JPH06322444A - 水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方法 - Google Patents
水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方法Info
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- JPH06322444A JPH06322444A JP10792793A JP10792793A JPH06322444A JP H06322444 A JPH06322444 A JP H06322444A JP 10792793 A JP10792793 A JP 10792793A JP 10792793 A JP10792793 A JP 10792793A JP H06322444 A JPH06322444 A JP H06322444A
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- mold
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 金型の型彫面のヒートクラックを抑制し、し
かも水冷孔からの大割れを防止したダイカスト金型の製
造方法を提供する。 【構成】 本発明は、金型全体を焼入れ温度に保持した
のち、その型彫面部を180〜400℃の熱浴中に焼入
れし、金型の型彫面部以外の部分を徐冷し、その後金型
全体を焼きもどしすることを特徴とする、水冷孔を有す
るダイカスト金型の熱処理方法である。
かも水冷孔からの大割れを防止したダイカスト金型の製
造方法を提供する。 【構成】 本発明は、金型全体を焼入れ温度に保持した
のち、その型彫面部を180〜400℃の熱浴中に焼入
れし、金型の型彫面部以外の部分を徐冷し、その後金型
全体を焼きもどしすることを特徴とする、水冷孔を有す
るダイカスト金型の熱処理方法である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金型内部に水冷孔を有
し、かつ金型の部分によって硬さを調整したダイカスト
金型の製造方法に関する。
し、かつ金型の部分によって硬さを調整したダイカスト
金型の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車産業をはじめ、各産業において
は、近年アルミニウム合金の適用が広がってきている。
アルミニウム合金の加工法の中でダイカスト鋳造法はそ
の良好な寸法精度、高生産性、ニアネットシェイプによ
る後加工の削減効果等により広く用いられて来ている
が、最近はアルミホイール、バルブロッカーカバー等の
鋳肌を外装面として用いられる製品への適用が増加して
いる。したがって、鋳肌を良好にするために、ダイカス
ト金型のヒートクラック寿命の改善が重要課題となって
きている。また、自動車軽量化の一環として、ダイカス
ト製品重量の管理限界を厳しくする動きも出てきてお
り、ヒートクラックの発生した型面の修正に基づくダイ
カスト製品の重量増加をも制限されようとしており、こ
の面からもヒートクラック抑制が重要となってきてい
る。
は、近年アルミニウム合金の適用が広がってきている。
アルミニウム合金の加工法の中でダイカスト鋳造法はそ
の良好な寸法精度、高生産性、ニアネットシェイプによ
る後加工の削減効果等により広く用いられて来ている
が、最近はアルミホイール、バルブロッカーカバー等の
鋳肌を外装面として用いられる製品への適用が増加して
いる。したがって、鋳肌を良好にするために、ダイカス
ト金型のヒートクラック寿命の改善が重要課題となって
きている。また、自動車軽量化の一環として、ダイカス
ト製品重量の管理限界を厳しくする動きも出てきてお
り、ヒートクラックの発生した型面の修正に基づくダイ
カスト製品の重量増加をも制限されようとしており、こ
の面からもヒートクラック抑制が重要となってきてい
る。
【0003】ヒートクラック抑制に対しては、型材自体
