JPH06315754A - 水冷穴を有する金型の製造方法 - Google Patents
水冷穴を有する金型の製造方法Info
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- JPH06315754A JPH06315754A JP5109054A JP10905493A JPH06315754A JP H06315754 A JPH06315754 A JP H06315754A JP 5109054 A JP5109054 A JP 5109054A JP 10905493 A JP10905493 A JP 10905493A JP H06315754 A JPH06315754 A JP H06315754A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 金型の型彫面の耐ヒートクラック性に優れ、
水冷穴付近の割れも生じないダイカスト金型とその製造
方法を提供する。 【構成】 第1発明は、金型の型彫面側に水冷穴を形成
後、金型の型彫面側から加熱して、型彫面側のみを所定
の焼入温度に昇温し、型彫面側を除く他の部分は、型彫
面側からの熱伝達によって所定の焼入温度より低い不完
全焼入温度に昇温して冷却する焼入を施した後、焼もど
しを行なう金型の製造方法である。そして第2発明は上
記の熱処理を施した後、型彫面側以外の不完全焼入部分
に水冷穴を形成する製造方法である。
水冷穴付近の割れも生じないダイカスト金型とその製造
方法を提供する。 【構成】 第1発明は、金型の型彫面側に水冷穴を形成
後、金型の型彫面側から加熱して、型彫面側のみを所定
の焼入温度に昇温し、型彫面側を除く他の部分は、型彫
面側からの熱伝達によって所定の焼入温度より低い不完
全焼入温度に昇温して冷却する焼入を施した後、焼もど
しを行なう金型の製造方法である。そして第2発明は上
記の熱処理を施した後、型彫面側以外の不完全焼入部分
に水冷穴を形成する製造方法である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金型内部に水冷穴を有
し、かつ金型の部品によって硬さを調整した金型および
その製造方法に関する。
し、かつ金型の部品によって硬さを調整した金型および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車産業をはじめ、各産業において
は、近年アルミニウム合金の適用が広がって来ている。
アルミニウム合金の加工法の中でダイカスト鋳造法は、
その良好な寸法精度、高生産性、ニアネットシェイプに
よる後加工の削減効果等により広く用いられて来ている
が、最近はアルミホイール、バルブロッカーカバー等の
鋳肌を外装面として用いられる製品への適用が増加して
いる。したがって、鋳造後の鋳肌を良好にするために、
ダイカスト金型のヒートラック寿命の改善が重要課題と
なってきている。また、自動車軽量化の一環として、ダ
イカスト製品重量の管理限界を厳しくする動きも出てき
ており、ヒートクラックの発生した型面の修正に基づく
ダイカスト製品の重量増加をも制限されようとしてお
り、この面からもヒートクラック抑制が重要となってき
ている。
は、近年アルミニウム合金の適用が広がって来ている。
アルミニウム合金の加工法の中でダイカスト鋳造法は、
その良好な寸法精度、高生産性、ニアネットシェイプに
よる後加工の削減効果等により広く用いられて来ている
が、最近はアルミホイール、バルブロッカーカバー等の
鋳肌を外装面として用いられる製品への適用が増加して
いる。したがって、鋳造後の鋳肌を良好にするために、
ダイカスト金型のヒートラック寿命の改善が重要課題と
なってきている。また、自動車軽量化の一環として、ダ
イカスト製品重量の管理限界を厳しくする動きも出てき
ており、ヒートクラックの発生した型面の修正に基づく
ダイカスト製品の重量増加をも制限されようとしてお
り、この面からもヒートクラック抑制が重要となってき
ている。
【0003】ヒートクラック抑制に対しては、型材自体
の高温強度の向上が効果的である。溶湯温度が700℃前
後までの一般アルミ用ダイカストの場合、型面の昇温は
