JP3162366B2 - フェニルアラニンの単離方法 - Google Patents

フェニルアラニンの単離方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、フェニルアラニンの単離方法に関する。
より詳細には、硫酸ナトリウムを含有する水溶液から
フェニルアラニンを純度良く効率良く回収する方法に関
するものである。
フェニルアラニンは、砂糖に類似した甘味を有する甘
味料として知られているアスパルテーム(α−L−アス
パルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、以
下、α−APMと略す)の原料として有用である。
〔従来の技術〕
フェニルアラニンの単離方法として多数の方法が知ら
れている。例えば、特開昭55−59146号公報には、フェ
ニルアラニンを醗酵液からキシレンスルホン酸の塩とし
て単離することが開示されている。しかし、この方法で
は、沈澱剤として、キシレンスルホン酸を必要し、ま
た、フェニルアラニンを遊離にするために、得られたキ
シレンスルホン酸塩をもう一度分解する必要があるなど
いくつかの欠点を有する。また、他の単離方法が特開昭
57−130958号公報に開示されている。この方法では、α
−APMの製造過程から生じる母液を濃縮、加水分解し、
L−フェニルアラニンを塩酸塩の形で単離している。し
かし、この方法では、得られたL−フェニルアラニン塩
酸塩をフリーの形で再使用する場合、もう一度中和する
必要があり、一工程増加し工業上望ましい方法ではな
い。又、塩酸を使用しているため、濃縮・加水分解時に
塩化水素が発生し、コンデンサー、配管等に耐酸性高級
材質を使用しなければならなかった。
そのため、使用する鉱酸としては、工業上安価で容易
に入手でき、酸性ガスの発生しない硫酸が望ましい。し
かし、硫酸を使用した場合、L−フェニルアラニン硫酸
塩は塩酸塩に比べ溶解度が高く、特公平1−19377号公
報の方法のように、硫酸で単離する場合、回収率が低下
する欠点を有している。
そのため、フェニルアラニンをフリーのアミノ酸の形
で回収する必要がある。その場合、硫酸を中和し、ま
ず、pH=4〜7にしてフェニルアラニンを析出させ分離
する。しかし、硫酸を中和するとき水酸化ナトリウムを
使用した場合、生成した硫酸ナトリウムが、十水和塩と
して析出しやすく、操作しにくいスラリー液を形成す
る。また、ここから単離してフェニルアラニンには硫酸
ナトリウムが混入し、純度が低いという欠点があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、上記先行技術の欠点を克服し、水溶液中の
フェニルアラニンを収率良くさらに純度及く単離するこ
とを課題とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討し
た結果、水溶液からフェニルアラニンを回収する際、15
重量%以上30重量%以下の硫酸ナトリウムを含むように
し、かつ、析出したフェニルアラニンの結晶を30℃以上
50℃以下の温度で濾過することにより、効率良くフェニ
ルアラニンを単離できることを見出し、本発明を完成し
た。すなわち、濾過温度を30℃以上50℃以下にすること
により、硫酸ナトリウムの析出を防ぎ、又、高濃度の硫
酸ナトリウムにより、フェニルアラニンの溶解度を著し
く下げて効率良くフェニルアラニンを単離できるもので
ある。
そして、本発明において、フェニルアラニンの晶析時
のpHは、4〜8に調整すれば良く、特に、フェニルアラ
ニンの等電点が好ましい。しかし、等電点に調整して
も、水単独系では第1図に示すように、フェニルアラニ
ンは水に対して0℃でも2%の溶解度を持ち、通常の水
溶液からの単離では溶解ロスが大きく、高い回収率は期
待できない。これに対して本発明の方法のように、硫酸
ナトリウムを含む水溶液中では、第2図に示すように水
溶液中の硫酸ナトリウムの濃度が高くなるほど、フェニ
ルアラニンの溶解度が小さくなり、フェニルアラニン回
収率が高くなる。また、硫酸ナトリウムは、30℃以上で
は、水に対して25重量%溶解するが、それ以下の温度で