の高温強度の向上が効果的である。溶湯温度が700℃
前後までの一般アルミ用ダイカストの場合、型彫面の昇
温は600℃を大きく越えないため、耐ヒートクラック
性を高めるのに必要となるのは600℃前後までの高温
強度である。また、スクイズダイカストの場合には、溶
湯温度は高いが、溶湯が金型の中心部に設けられた面積
の大きいゲートから比較的緩やかな速度で層流充填され
るため、スクイズダイカスト金型の型彫面部の温度上昇
はそれほど大きくない。ところが、スクイズダイカスト
金型の場合は、鋳込み時間が長いため、金型中心から外
周部にかけて金型内の温度差が大きくなり、金型の中心
部や、応力集中が起るコーナー部に、熱応力によるヒー
トクラックが早期に発生しやすい。したがって、スクイ
ズダイカスト型材のヒートクラック対策としては、60
0℃前後までの強度向上への取り組みが一般のダイカス
ト型材にも増して重要なポイントとなる。
の高温強度の向上が効果的である。溶湯温度が700℃
前後までの一般アルミ用ダイカストの場合、型彫面の昇
温は600℃を大きく越えないため、耐ヒートクラック
性を高めるのに必要となるのは600℃前後までの高温
強度である。また、スクイズダイカストの場合には、溶
湯温度は高いが、溶湯が金型の中心部に設けられた面積
の大きいゲートから比較的緩やかな速度で層流充填され
るため、スクイズダイカスト金型の型彫面部の温度上昇
はそれほど大きくない。ところが、スクイズダイカスト
金型の場合は、鋳込み時間が長いため、金型中心から外
周部にかけて金型内の温度差が大きくなり、金型の中心
部や、応力集中が起るコーナー部に、熱応力によるヒー
トクラックが早期に発生しやすい。したがって、スクイ
ズダイカスト型材のヒートクラック対策としては、60
0℃前後までの強度向上への取り組みが一般のダイカス
ト型材にも増して重要なポイントとなる。
【0004】ところで、600℃前後までの高温強度を
高めるには、金型材の初期硬さの影響が大きい。したが
って、ヒートクラックの発生を抑制するのが重要な型で
は、初期硬さを高めに設定しようとする試みがなされて
おり、金型の硬さをHRC50以上の高硬度に熱処理し
たダイカスト金型も登場している。一方では、近年、鋳
造サイクルの短縮および鋳造品の結晶粒微細化を目的と
するために、ダイカスト金型内部に水冷孔を加工し、金
型全体を冷却させながら、使用する必要が生じてきてい
る。そして、上述したような近年のダイカスト金型に対
する要求に応じるため、特開平4−367360号公報
には、金型の鋳造面となる型彫側の硬度を他の部位の硬
度よりも高め、該金型の鋳造面よりも硬度が低く靭性が
高い部位に冷却水通路を配置したダイカスト金型が開示
されている。
高めるには、金型材の初期硬さの影響が大きい。したが
って、ヒートクラックの発生を抑制するのが重要な型で
は、初期硬さを高めに設定しようとする試みがなされて
おり、金型の硬さをHRC50以上の高硬度に熱処理し
たダイカスト金型も登場している。一方では、近年、鋳
造サイクルの短縮および鋳造品の結晶粒微細化を目的と
するために、ダイカスト金型内部に水冷孔を加工し、金
型全体を冷却させながら、使用する必要が生じてきてい
る。そして、上述したような近年のダイカスト金型に対
する要求に応じるため、特開平4−367360号公報
には、金型の鋳造面となる型彫側の硬度を他の部位の硬
度よりも高め、該金型の鋳造面よりも硬度が低く靭性が
高い部位に冷却水通路を配置したダイカスト金型が開示
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、溶湯を
鋳造する一方で金型内部を水冷することにより、金型表
面から内部にかけて急激な温度勾配が発生し、特に金型
にHRC50以上の高硬度材を使用する場合において
は、水冷孔先端部に使用中の過大な熱応力が発生し、金
型の型彫面(以下、キャビティと記す)からのクラック
は入らないが、水冷孔付近が割れやすくなるため、金型
寿命に限界があった。これは、金型全体の硬さを高くし
ているために、破壊靱性が極度に低下するためである。
鋳造する一方で金型内部を水冷することにより、金型表