600℃を大きく越えないので、耐ヒートクラック性を高
めるのに必要となるのは600℃前後までの高温強度であ
る。また、スクイズダイカストの場合、溶湯温度は高い
が、溶湯が金型の中心部に設けられた面積の大きいゲー
トから緩やかな速度で層流充填されるため、スクイズダ
イカストにおいては、型面の温度上昇はそれほど大きく
ない。しかし、鋳込時間が長いため、金型中心から外周
部にかけての金型内の温度差が大きくなり易く、熱応力
によるヒートクラックが早期に型の中心部や応力集中を
まねくコーナー部に発生し易い。したがって、スクイズ
ダイカスト型材のヒートクラック対策としては、600℃
前後までの強度向上への取組みが一般のダイカスト型材
にも増して重要なポイントとなる。
の高温強度の向上が効果的である。溶湯温度が700℃前
後までの一般アルミ用ダイカストの場合、型面の昇温は
600℃を大きく越えないので、耐ヒートクラック性を高
めるのに必要となるのは600℃前後までの高温強度であ
る。また、スクイズダイカストの場合、溶湯温度は高い
が、溶湯が金型の中心部に設けられた面積の大きいゲー
トから緩やかな速度で層流充填されるため、スクイズダ
イカストにおいては、型面の温度上昇はそれほど大きく
ない。しかし、鋳込時間が長いため、金型中心から外周
部にかけての金型内の温度差が大きくなり易く、熱応力
によるヒートクラックが早期に型の中心部や応力集中を
まねくコーナー部に発生し易い。したがって、スクイズ
ダイカスト型材のヒートクラック対策としては、600℃
前後までの強度向上への取組みが一般のダイカスト型材
にも増して重要なポイントとなる。
【0004】600℃前後までの高温強度は初期硬さの影
響が大きい。したがって、ヒートクラックの抑制が重要
な型では初期硬さを高目に設定することが行なわれて来
ており、HRC50以上の高硬度に熱処理されるダイカスト
型が登場してきている。一方では、近年、鋳造サイクル
の短縮および鋳造品の結晶粒微細化を目的とするため
に、ダイカスト金型内部に水冷穴を加工し、金型全体を
冷却させながら、使用する必要が生じてきている。そし
て、上述したような近年のダイカスト金型に対する要求
に応じるため、特開平4−367360号公報には、金
型の鋳造面となる型彫側の硬度を他の部位の硬度よりも
高め、該金型の鋳造面より硬度が低く靭性が高い部位に
冷却水通路を配置したダイカスト金型が開示されてい
る。
響が大きい。したがって、ヒートクラックの抑制が重要
な型では初期硬さを高目に設定することが行なわれて来
ており、HRC50以上の高硬度に熱処理されるダイカスト
型が登場してきている。一方では、近年、鋳造サイクル
の短縮および鋳造品の結晶粒微細化を目的とするため
に、ダイカスト金型内部に水冷穴を加工し、金型全体を
冷却させながら、使用する必要が生じてきている。そし
て、上述したような近年のダイカスト金型に対する要求
に応じるため、特開平4−367360号公報には、金
型の鋳造面となる型彫側の硬度を他の部位の硬度よりも
高め、該金型の鋳造面より硬度が低く靭性が高い部位に
冷却水通路を配置したダイカスト金型が開示されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、溶湯を
鋳造する一方で金型内部を水冷することにより、金型表
面から内部にかけて急激な温度勾配が発生し、特に金型
にHRC50以上の高硬度材を使用する場合においては、水
冷穴先端部に使用中の過大な熱応力が発生し、金型の型
彫面(以下、キャビティともいう)からのクラックは入
らないが、水冷穴付近が割れ易くなるため、金型寿命に
限界があった。これは、金型全体の硬さを高くしている
ために、破壊靭性値が極度に低下するためである。
鋳造する一方で金型内部を水冷することにより、金型表
面から内部にかけて急激な温度勾配が発生し、特に金型
にHRC50以上の高硬度材を使用する場合においては、水
冷穴先端部に使用中の過大な熱応力が発生し、金型の型
彫面(以下、キャビティともいう)からのクラックは入
らないが、水冷穴付近が割れ易くなるため、金型寿命に
限界があった。これは、金型全体の硬さを高くしている