は、急激に溶解度が小さくなり、硫酸ナトリウム十水和
物の結晶が析出してくる。そのため、フェニルアラニン
の濾過、遠心分離等の操作を30℃以下で行う場合、硫酸
ナトリウム十水和物の結晶も析出し、濾過、輸液等の操
作が困難になる。また、単離したフェニルアラニンも多
量の硫酸ナトリウムを含み、純度の低いものとなる。
しかし、濾過温度が30℃以上であれば、硫酸ナトリウ
ムの析出が起こらず、純度の高いフェニルアラニンが得
られる。そして、本発明における水溶液中の硫酸ナトリ
ウムは、硫酸と水酸化ナトリウムから系内で生成させて
も良く、硫酸ナトリウムの形で加えてもかまわない。そ
の濃度は15重量%以上30重量%が好ましい。これより低
いとフェニルアラニンの溶解度が十分低くならず硫酸ナ
トリウムの効果が小さい。一方、これより高いと、硫酸
ナトリウムが析出し、単離したフェニルアラニンへの硫
酸ナトリウムの混入が急増する。
固液分離操作でフェニルアラニンを単離する温度は、
30℃以上50℃以下が好ましい。これより低いと前述した
通り、硫酸ナトリウム十水和物が析出し、操作が困難と
なるとともに硫酸ナトリウムの混入が著しくなる。ま
た、30℃以上での硫酸ナトリウムの溶解度はほぼ一定で
あるため、50℃以上の温度では、フェニルアラニンの溶
解度のみ増加して、回収率を低下させるのみである。
また、フェニルアラニンの回収率をあげるにために
は、フェニルアラニン濃度を上げることが好ましいあ
る。しかし、工業上濃度を上げるには、濃縮操作を通常
行わなければならず、経済的ではなく、フェニルアラニ
ン濃度は3重量%以上20重量%以下が好ましい。本発明
の方法で使用されるフェニルアラニンの水溶液の製造方
はとくに限定されるものではないが、例えば、N−ベン
ジルオキシカルボニル−α−L−アスパルチル−L−フ
ェニルアラニンメチルエステル(Z−α)および/また
はN−ベンジルオキシカルボニル−β−L−アスパルチ
ル−L−フェニルアラニンメチルエステル(Z−β)を
溶媒中で接触還元し、α−APMを単離した後に、α−APM
の異性体であるβ−APMを含んだ反応液を硫酸水溶液中
で濃縮、加水分解し、加水分解後硫酸を水酸化ナトリウ
ムで中和すれば、本発明に使用される硫酸ナトリウムを
含んだフェニルアラニン水溶液が得られる。この水溶液
は、アスパラギン酸を含んでいるが、アスパラギン酸の
量が、フェニルアラニンの2倍モル以下ならば高濃度の
硫酸ナトリウムの溶液に溶解し、フェニルアラニンに混
入することはなく、純度の良いフェニルアラニンが得ら
れる。
また、回収するフェニルアラニンは、L体、D体の光
学活性体に限る必要はなく、DL体であっても、フェニル
アラニンの回収率が低下するということはない。
このように本発明の方法によれば、水溶液からフェニ
ルアラニンを効率良く単離でき、工業的単離法として有
用である。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
参考例1 L−フェニルアラニン3.7gを含んだ水溶液100gに硫酸
ナトリウム25gを添加し、45%水酸化ナトリウム水溶液
を微量添加し、pH5.5に調節し、析出してくるL−フェ
ニルアラニンを40℃で濾過し、少量の水で洗浄し、乾燥
した。収量3.30g(収率88.5%対L−フェニルアラニ
ン)。得られた結晶を高速液体クロマトグラフィーで分
析した結果、フェニルアラニン純度は99.2%であった。
参考例2 DL−フェニルアラニン3.7gを含んだ水溶液100gに硫酸
ナトリウム25gを添加し、45%水酸化ナトリウム水溶液
を微量添加し、pH5.5に調節し、析出してくるDL−フェ
ニルアラニンを40℃で濾過し、少量の水で洗浄し、乾燥
した。収量3.48g(収率92.5%対DL−フェニルアラニ
ン)。得られた結晶を高速液体クロマトグラフィーで分
析した結果、フェニルアラニン純度は98.7%であった。
実施例1 L−フェニルアラニン3.7g、L−アスパルギン酸4.5g
を含んだ水溶液100gに硫酸ナトリウム25gを添加し、45
%水酸化ナトリウム水溶液を微量添加し、pH5.5に調節
し、析出してくるL−フェニルアラニンを40℃で濾過
し、少量の水で洗浄し、乾燥した。収量3.35g(収率91.