面から内部にかけて急激な温度勾配が発生し、特に金型
にHRC50以上の高硬度材を使用する場合において
は、水冷孔先端部に使用中の過大な熱応力が発生し、金
型の型彫面(以下、キャビティと記す)からのクラック
は入らないが、水冷孔付近が割れやすくなるため、金型
寿命に限界があった。これは、金型全体の硬さを高くし
ているために、破壊靱性が極度に低下するためである。
【0006】金型内部の水冷孔付近からの割れを防止す
るために、金型の硬さをある程度下げることは効果があ
るが、これでは高硬度材を使用するメリットがなくな
り、金型表面のヒートクラックも発生しやすくなって金
型は短寿命となる。ところで、前述した特開平4−36
7360号公報には、型彫側の高度を他の部位よりも高
める方法について、(1)初めに金型全体の焼入れ焼も
どしを行ない、その後裏面11c側のみソルト炉浸漬を
行ない、次に型彫側を断熱材で覆い再焼もどしする方法
がある、(2)局部焼入れ方法として、金型全体を加熱
した後、型彫面側を油冷し、裏面側を保温材シールで覆
う方法がある、とのみ記載され、具体的な熱処理方法の
開示はない。
るために、金型の硬さをある程度下げることは効果があ
るが、これでは高硬度材を使用するメリットがなくな
り、金型表面のヒートクラックも発生しやすくなって金
型は短寿命となる。ところで、前述した特開平4−36
7360号公報には、型彫側の高度を他の部位よりも高
める方法について、(1)初めに金型全体の焼入れ焼も
どしを行ない、その後裏面11c側のみソルト炉浸漬を
行ない、次に型彫側を断熱材で覆い再焼もどしする方法
がある、(2)局部焼入れ方法として、金型全体を加熱
した後、型彫面側を油冷し、裏面側を保温材シールで覆
う方法がある、とのみ記載され、具体的な熱処理方法の
開示はない。
【0007】本発明の目的は、水冷孔を有する特に高硬
度の熱間工具鋼金型の水冷孔付近の割れを防止するため
になされたもので、金型の型彫面のヒートクラックを抑
制し、しかも水冷孔からの大割れを防止したダイカスト
金型の製造方法を提供することである。
度の熱間工具鋼金型の水冷孔付近の割れを防止するため
になされたもので、金型の型彫面のヒートクラックを抑
制し、しかも水冷孔からの大割れを防止したダイカスト
金型の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、水冷孔を有
するダイカスト金型の製造方法について、金型の表面が
高硬度という特徴を生かしつつ、水冷孔周辺からの割れ
を防止する手段を検討した。その結果、金型表面が例え
ばHRC50から52程度、水冷孔に相当する部分を含
む領域をHRC30程度に熱処理すると、金型表面では
ヒートクラックは生じにくく、金型内部は強度的に十分
でしかも水冷孔からの割れが生じにくくなることがわか
った。もちろん、金型表面の硬さをHRC50から55
程度の高硬度にするためには、金型材質の選択も必要で
ある。このような高硬度が得られる材料としては、例え
ば重量%で、C 0.3〜0.6%、Si 1.5%以下、Mn 0.
1〜1.5%、Cr 4.0〜6.0%、1/2W+Mo(WとMoは
1種または2種)1.8〜5.0%、V 0.5〜2.0%を含み、
残部が実質的にFeからなる材料、あるいはこれらの元
素以外にCo 0.1〜5.0%、Ni 0.1〜1.5%を1種また
は2種添加したような材料が推奨される。
するダイカスト金型の製造方法について、金型の表面が
高硬度という特徴を生かしつつ、水冷孔周辺からの割れ
を防止する手段を検討した。その結果、金型表面が例え
ばHRC50から52程度、水冷孔に相当する部分を含
む領域をHRC30程度に熱処理すると、金型表面では
ヒートクラックは生じにくく、金型内部は強度的に十分
でしかも水冷孔からの割れが生じにくくなることがわか
った。もちろん、金型表面の硬さをHRC50から55
程度の高硬度にするためには、金型材質の選択も必要で
ある。このような高硬度が得られる材料としては、例え
ば重量%で、C 0.3〜0.6%、Si 1.5%以下、Mn 0.