ために、破壊靭性値が極度に低下するためである。
【0006】金型内部の水冷穴付近からの割れを防止す
るために、金型の硬さをある程度下げることは効果があ
るが、これでは高硬度材を使用するメリットがなくな
り、金型表面のヒートクラックも発生し易くなって金型
は短寿命となる。本発明の目的は、水冷穴を有する特に
高硬度の熱間工具鋼金型の水冷穴付近の割れを防止する
ためになされたもので、金型表面のヒートクラックを抑
制し、しかも水冷穴付近からの割れを防止したダイカス
ト金型およびその製造方法を提供することである。前述
した特開平4−367360号公報には、型彫側の硬度
を他の部位よりも高める方法について、(1)初めに金
型全体の焼入れ焼もどしを行ない、その後裏面側のみソ
ルト炉浸漬を行ない、次に型彫側を断熱材で覆い再焼も
どしする方法、および(2)局部焼入れ方法として、金
型全体を加熱した後、型彫側を油冷し、裏面側を保温材
シールで覆う方法があると説明されている。本発明の目
的は、水冷穴を有し特に高硬度の熱間工具鋼製の金型の
水冷穴付近の割れを防止するためになされたもので、金
型表面のヒートクラックを抑制し、しかも水冷穴付近か
らの割れを防止した金型の製造方法を提供することであ
る。
るために、金型の硬さをある程度下げることは効果があ
るが、これでは高硬度材を使用するメリットがなくな
り、金型表面のヒートクラックも発生し易くなって金型
は短寿命となる。本発明の目的は、水冷穴を有する特に
高硬度の熱間工具鋼金型の水冷穴付近の割れを防止する
ためになされたもので、金型表面のヒートクラックを抑
制し、しかも水冷穴付近からの割れを防止したダイカス
ト金型およびその製造方法を提供することである。前述
した特開平4−367360号公報には、型彫側の硬度
を他の部位よりも高める方法について、(1)初めに金
型全体の焼入れ焼もどしを行ない、その後裏面側のみソ
ルト炉浸漬を行ない、次に型彫側を断熱材で覆い再焼も
どしする方法、および(2)局部焼入れ方法として、金
型全体を加熱した後、型彫側を油冷し、裏面側を保温材
シールで覆う方法があると説明されている。本発明の目
的は、水冷穴を有し特に高硬度の熱間工具鋼製の金型の
水冷穴付近の割れを防止するためになされたもので、金
型表面のヒートクラックを抑制し、しかも水冷穴付近か
らの割れを防止した金型の製造方法を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、水冷穴を有
する金型の製造方法について、金型の型彫面が高硬度と
いう特徴を活かしつつ、水冷穴周辺からの割れを防止す
る手段を検討した。その結果、金型を焼入れする際、加
熱手段を型彫面側のみに設置し、該型彫面のみを所定の
焼入れ温度に加熱して完全に焼入れし、水冷穴を有する
他の部分は、焼入れ温度まで昇温させないで不完全焼入
れする焼入れ処理を施した後、焼もどすことにより、金
型の型彫面が例えばHRC50〜52程度の高硬度となり、水
冷穴が存在する領域を金型表面より硬さを低くする(例
えばHRC40〜45程度)ことが可能であることがわかった。
その結果、金型表面では、ヒートクラックは生じにく
く、金型内部は強度的に十分でしかも水冷穴からの割れ
が生じにくくなることがわかった。もちろん、金型の型
彫面の硬さをHRC50-55程度の高硬度にするためには、金
型材質の選択も必要である。
する金型の製造方法について、金型の型彫面が高硬度と
いう特徴を活かしつつ、水冷穴周辺からの割れを防止す
る手段を検討した。その結果、金型を焼入れする際、加
熱手段を型彫面側のみに設置し、該型彫面のみを所定の
焼入れ温度に加熱して完全に焼入れし、水冷穴を有する
他の部分は、焼入れ温度まで昇温させないで不完全焼入
れする焼入れ処理を施した後、焼もどすことにより、金
型の型彫面が例えばHRC50〜52程度の高硬度となり、水
冷穴が存在する領域を金型表面より硬さを低くする(例
えばHRC40〜45程度)ことが可能であることがわかった。
その結果、金型表面では、ヒートクラックは生じにく
く、金型内部は強度的に十分でしかも水冷穴からの割れ
が生じにくくなることがわかった。もちろん、金型の型
彫面の硬さをHRC50-55程度の高硬度にするためには、金
