水冷穴、3 キャビティ底面、4 製
品、5 割れ、6 破面、7 高周波加熱電極、8 レ
ーザビームトーチ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 17/22 B22C 9/06 B29C 33/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金型を冷却する水冷穴を有し、該金型の
    水冷穴以外の部位の硬さと比較して、前記水冷穴の内径
    表面部が最も低い硬さであることを特徴とする水冷穴を
    有するダイカスト金型。
  2. 【請求項2】 金型を冷却する水冷穴を有し、該金型の
    水冷穴周辺以外の部位の硬さと比較して、前記水冷穴周
    辺部の硬さが低いことを特徴とする水冷穴を有するダイ
    カスト金型。
  3. 【請求項3】 水冷穴が形成された金型に焼入れと焼も
    どしを施した後、前記水冷穴の中に加熱手段を挿入し
    て、前記水冷穴の内径表面を前記焼もどしの温度以上に
    加熱して、前記焼もどし後の硬さ以下となるように再焼
    もどしを施すことを特徴とする水冷穴を有するダイカス
    ト金型の製造方法。
  4. 【請求項4】 水冷穴が形成された金型に焼入れを施し
    た後、前記水冷穴の中に加熱手段を挿入して通電し、前
    記水冷穴の内径表面を金型全体の焼もどしの温度以上に
    加熱して、金型全体の焼もどし硬さ以下の硬さとなるよ
    うに焼もどし、さらに金型全体を所定の焼もどし硬さに
    焼もどすことを特徴とする水冷穴を有するダイカスト金
    型の製造方法。
  5. 【請求項5】 加熱手段が誘導加熱、バーナー加熱また
    はレーザ加熱のいずれかであることを特徴とする請求項
    2または請求項3に記載の水冷穴を有するダイカスト金
    型の製造方法。
JP10792693A 1993-05-10 1993-05-10 水冷穴を有するダイカスト金型およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3164259B2 (ja)

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