1〜1.5%、Cr 4.0〜6.0%、1/2W+Mo(WとMoは
1種または2種)1.8〜5.0%、V 0.5〜2.0%を含み、
残部が実質的にFeからなる材料、あるいはこれらの元
素以外にCo 0.1〜5.0%、Ni 0.1〜1.5%を1種また
は2種添加したような材料が推奨される。
【0009】さらに具体的にいえば、本発明者が開発し
た熱間工具鋼である、C 0.37%、Si 0.17%、Mn
0.6%、Cr 5.2%、Mo 2.0%、W 1.6%、V 0.85
%、Co 0.8%鋼などが適するものである。後者の鋼を
用いれば、十分な靱性を確保しながらHRC55程度の
金型にすることもできる。しかし、本発明は高硬度材の
みに適用されるのではなく、従来から汎用的にもちいら
れているJIS−SKD61クラスの熱間ダイス鋼や、
これらの改良材にも広く適用できるものである。
た熱間工具鋼である、C 0.37%、Si 0.17%、Mn
0.6%、Cr 5.2%、Mo 2.0%、W 1.6%、V 0.85
%、Co 0.8%鋼などが適するものである。後者の鋼を
用いれば、十分な靱性を確保しながらHRC55程度の
金型にすることもできる。しかし、本発明は高硬度材の
みに適用されるのではなく、従来から汎用的にもちいら
れているJIS−SKD61クラスの熱間ダイス鋼や、
これらの改良材にも広く適用できるものである。
【0010】すなわち、本発明の第1の発明は、金型全
体を焼入れ温度に保持したのち、その型彫面部を180
〜400℃の熱浴中に焼入れし、金型の型彫面部以外の
部分を徐冷し、その後金型全体を焼きもどしすることを
特徴とする、水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方
法であり、第2の発明は、金型全体を焼入れ温度に保持
したのち、その型彫面部以外の一部を700〜800℃
の熱浴中に浸漬保持しつつ、型彫面側を大気冷却以上の
冷却速度で焼入れし、次いで700℃以上800℃以下
の熱浴中に浸し大気冷却以上の冷却速度で焼入れし、金
型全体を冷却した後、前記金型全体を焼きもどしするこ
とを特徴とする、水冷孔を有するダイカスト金型の熱処
理方法である。
体を焼入れ温度に保持したのち、その型彫面部を180
〜400℃の熱浴中に焼入れし、金型の型彫面部以外の
部分を徐冷し、その後金型全体を焼きもどしすることを
特徴とする、水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方
法であり、第2の発明は、金型全体を焼入れ温度に保持
したのち、その型彫面部以外の一部を700〜800℃
の熱浴中に浸漬保持しつつ、型彫面側を大気冷却以上の
冷却速度で焼入れし、次いで700℃以上800℃以下
の熱浴中に浸し大気冷却以上の冷却速度で焼入れし、金
型全体を冷却した後、前記金型全体を焼きもどしするこ
とを特徴とする、水冷孔を有するダイカスト金型の熱処
理方法である。
【0011】
【作用】熱間工具鋼製のダイカスト金型には、用途に応
じ様々な形状のキャビティ面を有する。図3は、本発明
が対象とする水冷孔を有する金型の一例を示す上面図と
その断面図である。一般に水冷孔2はキャビティ底面5
から30〜60mm程度の距離に鋳型外周部に沿って加
工され、冷却水は矢印の方向に流れる。このような金型
を用いた場合、金型内に生じる熱応力により、水冷孔周
辺を起点として大割れが発生することがある。このよう
な割れの典型的な例を破面7として示す。このような割
れが発生する要因は、キャビティ部の耐ヒートクラック
性を向上させるために金型全体の硬さを高くする必要が
あること、それに伴って破壊靱性が低下してしまうた
め、特に過大な熱応力が発生しやすい水冷孔付近で割れ
が発生し易くなるものと思われる。したがって、このよ
うな水冷端の大割れを防止するためには、表面硬さを維
持しつつ、水冷孔の存在する領域を軟化させて破壊靱性
を十分上げる必要がある。
じ様々な形状のキャビティ面を有する。図3は、本発明
が対象とする水冷孔を有する金型の一例を示す上面図と
その断面図である。一般に水冷孔2はキャビティ底面5