6%対L−フェニルアラニン)。得られた結晶を高速液
体クロマトグラフィーで分析した結果、フェニルアラニ
ン純度は97.9%であった。また、アスパラギン酸の混入
率は、結晶中のフェニルアラニンに対して0.1モル%以
下であった。
参考例3 L−フェニルアラニン3.7g、硫酸12.8gを含んだ水溶
液100gに、45%水酸化ナトリウム水溶液23.1g添加してp
H5.5に調節し、析出してくるL−フェニルアラニンを40
℃で濾過し、少量の水で洗浄し、乾燥した。収量3.355g
(収率89.7%対L−フェニルアラニン)。得られた結晶
を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、フェニ
ルアラニン純度は99.1%であった。
実施例2 L−フェニルアラニン3.7g、硫酸12.8g、酢酸ナトリ
ウム1.8gを含んだ水溶液100gに、45%水酸化ナトリウム
水溶液24.3g添加してpH5.5に調節し、析出してくるL−
フェニルアラニンを40℃で濾過し、少量の水で洗浄し、
乾燥した。収量3.33g(収率88.5%対L−フェニルアラ
ニン)。得られた結晶を高速液体クロマトグラフィーで
分析した結果、フェニルアラニン純度は98.2%であっ
た。
実施例3 L−フェニルアラニン3.7g、硫酸12.8g、酢酸ナトリ
ウム1.8gを含んだ水溶液100gに、45%水酸化ナトリウム
水溶液24.3g添加してpH5.5に調節し、析出してくるL−
フェニルアラニンを40℃で濾過し、少量の水で洗浄し、
乾燥した。収量3.35g(収率88.6%対L−フェニルアラ
ニン)。得られた結晶を高速液体クロマトグラフィーで
分析した結果、フェニルアラニン純度は98.3%であっ
た。
実施例4 L−フェニルアラニン3.7g、硫酸9.4g、酢酸ナトリウ
ム1.8g、硫酸アンモニウム10.7g、アスパラギン酸4.5g
を含んだ水溶液100gに、45%水酸化ナトリウム水溶液1
1.5g添加してpH5.5に調節し、析出してくるL−フェニ
ルアラニンを40℃で濾過単離し、少量の水で洗浄し、乾
燥した。収量3.48g(収率91.4%対L−フェニルアラニ
ン)。得られた結晶を高速液体クロマトグラフィーで分
析した結果、フェニルアラニン純度は97.6%であった。
また、アスパラギン酸の混入率は、結晶中のフェニルア
ラニンに対して1.0モル%以下であった。残存アンモニ
ウムイオンは250ppm以下であった。
実施例5 アスパルテームの製造工程で生じるβ−APM6.6gを含
んだ水溶液550gに、硫酸12.8gを添加し、100〜105℃で
5.5倍まで濃縮・加水分解を行った。濃縮加水分解物に4
5%水酸化ナトリウム25.3gを添加して、pH5.5に調節
し、析出してくるL−フェニルアラニンを40℃で濾過
し、少量の水で洗浄し、乾燥した。収量3.40g(収率89.
7%対β−APM)。得られた結晶を高速液体クロマトグラ
フィーで分析した結果、フェニルアラニン純度は97.9%
であった。また、アスパラギン酸の混入率は、結晶中の
フェニルアラニンに対して0.1モル%以下であった。
〔発明の効果〕
本発明の方法によれば、水溶液からフェニルアラニン
を効率良く単離でき、工業的単離法として有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、L−フェニルアラニンの水に対する溶解度
を、温度の関数として示したものである。第1図の縦軸
は、L−フェニルアラニンの溶解度(単位;水100gに溶
解するL−フェニルアラニンのg数)を表す。又、第1
図の横軸は、溶解温度(単位;℃)を表す。 第2図は、L−フェニルアラニンの硫酸ナトリウム水溶
液に対する溶解度を、硫酸ナトリウム濃度の関数として
示したものである。第2図の縦軸は、L−フェニルアラ
ニンの溶解度(単位;溶液に溶解しているL−フェニル
アラニンの重量%)を表す。又、第2図の横軸は、硫酸
ナトリウム濃度(単位;系内に含まれる硫酸ナトリウム
の重量%)を表す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−57749(JP,A) 特開 昭51−34113(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 229/00 C07C 227/00 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記〜 夾雑物としてアスパラギン酸を含む水溶液 夾雑物として酢酸ナトリウムおよび/または酢酸アン
    モニウムおよび/または硫酸アンモニウムを含む水溶液 アスパルテーム製造過程で生じるβ−アスパルテーム
    を含む反応液の加水分解物を含む水溶液 のいずれかのフェニルアラニンを含有する水溶液からフ
    ェニルアラニンを単離するにあたり、該水溶液に15重量
    %以上30重量%以下の硫酸ナトリウムが存在するように
    調整したのち、析出したフェニルアラニンの結晶を30℃
    以上50℃以下の温度で濾過することを特徴とするフェニ
    ルアラニンの単離方法。
  2. 【請求項2】水溶液中のフェニルアラニンの濃度が0.7
    重量%以上20重量%以下であることを特徴とする特許請
    求の範囲第1項記載の方法。
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