JP3224044B2 - 使用面に起伏を有する工具およびその熱処理方法 - Google Patents

使用面に起伏を有する工具およびその熱処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼製の工具の靭性の必
要な部位のみを部分的に焼もどしして軟化し、工具の部
位によって最適な硬さに調整した工具およびその熱処理
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】機械部品の鋳造や熱間鍛造に使用される
金型、熱間押出用のライナ、ダイスなどは一般にJIS SK
D61、SKD62およびその改良鋼から製造され、熱処理は焼
入と焼もどしを施されて使用されている。本発明でいう
工具とは、前記のような用途を含み、広く他の金属、ガ
ラス、樹脂などを加工するための治具として用いられる
用途のものであって、熱処理を施して使用されるものと
して定義される。
【0003】これらの工具の熱処理後の硬さは、その工
具の用途によって選択されるが、特に工具の要求特性の
点から常に配慮されねばならぬ主特性は、耐摩耗性(へ
たりや座屈の原因となる)、高温強度(ヒートクラック
の原因となる)、および靭性(突発的な割れの原因とな
る)があげられる。たとえばアルミニウム合金等の押出
用ライナはダイス側端面でダイスと接する部分がへたり
を生じやすいため、できるだけライナ自身の強度を大き
くする必要があるが、強度を大きくすると当然靭性の低
下を招く欠点が生じる。
【0004】そこで本願出願人は、特公昭54−243
71号で開示されるように、ライナ全体を焼入焼もどし
後、強度の必要なライナ端面部のみを大気にさらし、残
部を熱浴で加熱して再度焼もどしする熱処理方法を提案
し実用化してきた。この熱処理方法を適用することによ
り、強圧の及ぶ範囲のみの強度を大きくして、他の部分
は使用応力による割れを防止するために、靭性を向上さ
せることができる。
【0005】一方、自動車産業をはじめ各産業において
は、近年アルミニウム合金の適用が広がって来ている。
アルミニウム合金の加工法の中でダイカスト鋳造法は、
その良好な寸法精度、高生産性、ニアネットシェイプに
よる後加工の削減効果等により広く用いられて来ている
が、最近はアルミホイール、バルブロッカーカバー等の
鋳肌を外装面として用いられる製品への適用が増加して
いる。したがって、鋳造後の鋳肌を良好にするために、
ダイカスト金型のヒートラック寿命の改善が重要課題と
なってきている。
【0006】ヒートクラックを抑制して金型の寿命を改
善するためには、型材自体の高温強度の向上が効果的で
ある。溶湯温度が700℃前後までの一般アルミ用ダイカ
ストの場合、型面の昇温は600℃を大きく越えないた
め、耐ヒートクラック性を高めるのに必要となるのは60
0℃前後までの高温強度である。また、スクイズダイカ
ストの場合、溶湯温度は高いが、溶湯が金型の中心部に
設けられた面積の大きいゲートから緩やかな速度で層流
充填されるため、スクイズダイカストにおいては、型面
の温度上昇はそれほど大きくない。しかし、鋳込時間が
長いため、金型中心から外周部にかけての金型内の温度
差が大きくなり易く、熱応力によるヒートクラックが早
期に型の中心部や応力集中をまねくコーナー部に発生し
易い。したがって、スクイズダイカスト型材のヒートク
ラック対策としては、600℃前後までの強度向上への取
組みが一般のダイカスト型材にも増して重要なポイント
となる。
【0007】600℃前後までの高温強度は初期硬さの影
響が大きい。したがって、ヒートクラック抑制が重要な
型では初期硬さを高目に設定することが行なわれて来て
おり、金型全体をHRC50以上の高硬度に熱処理されるダ
イカスト型が登場してきている。一方では、近年、鋳造
サイクルの短縮および鋳造品の結晶粒微細化を目的とす
るために、ダイカスト金型内部に水冷穴を加工し、金型
全体を冷却させながら、使用する必要が生じてきてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、溶湯を
鋳造する一方で金型内部を水冷することにより、金型表