から30〜60mm程度の距離に鋳型外周部に沿って加
工され、冷却水は矢印の方向に流れる。このような金型
を用いた場合、金型内に生じる熱応力により、水冷孔周
辺を起点として大割れが発生することがある。このよう
な割れの典型的な例を破面7として示す。このような割
れが発生する要因は、キャビティ部の耐ヒートクラック
性を向上させるために金型全体の硬さを高くする必要が
あること、それに伴って破壊靱性が低下してしまうた
め、特に過大な熱応力が発生しやすい水冷孔付近で割れ
が発生し易くなるものと思われる。したがって、このよ
うな水冷端の大割れを防止するためには、表面硬さを維
持しつつ、水冷孔の存在する領域を軟化させて破壊靱性
を十分上げる必要がある。
【0012】したがって、金型のキャビティ部をベイナ
イトを含むマルテンサイト組織、冷却水孔を含む領域を
パーライトを含むベイナイト組織とし、その後キャビテ
ィ部が所定の硬さとなるよう焼きもどしすることによ
り、金型型彫面は硬さが高く水冷孔の部分は硬さが低い
理想的なダイカスト型が得られる。熱浴は一般にソルト
と呼ばれている塩浴を使用することができる。熱間工具
鋼のマルテンサイト変態点は180℃から300℃、ベ
イナイト変態点は300℃から400℃の範囲にあるた
め、第1の発明の場合は、キャビティ面の組織をマルテ
ンサイト+ベイナイト組織にするため、熱浴温度を18
0℃から400℃の範囲とする。第2の発明では熱浴の
温度を、水冷孔部を軟化するためパーライト変態が生じ
る600℃以上かつ、キャビティ面ではマルテンサイト
+ベイナイト組織を得るために冷却速度が低下しすぎな
いよう800℃以下とし、キャビティ上面から空気や窒
素ガスまたはアルゴンガスなどで冷却するのがよい。な
お、金型内部に形成する水冷孔の加工は、熱処理の前後
のいずれの時期に行ってもよい。
イトを含むマルテンサイト組織、冷却水孔を含む領域を
パーライトを含むベイナイト組織とし、その後キャビテ
ィ部が所定の硬さとなるよう焼きもどしすることによ
り、金型型彫面は硬さが高く水冷孔の部分は硬さが低い
理想的なダイカスト型が得られる。熱浴は一般にソルト
と呼ばれている塩浴を使用することができる。熱間工具
鋼のマルテンサイト変態点は180℃から300℃、ベ
イナイト変態点は300℃から400℃の範囲にあるた
め、第1の発明の場合は、キャビティ面の組織をマルテ
ンサイト+ベイナイト組織にするため、熱浴温度を18
0℃から400℃の範囲とする。第2の発明では熱浴の
温度を、水冷孔部を軟化するためパーライト変態が生じ
る600℃以上かつ、キャビティ面ではマルテンサイト
+ベイナイト組織を得るために冷却速度が低下しすぎな
いよう800℃以下とし、キャビティ上面から空気や窒
素ガスまたはアルゴンガスなどで冷却するのがよい。な
お、金型内部に形成する水冷孔の加工は、熱処理の前後
のいずれの時期に行ってもよい。
【0013】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。 (実施例1)表1に示す合金組成を有するSKD61お
よび鋼Aについて図3に示すような水冷孔を有する金型
を焼きなまし後に加工した。なお、SKD61および鋼
Aの焼入れ特性は図4に示す通り、焼入れ温度から(焼
入れ温度+室温)/2の温度まで冷却するに要する時間
(半冷時間と呼ぶ)が約100分以上になると焼入れ硬
さが低下し、200分ではHRC40程度まで低下す
る。SKD61および鋼Aを熱間加工、焼鈍した後、ダ
イカスト金型として必要なキャビティを加工した。その
後、金型全体を1020℃の焼入れ温度に保持した後、
図1に示すようにキャビティ底面5からさらに金型内部
に10mmの位置まで200℃の熱浴に浸漬し、断熱蓋
をかけ、金型裏側の半冷時間が200分となるように調
整した。型裏面が400℃以下まで冷却した後、金型を
熱浴から引き上げ、金型全体を衝風冷却した。その後キ
ャビティ面が所定の硬さとなるよう焼きもどし熱処理を
施した。
よび鋼Aについて図3に示すような水冷孔を有する金型
を焼きなまし後に加工した。なお、SKD61および鋼
Aの焼入れ特性は図4に示す通り、焼入れ温度から(焼