型材質の選択も必要である。
【0008】このような高硬度が得られる材料として
は、例えば重量%で、C 0.3〜0.6%、Si 1.5%以下、Mn
0.1〜1.5%、Cr 4.0〜6.0%、1/2W+Mo(WとMoは1
種以上) 1.8〜5.0%、V 0.5〜2.0%からなる材料、ある
いはこれらの元素以外にCo 0.1〜5.0%、Ni 0.1〜1.5%
を1種または2種添加したような材料が推奨される。さ
らに具体的に言えば、本発明者が開発した熱間工具鋼で
ある、C 0.37%、Si 0.17%、Mn 0.6%、Ni 0.6%、Cr
5.2%、Mo 2.2%、V 0.85%、Co 0.8%の鋼、またはC
0.52%、Si 0.1%、Mn 0.4%、Cr 4.2%、W 1.6%、Mo
2.0%、V 1.15%、Co 0.8%の鋼などが適するものであ
る。後者の鋼を用いれば、十分な靭性を確保しながらHR
C55程度の金型にすることもできる。しかし、本発明は
高硬度材のみに適用されるのではなく、従来から汎用的
に用いられているJIS-SKD61クラスの熱間ダイス鋼にも
広く適用できるものである。
は、例えば重量%で、C 0.3〜0.6%、Si 1.5%以下、Mn
0.1〜1.5%、Cr 4.0〜6.0%、1/2W+Mo(WとMoは1
種以上) 1.8〜5.0%、V 0.5〜2.0%からなる材料、ある
いはこれらの元素以外にCo 0.1〜5.0%、Ni 0.1〜1.5%
を1種または2種添加したような材料が推奨される。さ
らに具体的に言えば、本発明者が開発した熱間工具鋼で
ある、C 0.37%、Si 0.17%、Mn 0.6%、Ni 0.6%、Cr
5.2%、Mo 2.2%、V 0.85%、Co 0.8%の鋼、またはC
0.52%、Si 0.1%、Mn 0.4%、Cr 4.2%、W 1.6%、Mo
2.0%、V 1.15%、Co 0.8%の鋼などが適するものであ
る。後者の鋼を用いれば、十分な靭性を確保しながらHR
C55程度の金型にすることもできる。しかし、本発明は
高硬度材のみに適用されるのではなく、従来から汎用的
に用いられているJIS-SKD61クラスの熱間ダイス鋼にも
広く適用できるものである。
【0009】すなわち、本発明の第1の発明は、焼なま
し状態の金型に水冷穴を形成後、当該金型を焼入れする
際、高い硬さをを必要とする型彫面のみから加熱し、該
型彫面のみを所定の焼入れ温度に昇温し、水冷穴を有す
る他の部分は、型彫面側からの熱伝達によって所定の焼
入れ温度よりも低温に昇温して不完全焼入れし金型全体
に焼もどしを施し、型彫面を除く他の部分を型彫面側よ
りも低い硬さとすることを特徴とする水冷穴を有する金
型の製造方法であり、他の1つは金型を上記の熱処理方
法によって焼入れと焼もどし処理した後、水冷穴を形成
することを特徴とする金型の製造方法である。
し状態の金型に水冷穴を形成後、当該金型を焼入れする
際、高い硬さをを必要とする型彫面のみから加熱し、該
型彫面のみを所定の焼入れ温度に昇温し、水冷穴を有す
る他の部分は、型彫面側からの熱伝達によって所定の焼
入れ温度よりも低温に昇温して不完全焼入れし金型全体
に焼もどしを施し、型彫面を除く他の部分を型彫面側よ
りも低い硬さとすることを特徴とする水冷穴を有する金
型の製造方法であり、他の1つは金型を上記の熱処理方
法によって焼入れと焼もどし処理した後、水冷穴を形成
することを特徴とする金型の製造方法である。
【0010】本発明は、水冷穴を有するSKD61やS
KD61の改良材である前述の組成のような高硬度が得
られる熱間工具鋼からなるダイカスト金型の使用寿命向
上のため、被鋳造材の溶湯と接するキャビティ面をHRC5
0〜55程度の高硬度にする一方、水冷穴を有する領域をH
RC40〜45程度の低硬度にするため、型彫面のみを所定の
焼入れ温度まで上昇させ、水冷穴を有する領域の温度が
焼入れ温度まで上昇しないうちに、急冷することによ
り、水冷穴を有する領域を金型の型彫面側よりは相対的
に低い硬さとすることを骨子としている。したがって、
このような熱処理で得られた金型は、型彫面の硬さ(HR
C50〜55程度)より型彫面側以外の部位の硬さ(HRC40〜45