面から内部にかけて急激な温度勾配が発生し、特に金型
にHRC50以上の高硬度材を使用する場合においては、水
冷穴先端部に使用中の過大な熱応力が発生し、金型の型
彫面(以下、キャビティともいう)からのクラックは入
らないが、水冷穴付近が割れ易くなるため、金型寿命に
限界があった。これは、金型全体の硬さを高くしている
ために、破壊靭性が極度に低下するためである。
【0009】金型内部の水冷穴付近からの割れを防止す
るために、金型の硬さをある程度下げることは効果があ
るが、これでは高硬度材を使用するメリットがなくな
り、金型表面のヒートクラックも発生し易くなって金型
は短寿命となる。
【0010】そこで、水冷穴を有するダイカスト金型の
熱処理方法についても、前述のライナの熱処理方法と同
じような手段をとることができる。すなわち、金型表面
が例えばHRC50〜52程度の高硬度になるような熱処理を
施した後、さらに水冷穴に相当する部分を含む領域を焼
もどし処理して、前記領域を金型の表面より硬さを下げ
る(例えばHRC40〜45程度にする)と、金型表面では高硬
度が(高強度)が維持されてヒートクラックは生じにく
く、金型内部は強度的に十分でしかも水冷穴からの割れ
が生じにくくなる程の靭性を付与することができるので
ある。
【0011】低硬度が必要な領域のみを焼もどしする手
段としては通常は、熱伝達係数の高い熱浴や流動層で部
分的に加熱する方法がとられる。しかし、この方法は型
彫面の深さが場所によって異なる場合は、型彫面の硬さ
ムラが生じるという致命的問題が生じやすい。
【0012】この現象について図5に基づいて詳しく説
明する。図5は熱間ダイス鋼 SKD61の金型を用い
て、金型1全体に焼入と焼もどしを施し、HRC52.5に調
質した後、金型の下部のみを600℃の焼もどし媒体5(図
5は熱浴で実施した)で1.5時間加熱して焼もどしを実施
している金型の断面での型彫面2(図5に斜線で示す部
分でキャビティとも称し、金型の使用面となる)および
その周辺を示す図である。図5のAA′,BB′,C
C′の断面硬さ分布を金型底面4からの距離と硬さで図
6に示す。図6からわかるように、金型下部の硬さ低下
により初期の目的は達しているものの、硬さ低下は焼も
どし媒体の加熱ライン6の上部まで及んでおり、特に型
彫面の形状の相異により硬さムラが生じていることがわ
かる。特に焼もどし媒体の加熱ラインから、型彫面まで
の距離が最も短い基準使用面3での硬さは目標硬さに反
してHRC47まで低下している。これは焼もどし媒体から
の熱伝導により型彫面まで熱影響が生じたためであり、
特に焼もどし媒体に近い型彫面ほど硬さ低下が大きくな
る。
【0013】このような目標を外れる硬さや硬さ分布
は、せっかくの焼入焼もどしの効果を減らし、金型の寿
命を低下させることになる。金型の型彫面への熱影響を
抑制するために、金型の型彫面を冷却空気や窒素ガスで
冷却しつつ焼もどし媒体中で金型の下部のみを冷却する
方法があるが、作業性の面で難点がある。
【0014】本発明の目的は、上記のような工具部位に
よる硬さムラ、特に使用部位でありながら、目的硬さよ
りも低くなるという危険を防止し、目標に合致した硬さ
分布を有する使用面に深さの異なる起伏を有する工具、
および焼もどし媒体中で再焼もどしをする場合の硬さ管
理を容易にした使用面に深さの異なる起伏を有する工具
の熱処理方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は部位によって
硬さを調整した工具を製造するための種々の熱処理方法
を検討した。その中で工具の使用部の硬さを高目とし、
靭性の必要なねじ部や金型下部の硬さを下げる手段とし
て、工具全体を焼入焼もどしした後さらに靭性の必要な
部分のみを焼もどしする際に、使用面の硬さのうち加熱
媒体の加熱ラインから最も短い距離にある使用面を「基
準使用面」として、この基準使用面での硬さを基準とし
て工具の加熱深さや加熱時間を決定する方法が有効であ
ることを見出した。そして、このような基準使用面の硬
さを基準とすれば、工具の他の使用面での硬さは基準使
用面の硬さより高くなる確率が極めて高く、狙った硬さ