入れ温度+室温)/2の温度まで冷却するに要する時間
(半冷時間と呼ぶ)が約100分以上になると焼入れ硬
さが低下し、200分ではHRC40程度まで低下す
る。SKD61および鋼Aを熱間加工、焼鈍した後、ダ
イカスト金型として必要なキャビティを加工した。その
後、金型全体を1020℃の焼入れ温度に保持した後、
図1に示すようにキャビティ底面5からさらに金型内部
に10mmの位置まで200℃の熱浴に浸漬し、断熱蓋
をかけ、金型裏側の半冷時間が200分となるように調
整した。型裏面が400℃以下まで冷却した後、金型を
熱浴から引き上げ、金型全体を衝風冷却した。その後キ
ャビティ面が所定の硬さとなるよう焼きもどし熱処理を
施した。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】表2に示すように、通常の焼入れ・焼きも
どし熱処理を施した比較例では、いずれの鋼を用いた場
合でも、金型の硬さがHRC44程度では、水冷孔周辺
の割れはないものの、数千ショットでヒートクラックの
発生により型彫り面の補修が必要となっている。また、
これらの鋼をHRC51以上の硬さにすると、いずれの
鋼もヒートクラックが生じる前に水冷孔付近に大割れを
生じ、金型全体を取り替える必要が生じた。これに対し
て本発明を適用した金型は、水冷孔付近の大割れが解消
し、また、型彫り面のヒートクラック発生までのショッ
ト数が大きく改善され、補修などの金型手入れを減らす
ことができた。
どし熱処理を施した比較例では、いずれの鋼を用いた場
合でも、金型の硬さがHRC44程度では、水冷孔周辺
の割れはないものの、数千ショットでヒートクラックの
発生により型彫り面の補修が必要となっている。また、
これらの鋼をHRC51以上の硬さにすると、いずれの
鋼もヒートクラックが生じる前に水冷孔付近に大割れを
生じ、金型全体を取り替える必要が生じた。これに対し
て本発明を適用した金型は、水冷孔付近の大割れが解消
し、また、型彫り面のヒートクラック発生までのショッ
ト数が大きく改善され、補修などの金型手入れを減らす
ことができた。
【0017】(実施例2)次に、実施例1と同じ形状の
金型について、第2の発明の方法による熱処理を行った
例を示す。図2に示すように水冷孔部を熱浴中に浸漬
し、キャビティ面を衝風冷却し、キャビティ面が300
℃まで冷却したのち熱浴から引き上げ、金型全体を衝風
冷却した。その後キャビティ面が所定の硬さとなるよう
焼きもどし熱処理を施した。この結果、表3に示すよう
に、水冷孔付近の大割れが解消し、型寿命が大きく改善
された。
金型について、第2の発明の方法による熱処理を行った
例を示す。図2に示すように水冷孔部を熱浴中に浸漬
し、キャビティ面を衝風冷却し、キャビティ面が300
℃まで冷却したのち熱浴から引き上げ、金型全体を衝風
冷却した。その後キャビティ面が所定の硬さとなるよう
焼きもどし熱処理を施した。この結果、表3に示すよう
に、水冷孔付近の大割れが解消し、型寿命が大きく改善
された。
【0018】
【表3】
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、キャビティ部の十分な
硬さによる耐ヒートクラック性を有するので、型彫面の
修正までの寿命を従来の型の2倍程度に延長でき、金型
の手入れ回数も減らすことができると共に、従来より問
題となっていた水冷孔部付近の割れを防止することが可
能となるという相乗効果がえられる。また、本発明によ
れば、高硬度の材料を使用しても靱性不足による割れの
対策を局部的に行えるので、将来出現するであろう、よ
り高硬度の金型材質にも適用し得る点でその汎用性が高
い発明である。
硬さによる耐ヒートクラック性を有するので、型彫面の
修正までの寿命を従来の型の2倍程度に延長でき、金型
の手入れ回数も減らすことができると共に、従来より問
題となっていた水冷孔部付近の割れを防止することが可
能となるという相乗効果がえられる。また、本発明によ
れば、高硬度の材料を使用しても靱性不足による割れの
対策を局部的に行えるので、将来出現するであろう、よ