程度)の方が低いことを特徴としている。
KD61の改良材である前述の組成のような高硬度が得
られる熱間工具鋼からなるダイカスト金型の使用寿命向
上のため、被鋳造材の溶湯と接するキャビティ面をHRC5
0〜55程度の高硬度にする一方、水冷穴を有する領域をH
RC40〜45程度の低硬度にするため、型彫面のみを所定の
焼入れ温度まで上昇させ、水冷穴を有する領域の温度が
焼入れ温度まで上昇しないうちに、急冷することによ
り、水冷穴を有する領域を金型の型彫面側よりは相対的
に低い硬さとすることを骨子としている。したがって、
このような熱処理で得られた金型は、型彫面の硬さ(HR
C50〜55程度)より型彫面側以外の部位の硬さ(HRC40〜45
程度)の方が低いことを特徴としている。
【0011】
【作用】上記のような熱間工具鋼製の金型は、用途に応
じ様々な形状のキャビティ面を有する。図6は水冷穴を
有する金型1の断面模式図を示す上面図と側面図であ
る。一般に水冷穴2はキャビティ底面3から30〜60mm程
度の距離に型彫面に沿って加工され、冷却水は矢印の方
向に流れる。鋳造された製品のセンターラインから半分
が製品4として示されている。実際の鋳造中は、図7に
示すごとく、水冷穴を境界として、例えば断面A−Bで
は図7の右図に示すような急激な温度勾配を生ずるため
過大な熱応力が発生し、水冷穴周辺に割れが発生するこ
とがある。このような割れの典型的な例を図8の上面図
に割れ5として、その割れ破面の状況を破面6として図
8の右図に示す。
じ様々な形状のキャビティ面を有する。図6は水冷穴を
有する金型1の断面模式図を示す上面図と側面図であ
る。一般に水冷穴2はキャビティ底面3から30〜60mm程
度の距離に型彫面に沿って加工され、冷却水は矢印の方
向に流れる。鋳造された製品のセンターラインから半分
が製品4として示されている。実際の鋳造中は、図7に
示すごとく、水冷穴を境界として、例えば断面A−Bで
は図7の右図に示すような急激な温度勾配を生ずるため
過大な熱応力が発生し、水冷穴周辺に割れが発生するこ
とがある。このような割れの典型的な例を図8の上面図
に割れ5として、その割れ破面の状況を破面6として図
8の右図に示す。
【0012】このような割れが発生する要因は、キャビ
ティ部の耐ヒートクラック性を向上させるために金型全
体の硬さを従来よりも高くしていること、それに伴って
破壊靭性値が低下してしまうため、特に過大な熱応力が
発生し易い水冷穴付近で割れが発生し易くなるものと思
われる。したがって、このような水冷端の割れを防止す
るためには、型彫部の硬さを維持しつつ、水冷穴の存在
する領域付近を軟化させて破壊靭性値を十分上げる必要
がある。したがって、型彫のみを焼入れ温度まで上昇さ
せる焼入れを行なった後、所定の温度で金型全体を焼も
どすことにより、金型型彫面側は硬さが高く、水冷穴が
ある領域は、硬さが低い理想的な金型が得られるのであ
る。
ティ部の耐ヒートクラック性を向上させるために金型全
体の硬さを従来よりも高くしていること、それに伴って
破壊靭性値が低下してしまうため、特に過大な熱応力が
発生し易い水冷穴付近で割れが発生し易くなるものと思
われる。したがって、このような水冷端の割れを防止す
るためには、型彫部の硬さを維持しつつ、水冷穴の存在
する領域付近を軟化させて破壊靭性値を十分上げる必要
がある。したがって、型彫のみを焼入れ温度まで上昇さ
せる焼入れを行なった後、所定の温度で金型全体を焼も
どすことにより、金型型彫面側は硬さが高く、水冷穴が
ある領域は、硬さが低い理想的な金型が得られるのであ
る。
【0013】具体的に、型彫面付近のみを焼入れ温度ま
で上昇させる方法としては、金型を焼入れする際、加熱
ヒータ(抵抗加熱、高周波加熱等)を型彫面側のみに設置
し、一方向加熱とする方法がある。この方法により、前
述したような金型が得られる。抵抗加熱ヒータや高周波
加熱方法を用いると最も簡便に一方向からの加熱が可能
であるが、このような加熱ができない時には金型をさか
さまにして型彫面側のみソルトバスの溶液中に浸漬する
方法等も考えられる。そして、状況に応じてその他の加
熱方法(例えば火焔)でも採用できる。上述したような焼