分布を有する工具が得られるのである。
【0016】すなわち、本願の第1発明は、使用面に深
さの異なる起伏を有し、焼入後少なくとも一回以上部分
的に焼もどしされて他の部位よりも硬さの低い部位を含
む鋼製の工具であって、前記硬さの低い部位から最も短
い距離に位置する基準使用面のロックウェルC硬さが他
の使用面での平均ロックウェルC硬さより低く、かつ
(他の使用面での平均ロックウェルC硬さ-3)以内であ
ることを特徴とする使用面に起伏を有する工具である。
【0017】第2の発明は、前記工具の熱処理方法であ
り、焼入と焼もどしを施したロックウェルC硬度がH
である工具の一部を焼もどし媒体で加熱してさらに焼も
どしを行なう鋼製の工具の熱処理方法において、焼もど
し媒体での加熱ラインから工具の使用面までの距離が最
も短い基準使用面での硬さを基準とし、前記基準使用面
の硬さが(H -3)以内となるように焼もどし媒体へ
の工具の加熱深さと加熱時間を決定することを特徴とす
使用面に起伏を有する工具の熱処理方法である。
【0018】さらに本発明者は、工具全体を焼入焼もど
しすることに代えて、焼入のみを施した工具に対して
も、第2発明で述べたような熱処理方法が採用できるこ
とを確認した。この場合は、工具使用面の狙い硬さ(使
用硬さ)が予め設定されるから、その硬さ(ロックウェ
ルC硬度でHcとする)が基準使用面での硬さ決定のベー
スとなる。
【0019】より具体的には、本発明の第3は、焼入を
施した鋼製の工具の一部を焼もどし媒体で加熱して焼も
どしを行なう工具の熱処理方法において、焼もどし媒体
への工具の加熱深さは焼もどし後の工具使用面の狙い硬
さをロックウェルC硬度でH(t) とする時に、焼もど
し媒体での加熱ラインから工具の使用面までの距離が最
も短い基準使用面での硬さが(H(t) -3)以内となる
ように焼もどし媒体への工具の加熱深さと加熱時間を決
定することを特徴とする使用面に起伏を有する工具の熱
処理方法である。
【0020】鋼製の工具鋼が熱間ダイス鋼の場合には、
焼入のままで放置すれば、焼割れを生じやすいから、た
だちに工具の一部を焼もどしの加熱媒体に移して焼もど
しを行なうのがよい。しかし、事情により迅速な焼もど
しへの移行が不可能な場合には、焼入の歪みを開放する
程度に行なういわゆる「仮焼もどし」的な工程を入れて
もよい。本発明ではこのような本質的な焼入組織が残さ
れている仮焼もどし処理が施された工具の概念を含めて
「焼入を施した鋼製の工具」と称するものである。
【0021】本発明の第3の発明では、焼入→(仮焼も
どし)→工具の一部分の焼もどし→工具全体の焼もど
し、の工程をとるのが望ましい。ただし、前記の括弧内
の仮焼もどしはオプションの操作であり、採用しても採
用しなくてもよい。また、小さい工具(特に扁平な工
具)や、工具の一部分の焼もどしによって十分硬さを下
げる必要がある工具については、前記工程のうち最終の
工具全体の焼もどし操作を省略することが可能である。
これは、工具が薄い場合や、十分長い加熱をする場合に
は、加熱媒体の熱が工具の非加熱部まで伝導し十分な焼
なまし効果が得られる場合があるからである。
【0022】
【作用】本発明の基準使用面とは、工具としてその面で
他の材料を加工する面のうち、加熱ラインから最も短い
距離にある面を意味し、たとえば金型の取付けのための
面などは含まない。これは他の材料の加工のための硬さ
を保証すれば十分であることによる。本発明の「焼もど
し」とは通常の熱処理で呼称される意味の処理であり、
焼入後の高い硬さを焼もどすことにより硬さは低下し、
工具に靭性を付与するものである。
【0023】前記基準使用面の硬さは、焼入焼もどし後
に再度加熱する場合は先の焼もどし後の硬さがロックウ
ェルC硬度でHcが基準となる。加熱ラインから最も短
い距離にある基準使用面が加熱時の熱影響を最も受けや
すいので、この面の硬さをHc -3以内、望ましくはHc
-1以内に管理することにより、他の使用面はこれ以上の
硬さが確保されることになる。Hc -3を越える硬さ変化
は先に行なう焼入焼もどしの硬さを著しく低下させるこ
とになり、最初の調質の効果を損なうことになる。ま