り高硬度の金型材質にも適用し得る点でその汎用性が高
い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる水冷孔を有するダイカスト金型
の熱浴焼入れ方法を示す図である。
の熱浴焼入れ方法を示す図である。
【図2】本発明に係わる水冷孔を有するダイカスト金型
の熱浴焼入れ方法を示す図である。
の熱浴焼入れ方法を示す図である。
【図3】水冷孔を有するダイカスト金型の上面図とその
断面図を示す図である。
断面図を示す図である。
【図4】SKD61および鋼Aの焼入れ特性を示す図で
ある。
ある。
1 金型、2 水冷孔、3 熱浴、4 断熱蓋、5 キ
ャビティ底面、6 製品、7 破面
ャビティ底面、6 製品、7 破面
Claims (2)
- 【請求項1】 金型全体を焼入れ温度に保持したのち、
その型彫面部を180〜400℃の熱浴中に焼入れし、
金型の型彫面部以外の部分を徐冷し、その後金型全体を
焼きもどしすることを特徴とする、水冷孔を有するダイ
カスト金型の熱処理方法。 - 【請求項2】 金型全体を焼入れ温度に保持したのち、
その型彫面部以外の一部を700〜800℃の熱浴中に
浸漬保持しつつ、型彫面側を大気冷却以上の冷却速度で
焼入れし、次いで700℃以上800℃以下の熱浴中に
浸し大気冷却以上の冷却速度で焼入れし、金型全体を冷
却した後、前記金型全体を焼きもどしすることを特徴と
する、水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10792793A JPH06322444A (ja) | 1993-05-10 | 1993-05-10 | 水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方法 |
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JP10792793A JPH06322444A (ja) | 1993-05-10 | 1993-05-10 | 水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方法 |
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JP10792793A Pending JPH06322444A (ja) | 1993-05-10 | 1993-05-10 | 水冷孔を有するダイカスト金型の熱処理方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103627874A (zh) * | 2013-12-06 | 2014-03-12 | 浙江龙华汽配制造有限公司 | 传动片淬火工艺及传动片淬火工艺用模具 |
WO2018097165A1 (ja) * | 2016-11-22 | 2018-05-31 | 小山鋼材株式会社 | ダイカスト金型の製造方法およびダイカスト金型 |
-
1993
- 1993-05-10 JP JP10792793A patent/JPH06322444A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103627874A (zh) * | 2013-12-06 | 2014-03-12 | 浙江龙华汽配制造有限公司 | 传动片淬火工艺及传动片淬火工艺用模具 |
CN103627874B (zh) * | 2013-12-06 | 2015-03-25 | 浙江龙华汽配制造有限公司 | 传动片淬火工艺及传动片淬火工艺用模具 |
WO2018097165A1 (ja) * | 2016-11-22 | 2018-05-31 | 小山鋼材株式会社 | ダイカスト金型の製造方法およびダイカスト金型 |
CN110072650A (zh) * | 2016-11-22 | 2019-07-30 | 小山钢材株式会社 | 压铸模具的制造方法及压铸模具 |
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