入れ方法は、金型を一部分だけ加熱して昇温させればよ
いから、金型全体を加熱する通常の焼入れに比べ、熱エ
ネルギを大幅に低減できるから金型のコスト低減にも寄
与する。
で上昇させる方法としては、金型を焼入れする際、加熱
ヒータ(抵抗加熱、高周波加熱等)を型彫面側のみに設置
し、一方向加熱とする方法がある。この方法により、前
述したような金型が得られる。抵抗加熱ヒータや高周波
加熱方法を用いると最も簡便に一方向からの加熱が可能
であるが、このような加熱ができない時には金型をさか
さまにして型彫面側のみソルトバスの溶液中に浸漬する
方法等も考えられる。そして、状況に応じてその他の加
熱方法(例えば火焔)でも採用できる。上述したような焼
入れ方法は、金型を一部分だけ加熱して昇温させればよ
いから、金型全体を加熱する通常の焼入れに比べ、熱エ
ネルギを大幅に低減できるから金型のコスト低減にも寄
与する。
【0014】金型内部に形成する水冷穴の加工は、熱処
理の前後のいずれの時期に行なってもよい。水冷穴を焼
なまし状態で加工する方法は加工は容易であるが、複雑
な形状の水冷穴とする場合には、熱処理時の割れに注意
する必要がある。水冷穴を焼入れ焼もどし後に加工する
方法は、熱処理時の割れの心配はないが、加工部分の硬
さがHRC40程度に硬くなるので、材質によっては時間が
かかる加工となる。したがって、通常のダイカスト金型
を製作する場合は、熱処理前に穴加工を済ませておく方
がよい。
理の前後のいずれの時期に行なってもよい。水冷穴を焼
なまし状態で加工する方法は加工は容易であるが、複雑
な形状の水冷穴とする場合には、熱処理時の割れに注意
する必要がある。水冷穴を焼入れ焼もどし後に加工する
方法は、熱処理時の割れの心配はないが、加工部分の硬
さがHRC40程度に硬くなるので、材質によっては時間が
かかる加工となる。したがって、通常のダイカスト金型
を製作する場合は、熱処理前に穴加工を済ませておく方
がよい。
【0015】
【実施例】以下に本発明の実施例を詳しく説明する。 (実施例1)表1に示す合金組成を有するSKD61お
よび鋼Aについて図2に示すような水冷穴を有するダイ
カスト金型を焼なまし時に加工した。すなわち、本実施
例においては、水冷穴を有する金型として一般的に知ら
れているダイカスト金型を採用し熱処理の実験と金型の
寿命テストを行なった。SKD61および鋼Aの焼もど
し特性は、図3に示す通りであり、鋼AはSKD61よ
り高硬度で破壊靭性値が高い。ダイカスト金型として必
要なキャビティを加工後、図1に示す構造の炉に金型を
挿入し、キャビティ底部、水冷穴、および金型底部に熱
電対を取り付けた後、キャビティの上方に抵抗加熱式ヒ
ータ9を設置し、キャビティ部の加熱温度を1020℃を狙
って加熱して焼入れを施した。図4は焼入れ加熱中の金
型各位置の温度上昇の状況を示す図であり、焼入れ冷却
直前の金型各位置の温度は、ヒータ側から順に1020℃、
950℃、910℃であった。この金型を油焼入れし、次いで
焼もどし(560℃×2回)を施した。
よび鋼Aについて図2に示すような水冷穴を有するダイ
カスト金型を焼なまし時に加工した。すなわち、本実施
例においては、水冷穴を有する金型として一般的に知ら
れているダイカスト金型を採用し熱処理の実験と金型の
寿命テストを行なった。SKD61および鋼Aの焼もど
し特性は、図3に示す通りであり、鋼AはSKD61よ
り高硬度で破壊靭性値が高い。ダイカスト金型として必
要なキャビティを加工後、図1に示す構造の炉に金型を
挿入し、キャビティ底部、水冷穴、および金型底部に熱
電対を取り付けた後、キャビティの上方に抵抗加熱式ヒ
ータ9を設置し、キャビティ部の加熱温度を1020℃を狙
って加熱して焼入れを施した。図4は焼入れ加熱中の金
型各位置の温度上昇の状況を示す図であり、焼入れ冷却
直前の金型各位置の温度は、ヒータ側から順に1020℃、
950℃、910℃であった。この金型を油焼入れし、次いで
焼もどし(560℃×2回)を施した。
【0016】図5は図2に示す断面C−Dの位置で焼入
れ焼もどし後の硬さ分布を示している。図からわかるよ
うにキャビティ表面部の硬さは、両鋼種ともHRC51〜50.