た、部分加熱の熱影響によって、大きく硬さを下げるこ
とは、工具の使用面の部位によって硬さムラを生じやす
い。
【0024】焼入を施した工具をそのまま焼もどし媒体
で加熱して部分的に焼もどしを行なう場合には、焼もど
し後の工具使用面の狙い硬さHcを基準とする。そし
て、前記で定義される基準使用面での硬さがHc -3以内
となるように焼もどし媒体への工具の加熱深さや加熱時
間が決定される。
【0025】加熱深さや加熱時間は、工具の形状や大き
さにより異なるが、すべての基準が前記基準使用面をベ
ースにしていることに本発明の特徴がある。同一形状の
工具を複数回処理する場合は、本発明の硬さの決定の仕
方によって、試行的に行なう熱処理の結果で容易に加熱
深さや加熱時間が決められる。さらに、工具の使用面近
くに水冷穴などが明けられている場合は、熱電対をその
穴に挿入することにより、温度のモニタリングができ
る。すなわち、焼もどしの加熱媒体で加熱しながら基準
使用面の付近の温度変化が監視できるから、予めわかっ
ているその材料の焼もどしパラメータにより適宜加熱を
終了すればよいのである。
【0026】本発明の焼もどし加熱用に使用される焼も
どし媒体としては、通常、一般的にソルトと呼ばれてい
る熱浴を使用することができ、組成によって温度制御が
できる。たとえば、ダイカスト金型の通常の焼もどし温
度は550℃以下であるので、少なくともこの温度以上に
しないと金型内部の硬さ低下の効果が得られにくいの
で、熱浴条件を550以上とすればよい。このような熱
浴として適正な組成には、例えば30%BaCl、30%Na
Cl、40%KClからなるソルトを用いればよい。金型内
部に水冷穴を加工する場合には、熱処理の前後のいずれ
の時期に行なってもよい。水冷穴を焼なまし状態で加工
する方法は加工は容易であるが、複雑な形状の水冷穴と
する場合には、熱処理時の割れに注意する必要がある。
水冷穴を焼もどし媒体中の焼もどし後に加工する方法
は、熱処理時の割れの心配はないが、加工部分の硬さが
HRC40程度であるので、材質によっては時間がかかる加
工となる。したがって、通常のダイカスト金型を製作す
る場合は、熱処理前に穴加工を済ませておく方がよい。
【0027】600℃の焼もどし媒体による材料の熱影響
部は実験の結果、約30〜40mm程度である。すなわち、金
型を焼もどし媒体で加熱した境界から、非加熱部に向か
って約30〜40mmの範囲は、加熱しないにもかかわらず、
拡散した熱で硬さが低下してしまうので、この範囲を少
し外した50mm程度以上の所に基準使用面が来るようにセ
ットして焼もどしをするとよい。
【0028】水冷穴を有するダイカスト金型についてい
えば、金型表面が例えばHRC50〜52程度の高硬度になる
ような焼入れと焼もどしの熱処理を施した後、さらに水
冷穴の周辺のみを基準使用面の硬さをベースにして焼も
どし処理して、前記領域を金型の表面より硬さを下げる
(例えばHRC40〜45程度にする)と、金型表面ではヒート
クラックは生じにくく、金型内部は強度的に十分でしか
も水冷穴からの割れが生じにくくなる。もちろん、金型
表面の硬さをHRC50〜55程度の高硬度にするためには、
金型材質の選択も必要である。
【0029】このような高硬度が得られる金型用の材料
としては、例えば重量%で、C 0.3〜0.6%、Si 1.5%以
下、Mn 0.1〜1.5%、Cr 4.0〜6.0%、1/2W+Mo(Wと
Moは1種以上) 1.8〜5.0%、V 0.5〜2.0%からなる材
料、あるいはこれらの元素以外にCo 0.1〜5.0%、Ni
0.1〜1.5%を1種または2種添加したような材料が推奨
される。さらに具体的に言えば、本出願人が開発した熱
間工具鋼である、C 0.37%、Si 0.17%、Mn 0.6%、Ni
0.6%、Cr 5.2%、Mo 2.2%、V 0.85%、Co 0.8%の
鋼、またはC 0.52%、Si 0.1%、Mn 0.4%、Cr 4.2%、
W 1.6%、Mo 2.0%、V 1.15%、Co 0.8%の鋼などが適
するものである。後者の鋼を用いれば、十分な靭性を確
保しながらHRC55程度の金型にすることもできる。しか
し、本発明は高硬度材のみに適用されるのではなく、従
来から汎用的に用いられているJIS-SKD61クラスの熱間
ダイス鋼にも広く適用できるものである。
【0030】
【実施例】以下に本発明の実施例を工具の代表的な例で
ある金型について詳しく説明する。 (実施例1)表1に示す合金組成を有するSKD61および
鋼Aについて図1に示すような型彫面を有する金型を焼
なまし後に加工した。型彫面の形状は図5と同一であ
る。鋼AはSKD61より高硬度で破壊靭性が高い。金
型として必要なキャビティを加工後、焼入れ(1020℃)、
焼もどし(560℃×2回)により、全体の硬さをHRC52狙い
とした後、図1に示すように熱浴に浸漬した。
【0031】
【表1】
【0032】鋼Aについて言えば、金型の熱浴への浸漬
深さと加熱時間は、金型の基準使用面3の硬さがHRC51
以上となるように試作と焼もどしパラメータによる計算
で確かめ、熱浴への浸漬深さを45mm、加熱時間を70分と
決定して焼もどしを実施した。この時の硬さの決定基準
はすべて基準使用面3をベースにしており、金型の他の
使用面7,8などは考慮していない。同一形状の硬さ測
定用の金型について、焼もどし後の図1における鋼Aの
金型断面AA′,BB′,CC′での硬さ分布を図2に
示す。図2から明らかなように、基準使用面3の表面D
での硬さはHRC51.3であり、他の金型使用面E,Fの硬
さ(いずれもHRC52.0)と比較して大きい変動はなく、硬
さムラがないといえる。なお、SKD61についても同
様に、基準使用面の硬さをHRC50狙いとして図1のよう
な焼もどしを行なった結果、表2に示すように他の使用
面Eでの硬さはHRC50.8となり、硬さムラは生じなかっ
た。
【0033】したがって、本発明を適用すれば、再焼も
どし処理の時の熱浴の浸漬深さや浸漬時間を容易に決定
できるという利点と、熱処理後の金型の底部を硬さを低
くして靭性を付与し、型彫面は全域をほぼ同一の硬さで
焼入焼もどし直後の硬さを保つ状態とすることができる
利点を有する。従来の方法で再焼もどしを施した図6の
硬さ分布を有する金型と本発明の金型についてアルミニ
ウムダイカストでの寿命比較を行なうと、SKD61と
鋼Aのいずれでも表2のように寿命の差が大きく、硬さ
ムラが少ないという本発明の金型の良好な特性が実用面
からも明らかである。
【0034】
【表2】
【0035】(実施例2)表1に示す合金組成を有する
SKD61および鋼Aについて図3に示すような型彫面
を有する金型を焼なまし後に加工した。この金型は、冷
却のための水冷穴9を型彫面下部に設けた。熱処理は10
20℃で焼入後、500℃で仮焼もどしを施し、図3に示す
熱浴中に浸漬して金型下部のみの焼もどしを施した。熱
浴は600℃に保持し、熱浴の浸漬深さは実施例1を参考
にして、初期には金型底部から45mmまでを浸漬した。基
準使用面近傍の水冷穴には熱電対10を挿入して温度を
監視した。
【0036】焼もどし後の金型使用面の狙い硬さをロッ
クウェルC硬度でHc=52とするために、基準使用面3
での硬さ狙いをHRC51とした。そのためには基準使用面
近くの温度を530℃以上に上昇しないように熱電対によ
り監視し、前記の熱浴中の浸漬深さを熱処理中に上下し
て制御して金型下部のみが600℃での焼もどし効果で硬
さが低下するようにした。この方法は、熱浴中の温度管
理が浸漬時間より優先しており、最終的には熱浴の浸漬
は140分となった。それぞれ2ヶの金型のうち1ヶは、
断面を切断して硬さ分布を測定した。そのうちの鋼Aに
ついての結果を図4に示す。基準使用面での硬さは、HR
C51.2であり、他の金型の型彫面での硬さHRC53.4との差
は1.2に留まった。この金型を前記のように560℃で30分
間全体の焼もどしのために加熱することにより、H,I
部の硬さはHRC52.6となり、G部の硬さはHRC51.0となっ
た。
【0037】そこで、SKD61と鋼Aの1ヶずつにつ
いては、金型の使用面にも靭性を付与する目的で金型全
体を560℃で30分の焼もどしを施し、ダイカスト金型と
して使用した。その硬さと寿命の結果を実施例1と併せ