5の高硬度が得られ、水冷穴付近がHRC41〜40、金型底面
は35.0〜34.0の低硬度とすることができた。表2に実際
の金型の寿命テストを行なった結果を比較例の結果と共
に示す。比較例は金型の硬さを変化させるのみで本発明
のような一方向焼入れを施さないものである。
れ焼もどし後の硬さ分布を示している。図からわかるよ
うにキャビティ表面部の硬さは、両鋼種ともHRC51〜50.
5の高硬度が得られ、水冷穴付近がHRC41〜40、金型底面
は35.0〜34.0の低硬度とすることができた。表2に実際
の金型の寿命テストを行なった結果を比較例の結果と共
に示す。比較例は金型の硬さを変化させるのみで本発明
のような一方向焼入れを施さないものである。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】いずれの鋼を用いた場合も、金型の硬さが
HRC44程度では、水冷穴周辺の割れはないものの、SKD61
では約7,900〜8,100ショット、鋼Aでは10,100〜12,000
ショットでヒートクラックの発生により、型彫面の修正
が必要になっている。これらの鋼をHRC51前後の硬さに
上げると、いずれの鋼もヒートクラックが発生するまで
に金型内部の水冷穴付近に割れを生じ、5,000ショット
付近で金型を取り替える必要が生じた。本発明を適用し
た金型は水冷穴からの割れを生じることもなく、金型表
面のヒートクラック発生までのサイクル数を約2倍に伸
ばすことができ、型彫面の修正などの手入れ回数も大幅
に減らすことができた。
HRC44程度では、水冷穴周辺の割れはないものの、SKD61
では約7,900〜8,100ショット、鋼Aでは10,100〜12,000
ショットでヒートクラックの発生により、型彫面の修正
が必要になっている。これらの鋼をHRC51前後の硬さに
上げると、いずれの鋼もヒートクラックが発生するまで
に金型内部の水冷穴付近に割れを生じ、5,000ショット
付近で金型を取り替える必要が生じた。本発明を適用し
た金型は水冷穴からの割れを生じることもなく、金型表
面のヒートクラック発生までのサイクル数を約2倍に伸
ばすことができ、型彫面の修正などの手入れ回数も大幅
に減らすことができた。
【0020】すなわち、本発明のダイカスト金型を用い
れば、本発明を適用しない従来の金型と比較してヒート
クラックの発生も少なく、水冷穴付近の割れもないとい
う相乗効果が得られるのである。本実施例では、型彫面
以外の温度上昇が不要な領域を昇温させないための対策
は特に講じなかったが、この部分を砂や耐火材などに埋
め込んだり水や油等に浸漬するなどして、必要以上の温
度上昇を防止してもよい。
れば、本発明を適用しない従来の金型と比較してヒート
クラックの発生も少なく、水冷穴付近の割れもないとい
う相乗効果が得られるのである。本実施例では、型彫面
以外の温度上昇が不要な領域を昇温させないための対策
は特に講じなかったが、この部分を砂や耐火材などに埋
め込んだり水や油等に浸漬するなどして、必要以上の温
度上昇を防止してもよい。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、キャビティ部が十分な
硬さを有しており、耐ヒートクラック性が高く、型彫面
の修正までの寿命を従来の型の2倍程度に延長でき、金
型の手入回数も減らすことができると共に、従来より問
題となっていた水冷穴部付近の割れを防止することが可
能となるという相乗以上の効果が得られる。また、本発
明によれば、高硬度の材料を使用しても靭性不足による
割れの対策を局部的に行なえるので、将来出現するであ
ろう、より高硬度の金型材質にも適用し得る点でその汎
用性が高い発明である。さらに、金型全体を昇温する焼
入れ方法に比べ一部分加熱であるので、加熱のためのエ
ネルギが少なくなるので金型コストの低減にも効果があ
る。
硬さを有しており、耐ヒートクラック性が高く、型彫面
の修正までの寿命を従来の型の2倍程度に延長でき、金
型の手入回数も減らすことができると共に、従来より問
題となっていた水冷穴部付近の割れを防止することが可
能となるという相乗以上の効果が得られる。また、本発
明によれば、高硬度の材料を使用しても靭性不足による
割れの対策を局部的に行なえるので、将来出現するであ
ろう、より高硬度の金型材質にも適用し得る点でその汎
用性が高い発明である。さらに、金型全体を昇温する焼
入れ方法に比べ一部分加熱であるので、加熱のためのエ
ネルギが少なくなるので金型コストの低減にも効果があ
る。