て表2に示す。従来例(図5の方法)の方法の金型も本
発明の方法も割れはなく良好であるが、ヒートクラック
の発生ショット数に差異がある。従来例の金型は型彫面
の硬さムラが生じているのに対し、本発明は硬さムラが
ないことによる効果が顕著に現われている。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、従来は調質後の工具を
一部分のみ加熱して焼もどしするため、形状的に起伏の
大きい工具の場合は、場所によって硬さムラが生じてい
た現象を大幅に改善できるものである。焼もどし媒体へ
の工具の加熱深さや加熱時間は加熱後の工具の硬さ変動
に大きな影響を与えるが、本発明によれば工具の基準使
用面のみの硬さに着目して、その変化を予測または実測
すればよく、安心して確実に目標硬さを達成することが
できる。
【0039】本発明によれば、工具使用面がムラがな
く、十分な硬さによる耐摩耗性や耐ヒートクラック性を
有するので、工具の寿命を飛躍的に延長でき、工具の手
入回数も減らすことができると共に、従来より問題とな
っていた工具の取付部や水冷穴部の硬さを安定的に下げ
て靭性を付与しているので割れを防止することが可能と
なるという相乗的効果が得られる。また、本発明によれ
ば、高硬度の材料を使用しても靭性不足による割れの対
策を、高硬度が必要な部位の硬さムラを生じることなく
局部的に行なえるので、将来のより高硬度の工具材質に
も適用し得る点でその汎用性が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による焼もどし媒体中での工
具の焼もどし状態を示す図である。
【図2】図1の工具の焼もどし後の硬さ分布を示す図で
ある。
【図3】本発明の実施例2による焼もどし媒体中での工
具の焼もどし状態を示す図である。
【図4】図3の工具の焼もどし後の硬さ分布を示す図で
ある。
【図5】従来の方法による焼もどし媒体中での工具の焼
もどし状態を示す図である。
【図6】図5の従来の方法による工具の焼もどし後の硬
さ分布を示す図である。
【符号の説明】
1 金型、2 型彫面、3 基準使用面、4 金型底
面、5 熱浴、6 加熱ライン、7 金型の他の使用
面、8 金型の他の使用面、9 水冷穴、10 熱電対

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 使用面に深さの異なる起伏を有し、焼入
    後少なくとも一回以上部分的に焼もどしされて他の部位
    よりも硬さの低い部位を含む鋼製の工具であって、前記
    硬さの低い部位から最も短い距離に位置する基準使用面
    のロックウェルC硬さが他の使用面での平均ロックウェ
    ルC硬さより低く、かつ(他の使用面での平均ロックウ
    ェルC硬さ -3)以内であることを特徴とする使用面に
    起伏を有する工具。
  2. 【請求項2】 焼入と焼もどしを施したロックウェルC
    硬度がHである工具の一部を焼もどし媒体で加熱して
    さらに焼もどしを行なう鋼製の工具の熱処理方法におい
    て、焼もどし媒体での加熱ラインから工具の使用面まで
    の距離が最も短い基準使用面での硬さを基準とし、前記
    基準使用面の硬さが(H -3)以内となるように焼も
    どし媒体への工具の加熱深さと加熱時間を決定すること
    を特徴とする使用面に起伏を有する工具の熱処理方法。
  3. 【請求項3】 焼入を施した鋼製の工具の一部を焼もど
    し媒体で加熱して焼もどしを行なう工具の熱処理方法に
    おいて、焼もどし媒体への工具の加熱深さは焼もどし後
    の工具使用面の狙い硬さをロックウェルC硬度でH
    (t) とする時に、焼もどし媒体での加熱ラインから工
    具の使用面までの距離が最も短い基準使用面での硬さが
    (H(t) -3)以内となるように焼もどし媒体への工具
    の加熱深さと加熱時間を決定することを特徴とする使用
    面に起伏を有する工具の熱処理方法。
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