【図1】本発明に係る水冷穴を有するダイカスト金型の
焼入れ方法を示す概念図である。
焼入れ方法を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例に使用したダイカスト金型の断
面形状を示す図である。
面形状を示す図である。
【図3】SKD61および鋼Aの焼もどし特性を示す図であ
る。
る。
【図4】本発明の実施例による金型の温度上昇状況を示
す図である。
す図である。
【図5】本発明の実施例によって得られた金型の硬さ分
布を示す図である。
布を示す図である。
【図6】水冷穴を有するダイカスト型金型の上面図と側
面図を示す図である。
面図を示す図である。
【図7】水冷穴を有するダイカスト金型の使用中の温度
分布を模式的に示す図である。
分布を模式的に示す図である。
【図8】水冷穴を有するダイカスト型金型の割れと破面
の形態を示す図である。
の形態を示す図である。
1 金型、2 水冷穴、3 キャビティ底面、4 製
品、5 割れ、6 破面、7 熱電対、8 抵抗加熱式
ヒータ、9 炉殼
品、5 割れ、6 破面、7 熱電対、8 抵抗加熱式
ヒータ、9 炉殼
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C21D 9/00 M 9352−4K
Claims (2)
- 【請求項1】 金型に水冷穴を形成後、前記金型の型彫
面側から加熱して、該型彫面側のみを所定の焼入れ温度
に昇温し、前記型彫面側を除く他の部分は、前記型彫面
側の熱伝達によって所定の焼入れ温度より低い不完全焼
入れ温度に昇温して冷却する焼入れを施した後、金型全
体に焼もどしを行なうことを特徴とする水冷穴を有する
金型の製造方法。 - 【請求項2】 高硬度を必要とする型彫面側から加熱し
て、該型彫面側のみを所定の焼入れ温度に昇温し、前記
型彫面側を除く他の部分は、前記型彫面側の熱伝達によ
って所定の焼入れ温度より低い不完全焼入れ温度に昇温
して冷却する焼入れ、および焼もどしを施した後、型彫
面側以外の一部に水冷穴を形成することを特徴とする水
冷穴を有する金型の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5109054A JPH06315754A (ja) | 1993-05-11 | 1993-05-11 | 水冷穴を有する金型の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5109054A JPH06315754A (ja) | 1993-05-11 | 1993-05-11 | 水冷穴を有する金型の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06315754A true JPH06315754A (ja) | 1994-11-15 |
Family
ID=14500441
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5109054A Pending JPH06315754A (ja) | 1993-05-11 | 1993-05-11 | 水冷穴を有する金型の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06315754A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108973034A (zh) * | 2018-09-01 | 2018-12-11 | 苏州百盛精密工业有限公司 | 集成式冷却分流块及其生产工艺 |
CN110072650A (zh) * | 2016-11-22 | 2019-07-30 | 小山钢材株式会社 | 压铸模具的制造方法及压铸模具 |
-
1993
- 1993-05-11 JP JP5109054A patent/JPH06315754A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110072650A (zh) * | 2016-11-22 | 2019-07-30 | 小山钢材株式会社 | 压铸模具的制造方法及压铸模具 |
CN108973034A (zh) * | 2018-09-01 | 2018-12-11 | 苏州百盛精密工业有限公司 | 集成式冷却分流块及其生产工艺 |
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